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三郎丸 ハンドフィル 3年 #275 レビュー& 三郎丸Ⅰ マジシャン リリース情報

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SABUROMARU 
HAND FILLED 
Single Malt Japanese Whisky 
Aged 3 years 
Distilled 2017 
Bottled 2021 
Cask type Bourbon Barrel #275 
700ml 63% 

評価:★★★★★★(6)

香り:メンソールのように爽やかな刺激のあるアルコールのトップノート。合わせてスモーキーで、徐々に麦芽由来の甘みとバーボンオークのバニラ、グレープフルーツとオレンジ、粘性をイメージする質感の中にハーブ香のアクセント。時間経過で消毒液のようなアロマも混じる。

味:オイリーでコクのあるどっしりとした口当たり。香りに反して度数ほどの強さは感じず、野焼きや焚火の後のスモーキーさを連想させる含み香に、合わせて香り同様の柑橘感とほろ苦さ、バーボンオークのアクセント。余韻はピーティーでビター、ここでアルコールの高さが口内に広がり、ジンジンとした刺激を伴いつつ、長く続く。

蒸留所のハウススタイルの良い部分が強調されつつも、若さゆえ粗削りな面もある。まさに原石のウイスキー。少量加水するとアルコール感がやわらぎ、スモーキーさ、麦芽由来の甘みが感じやすくなる。ヨード系のフレーバーは無いが、もとより”偉大な巨人”を彷彿とさせる質感があったところ。このカスクはバーボン樽由来のフレーバーとオイリーな酒質の組み合わせが、ボウモアを彷彿とさせるキャラクターとしても感じられる。果たしてこの原石は磨かれていくことでどのような輝きを放つだろうか。

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三郎丸蒸留所で、来場者向けに販売されていた限定品。2017年の仕込みの原酒の中で、一番の出来と言われている1樽です。
ハンドフィルは別名バリンチとも言われ、来場者がビジターセンターで樽からボトルに直詰めして購入するシステムが最大の魅力ですが、日本では酒税法の関係から、そのシステムを導入している蒸留所はほとんどありません。
このリリースも既にボトリングされた状態で販売されているため、日によって熟成が進んで味が違う、と言うものではありませんが、基本的には蒸留所に行かなければ購入できない、まさに三郎丸蒸留所ファンのためのアイテムとなっています。※一部は同社酒販サイトALCで限定販売されていました。

蒸留所のマネージャーである稲垣さんは、地元とファン(愛好家)との繋がりを大事にしていきたいと常々語られており、イベントの開催等厳しい状況下であっても、ファンのために出来ることを考えて、実行に移しています。
このハンドフィルボトルについても、自身だけでなく某有名ブレンダーから2017年のベストだと評価された原酒を使用したことに、その姿勢が表れていると感じます。

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リリースの前置きというか原酒の位置づけ紹介はこのくらいにして、中身について。どの点が素晴らしい樽だったのかと言うと、2017年の仕込みの原酒にあるネガティブなフレーバーの少なさに加え、三郎丸らしいコクと厚み、ややオイリーさのある味わいが、バーボン樽由来のフルーティーさを伴ってはっきりと感じられるところだと考えています。

2017年仕込みの三郎丸は、マッシュタン等旧時代の設備を引き継いでいるため、酒質にぼやけたところがあり、それがオイリーな質感となって2018年以降に比べて強く感じられる特徴があります。
また、旧時代の設備の影響から、先にリリースされた三郎丸0等では、その質感の中に青っぽさというか、硫黄系のニューポッティーなフレーバーが混じり、良い部分と悪い部分が混ざり合っているのが特徴でもありました。

該当するオフフレーバーは仕込みの調整と、設備の更なるリニューアルによって2018年にはほぼ消えていくことになるのですが、カスクナンバーから推察するに、#275はおそらく2017年の仕込みの最後のほうのロットだったのでしょう。若く、はつらつとした香味構成は3年少々という熟成期間からすれば当たり前で、粗削りな部分は否めないものの、三郎丸の2017年と2018年の間を繋ぐキャラクターとも言える、次の年への期待が高まる1本だと言えます。

なお、個人的に同リリースにはもう一つ惹かれる要素があり、それは昨年リリースさせて頂いたGLEN MUSCLE No,3とNo,5に使われたキーモルト、#274の隣樽でもあったことです。
#274は2.5年でボトリングしたため、一層パワフルな個性に仕上がっていましたが、飲み比べると共通する要素があり、良い原酒を使わせてもらえたんだなと、改めて稲垣さんの心意気に感謝した次第です。
リリースから少し時間が経っており、飲めるところはBAR等飲食店に限られるため、現在の状況では中々飲みに行くのも難しいかもしれませんが、三郎丸ファンは是非テイスティングしてみてください。

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さて、話は次のテーマへ。先日同蒸留所が毎年販売している、1口カスクオーナー制度のオーナー向けの蒸留所見学会が開催されたところ。その場で三郎丸0 "THE FOOL"に続くシングルモルトリリース、三郎丸Ⅰ "THE MAGICIAN"が発表されました。(当方は参加しておりませんが、情報を頂きました。)

