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三郎丸Ⅰ THE MAGICAN 2018-2021 48%

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SABUROMARU Ⅰ 
THE MAGICAN 
Aged 3 years 
Distilled 2018 
Bottled 2021 
Cask type Bourbon Barrel 
One of 3000 bottles 
700ml 48% 

評価:★★★★★★(6)

香り:穏やかだがどっしりとして存在感のあるスモーキーさ。乾草、野焼き、焚火の後のような、どこか田舎的でなつかしさを感じる燻した麦芽のピートスモーク。奥には柑橘、微かに青菜の漬物を思わせる酸もある。

味:程よくオイリーでピーティー、しっかりとスモーキーフレーバーが広がる。香ばしい麦芽風味、微かな土っぽさ。バーボン樽由来の甘みや柑橘を思わせる甘酸っぱさがアクセントになっている。
余韻はピーティーでビター、湧き立つスモークが鼻腔に抜けていく。

香味とも少々水っぽさがあり、複雑さのある仕上がりではないが、元々の重みのある酒質と若い原酒であることが由来して一つ一つのフレーバーに輪郭があり、鼻腔、口内に長く滞留する。カスクストレングスリリースのものと比べると、奔放さも荒々しさもなりをひそめて穏やかに仕上がっており、こちらは万人向けの仕上がり。新世代の三郎丸蒸留所の個性を知る上では入門編と言える1本。

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(三郎丸 THE MAGICIANのカスクストレングス(CS)エディション。稲垣マネージャーが初号機は暴走していますと、リリースに当たり意味深なコメントをしていましたが、このCS仕様は確かにパワフルで三郎丸らしさが暴走気味。将来性を見るなら削りしろが残ったCSを。現時点での味わいを楽しむなら加水のほうがバランスがとれている。)

そう言えばレビューしていなかったシングルモルト三郎丸I。
昨年11月にリリースされて今更感凄いですが、このまま放置したらⅡが出ちゃいそうなので、このタイミングでネタにしちゃいましょう。2018年蒸留原酒をベースにしたTHE SUNも先日レビューしたところですし、2022年の仕込みはなにやら新しい動きもあるようなので。

さて、まずこのリリースですが、既に多くの方がご存じの通り、2018年の三郎丸蒸留所はマッシュタンを自家製のものから三宅製作所製に変更。粉砕比率を4.5:4.5:1から2:7:1に変更すると共に、旧世代の設備からの脱却として大きな一歩を踏み出した年にあたります。
その効果、酒質の変化は劇的で、当時の驚きと将来への確信は、今から約4年前のブログ記事では「素晴らしい可能性を秘めた原酒が産まれており、一部の愛好家が持っていたであろう若鶴酒造への評価を、改める時が来たと言っても過言ではありません。」としてまとめています。

当時記事:若鶴酒造 三郎丸蒸留所 ニューポット 2018 CF結果追跡その2
https://whiskywarehouse.blog.jp/archives/1073202772.html

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その当時の原酒がどのように変化してきたか、こうしてリアルタイムで進化を見ることが出来るのは今を生きる我々の特権であり、クラフトウイスキーを追う楽しみでもあります。
自分の息子の成長を見るような、推しのローカルアイドルがメジャーになっていく過程を見るような。。。ちょうど小さい子供が居るというのもあるのでしょうか、そんな心境で見ている自分が居たり。

で、実際飲んだ印象は、まずニューメイクにあった三郎丸のらしさと言えるピートフレーバー、柑橘系の甘酸っぱさ等は良い感じでバーボン樽由来のフレーバーと馴染んできてますね。
通常の熟成環境は比較的温暖というのもあって樽感は強めで、これだと5〜7年くらいでピークに当たりそうな感じですが、未熟感が目立つ酒質ではないので問題無さそう。
また、2020年に完成した第二熟成庫は屋根散水での温度管理を、2022年完成のT&T TOYAMA 井波熟成庫はCLTや断熱シャッターを用いるなどしてさらに優れた温度、湿度の特性があり、今後はさらなる長期熟成も可能になっています。

一方で、2017と2018の原酒の違いは、オフフレーバーの量が少なくなっていることと、ピートがしっかりと主張するようになっていることが挙げられます。
勿論、ポットスチルを入れ替えた2019年以降に比べたら、まだこの時代はオフフレーバーが多く、特に2018年の最初の仕込みのほうは仕込みの関係で2017年の余留液を引き継いでいることから、旧世代の残滓が強めに残ってもいます。その辺りの原酒は、このリリースにも使われているのでしょう。針葉樹のような青菜の漬物のような、オイリーさの中に独特な個性が感じられます。

