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ダルウィニー 2006-2021 ディスティラリー エディション 43%

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DALWHINNIE 
DISTILLERY EDITION 
DOUBULE MATURED
(BOURBON - OLOROSO CASK)
Distilled 2006 
Botteld 2021 
700ml 43%

評価:★★★★★★(6)

香り:柔らかく甘い麦芽香にオークの乾いたウッディネス。そこに混ざるシェリー樽由来の色濃い樽香。2つの要素がはっきりとは混ざり合っておらず、複層的に感じられる香り立ち。

味:マイルドな口当たり。 蜂蜜や麦芽糖、はっきりとした甘みが広がり、徐々にビター。シェリー樽由来のドライプルーンやブラウンシュガーを思わせるフレーバーがアクセントになっている。
余韻はほろ苦く、じんわりとウッディネスが染み込むように消えていく。

スタンダードのダルウィニー15年に感じられる、ハイランドモルトの代表格と言えるような牧歌的な麦芽風味に、オロロソシェリー樽の色濃いフレーバー、ウッディネスが混ざり合う。特徴的なのは、後熟に用いたシェリー樽のフレーバーが完全に一体化しているわけではなく、香味とも麦芽風味→シェリー樽と段階的に変化していくことにある。
少量加水すると、前者のフレーバーにある青みがかった要素が一瞬顔を出すが、一体化していなかった2つの要素が混ざり合い、熟したオレンジや洋菓子を思わせるアロマとして感じられる。相変わらず派手さはないが、地味に旨い通好みの1本。

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愛好家御用達の隠れた名酒、ダルウィニー。
ダルウィニーはディアジオ社のクラシックモルトシリーズとして位置付けられ、まさにハイランドの代表として1980年代後半からリリースが続いているわけですが。
そのクラシックモルトシリーズを様々な樽で後熟させて毎年リリースしているのが、ディスティラリーエディション(以下、DEと表記)です。

ダルウィニーDEは、オロロソシェリー樽でのフィニッシュで構成されていますが、このシリーズは各蒸留所において毎年毎年ロット差があり、ダルウィニーDEは特にその違いが大きいように感じます。
最近のロットだと、2016年はシェリー感というよりはエステリーで華やかなフルーティーさという、組み合わせであり得るとしたらアメリカンオークシェリー樽由来のフレーバーが際立ち。2017年や2018年はリフィルかな?という麦芽風味主体の構成だったところ。

この2021年リリースのダルウィニーDEは樽の傾向が大きく変わって、最近の他社オフィシャルリリースに見られるようなシェリー感が、麦芽風味に混ざって感じられます。シーズニングのオロロソシェリー樽で、スパニッシュオークのキャラクターに由来するものでしょう。
その上でノーマルな15年とDE15年を比較すると、どちらも同系統のフレーバーがベースにありつつ、ハイボールなどのアレンジのしやすさはノーマルに軍配があがり、単体で緩く飲んでいくならDEも良いなというのが、この2021年リリースの印象です。

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さてダルウィニーのオフィシャルラインナップは15年とDEで、後はウィンターズゴールドが市場にあり、基本それ以外に定常的に販売されているオフィシャルリリースはありません。
ディアジオは、ダルウィニーに限らず売れ筋である一部の銘柄を除いてラインナップを絞る戦略をとっているようなんですよね。
ことダルウィニーについてはボトラーズもないので、折角クラシックモルトとして地域を代表する銘柄にしているのだから、もう少しラインナップを増やしてくれても良いんじゃないかなぁと思うのですが。。。

ただ、限定品として不定期ながら長期熟成のリリースが数年毎に行われており、2000年代にリリースされた29年、32年は絶品。2006年リリースの20年は少々難ありでしたが…。
2016年にリリースされた25年は、15年の傾向で麦芽風味とフルーティーさを洗練&ボリュームアップさせたような味わい。
2020年にリリースされた30年は麦芽風味にやや枯れた要素がありつつも、奥行きと熟した洋梨のようなフルーティーさがあり、どちらも通好みの味わいで良い仕上がりでした。

こうしてリミテッドをテイスティングして現行品のスタンダードに戻ってくると、改めてその良さも感じやすくなる。
ダルウィニーというよりは、ディアジオのブランド戦略の巧みさでもありますね。