三郎丸Ⅰは、2018年仕込みの1st fillバーボン樽熟成原酒のみを使った3年熟成のウイスキー。
スペックとしては、昨年リリースされた三郎丸0と蒸溜年以外は同じということになりますが、三郎丸蒸留所は2017年から2018年にかけて、マッシュタンを三宅製作所にオーダーしたものと交換したことで、酒質にも変化が生じています。
具体的には、旧世代の残滓と言えるオフフレーバーが減り、麦芽風味でぼやけていた部分の骨格がはっきりと、特に柑橘系を思わせる要素とピートフレーバーが際立つようになるなど、その香味に衝撃を受けたのが2018年のニューメイクです。※当ブログレビュー記事はこちら

ゼロからイチへ。ラベルに書かれたカード「MAGICIAN(正位置)」は、新しい一歩を示す意味があるそうです。あえて昨年のリリースと同じスペックにしているのは、蒸留所の進化を感じてほしいから、という狙いが見えてきます。
リリース単体に対して昨年以上の完成度の期待もさることながら、いよいよここから三郎丸蒸留所の新しい世代が始まるのだと、初号機の起動(リリース)が今から楽しみです。
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富山スモーキーハイボール缶 8% HARRY CRANES Craft Highball 2020年リニューアル

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2019年に若鶴酒造から発売されたハイボール缶、「HARRY CRANES Craft Highball」
その特徴はなんといっても、スコットランドからの輸入原酒に加え、三郎丸蒸留所の原酒も用いたスモーキーな味わい。添加物等のない「純粋にウイスキーと水と炭酸だけの本格的なハイボール缶※」として、愛好家のシェアのみならず、富山県訪問時のお土産や旅行のお供としても人気の商品になっているそうです。
(※以前は角ハイボール缶の濃いめが同じ仕様でしたが、現在はレモンリキュールが添加されており、大手メーカー品ではブラックニッカ・クリアハイボール缶のみとなっています。また、スモーキーなフレーバーを持つものとしては、日本で唯一と言えます。)

そのハイボール缶が2020年12月に「富山スモーキーハイボール」としてリニューアル。
度数が9%→8%に下がったものの、容量が350mlから355mlに増え、それでいて価格(税抜)は390円から270円に大幅値下げ。
価格が下がったのは嬉しいのですが、度数も下がったということは原酒の構成が変わったのか・・・というか味はどうなのか。単純に考えれば、使っている原酒のクオリティが下がったのでは?とも邪推してしまいます。
今回はその変化について、旧仕様のものと飲み比べと関係者への聞き取りも交え、まとめていきます。

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結論から言えば、リニューアル前後で体感での味の変化はほとんどなく、傾向は同じでした。
クリアな飲み口から広がるしっかりとしたスモーキーさ。ピートフレーバーは若い原酒に見られる内陸系の根菜、土っぽさを伴いつつ、ほろ苦さの中にほのかな酸味。当たり前ですが、本当にしっかりとスモーキーなウイスキーのハイボールで、原酒由来のフレーバーと厚みで飲み応えも変わらず。リニューアル前との違いを探すほうが難しいくらいです。

しいて言えば、ゴクリと飲み込んだ後、9%のほうは若干アルコールが針葉樹っぽいフレーバーと共に鼻に強く抜けるように感じ、リニューアル後の8%はクリアでピートがダイレクトにくる。キレが良いと言うべきでしょうか。
ただしこの手のハイボール缶は単体でなく食中で使ったりしますから、何かと合わせて飲んでいたら、もうその違いは感じ取れない。それくらい軽微な違いだと言えます。

作り手である若鶴酒造の稲垣貴彦マネージャーに確認したところ、実は原酒や香味の傾向はほとんど同じ。というか、逆に自社原酒の比率は上がっている。使われている三郎丸の原酒が近年に近づいているので、雑味が減ったというのはあるかもしれないと。
また、度数については1%下がったのではなく、容量やら色々調整したら、9%前半から8%後半に下がったということで、実際は0.5%下がったかどうか。表記は小数点以下切り捨てなので、大きく変わったように見えるだけなのだとか。

じゃあ「なんで120円も下がったんですか?」という問いについては、
リニューアル前のものには、ラベルのデザイン費用等が含まれており、人気が出て継続販売となったことで、その分含めて値引きされた結果なのだとか。
つまり味のベクトルはそのまま、飲み応えのある本格的なスモーキーハイボール缶が270円ってことで、我々愛好家にとってはありがたい要素しかないリニューアルであったわけです。

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(比較のためとはいえ、一度に2缶ハイボール缶をハイペースで飲むのは、流石に酔いました(笑))

以前のレビューでも触れましたが、このハイボール缶。稲垣マネージャーが、家でイチからハイボール作るのがめんどくさいので、すぐに飲める美味しいハイボール缶が欲しいという、自身の要求というか拘りというか、無精を経緯として開発されたもの、という裏話があります。
言い換えると、自身の基準を満たせないものがリリースされるわけがないんですよね。だって自分が飲むためにも造ってるんですから(笑)。

ところが、この値下げが後押ししてか、想定以上の人気で4月27日に出荷規制が発表されています。
次の出荷は9月中とのこと。スエズで原酒が止まったか、あるいは他の商品製造スケジュールとの関連もあるのか。ハイボール缶の商機と言える夏場を逃すのはよほどというか、本当に想定外に注文が入ったんだなと考えられます。

