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イチローズモルト 清里フィールドバレエ 26th & 27th 記念ボトル

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KIYOSATO FIELD BALLET
27th Anniversary & 26th Anniversary
Blended Whisky
Ichiro's Malt
2016's & 2015's 
700ml 48%

山梨県の"萌木の村"で開催されている、日本で唯一連続上演され続けているバレエの野外公演、清里フィールドバレエ。
その開催25周年を記念して2014年にボトリングされた第1弾から始まり、第2弾(26周年)、第3弾(27周年)で2016年まで計3種類、記念ウイスキーのリリースが続いています。

昨年末、同施設の村長である舩木さんから、手紙と共にこの記念ボトルのサンプルを頂きました。
本ブログをご覧になってくださっているだけでなく、こうしたお気遣いはただただブロガー冥利に尽きる話です。
折角なので、子育て中で外飲み出来ない妻と一緒に楽しませて頂きました。 

清里フィールドバレエ記念ボトルはそれぞれ生産者が異なり、25周年はサントリー。26周年、27周年はイチローズモルトが所有する原酒を使って限定生産しています。
25周年ボトルについては以前記事にしており、今回改めてテイスティングしたわけですが、やはり素晴らしいピュアモルト。グレーンを使っていない中であれだけの一体感に加え、熟成した原酒が織りなす美しいフレーバーを妻も絶賛していました。

そして今回の記事では、イチローズモルトがブレンド、ボトリングした26周年と27周年記念のブレンデッドウイスキー2本にスポットを当てて、レビューをまとめます。
こちらは双方とも羽生蒸留所の原酒をベースに、川崎蒸留所のグレーンをブレンドしたロストディスティラリーの共演。ブレンダーは勿論、肥土伊知郎氏です。
なんとも贅沢な飲み比べですが、そうする事で見える共通のキャラクターや、ブレンドの違いもありました。

26周年記念ボトルは、1990年蒸留25年熟成の羽生モルト原酒に、1982年蒸留33年熟成の川崎グレーンがベース。
27周年記念ボトルは、同じく1990年蒸留の羽生モルト原酒に、グレーンは約40年熟成の川崎グレーンをブレンド。
樽構成はどちらもバーボンの古樽やシェリー樽が中心のようで、イチローズモルトの原酒保有状況を考えると、同メーカーで考えうる最長熟、気合の入った組み合わせである事が伺えます。
(実際、ブレンドにあたり肥土氏はサントリー響30年を越えるウイスキーを作る事を目標としていたそうです。)

まずどちらにも共通するのが、羽生原酒らしい強めの樽香。熟成環境や樽構成からくる、ウッディーで酸味を伴う香味がいかにもらしさとして感じられます。
そこにグレーンの存在感は26周年ボトルの方が強く出ており、バニラや蒸した穀類を思わせる甘みが強く。対して27周年はモルトが強いのか樽感メイン、シェリー樽原酒由来の甘みと燻したようなアロマ、ハーブのような爽やかなニュアンスも感じられました。

こればかりは原酒の質や選択肢にも限りがあったと思うので一概には比較できませんが、サントリーのそれとはそもそもの育ち、ベースが異なる感じですね。
都会的で洗練された味わいに対し、イチローズモルトのブレンドは田舎の古民家を思わせる、荒削りでありながらどこか懐かしい。。。そんな気持ちにさせてくれるウイスキーでした。
観劇の構成で言う序盤は美しく華やか、中間から後半は様々な動きと伏線が絡まる重々しい内容。今年は起承転結で言うフィニッシュに当たるわけですが、何かしらリリースの動きがあるとは聞いており、今から楽しみです。
舩木さん、貴重な体験をありがとうございました!