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(T&T TOYAMA THE LAST PIECEのリリースで使用した、2018年原酒2種。片方は仕込み前半、片方は後半。前半は癖が強くオイリーで、後半はドライ寄りでピートが強く主張する。明らかに酒質が異なっている。)

それでも2017に比べたら格段に酒質が向上しており、中でも今まではぼやけていたピートフレーバーに芯が通り、骨格のはっきりとした主張をするようになったことが傾向として挙げられます。

それは熟成を経た後も変わらず、樽香の乗りが良く、三郎丸らしいヘビーな酒質はそのままに、どっしりとスモーキーで個性の強い味わいを形成しているだけでなく、2018年蒸留のほうが骨格の強い酒質になっていることもあって、さらなる熟成の余地を感じさせる点もポイントです。3年熟成リリースはあくまで始まりであって、今後にも期待できる。
ああ、これはきっと、某バスケットボール漫画の安西先生の心境なのかもしれません。見ているかラ○…お前を越える逸材が富山に居るのだ…。


余談ですが、そんな逸材三郎丸は、設備のアップデート、ポットスチルの開発、木桶の導入、アイラピートの調達やスーパーヘビーピート原酒の仕込みと、毎年毎年、何かしら新しい取り組みを行なってきました。
毎年夏に行われる三郎丸の仕込み。2022年は一体どんな取り組みが行われているかというと…、世界的な物流の混乱からピーテッド麦芽の輸入が前期の仕込みに間に合わず。国産麦芽を使った仕込みで、蒸留を開始したのだそうです。

国産麦芽で勘の良い人はピンとくるかもしれませんが、そうこれはノンピートなのです。三郎丸及び若鶴酒造の歴史において、公式には初めてノンピート麦芽による仕込みが行われている、アブノーマルな状況(稲垣マネージャー曰く)が、きせずしてこの2022年の取り組みとなっています。
なんとも言い難い話ではありますが、個人的にはノンピートの三郎丸は非常に興味があります。3年後のリリースだけでなく、それこそノンピートの飛騨高山とのブレンド、飲み比べも面白そう。
取り急ぎ、ニューメイクを飲むのも今から楽しみです。

三郎丸 THE SUN ブレンデッドウイスキー 2022 48%

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THE SUN 
SABUROMARU WHISKY 2022
The symphony of Saburomaru malt and World matured grain
700ml 48%

評価:★★★★★★(6)

香り:香り立ちは焦げたようなピーティーさ、アーモンドの皮を思わせる焦げた木材、仄かにスパイス。三郎丸モルトらしいスモーキーなアロマと合わせて角の取れたウッディネス、複数の樽由来の複雑な甘い香りが立ち上がり、全体をより複雑にしている。

味:オイリーで柔らかく、どっしりとしたコク、厚みのある濃厚な口当たり。三郎丸モルトらしいピーティーなフレーバーに、焦げた木材やグレーン由来の甘み、ほろ苦さ、微かにハーブ。後半から余韻にかけてはママレードジャムのような角の取れた甘酸っぱさ、濃い甘みがあり、余韻のスモーキーさとビターなフレーバーが全体を引き締めている。

富山県産ミズナラ樽熟成の三郎丸蒸留所2018年蒸留モルト原酒を軸に、シェリー樽、バーボン樽等で熟成した同蒸留所のモルト原酒と、12年以上(最長16年)熟成の輸入グレーン原酒をバッティングしたブレンデッドウイスキー。グレーンについては輸入後にワイン樽等で追加熟成を行ったものが使われている。

ブレンデッドというとグレーン主体の無個性な印象が香味の先入観としてあるが、このブレンドはかなりモルティーで、古典的なブレンド比率と予想される。そのため、味わいは三郎丸蒸留所の個性そのもの。それを追加熟成したグレーンと合わせることで、個性を楽しみやすくしつつ、ウイスキーとしては飲みやすく仕上げている。加水の具合もいい塩梅で不足は決して感じない、作り手のセンスを感じる1本。

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先日、三郎丸蒸留所から5320本限定でリリースされた、三郎丸の名を冠するもう一つのウイスキー。
自社モルト原酒と、追加熟成した輸入グレーンとの掛け合わせは、同じクラフトでは厚岸蒸溜所のブレンデッドウイスキーを彷彿とさせるコンセプト。ただ、スピリッツで輸入して全てを国内熟成している厚岸に対して、三郎丸は10年程度熟成の状態で輸入したものを追加熟成し、ブレンドに用いている点に違いがあります。