なお、このハイボール缶「富山スモーキーハイボール」は富山県限定というわけではなく、関東圏では成城石井やKINOKUNIYAの一部店舗等(店舗によっては扱っていないところもあり)で販売されています。
手軽に楽しめる本格ハイボール缶かつ、スモーキーフレーバーたっぷりのハイボール。BAR飲み、外飲みしづらい状況だけに、見かけたらご自宅でちょっと本格的な味わいを楽しんでみてください。

三郎丸蒸留所×長濱蒸溜所 コラボレーションボトル4本のまとめレビュー

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富山県・三郎丸蒸留所と滋賀県・長濱蒸溜所の原酒交換によって実現した、国内初となる蒸留所間のコラボ企画。
三郎丸蒸留所「FAR EAST OF PEAT」、長濱蒸溜所「INAZUMA」
この2つの銘柄において、両蒸留所の原酒のみを使ったジャパニーズブレンドと、輸入原酒も用いたワールドブレンド、計4本が3月末にリリースされました。

幸運なことにFAR EAST OF PEATについては手元に。INAZUMAについては所有する方からのサンプルを頂き、自宅で落ち着いて、比較しながらテイスティングすることが出来ました。
レビューは今後個別に掲載させて頂きますが、まずは4本を飲み比べた所感、そしてブレンドの特徴を紹介させて頂きます。



■リリース概要
本リリースの背景や両蒸留所の個性については先日の記事でまとめていますので省略しますが、ポイントは2蒸留所が連携して原酒を交換しただけでなく、同時リリースまで企画したことにあります。日本のウイスキー史上初の試みになりますね。

ただし”原酒交換”といっても、酒税法上”交換”というのは認められていないため、実際は相互に原酒を販売しあう形になるのですが、原酒の販売は酒税が発生するため、蒸留所間の原酒のやり取りはコスト増に繋がる懸念があります。
そこで同法上許されている未納税取引を使って、両蒸留所の原酒を同量・等価でやり取りすることで、1樽単位での原酒の交換を実現しています。

とはいえ、長濱には三郎丸の1樽が、三郎丸には長濱の1樽があるだけで、お互いの蒸留所の原酒を自由に組み合わせられるわけではありません。それでも異なる素性・個性を持つ原酒が、両蒸留所の個性にどのような影響を与え、味わいを生み出すのか。本来なら2つしかないウイスキーを2倍以上楽しむことが出来るだけでなく、両ブレンダーが描くキャラクターの違いにも注目です。

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■三郎丸蒸留所 FAR EAST OF PEAT 
・FIRST BATCH : BLENDED MALT JAPANESE WHISKY 700ml 50%

三郎丸:50PPMのヘビーピーテッドモルト(バーボン樽)
長濱:ライトリーピーテッドモルト(アイラ・クォーターカスク)

グレープフルーツなどの柑橘系のニュアンスを伴うピート香が強くあり、徐々に焦げた木材や焚火のようなアロマ。三郎丸モルトのピート香もそうですが、バーボン樽と長濱の原酒を熟成させていたアイラ樽由来の要素がアクセントになって、一瞬アイラモルトかと見まごうような構成から三郎丸→長濱と言う感じ。
一方味についてはその逆で、長濱蒸溜所の原酒に由来する緩い麦芽風味、柔らかさが口当たりをマイルドに。そこに三郎丸蒸留所の個性、樽由来の要素としてバーボンオークの甘さ、香ばしさと焦げ感のあるピートフレーバーという感じで続いていきます。
比率は5:5ではなく、三郎丸のほうが多そう。どちらも癖の強い原酒である中で、若さを感じさせませんし、ラフロイグっぽいスモーキーさもわかりやすく、加水も合わせていいバランスに仕上がっています。

・SECOND BATCH:BLENDED MALT WHISKY 700ml 50%
※上記三郎丸、長濱の原酒に、輸入原酒を加えてブレンド。
ジャパニーズがバーボン樽系の香味だったのに対して、ワールドのほうはシェリー樽に由来する香味要素がトップにあるのが特徴です。軽めの酸を伴うシェリー感、そこから麦芽の甘み、香ばしさ、じわじわとピートフレーバーと言うバランス型で、ピーティーなモルトとバーボン樽由来のフレーバーが主となる1st batchとは、大きくキャラクターが異なっています。
多少若さを感じますが、時間が経過すると原酒が馴染むのか変化する部分もあり、使われた原酒に由来してか、軽やかなスペイサイド地方の個性を伴うような、面白い1本です。

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■長濱蒸溜所 "INAZUMA" SYNERGY OF THE DISTILLERIES 
・BLENDED MALT JAPANESE WHISKY "SYNERGY BLEND" 700ml 47%

三郎丸:50PPMのヘビーピーテッドモルト(バーボン樽)
長濱:ノンピートモルト(バーボン樽)

