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長濱ウイスキーラボ ブレンディングセミナーで楽しむブレンドウイスキーの魅力

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長濱浪漫ビール(長濱蒸溜所)から、ゴールデンウイーク5月3日~5日の企画として、AZAI FACTORYでのブレンディング体験教室が告知されています。

先日紹介した発刻、祥瑞、グレンマッスル各種、そして現在進行形のいくつかの企画…。長濱蒸溜所関係者を除けば、長濱蒸溜所でのブレンドに最も関わっているのが自分です(たぶん)。
その経験から断言すると、ウイスキー愛好家がシングルカスクでオリジナルボトルを選定するのは浪漫である一方、ブレンドで自分だけのウイスキーを造るのは、浪漫以上に楽しさがある、最高の贅沢の1つ。はっきり言って、めっちゃ楽しいですよ。


長濱蒸溜所 AZAI FACTORY ブレンディング体験教室
5月3日:https://shop.romanbeer.com/view/item/000000000127
5月4日:https://shop.romanbeer.com/view/item/000000000128
5月5日:https://shop.romanbeer.com/view/item/000000000129

◇スケジュール
13時  長浜浪漫ビール集合
14時  ブレンディングセミナー開始
15時半 終了・小学校セラー見学
16時  長濱浪漫ビール着・懇親会


今回のブレンドセミナーは、滋賀県・長浜にある旧七尾小学校(廃校)を活用したAZAI FACTORYで行われます。
この設備は、校舎をウイスキーの熟成スペースに活用しつつ、理科室でブレンドセミナーを行う等、長濱蒸溜所の分室的な位置づけで2021年から整備が進められているもの。蒸留所からはkm単位で離れた場所にあることもあって通常は見学コースに含まれていないため、同蒸留所の熟成環境を見学できる機会でもありますね。

また、蒸留所に戻ってからの懇親会も、長濱蒸溜所見学における魅力の一つと言えるイベントであり、激しくお薦めです(笑)。
スケジュールとしては13時蒸留所集合、懇親会を経て19時ごろ解散であるとしても、東京から日帰りで参加出来るのもポイントです。

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※長濱蒸溜所 AZAI FACTORY 内部。どこか馴染みのある小学校の各種設備の中で熟成中のウイスキー。自分の小学校時代を思い出す懐かしさだけでない、ウイスキーに対する興味や高揚感、言葉で表せない不思議な感覚が湧き上がってくる。

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※AZAI FACTORYでの見学、ブレンド後は、長濱蒸溜所の見学と併設レストランでの食事。小規模であるため見学自体は小一時間で終了するが、食事は出来立て地ビールや長濱ハイボールと近江牛等を使った地元メニューで、通常訪問時でもついつい長居してしまう。


■長濱ブレンディングセミナーについて
これまで長濱蒸溜所は、現地以外に東京やオンラインでもブレンドセミナーを開催してきました。

なぜ長濱がブレンドかというと、同社のブレンデッドモルトウイスキーのAMAHAGANは、元々ブレンドの技術やノウハウを得るためにと位置付けられて発売されたところ。
様々なブレンドにトライし、リリースを重ねるうちに世界的なコンペでも評価され、まさに看板商品にもなったわけですが、そうした経緯からブレンドの可能性や面白さをもっと知ってほしい、そのためには実際に経験してもらうのが一番と考えたからなんですよね。

今回の記事はむしろこちらがメイン。過去のブレンディングセミナーの様子をまとめ、セミナーがどんなイメージで行われるのか、そしてどのようなウイスキーが出来るのかを紹介していきます。

※ご参考:自分のウイスキー仲間2名も、長濱ブレンドセミナーの記事や動画をUPしています。
ブログ:長濱蒸溜所のブレンド体験セミナーへ参加してきました @K67
https://k67malts.wordpress.com/2022/01/24/nagahama_blend_semi/

動画:ウイスキーのブレンド体験してきた【長濱ウイスキーラボ】@ランプちゃん
https://youtu.be/KlUGlm9WfEY

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長浜ウイスキーラボでのブレンディングセミナーは、同蒸留所の屋久ブレンダーが講師となって、蒸留所側で用意した6種類の原酒を使ったブレンドを実体験するだけでなく、作成したブレンドはお土産として持ち帰って楽しむことが出来ます。

セミナーでの基本的な原酒構成は、
・ハイランドモルト5年(ノンピート)
・ハイランドモルト8年(ノンピート)
・ハイランドモルト8年(ピーテッド)
・スコッチグレーン
ここに、長濱蒸溜所のモルト原酒(ワイン樽やシェリー樽など)と、その日のスペシャルウイスキーが1つ加わって、6種類の原酒が準備されています。
スペシャルウイスキーは何が出てくるのかわかりませんが、自分の時は約30年熟成のスコッチウイスキー。他には1982年蒸留のグレーンウイスキー等もあったようです。


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ブレンドするためには、そしてどんなレシピを作るかを考えるには、まず各原酒の個性を知らなければなりません。
セミナーの初めは、屋久ブレンダーからの説明を聞きつつ、用意されている各原酒をテイスティングするところから始まります。少量といっても6種類ありますので、この時点で飲みすぎないように注意です。なぜなら、この後ブレンドが始まると、試作品の確認としてさらに飲むことになるからです(笑)。

一通り試飲が終わったら、配られているスポイトを使ってグラスから原酒を吸い取って、自分のイメージするブレンドを作っていきます。(足りなくなった原酒は、その都度足してもらえます)
ウイスキー原酒には、混ざりやすい原酒、混ざりにくい原酒、その個性によって様々なタイプがあります。長濱蒸溜所が用意している原酒は比較的混ざりやすいモノが多く、難易度としては入門向けに抑えられていると言えますが、それでも基本は抑えないと取っ散らかったブレンドが出来てしまいます。

