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フォアローゼズ シングルバレル 50% ”4輪の薔薇の真実” Liqul掲載記事紹介

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FOUR ROSES 
SINGLE BARREL 
Kentucky Straight Bourbon Whiskey 
700ml 50% 

評価:★★★★★★(6)

香り:バニラやキャラメルに、華やかさの混じるウッディなトップノート。チェリー、林檎飴のフルーティーな甘さ。焦げた木材やパン酵母のような香りのアクセント。微かに溶剤系のスパイシーな刺激もあるが、全体的にはメローでリッチな構成。

味:飲み口は濃厚だが、度数に反して比較的マイルドで熟成感がある。新樽熟成に由来するキャラメル等のメローな甘みに混じる甘酸っぱさ、徐々にスパイシーな刺激、微かな香ばしさと焦げた木材のえぐみ。余韻は程よくウッディでドライ、スパイシーな刺激が心地よく続く。

まさに新樽熟成のバーボンらしさ。その中でもフォアローゼズのシングルバレルは華やかさ、フルーティーさ、そしてスパイシーな刺激が特徴的であり、他のバーボンと一線を画す個性として備わっている。これらはフォアローゼズのマッシュビルのライ麦比率の高さに由来すると考えられる一方で、7~9年というバーボンではミドルエイジ相当に当たる熟成を経たことと、50%への加水調整が全体をまろやかに、上手くまとめている。オススメはロックで。あるいは写真のようにアメリカンオークのウッドスティックを1週間程度沈めて、樽感を足してやるとなお良し。

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個人的に、バーボンウイスキーの現行品スタンダードラインナップの中で、一押しのブランドがフォアローゼズシングルバレルです。濃厚さ、甘さ、フルーティーさ。香味の複雑さと個性の強さとのバランス。特に5000円程度までという価格設定で考えたら、文句なくこの1本です。

その他の銘柄では、ノブクリーク・シングルバレル60%やエヴァンウィリアムズ12年等も候補。ただしノブクリークは比較するとえぐみが多少気になり、エヴァンウィリアムズ12年は近年香味の傾向が変わって、少々べたつくような質感が感じられること等から、熟成年数等に捕らわれず1杯の香味で考えると、やはり自分はフォアローゼズが一番好みです。(1万円台まで出すなら、現行品ではブラントンシングルバレルやスタッグJr等を推します)

■フォアローゼズ・シングルバレルの特徴
テイスティングノートでマッシュビル(原料比率)の話をしていますが、フォアローゼズ・シングルバレルは他のスタンダードなバーボンと異なり、ライ麦比率の高いレシピを用いていることが特徴としてあります。
一般的なバーボン。例えば上で候補として挙げたノブクリークは、コーン75%、ライ13%、モルト12%に対して、フォアローゼズ・シングルバレルはコーン65%、ライ35%、モルト5%と、明らかにライ麦の比率が高いのです。※補足:フォアローゼズは通常品のマッシュビルとして、コーン75%、ライ20%、モルト5%でも蒸留していますが、それでもライ麦比率が高い仕様です。

ラム麦比率が高いバーボンは、どのような特徴が表れるかと言うと、ライ麦パンのように香ばしさが強くなる…なんてことはなく。フルーティーでスパイシーな香味を感じやすくなる一方で、ドライな仕上がりにもなるという特徴があります。フォアローゼズ・シングルバレルに感じられる特徴ですね。
後は好みの問題ですが、ここにメローな新樽系の香味が熟成を経て上手く馴染むことで、飲み飽きない複雑さ、カドが取れて艶やかな甘みとフルーティーさが備わった、極上のバーボンに仕上がっていくわけです。

4輪の薔薇の真実とは?フォアローゼズ シングルバレル:Re-オフィシャルスタンダードテイスティング Vol.12 | LIQUL - リカル -

そうした原酒は、シングルバレルの中でも”プライベートセレクション”などでリリースされる、ごく一部のカスクに備わっているものですが、通常品シングルバレル(本ボトル)もそのベクトル上にある、レプリカとして位置付ければ申し分ないクオリティがあります。
スタンダード品だからと侮るなかれフォアローゼズ。その楽しみ方含めて、詳しくは今月の酒育の会「Liqul」にコラム記事として掲載させてもらいました。一方で、本記事ではコラム上では書ききれなかった、フォアローゼズのブランドエピソードの考察”4輪の薔薇の真実”について、バトンを引き継いでまとめていきます。

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画像引用:エピソード|フォアローゼズについて|フォアローゼズ|キリン (kirin.co.jp)