バーボン樽由来の甘いオーク香。柑橘に加えて少し漬物に通じるような特徴的なフルーティーさを伴う酸があり、奥には微かにハーブ、スモーキーさ。長濱蒸溜所の造りだけあって、長濱モルト多めの柔らかい口当たりが印象的で、香りに反して味のほうでは三郎丸の個性はそこまで主張してきません。序盤は品の良い甘さの麦芽風味とオークフレーバー、余韻にかけて焦げたようなピート、微かにハーバルな要素とウッディネスが全体を引き締める。
比率は長濱7,三郎丸3といったところでしょうか。三郎丸のほうに比べると原酒のパワーの違いか、少しちぐはぐな部分もありますが、加水もあって10PPM程度のライトでフルーティーな、バランス寄りのブレンデッドモルトに仕上がっています。同蒸留所では同じ程度のピートレベルのライトリーピーテッドモルトも仕込んでいますが、それとは違う味わいが面白いです。

・WORLD BLENDED MALT WHISKY "EXTRA SELECTED" 700ml 47%
※上記三郎丸、長濱の原酒に、輸入原酒を加えてブレンド。
もはやこれも長濱蒸溜所の個性。とにかく一言で言えばアマハガン味なのですが、ノーマルのアマハガン以上にフルーティー寄りのタイプで、若さも感じない、1ランク良い原酒を使っていることが伺えます。
少しドライなトップノート、桃缶、あるいはキャンディーのようなケミカルでねっとりとした質感も伴うフルーティーさ。余韻にかけて微かなピート、フレーバーティーのような甘みとタンニン。ベースとなる輸入原酒のフルーティーな香味に、口当たりの柔らかさは長濱モルト、ウッディな甘みと三郎丸モルト由来のピートフレーバーが加わって、厚みのある味わいに仕上がっています。
予想比率は輸入原酒6~7、長濱2~3、三郎丸1。個人的に好みな味で、この企画に関係なく家飲み用に1本欲しいですね(笑)。

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■4種のウイスキーを比較して
正直、今回の2蒸留所のタイアップリリースは、蓋を開けたら結構似た味になるんじゃないかと野暮なことを考えていました。ところが、どちらのリリースにも明確な違いがあり、この企画によってもたらされる多様性が思った以上に大きいということが良くわかりました。

ジャパニーズブレンドの方は各蒸留所のハウススタイルを軸に、三郎丸には長濱の、長濱には三郎丸の、それぞれ今までとは違うキャラクターが加わった味わいがあります。
長濱多めと思われるINAZUMAは、三郎丸の強い個性をプレーンな原酒でかなり悩みながらバランス寄りにまとめたのではないかと感じるところ。三郎丸多めだと長濱のウイスキーじゃなくなってしまいますが、今回の企画趣旨を考えると多少はキャラクターを出していきたい。ブレンダーの苦労が伝わってくるようです。
その点で、三郎丸FEPはピート×ピート×アイラカスクという強い個性同士の掛け合わせですが、厚みのある三郎丸の原酒が上手くまとめつつ、口当たりの柔らかさは長濱譲り。今までのクラフトウイスキーには無い味わいに仕上がっていると思います。
また、どちらも3年熟成原酒の掛け合わせとは思えない仕上がりで、若さが目立つなんてことはありません。

一方で、大きな違いが出たのが原酒の選択肢が増えるワールドブレンド。当たり前と言えば当たり前ですが、ブレンダーの好みだけでなく、蒸留所としてのスタイルも現れているように思います。
既存リリースでブレンデッドについては方向性を定めていない三郎丸は、これまであまり見られなかったシェリー系原酒のキャラクターがトップにくる味わい。確か他のリリースだと、ムーングロウ・ハーフムーンくらいでしょうか。三郎丸蒸留所で仕込まれる原酒は50PPMのヘビーピートのみですから、そうではない原酒を使うことで、バランス寄りの味わいに繋げています。
逆に長濱はアマハガンという軸となるブレンデッドリリースがあり、それ用の原酒を多くストックする長濱では、そのキャラクターは変えず、今回入手した原酒を追加で使うことで、さらに複雑さのある味わいに仕上げてきたと感じられます。

昨今話題になってるジャパニーズウイスキーの基準の制定に際し、特にクラフトウイスキーメーカーはこれまでとは違う戦略も求められています。
つまり今回の企画は冒険であり、新しい挑戦です。この機会をどのように活かそうとしたか、それぞれのリリースに対してブレンダーの解釈が分かれた結果でもあり、なるほどこう使ったかと、思った以上に面白く、新しい味わいを楽しませてくれました。
4月29日には、購入者特典としてブレンダー2名のWEB対談も予定されているところ。これも今までには無い企画ですね。これらのリリースを飲みながら、満喫させてもらおうと思います。


三郎丸蒸留所×長濱蒸溜所 日本初のクラフトブレンドが実現

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先日、ジャパニーズウイスキーの基準発表に関連し、三郎丸蒸留所の声明を紹介させて頂きました。内容に関して賛同する意見がSNS等で多く見られ、また同時に原酒交換によって実現する”クラフトジャパニーズブレンド”への期待も高まっていたところ。
そのわずか10日後。三郎丸蒸留所、そして長濱蒸溜所から、早くも原酒交換によるコラボ企画「日本初のクラフトブレンデッドウイスキー」の発表がありました。

