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白州 オーナーズカスク 1993-2008 バーボンバレル 59%

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SUNTORY SINGLE CASK WHISKY 
HAKUSYU 
The Owner's Cask 
Distilled 1993 
Bottled 2008 
Cask type Bourbon Barrel #3F40486 
700ml 59% 

グラス:木村硝子テイスティング
時期:不明
場所:サンプル@萌木の村 舩木村長
評価:★★★★★★★(7)

香り:華やかでオーキーなアロマ。蒸した栗のような甘みに加え、黄色系統の果実味は黄桃の缶詰や林檎の蜜のような瑞々しいフルーティーさ。奥にはスパイシーで微かにニッキのようなニュアンスも伴う。時間経過で乾いたウッディネス、フルーティーさがグラスを満たしてより華やかに。

味:口当たりはしっとりとしてクリーミー、ボリュームがあるが度数を感じさせない。バーボンオーク由来の華やかさ、香り同様黄色系のフルーティーさと缶詰シロップのとろりとした甘味がじわじわと広がっていく。余韻はオーキーで華やかだが、若干のえぐみに加えて徐々にドライなウッディーさが蓄積していく。

この手のタイプは香りも飲み口も、初手からパッとオーキーなフルーティーさが広がってドライで終わるものが多いが、じわじわと樽由来の甘みとフルーティーさが広がっていくのが本ボトルの特徴的である。少量加水すると微かにフローラルなアロマを伴いつつ、全体的に香味が伸びる印象。酒質がしっかりしているのだろう。

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やはり白州にはバーボン樽だと感じた1杯。
先日の更新では、萌木の村の舩木村長からいただいた2種類のサンプルのうち、白州シェリー樽熟成のシングルモルトをテイスティングしたところ。
一方もうひとつのサンプルはバーボン樽熟成で、色は違えど同じように樽の特徴がしっかり出ているもの。サンプルを2回に分け、1度は個別に、残りは順番にテイスティングしていくことで、濃厚なモルトの比較を楽しむことができました。

山崎蒸留所がシェリー樽やミズナラ樽をハウススタイルの軸とするならば、白州の軸はバーボン樽です。
今回の原酒は、いうならば白州12年の屋台骨と言える構成で、特筆すべきはクリーミーというか、ファッティというか、樽由来のオーキーで華やかな香味を受け止める酒質にあります。
それはシングルカスクでありながら、様々な飲み方を許容する懐の深さを感じさせる味わい。シェリー樽熟成の原酒でも全体のボリューム感はありましたが、バーボン樽のほうがより自然に酒質と樽、お互いの良いところを感じられますね。

スコッチの現行スペイサイドあたりでは酒質以外に熟成環境の違いもあってこういう仕上がりにならず、例えば同じくらいの樽感を出すなら20年程度の熟成が必要ですが、酒質がその分削れるので、ウッディさが目立つ仕上がりになりがち。逆に10年程度の熟成だと、若さが目立つものも。。。
もちろん白州のバーボン樽原酒がすべてこの系統ではありませんが、今回のような原酒が使われているからこそ「加水で延びる」というサントリーのシングルモルトやブレンドの特徴に繋がるのだと感じました。


以下余談。
萌木の村 BAR Perchには今回のボトル以外に複数の白州のオーナーズカスクのストックがありますが、その一つに「富士を世界遺産に」とするフレーズが書かれたボトルがあります。
これのカスクナンバーは#3F40487。つまり今回の樽の隣であり、樽や熟成年数もほぼ同じ。果たしてどんな違いがあるのか。以前訪問したときは今回のボトルが無かったので、次回訪問の際にはぜひにと狙っている飲み比べアイテムなのです。

白州 オーナーズカスク 1992-2008 シェリーバット 63%

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SUNTORY SINGLE CASK WHISKY 
HAKUSYU 
The Owner's Cask 
Distilled 1992 
Bottled 2008 
Cask type Spanish Oak Sherry Butt #2I40067 
700ml 63% 

グラス:木村硝子テイスティング
時期:不明
場所:サンプル@萌木の村 舩木村長
評価:★★★★★★(6)