フォアローゼズのブランドエピソードについて、ウイスキー愛好家なら一度は”ブランド創業者のプロポーズ説(上画像)”を聞いたことがあると思います。
ですが、”FOUR ROSES ”のルーツは諸説あるだけでなく、何より知られていないのがこれから記載する、創業者プロポーズ説に対する疑問と、プロポーズしたのは創業者じゃなかった話です。


■創業者プロポーズ説の疑問
それは、ブランド創業者であるポール・ジョーンズJr氏(1840-1895)が、生涯モルトヤm...じゃなかった、”生涯独身”だったということです。
ブランドエピソードが正しければ、同氏は絶世の美女と結ばれているはずです。プロポーズは成功したが、結局結婚に至らなかったという可能性は残りますが、そんな苦い記憶を果たして自社のブランドに使うでしょうか。

また、フォアローゼズのブランドが商標登録されるのは1888年ですが、プロポーズが行われた時期がはっきりしないのも理由の一つです。同氏の年齢は商標登録時で48歳。10年、20年寝かせるアイディアとは思えず、仮に5年以内だったとしても、40代です。現代ならともかく、当時としては結婚適齢期を逃した中で絶世の美女にアプローチをする。。。そして一時的には認められたものの、結局結婚に至らなかった。
いやいや、悲劇的すぎるでしょう(汗)。しかも同氏は1895年に亡くなられるのですから、なんというか救いがありません。

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※フォアローゼズ一族とも言える、ジョーンズ一族の家系図。

そうなると、フォアローゼズのルーツは他にあるのではないか。諸説ある中で、正史候補としてコラムで紹介したのが「プロポーズしたのは創業者じゃなかった説」です。
主役となるのは、フォアローゼズ創業者一族であり、ポール・ジョーンズJr氏の甥にあたる人物で、後に会社経営を引き継ぐローレンス・ラヴァレ・ジョーンズ氏(1860-1941)。この人物が、まさに意中の女性にプロポーズを行い、4輪の深紅の薔薇のコサージュで返事をもらった人物であることが、同蒸留所の歴史をまとめた著書”FourRoses”に、創業者一族へのインタビューを通じてまとめられています。

ローレンス氏の恋は一目惚れではなかったことや。奥手だったローレンス氏は何度もアプローチをかけ、最後に12輪の深紅の薔薇と共にプロポーズをしたことなど。広く知られているエピソードとは若干異なるのですが。それくらいの誇張は…まあ広報戦略の中ではよくあることです。
また、真紅の薔薇についても、なぜ12輪でプロポーズして、返事は4輪のコサージュだったのか。別途調べてみると、この薔薇の数にも意味があり、時代背景と合わせて表立って語られない、より情熱的で奥ゆかしい、そんなバックストーリーがあることがわかってきたのです。(詳しくはLiqulの記事を参照ください。)

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■ローレンス氏プロポーズ説の疑問
一方で、「プロポーズしたのは創業者じゃなかった説」にも疑問点があり、この話が正史だと断定しづらい要素となっています。
まず、ローレンス氏は若くして才気があり、会社を継いでいく人間として期待されていました。
ローレンス氏がプロポーズしたのは、1880年代中頃。(仮に1885年としましょう。)
”フォアローゼズ”が、ポール氏の手で商標登録されたのは1888年です。
これだけ見れば、結婚から商標登録まで約3年。今後会社を継ぐ甥っ子のエピソードを、世代交代後に向けて商標登録したと整理できるので、何ら違和感はありません。

ですが、ポール氏はローレンス氏の結婚に大反対していたのだそうです。
最終的に結婚は認められますが、会社分断の危機に発展するなど紆余曲折あり、ローレンス氏が意中の女性と結婚出来たのは1894年。プロポーズから10年弱の時間が経過していることになります。
著書FourRosesにまとめられた内容をそのまま記載するなら、これはひとえに、結婚して家庭を持つことで、ローレンス氏のビジネスマンとしての才能が潰れてしまうことを危惧したためだったとか。しかし、思い出してほしいのが、結婚に大反対しているはずのポール氏が、1888年にフォアローゼズを商標登録しているのです。

かたや反対、かたや商標登録。なんなの?人格破綻者なの?と思わず突っ込みたくなる所業。
日本人的感覚で強引に結びつけるなら、ポール氏は結婚を内心認めつつも、反骨精神か、あるいは本気度を見るために反対し、一方で将来会社を継ぐエースのために準備はしていたと。ドラマの脚本にありそうな、不器用な愛情らしきものがあるとしか解釈できません。
なお、ローレンス氏の結婚が認められた1894年の翌年、1895年にポール氏は55歳と言う若さで亡くなるのですが、原因は腎臓の炎症、ブライト病とされたものの、前兆はなく普通に仕事をしている最中だったそうです。なんとなくですが、TVドラマにありがちな景色が頭の中に再生されてくるようです。