使われている三郎丸モルトは、三宅製作所製のマッシュタンを導入して、酒質として大幅な改善を果たした2018年蒸留。
これを富山県利賀産ミズナラ樽で熟成した原酒を軸に、三郎丸蒸留所のシェリーやバーボン等さまざまな樽での熟成原酒を用いてレシピを構築。スモーキーな香味に感じられるスパイシーさ、ママレードジャムのような濃厚なオレンジフレーバーがこの原酒由来でしょうか。
余談ですが、ミズナラ樽は熟成3年強で想像以上のエンジェルシェアがあったようで、想定していた以上に樽数を使ったと稲垣マネージャーがボヤいてました。

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(三郎丸蒸留所で熟成中のミズナラ樽。三四郎のロゴが目印。)


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(熟成中の原酒の状態を確認する稲垣マネージャー。スパニッシュオークカスクで2年強という原酒は、早くも色濃い甘さとウッディな香味が。)

そしてこのブレンドを紹介する上でもう一つ重要なパーツが、冒頭部分でも触れた追加熟成グレーンです。
実はこのブレンドに使われたグレーン、自分は一度飲んだことがありました。
それは三郎丸蒸留所とのタイアップでオリジナルブレンドを作ろうという企画を進めていた、2019年の夏のこと。提供いただいたサンプルの中に、追加熟成前のグレーンがあったのです。

結論から言えば、その時のグレーンはドライで甘みが足りず微妙だなあと。自分はブレンドを作る上で、違うものにチェンジしてもらったわけですが。しかし追加熟成を経て今回のブレンドに使われた12〜16年熟成のグレーンは、間違いなく口当たりの柔らかさ、全体のバランスとコクのある甘みに繋がる良い仕事をしています。
グレーンの追加熟成に使われたという焙煎樽も、メローなフレーバーを付与し、全体の1要素として貢献していますね。同じ樽はT&T TOYAMAが調達した原酒の熟成にも使われていて、そういう意味で将来が楽しみになるところでもあります。

今回のリリースはテイスティングで記載したように、三郎丸蒸留所のピーティーで厚みのあるフレーバーの個性を全面に出しつつ、それを複数の樽やグレーンでまとめ、奥行きを出し、一本筋の通った複雑さを形成したブレンドです。
これは荒削りながら響や鶴のような、日本の大手メーカーがリリースするブレンデッドウイスキーにも通じるコンセプトなんですよね。
そのコンセプトを実現するには、様々な樽を用いて熟成した、作り分けた原酒がなければなりません。日本最小規模ながらリニューアル以来コツコツと原酒を作り続けてきた、三郎丸蒸留所がついにこの領域に入ってきたかと。感慨深さも感じる1本でした。

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(THE SUNのハイボール。グレーンによる繋ぎが解けて、逆に多彩な味わいとなる。構成原酒由来のフレーバーを理解する上では、この飲み方が良いかもしれない。)

ザ ラストピース ブレンデッドモルトのリリースとスペース放送告知(4/1~ 抽選受付)

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ジャパニーズウイスキーボトラーズT&T TOYAMAから、世界初となる国内5箇所のクラフトウイスキー蒸留所の原酒を用いたブレンデッドモルトウイスキー「THE LAST PIECE」がリリースされます。

THE LAST PIECE 
BLENDED MALT WHISKY 
Japanese Edition Batch No,1 700ml 50% (限定300本)
World Edition Batch No,1 700ml 50% (限定800本)

Blender: TAKAHIKO INAGAKI, TADAAKI SHIMONO, KURIRIN 
Bottled By T&T TOYAMA 
発売時期:2022年4月19日(火)予定

※公式ニュースリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000052.000031708.html

※リリース記念スペース放送
3月28日(月)21:00〜
配信URL:https://twitter.com/i/spaces/1lPKqmZeDanKb
スピーカー:T&T TOYAMA(稲垣貴彦、下野孔明)、くりりん
参考資料:本記事後半に記載

・江井ヶ嶋蒸溜所
・桜尾蒸溜所
・三郎丸蒸留所
・長濱蒸溜所
・非公開の国産蒸留所
世界初となる計5蒸留所の原酒を用いた、ブレンデッドモルト ジャパニーズウイスキーです。
また、これらの原酒に国内で追加熟成したスコッチモルトを加えた、ワールドブレンドも同時にリリースされます。販売は若鶴酒造のALCで、抽選販売(4月1日12:30受付開始、クイズ有り)を中心に行われる予定です。

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※3月25日に行なわれた記者会見風景。ニュース動画はこちら