【テイスティングノート】
◆イチローズモルト 清里フィールドバレエ 26周年記念 48%
香り:濃い甘さと酸味を伴う木香。一瞬華やかな熟成香を感じるが、すぐに古民家を思わせる香り。徐々に焦げた木のニュアンス、微かにハーブの爽やかさが開いてくる。
少量加水すると蒸した栗のような甘みや、その渋皮を思わせる渋みが前に出てくる

味:ウッディーでえぐみも伴うドライな口当たり。焼き芋、カラメルソースがかかったバニラ、古い梅酒を思わせる落ち着いた酸味と古酒感。余韻は一瞬刺激を感じるがまったりとした甘みとほのかなえぐみが長く続く。
少量加水すると余韻にかけてスパイシーな刺激を強く感じる。

◆イチローズモルト 清里フィールドバレエ 27周年記念 48%
香り:香り立ちは甘い樽香、燻したような焦げたアロマ。梅のような酸味、ツンとハイトーンなエッジとハーブの爽やかさ。加水すると古い樽由来のえぐみを伴う。

味:スパイシーな口当たり、ブルーベリーやサルタナレーズンの甘み、じわじわと古樽由来のえぐみが開いてくる。
余韻はスパイシーでウッディ、梅ジャムの酸味、微かにハーブ、濃く出した紅茶の渋みを伴い長く続く。
加水するとくるみを思わせるナッティさ、モルティーな旨味がある。

イチローズモルト ユナイティングネイション 2ndリリース

カテゴリ:
UNITING NATION’S
2nd Release
Pure Malt Whisky
Finished Pedro Ximenez Sherry Casks
700ml 50%

グラス:SK2
量:個人所有(頂き物)
場所:自宅
時期:不明
評価:★★★★★(5)


香り:カカオチョコを思わせるビターでウッディな香り立ち、ほのかに硫黄もある。奥にはセメダインのツンとした刺激に、リンゴ、コニャックのような酸味、多様なキャラクターを感じる。

味:メープルシロップの甘みにコニャックカスク系の酸味、そしてねっとりした甘みには硫黄も感じられる。紅茶の品の良い甘さと香り、砕いた麦芽、度数の割にあっさりとしている。余韻は甘くリッチだが、年生のある甘みが覆いかぶさって、やや面白みには欠ける構成。


ウイスキー仲間のKさんから頂いたボトル。
先日、アデルフィーがリリースしたバッテッドモルトウイスキー、グラヴァーを飲んでこのボトルを思い出し、押入れの中から引っ張り出してきました。 
2008年、日英友好150周年を記念して、なぜか当時のベンチャーウイスキーから2種類リリースされた記念ボトル。英国大使館が主催したUK-Japan2008の公認ウイスキーという位置づけになります。
セカンドリリースとなる今回のボトルは、ファーストリリース同様に日本とスコットランドのシングルモルトで作ったバッテッドモルトを、ペドロヒメネスシェリーカスクのフィニッシュしてリッチな味わいに仕上げてあります。

本ボトルの発売当時、ウイスキーの沼にハマり始めたばかりだった自分は、経験の浅さから使われている原酒の傾向等ほとんど理解できなかったわけですが、こうして改めて飲んでみると羽生蒸留所の原酒の影響がしっかり感じられます。コニャック樽原酒でしょうか、ペドロヒメネスの濃厚な甘さの裏から、独特な酸味も感じられます。
ブレンデッドタイプのウイスキーは、浅く広く誰でも飲める飲みやすさがあるとともに、知識と経験が積みあがってくると違う世界が見えてくるのもが面白い。ある程度飲みなれた人こそ、こういうタイプのウイスキーも嗜んではどうかな感じますね。

ゴールデンホース 羽生 14年 東亜酒造製造 キング醸造販売

カテゴリ:

GOLDEN HORSE
HANYU Distillery 
Aged 14 years 
Bottled 2004 (Distilled 1989 or 1990)
700ml 57%
評価:★★★★★★(6)(!)