以上のように、2人の関係のこじれについて、強引な解釈をする必要があることから100%この説が正しいとは言い切れないのですが、創業者一族へのインタビューや事実関係、時系列で考えると、少なくとも生涯独身の創業者がプロポーズしたというよりも、あるいは「メーカーのお祭りで踊った女性4人の胸元に薔薇のコサージュがあったから」という何の厚みもない説よりも、ローレンス氏のプロポーズ説は確度が高く、お酒を美味しくしてくれるエピソードとして歓迎できるものだと感じています。
正直なところ、この手のブランドエピソードは多少誇張や改変があるのが当たり前で、もう1世紀以上も前の話なのだから何でもいいという感情があるのも事実です。ただし、それがあることでお酒が美味しくなるなら。あるいは今回のように考察の余地があり、あれこれ考える楽しみが残るなら、支持すべきは間違いなく”ロマン”のあるほうでしょう。

フォアローゼズに限らず、これと知られているエピソードも、調べてみると実は違っていたり、疑問が残っていることは少なくありません。ウイスキー片手にその領域に踏み込んでみる楽しさは、さながら歴史学者になった気分です。一部地域に住む方々は、まだ大手を振って夜の街にとは言い難い状況。ならば夜のひと時を、時間の流れを遡って、あれこれ考えて楽しんでみてはいかがでしょうか。
趣味の時間として、充実のひと時をもたらしてくれることと思います。

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(禁酒法があけた1935年に登場する、フォアローゼズのPR広告。この時点でポール氏が舞踏会でプロポーズするエピソードが使われている。今ほど情報確度が高くなく、大らかだった時代の産物が、80年以上経った現代まで使われ続けているのは興味深い。)

グレンフィディック12年 スペシャルリザーブ 40%

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GLENFIDDICH 
OUR ORIGINAL TWELVE 
Aged 12 years 
700ml 40% 

評価:★★★★★(5)

トップノートにはやや硬質感があるが、青りんごや洋梨を思わせる華やかなオーク香、微かにレモンピールを思わせるニュアンス。時間経過で奥から麦芽由来の甘さも混じる、爽やかなフルーティーさが心地よい。
一方、味わいは香りに比べて少々広がりが乏しい。麦芽由来のほろ苦さ、柔らかい甘みが舌の上で感じられ、余韻は砂糖漬けドライレモンピールを思わせるビターなウッディネス、ほのかにオーキーな華やかさが鼻腔に抜けていく。あっさりとしたフィニッシュ。

ラベルにはオロロソシェリー樽とバーボン樽で12年熟成と記載があるが、色合い、香味から察するに熟成はほぼバーボン樽で、シェリー樽はアメリカンオークのリフィルか。香りはオークフレーバーがしっかり感じられるが、40%加水の普及品ということもあって、味わいは小さくまとまっている。やや硬さもある。しかし柔らかく甘みのある麦芽風味主体の素直な酒質と、アメリカンオーク由来のオークフレーバーという、定番の組み合わせから流行りを外さない安定感は、このボトル最大のポイント。何と言ってもハイボールがオススメ。

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先日、酒育の会のWEBマガジン「Liqul」に投稿したウイスキーコラム、”Re-オフィシャルスタンダードテイスティング”で紹介したグレンフィディック12年です。
昨年市場に出回り始めたリニューアル後の現行品ボトルで、いつかコラムで取り上げようとボトルだけは買ってあったのですが、年明けの更新に回ってしまいました(汗)。

グレンフィディック12年スペシャルリザーブ 平凡にして非凡な1本:Re-オフィシャルスタンダードテイスティング Vol.10 | LIQUL - リカル -

コラムにも書いたように、グレンフィディック12年は味、価格、流通量、それらのバランスが優れた、定番品として申し分ない1本だと思っています。
勿論、万人向けオフィシャルスタンダードとして突き抜けた仕様にはなっていないため、嫌なところが少ない反面、良いところも控えめで。。。だから面白みがないし、1杯の満足感としてはそこまでと感じる方も多いと思います。

ですが、軽やかな熟成感と爽やかなフルーティーさは、近年のスペイサイドモルトのキャラクターど真ん中であるだけでなく、若さも目立たない点は好感がもてる仕上がり。
ハイボールとの相性はバッチリであるだけでなく、同ブランドにおける上位グレードにも通じる、フルーティーさが備わっているのもポイントだと思います。
ちゃんとハイエンドへのステップ、エントリーグレードとしての役割も果たしているんですよね。

