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ブナハーブン 19年 1979-1998 OMC 50%

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BUNNAHABHAIN 
Aged 19 years 
Distilled 1979 April 
Bottled 1998 December 
Cask type Sherry 
700ml 50% 

グラス:リーデル
時期:開封後数ヶ月
場所:BAR Kitchen 
暫定評価:★★★★★★(6ー7)(!)

香り:ドライだが艶のある甘味とフルーティーさを感じる香り立ち。キャラメルアーモンドやレーズン、微かにベリーを思わせる心地よい酸のあるフルーティーさがアクセントになっている。残り香が充実していて更なるポテンシャルを感じる。

味:スウィートで軽い香ばしさのある口当たり。とろりとした粘性があり、黒蜜、ドライベリーとローストアーモンド。余韻にかけてややビターだがフルーティーでもあり、赤系の果実感が淡いサルファリーさを伴って長く続く。

もともとあったサルファリーなフレーバーがほどよく消えて果実味のサポートに回ったような、多層感を備えたシェリー系モルト。
まだ完全ではないが、変化のマイルストーンとしては非常に分かりやすいサンプルと言える。ストレートで。

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1970年代のブナハーブンは、特に蒸留所エピソードで触れることはありませんが、一時閉鎖を挟んで80年代も例に漏れずシェリー樽熟成原酒のリリースが多いのが特徴。それが上質なモノなら良いのですが、どうにも野暮ったくサルファリーなタイプのモノも多い。。。今回はそのブナハーブンのテイスティングを通じて、経年がもたらすシェリー感の変化について触れていきます。

というのも、今回のボトルはリリース直後はサルファリーさ(硫黄)がムンムンだっただろうもの。今でもその片鱗は感じられるのですが、20年の時間を経てネガティブな部分が抜けはじめ、むしろシェリー樽のニュアンスの良い部分を底支えするような、香味の一部として融合しつつあるのがこのボトルの現在地です。

自分はシェリー樽における硫黄フレーバーを、苦手な要素のひとつにあげています。
一方で様々なウイスキーを飲んできて、このフレーバーには2つの特徴があることがわかってきました。
まずひとつは、硫黄フレーバーは時間経過でこなれて、ある程度抜けるというもの。そしてもうひとつは、そのフレーバーが全面的にネガティブなものではなく、プラスに転じるものもあるということです。

硫黄由来の要素が抜けていくと、残るのは適度な香ばしさや苦味、あるいは土っぽさに通じるようなニュアンス。シェリー樽熟成原酒のなかでも赤い果実味を感じさせるようなタイプのものにこれが加わると、多彩で厚みのある熟したベリーのようなフレーバーへと変貌するように感じています。
最近多いシーズニングシェリーの代表格とも言えるクリーミーで甘いタイプは、椎茸っぽさが増すようなものもあるようですが、なかにはローストアーモンドとチョコレートを思わせるフレーバーだったり、かりんとう系の香ばしさに変化するものも。
料理には、癖のあるものとの組み合わせが美味しさに繋がっているケースが珍しくなく、硫黄も言わばその1つであるのだと言う訳です。

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今回の記事と関連して、以前紹介したグレンギリー(アデルフィー・グレンギリー 1998-2016 55.7%)を例示します。
香味構成は上述の赤い果実味のあるシェリー感と、シェリーそのものが混じったような若干の椎茸っぽさ、そして強めのサルファリーさ。。。
開封直後は良い部分もそうでない部分もあるのですが、硫黄が抜ければベリー感の出た旨いシェリー系になると様子を見ているボトルです。

加えてグレンギリーの酒質はアタックが強めなので、こちらも経年でこなれてちょうどよくなるだろうと予想して購入。開封3年弱経過し、ボディを維持しつつも硫黄はそれなりに抜け始めて来ています。
まだしばらく時間はかかりそうですが、先日久々に飲んで好みの方向に振れていることも確認出来て一安心。最も開封済みでの変化なので、未開封ボトルでは上記ブナハーブンのように10年単位で時間が必要だと思いますが。。。