香り:エステリーかつウッディー、華やかで艶のある甘さとチャーオーク香。ハイプルーフらしく鼻腔を刺激する香り立ち。メープルシロップ、バニラ、チェリー、焦げた樽材、焼き林檎、時間経過で微かにハーブ。まるでウェアハウスの中にいるよう。
少量加水すると樽香が穏やかになるが、新たなフレーバーが引き出せる変化は無い、

味:パワフルでコクのある甘い口当たりから、樽材由来のチャーオーク系のウッディネスが主体的に。
カラメルソース、レーズンクッキー、濃く入れた紅茶、余韻はウッディーでドライ、タンニンが染み込み甘い樽香が口の中を満たす。

これで2本目の飲み切りとなった、ゴールデンホース14年ハイプルーフ。ラストショットのテイスティング。
開封後ある程度時間が経過していることもあって少々余韻にヘタりが見えましたが、開封直後から少し経った頃のピーク時なら、さらに豊かな樽香と弾けるような力強い味わいが楽しめます。
ありがたいことにウイスキー仲間からの融通で自宅ストックがあるボトルですし、今後新たに開封したときはまたそのボトルで記事を書いてみようと思います。

なお深夜時代にこのボトルを飲んだ時は、濃い樽感をシェリー系と誤認してテイスティング記事を書いてしまいました。
今改めて飲み直すとこれは違うなと。おそらくリチャードバーボンか新樽の57%加水ボトリングでしょう。
シングルモルト表記なのとボトリング本数が約300本程度であることから、仮にリチャードバーボンバレルとすると2樽バッティング位だと考えられます。


ゴールデンホースというと焼酎ボトルやペットボトルの地ウイスキーという印象が強いかもしれませんが、シングルカスクまたはカスクストレングス仕様でリリースされたモノはなかなか面白いものが多いです。
この14年はリリース元が 日の出みりん ことキング醸造株式会社で、イチローズモルトが設立される前に少量リリースされたもの。同じ羽生でありながらカードシリーズのように投機対象になっているわけでもなく、あまり知られていなかったボトルです。

時は2004年、経営悪化から2000年に民事再生法を適用した東亜酒造をキング醸造が買収して傘下に置きます。
キング醸造はみりん系を主力製品とするメーカーですが、2000年にリキュール免許を取得し、みりん以外の事業に手を広げはじめていた時期。みりんに必要なアルコールの確保に加えて、他酒類事業への展開を狙っての動きでもあったようです。
当時はウイスキー冬の時代真っ只中。キング醸造側もすぐ販売可能な清酒や焼酎を主体に東亜酒造を回していく考えで、ウイスキー事業から撤退する決定を下します。
原酒の破棄も決ったため、肥土伊知郎氏が引き取り先を探して奔走したという話は、イチローズモルトの沿革としてあまりにも有名。合わせてキング醸造については、飲み手側から「なんてもったいないことを」と今になって言われているわけです。が、企業側からすれば原酒を買い取るということは、さらにお金と税金が発生することでもありますし、下手に売って不良在庫を抱える状況になっても余計苦しくなるだけです。

その2004年、キング醸造がとりあえずちょっと売ってみるかとリリースしていたのが今回のボトルです。
当時価格で5500円前後。蒸留時期は1989年~1990年ごろで、クセはそこそこ強いですがシングルモルトとしては魅力的なウイスキー。今考えれば破格も破格ですが、結果は芳しくなかったようです。
仮にもし、このボトルが激売れして羽生ブームが起こったりしていたら、キング醸造側も気が変わっていたかもしれませんし、そもそも時代が地ウイスキーブームの待っただ中だったりしたら、今のイチローズモルトは存在しなかったわけです。ifを考えれば考えるほど、数奇な運命の中にあるボトルのひとつと感じます。

これまでの発掘状況から、西のほうの酒屋にはまだ在庫が眠っている可能性があるようです。
もし見かけたら是非購入or一回飲んでみてください。

イチローズモルト 羽生 15年 46.5% ファイナルビンテージ 5thリリース

カテゴリ:
Ichiro's Malt 5th Release
THE FINAL VINTAGE OF HANYU
AGED 15 YEARS
Japanese Single Malt Whisky
Bottled 2015  (195/3710)
700ml 46.5%
暫定評価:★★★★★(5-6)