どこにでもあり、目立った仕様もないため平凡すぎて軽視されがちですが、改めて飲んでみると、なんだ結構良いじゃないかと、その非凡さを感じる銘柄の代表格。年間100万ケース以上販売しながら、このクオリティが維持されているのは凄いことです。

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一方で、2015年から販売されていた(日本市場では2016年頃から)、写真の1世代前のボトルと比べると、リニューアル後の今回のボトルは、麦由来の甘みがプレーン寄りになって、その分樽由来のフレーバーに硬さが目立つようになったと感じています。

これはさらに古い世代のボトルと現行品を比べると、一層華やかに、しかし麦芽風味はプレーンに、という変化が感じられると思います。
理由はわかりませんが、やはりあれだけ量産しているので、多少なり品質や樽使いに影響があっても仕方ないのかなと。それはが今回はた、またまハイボールに合う仕上がりだったというだけなのかも。
ですがそんなことを言ったら、同じく12年のシングルモルトで売り出している某静かな谷のように、リニューアルする毎に樽感が薄く若さが目立って、いったいどうしたのかという銘柄も散見されるなか。他社スペイサイドモルトがリニューアルする度に、グレンフィディックの安定感が際立つ結果になっているようにも感じます。

我々ウイスキー飲みって、常にフルコースの満足感を求めているわけでも、波乱万丈の展開をグラスの中に求め続けているわけでもないんですよね。食中酒や風呂上りにさっぱり飲みたいという時に、このハイボールはピッタリなのです。
ノーマルなブレンデッドで、例えば角やデュワーズのように、同様にオーキーなフレーバーを備えたものとも異なる、ハイボールでのバランス、味わいの深さと満足感。適材適所、デイリーウイスキーってこういうヤツだと思います。

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余談:グレンフィディック蒸溜所の蒸留器については、写真のように異なる形状のもの、加熱方式も間接だけでなく一部直火蒸留があるなど、複数のタイプが存在します。
これらで蒸留されたニューメイクは、同じタンクに混ぜて貯められるため、スチル毎で見れば原酒の造り分けが行われているものの、全体としては均一化されている蒸留所であるのだそうです。
なるほど、香味のブレの少なさはそこにあるのかと、安定感の裏付けに加え、時代時代で味が変わってきているのは、麦芽品種の違いだけでなく、この一団を構成するスチルの形状や蒸留方式が時代で一部変化し、樽詰めされるグレンフィディックの原酒を構成するピースが変わってきているからかもと、予想しています。

LIQULコラム 5月号はブルイッラディ&ポートシャーロット レビュー

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酒育の会発行のフリーペーパー「LIQUL(リカル) 5月号」が発行されました。
もう前置きは不要かと思いますが、自分は昨年から、Re-オフィシャルスタンダードテイスティングというタイトルで、新たに発売した銘柄やリニューアルして味が良くなった銘柄等、オフィシャルボトルにおける注目銘柄の紹介記事を寄稿させてもらっています。

同誌は酒販店やBAR等協賛店舗での配布と合わせ、今年2月からWEBマガジンとしても展開されており、類似の内容(WEBマガジンのほうが字数制限が緩いので、内容が濃い場合もある)が、隔日程度の頻度で1記事ずつ更新されています。
そして先日5月9日、5月号向けに寄稿した記事がWEBマガジンのほうに掲載されましたので、記事中では書かなかった話等と合わせて紹介していきます。


Re-オフィシャルスタンダードテイスティング Vol.5
ブルックラディ”アイラバーレイ&ポートシャーロット10年”
(LIQUL本誌の内容は、上のWEB版を800文字程度に要約したものとなります。)

今回のピックアップは、アイラに島あってアイラ由来の個性と異なる特徴を持つ蒸留所、ブルックラディ

同蒸留所の日本名称は「ブルイックラディ」だったのですが、親会社であるレミーコアントローのブランド再編により、2018年頃から「ブルックラディ」に名前が変わっていました。
蒸留所は1995年からの休止、2001年の再稼働、そしてその後のラインナップ整理を経て、再稼働後の原酒は
・クラシックラディ(ブルックラディ):旧世代のキャラクターを引き継ぐノンピートタイプ
・ポートシャーロット:ヘビーピーテッドモルト
・オクトモア:世界最強のピーテッドモルト
主に以上のブランドに整理され、リリースされています。