余談ですがこの手のボトル、硫黄が収まってきたとしても油断は禁物で、振ると何故か復活してしまいます。
開封時にコルクを湿らせるため、ボトルを逆さにする場合があっても勢いよく傾けることはせず、グラスに注ぐ際もフチを滑らせるようにして、空気と混ぜないのがポイントです。
濃厚な癖に繊細なヤツ。じっくり瓶熟を待つことといい、なんかワインみたいですねえ(笑)。

タリスカー 11年 1988-1999 OMC 50%

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TALISKER
OLD MALT CASK
Aged 11 years
Distilled 1988 March
Bottled 1999 June
750ml 50%

グラス:リーデルコニャック
時期:不明
場所:BAR Sandrie
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:度数を感じさせない柔らかい香り立ち。バニラとオレンジやレモンを思わせる柑橘感、焦げた干草のような麦芽香とスモーキーさ、微かに魚介系のニュアンス。

味:出汁感のあるオイリーでコクのある口当たり。バニラ、乾いた麦芽風味、合わせてピーティーで焦げた干草を思わせるスモーキーさが鼻腔に抜ける。
余韻はピリピリとスパイシー、オイリーな要素が舌を包むように長く続く。

若いボトルだが嫌味な要素はなく、むしろ経年変化もあって柔らかくしっとりとした香り立ちと、コクのあるボディが特徴的。樽感はプレーンなタイプで、UD系のキャラクターを思わせる酒質ベースの仕上がり。少量加水するとまったりとした甘みとコクが引き立つ地味美味い系モルト。


確認したい事があってオーダーした、1980年代蒸留のタリスカー短熟ボトル。
というのも、一つはタリスカー8年がリリースされ、短熟タリスカーのキャラクターの指標に一つにしたかったこと。そしてもう一つが、"グレンブレア"という正体不明のピュアモルトを飲んだ際、その味がどうも昔のタリスカーではないかという香味で、近いビンテージのものを復習したかったから。
探していたところ、サンドリエさんにちょうど良いボトルがあったのです。

(バーンスチュワート社が1990年代初頭にリリースしたグレンブレア12年ピュアモルト。島系のスモーキーな味わいだが、当時の同社所有蒸留所にスモーキーな個性のものはなく、主要原酒は謎に包まれている。おそらくタリスカーではないかと予想。)

グレンブレアの件のついては、後日同ボトルのレビュー記事でまとめるとして。。。
このOMCのタリスカー、樽感はプレーンですが、過度な荒さはなく酒質由来の香味もわかりやすい、素性の良い短熟タイプのボトラーズです。おそらく樽出しは60%くらいだったんでしょうけど、OMC特有の50%加水が効いて、良いまとまり具合です。
先日リリースされた8年とも共通項があり、時代による差はあれど、タリスカー蒸留所の個性が安定していることを感じる指標にもなるボトルだと思います。

ちなみのOMCでタリスカーと言えば、タリスカー名義を使用することを回避するため、タクティカルというブランド名でリリースされていたことで知られています。
ところが今回のボトルはタリスカー。時期が違うのかと思いきや、このボトルとほぼ同時期の2000年リリースでタクティカル表記があり、また最近になってタリスカー表記に戻ったような感じです。

1990年代後半と2000年代で何があったんでしょうか。UDからディアジオへの切り替わりは1997年でタイミングが合わないですし、何よりGMやケイデンヘッドは普通にリリースしてるんですよねえ。
どーでも良いですが、ちょっと気になるウイスキー業界の謎なのです。

グレンスコシア 30年 1969-1999 OMC 50%

カテゴリ:
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GLEN SCOTIA
Old Malt Cask
Aged 30 years
Distilled 1969
Bottled 1999
700ml 50%

グラス:国際規格テイスティンググラス
場所:BAR飲み
時期:開封直後
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:柔らかい香り立ち。淡い麦芽香、品の良いリフィル系のオールドシェリー香は、サルタナレーズン、シフォンケーキ、ほのかにカラメルソースのニュアンスを伴い穏やかに広がる。

味:スムーズな口当たり。素朴な麦芽風味からじわじわと杏や煮た林檎のフルーティーさ、軽くナッツやキャラメリゼ。
余韻は染み込むようにウッディでトロピカル。ほのかなピートフレーバー、グレープフルーツのワタを思わせるほろ苦さを伴い長く続く。 