香り:鼻腔を刺激するアタックの強さと、スパイスそのものの香りを伴う、両面の意味でのスパイシーさに、樹液っぽさをまとうウッディネス。樽香主体のリッチなアロマはコーヒーチョコレート、ダークフルーツの色濃さに加え、ほのかに香木を思わせるニュアンスも感じられる。

味:度数を感じさせないとろりとした口当たり。黒蜜やダークフルーツの甘酸っぱさに加え、香り同様のスパイシーさ、徐々に強めのタンニンが感じられ余韻にかけて長く続く。フィニッシュはドライでビター、冷めたエスプレッソ、ほのかにゴムっぽさもあるが、ベタつきが少なく樽由来のリッチな甘みと合わさって長く続く。

スパニッシュオーク由来の濃厚なキャラクターが主体。いわゆる圧殺系。特徴としては、少し樽が荒いというか、スパイシーさが強いように感じられる。また度数の高さ故に序盤の樽由来の香味や濃厚な甘みに潰されていない余韻も特徴と言える。

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これを飲んで白州とわかる人はまず居ないでしょうが、かつて限定でリリースされていた白州シェリーカスクの強化版というか、オーダーメイド仕様と言える、シングルカスクらしく尖った個性が魅力の1本。スパニッシュオークシェリー樽の特徴、スパイシーなアロマが際立っていると構成だと感じます。

過去オフィシャルリリースの白州のシェリーカスクは、粘土のような、あるいは絵の具とも例えられる、樽からでたエキスが混じり合うことで生まれた癖のある味わいが多少感じられたところ。今回のものにはそうした特徴は少ないですが、新樽で感じられるえぐみや樹液のようなニュアンスは若干備わっています。恐らく、熟成環境の違いや樽の誤差でそうした個性が強くでたものもあったのでしょう。

他方で、樽は同じまたは近いものを使っていても、八ヶ岳と近江、熟成環境の違いなのか、山崎と白州でシェリー樽の仕上がりの違いがあるのも面白いです。八ヶ岳はラックの関係でシェリー樽のような大きなサイズが入らないという話を聞いたことがあり、保管環境の違いがフレーバーに関係しているのかもしれません。
サントリーは樽以外に、熟成環境にも工夫をしているので、ついあれこれ考えてしまうんですよね(笑)。

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今回突然届いた萌木の村 舩木村長からの贈り物。いつもありがとうございます!
最近丁度夜が涼しいので、この手のウイスキーを自然体で楽しめる夏前最後の一時期ですから、これ幸いとテイスティングです。

この手のウイスキーの評価は、飲む環境、気候の影響が大きいものと感じています。
それは単にボトル単体の温度だけでなく、飲み手の状態も気候によって変わるため。これからやって来る真夏の高温多湿のなか、体内に熱がこもった状態でねっとり濃厚なシェリー系はちょっと進まない・・・。だからこそ、1杯目のハイボールやキナソーダとかが最高に染みるわけですが。

そうなると、真夏であっても爽やかな空気と夜の涼しさのある北の地や、清里のような避暑地って、ウイスキーを楽しむには凄く良い環境であるように思うんですよね。昨年真夏の清里に伺いましたが、本当に爽やかで気持ちの良い環境でした。
そんなことを考えながらテイスティングしていたら、萌木に行きたくなってきた。これはひょっとして釣られているのか。。。(笑)

今週末は清里ウイスキーフェス。家庭事情でまたしても伺えませんが、時間をつくって是非また遊びにいきたいですね。

ウイスキーバイブル 2019 主要部門をアメリカンウイスキーが独占 ジャパニーズ部門はポールラッシュが受賞

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今年もジムマーレイ著、ウイスキーバイブルにおけるワールドウイスキーオブザイヤーが発表されました。
個人的にはボジョレー解禁的な印象もある、ウイスキー業界の風物詩なこの発表。ああ、もうすっかり秋ですねぇ。。。

ジムマーレイ氏の活動ついては今更説明は不要と思いますが、ざっくりまとめると、毎年1000種類以上のウイスキーをテイスティングし、コメントとスコアリングをまとめた著書"ウイスキーバイブル"の執筆を手がける、非常に大きな影響力を持つテイスターです。