”ブルイックラディ”時代は、休止前に仕込まれたライトピートタイプの原酒が一部で使われているなど、若干ピーティーな銘柄があったように記憶していますが(例えば、2000年代にリリースされた17年など)、再稼働から時間が経ち、原酒の熟成が進んできたことで、各ブランドの住み分けが一層はっきりしてきました。
クラシックラディは90年代のクリアトール時代に通じるベクトルで、懐かしい味わい。オクトモアは相変わらずぶっ飛んでいる(というかぶっ壊れている)。そしてこの数年内、上述の3ブランドのうち最も完成度を向上させたのが、ポートシャーロットだと感じています。

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(現行品のクラシックラディからイメージ出来る、クリアトール時代のラディ。洗練された印象のない素朴な麦芽系で、それが逆に良さでもあるが、個性に乏しい。まさにブレンド向けの原酒という時代の1本。)

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(2020年時点、ポートシャーロットのオフィシャルスタンダード。度数が50%あり、飲み応えもある。アイラバーレイ仕様もリリースされているが、こちらはまだ熟成10年未満の原酒で構成されている。)

今回の記事を書くきっかけは、なんといってもこのポートシャーロット10年。
2018年にリニューアルして10年表記になってから、これまでの若さが先に来る香味構成に熟成感が伴うようになり、内陸系のスモーキーさとこだわりの麦芽風味、それぞれに繋がりが生まれてバランス良く楽しめるようになっていました。
実はリカルの執筆を始めるに辺り、紹介しようと決めていたうちの1本でもあります。

一方、記事化にあたって最も表現で悩んだのは、「ピートフレーバーの違い」でした。
ブルックラディは麦芽風味にこだわり、アイラ島やオークニー島で契約農家による栽培を行うなど、ワインで言う”テロワール”をウイスキーでも表現することをブランドモデルに掲げています。
その麦芽由来のフレーバーは確かにしっかりとしており、それはノンピート仕様のブルックラディ・アイラバーレイやベアバーレイを飲むことで理解出来ると思います。

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(クラシックラディとは異なり、しっかりとした麦芽風味の主張、麦由来のフルーティーさが楽しめる、バーレイシリーズ。ブルックラディ再稼働計画のなかで、オーガニックで地場生産のモルトはプランの1つに掲げられていた。なおこのリリースはノンピート仕様のはずが、微かにピート香がするような。。。?)

ブルックラディは再稼働後から「生産からボトリングまでを一貫してアイラ島で行う唯一の蒸留所」ということもPRしてきました。
しかし、この”生産”にはモルティングが含まれておらず、ピートもアイラ島のものではありません。スコットランドの内陸にある設備で仕込まれた麦芽が、現在のブルックラディでは使われているのです。
そのため、ポートシャーロットは、アイラ産のピートが持つヨード系のフレーバーをほとんど持たないキャラクターとなります。

冒頭、「アイラ島にあってアイラらしくない」と書いたのは、まさにこのピート由来のフレーバーの違いにあります。
その土地の風土や気候、環境の違いを意味する”テロワール”をブランドのモデルとしながら、ウイスキーのフレーバーにおいて重要な役割を担うピートがアイラ島産ではないというのは、ちょっと整理が難しい。
ご存じの通り、単にピートフレーバーやスモーキーさといっても、ピートの成分によって得られるフレーバーは大きく異なるのです。

ただし、味が悪いという話ではなく、あくまでPRにおける整理の問題です。
これを香味の点から好意的に解釈したのが、コラム中に書いた、ヨード香は麦芽由来の風味を邪魔してしまうこともあるため、ブルックラディの素朴かつ熟成によってフルーティーさを纏う酒質由来のフレーバーとスモーキーさを両立させるため、内陸のピートを使っているという考察です。


率直に言えば、これはブルイックラディの「妥協」だったのではないかと思います。
理想的には一貫して、麦の生産、仕込みもアイラ島で全て行いたいが、ウイスキー産業が今ほど勢いづいていない再稼働当時の状況では、資金調達の難しさに加え、アイラ島の農家で指定の麦芽をつくってもらうという試みも、理解が得られず首を縦に振ってもらえない。
”ウイスキー・ドリーム”にも書かれていた時代背景の通り、ピートと麦芽を確保し、アイラ島で精麦することまではたどり着けなかったのではないかと考えられます。

しかしブルイックラディはその後現地の農家との関係を構築。現代のウイスキーブームを後押しに、ついに2023年までに精麦設備をオープンさせ、オールアイラ島産のウイスキー作りに着手する「一貫生産計画」を発表するに至っています。

親会社であるレミー・コアントローから発表された、ブルイックラディ蒸留所に関する投資計画のプレスリリース(2019年5月17日)

