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タムデュー 27年 1961-1989 シグナトリー 45%

カテゴリ:
TAMDHU
Signatory Vintage
Aged 27 years
Distilled 1961
Bottled 1989
750ml 45%

グラス:木村硝子テイスティング
時期:開封直後
場所:持ち寄り会@KuMC
暫定評価:★★★★★★★(7-8)

香り:注ぎたてはややドライだが、熟したアプリコットや熟成させたリンゴ酢などを思わせる、角の取れた甘酸っぱいアロマ。厚みのある麦芽香と共に淡いスモーキーさを伴うふくよかな香り。

味:甘酸っぱい酸味を伴う口当たりから、林檎飴、微かに柑橘のニュアンスとおしろい系の麦芽風味。ボディはやや緩いが舌あたりには粘性があり、後半にかけて麦系の香味が主体に。余韻は古典的なトロピカルフルーツが微かなピートを伴い長く続く。

個性的な酸味とフルーティーさを感じるモルト。60年代らしさもある。樽はリフィルのシェリーホグスヘッド(アメリカンオーク)だろうか、微かなシェリー感にオークのニュアンスはあるが、樽が強く出過ぎず酒質ベースの香味が中心にある。突き抜けないが当時の麦の良さを感じさせてくれる通好みの1本。


マニア垂涎のボトル、というべきでしょうか。例えばボウモアやロングモーンの1960年代蒸留で高い評価を受けているリリースが垂涎であることは勿論そうなのですが、こういうメジャーすぎない蒸留所の60年代蒸留に心惹かれてしまうのもまた、コアユーザーの真理だと思います。
今回の持ち寄り会、何開けようかと主催のNS氏から問いがあった際、その場にいた参加者満場一致だったのがこのタムデューでした。

元々、ある程度飲んでいる飲み手は、タムデューなどの内陸系の麦系酒質の蒸留所に興味を持つ傾向が有ります。
また、スペック的な面で言えば、スコッチウイスキーの蒸留所の多くは、消費量が増大した1960〜1970年代にかけてモルティング設備を切り替えたり、蒸留器を新設したり、何らかの拡張工事を行っていることが多くあります。

タムデューもまた1972年(一説では1975年)にスチル増設工事を行っているわけですが、蒸留設備の拡張以外に製麦行程やマッシュタンなどを変えたという記録はありません。
そもそもタムデューは1940年代という早期にフロアモルティングからサラディン式のモルティングに精麦行程を切り替えており、後の時代で替わったのは樽と原料です。(ミドルカットなどの諸条件は勿論変更になっているとは思いますが。)
なにより麦由来の風味でどのような好ましい要素が出ているのか、楽しみなボトルでした。

その香味は加水で少しボディが軽くはあるものの、60年代らしいフルーティーさが備わっていることと、近年の長期熟成70年代とは違う、樽で押し付けたようなドライな香味ではない仕上がりが好印象。寿命はそう長いボトルではないと思いますが、一冬越えて3月の少し温かくなってきた時期に飲むとより美味しくなっているようにも感じました。

今回も素晴らしいボトルのテイスティング機会をいただき、ありがとうございました。

グレンマレイ グレンリベット 22年 ケイデンヘッド 1980年代流通 46%

カテゴリ:
GLEN MORAY - GLENLIVET
CADENHEAD
Black Dumpy Bottle
Aged 22 years
Distilled ??
Bottled ??
750ml 46%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:不明
場所:持ち寄り会@KuMC
暫定評価:★★★★★★(6-7)

香り:こなれた麦感を主体とした柔らかく芯のあるアロマ。藁小屋の乾燥したニュアンスをウッディネスに感じつつ、漬け込まれたはちみつレモンや熟したリンゴの蜜っぽい果実香。微かに土っぽいピーティーさもある。

味:香り同様の構成。こなれた麦感から干草、リンゴのコンポートなど角の取れた果実味に繋がる。奥行きがあって粘性を伴うマイルドな口当たり。
余韻はドライでほろ苦く、乾いた麦芽、ほのかなスモーキーさを伴う。

厚みのある麦感と蜜っぽいフルーティーさ、微かなピート。加水と経年でマイルドに仕上がった構成で、程よい熟成感も感じられる。特段突き抜ける味わいではないが、しみじみうまく、らしさのあるボトルである。


近年益々伝説のボトルと化しつつある、ケイデンヘッドの黒ダンピー時代。多くのリリースが行われたこととネットのない時代だったこともあり、困ったことに今回のボトルは海外サイト含めてこれでもかというほど情報がなく、蒸留年、流通年ともに不明という有様。。。

持ち寄り会でのテイスティング時にはフェイク疑惑すらあったボトルですが、飲んでみると少なくともオールドの内陸系モルトであることは間違いないという印象。熟成も年数表記相応に感じられて、グレンマレイか、最悪スペイサイドモルトであることは間違いなさそうです。
この他のスペックは、香味から察するに、樽はアメリカンオークのリフィルのシェリーバット。蒸留は1965年あたりのものではないかと予想します。