そのスコアリング基準は不明確な点もありますが、近年の評価では、
2016年クラウンローヤル・ノーザンハーベスト・ライ
2017年ブッカーズ・ライ13年
2018年テイラーフォーグレーン12年
と、各年のウィナーがアメリカ・カナダ方面に寄っていることから、その趣向が見えてくるようです。
2015年の山崎シェリーカスクから一転して、クラウンローヤルが選ばれた年など「正気とは思えない」と辛辣なコメントが寄せられたこともありましたが、なるほどここまで続くと一貫していますね。

長熟バーボンに備わる艶やかな甘みや、ハイプルーフで突き抜けた味わいは自分も求めている要素の一つであり、スコッチとの対比に異論を唱えるつもりはありません。ただ、その時々の思い切った線引きが、ジムマーレイ氏の評価なのでしょう。
今年はそれがさらに極まった内容となり、ワールドウイスキーオブザイヤーと、シングルカスクオブザイヤーの主要2部門をバーボンが受賞。全体でもトップ3銘柄のうち2銘柄がアメリカンで、異なるカテゴリーのコンペを見るような結果となりました。

■The full list of winners
◆2019 World Whisky of the Year

William Larue Weller 128.2 Proof 
- Buffalo Trace Antique Collection 2017

◆Second Finest Whisky in the World

Glen Grant Aged 18 Years

◆Third Finest Whisky in the World
Thomas Handy Sazerac Rye 127.2 Proof

◆Single Cask of the Year
Blanton’s Gold Edition Single Barrel



ワールドウイスキーオブザイヤーを受賞した、William Laure Wellerは飲んだことがありませんが、バッファロー・トレースの長熟となれば、一定以上のクオリティがあると見て間違いないと思います。
リミテッドであるアンティークコレクションは、小麦を主原料とする原酒のうち総じて10数年間の熟成を経てピークに到達した樽から、毎年度リリースされているシリーズのようです。
今回受賞したのは2017年ロット。スペックなどから察するに、芳醇で柔らかくドライな含みから、ボリュームのあるウッディネスと艶やかな甘み、パンチのある余韻といったところでしょうか。

そして全シングルカスクのベストかどうかはさておき、高い評価も納得出来るのが、ブラントン・ゴールドラベル 51.5%です。
今オススメのハイプルーフバーボンを聞かれたら、1万円未満なら自分でも勧めている銘柄の一つ。現行品はボディが少し細い気もしますが、オールドバーボンにある香味の共通項を備えた、熟成感あるリッチでメローな味わい。何よりもスタンダードとして安定して購入出来るのが嬉しいですね。
ラベルに書かれたボトリング日付が古いほうが香味が濃い傾向があり、2000年以前のものなど特にオススメです。


SCOTCH WHISKY
Scotch Whisky of the Year 
Glen Grant Aged 18 Year Old 
Single Malt of the Year (Multiple Casks) 
Glen Grant Aged 18 Year Old 


続いて、各区分毎の受賞銘柄からピックアップすると、今年もスコッチカテゴリーでトップながら、全体では2番手だったグレングラント18年。
これで3年連続トップ3圏内、しかしウィナーにはなれず。レベルが高いのは間違いないのですが、そろそろ永遠の2番手とか言われそうな。。。(笑)

グレングラント18年は、先日とある企画でブラインドテイスティングで飲む機会があったばかり。やや軽めの酒質にアメリカンホワイトオークの華やかさとフルーティーさ、そして少し枯れ草のようなウッディネス。加水調整によるバランスも良く、うまく仕上げられた美味しいモルトでした。
味は万人に好まれ易いタイプですし、BARでも使いやすいモルトウイスキーだと思います。

JAPANESE WHISKY
Japanese Whisky of the Year 
The Hakushu Paul Rusch 

ジャパニーズ区分では、萌木の村がリリースした、ポールラッシュ生誕120周年記念シングルモルトウイスキー(白州)が選ばれています。
秘蔵の長期熟成原酒とヘビーピート原酒を使い、日本的な熟成感のある多彩な香味。柔らかく角の取れた香り立ちでありながら、その味わいは内に秘めた想いが感じられるような芯の強さとピートの存在感。まるで往年のポールラッシュ氏その人を思わせるようなウイスキー。
一般市場には流通がありませんが、一部のBARと、萌木の村では飲むことが可能な1本。今日は我が家でもささやかにテイスティングといたします。
(※リリース当時のテイスティングコメントはこちら。