ダルウィニー 15年 2021年現行ボトル 43%

カテゴリ:
dalwhinnie_tasting

DALWHINNIE 
Highland Single Malt 
Aged 15 years 
700ml 43% 

評価:★★★★★★(6)

香り:華やかなオーク香と蜂蜜のアロマ。合わせて麦芽の白い部分、籾殻、すりおろした林檎を思わせる品の良いフルーティーさが柑橘系のアクセントと共に感じられる。

味:口当たりは柔らかくオイリーで厚みのある味わい。香り同様にオーキーな含み香と麦芽風味、蜂蜜を思わせる甘みが主体となって広がる。余韻は微かにピーティーでウッディなほろ苦さ。軽い刺激を伴いつつ、ジワリと染み込むように長く続く。

軽やかなオーク香とワクシーな麦芽風味が主体。飲み方はハイボールでも悪くないが、ワイングラスに氷を入れてステアする、フレグランススタイルで飲むことで個性が一層引き立つ。まさにハイランドモルトの代表的キャラクターの一つ。
また、オールドボトルと比較して樽感の華やかさは現行寄りと言えるが、香味のベクトルに大きな変化が見られない点も、ダルウィニー蒸溜所の特徴であり、ハウススタイルであると言える。

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個人的に、現在販売されているシングルモルトの中で、ハイランドモルトらしい個性を知りたいと問われたらお勧めするのがこの1本。
愛好家御用達の隠れた〜〜なんて表現をするなら、間違いなくダルウィニー15年を候補に挙げます。
昨年更新した酒育の会 Liqulの記事でも、同様のテーマでダルウィニーを紹介したところです。

Re-オフィシャルスタンダードテイスティング Vol,14 ダルウィニー15年
https://liqul.com/entry/5853


蒸溜所については上記Liqulの記事で紹介したため、ここでは別な視点からダルウィニーの個性を紹介していきます。
スコッチモルトにおいては、ハイランド、スペイサイド、ローランド、アイラと、地域毎に産地が括られ、その地域による個性も度々話題にもなります。
実際、各蒸留所のシングルモルトを飲むと、そうした違いが見えてくることは間違いなく、特にアイラモルトはアイラ島産のピートがもたらす強烈な個性が、その立ち位置を明確なものとしています。

一方でハイランドやスペイサイドのように広大で、漠然とした地域の違いはというと、これは解釈が分かれますが、地域の違いというよりも蒸溜所毎のハウススタイルの偏りという点で、認識されているケースが多いと感じています。
そして、地域毎の個性の違いに繋がる要因は何かというと、一つは熟成に影響を与える気候、もう一つはピートや麦芽、水質など、その地域から産出する原料にあったのではないかと考えています。

“あったのではないか”と過去形なのは、現在は麦芽もピートも地産地消の時代ではないこと。物流網の発達と効率化の観点から、様々な地域のものが集約され、一部は海外から輸入され、特別指定しない限りはモルトスターから統一的に供給されていること。
熟成環境も、大手ブランドのものは効率化の観点から蒸溜所とは異なる地域にある集中熟成庫で熟成されることが多く。
結果、地域毎の違いに繋がっていたであろう要素が、特に現在のハイランド&スペイサイドウイスキーからは姿を消しつつあるためです。

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(左はダルウィニーのオフィシャルボトルファーストリリース。1980年第初頭にリリースされた。原酒には、蒸溜所改修前、フロアモルティングで仕込まれた時代の麦芽が用いられている。現行品とは麦芽風味の厚みや癖の濃淡はあるが、香味の傾向は同じ方向にある。)

ではダルウィニーは地産地消なのかというと、ここも原料は1960年代の改修工事以降モルトスターから提供。熟成庫も、現在は多くの原酒が集中熟成である可能性が非常に高いです。(公式には集中熟成庫での熟成の話はオープンになっていないため、可能性が高い、とします。)
そうなると冒頭のダルウィニーを指して「ハイランドモルトらしい個性を知りたいなら・・・」という表現は、矛盾するように感じるかもしれません。
これは変わらない製法、そして何よりもブレンダーが目指す味の方向性が昔も今も大きく違わないため、多少個性はライトになっているものの、かつてのハイランドモルトらしさが残されているのです。