複数の蒸留所が連携して企画し、同時にプレスリリースまで行う。これまで日本の蒸留所には見られなかった動きにワクワクしてしまいます。
自分はどちらの蒸留所も、創業初期(三郎丸蒸留所はリニューアル後)から毎年見学させて貰っているだけでなく、オリジナルリリースでの関わりもあり、他の愛好家よりも近い関係にあると言えます。
後日、レビューも掲載したいと思いますが、今日はわかる範囲で今回のリリースに関する情報をまとめ、紹介していきます。


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リリースは写真左から
長濱蒸溜所 INAZUMA
ブレンダー:長濱蒸溜所 屋久佑輔
・BLENDED MALT JAPANESE WHISKY "SYNERGY BLEND" 47% 700本
・WORLD BLENDED MALT WHISKY "EXTRA SELECTED" 47% 6000本
※プレスリリースはこちら

三郎丸蒸留所 FAR EAST OF PEAT
ブレンダー:三郎丸蒸留所 稲垣貴彦
・"FIRST BATCH" BLENDED MALT JAPANESE WHISKY 50% 700本
・"SECOND BATCH" BLENDED MALT WHISKY 50% 5000本
※プレスリリースはこちら

※販売は3月30日から、両蒸留所が運営するオンラインショップ並びに関連酒販等で行われます。
なお、FAR EAST OF PEATのBatch1、IZUNA2本セットが3月8日から14日まで抽選受付となっています。詳細は各社の酒販またはメールマガジンなどを参照ください。



■ブレンデッドジャパニーズウイスキー2種
INAZUMAは、長濱蒸溜所のノンピートモルトと、三郎丸蒸留所のピーテッドモルトを使用(どちらもバーボン樽熟成)。
FAR EAST OF PEATは、三郎丸蒸留所のヘビーピーテッドモルト(バーボン樽熟成)と、長濱蒸溜所のライトリーピーテッドモルト(アイラクオーターカスク熟成)を用いたものとなります。

使われている日本産原酒の蒸留時期は、双方とも2017年で、熟成年数は3年強と言うことになります。
つまり3年熟成のブレンドモルト?と感じるかもしれませんが、どちらも2020年にリリースされたシングルモルトは若さを感じさせない仕上がでした。また、2017年蒸留の長濱モルトは柔らかく穏やかな風味、三郎丸モルトはヘビーで広がりのある風味で、系統は異なるものの、どちらの酒質も共通してブレンドで馴染みの良さを感じる点があり、若いから…という思い込みは早計と言えます。

INAZUMAの組み合わせはノンピートとピーテッド。ノンピートでバーボン樽熟成の長濱モルトは、麦の甘さ、オーク樽由来のフルーティーさが酒質の柔らかさと合わさって穏やかに味わえるタイプであり、それがピーティーさがメインの三郎丸モルトのパワーを包み込む、足りない部分を補うような仕上がりが期待できます。
またFAR EAST OF PEATが使っている長濱のモルトは、アイラクォーターカスク熟成ということで、実物も見たことがありますが、これはラフロイグ蒸留所のもの。麦芽の甘みとスモーキーさに加わる、アイラ由来のフレーバーの一押し。。。この競演がどのようなシナジーを生むのか、実に楽しみです。

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(今回のブレンドに用いられた原酒は、両蒸留所ともアップデートが施される前に仕込まれたものである。例えばポットスチルは、三郎丸は旧世代のスチルを改修したもので蒸留されている。長濱は現在より再留器が小型で、スチルの数も異なる。詳細は以下対談企画を参照。)

■ワールドブレンデッド2種について
今回の企画では、どちらのブランドにも輸入モルト原酒を使った、ワールドブレンデッド仕様がラインナップされています。
振り返ってみると、三郎丸蒸溜所はムーングロウで、長濱はアマハガンで、それぞれWorld Whisky Awardで部門受賞を経験するなど、自社モルトとバルク原酒を使ったウイスキーについても評価されているのです。

個人的に、オリジナルリリースの関係で両蒸留所の保有する原酒を飲む機会を頂いてますが、それぞれ異なる企業、蒸留所から調達されているもので、国内での追加熟成も経て全く違う素材としてブレンドに作用すると感じます。
両ブレンダーが目指す方向性の違いも含め、一体どんな味わいになっているのか。これまでのウイスキーシーンにはなかったユニークな試みであり、個人的にはこのワールドブレンド仕様の仕上がりに、密かに期待しています。

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(長濱、三郎丸両蒸留所で関わらせてもらったオリジナルブレンデッド。どちらの蒸留所にも自前、輸入で様々な原酒があり、品質も一定以上が担保されている。)

■両蒸留所のウイスキーと造り手の想い
三郎丸蒸留所、長濱蒸留所については、酒育の会のLIQULにて特集対談記事が公開されています。
偶然ですが、長濱蒸留所編の公開は、まさに本日からです。
今回のリリースをきっかけとして、両蒸留所に興味を持たれた方は、ぜひ以下の記事も参照いただければと思います。
創業から現在に至るまで、どのような変化があったのか、目指すハウススタイルや、造り手の想いなど、対談形式でまとめています。

【ジャパニーズクラフトウイスキーの現在】
Vol.1 三郎丸蒸留所編:https://liqul.com/entry/4581

Vol.2 長濱蒸留所編:https://liqul.com/entry/5209

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※自画自賛気味ですが、WEB公開されている記事の中では両蒸留所の情報を一番網羅している記事だと思います。