その基本はセミナーで屋久ブレンダーから説明があると思いますので、ここでは省略しますが、他にも味に深みや奥行きを出すためには、同じ方向の香味の原酒だけではなく、あえて真逆の香味のモノを少量使ってみるとか、グレーンウイスキーについてもその熟成感と香味に応じて使う量を調整したりとか。。。

例えば、ピートが苦手だからと、フルーティー系の原酒だけで仕上げようとするより、ほんの少しだけピート原酒を加えたほうが、フルーティーさが引き立ったり。モルティーなウイスキーを作ろうとする場合でも、100%モルトにするより、5~10%はグレーンを使ったほうが、口当たりの滑らかさと香味の膨らみがギャップとなって、逆に味わい深いウイスキーに仕上がるのです。

6種類の原酒でのブレンドでも、組み合わせはとてつもない数となります。きっと夢中になって作って飲んでを繰り返した結果、ウイスキーが出来上がるのが先か、自分が出来上がるのが先か、そんな状況になるんじゃないかと思います。

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冒頭書いたように、ブレンディングセミナーの最後は、作成した自分のレシピでお土産用のブレンドを作ってもらうことが出来ます。
ブレンドしたばかりのウイスキーは完全には馴染んでおらず、日を置いて飲んでみると、また違った表情を見せてくれるのがブレンドの奥深さであり、難しさでもあります。そこまで経験して、セミナーが完了するとも言えますね。

そして過去には、セミナーで参加者が作ったレシピをベースにしたウェビナーエディションがAMAHAGANからリリースさたりもしましたが、作成したウイスキーを参加者同士で交換してみると更に面白さが広がります。

私も上述の知人2名と、自分の作品を交換してテイスティングしてみました。
K67さんはモルティーでバランス寄りのブレンドだけど、ピートの扱いに苦労したんだろうなーとか。ランプさんはマイルドでメロー、随分グレーン寄りのブレンドにしたんだなとか。単に味わいだけでなく、原酒や工程を知っているからこそイメージできる景色があります。
イベント参加にあたっては小瓶を用意しておいて、懇親会で知り合った方々とブレンド交換をしてみるのも良いかもしれません。

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今回の記事は、別に長濱蒸溜所から依頼を受けて書ているわけではなく、純粋にこの企画が楽しいと感じての紹介になります。
最近は各種シングルモルトのリリースに加え、キリンの陸など、ブレンドに必要なハイプルーフの原酒が手に入りやすくなりました。ウイスキーの楽しみ方はもっと自由であっていいと、度々ブログやツイッターで発信してきた自分としては追い風を感じる状況ですが、その楽しみ方の1つ、ブレンドについて学べるセミナーは貴重な機会です。

今回のイベントでは、日々進化を続ける長濱蒸溜所について知ることが出来るのは勿論、ウイスキーそのものについても、ブレンドの奥深さを経験して新しい楽しみ方を見つけることが出来ると期待しています。
視野が広がるというと大げさかもしれませんが、きっとウイスキーライフの充実に一役買ってくれると思いますよ!

お酒の美術館 祥瑞 & 発刻 オリジナルブレンデッドウイスキーのリリース

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全国にBARチェーンを展開する”お酒の美術館”から、同社初となるプライベートボトル、ブレンデッドウイスキー祥瑞(しょうずい)発刻(はっこく)が、各200本限定でリリースされます。
ウイスキー原酒の提供、製造は長濱蒸溜所。ブレンダーはくりりんが務めさせて頂きました。
※いつものように、趣味の活動の一環としての協力であり、売り上げや監修料といった報酬は一切受け取っておりません。

どちらのウイスキーも、長濱蒸溜所のモルト原酒、同社が輸入したスコッチグレーン、スコッチモルトを用いたブレンデッドウイスキー。
祥瑞は入門向けのブレンドであり、軽やかでフルーティーな、わかりやすさを重視した味わい。
発刻は愛好家向けのレシピであり、どっしりとスモーキーでシェリー樽原酒の効いた濃厚かつ複雑な味わいが、それぞれ特徴となっています。

また、祥瑞は47%に加水調整して飲みやすさを重視し、ウイスキーに馴染みのない方でもロックやハイボールで気軽に楽しんで貰う確信とをイメージして、価格もその分控えめに。
一方で発刻は加水調整をしていない、58%とハイプルーフ仕様のブレンド。シェリー系でヘビーピートという愛好家が好む、ちょっと尖った仕上がりをイメージしてブレンドしました。

ラベルやブランド名についてはお酒の美術館側で作成されており、私は一切タッチしていませんが、ラベルには源氏物語絵巻が用いられ、日本的な雰囲気と共に複数枚で1つとなる構想が。祥瑞は吉兆を、発刻は始まりを意味する単語であり、お酒の美術館のPBシリーズがこれから始まる、その行く先が明るいものであることを期待したネーミングとなっています。

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企画が動き出したのは昨年末。。。そうなんです、動き出してから半年経ってないんです(笑)。自分も大概ですが、この会社のスピード感ヤバいですね。
制作にあたり「1本は入門向けで、1本は愛好家向け、価格は同店の提供価格帯から外れないもの」という指定は受けていました。そして「後はくりりんさんに任せます」とも。
いち愛好家にすぎない自分を信頼頂いた、とても光栄な申し出ではあるのですが、酒美常連として変なものは作れませんし、責任も重大です。

だってコロナ明けで昔のように気軽に夜出歩くようになった時、自分のブレンドがいつまでも減らずに残っていたらと思うと…ぞっとします。
ただ今回、原酒を提供いただくのは長濱蒸溜所です。勝手知ったるとは言いませんが、これまでPBで何度もお世話になっているので、企画の進め方や原酒の個性を掴みやすいのは有り難かったです。(長濱蒸溜所からも、自分の起用を推薦してくださったとも聞いています。)