公式発表にもありますように、くりりんがブレンダーの一員として参加させていただきました。(これまで同様に、監修料や販売にかかる利益等報酬は受け取っておりません。)
計画自体は1年以上前からT&Tの2名を中心に動いており、それこそ交換する原酒の選定などにも関わらせて頂いたところです。
ブレンダーとしての参加は、自分のテイスティング能力とこれまでのリリース実績等を評価いただいたとのことですが、本当に凄い経験をさせて貰いました。

リリースにあたっては、タイトルにもあるようにT&T TOYAMAの2名と当方でスペース放送を実施して、改めて企画の説明や狙い、そして裏話等をさせて頂きます。
例えば、ブランド名であるTHE LAST PIECEの由来にもなっている、ブレンドのトライ&エラーです。

今回の原酒は全て光るものがあり、今後の成長も見込めるものでした。しかしそれはあくまでシングルモルト、シングルカスクとしてリリースする場合であり、今回のようにブレンドするとなると、豊かな個性は必ずしもプラスにならない場合があります。
しかもジャパニーズエディションの構成原酒は、全て3年熟成でバーボン樽原酒です。シェリー樽の濃厚な香味でバランスをとるような事も出来ません。かといって、ピートを強くしすぎると他の原酒の個性が死んでしまう。とにかくバランスをとるのが難しかったですね。

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(ブレンド風景。ジャパニーズ、ワールドとも日本のクラフト蒸留所のポテンシャルを感じる事ができるレシピに仕上がった。)

THE LAST PIECEは、各蒸留所の個性をパズルのピースに例え、パズルが1枚の絵画となる瞬間、全く新しい魅力をもったウイスキーが誕生することをイメージしています。
各蒸留所の原酒の個性、混ぜ合わせたときの表情、ブレンドにおける最後の1ピースはどこにあるのか…。リリースを楽しみにしてもらえるようなエピソードを、スペースやブログ記事を通じて紹介していきたいと思います。

なお、本日3月25日はリリースに向けての記者発表が行われたわけですが。3月26日、27日のウイスキーフェスティバルでは、ブレンド直後のサンプルをT&T TOYAMAブースで同プレミアム会員のみに試飲提供するそうです。
気になる方は、ピンバッチをお忘れなく!

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※以下、スペース放送用参考資料※
THE LAST PIECE の紹介と、構成原酒を提供頂いた蒸留所に関する所感を以下の通りまとめます。
共通しているのが、若い原酒ながら熟成年数以上にまとまりがあり、どれもレベルが高いということです。
「またまた、忖度してるんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、厳しめに見たとしても、どの蒸溜所の原酒もスコッチウイスキーで言うところの10~15年熟成程度のクオリティはあるものと感じています。

放送では、それぞれの原酒に感じた印象、ブレンドに使ってみた際の変化等も伺ってみたいと思います。そのため、原酒調達にあたって各蒸留所を回られたT&T TOYAMAの2人に私が色々質問をして、話を聞いていくような流れをイメージしています。


■THE LAST PIECEについて
ブランドネーミングの由来は上記の通りですが、少し異なる視点の話を記載します。
2021年にジャパニーズウイスキーボトラーズ事業を始めたT&T TOYAMAは、日本のウイスキー産業においてハブとなる存在を目指すという目標を持っています。
ジャパニーズウイスキー約100年の歴史(山崎の創業を起点とした場合)のなかで、日本には作り手がおり、蒸留所があり、それをリリースする酒販店も充実しています。しかし、スコットランドのように各蒸留所と繋がりのあるブレンドメーカー、ボトラーズメーカーが存在せず、また法律的な制限もあって、それらは非常に縦割り的で、組織を越えた横の繋がりは殆どありません。

これまでの時代であれば大手3社を中心に様々なウイスキーがリリースされ、少数のクラフトメーカーが尖ったリリースで愛好家を賑わす、そんなビジネスモデルが成立したところ。しかし今やそのウイスキーメーカーの数は創業予定のものを含めると60社を超える状況です。

如何に複雑な香味を持つウイスキーと言えど、そこまで多様性のあるものは出来ませんし、商品の製造だけでなく販売、広報にかかるコストは馬鹿になりません。
共存共栄を図って日本のウイスキー産業を更に大きなものとしていくためには、各社の間を繋ぎ、リリースを通じたPRも行う”ハブとなるメーカー”、つまりブレンドメーカーやボトラーズメーカーが業界におけるラストピースとなっています。

T&T TOYAMAには4月上旬完成予定の熟成庫があり、ここで原酒の熟成は行われていきます。
そして各クラフト蒸留所と連携し、交換、調達した熟成原酒を用いたリリースの第一歩が、「THE LAST PIECE」。彼らが目指す日本のウイスキー産業に込められた想いが結実した、ブレンデッドウイスキーであると言えるのです。

the_last_piece_jb
Japanese Edition Batch No,1 700ml 50% (限定300本)
各クラフト蒸留所、3年以上熟成原酒をバッティング。