香り:ややドライで華やかなオーク香。ホットケーキシロップの甘さ、白ぶどう、アロエ、微かにミントや草っぽさ。奥から徐々にチャーオークフレーバー。新築の家具、ヒノキを思わせる香りもある。
少量加水するとオークとハーブの爽やかな香りが主体的に。ジャパニーズ的な香味も感じられる。

味:粘性を感じる口当たり、全体的に平坦で盛り上がる印象がない。酸味と湿ったオーク材、地ウイスキーの焼酎的な癖も感じる。梅干し、お菓子のスナック、甘み控えめなシロップ。香ばしさと酸味が混在し、余韻はビターでほのかにウッディー。少量加水するとまろやかで甘みが少し出て来るが、全体的な香味は変わらない。


「イチローズモルト」シリーズの第5弾。このリリースはラベルに天然記念物であるシラコバトがかかれており、シリーズを重ねる毎に1羽ずつ増えていくのが特徴となっています。
原酒は今は無き東亜酒造の羽生蒸留所、今回はその操業最終年にあたる2000年に蒸留された原酒で構成されており、別シリーズ銘柄であるファイナルビンテージオブ羽生の銘も打たれています。
ファイナルビンテージシリーズだと基本的にカスクストレングスでリリースされることが多かったように思いますが、今回はイチローズモルトシリーズなので加水のバッティングです。ボトリング本数も3710本と多く、使われた樽の種類にもよりますが最低7〜8樽、現実的には10樽以上はバッティングしたんじゃないかと思います。

羽生のリリースは半年振りくらいでしょうか、もう原酒無いだろと思ってたら、まだ残ってるんですね。
リリース情報は11月のウイスキーフェスで発表されていたという話ですが、フェスにいけなかった自分は最近酒屋のビラで知りました。イチローズモルトの複数樽バッティング加水は過去のリリースから一抹の不安を覚える部分もあったものの、羽生蒸留所の樽(新樽やリフィルバーボン)が効いたモルトは好みのものが多いので、どういう仕上がりになるのか楽しみでもありました。
 
まず第一印象は「色々混ざってるなあ」というもの。単一樽ではない香味。
香りは良い部類です。主体となる樽由来の華やかで甘みのあるアロマは、多少ドライな部分はあるものの中々良くまとまっていると思います。チャーオーク的な要素が見え隠れするのも、一部そうした原酒を使っているのでしょう。多種類の樽をバッティングした影響か、ちぐはぐな部分も見られますが、口開け直後ですから今後時間経過でまとまってくるとも考えられます。
また、タバコやシガーの煙と合わさるとちぐはぐさが消えてクリーミーで上質なオーク香、グリーンレーズンやアプリコットのような甘酸っぱい香りに変化します。これは飲む店や場所によって評価が分かれる要因となりそうです。

問題は味です。香りで期待できる要素があっただけに、正直味は首を傾げました。
加水の影響か樽由来か、べったりとして平坦で、後半にかけて風味が広がっていきません。
香りほど多様な個性も感じられないし、焼酎的なクセを感じるのも自分の中ではウーンとなってしまいます。
イチローズモルトの複数樽バッティングはたまにこういう「ただ混ぜました」的なモノが出るので、先に述べた一抹の不安があるんですよね。
経験上、これは加水や時間経過でどうにかなる要素ではないので、悩ましい味わいです。香りは★6ですが、味は★5か・・・。 

そういえばかつてリリースされたカードシリーズのジョーカー(カラー)も、色々混ざりすぎててごちゃごちゃでしたがハイボールにすると旨かったですし、案外ロックやハイボールで飲めば美味しくいただけるのかも。
口開け直後であることも考慮し、暫定として評価に幅は残しますが、自分の中では一長一短、厳しい評価をせざるを得なかったボトルでした。