これが現地のピートも使った仕込みに繋がるのか、あるいはアイラ島で作られた麦芽の使用比率が全体の42%と増えてきたので、単なる生産効率化のためなのか、現時点で詳しいところはわかりません。
某蒸留所のマネージャーから伺った話では、アイラ島のピートの採掘権(採掘場所)はかなりいっぱいいっぱいで、まとまった量での新規参入は難しいという話もあります。

個人的に、このオールアイラ島産のモルトに興味がないわけではありません。今回のコラム記事で、苦手なのでついスルーしてしまったオクトモアも、アイラピートで仕込んだらどうなるのかなど、リリースの幅がさらに広がることは間違いありません。
しかし、ブランド全体としては、既に他の蒸留所で作られているモルトと似てきてしまうのではないか。ブルックラディ(ピーテッド)は今のフレーバーの系統で良いのではないかと思ったりもします。

先に述べたように、売り方の整理はありますが、バーレイシリーズで作られる麦由来の風味のしっかりした原酒、特にベアバーレイなどは大きな可能性を感じるものですし、ピーテッドタイプの原酒が熟成を経た先の姿もまた楽しみです。
何より、他のアイラモルトと異なるのは、再稼働後に誕生したポートシャーロット等のピーテッド銘柄には、1960~70年代の黄金時代の縛りがないことです。
例えばボウモアのトロピカルなフルーティーさといった、昔を意識するものがない、求められるのは常に成長し続ける今の姿です。
今後どのようなリリースが行われていくのかはわかりませんが、アイラ島のなかで独自のブランドを作り上げていく、そんな存在であり続けてほしいなと個人的な希望を書いて、この補完記事の結びとします。

蒸留所外観

以下、LIQUL5月号繋がりで余談。
リカルでは毎号ピックアップ特集記事のテーマが決まっており、この5月号は「もっと洋酒を楽しむためのファーストステップ・ブランデー編」です。
そのフルーティーさ、奥深い独特の甘味、ウイスキー愛好家からも関心が寄せられているブランデージャンルの全体像を知るには、ぴったりな内容となっています。(1st Stepと言いつつ安易な入門記事ではない、蒸留方法から生産地域の特徴まで、幅広く網羅されている記事です。)

緊急事態宣言に伴う自粛生活で、夜の街に出歩けない日々が続いているとは思いますが、SNSでは7bookscoverなる取り組みが広まっていたりで、夜の時間で読書や勉強をされる方も少なくない模様。
まだまだ涼しさを感じる5月の夜。こちらの記事を、ブランデー片手に宅飲みのお供にいかがでしょうか。

LIQULコラム WEB掲載開始とアラン新商品のレビュー

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昨年から連載させてもらっている、酒育の会の広報誌「LIQUL(リカル)」。
元々は紙媒体&電子書籍として隔月配布・公開されていましたが、今年からWEBマガジンに媒体を移し、日替わりでライターの記事が投稿される形式になりました。

実は、媒体としては1月下旬頃から公開されていたのですが、すっかり見落としていたというこの不義理っぷり。
2月1日に公開された自分のコラムは、昨年入稿していたアラン特集。大幅リニューアルされた、アラン蒸留所のスタンダード銘柄の新旧比較と、新商品にフォーカスした内容となっています。

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酒育の会 ”Liqul”
Re-オフィシャルスタンダードテイスティングVol.4「アラン」
・アラン10年新旧比較テイスティング
・ニューリリース:バレルリザーブ 43% 
・ニューリリース:シェリーカスク 55.8%
コラムページ:https://liqul.com/entry/2526

2019年9月、アラン蒸留所は既存ラインナップの大幅リニューアルを発表。10年や18年等の熟成レンジは継続しますが、ご存じの通りラベルデザインが全く別物にシフトするという、大きな動きが起こっていました。
それらに対するレビューはコラムにまとめていますので、ここでは記事中に書かなかった雑感、執筆していて思ったことなどをメインに触れていきます。

■アラン10年新旧比較テイスティング
まずはオフィシャル・アランで最も飲まれているであろう、10年熟成の新ボトル。素直に旧より良くなったなと感じました。
よくよく考えると、アラン10年はこれで3世代目。リニューアルする毎に美味しくなってきたと感じます。生産が安定し、原酒が増え、蒸留所としての体力がついた結果・・・でしょうか。

旧ボトルは旧ボトルで価格を考えると良い出来でしたが、新ボトルはアメリカンオーク由来の少し粗いウッディさが軽減され、フルーティーさに繋がる良い部分はそのまま残っているような構成です。
色合いが若干濃くなったようなので、樽構成の比率で少しシェリー系統を増やしたのかもしれません。
比較テイスティングして悪くなってたらどう書こう・・・と一抹の不安を覚えていましたが、杞憂に終わって一安心。