この他、ディアジオのスペシャルリリースからコレクティヴァムXXVⅢなど、昨年から今年にかけて話題になったボトルもいくつか、カテゴリー毎に受賞しています。
詳細は以下の通り。なお、ウイスキーバイブルの表紙には毎年度ジムマーレイ本人の姿が書かれているわけですが、今年はどう見ても精神生命体。。。あるいはハリーポッターあたりに出てきそうな精霊の類。
テイスティングすることのべ何万、ついにそのグラスの中には魂が宿ったのでしょうか(汗)。

 
SCOTCH
Scotch Whisky of the Year
Glen Grant Aged 18 Year Old

Single Malt of the Year (Multiple Casks)
Glen Grant Aged 18 Year Old

Single Malt of the Year (Single Cask)
The Last Drop Glenrothes 1969 Cask 16207

Scotch Blend of the Year
Ballantine’s 17 Year Old

Scotch Grain of the Year
Berry Bros & Rudd Cambus 26 Years Old

Scotch Vatted Malt of the Year
Collectivum XXVIII

Single Malt Scotch
No Age Statement
Laphroaig Lore

10 Years & Under (Multiple Casks)
Laphroaig 10 Year Old

10 Years & Under (Single Cask)
Berry Bros & Rudd Ardmore 9 Year Old

11-15 Years (Multiple Casks)
Lagavulin 12 Year Old 17th Release Special Releases 2017

11-15 Years (Single Cask)
Cadenhead’s Rum Cask Mortlach 14 Year Old

16-21 Years (Multiple Casks)
Glen Grant Aged 18 Year Old

16-21 Years (Single Cask)
Bowmore 19 Year Old The Feis Ile Collection

22-27 Years (Multiple Casks)
Talisker 25 Year Old Bot.2017

22-27 Years (Single Cask)
Scotch Malt Whisky Society Glen Grant Cask 9.128 24 Year Old

28-34 Years (Multiple Casks)
Convalmore 32 Year Old

28-34 Years (Single Cask)
Gleann Mor Port Ellen Aged 33 Year Old

35-40 Years (Multiple Casks)
Benromach 39 Year Old 1977 Vintage

35-40 Years (Single Cask)
Glenfarclas The Family Casks 1979

41 Years & Over (Multiple Casks)
Tomatin Warehouse 6 Collection 1972

41 Years & Over (Single Cask)
The Last Drop Glenrothes 1969 Cask 16207

BLENDED SCOTCH
No Age Statement (Standard)
Ballantine’s Finest

5-12 Years
Johnnie Walker Black Label 12 Year Old

13-18 Years
Ballantine’s 17 Year Old

19 – 25 Years
Royal Salute 21 Year Old

26 – 50 Years
Royal Salute 32 Year Old Union of the Crowns

IRISH WHISKEY
Irish Whiskey of the Year
Redbreast Aged 12 Year Cask Strength

Irish Pot Still Whiskey of the Year
Redbreast Aged 12 Year Cask Strength

Irish Single Malt of the Year
Bushmills Distillery Reserve 12 Year Old

Irish Blend of the Year
Bushmills Black Bush

Irish Single Cask of the Year
The Irishman 17 Year Old

AMERICAN WHISKEY
Bourbon of the Year
William Larue Weller 128.2 Proof

Rye of the Year
Thomas H
Handy Sazerac 127.2 Proof

US Micro Whisky of the Year
Garrison Brothers Balmorhea

US Micro Whisky of the Year (Runner Up)
Balcones Peated Texas Single Malt

BOURBON
No Age Statement (Single Barrel)
Blanton’s Gold Edition Single Barrel

No Age Statement (Multiple Barrels)
William Larue Weller 128.2 Proof

Up To 10 Years
Eagle Rare 10 Year Old

11 – 15 Years
Pappy Van Winkle Family Reserve 15 Year Old

16 – 20 Years
Abraham Bowman Sweet XVI Bourbon

11 Years & Over
Orphan Barrel Rhetoric 24 Year Old

RYE
No Age Statement
Thomas H
Handy Sazerac 127.2 Proof

Up to 10 Years
Knob Creek Cask Strength

11 Years & Over
Sazerac 18 Year Old (2017 Edition)

CANADIAN WHISKY
Canadian Whisky of the Year
Canadian Club Chronicles: Issue No
1 Water of Windsor 41 Year Old