古き良き時代を思わせるオールドテイストなモルトウイスキー。樽が過度に主張せず、そこにしっかりと存在感のある麦芽風味がバランス良く感じられる。突き抜けないがしみじみと美味い。


今となっては貴重なグレンスコシアの1960年代蒸留にして、1970年代後半の大規模改修工事前の素朴な味わいが楽しめる1本。近年蒸留所がロッホローモンド傘下となってからは、樽感も果実味も酸味や少し発酵したような癖のあるニュアンスが伴いますが、かつては素朴な麦芽風味に加えて灰っぽさや特徴的なほろ苦いピートフレーバーが感じられる、滋味系なモルトウイスキーでした。(この辺はブリタニア8年やグレンネヴィス12年のモルトを飲むと特徴がわかりやすいと思います。)

今回のボトルはその長期熟成品で、同様の麦感をベースとしつつ、熟成によるカドのとれた香味と60年代らしいトロピカルフレーバーも加わって、ハイプルーフでありながら何杯でも飲めてしまうような味わい。充分美味しいモルトですが、2000年前後のOMCはこの素晴らしいモルトが埋もれてしまうくらい60〜70年代蒸留の原酒をガンガンリリースしていたのですから、とんでもない時代でした。


さて、グレンスコシアは専門書などでキャンベルタウン衰退の歴史と共に語られることの多い蒸留所です。
同じ地域の代表的蒸留所であるスプリングバンクは、不況と悪評になんとか耐え抜きましたが、グレンスコシアは複数回の閉鎖と買収を経験していることが、その歴史にリンクしているように感じられるからかもしれません。

衰退の要因はいくつかありますが、中でも代表的なものがキャンベルタウンの各蒸留所が粗悪なウイスキーを量産してアメリカ市場に販売していたことで、結果同地域産のウイスキー全体に悪評としてダメージを与えたことが背景にあるわけですが。。。
なお、この歴史を近年のジャパニーズウイスキーに当てはめると、対岸の火事ではなく、同じ道をたどっているようにも思えてなりません。
願わくば、日本は同じ轍を踏むことが無ければ良いのですが。。。

グレンバーギー 21年 1995-2016 OMC スペイサイドリージョン 50%

カテゴリ:
GLENBURGIE
OLD MALT CASK
SPEYSIDE REGION
Aged 21 years
Distilled 1996
Bottled 2017
Cask type Refill Hogshead #12358
700ml 50%

グラス:不明
時期:開封後1カ月程度
場所:個人宅持ち寄り会
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:草っぽさを伴う青みがかった香り立ち。ドライで渋みを連想させるウッディネス。奥からビスケット、オーキーな華やかさ、ドライパイナップル、ほのかに古酒感が混じる。

味:口当たりは香り同様やや青さを伴う麦芽風味。軽やかな甘みは薄めた蜂蜜やビスケット、徐々にオーキーなフルーティーさ、ほろ苦いウッディネスと古酒っぽいコクも混じる。
余韻は華やかでドライ、オーキーな近年系のトロピカルフルーツと微かなニッキ、スパイシーで長く続く。

ホグスヘッドらしい華やかでオーキーな要素がメインだが、リフィルゆえかそこまで支配的ではなく、モルティさと合わせてバランスの良い仕上がり。前回熟成されていたものの影響か、古酒っぽい要素もある。少量加水するとフルーツ、華やかさが強く感じられる。


近年のグレンバーギーのボトラーズリリースは、加水の有無を問わずバーボンバレルかホグスヘッドのものなら可もなく不可もなくという安定感。野球でいう先発すると6回3失点で必ずまとめ上げてくれるピッチャーみたいな、突き抜けた成績を残さない代わりにその場を壊さないタイプのモルトだと思います。
それこそ、華やかでフルーティーなボトルを1万ちょっとくらいで1本買うとすれば、その安定感から候補に挙がる蒸留所といえます。