ということで、連絡を頂いてから速攻で伊藤社長&屋久ブレンダーに連絡をとり、コンセプトに自分のイメージを加えて原酒のピックアップを依頼。
ここも早かったですね、1週間程度でモルト、グレーン、10種類の原酒が揃う長濱蒸溜所のスピード感。入門向けで3種、愛好家向けで3種、計6種のレシピを作成し、屋久ブレンダーとも相談しながら、加水やレシピの微調整を実施。
最終的にどれをリリースするか、そもそも企画を進めるかは、お酒の美術館にお任せしました。

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(今回のブレンドの原酒候補。ここにもう一つ加わって10種類のモルト・グレーンウイスキーからレシピの模索を行った。)

結果、選ばれたレシピのキーモルトとなっていたのが、どちらも写真右側の1本、ラインナップの中で異彩を放つ濃厚なシェリー樽熟成原酒(長濱蒸留モルト)です。
また左側にある色の薄いモルトウイスキーは、リフィル系の樽構成ながらフルーティーでモルティーな味わいが魅力的。ここに20年熟成のグレーンウイスキーを加えて、祥瑞と発刻の主要構成原酒となっています。

この3種の原酒だけなら2つのレシピの香味はそう変わらないところ、ここがブレンドの面白さです。
これらをベースとして、長濱蒸溜所のヘビーピート原酒や、熟成輸入原酒など、他に使用した原酒の比率や個性で、味わい、熟成感、全く違うスタイルにが仕上がったのは記載の通り。軽やかでフルーティーな祥瑞、リッチでピーティーな発刻。是非、飲み比べもしていただけたら嬉しいです。

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THE SHOZUI 
BLENDED WHISKY 
“Sherry & Fruity”
Malt 90 : Grain 10
Blender Kuririn
Bottled by Nagahama Distillery
700ml 47%


乾いた麦芽香にケミカルなフルーツ。洋梨、シトラス、パイン飴。軽やかなフルーティーさが香味の主体で、奥にはホームパイのような香ばしいモルティーな甘さも感じられる。
余韻は軽いスパイシーさとメローな甘み、染み込むようなフィニッシュ。
飲み方はなんでも。個人的にはスターターな1杯。ハイボールで気軽に飲んでほしい。

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THE HAKKOKU
BLENDED WHISKY
“Sherry & Peaty” 
Malt 90 : Grain 10
Blender Kuririn
Bottled by Nagahama Distillery
700ml 58%


燻製チップ、ベーコン、BBQソースを思わせる、スモーキーで香ばしく甘いアロマと、ピーティーでリッチなシェリー感を伴う口当たり。ドライプルーンや濃くいれた麦茶、奥にはエステリーな要素もほのかに混じる。
余韻はスパイシーでビター。どっしりとしたスモーキーフレーバーが長く続く。
飲み方はストレートか少量加水で。

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記事のまとめとして、お酒の美術館の近況について。
同BARはリサイクル業等いくつかのビジネスを行っていた、株式会社のぶちゃんマンが運営する事業の一つです。
同社はバブル期や第一次洋酒ブームで輸入されたウイスキー、つまりリユースのオールドボトルを使ったBAR事業に注目し、2017年に京都に1号店(三条烏丸本店)を開店。その後2018年には神田店を、さらには日本各地にフランチャイズ店を展開し、2022年4月1日には銀座店(写真上)も出店されています。

1コインから手軽にウイスキーが飲めるというコンセプトや、駅地下商店街、コンビニ等と提携し、独自の経営システムを構築することで、現在は日本全国で約40店舗と、とてつもないスピードで成長を続けています。
その独自システムの1例がフード提供です。同BARは大半の店舗で「持ち込み自由」であり、中には3月に開店した関内マリナード店のように、近隣飲食店のメニューが置かれて注文が取れる店舗や、「ファミチキ専用ハイボール」なんてメニューがある店舗まで。
下町の個人経営の飲食店とかだとたまに見るシステムですが、全国チェーンでってのは珍しいですよね。

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一方で、急拡大するお酒の美術館には、スタッフのバーマンとしてのスキルが未熟であるとか、オールドボトルの状態良し悪しの見分けがつかないとか、人材的な問題点を指摘する声もあります。
勿論同社として研修は行っているようですが、ただでさえ人材の乏しい業界で、これだけの急拡大。速成教育の弊害というか、既存のオーセンティックBARに比べたら、いわゆる安かろう悪かろうに見えてのことだと思います。

ですが、中にはしっかりとしたスキルを持たれている方も居ます。元神田店の店長で、現在銀座店でカウンターに立つ上野さんはその代表。ウイスキーの状態判断はもちろん、カクテルも銀座にあって恥ずかしくないレベルのものを提供されています。

じゃあその上野さんも神田店開店の3年前はどうだったかというと、同BARの強みであるオールドボトルの知識は走りながら学ばれてきたというのが嘘偽りないところだと思います。現在は銀座店でワインやシャンパンも多く扱うようになったので「勉強しないと…。」と悩まれていましたが、これもすぐに立ち上がるんじゃないでしょうか。
他の店舗でも、20歳ちょっとで入ってきた若手が、1年後には範囲こそ限定的ながらバリバリにオールドブレンドを語れるくらいに成長していたり。同店から別なBARに転職し、その知識を使って看板的な立ち位置を掴んでる人も。
無茶振りってのもある程度までは有効で、環境は人を育てるんだなと感じます。

