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SABUROUMARU 
Single Malt Japanese Whisky 
Aged 5 years 
Distilled 2018 
Bottled 2023 
Cask type Bourbon Barrel 
For Suzuki Shuhan 
700ml 63% 

評価:★★★★★★(6)

香り:トップノートで感じられるのは土や根菜、タール、炭を思わせる分厚いアロマ。まさにピートの香りだ。スワリングしていると野焼きのようなスモーキーさと共に、焼いたオレンジやリンゴ、バニラの甘いアロマも感じられる。

味:口当たりはピーティーでパワフル。火のついたピートを口に含んだよう。合わせてキャラメルを思わせる樽由来の甘さ、オレンジを思わせる甘酸っぱさが広がる。余韻はしっかりとスモーキーでドライ、焦げた木材や藁のアロマが鼻腔に抜け、ほろ苦く香ばしい余韻が長く続く。

総評:フルボディな酒質に力強いピートフレーバー、柑橘を思わせるニュアンス。三郎丸モルトの特徴がはっきりと表現された1本。2018年はZEMON導入前であるが、マッシュタンの新調により仕込みが安定し、前年以上に際立ったピートフレーバーが感じられる。

補足:本リリースは株式会社鈴木酒販が、三郎丸蒸留所2018年の仕込みの際にニューメイクで購入した原酒を熟成してリリースしたプライベートボトルです。通常のシングルモルト三郎丸のシリーズとは無関係の位置付けとなります。

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コメントの通り、鈴木酒販からリリースされた三郎丸のプライベートボトルです。
同社とはちょっとした縁があり、ボトリングサンプルを頂いて公式のテイスティングコメントを担当、気に入ったので1本購入させて頂きました。
そのため公式のコメントと↑のコメントが同じですが、決してコピペではありません(笑)。

また、同様に本リリースはラベルが過去リリースされた三郎丸Ⅰ THE MAGICIAN と同じデザインを用いたものが貼られていますが、三郎丸のシングルモルトリリースは、PB含めてテンプレートとして
2017年原酒:三郎丸0 THE FOOL
2018年原酒:三郎丸Ⅰ THE MAGICIAN
2019年原酒:三郎丸Ⅱ THE HIGH PRIESTES
と、原酒がローマ数字表記とカード名で整理されていて、他のPBでも同様にタロットカードのラベルが使われていることは珍しくありません。

一方で、今回はラベルがあえて逆向きに貼られていますが、これも鈴木酒販としての狙いがあってのこと。鈴木酒販は元々日本酒を中心とした酒販であり、日本酒では逆さラベルは偶にあるのと、社としての想いがあってのことでしたが…。
しかしその意図を鈴木酒販が説明する前にボトル画像がSNS等に出た結果、「三郎丸から逆位置のタロットシリーズが出たか!?」と誤解が生まれ、三郎丸公式や稲垣マネージャーから急遽「違います」発信が行われる等、ちょっとしたハプニングもありました。
ラベルの意図や経緯については、詳しくは鈴木酒販の公式ページをご参照ください。

さて、三郎丸Ⅰと言えばZEMON導入前、2016年の改修でステンレス製のポットスチルを改造し、ネックから先を銅製にした改造スチル最終年度。また2017年蒸留所の設備を一部改修、マッシュタンが三宅製作所製となって仕込みが安定した年です。ニューメイクを飲んで、ああ、この蒸留所は完全に立ち直ったと確信したのもこの年でした。
最も、この頃はやはりポットスチルの性能もあってか2019年以降に比べると成分比率的には洗練されているとは言えないのですが、ピートフレーバーは際立っており、残された雑味も含めて旨い、パワフルな味わいが特徴です。

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ちなみに、2年前にリリースされた3年熟成の三郎丸Ⅰカスクストレングスと5年熟成を経た本リリースを比べると、ベースは同じでも前者はピートフレーバーと酒質が暴走気味で荒々しく、樽感と馴染んでない印象もありました。しかし後者、つまり今回のリリースは樽感が増した分複雑でボリューミーな味わいとなっています。相変わらずピートフレーバーも強いですね。
感覚的には同じ環境であと3年、冷涼な環境なら5年以上は熟成させていけそうだという感じもあります。それくらいしっかりと酒質の骨格、厚みがあり、将来が楽しみな原酒です。

三郎丸蒸留所の仕込みは、蒸留器が2019年以降新型ポットスチルZEMONに、さらに2020年にはアイラピート麦芽と木桶発酵槽を用いた仕込みへと切り替わっていきます。
また最近では熟成環境の整備も進んでおり、2019年に完成した三郎丸第二熟成庫には、井水クーラーや屋根散水システムなど、熟成庫内の温度をモニターし、長期熟成の大敵とも言える高温状態から樽を守るシステムが追加で導入されています。

三郎丸らしさは残しつつも、一層洗練され、新たな個性を身につけて年々進化する蒸留所。後日リリースを控える三郎丸Ⅲ THE EMPRESS では、稲垣マネージャーが目指す“1970年代のアードベッグ”に向けた個性としてなくてはならない、アイラピートで仕込んだ麦芽がどのように成長したか。今から非常に楽しみです。

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