今回のリリースは1995蒸留の21年なら、本来もう少し華やかでフルーティーでも良いのですが、リフィル樽での熟成であるためか、ウッディさはあるもののその要素はバランス寄り。樽感が出がらし寄りになったためか、少し青みがかった香味も感じられます。
この日は他にGMエクスクルーシブ、シグナトリーカスクストレングスと計3種の近年蒸留グレンバーギーを飲みましたが、ベースは熟成したスペイサイドモルトの華やかで軽やかな口当たりに、それぞれ樽感の違いが感じられて面白い飲み比べでした。

グレンバーギーは、先日バランタインシングルモルトとしてオフィシャルの加水がリリースされたばかりですが、ボトラーズリリースは豊富にあります。個人的にはこれをきっかけにもう少し知名度が上がっても良いのになと思うところです。

グレンダラン 20年 1978-1998 OMC 50%

カテゴリ:
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GLEN DULLAN
OLD MALT CASK
Aged 20 years
Distilled 1978
Bottled 1998
One of 299 Bottles
700ml 50%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅
時期:開封後1ヶ月程度
評価:★★★★★★(6)

香り:青みがかったニュアンスの伴う淡く華やかなオーク香。麦感と蜜っぽさ、王林系の林檎を思わせる果実香、ほのかにスモーキーで土っぽいアロマも混じってくる。

味:とろりとした口当たり、淡い華やかさを感じるウッディネス。青林檎や乾いた麦芽、奥にはピートの層があり、後半にかけてスモーキーフレーバーが主張してくる。
余韻はヒリヒリとしたハイトーンな刺激、軽やかな麦芽風味の香ばしさとピーティーなほろ苦さで長く続く。

使われている樽はリフィルシェリーホグスヘッドか。樽感は程よく華やか、酒質由来の味わいがしっかり主張し、奥行きも感じられる構成。ピートもいい仕事をしている。ストレートではハイトーンで勢いのある味わいだが、少量加水すると香りが開き、林檎のコンポートを思わせるやわらかくフルーティーな甘さを感じる。


今は懐かしいオールドモルトカスクの旧ボトル。リフィル系の樽感で酒質メインなスペイサイドモルトが飲みたくなり、抜栓しました。

近年のグレンダランはボディのライト化が進み、花と動物シリーズや、現在販売されている免税店向けのシングルトン・グレンダランも悪くないですが、40〜43%加水であることも手伝って穏やかすぎて個性がボケてしまっている印象。
対してハイプルーフのそれは、瓶熟向けとも言える結構やんちゃで重厚な酒質を楽しめるのが魅力です。

ただ、今回の蒸留時期は、グレンダランにあって少々特殊な歴史の中にあります。
グレンダランは1985年に蒸留所が新しい設備に切り替わっており、今回のボトルは切り替え前の蒸留。。。かと言うと、厳密には1962年に古くからあった蒸留所をリニューアル。1972年には6基のスチルを有する新蒸留所を新設。その後しばらく旧蒸留所と新蒸留所が平行して稼動し、1985年に旧蒸留所が閉鎖したという流れ。
丁度ど真ん中の時期に当たる今回のボトルは、新旧どちらで蒸留されたか、あるいは混ぜられたものかは判断つかない状況です。

つまり平行稼働期間となる13年余り、新旧2つの蒸留所がグレンダラン名義でモルトを生産していたことになるわけですが、いわばクライヌリッシュとブローラのような関係であった新旧蒸留所が同一名義。これが問題とならなかったのは、「当時の基準がおおらかだったから」で片付けるには疑問が残ります。
乱暴な整理ですが、グレンダランの原酒はブレンド向けで混ぜて使われる前提であるため、シングルモルトリリースに使われない事から問題にならなかった、ということでしょうか。
(1970年代から1980年代後半にかけての際どい時期に、12年表記のシングルモルトがリリースされているのですが。。。)

そんな過去に謎を持つグレンダランですが、ブレンド主体にするには惜しい、爽やかなフルーティーさとスモーキーさを持った、スコッチらしい個性のあるモルトです。
近年シングルモルト需要の高まりから、ブレンド向け蒸留所からも様々な銘柄がリリースされており、グレンダランがラインナップに加わる日も遠くないのではと期待しています。


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