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お酒の美術館は気軽にお酒を楽しめる分、足りないものはお客が補うくらいでちょうどいいと、私は考えています。
そしてお客がもたらす知識や情報を、現場のスタッフが吸収して、気がつけばお店として独自の空気、スタイル、魅力を身に纏っている。お店としては開店時点でタネが植えられているような状態で、何がどう育つかは環境次第という、そんなイメージがあります。

その意味で、今回リリースされたお酒の美術館初のオリジナルウイスキー「祥瑞」と「発刻」は、経験こそあれどアマチュアであるお客の1人にブレンドを任せるというのが、お酒の美術館らしい企画と言えるのかもしれません。
であれば、私もこのウイスキーのブレンダーとして、皆様からいろいろ意見・感想を伺いたい。そして、お酒の美術館だけでなく、あるかもしれない次の企画に向けて、実績の一つとしたい。
そう、気がつけば今年は既にT&T TOYAMAのTHE LAST PIECEとで、4種類のブレンドに関わっているんですよね。愛好家兼フリーのブレンダー、新しいじゃないですか(笑)。

改めまして、貴重な機会を頂き感謝の念に耐えません。このリリースが、お酒の美術館にとっても、私にとっても、吉兆であり、将来に向けて動き出す後押しとなることを祈念して、本記事の結びとします。

ザ ラストピース ワールドエディション Batch No,1 50% T&T TOYAMA

カテゴリ:
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THE LAST PIECE 
T&T TOYAMA 
BLENDED MALT WHISKY 
World Edition Batch No,1 
Blender: T&T TOYAMA(INAGAKI TAKAHIKO, SHIMONO TADAAKI),KURIRIN  
One of 800 Bottles 
700ml 50% 

評価:―(!)

香り:華やかでナッティな香り立ち。アプリコットジャムや熟した林檎を思わせるフルーティーな甘み。オーキーで程よいウディネス、ハーブのアクセント、ほのかにスモーキー。

味:フルーティーでしっとりと甘い口当たり。林檎の蜜、甘栗やカステラ、麦芽風味。香り同様に熟成感があり、一本芯の通った複雑な味わい。余韻にかけて香味の広がりを感じられ、微かにピーティーで華やかなオーク香が鼻腔に抜ける。

香味とも華やかでフルーティーだが、キラキラと派手なタイプではなく、しっとりとして色濃く奥ゆかしいタイプ。奥には黄色系フルーツ、麦芽風味、特徴的なピートなど、クラフト原酒由来の個性も感じさせる。
イメージとしては、THE LAST PIECEのジャパニーズエディションに熟成感を増して、完成度を追求したレシピ。日本とスコットランドの個性が織りなす、日本だからこそ作ることができるウイスキー。ストレート、少量加水、あるいはロックでじっくりと楽しんで欲しい。

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先日、T&T TOYAMAから発表された「THE LAST PIECE」のワールドブレンデッド版です。
先日レビューを更新したジャパニーズエディションは、国内5ヶ所のクラフト蒸留所原酒100%のジャパニーズウイスキー。ワールドエディションは、構成比率の過半数以上がクラフト産原酒で、そこに輸入原酒をブレンドしたブレンデッドモルトウイスキーとなります。

発売は若鶴酒造が運営する私と、ALC.を中心に、4月19日(火)から。
先行する形で、4月1日(金)から購入希望の抽選受付が開始されます。
「個性のジャパニーズ、完成度のワールド」、ブレンダーの一員として、その実現を目指したブレンドです。企画の背景、概要、販売方法に関する情報は以下をご参照ください。

公式プレスリリース:https://www.wakatsuru.co.jp/archives/3198
リリース告知記事:https://whiskywarehouse.blog.jp/archives/1080141305.html


※私と、ALC.抽選販売受付:2022年4月1日12:30〜2022年4月11日23:59

https://wakatsuru.shop-pro.jp/?pid=167372090


改めて構成原酒を記載すると
・江井ヶ嶋蒸溜所 ライトリーピーテッド
・桜尾蒸溜所 ノンピートモルト
・三郎丸蒸留所 ヘビーピーテッドモルト
・長濱蒸溜所 ノンピートモルト
・非公開蒸留所 ノンピートモルト
・スコッチモルト(国内追加熟成)

クラフト原酒は全て3年熟成でバーボン樽熟成。スコッチモルトは熟成年数非公開ですが、バーボン樽以外に、シェリー樽、リフィル樽等での熟成品が用いられており、一部原酒は国内で追加熟成を行ったものが使われています。

追加熟成を経たスコッチモルトは、もともとあったスコッチモルトらしいまとまりのある穏やかな酒質に、日本的な樽感が加わって熟成感も増した仕上がり。こうした原酒の存在は、個性をまとめ上げる繋ぎとして有用である一方、その原酒に頼るだけではワールドの意味がありません。
国産原酒の個性を主として残しつつ、全体の完成度を高めるにはどうするべきか。正直、ジャパニーズのレシピ以上に悩ましく、かけた時間、試作数も多くなりました。
【補足】各原酒の個性はリリース告知記事の後半に記載→こちら

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しかしワールドブレンドというと、あまり良く無いイメージを持つ方もいらっしゃると思います。
それはブームに乗って利益を得るために、安価な輸入原酒で水増ししたリリース。つまりパッションやストーリーのない、嗜好品としての重要要素を満たさないリリース、というイメージに起因しているのでは無いでしょうか。

確かに、そうしたウイスキーの存在は否定できません。しかし本来スコッチウイスキーは美味しいものであり、日本では作り得ない原酒が数多くあります。(あるいは日本でも作れるかもしれないが、膨大なコストがかかるケース。)
例えば長期熟成原酒がそうです。
ワールドブレンドは、日本でしか作れない原酒と日本では作れない原酒、それらの良い点を引き出すことで、これまでにないウイスキーを作ることが出来る、可能性に満ちたジャンルでもあるのです。
活かすも殺すも、造り手次第というわけですね。