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World Edition Batch No,1 700ml 50% (限定800本)
各クラフト蒸留所の原酒を構成比率で半分以上使用。スコッチモルトは日本国内で追熟したものをブレンド。

■ラベルデザインについて
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ラベルデザインは、各蒸留所の個性がつながり、調和することをイメージして、日本の伝統工芸の一つである組子(くみこ)をモチーフに使用しています。
また、その組子の配置は細胞やDNAをイメージさせるようでもあり、これもまた繋がりと、そしてその繋がりが増えていくことで、新しい日本のウイスキーを形成することも意味として込められているそうです。

最初はパズルのピースでラベル案を作ったんですが、気がついたらめちゃくちゃスタイリッシュでカッコ良くなってました。やはりプロの技術は凄いですね。
組子は様々なデザインがあるので、今後リリースが続く場合はラベルは色違いだけでなく、異なる組子のデザインを用いていくそうです。

■構成原酒と蒸留所について
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①江井ヶ嶋蒸溜所
蒸留時期:2018年6月
度数:62.8%
系統:ライトリーピーテッド
樽:バーボンバレル

軽やかな麦芽風味にピリッとした舌への刺激、柑橘系のフルーティーさ、オークフレーバー、そしてじわじわと土っぽくピーティーな余韻。
同蒸留所の特徴として、ヘビーでフレーバーの力強い原酒とは対極にある、ライトで柔らかく、それでいて適度なコクのある原酒という印象。かつてはコシのないペラくて雑味の強い蒸留所という印象が、こうして単品で飲んでみるとその変化に改めて驚かされました。
先日リリースされた、三郎丸蒸留所とのコラボリリースFAR EAST OF PEATでも同様の役回りでしたが、今回のブレンドにおいても全体の繋ぎ、底支えとしていい仕事をしていると思います。


②桜尾蒸溜所
蒸留時期:2018年8月
度数:60.8%
系統:ノンピート
樽:バーボンバレル

ブレンドに向けてテイスティングをした際、いい意味で一番驚きがあったのがこの原酒でした。
個人的に桜尾蒸留所の原酒は、例えるならスコットランドのグレンマレイのように、プレーンで軽やか、しかし樽感を受け止めてフルーティーに仕上がる近年のスペイサイドモルトのようだと感じています。正直、もっと評価されていい蒸留所ですね。
今回の原酒はしっかりとオーキーなアロマ。軽やかでフルーティーかつナッティーな広がり。余韻がウッディでドライ寄りでもあったので、使う量には注意しなければなりませんでしたが、ジャパニーズ、ワールドともフルーティーな香味を形成する役割を担っています。


③三郎丸蒸留所
蒸留時期:2018年7月、8月
度数:63.1%、62.3%
系統:ヘビーピーテッド
樽:バーボンバレル

今回、三郎丸からは2種類の原酒が用意されていました。
どちらも三郎丸らしくどっしりとした重みのあるフレーバー構成は共通で、
63.1%のほうはモルティーで香ばしく、そして焦げたような強いスモーキーさ。
62.3%のほうはオイリーで微かにハーバル、スモーキーさの中に癖を残したような構成。
ピートフレーバーは前者のほうが素直で、一層際立っているのですが、今回のブレンドでは、後者62.3%の原酒をどう使いこなすかがポイントだったように思います。
三郎丸の原酒はとにかく強いので、使いすぎると全てのフレーバーを圧殺してしまいます。しかし、大黒柱となる存在が無いとブレンドは成り立たず、それぞれの個性が分解してしまいます。
いかにしてバランスをとっていくか…造り手に似てじゃじゃ馬です(笑)。

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④長濱蒸溜所
蒸溜時期:2018年7月
度数:59.9%
系統:ノンピート
樽:バーボンバレル

長濱蒸溜所の個性がしっかり出ていると言える原酒です。
香りはモルティーで微かにモロミの香り、穏やかな酸味とオーク香。味わいも柔らかくコクがある麦芽風味を主体として、余韻はほろ苦く軽い香ばしさが混じる。
バーボンバレル特有の華やかさはまだそれほど強くないため、5蒸留所の原酒の中では最も中立的なキャラクターと言えるかもしれません。まさに各蒸留所の繋ぎ役ですね。
今回はバーボン樽原酒ですが、くりりんは個人的に別リリース関連でワイン樽やシェリー樽原酒を使ったところ、どれも非常にいい仕事をしていました。