ケイデンヘッド社のリリースは、当時ドッカン系のシェリーバットが主体だった中で、今回のように樽感よりも酒質の個性を出していくような構成が、当時も今も愛好家に評価されてきた経緯があります。
マイルドで経年によってこなれた香味は、樽感程よく酒質由来の部分があり。その酒質ベースもロングモーンやベンリアックなどのトロピカル傾向ではない、スペイサイドらしい洗練された仕上がりが、らしいボトルだなと感じるのです。

クラガンモア 17年 マネージャーズドラム 62%

カテゴリ:
CRAGGANMORE
The Manager's Dram
Aged 17 years
Distilled 1974-1975
Bottled 1992
Cask type Sherry
750ml 62%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:KuMC@Bar Sandorie
時期:開封後1年程度
評価:★★★★★★(6→7)

香り:ハイトーンでスパイシー、かりんとうやローストした麦芽を思わせる香ばしい香り立ち、メンソールのアクセント。奥には杏子、あるいはレーズンを思わせるほのかなシェリー感があり、スワリングせずに様子を見ているとじわじわと存在を主張してくる。

味:スパイシーかつヒリヒリとしたハイプルーフ故の刺激を感じる口当たり。オールブラン、ローストした麦芽風味、ブラウンシュガーや微かに杏子のシロップ。余韻はハイトーンで長く続く。

マネドラ及びUDレアモルトによくあるパワフル&ハイトーン系。おそらくリフィルシェリーバットの熟成で、元々がバリッと硫黄の効いた樽だったのだのか、このボトルにも微かにその残滓が感じられる。加水するとトーンが落ち着き、オールドシェリー系の甘みが引き立つだけでなく、麦芽風味も開いて本領を発揮する。


マネージャーズドラムは、ディアジオの前身となるUD社が傘下の蒸留所の原酒を使って年1回ボトリングしていた関係者向けのシリーズ。一般には販売されておらず、お偉方の配るギフト用とか、あるいは今で言う社内向け販売みたいな、そんな感じの位置付けだったのかもしれません。

試みはDCLからUDへと移行した1980年代に始まり、蒸留所責任者がコンペを行って、100を越える原酒の中からノージング(ブラインド)で選ばれたものがボトリングされていたそうです。
毎年異なる蒸留所からリリースされ、しかも重複がないことから、全傘下蒸留所を対象としたコンペではなく、おそらく各蒸留所の持ち回りでカスクの選定が行われていたのでしょう。選び手の好みが反映されているのか、マネージャーズドラムはほとんどの蒸留所で、度数が高くハイトーン、まさに樽出しという構成となっています。

今回はボトラーズリリースが少ないクラガンモアであることに加え、蒸留時期的にも中々良いビンテージです。
樽は淡くオールドシェリー感が漂うタイプながら、ちょっと残念なのが硫黄の残滓がフルーティーさの邪魔をしていて、少し時間をかけて様子を見ながら飲んでいく必要があること。
ただし、この手のハイトーンなタイプはストレートより少量加水向きで、度数が50%前半くらいになる分量を目安に水を加えると、甘みが引き立つだけでなく、樽の裏に隠れていた麦感も開いて良い塩梅になると感じます。(あるいは開封から5年くらい経過したものか。。。)


このボトルはウイスキー仲間主催の持ち寄り会に、東京立川のBAR サンドリエのマスターが持参されたものを頂きました。
勿論同店でも提供されているボトル。他のマネージャーズドラムでは、リンクウッドやブレアソール、レアなところでグレンスペイなどもバックバーに開封されています。

ジョンベッグ ブルーキャップ 43% 1950年代流通 雑酒特級

カテゴリ:
JOHN BEGG
Blue Cap
Old scotch whisky
1950's
760ml 43%

グラス:木村硝子テイスティング
場所:KuMC@NSさん
時期:開封後1ヶ月程度
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:灰っぽさを伴う穏やかなスモーキーさ。乾いた麦芽、土っぽさ。スワリングすると蜂蜜やリンゴのコンポートを思わせる甘み、エステリーなアロマ。

味:マイルドでコクのある口当たり。こなれた麦芽風味、ナッツやポン菓子の品のいい甘みや香ばしさ。徐々に存在感のあるオールドピートが柔らかく染み込むように広がる。余韻はピーティーでほろ苦い。しっかりとスモーキーで長く続く。

オールドブレンドの醍醐味とも言える柔らかい口当たり、こなれたモルティーさとどっしりと染み込むようなピートフレーバーを堪能出来る。灰っぽさを伴うこれらの風味は、個人的にオールドのロッホナガーの個性。少量加水するとピーティーさが全体に馴染むように感じられる。


ロイヤルロッホナガー蒸留所の創業者ジョンベッグ氏が設立した、ブレンデッドウイスキーメーカー・ジョンベッグ社のスタンダード。ブレンドに使用する原酒の中核は勿論、自らが創業したロッホナガーです。
1800〜1900年代当時、ブレンデッドウイスキーが市場を拡大したとされる時代にあって、蒸留所とブレンドメーカーという体制構築は規模のある企業では自然な流れ。徐々に現在の雛形となる大規模グループ化が業界として進んでいくことになります。