今回のリリースは、冒頭述べたようにジャパニーズウイスキーの基準制定を受け、三郎丸から原酒交換に取り組むという発表があった矢先のことでした。「いやいや、動き早すぎでしょ」と感じた方も少なくないのではないでしょうか。

実は、今回の企画の発起人と言える三郎丸蒸留所の稲垣マネージャーは、それこそ蒸留所をリニューアルして再稼働させた時から原酒交換のプランを持っており、他の蒸留所の見学や情報交換を行うなど、基準が形になる前から動きを進めていました。
私もクラフトウイスキー間の連携推進や、グレンマッスルでのジャパニーズブレンド構想があり、お互いに何が出来るか話をする中で、今回の一件もそういう動きがあると伺っていました。

鶏と卵の話ではありませんが、ジャパニーズウイスキーの基準に関する話を受けて原酒交換が動いたというよりは、ブレンドづくり含めて準備を進めていたところ、今年に入って唐突に動きがあり「いつやるの?今でしょ!」と、両蒸留所がリリースにGOサインを出した。という流れであるようです。
ですがその前後関係は些末なこと。これによって原酒交換の前例が出来、ノウハウも両蒸留所にあることになります。蒸留所として今後も取り組みを進めていくことに変わりはなく、むしろ各社にとっても追い風となる実績が作れるのではないかと期待しています。

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長濱蒸留所の屋久ブレンダーと、三郎丸蒸留所の稲垣マネージャー(兼ブレンダー)は、両蒸留所の距離が他の蒸留所に比べて離れていないこと、長濱蒸留所は規模が日本最小、三郎丸蒸留所は生産量が日本最小で、お互いに小さな蒸留所であることなど、何かと繋がりを感じるところがあり、意見交換をしてきたそうです。
例えば長濱蒸留所の原酒で、ある仕様が2018年頃から変わったのですが、それは稲垣さんのアドバイスからだったという話も聞いたことがあります。

詳しくは、ボトル購入特典となっている両ブレンダー対談動画で語られると思いますのでここでは伏せますが、こうして造り手同士が繋がって、お互いに品質を高めていく。
日本のウイスキーのルーツたるスコッチウイスキーは、大手メーカーと中小メーカーの共存共栄から発達してきた歴史があります。日本ではこれからクラフトを中心にそうした動きが出て来ればと、今回のリリースを第一歩とした動きに期待してなりません。

先の基準は、海外市場で既に反響を呼んでおり、ひょっとすると業界が想定していた以上の影響が今後出てくるとも考えられます。
そうして考えると、日本のウイスキー業界は、新しい時代に突入したと言えるのではないでしょうか。
新時代におけるクラフトウイスキーの魅力とは何か、そして市場を取るための計画は如何に。単に作れば良いだけではなく、大手との違いは何か、強みはどこにあるのか。必ずしも原酒交換だけが選択肢ではありません。
例えば蒸溜所がある地域のシェアだけは絶対に抑えると、地域限定ボトルのリリースというのもあるでしょう。厚岸蒸留所のような●●オールスターを作るというのも1手です。
基準に加え、今回のコラボレーションリリースが呼び水となって、クラフトウイスキー(自社ウイスキー)のさらなる魅力を、各社が考えていくようになるのではないかと思います。

規制下での創意工夫から、新たな付加価値が生まれるのは、産業界で数多起こってきた出来事の一つです。まずは今回のリリースを楽しみにしたいところですが、ここからのジャパニーズクラフトウイスキー業界の動きにも注目していきたいですね。

※関連記事:
三郎丸蒸留所 ニューポット2020 アイラピーテッド&ヘビリーピーテッド 60% +蒸留所からの意思表明 
「ジャパニーズウイスキーの表示に関する基準」に潜む明暗
ウイスキーにおけるジャパニーズウイスキーの表示に関する基準(日本洋酒酒造組合)


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三郎丸蒸留所 ニューポット2020 アイラピーテッド&ヘビリーピーテッド 60% +蒸留所からの意思表明

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SABUROMARU DISITILLERY 
ZEMON NEW POT 2020
Heavily Peated 52PPM 
Islay Peated 45PPM 
200ml 60% 

評価:無し(3年熟成未満のため)

ヘビリーピーテッド(52PPM):ボトル左
香り立ちはクリア。ニューポット香はあるが嫌味に感じるレベルではなく穏やか。甘みを帯びた麦芽香、微かに柑橘や皮つきパイナップル。ピート香は穏やかなスモーキーさから、徐々に焦げたようなニュアンスが開き、強く感じられる。
一方で、香りであまり目立たなかったピートフレーバーは、味わいでは序盤から広がる。コクと厚みのある麦芽風味と乳酸系の酸味。余韻はスモーキーで焚火の後の焦げた木材、土っぽさ。ほろ苦いピートフレーバーが長く続く。

アイラピーテッド(45PPM):ボトル右
はっきりと柑橘系の要素を伴うフレッシュな香り立ち。クリアでフルーティーな麦芽香に、微かな未熟要素。奥には強く主張しないが存在感のあるピートが香りの層を作っている。
味わいも同様に序盤は甘酸っぱくコクのある口当たりから、じわじわとほろ苦く香ばしい麦芽風味、ピートフレーバーが広がってくる。全体的に繋がりのある味わいで、余韻にかけてはピーティーでスモーキーだが焦げ感は控えめ、穏やかな塩気が舌の上に残る。