⑤非公開の国産蒸留所X
蒸留時期:2018年
度数:非公開
系統:ノンピート
樽:バーボンバレル

蒸留所側の希望により、完全非公開となります。私も一切コメントできません。
ただ、この蒸留所の原酒なくして、今回のブレンドレシピは成り立ちませんでした。
蒸留所の個性としてはジャパニーズ、ワールド、どちらのブレンドからでも感じることが出来ると思います。テイスティングに当たっては、各蒸留所の個性を紐解きつつ、どこの蒸留所かを予想しながら楽しんで貰えたらと思います。


⑥スコッチモルト各種
熟成年数:非公開
系統:ノンピート、ピーテッド
樽:シェリー樽、バーボン樽、ウイスキー樽

ワールド仕様のレシピに使われた、輸入スコッチ原酒です。(同仕様では、構成比率51%以上がジャパニーズ原酒です。)
国内で追加熟成された原酒が用いられ、かなりこなれているもの、日本的な個性・樽感が付与されているものがあり、ジャパニーズという枠を超えて可能性を感じるものでした。
今回のリリースでは、各蒸留所の個性と将来性を感じられるリリースがジャパニーズだとすれば、ワールドは日本だからこそ作ることが出来るウイスキーとしての可能性を感じられると思います。

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最後に、本リリースに関わったブレンダーの一人としての感想を。
日本のウイスキーはスコットランドをルーツにしていますが、現代においてはそれを完全に再現するのではなく、蒸留所毎に発酵や蒸留、そして熟成等で工夫し、各地の環境にアジャストして独自の個性を生み出しています。

例えば、温暖な日本においては樽感が強く出るため、基本的には熟成期間を短く設定しなければなりませんが、その分、長期熟成では失われてしまう原酒の個性が強く残ります。
結果、シングルモルトではそうした個性が強みとなり、現在進行形で評価を高めているわけですが。規模の限られるクラフト蒸留所単体で作る事が出来る原酒の種類、香味の幅には限界があります。
T&T TOYAMAが進めている各種プロジェクトは、まさに日本のウイスキー産業の将来を見据えたものと言えるわけです。

ただ…記事中にも書いたとおり、個性豊かなクラフト原酒のブレンドは、想像以上に難しかったですね(笑)。
これはリリースコンセプトというより、自分個人の想いとなりますが、今回のブレンドで表現したかったジャパニーズウイスキー観は「十二単」です。熟成を経たことで得られる重厚なウッディさと個性、これらが重なり合うことで生まれるウイスキーを、雅で艶やかな日本の着物独特の雰囲気に重ねています。

結果、十二単というよりは、単に着物の重ね着のような感じかもしれませんが、それぞれの原酒の個性が色彩となり、重なりあうことでこれまでにない味わいに仕上がったと思います。
最初の1杯は、是非テイスティンググラスでじっくりと、各蒸留所に思いを馳せながら楽しんでいただけたら幸いです。

三郎丸 ハンドフィル 3年 #275 レビュー& 三郎丸Ⅰ マジシャン リリース情報

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SABUROMARU 
HAND FILLED 
Single Malt Japanese Whisky 
Aged 3 years 
Distilled 2017 
Bottled 2021 
Cask type Bourbon Barrel #275 
700ml 63% 

評価:★★★★★★(6)

香り:メンソールのように爽やかな刺激のあるアルコールのトップノート。合わせてスモーキーで、徐々に麦芽由来の甘みとバーボンオークのバニラ、グレープフルーツとオレンジ、粘性をイメージする質感の中にハーブ香のアクセント。時間経過で消毒液のようなアロマも混じる。

味:オイリーでコクのあるどっしりとした口当たり。香りに反して度数ほどの強さは感じず、野焼きや焚火の後のスモーキーさを連想させる含み香に、合わせて香り同様の柑橘感とほろ苦さ、バーボンオークのアクセント。余韻はピーティーでビター、ここでアルコールの高さが口内に広がり、ジンジンとした刺激を伴いつつ、長く続く。

蒸留所のハウススタイルの良い部分が強調されつつも、若さゆえ粗削りな面もある。まさに原石のウイスキー。少量加水するとアルコール感がやわらぎ、スモーキーさ、麦芽由来の甘みが感じやすくなる。ヨード系のフレーバーは無いが、もとより”偉大な巨人”を彷彿とさせる質感があったところ。このカスクはバーボン樽由来のフレーバーとオイリーな酒質の組み合わせが、ボウモアを彷彿とさせるキャラクターとしても感じられる。果たしてこの原石は磨かれていくことでどのような輝きを放つだろうか。