ここで言うハイランドらしさは、自分の解釈では牧歌的な麦芽風味です。糖化前の原料状態の麦芽を齧ると味わえる、芯の白い部分の甘み。我々に馴染みのあるものに例えると、お粥ですね。白く、優しく、どこか垢抜けない田舎っぽい甘さ。
オールドボトルだとグレンモーレンジ、オーバン、マクダフ…スペイサイドモルトにも同様の個性が見られましたが、近年の蒸留所の多くは線が細くライトで華やかな傾向にシフトした印象を受けます。

どの時代をもって個性とする、らしさとするかはまさに飲み手の解釈次第です。一部のモルトのような手に入らないものを惜しむより、今に目を向けることも大切です。
ただ昔があって今があるという時間の流れの中で、変わらないものを愛でるのもまた、嗜好品の楽しみ方であると思います。
ダルウィニーはいつまでも古くからの愛好家の隠れ家、宿木であってほしいです。

クラガンモア 12年 スペシャルリリース 2019 58.4% 

カテゴリ:

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CRAGGANMORE 
Special Release 2019
Aged 12 years 
Distilled 2016 
Cask type Refill American Oak 
700ml 58.4% 

グラス:シュピゲラウ
時期:開封後1週間程度
場所:新宿ウイスキーサロン
評価:★★★★★★(6)

香り:柔らかい香り立ち。乾いた麦芽、籾殻、淡いオーク香。奥には乳酸系の酸があるが、エステリーでじわじわとピートスモークが存在を主張する。

味:麦芽由来の甘味が柔らかく広がる。仄かに洋梨のアクセント、余韻にかけて少し若い乳酸、度数由来の刺激が時間差で届き、焦げた藁や土っぽさを伴うスモーキーなフィニッシュ。

些か若さのある香味がベースにあるが、麦の甘味とピートフレーバーがその若さの上に重なって、淡い樽香が繋ぎになってうまくまとまっている。この酒質ベースかつバランスの取れた作りはいかにもディアジオのリリースらしい。ただ、クラガンモアに強めのピートという組み合わせは新しく、美味しさ以上に面白みのあるリリース。


クラガンモアと言えば、麦芽風味主体の牧歌的な内陸モルト。かつては麦芽風味が厚く、やぼったい感じが逆に魅力でもありましたが、近年はウイスキー全般の傾向よろしく麦芽風味やボディが弱く、ややドライでピート香もライトなタイプになり。。。正直目立たないというか面白みのないシングルモルト、という印象がありました。

今回、スペシャルリリースでクラガンモアのカスクストレングスが久々にリリースされるとあり、気にはなっていたのですが、まさかのピーテッドモルト。ってか仕込んでたのね変わり種。2016年に試作されたミディアムピーテッドモルトとのことですが、オールドパーやジョニーウォーカーあたりに使っていたのでしょうか。
序盤のハイプルーフらしく厚みのある麦芽風味、ほのかに白系のフルーティーさが広がる感じはクラガンモアらしさを思わせる個性。このままで普通に美味しいウイスキーですが、余韻にかけて存在感を増していく、ピートフレーバーが異質なのです。

香味の系統としては、アードモアより麦芽風味が厚く、ハイランドパークほどピートに癖がない。オールドプルトニーから潮気を取ると一番近いかな。。。という感じで、何れにせよ飲んでいてその辺りの蒸留所との一部共通点を思わせるような香味構成となっています。
少なくとも、ブラインドで飲んでクラガンモアが出てくることはまずないと思います。

純粋な味わいとしては若さは若干あるものの、このピートが良い仕事をしています。樽の効かせ方もバランス良く、今年のリリースでオード、タリスカー、ラガヴーリンらはまさに王道という構成ですが、クライヌリッシュに対するブローラのような、可能性を楽しめる1本。美味しく楽しませて貰いました。

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今日のオマケ:グレンマッスルNo,3 リリースのお知らせ。

