バルヴェニー 8年 1970年代流通 43%

BALVENIE
PURE MALT WHISKY
Over 8 Years
1970’s
750ml 43%
評価:★★★★★★(6)
【ブラインドテイスティング】
蒸留所:グレンアラヒー、グレンフィディック
年数:12年程度
樽:アメリカンオーク系のプレーンカスク
度数:43%
その他:1970〜1980年代流通あたりのオフィシャルオールドボトル
香り:穏やかな香り立ち。モルティで土っぽさを伴う古典的麦芽香から、微かに林檎や柑橘(オレンジというよりは文旦、ジャクソンフルーツ系)。薄めた蜂蜜。少し若い原酒なのか、ピリピリと鼻腔を刺激するアタックもある。
味:使い古したアメリカンオーク樽での熟成と思しきプレーンな甘さと程よい華やかさ。加水で整えられた柔らかく素朴な麦芽風味は、ホットケーキや洋梨の果肉のような白い甘さ、柑橘系のフルーティーさがあり、余韻にかけては香り同様の刺激に加えてほのかにピーティー、土っぽい要素とほろ苦さが全体を引き締める。
幾らでも飲めそうな、しみじみうまい、癒し系のオフィシャル加水のオールドボトル。麦芽由来の甘さに厚みがあり、ピート香と合わせて地酒的というか田舎的というか、古き良き時代のハイランドモルト。こういうボトルを飲むと、下のラベルに書かれたような景色がイメージされて、ふと郷愁に駆られてしまう。


今回のブラインドボトルは、以前、関内のBAR Old⇔Craft の米本マスターから出題いただいたものです。自分が所有していた5リットルのミニ樽を貸した際のお礼、ということで。飲み残しがあったのでレビューがてらサクッと掲載します。
バルヴェニー蒸留所はグレンフィディックと共に、ウィリアムグランツ(WG)社傘下の蒸留所。グレンフィディックに隣接する場所に建設され、第二蒸留所という位置付けながら、モルティング設備や大規模な熟成庫、ウイスキーの需要増と共にポットスチルも8基まで増設するなど、ウィリアムグランツ社におけるウイスキー生産の中核的な機能を有する重要な蒸留所となっています。
長らくグレンフィディックがシングルモルトを中心にリリースし、バルヴェニーはグランツなどのブレンデッド向けという位置付けでしたが、1973年にシングルモルトを初リリース。
最近はシングルモルトの需要増でバルヴェニーの人気も増えはじめてブランドを確立しており、結果、WG社ははブレンド向け蒸留所としてアイルサベイを建設・稼働することとなり、ますますシングルモルトリリースに比重が増えているという傾向があります。
今回の出題ボトルは、その1973年にリリースされた、同蒸留所における初期リリース時代のラベルとなります。
ボトルも当時のグレンフィディックと同じものが流用されており、ラベルはシンプルで・・・というかWG社が当時リリースしていた各ブランドから比較すると明らかに間に合わせ感のあるもので。フィディックが人気だからとりあえず出してみよう、また、仕上がり(樽使い)も独自路線でなくフィディック系統で良いだろう。だからグランツ向けのプレーンオーク熟成のものからバッティング・加水して出しておけ、そんな空気感すら漂ってくるようです。

(同時期流通のグレンフィディック10年 JAPAN TAX付き(右)と、今回のバルヴェニー8年。飲み比べが面白そうに見えるが、当時にフィディックは闇落ち時代、1960年代前半の原酒を使っており激しくパフューミーであるため注意が必要。)

(バルヴェニー シングルモルトリリースのラベル系譜。右の初期リリースから、1980年代のファウンダーズリザーブ、10年、そして1990年代には現在に通じる形状のデザインとなる。1970年代だけ明らかにやる気が…というのは気のせいだろうか。)
バルヴェニーのオールドというと、個人的に1980年代リリースからシェリー系の印象が非常に強く。今回のブラインドではオールドのオフィシャルで、酒質が麦系暑く甘め、ほのかなピートの当時らしい内陸系という整理からでは、悔しいかな正解まで導くことができませんでした。
むしろ、パフューム時代を抜けたグレンフィディックの1970年代後期、1980年代流通あたりのボトルに通じるところが多く、このあたりは同じ傘下の蒸留所と考えたら納得できるところですが、ラベルもハウススタイルも、キャラクターが定まっていない時代ゆえのリリースと言えるのかもしれません。
一方で、バルヴェニーは何もブレンド向けのプレーンな原種ばかりを作っていたのではなく、この1970年代あたりからシングルモルトを意識した樽使いを始めるのか、後のリミテッドリリース、TUN1401といった長期熟成原酒各種で非常に良質なリリースを重ねて、ブランドとしても確立していくこととなります。
とするならば、このシングルモルト8年は、現代のバルヴェニーへと通じるターニングポイントにして、始まりの1本。日本市場でもなかなか見かけないボトルであり、貴重なものをテイスティングさせていただき感謝ですね。
ただでさえ、米本マスターからはちょっとアレなブラインドを出題されることが多かったので(笑)