(追記:同シリーズはホグスヘッドなどの1stカスクで熟成の後、2ndカスクでフィニッシュする流れが採用されてきましたが、第5弾はコニャック樽の原酒を含む複数種類の原酒をバッティングしたものだそうです。色々混じってるという印象の通りでした。)

笹の川酒造 山桜15年 シェリーウッドフィニッシュ・カスクストレングス

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とある方から貴重なボトルのテイスティング機会を頂きました。
いや、これまでもかなり多くの方からそういう機会を頂いているのですが、今回は「ブログ用にボトルがあったほうが良いでしょ」って、ボトルごとレンタル。受け取ってみたら未開封ボトルだったというすさまじいオマケ付きで(汗) 。

自分は酒業界と無縁の環境で働いていて、「くりりん」という本名と全然関係ないHNも一応名乗っています。
そんなどこの誰ともわからないヤツでも真剣にやってると、こうして協力してくれる方が出てくるんですよね。
別に自分に協力したところで何が出てくるわけでも無いのに。これ、結構感動的な出来事です。
これまでも多くの愛好家、関係者の皆様から、諸々の終売・ニューリリース情報、在庫情報、テイスティング会への参加・・・本当にいろんな情報・機会を頂いています。
もうなんていうか、感謝しかありません。

雑談が長くなりそうなのでそろそろテイスティングに移ります。今回の更新は、もちろんそのテイスティングの機会を頂いた1本です。


YAMAZAKURA 
Aged 15 Years 
Sherry wood finish 
Cask strength 
Sasanokawa shuzo Japan 
59% 700ml 

評価:★★★★★★(6) 

香り:注ぎたては黒砂糖の香りが感じられるが、すぐにその他のアロマと一体化していく。
アロエのような植物感とシェリー樽のニュアンスを伴う甘い香りとかすかな酸味、ハーブの爽やかさ。 加水すると白葡萄、ハーブが際立つ。

味:注いだ直後は硬さがあり、微かなサルファリーとシェリー樽のニュアンス。様々な樽香やフレーバーがあってばらつきも感じるが、時間を置くとトカイワインのような甘口でとろりとしたテクスチャーに変化。蜂蜜や煮た林檎を思わせるリッチな甘さ、和三盆、ハーブ、中盤からピリピリとしたスパイスと、ほのかなウッディネス。 鼻抜けは品の良い木香、余韻はドライでスパイシー。


今年2月、突如笹の川酒造からリリースされた山桜15年ピュアモルト。このシェリーカスクフィニッシュは、その後続となったギフト向け商品で、某デパートのギフト品としては20本限定で販売されたボトル。(として"は"、ですよ。)
笹の川酒造で蒸留が行われていた当時の原酒がメインで、樽で15年間熟成させた後、タンクで5年以上貯蔵、最後はシェリー樽でフィニッシュ。通常の山桜15年と同じ系譜で、 仕上げが異なる造りです。

当ブログの山桜15年の記事は以下。
 
シェリー樽での熟成期間は不明でしたが、シェリーウッドフィニッシュでこの価格(3万4000円)や、ラベルの色合いなどから、少なくともマッカラン12年くらいの色合いはあるんじゃないか、と思っていました。しかしそんなことは無く、香味のシェリー感も思ったほどはありません。おそらくリフィルシェリー樽を使ったのでしょう。フィニッシュの期間も、あって1~2年程度という印象です。
フィニッシュに使った樽は笹の川酒造が持っている樽とすると、例えば羽生蒸留所の原酒を払いだした後のシェリーカスクを使ったのかなと見ています。