どちらの銘柄も未熟香は少なく、味わいも柔らかくコクがある。度数も60%を感じさせず、目をつぶって飲んだら若いモルトとは思うだろうが、ニューポットとは確信をもって答えられないかもしれない。それくらい新酒が本来持つだろう未熟要素、オフフレーバーが少なく、一方で原料や仕込み由来のフレーバーが双方ともしっかりと備わっている。

飲み比べると、内陸ピートで仕込まれたヘビリーピーテッドは、麦芽風味とピートがそれぞれ主張し合う構成。アイラピーテッドは、はっきりと柑橘系の要素にピートフレーバーが溶け込み、全体を繋ぐような一体感のある構成となっている。また、ピートフレーバーの違いも、前者には木材が焦げたようなスモーキーさが強く感じられるが、後者は焦げ感よりも煙的な要素が主体となって塩気も伴う。仕込みの時期の差もあるだろうが、香味の違いが興味深い。
2016年以前の姿を知っている人が飲めば、あの三郎丸の原酒なのかと驚愕することだろう。これらの原酒が熟成した姿、特にバーボン樽での数年後が楽しみで仕方ない。

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富山県、若鶴酒造の操業する三郎丸蒸留所が2020年の仕込みで造った、2種類のニューポット。
三郎丸蒸留所の酒質が2017年のリニューアルから大幅に改善し、特にマッシュタンを入れ替えた2018年からの伸びは、この蒸留所の過去を知っている愛好家は認識を改める時がきたと、以前ブログ記事にもさせて頂いたところです。

その後、以下の画像のように2019年にはポットスチルを入れ替え、世界発の鋳造ポットスチルであるZEMONが稼働。2020年には発酵槽の一つに木桶を導入。2019年の仕込みは、ポットスチルをはじめ蒸留設備の変更ということで調整に苦労されたようですが、2020年はそのノウハウを活かし、木桶による乳酸発酵と合わさって一層クリアでフルーティーさのあるニューメイクが生み出されています。

三郎丸蒸留所アップデート2018ー2020
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※1:2018年に導入された三宅製作所製のマッシュタン。従来に比べ、ピート香がさらに引き立つようになった。
※2:2019年に開発・導入された、鋳造製ポットスチルZEMON。従来のスチルに比べて様々に良い効果が期待できる。
※3:2020年に導入された木桶発酵槽。複数のタンクで発酵されたものを、最終的にこの木桶で乳酸発酵する。
※4:2020年から使用することとなった、アイラ島のピート。現在、国内でアイラピートを使った仕込みは他に例がない。


また、同じく2020年にはアイラ島で産出するピートで仕込んだ麦芽の使用を開始したことが、三郎丸蒸留所における大きな転換点ともなりました。
現在、日本に輸入されるピーテッド麦芽に使われているピートは、全てスコットランド内陸産のものであり、アイラ島で産出するピートを使った仕込みは行わせていません。背景には大手スコッチメーカーがアイラ島産出のピートをほぼ全て押さえてしまっていることがあり、アイラモルトブームでありながら、アイラピートを使った仕込みが出来ないというジレンマが日本のウイスキーメーカーにありました。

ピートフレーバーは、使われたピートの産地によって微妙に異なることが、近年愛好家間でも知られてきています。植物の根などが多く混じる内陸系のピート、海藻などが海の要素が多く混じるアイラ島のピート。前者は燻製のような、あるいは焦げたようなスモーキーさ、後者はアイラモルト特有とも言われるヨードや薬品的な要素、また海辺を連想させる塩気や磯っぽさをウイスキーに付与すると考えられます。

三郎丸蒸留所は、年間の仕込みの量が大手に比べて遥かに少ないことから、アイラピート麦芽を必要分確保することが出来たのだそうです。今後、2021年以降は全ての仕込みがアイラピート麦芽に切り替わり、原酒を蒸留していくと計画されていることから、まさに蒸留所の転換点となったのがこの2020年の仕込みであり、ニューポットであるのです。

ご参考:三郎丸蒸留所における各年度の取り組みについては、以下Liqulの対談記事に詳しくまとめられています。


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昨年11月、三郎丸蒸留所からは3年熟成のシングルモルト”THE FOOL”がリリースされ、50PPMという強いピーティーさ、リニューアル前の酒質からの大きな変化、厚みのあるヘビーな味わいに、驚かされ将来に期待を抱いた愛好家も少なくなかったのではないかと思います。
しかし、歴代のニューメイクを飲んでいくと、その驚きは序章でしかないと感じるはずです。上記画像※1~※4にあるとおり、設備や材料のアップデートとノウハウの蓄積により、それぞれの年に2017年の蒸留を上回る原酒が誕生しているのです。

特にリニューアル後の集大成とも言える、2020年仕込みのニューメイクが成長した姿は確信をもって間違いないと言えるものです。
綺麗なニューメイクを作る蒸留所は多くありますが、これだけ麦芽由来のコクや厚みがあり、現時点から未熟要素の少ないニューメイクなら、日本の熟成環境で強く付与される樽感を受けとめて短期で仕上がるでしょうし。また、空調を効かせた冷温貯蔵庫もあることで、20年を超える長期間の熟成という選択肢もあります。