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THE LAST PIECEをリリースする、ボトラーズメーカー「T&T TOYAMA」は、日本のクラフト蒸溜所が、将来単独でリリースを行っていくのではなく、他の蒸留所と連携する可能性を見出せるよう、蒸留所間のハブとなることを目標の一つとしています。
一方で、同社はスコッチモルトも海外メーカーから買い付けてリリースしており、ニンフシリーズやワンダーオブスピリッツがその代表作です。つまり、日本、スコットランド、どちらにも繋がりを持つメーカーと言えます。

であるならば、THE LAST PIECEのワールドエディションは、ジャパニーズの個性感じさせつつ、スコッチウイスキーのいいところも活かした、T&T TOYAMAらしいリリースに仕上げたい。
2つのリリースを飲みくらべることで、なるほどこれが日本の個性か、これがスコッチモルトの熟成感かと、愛好家に伝わるような美味しいウイスキーに仕上げたい。
果たしてその狙いは達成されたのか、限られた条件の中で可能な限り高い点数を目指したワールドエディション。楽しんで頂けたら幸いです。

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以下:余談
4月1日から開始される、私と、ALC.での抽選販売受付は、稲垣代表の趣味趣向が色濃く反映された、激ムズクイズが用意されています。
私と、ALC.抽選販売受付ページ:

https://wakatsuru.shop-pro.jp/?pid=167372090


公開されている4蒸留所とT&T TOYAMAからそれぞれ1問、計5問が選択式で出題されます。
誤解のないように補足すると、正答率が高い人から抽選で選ばれるのではなく、正答率が高いと当たりやすくなる、当選確率がプラス補正されるものです。全問正解でもハズレる可能性があり、正答率が低くても当たる可能性があります。
そんなわけで、これはちょっとしたゲームです。各蒸留所について調べる機会だと捉えて頂き、ぜひ奮ってご参加いただければと存じます。(難しい問題と思うかもしれませんが、冷静に選択肢1つ1つを考えてみてくださいね。)

ザ ラストピース ジャパニーズエディション Batch No,1 50% T&T TOYAMA

カテゴリ:
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THE LAST PIECE 
T&T TOYAMA 
BLENDED MALT JAPANESE WHISKY 
Japanese Edition Batch No,1 
EIGASHIMA, SAKURAO, SABUROMARU, NAGAHAMA…and SECRET DISTILLERY 
Blender: T&T TOYAMA(INAGAKI TAKAHIKO, SHIMONO TADAAKI),KURIRIN  
Cask type Bourbon Barrel 
One of 300 Bottles 
700ml 50% 

評価:―(!)

香り:トップノートは黄色系のフルーティーさ。注ぎたてはドライだが徐々にお香の煙のように柔らかく香る。パイナップルや柑橘、ハーブ、パンケーキを思わせる甘さと軽い香ばしさ。フルーティーさとモルティーな甘みにスモーキーなアロマがまじり、複層的なアロマを形成する。

味:膨らみがあってモルティーな口当たり。熟したパイナップルを思わせる甘み。合わせてほろ苦い麦芽風味とウッディネス、軽いスパイスと微かに干草。じわじわと存在感のあるピートフレーバーが顔を出し、スモーキーでビターなフィニッシュが長く続く。

熟成年数以上にまとまりがあり、若さを感じさせないフルーティーでスモーキーな構成。バーボン樽のオーキーなフレーバーと、各蒸留所の個性がパズルのピースのように組み合わさり、それぞれが主張しながらも1つにまとまっている。わずか3年熟成の原酒だけで、これだけのウイスキーを作ることができる、クラフトジャパニーズの将来に可能性を感じる1杯。テイスティンググラスでストレート、または少量加水をじっくりと楽しんでほしい。

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先日、T&T TOYAMAからリリースが発表された「THE LAST PIECE」。
世界初となる日本国内5か所のクラフト蒸留所の原酒を用いたブレンデッドモルトウイスキーで、ジャパニーズ仕様とスコッチモルトを加えたワールド仕様、2つのリリースが予定されています。
本リリースは、2022年4月1日(月)から購入希望者の抽選受付を開始し、2022年4月19日(火)発売予定となります。企画の背景、概要、販売方法に関する情報は以下をご参照ください。

公式プレスリリース:https://www.wakatsuru.co.jp/archives/3198
リリース告知記事:https://whiskywarehouse.blog.jp/archives/1080141305.html


※私と、ALC.抽選販売受付:2022年4月1日12:30〜2022年4月11日23:59

https://wakatsuru.shop-pro.jp/?pid=167372090



日本国内の蒸留所の数は、建設が予定されているものを合わせると50か所、60か所と増え続けている一方で、単独で様々なウイスキーをつくるのは限界があります。
スコットランドでは、ブレンドメーカーやボトラーズメーカーが多数存在し、原酒のやり取りが当たり前にあり、中にはブレンド向け蒸留所として位置付けられている蒸留所もあります。それらが一般的ではない日本においては、今まさにその可能性が模索されている状況にあり、今回のリリースは日本のウイスキー産業に新しい事例、選択肢を作ることが出来たと言えます。

また、T&T TOYAMAはこちらも世界初であるジャパニーズウイスキーボトラーズであり、現在富山県内にウェアハウスの建設と、各蒸留所からの原酒の調達を進めています。
そのT&T TOYAMAとして初めてリリースされるジャパニーズウイスキーが「THE LAST PIECE」であり、まさにどちらも先駆者、世界初尽くしのリリースとなっています。