全体の出来としては通常の山桜15年が、バッティングだフィニッシュだで、細いボディにこてこてと香味が乗っていてうるさく感じましたが、こちらはハイプルーフでボディがしっかりしているので、まだまとまりがあります。(相変わらず色々感じる味、地ウイスキーくささはありますがw) 
評価は5か6か迷うところですが、通常のカスクや加水15年よりはまとまってるので6でいきますか。


さて、樽の詳細は、きっと現地在住のウイスキー仲間が調べ上げてくれると思うので(笑)。
ここではフィニッシュに使われた樽が、羽生のリフィルシェリーカスクであると仮定して、羽生蒸留所と笹の川蒸留所にあるエピソードを紹介しようと思います。(休日のパパ業務もあって、この話をまとめるには時間が足りず、日曜まで使ってしまいましたw。 )

笹の川酒造と羽生蒸留所の関係は、多くの方がおおよそご存知のことと思います。
羽生蒸留所の保有者であった日の出みりんが原酒を破棄しようとした際、現イチローズモルトの肥土一郎氏の依頼に応じて一時的に原酒を同社の熟成庫に仮置きしていたという話。この話は少々端折られた部分があって、実際は酒税法の関係で仮置きは出来ず、笹の川酒造が一時的に原酒を買い取ったのだそうです。(肥土氏が退職金などを当てて買い取っているため、結果的には同じことなのでしょうけれど。) 
そのため、イチローズモルト初期の頃のリリースは笹の川酒造を通しての販売となっています。
いくら一時的とはいえ、明日どうなるかもわからない個人の依頼で、あれだけの原酒を買い取ってしまう。また、笹の川は熟成庫というような専用の建物は無く、倉庫の一部が熟成スペースのような形になっているのですが、サイズの大きなシェリー樽を収容するために、ラックの改造までしたとのこと。
なんていうか、笹の川さん男気あふれすぎですね。

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(2012年10月、ウイスキー仲間の黒氏により撮影された、笹の川酒造の熟成スペース。羽生蒸留所のものと思われるシェリー樽。今回使われた樽はひょっとして・・・)

そうした背景もあって、肥土氏は原酒を笹の川から秩父に移動させる際、いくつか樽を笹の川に残していかれたそうです。
笹の川酒造は当時既にウイスキー用のポットスチルは撤去してしまっていましたが、買い付けた原酒などを使ってチェリーをはじめとしたウイスキー製品のリリースは続けていました。そして国内でハイボールブームが起こり、ウイスキーに再び光が当たり始め、焼酎の設備などを流用してウイスキー事業に再度参入をする計画をしていた矢先・・・震災により保有していた関連設備が全てダメになってしまったそうです。
あの震災は、本当に多くのものを我々から奪っていきました。


2015年、笹の川酒造は1765年の設立から250年を数えました。
まさに節目の年、今年こうして様々なリリースがあることは記念の狙いもあるのかもしれません。(実際それにあわせて原酒買い付けの動きもあったようですし。)
そこに羽生の樽を使ったフィニッシュとあれば、上述の背景もあってなんともドラマを感じます。
まぁ正直、このリリースに関しては、ちょっと樽を詰め替えただけでこの価格は無いだろ~っていうか、もうひとつのカスクストレングスが700ml換算でも半額以下なのに、何のコストを載せたんですかという気持ちが無いわけではないので、無理やり納得させてる感もあるのですが(笑)。

ちなみに250周年の節目を迎えた笹の川では、ウイスキー事業参入の計画も検討されているそうです。
FB経由の情報で、まだ話半分レベルですが、次はピーテッド原酒を仕込みたいと。
少なくとも一連の山桜シリーズは笹の川酒造の新時代への狼煙として、同社の名前を再び世の中に知らしめるには、充分すぎる効果があったように感じます。
今後の動き、リリースも楽しみにしています。


追記:この記事は、ボトルを貸していただいたS氏。写真や多くの情報を頂きました黒氏、S氏(ボトルのS氏とは別な方)、W氏など多くの方々からの情報を元に書かせていただいております。重ねて感謝申し上げます。

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