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三郎丸蒸留所で、来場者向けに販売されていた限定品。2017年の仕込みの原酒の中で、一番の出来と言われている1樽です。
ハンドフィルは別名バリンチとも言われ、来場者がビジターセンターで樽からボトルに直詰めして購入するシステムが最大の魅力ですが、日本では酒税法の関係から、そのシステムを導入している蒸留所はほとんどありません。
このリリースも既にボトリングされた状態で販売されているため、日によって熟成が進んで味が違う、と言うものではありませんが、基本的には蒸留所に行かなければ購入できない、まさに三郎丸蒸留所ファンのためのアイテムとなっています。※一部は同社酒販サイトALCで限定販売されていました。

蒸留所のマネージャーである稲垣さんは、地元とファン(愛好家)との繋がりを大事にしていきたいと常々語られており、イベントの開催等厳しい状況下であっても、ファンのために出来ることを考えて、実行に移しています。
このハンドフィルボトルについても、自身だけでなく某有名ブレンダーから2017年のベストだと評価された原酒を使用したことに、その姿勢が表れていると感じます。

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リリースの前置きというか原酒の位置づけ紹介はこのくらいにして、中身について。どの点が素晴らしい樽だったのかと言うと、2017年の仕込みの原酒にあるネガティブなフレーバーの少なさに加え、三郎丸らしいコクと厚み、ややオイリーさのある味わいが、バーボン樽由来のフルーティーさを伴ってはっきりと感じられるところだと考えています。

2017年仕込みの三郎丸は、マッシュタン等旧時代の設備を引き継いでいるため、酒質にぼやけたところがあり、それがオイリーな質感となって2018年以降に比べて強く感じられる特徴があります。
また、旧時代の設備の影響から、先にリリースされた三郎丸0等では、その質感の中に青っぽさというか、硫黄系のニューポッティーなフレーバーが混じり、良い部分と悪い部分が混ざり合っているのが特徴でもありました。

該当するオフフレーバーは仕込みの調整と、設備の更なるリニューアルによって2018年にはほぼ消えていくことになるのですが、カスクナンバーから推察するに、#275はおそらく2017年の仕込みの最後のほうのロットだったのでしょう。若く、はつらつとした香味構成は3年少々という熟成期間からすれば当たり前で、粗削りな部分は否めないものの、三郎丸の2017年と2018年の間を繋ぐキャラクターとも言える、次の年への期待が高まる1本だと言えます。

なお、個人的に同リリースにはもう一つ惹かれる要素があり、それは昨年リリースさせて頂いたGLEN MUSCLE No,3とNo,5に使われたキーモルト、#274の隣樽でもあったことです。
#274は2.5年でボトリングしたため、一層パワフルな個性に仕上がっていましたが、飲み比べると共通する要素があり、良い原酒を使わせてもらえたんだなと、改めて稲垣さんの心意気に感謝した次第です。
リリースから少し時間が経っており、飲めるところはBAR等飲食店に限られるため、現在の状況では中々飲みに行くのも難しいかもしれませんが、三郎丸ファンは是非テイスティングしてみてください。

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さて、話は次のテーマへ。先日同蒸留所が毎年販売している、1口カスクオーナー制度のオーナー向けの蒸留所見学会が開催されたところ。その場で三郎丸0 "THE FOOL"に続くシングルモルトリリース、三郎丸Ⅰ "THE MAGICIAN"が発表されました。(当方は参加しておりませんが、情報を頂きました。)

三郎丸Ⅰは、2018年仕込みの1st fillバーボン樽熟成原酒のみを使った3年熟成のウイスキー。
スペックとしては、昨年リリースされた三郎丸0と蒸溜年以外は同じということになりますが、三郎丸蒸留所は2017年から2018年にかけて、マッシュタンを三宅製作所にオーダーしたものと交換したことで、酒質にも変化が生じています。
具体的には、旧世代の残滓と言えるオフフレーバーが減り、麦芽風味でぼやけていた部分の骨格がはっきりと、特に柑橘系を思わせる要素とピートフレーバーが際立つようになるなど、その香味に衝撃を受けたのが2018年のニューメイクです。※当ブログレビュー記事はこちら

ゼロからイチへ。ラベルに書かれたカード「MAGICIAN(正位置)」は、新しい一歩を示す意味があるそうです。あえて昨年のリリースと同じスペックにしているのは、蒸留所の進化を感じてほしいから、という狙いが見えてきます。
リリース単体に対して昨年以上の完成度の期待もさることながら、いよいよここから三郎丸蒸留所の新しい世代が始まるのだと、初号機の起動(リリース)が今から楽しみです。
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富山スモーキーハイボール缶 8% HARRY CRANES Craft Highball 2020年リニューアル