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今回、そんな記念すべきリリースにおいて、ブレンダーという大役を頂きました。
私はあくまで趣味としてウイスキーを楽しんでいる愛好家でしかありません。ならば、今回のブレンドはT&T TOYAMAの2名が生産者、販売者なら、自分は愛好家という立ち位置から求めている味わいを提案していこうと、原酒選定やレシピ構築のテイスティグ、ディスカッションに参加しています。

しかしこれまでブレンドレシピ構築は10リリース以上関わっていますが、今回はとにかく難しかったですね。
まず全ての原酒がバーボン樽熟成で、そしてどれも3年以上ながら短期間の熟成であったということ。
ブレンドにおいては、グレーン、あるいはシェリーやワインのような甘く濃い樽感など、モルト原酒の強い風味の間を繋ぐ要素の有無がポイントになります。
例えるなら、蕎麦打ちで言うところの小麦粉のような存在。今回はそれらの要素が一切無いなかで、バランスをとっていかなければなりませんでした。

また、今回使用した原酒と蒸溜所は
・江井ヶ嶋蒸溜所 ライトリーピーテッドモルト
・桜尾蒸留所 ノンピートモルト
・三郎丸蒸留所 ヘビリーピーテッドモルト
・長濱蒸溜所 ノンピートモルト
・非公開蒸留所 ノンピートモルト
という組み合わせ。
若い原酒であることも後押しして、それぞれがはっきりとした個性を持っていることも、各蒸留所においては強みである一方、ブレンドにおいては難しさに繋がりました。

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三郎丸のヘビーピートモルトのような、強い個性を主体としてブレンドを構築するのは解決策の一つなのですが、これはピートフレーバーで他の蒸溜所の個性を圧殺する構成であり、せっかく5か所の蒸留所の原酒をブレンドする意味がなくなってしまいます。
従って三郎丸蒸留所の原酒をガッツリ使うわけにはいかず、そうなると先に書いたようにバランスの問題が出てしまう…。

そうして調整を繰り返して仕上がったのが、今回のブレンドとなります。
三郎丸蒸留所のオイリーでどっしりとした酒質、ピートフレーバーを底支えにして、江井ヶ嶋蒸溜所の軽やかなスモーキーさ、桜尾蒸留所のフルーティーさ、長濱蒸溜所の柔らかいモルティーさ、そこに非公開蒸留所の個性と酒質がエッセンスとなったレシピ。

自分が”ジャパニーズブレンドらしさ”として考える、「十二単」のような艶やかで雅な雰囲気…とまではいかないものの、各蒸留所の個性が重なり合い、共演しつつも、まとまりのある味わい。パズルで最後のピースがはまり、一枚の絵画として新しい世界が広がった瞬間。まさに「THE LAST PIECE」の銘に相応しいリリースに仕上がったと感じています。

ちなみに、スコッチモルトを用いたワールド仕様のレビューも後日実施する予定ですが、そちらは純粋な美味しさ、ブレンドとしての完成度を見て貰えたらと思います。これも、様々な原酒を使うことが出来る日本のウイスキーだからできる、ウイスキー造りの方向性の1つです。
本リリースがジャパニーズウイスキーの将来に向け、新しい可能性に繋がることを期待しています。
→ワールドエディション Batch No,1のリリースレビューはこちら

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ザ ラストピース ブレンデッドモルトのリリースとスペース放送告知(4/1~ 抽選受付)

カテゴリ:
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ジャパニーズウイスキーボトラーズT&T TOYAMAから、世界初となる国内5箇所のクラフトウイスキー蒸留所の原酒を用いたブレンデッドモルトウイスキー「THE LAST PIECE」がリリースされます。

THE LAST PIECE 
BLENDED MALT WHISKY 
Japanese Edition Batch No,1 700ml 50% (限定300本)
World Edition Batch No,1 700ml 50% (限定800本)

Blender: TAKAHIKO INAGAKI, TADAAKI SHIMONO, KURIRIN 
Bottled By T&T TOYAMA 
発売時期:2022年4月19日(火)予定

※公式ニュースリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000052.000031708.html

※リリース記念スペース放送
3月28日(月)21:00〜
配信URL:https://twitter.com/i/spaces/1lPKqmZeDanKb
スピーカー:T&T TOYAMA(稲垣貴彦、下野孔明)、くりりん
参考資料:本記事後半に記載

・江井ヶ嶋蒸溜所
・桜尾蒸溜所
・三郎丸蒸留所
・長濱蒸溜所
・非公開の国産蒸留所
世界初となる計5蒸留所の原酒を用いた、ブレンデッドモルト ジャパニーズウイスキーです。
また、これらの原酒に国内で追加熟成したスコッチモルトを加えた、ワールドブレンドも同時にリリースされます。販売は若鶴酒造のALCで、抽選販売(4月1日12:30受付開始、クイズ有り)を中心に行われる予定です。

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※3月25日に行なわれた記者会見風景。ニュース動画はこちら

公式発表にもありますように、くりりんがブレンダーの一員として参加させていただきました。(これまで同様に、監修料や販売にかかる利益等報酬は受け取っておりません。)
計画自体は1年以上前からT&Tの2名を中心に動いており、それこそ交換する原酒の選定などにも関わらせて頂いたところです。
ブレンダーとしての参加は、自分のテイスティング能力とこれまでのリリース実績等を評価いただいたとのことですが、本当に凄い経験をさせて貰いました。

リリースにあたっては、タイトルにもあるようにT&T TOYAMAの2名と当方でスペース放送を実施して、改めて企画の説明や狙い、そして裏話等をさせて頂きます。
例えば、ブランド名であるTHE LAST PIECEの由来にもなっている、ブレンドのトライ&エラーです。