同社はその流れの中で、デュワーズ社の傘下となった後、最大勢力たるDCL傘下に入り。最終的にはロッホナガー蒸留所を残して銘柄そのものは消滅してしまう訳ですが。。。日本における第一次ウイスキーブームの折には、美味いウイスキー銘柄の一つとしてウイスキー通の間で知られていたようで、今尚ファンの間で人気のあるブランドです。


近年、リユース市場で見られるロッホナガー関連のブレンドはVAT69が中心です。ジョンベッグは写真左の紺色のラベルに、エリザベス紋章(1970年代流通)か、チェック柄紋章の1980年代流通のモノがたまに見られる程度。アメリカ向けには2000年代くらいまでブルーキャップがあったようですが、日本国内では中々手に入らないブレンデッドの一つになりつつあります。

今回はそのエリザベス紋章のさらに前。恐れ多くもキングジョージ5世の紋章が光る、オールドラヴァー垂涎のボトル。
ただ、キングジョージ5世の在位は1936年までで、本来このボトルの流通時期である特級区分が設定された旧酒税法施行時、つまり1950年代のイギリス国王はジョージ6世か、戴冠直後のエリザベス2世。
これはジョージ5世のスコッチウイスキーに与えた影響の大きさからか、ジョージ6世のワラントはウイスキーで見ることはなく、1960年代にエリザベス紋章に切り替わるまでキングジョージ5世の紋章が使われ続けるケースが多かったようです。

今回のボトルはロイヤルロッホナガーそのもの、あるいはそれが使われたとされる銘柄に備わった、独特の麦芽風味とピートフレーバーがメイン。ですがその個性は70〜80年代流通と比べて遥かに強い存在感で、半世紀を超える経年からオールド特有のこなれた味わいも堪能出来る、まさしく通好みの逸品でした。

ローズバンク 11年 1980-1992 ケイデンヘッド 150周年記念 60.1%

カテゴリ:
ROSEBANK
CADENHEAD'S
AUTHENTIC COLLECTION
150th Anniversary Bottling
Aged 11 years
Distilled 1980
Bottled 1992
700ml 60.1%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後1ヶ月程度
場所:KuMC@NYさん
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:一瞬チョコレートクッキーやキャラメルアーモンドを思わせる甘いアロマを感じるが、すぐにハイトーンで鼻腔を刺激する鋭いエッジ、微かにメンソール。奥にはベリー系のニュアンスもあり、徐々に前に。樽の良さを感じる。

味:スパイシーで強いアタック。ドライベリー、チョコレートや黒砂糖、微かに青みがかったウッディネス。舌へのアタックは強く、ヒリヒリとした刺激が樽由来の甘みの後に続く。
余韻は程よくドライでビターだが、それ以上にハイトーンで強いキレ上がり。

良質なシェリー樽で圧殺した原酒。とはいえ、比較的若いうちにボトリングしたためか、シェリー感はリッチだが蒸留所の個性と言えるアタックの強さも残っている。少量加水すると多少樽と酒質の距離が縮まって一体感が増すものの余韻のキレは残る。


ボトラーズメーカーのケイデンヘッドが創業150周年を記念してリリースしていたオーセンティックコレクションシリーズの一つ。

同社からは昨年、175周年として様々なリリースが行われていましたが、この150周年のラインナップは長熟至上主義ではないというか、スコッチモルトでは70年代から80年蒸留で10〜20年熟成というマニアが唆るようなスペックが主体。
50年熟成近い不思議な味のタラモアとかも一部ありましたが。それこそこの時期なら60年代の原酒はまだまだ手に入る中で、原酒が潤沢だったというか、手探りだったというか、ウイスキー業界をにおける"時代"を感じる部分でもあります。

このローズバンクもその例に漏れず、11年熟成という短熟ハイプルーフでのリリース。
テイスティングの通り、3回蒸留原酒の鋭くハイトーンな香味が短熟ゆえに去勢されておらず、ファーストフィルシェリー樽と思しき濃厚な樽感が付与されていながら、それを酒質が突き破ってくるような感覚があり。このリリースの評価は、その若さというか、酒質とのバランスをどう捉えるかが大きいと思います。

自分はローズバンクというと、ちょっとやんちゃでキレの良いクリアな麦芽風味という印象から、このボトルはシェリー感に加えてそのらしさも一部感じられる点が面白いと思いますし、ボトラーズメーカー・ケイデンヘッドの1990年代ごろといえば、グリーンケイデンを筆頭にこういう酒質ピチピチのカスクストレングスが多かったですから、そういうらしさも備わったリリースだと感じています。

今回のボトルは、ウイスキー仲間の定例会、国立モルトクラブでテイスティングさせて頂きました。NYさん、いつも貴重なボトルをありがとうございます!

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