この1週間は色々バタついていて、更新が不定期&頻度低下してしまいました。
仕事の終電帰りが常時だと体力的に厳しく。。。まあ元気にやってます(笑)。
私的な話はさておき、来月グレンマッスルのNo,3がリリースされます。
No,2と同時平行で昨年仕込みを完了していたので、前作から2ヶ月という短期間でリリースが続くことになりました。

No,2はモルティーでフルーティーなタイプ。強い味わいのなかにシングルカスクとは異なるブレンドらしい複雑さ、飲みやすさ。開封後の変化も合わせてSNS等での感想は概ね好評だったようで、関わった一人として安心しました。
そして来月リリースされるNo,3は、これまでとは180度キャラクターの異なる、ピーティーなブレンドです。
恐らく万人向けとは言い難いですが、これも愛好家が求める味わいの一つであり。構成原酒のうちキーモルトとなる日本の蒸留所について、大きな可能性を感じる仕上がりだと思います。
詳細は追って公開します。これまでのリリース同様に、楽しんで貰えたら嬉しいです。

ラガヴーリン 12年 スペシャルリリース 2019 56.5%

カテゴリ:
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LAGAVULIN 
ISLAY SINGLE MALT 
AGED 12 YEARS 
SPECIAL RELEASE 2019 
700ml 56.5% 

グラス:国際規格テイスティンググラス
時期:開封後1週間程度
場所:ジェイズバー
評価:★★★★★★(6)(!)

香り:フレッシュなスモーキーさ、そこに混じる仄かな柑橘や焦げた木材、磯っぽいアロマやヨードの混じるピート香。奥にはオーク由来のバニラやファイバーパイナップルを思わせるアロマも潜んでいる。

味:ピーティーで出汁っぽさも感じる、塩気やコク、厚みのある口当たり。香り同様に微かに柑橘系のニュアンス、じわじわとスパイシーな刺激や、焙煎した麦芽のほろ苦さとスモーキーな含み香が広がる。余韻はピーティーでビター、ほのかに焦げたようなニュアンスを伴い、長く続く。

いかにもラガヴーリンと言えるキャラクター。ハイプルーフ仕様であるが、しっかりとした骨格に、若さを感じさせない熟成感を形成するコクと適度なアメリカンオーク由来のフレーバー。酒質ベースの味わいだが、それ以外の要素がアクセントになり、香味は良い意味での雑味を持っている。2000年代に流通していたリミテッドリリースへの回帰を感じる仕上がり。

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毎年リリースされている、ラガヴーリンのリミテッドエディション。スペシャルエディションは今回の2019ロットからラベルデザインが大きく代わり、それだけでも話題になるボトルですが、味もなかなか良い感じです。

最近のスペシャルリリースは、2000年代のものに比べて作りがプレーンというか、樽感がクリアになり、味わいの幅が減ってやや一本調子な印象がありました。
これも時代のトレンドで仕方ないかと感じていたところ。。。2019年リリースでは、それが大幅に改善されているのが特徴です。
使用樽はリフィルアメリカンオークとのことで、2018や2017がリフィルホグスヘッドでしたから、実は同じだけれどブレンドの傾向が違うだけか、あるいはバレルが一部混ざっているのでしょうか。熟成感がありつつオーク系の要素が程よく香味の幅、全体に厚みを与えています。

酒質のほうは、さすがディアジオ。今回もラガヴーリンらしい塩気、ヨードを含むピート香に、荒々しさの残る麦芽風味と出汁のようなコク、オイリーさのある味わい。それらを例えるなら、樽感と合わせて200周年の18年に通じるベクトルにあり、蒸留所のハウススタイルもしっかり感じられます。
なにより、旧世代への回帰と言える仕上がりは「そうそう、こういうので良いんだよ」と、思わず頷いてしまう。なぜこうなったのか・・・という理由はわかりませんが、昨年のジャズフェスやアイラフェス等の評価も依然高く、アイラの巨人は未だ健在。これから国内に流通するボトルだけに話題になりそうです。

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今日のオマケ:榮川創業150周年記念 純米吟醸原酒

2019年に創業150周年を迎えた福島の榮川酒造が限定リリースした1本。老舗かつ地元では有名な酒造のひとつですが、ウイスキーで150周年!となると、瞬殺してしまいかねないスペックが、まだ普通に買えるあたりが良い意味での緩さ。記念ボトルでありながら720ml1500円切というのも日本酒らしいなとw