JAPANESE WHISKY
Japanese Whisky of the Year
The Hakushu Paul Rusch

EUROPEAN WHISKY
European Whisky of the Year (Multiple)
Nestville Master Blender 8 Years Old Whisky (Slovakia)

European Whisky of the Year (Single)
The Norfolk Farmers Single Grain Whisky (England)

WORLD WHISKIES
Asian Whisky of the Year
Amrut Greedy Angels 8 Year Old (India)

Southern Hemisphere Whisky of the Year
Belgrove Peated Rye (Australia)


※参照・引用
•JIM Murray's Whisky Bible
•The Whisky Exchenge

清里フィールドバレエ 29周年記念 イチローズモルト ジャパニーズブレンデッド 48%

カテゴリ:
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KIYOSATO FIELD BALLET
29th ANNIVERSARY
Ichiro's Malt & Grain
Japanese Blended Whisky 
Bottle No, 368/403
700ml 48%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅
時期:開封後1週間程度
評価:★★★★★★★(7)

香り:豊かな樽香、メープルやキャラメルナッツのような香ばしく甘い香り立ちから、時間経過でドライアプリコットの甘酸っぱさ、シュガースポットの出たバナナ。ほのかにミントの爽やかさも伴う。

味:リッチな樽感を感じる柔らかい口当たり。ウェハスチョコレートやピーナッツの甘みと軽い香ばしさ、濃く入れた紅茶のタンニン、オレンジジャムの甘み。余韻はビターで程よくドライ、微かにハーブや松の樹皮。メローな樽香が鼻腔に抜け、長く続く。

香味ともジャパニーズらしい樽感が主体だが、それが柔らかく多層的にまとまったブレンデッド。熟成した原酒こそのスケール感を感じさせてくれる。
少量加水すると、最初は樽香がギスギスしたような刺激を感じるものの、すぐに穏やかになり、メープルシロップを思わせる熟成したバーボンのような甘い樽香と、ママレードジャムのような甘酸っぱい口当たりも。

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今年もリリースされた、シリーズ第5作目となる清里フィールドバレエ記念ウイスキー。早速テイスティングさせていただきました。
作り手は前作同様、イチローズモルトの肥土伊知郎氏。シリーズ第2作からリリースを継続しているため、イチローズモルトとしては4作目となり、そしてこれが当面最後のリリースとなります。

清里フィールドバレエは、毎年8月に山梨県清里・萌木の村で開催されているバレエの野外公演。
ウイスキーとの関係は特段ありませんでしたが、今から4年前に公演25周年を記念したウイスキーをサントリーの輿水氏が手がけたことから繋がりが生まれ、その後は作り手を変えて1年に1度、公演に合わせた記念ウイスキーのリリースが継続されています。
その中で、伊知郎氏の目標は響30年を越えるウイスキーを作り上げること。フラグシップブランドの如く羽生蒸留所と川崎蒸留所の長期熟成原酒を惜しみなく使い、毎年異なるアプローチを感じさせるブレンドを仕上げていました。

今年はその集大成にして、自信作であるとの話も伺っています。
構成原酒である羽生モルトと川崎グレーンは、熟成期間や環境の関係などから樽感が強く、そのブレンドも基本的には同様のウッディネスとフルボディな構成が軸。
前作、28周年記念はフルーティーさとリッチな樽感に奥行きのバランスが良く、ファーストリリースの25周年とは違うベクトルで完成度の高いウイスキーであったところ。

今作、29周年の基本的な構成は上記の通りなのですが、それが飲み口から余韻にかけて存在感を維持しつつもソフトにまとまって、熟成によって得られた個性が繊細なものまで多層的に楽しめる点に、作り手が目指す形が見えるようです。

(清里フィールドバレエ・アニバーサリー25th、28th、29th。多層的で洗練された美しさを持つ25thに対し、26thからは限られた原酒の中でブレンドとしての完成度を年々上げてきた。)