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2019年に若鶴酒造から発売されたハイボール缶、「HARRY CRANES Craft Highball」
その特徴はなんといっても、スコットランドからの輸入原酒に加え、三郎丸蒸留所の原酒も用いたスモーキーな味わい。添加物等のない「純粋にウイスキーと水と炭酸だけの本格的なハイボール缶※」として、愛好家のシェアのみならず、富山県訪問時のお土産や旅行のお供としても人気の商品になっているそうです。
(※以前は角ハイボール缶の濃いめが同じ仕様でしたが、現在はレモンリキュールが添加されており、大手メーカー品ではブラックニッカ・クリアハイボール缶のみとなっています。また、スモーキーなフレーバーを持つものとしては、日本で唯一と言えます。)

そのハイボール缶が2020年12月に「富山スモーキーハイボール」としてリニューアル。
度数が9%→8%に下がったものの、容量が350mlから355mlに増え、それでいて価格(税抜)は390円から270円に大幅値下げ。
価格が下がったのは嬉しいのですが、度数も下がったということは原酒の構成が変わったのか・・・というか味はどうなのか。単純に考えれば、使っている原酒のクオリティが下がったのでは?とも邪推してしまいます。
今回はその変化について、旧仕様のものと飲み比べと関係者への聞き取りも交え、まとめていきます。

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結論から言えば、リニューアル前後で体感での味の変化はほとんどなく、傾向は同じでした。
クリアな飲み口から広がるしっかりとしたスモーキーさ。ピートフレーバーは若い原酒に見られる内陸系の根菜、土っぽさを伴いつつ、ほろ苦さの中にほのかな酸味。当たり前ですが、本当にしっかりとスモーキーなウイスキーのハイボールで、原酒由来のフレーバーと厚みで飲み応えも変わらず。リニューアル前との違いを探すほうが難しいくらいです。

しいて言えば、ゴクリと飲み込んだ後、9%のほうは若干アルコールが針葉樹っぽいフレーバーと共に鼻に強く抜けるように感じ、リニューアル後の8%はクリアでピートがダイレクトにくる。キレが良いと言うべきでしょうか。
ただしこの手のハイボール缶は単体でなく食中で使ったりしますから、何かと合わせて飲んでいたら、もうその違いは感じ取れない。それくらい軽微な違いだと言えます。

作り手である若鶴酒造の稲垣貴彦マネージャーに確認したところ、実は原酒や香味の傾向はほとんど同じ。というか、逆に自社原酒の比率は上がっている。使われている三郎丸の原酒が近年に近づいているので、雑味が減ったというのはあるかもしれないと。
また、度数については1%下がったのではなく、容量やら色々調整したら、9%前半から8%後半に下がったということで、実際は0.5%下がったかどうか。表記は小数点以下切り捨てなので、大きく変わったように見えるだけなのだとか。

じゃあ「なんで120円も下がったんですか?」という問いについては、
リニューアル前のものには、ラベルのデザイン費用等が含まれており、人気が出て継続販売となったことで、その分含めて値引きされた結果なのだとか。
つまり味のベクトルはそのまま、飲み応えのある本格的なスモーキーハイボール缶が270円ってことで、我々愛好家にとってはありがたい要素しかないリニューアルであったわけです。

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(比較のためとはいえ、一度に2缶ハイボール缶をハイペースで飲むのは、流石に酔いました(笑))

以前のレビューでも触れましたが、このハイボール缶。稲垣マネージャーが、家でイチからハイボール作るのがめんどくさいので、すぐに飲める美味しいハイボール缶が欲しいという、自身の要求というか拘りというか、無精を経緯として開発されたもの、という裏話があります。
言い換えると、自身の基準を満たせないものがリリースされるわけがないんですよね。だって自分が飲むためにも造ってるんですから(笑)。

ところが、この値下げが後押ししてか、想定以上の人気で4月27日に出荷規制が発表されています。
次の出荷は9月中とのこと。スエズで原酒が止まったか、あるいは他の商品製造スケジュールとの関連もあるのか。ハイボール缶の商機と言える夏場を逃すのはよほどというか、本当に想定外に注文が入ったんだなと考えられます。

なお、このハイボール缶「富山スモーキーハイボール」は富山県限定というわけではなく、関東圏では成城石井やKINOKUNIYAの一部店舗等(店舗によっては扱っていないところもあり)で販売されています。
手軽に楽しめる本格ハイボール缶かつ、スモーキーフレーバーたっぷりのハイボール。BAR飲み、外飲みしづらい状況だけに、見かけたらご自宅でちょっと本格的な味わいを楽しんでみてください。

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