一方で、味は決して安酒のそれではありません。
品の良い吟醸香はパイナップルや林檎を思わせるフルーティーさで、柔らかくクドさもない香り立ち。原酒なのでどっしりくるかと思いきや飲み口はスムーズ。ですがほどよい米の甘味やコクが広がり、終盤じわじわとビターな感じが出てくるのが原酒らしさでしょうか。
スッキリとした酒なので、食事にも合わせやすく、何よりこの価格でこの味ってのは中々良いぞと、1本丸っと楽しませてもらいました。


ダルウィニー 29年 1973-2003 リミテッドエディション 57.8%

カテゴリ:
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DALWHINNIE 
AGED 29 YEARS 
Limited Edition 
Bottled 2003 
700ml 57.8% 

グラス:グレンケアン
時期:開封後1週間程度?
場所:BAR Eclipse 
評価:★★★★★★(6)

香り:スパイシーでウッディ、リフィル系統だが樽由来の枯れ感と強い熟成香。淡くメープルを思わせる甘味、リンゴのカラメル煮やキャラメルナッツ、酸のあるアロマがオレンジなどの柑橘も連想させる。

味:ドライで多少尖って感じられる口当たりから、熟成感と酸味のある樽由来のフレーバーが厚い麦芽風味と合わせて感じられる。バニラや白粉、洋梨、後半にかけてビターでハーブとキャラメルナッツを伴う。
余韻はウッディでドライ、紅茶のようなタンニンを伴う余韻が長く続く。

やや枯れたようなウッディさもある、強い熟成感が特徴のモルト。注ぎたてはドライで樽由来のフレーバーが主体にあるが、奥にはモルティーな甘みもしっかりあって時間経過でこなれて開いてくる。また少量加水も良好であり、開封後時間をかけて楽しんでいくのがおすすめ。


2000年代初頭、シングルモルトのブランド向上を図る狙いで、ディアジオからリリースされたリミテッドエディション。ダルウィニーからは2002年ボトリングの36年と、2003年ボトリングの29年がそれぞれリリースされており、特に36年は名作として知られています。

36年は流石フロアモルティング実施時代のダルウィニーと言うべきか、酒質が厚く熟成感とのバランスも良い。フルーティーで多彩な香味が、オフィシャルリリースだからこそ作り上げられる魅力を体現したような1本でした。
一方、今回久々にテイスティングした29年は、かつて飲んだ時は引っ掛かるようなウッディさに抵抗を感じていたもの。
久々に飲んだところ、ダルウィニーらしい麦感は感じられるのですが、度数に反して枯れたようなウッディさ、熟成感の強さは目立っていて、なるほど当時はここに引っ掛かったんだなと理解もできました。

樽構成は、バーボン以外にシェリー系も含んでいる印象。ですが、リフィルやサードフィルで、それが長期間の熟成を経てウッディさとして溶け込んでいるように感じます。
それでも記憶しているよりはまとまりがあり、樽由来のフルーティーさ、ディアジオのリリースで見られる樽由来の酸を伴う構成もまた”らしさ”で、時間をかけてじっくり飲んでいくことで、良い部分を引き出せそうな変化も感じられました。
おそらくこのボトルの飲みごろは、開封後であれば1年以上後、開封していない状態であればもう5年くらいは先なのかもしれません。


2000年代初頭当時。あるいは、自分が飲み始めた頃からでも良いですが、この手のボトルは不遇な扱いを受けていたと思います。
モノは間違いなく良いのですが、消費者が少ないのと、さらに安価で長熟のモルトをリリースするボトラーズの存在もあったため、販売戦略は厳しい状況だったと思います。
そうしたエピソードから、今高騰するオフィシャル長期熟成品は、遅れて再評価されるある種の芸術作品のように思えてきます。

実際、メーカーハイエンドの作品が1~3万円程度で買えてしまうって、ワインとかだと考えられない。
それは良いものが相応に認められたとも見れますが、近年の相場を見ると・・・どこを相応とするかは難しいなあとも感じてしまいますね。なんというか、心中複雑です。

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