大手蒸留所は、その生産規模から小規模な仕込み、試験的な蒸留は行い辛いものがあります。例えば、不定期に少量しか手に入らないボデガ産のシェリーの古樽よりも、シーズニングで安定して大量に供給される疑似シェリー樽のほうが需要があるという話からも、その傾向が見えてくると思います。

故に、小回りの利くクラフトでは三郎丸蒸留所のような独自の個性をもった蒸留所や原酒が生まれてくる楽しみがあり。2020年仕込みで新たに登場したアイラピーテッドもその一つです。
日本初となるこの原酒がどのように成長していくか。リアルタイムで見ていくことが出来る幸運を噛みしめつつ、本レビューの結びとします。

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※以下、余談:ジャパニーズウイスキーの基準に対する三郎丸蒸留所からのメッセージについて
先日、日本洋酒酒造組合からジャパニーズウイスキーの基準となる、表示に関する自主基準が発表されました。
当ブログでも前回の記事で基準を紹介し、期待できる効果と懸念事項を解説させて頂いたところです。また、同基準に対していくつかのウイスキーメーカーからは賛同の声明が発表され、あるいはWEBサイトの商品説明が切り替わる等、業界としても動きが見られます。

その中で、大きな注目を集めたのが、若鶴酒造・三郎丸蒸留所が発表した声明「ジャパニーズウイスキーの基準に対する三郎丸蒸留所の方針と提案」です。同社の発表は愛好家を中心にシェア・リツイートされ、今後基準を運用していく上での重要な示唆であるとする意見が多く寄せられています。



内容をざっくりまとめると、
・若鶴酒造、三郎丸蒸留所は同基準を遵守する。
・しかし今後日本のウイスキー産業には、国産モルト原酒の多様性と、グレーン原酒の確保という課題が生じる。
・国産グレーン原酒を国内のウイスキーメーカーに提供する仕組みの確立を後押ししていただきたい。
・国産モルト原酒の多様性については、三郎丸蒸留所は他の蒸留所との原酒交換に応じる準備があり、今後積極的に推進していきたい。
と言うものです。

自分の記事とも概ね同じ意見ですが、実際のウイスキー製造現場サイドからの声として、エピソードを交えて説明されたそれは、より説得力のあるものであったと感じます。
また、原酒の多様性確保に関し、国産グレーン原酒の懸念はクラフト1社だけではどうにもならないことですが、逆にクラフト側からの提案として「原酒の交換」が発表されたのは、重要な意思表明だと感じています。

日本のクラフト蒸留所は、小規模ながら大手とは異なる様々な個性の原酒が存在します。
三郎丸蒸留所については本記事でも紹介しているので割愛しますが、
厚岸蒸留所の、精緻な仕込みに北海道産麦芽がもたらすフルーティーな原酒。
安積蒸留所の、スコッチモルトを彷彿とさせるようなピーテッド原酒。
静岡蒸溜所の、軽井沢スチルと薪加熱方式というこれまでにない取り組みが生み出す原酒。
長濱蒸溜所の、麦芽の甘みと香ばしさが活かされた柔らかい味わいの原酒。
嘉之助蒸留所の、クリアで早期に仕上がる南国環境を彷彿とさせる原酒・・・。
個人的にぱっと思い浮かべるだけで、これだけ個性的なモルトがあります。

また、今や第二蒸留所まで稼働し世界規模のブランドととなった秩父は勿論。スペイサイド的な酒質を彷彿とさせるスタイルでリリースが楽しみな遊佐、樽や熟成環境に様々な工夫を凝らす信州、津貫。古参ながら苦戦していた江井ヶ島も設備をリニューアルして酒質が向上したという話も聞きます。1つ1つ紹介していくとキリがありません。
これらの原酒が交わり、ジャパニーズブレンデッドとしてリリースされる。まさに日本だからこそ実現できるブランドであり、夢のある、美味しさだけでなくワクワクするプランだと思います。


とはいえ、この手の話は”言うは易し”というヤツで、法律的な面も絡むことが懸念事項です。
なんだって前例のないことをするのはパワーがいるものですが、荒唐無稽な提案ではありません。例えば相互に等価設定で同量の原酒を樽で取引しあうような対応なら・・・。原酒交換が1件でも行われ、ノウハウが開示されれば後に続く蒸留所も増えてくるのではないかと思います。
また、今までは交換した原酒をどのように使われるのか等の不安もあり得たところ。整備された基準が、様々な意味で後押しになるのではないかとも感じます。

今回、声明を発表された若鶴酒造の稲垣マネージャーは、33歳と若いクラフトマンです。ですが蒸留所を見ても、本記事で説明したとおり老朽化した蒸留所を改修し、新しい技術を導入し、素晴らしい原酒を生み出すまで導いた行動力があります。
ならば、この提案もきっと早期に実現されるのではないかと思います。今後、三郎丸蒸留所から生み出される原酒だけでなく、発表された提案の実現に向けた動きについても、注目していきたいです。

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