ただ、上記コラム執筆時にテイスティングしたのはイギリス流通品で、日本向けではないもの。おそらく大差はないと思いますが、今流通が始まっているものを確認した上で、改めてレビューはまとめたいと考えています。

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■新商品3種について雑感
一方、新商品の位置付けとなるうちの
・バレルリザーブ 43%
・シェリーカスク 55.8%
これらも価格を考えたら全然良いですね。
バレルリザーブは昨年までリリースされていたロックランザの後継品と思われますが、10年同様に感じられたアメリカンオーク由来の粗さや、若さに通じる要素が少なくなり、加水も効いて品の良いフルーティーさだけ残ったような変化。構成原酒は7~8年熟成で多少単調ではあるものの、目立った若さはあまり感じませんでした。

全体が整えられている分、新10年よりもダイレクトにオーキーなニュアンスが感じられるのがポイント。同クラススペイサイドモルトの代替品としても、いい線いくんじゃないでしょうか。例えばグレンリベットとか、グラントとか・・・うかうかしていられないですよ。

また、シェリーカスクも同様に若い原酒で構成されていますが、ハイプルーフ故の粗さはあるのですが、シーズニングシェリー系の香味がしっかりあり。ライバルはアベラワーのアブナック、あるいは最近みなくなりましたが、グレンドロナックのカスクストレングスといったところ。
今価格を調べたら税込みで6000円前後ですか・・・近年の相場込みで考えたらかなり頑張っているボトルだと思います。
この手のボトルあるあるで、ロットを重ねる毎にシェリー感が薄くならないかが心配ですが、アランのコスパの良さを見せつけるようなリリースと言えそうです。

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一方で、テイスティングをしたものの、コラムに掲載しなかったのが、アラン・ボシーの後継品に当たると考えられる「アラン・クオーターカスク 56.2%」
位置付け的に新商品となるのですが、掲載しなかった理由は比較テイスティングで旧ボトルにあたるボシーのほうが美味しいと感じてしまったから・・・なんです。

ボシーも全てが美味しいわけではなく、2016年頃にリリースされたバッチ1は、樽感が荒く狙ったフルーティーさもそこまでおらず。
それが2018年頃から流通しているバッチ3はクオーターカスク由来のバニラやオークフレーバー、フルーティーさが、アランの麦芽風味にうまく馴染んでこれは良いリリースだと思える仕上がり。
逆にニューリリースのクオーターカスクは、ボシーのバッチ1に先祖がえりしてしまったような、そんな印象もあって、国内に入ってきたら追試が必要と保留したわけです。
もちろん好みの問題もあると思うのですが。。。

なおリニューアルしたなかで、18年や21年のアランは後発発表されたもの。コラムを書いた時点でモノがなく、これも是非テイスティングしたいボトルです。
旧ボトルとなる18年は、リニューアル前のロットを飲んでクオリティが上がっているとレビューを書いたばかりでしたし、逆に21年は物足りない印象でしたから、そこからどう変化しているのか楽しみですね。

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酒育の会「LIQUL」
”お酒を楽しむ人のカルチャーマガジン”

今回のコラムは、新ボトルが国内に出回り始めた頃の掲載(めちゃくちゃ見落としてしまっていましたが。。。)。書いておいてなんですが、自分も「そうそうこんな感じだった」と、思い返すことができるちょうど良いタイミングでした。

Webマガジンとしてのリカルの連載は、各ライター毎にストックされている記事が日替わり、あるいは隔日で公開されていくこととなります。
それにしても、こうして多くのライターが活動するグループのなかにいると、恐縮してしまう気持ちだけでなく、昔ウスケバでみんなが色々な記事を投稿していた、ポータルサイトの雰囲気を感じて懐かしくもなります。思えばあそこから始まったんだよなぁと・・・。
このリカルの新しい媒体から、どんな出会いや繋がり、あるいは機会が生まれていくのか。今後の展開が楽しみです。
ライターの皆様、そして読者の皆様、今後ともよろしくお願いします。

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シークレットスペイサイド(マッカラン) 24年 1994-2019 酒育の会 49.3%

カテゴリ:
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SECRET SPEYSIDE DISTILLERY 
For Shuiku no kai 
Aged 24 years 
Distilled 1994/07 
Bottled 2019/01 
Cask type Bourbon Barrel #1408895 
700ml 49.3% 

グラス:ー
場所:BAR Fingal 
時期:開封後1ヶ月程度
評価:★★★★★★(6)(!)