使われた原酒はモルトが20〜25年熟成、グレーンはより長熟で40年弱といったところでしょうか。樽はホワイトオークの古樽的なウッディネスが強くバーボン、シェリー、プレーン、あるいはコニャックと区別がつきづらいものの、加水が効いてうまくまとまっています。

今回のブレンドを例えるなら、ゆっくりと沈んでゆく夏の夕日のようであり、々しいフィナーレというよりは、 観劇の興奮と終幕の寂しさの中で流れるエンドロールのようでもあります。
原酒のストックが厳しく、既存の組み合わせで作るイチローズモルトのフィールドバレエは今作で最後。ですが、そもそもイチローズモルトのフィールドバレエは26th限りの予定だったところ。リリース後、萌木の村を代表するレストラン・ビール醸造場が火災で全焼する事故が起こり、 しい状況に置かれた萌木の村の活動を後押しするため、27th以降の制作を続け られたというエピソードがあります。

作り手との繋がりを感じるエピソードですが、そのブレンドづくりも今作で区切り。萌木の村としては公演30周年の節目向け、新たな作り手に想いを託してリリースを継続する予定と伺っています。
自分は観客席に身を置き、まさにその観劇を見た心のままに一連の情景を思い返しつつ、また来年の夏の夜の出会いを心待ちにしているのです。

リンクウッド 25年 1984-2009 サマローリ 45%

カテゴリ:
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LINK WOOD
SAMAROLI
Aged 25 years
Distilled 1984
Bottled 2009
45% 700ml

グラス:テイスティンググラス
時期:開封後1年程度
場所:BAR Perch 萌木の村
暫定評価:★★★★★★(6)(!)

香り:しっとりとスモーキーな香り立ち。燻した麦芽、プレーンでスパイシーなウッディネス。徐々にエステリーなニュアンスがあり、洋梨のような淡いフルーティーさも。

味:やや乳酸的なアクセントを伴うプレーンな口当たり。洋梨のペースト、ドライオレンジ、モルティでほろ苦く、合わせて焦げたようなピートフレーバー。
余韻はスモーキーでドライ、プレーンオークの自然なウッディネスは、微かに柑橘やジンジャーを感じさせ、長く続く。

オールドスタイル系統のリンクウッド。リフィルシェリーバットあたりの熟成か、樽感はプレーンでモルティーな香味が主体となっている。ややピートが強い印象も受けるが、加水が効いて一体感のある香味が印象的。


リンクウッドと縁の深いサマローリから、その中でも比較的リリースの多いビンテージである1984年蒸留のリンクウッド。
この原酒はかつてのオフィシャル系統というか、自分の好きなオールドスタイルで、ピートが感じられるタイプでした。
過去に飲んだものも含めると、総じて同様の系統であり、ボトラーとしてまとめて購入したロットがこのタイプだったのかもしれません。

スモーキーなリンクウッドと、淡麗なリンクウッド。この違いにかかる蒸留設備云々の話は、これまでの記事で度々触れてきていますので割愛しますが、開封してみないとわからないのがリンクウッドのガチャ要素です(笑)。
ただ、1980年代前半は蒸留所の閉鎖が相次ぎ、酒質的はドライな傾向が強く、樽的にはバーボン樽への切り替え時期で迷走する蒸留所も少なくない。スコッチ業界全体をみるとこの時期はそうした傾向があるわけですが、そんな中で生まれ年で自分の好みなモルトがあるというのは、嬉しい要素だったりします。


ちなみに、1970年代から1985年、そして2000年以降はガチャ要素の強いリンクウッドですが、1987年蒸留でピーテッド名義のモルトがリキッドサンからリリースされています。
オールドスタイルのリンクウッドを作る蒸留棟は1985年から生産を休止しているため、これは普段端麗なタイプの原酒が生み出される新しいほうの蒸留棟のピーテッドタイプということに。
同じようにオールドスタイルな仕上がりかと思えば、ピートの種類が違うのか、設備の違いか、ピートが浮ついていて異なる仕上がり。同じ設計とされている蒸留棟で生み出される酒質の違いが、ウイスキーづくりの神秘を感じさせます。

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