今回の原酒は全て光るものがあり、今後の成長も見込めるものでした。しかしそれはあくまでシングルモルト、シングルカスクとしてリリースする場合であり、今回のようにブレンドするとなると、豊かな個性は必ずしもプラスにならない場合があります。
しかもジャパニーズエディションの構成原酒は、全て3年熟成でバーボン樽原酒です。シェリー樽の濃厚な香味でバランスをとるような事も出来ません。かといって、ピートを強くしすぎると他の原酒の個性が死んでしまう。とにかくバランスをとるのが難しかったですね。

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(ブレンド風景。ジャパニーズ、ワールドとも日本のクラフト蒸留所のポテンシャルを感じる事ができるレシピに仕上がった。)

THE LAST PIECEは、各蒸留所の個性をパズルのピースに例え、パズルが1枚の絵画となる瞬間、全く新しい魅力をもったウイスキーが誕生することをイメージしています。
各蒸留所の原酒の個性、混ぜ合わせたときの表情、ブレンドにおける最後の1ピースはどこにあるのか…。リリースを楽しみにしてもらえるようなエピソードを、スペースやブログ記事を通じて紹介していきたいと思います。

なお、本日3月25日はリリースに向けての記者発表が行われたわけですが。3月26日、27日のウイスキーフェスティバルでは、ブレンド直後のサンプルをT&T TOYAMAブースで同プレミアム会員のみに試飲提供するそうです。
気になる方は、ピンバッチをお忘れなく!

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※以下、スペース放送用参考資料※
THE LAST PIECE の紹介と、構成原酒を提供頂いた蒸留所に関する所感を以下の通りまとめます。
共通しているのが、若い原酒ながら熟成年数以上にまとまりがあり、どれもレベルが高いということです。
「またまた、忖度してるんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、厳しめに見たとしても、どの蒸溜所の原酒もスコッチウイスキーで言うところの10~15年熟成程度のクオリティはあるものと感じています。

放送では、それぞれの原酒に感じた印象、ブレンドに使ってみた際の変化等も伺ってみたいと思います。そのため、原酒調達にあたって各蒸留所を回られたT&T TOYAMAの2人に私が色々質問をして、話を聞いていくような流れをイメージしています。


■THE LAST PIECEについて
ブランドネーミングの由来は上記の通りですが、少し異なる視点の話を記載します。
2021年にジャパニーズウイスキーボトラーズ事業を始めたT&T TOYAMAは、日本のウイスキー産業においてハブとなる存在を目指すという目標を持っています。
ジャパニーズウイスキー約100年の歴史(山崎の創業を起点とした場合)のなかで、日本には作り手がおり、蒸留所があり、それをリリースする酒販店も充実しています。しかし、スコットランドのように各蒸留所と繋がりのあるブレンドメーカー、ボトラーズメーカーが存在せず、また法律的な制限もあって、それらは非常に縦割り的で、組織を越えた横の繋がりは殆どありません。

これまでの時代であれば大手3社を中心に様々なウイスキーがリリースされ、少数のクラフトメーカーが尖ったリリースで愛好家を賑わす、そんなビジネスモデルが成立したところ。しかし今やそのウイスキーメーカーの数は創業予定のものを含めると60社を超える状況です。

如何に複雑な香味を持つウイスキーと言えど、そこまで多様性のあるものは出来ませんし、商品の製造だけでなく販売、広報にかかるコストは馬鹿になりません。
共存共栄を図って日本のウイスキー産業を更に大きなものとしていくためには、各社の間を繋ぎ、リリースを通じたPRも行う”ハブとなるメーカー”、つまりブレンドメーカーやボトラーズメーカーが業界におけるラストピースとなっています。

T&T TOYAMAには4月上旬完成予定の熟成庫があり、ここで原酒の熟成は行われていきます。
そして各クラフト蒸留所と連携し、交換、調達した熟成原酒を用いたリリースの第一歩が、「THE LAST PIECE」。彼らが目指す日本のウイスキー産業に込められた想いが結実した、ブレンデッドウイスキーであると言えるのです。

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Japanese Edition Batch No,1 700ml 50% (限定300本)
各クラフト蒸留所、3年以上熟成原酒をバッティング。

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World Edition Batch No,1 700ml 50% (限定800本)
各クラフト蒸留所の原酒を構成比率で半分以上使用。スコッチモルトは日本国内で追熟したものをブレンド。

■ラベルデザインについて
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ラベルデザインは、各蒸留所の個性がつながり、調和することをイメージして、日本の伝統工芸の一つである組子(くみこ)をモチーフに使用しています。
また、その組子の配置は細胞やDNAをイメージさせるようでもあり、これもまた繋がりと、そしてその繋がりが増えていくことで、新しい日本のウイスキーを形成することも意味として込められているそうです。

最初はパズルのピースでラベル案を作ったんですが、気がついたらめちゃくちゃスタイリッシュでカッコ良くなってました。やはりプロの技術は凄いですね。
組子は様々なデザインがあるので、今後リリースが続く場合はラベルは色違いだけでなく、異なる組子のデザインを用いていくそうです。

■構成原酒と蒸留所について
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①江井ヶ嶋蒸溜所
蒸留時期:2018年6月
度数:62.8%
系統:ライトリーピーテッド
樽:バーボンバレル

軽やかな麦芽風味にピリッとした舌への刺激、柑橘系のフルーティーさ、オークフレーバー、そしてじわじわと土っぽくピーティーな余韻。
同蒸留所の特徴として、ヘビーでフレーバーの力強い原酒とは対極にある、ライトで柔らかく、それでいて適度なコクのある原酒という印象。かつてはコシのないペラくて雑味の強い蒸留所という印象が、こうして単品で飲んでみるとその変化に改めて驚かされました。
先日リリースされた、三郎丸蒸留所とのコラボリリースFAR EAST OF PEATでも同様の役回りでしたが、今回のブレンドにおいても全体の繋ぎ、底支えとしていい仕事をしていると思います。