香り:華やかでオーキー、しっかりと樽香を感じさせる香り立ち。オーク香はバニラや蒸かした栗を思わせる甘さに、ファイバーパイナップル、砂糖のかかったオレンジピールなど果実の中身よりも皮や茎の部分をイメージさせるドライフルーツ香がアクセントになっている。

味:やや粉っぽさを感じる口当たりだが、バニラやバタークッキー、じわじわとアップルパイ。焼いた生地のような要素の混じる果実感をアクセントに、濃いオークフレーバーが酒質を支えにして口内に広がる。
余韻は華やかなオーキーさと、削りかすを思わせるざらついたウッディネス。バーボン樽由来のトロピカルフレーバーが奥から戻るように開き、好ましいフィニッシュを構成する。

オークフレーバーに加えて、アメリカンオークのエキスがかなり溶け出しているような1本。バーボン樽系の圧殺というべきか、かなりの樽味。しかし酒質の強さが樽感を支えていて、味わいの基礎として余韻までヘタらず香味を広げてくれる。少量加水すると序盤の粉っぽさ、甘さがまとまってより華やかなニュアンスを感じさせる。仕上がりの分かりやすさと共に、原酒のポテンシャルを感じる1本。

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みのも○た、ではなく日本の戦後独立から高度経済成長を支えた偉人の一人、白洲次郎をモデルにしたと思われるラベル。
正確にいうと、どこにもそんなことは書かれていないのですが。デザインのベースは、著書「プリンシプルのない日本」の表紙にも使われた写真(以下、参照)。そこに"パイプ"を咥えさせ、武骨な"ロックグラス"を持っているアレンジが、このラベルのもととなった人物が、白洲次郎氏であることを明確に伝えていると言えます。

ラベルの背景を見ると、うっすらと書かれている軍服姿の人物がおり、これはダグラス・マッカーサー元帥でしょうか。両氏の間にはいくつか逸話があり、なかでも有名なのは”昭和天皇からのクリスマスプレゼント”ですね。
占領下にあった日本とはいえ、天皇陛下に非礼を働いたマッカーサー氏を怒鳴り付けたという真偽不明なエピソードですが、この他、白洲次郎氏とGHQとの間には「従順ならざる唯一の日本人」と言わしめるだけの関係があったとされています。
ラベルの人物が咥えているパイプは、マッカーサー氏の有名な写真に写るものと同じ形状。知っている方なら、思わずニヤリとさせられる組み合わせです。

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また、手に持っているグラスは単にロックグラスではなく、”ボトルをカット”して作ったお手製のグラスかなと。
学生時代、白洲次郎氏はイギリスに留学しており、その際に親交を深めたうちの一人が、若き日のストラフォード伯爵。この縁で、戦後の日本でありながら、白洲次郎氏はスコッチウイスキーをストラフォード伯爵経由で個人輸入して楽しむ(樽そのものをプレゼントされていたという話もある)という、一般には考えられないような生活をしていたとされ。。。この時、飲みきってしまったボトルをカットし、グラスとして使っていたというエピソードが残されているのです。

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(白洲次郎氏がストラフォード伯爵から贈られたボトルに張られていた裏ラベルの実物。こんなボトルを実際に伯爵から贈られたら、間違いなく震える。。。Mrの文字の重みが凄い。)

さて、ラベルに仕組まれたギミックが面白かったのでついつい前置きが長くなりましたが、ここからが中身の話です(笑)。
このストラフォード伯爵から日本に届いていた銘柄が、マッカラン、グレンファークラス、そしてブレンデッドウイスキーのブラックボトルでした。
なんて羨ましい・・・という心の声はさておき、今回のリリースはスペイサイド地域の蒸留所のシングルモルトであることから、関係する中身として、マッカランかグレンファークラスのどちらか。バーボン樽のリリースということから、マッカランであるようです。

マッカラン=シェリー樽というイメージはありますが、元々マッカランは酒質がヘビーで強く、こってりとしたシェリー樽や加水で調整されてバランスがとれるような原酒です。
よって、小さいバーボン樽で長期間熟成してもそれに負けることはなく。今回のリリースも樽感はかなり強くでて濃縮したようなオーキーさはあるものの、それを口内で広げるような力が残っている点が印象的でした。

熟成感があり、普通に美味しいスペイサイドモルトで、特に余韻にかけての好ましいフルーティーさが魅力。ここだけならもう1ポイント上の評価をつけようかと思うくらい。
また、そこに単なるラベル売りと思わせない工夫のあるデザインや、中身との繋がりにあるエピソード。。。流石趣味としてのお酒の楽しみ方を広める、酒育の会のオリジナル。
味だけでなく情報も楽しむ嗜好品として、申し分ない出来の1本だと思います。

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