②桜尾蒸溜所
蒸留時期:2018年8月
度数:60.8%
系統:ノンピート
樽:バーボンバレル

ブレンドに向けてテイスティングをした際、いい意味で一番驚きがあったのがこの原酒でした。
個人的に桜尾蒸留所の原酒は、例えるならスコットランドのグレンマレイのように、プレーンで軽やか、しかし樽感を受け止めてフルーティーに仕上がる近年のスペイサイドモルトのようだと感じています。正直、もっと評価されていい蒸留所ですね。
今回の原酒はしっかりとオーキーなアロマ。軽やかでフルーティーかつナッティーな広がり。余韻がウッディでドライ寄りでもあったので、使う量には注意しなければなりませんでしたが、ジャパニーズ、ワールドともフルーティーな香味を形成する役割を担っています。


③三郎丸蒸留所
蒸留時期:2018年7月、8月
度数:63.1%、62.3%
系統:ヘビーピーテッド
樽:バーボンバレル

今回、三郎丸からは2種類の原酒が用意されていました。
どちらも三郎丸らしくどっしりとした重みのあるフレーバー構成は共通で、
63.1%のほうはモルティーで香ばしく、そして焦げたような強いスモーキーさ。
62.3%のほうはオイリーで微かにハーバル、スモーキーさの中に癖を残したような構成。
ピートフレーバーは前者のほうが素直で、一層際立っているのですが、今回のブレンドでは、後者62.3%の原酒をどう使いこなすかがポイントだったように思います。
三郎丸の原酒はとにかく強いので、使いすぎると全てのフレーバーを圧殺してしまいます。しかし、大黒柱となる存在が無いとブレンドは成り立たず、それぞれの個性が分解してしまいます。
いかにしてバランスをとっていくか…造り手に似てじゃじゃ馬です(笑)。

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④長濱蒸溜所
蒸溜時期:2018年7月
度数:59.9%
系統:ノンピート
樽:バーボンバレル

長濱蒸溜所の個性がしっかり出ていると言える原酒です。
香りはモルティーで微かにモロミの香り、穏やかな酸味とオーク香。味わいも柔らかくコクがある麦芽風味を主体として、余韻はほろ苦く軽い香ばしさが混じる。
バーボンバレル特有の華やかさはまだそれほど強くないため、5蒸留所の原酒の中では最も中立的なキャラクターと言えるかもしれません。まさに各蒸留所の繋ぎ役ですね。
今回はバーボン樽原酒ですが、くりりんは個人的に別リリース関連でワイン樽やシェリー樽原酒を使ったところ、どれも非常にいい仕事をしていました。


⑤非公開の国産蒸留所X
蒸留時期:2018年
度数:非公開
系統:ノンピート
樽:バーボンバレル

蒸留所側の希望により、完全非公開となります。私も一切コメントできません。
ただ、この蒸留所の原酒なくして、今回のブレンドレシピは成り立ちませんでした。
蒸留所の個性としてはジャパニーズ、ワールド、どちらのブレンドからでも感じることが出来ると思います。テイスティングに当たっては、各蒸留所の個性を紐解きつつ、どこの蒸留所かを予想しながら楽しんで貰えたらと思います。


⑥スコッチモルト各種
熟成年数:非公開
系統:ノンピート、ピーテッド
樽:シェリー樽、バーボン樽、ウイスキー樽

ワールド仕様のレシピに使われた、輸入スコッチ原酒です。(同仕様では、構成比率51%以上がジャパニーズ原酒です。)
国内で追加熟成された原酒が用いられ、かなりこなれているもの、日本的な個性・樽感が付与されているものがあり、ジャパニーズという枠を超えて可能性を感じるものでした。
今回のリリースでは、各蒸留所の個性と将来性を感じられるリリースがジャパニーズだとすれば、ワールドは日本だからこそ作ることが出来るウイスキーとしての可能性を感じられると思います。

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最後に、本リリースに関わったブレンダーの一人としての感想を。
日本のウイスキーはスコットランドをルーツにしていますが、現代においてはそれを完全に再現するのではなく、蒸留所毎に発酵や蒸留、そして熟成等で工夫し、各地の環境にアジャストして独自の個性を生み出しています。

例えば、温暖な日本においては樽感が強く出るため、基本的には熟成期間を短く設定しなければなりませんが、その分、長期熟成では失われてしまう原酒の個性が強く残ります。
結果、シングルモルトではそうした個性が強みとなり、現在進行形で評価を高めているわけですが。規模の限られるクラフト蒸留所単体で作る事が出来る原酒の種類、香味の幅には限界があります。
T&T TOYAMAが進めている各種プロジェクトは、まさに日本のウイスキー産業の将来を見据えたものと言えるわけです。

ただ…記事中にも書いたとおり、個性豊かなクラフト原酒のブレンドは、想像以上に難しかったですね(笑)。
これはリリースコンセプトというより、自分個人の想いとなりますが、今回のブレンドで表現したかったジャパニーズウイスキー観は「十二単」です。熟成を経たことで得られる重厚なウッディさと個性、これらが重なり合うことで生まれるウイスキーを、雅で艶やかな日本の着物独特の雰囲気に重ねています。

結果、十二単というよりは、単に着物の重ね着のような感じかもしれませんが、それぞれの原酒の個性が色彩となり、重なりあうことでこれまでにない味わいに仕上がったと思います。
最初の1杯は、是非テイスティンググラスでじっくりと、各蒸留所に思いを馳せながら楽しんでいただけたら幸いです。

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