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安積蒸留所 山桜 ブレンデッドモルトジャパニーズウイスキー 50% シェリーウッドリザーブ

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ASAKA DISTILLERY 
YAMAZAKURA 
BLENDED  MALT JAPANESE WHISKY 
SHERRY WOOD RESERVE 
700ml 50% 

評価:★★★★★★(6ー7)

香り:ウッディで甘くフルーティーな香り立ち。麦芽や胡桃の乾いた要素に、アプリコットジャムや林檎のカラメル煮を思わせるしっとりと甘いアロマ。微かにスパイシーな要素が混じり、さながら洋菓子にトッピングされたシナモンやマサラを連想する。

味:リッチでコクのある口当たり。林檎ジャムや洋梨の果肉の甘み、栗の渋皮煮、紅茶を思わせるタンニン。微かに乾いた麦芽のようなアクセント。樽由来の要素がしっかりあり、それが果実の果肉を思わせるフルーティーさと、程よい渋みとなって口の中に広がる。
余韻はオーキーで華やか、スパイシーな刺激。黄色系のフルーティーさが戻り香となって長く続いていく。

まるで熟成庫の中にいるような木香と、しっとりとして熟成感のある甘いアロマが特徴的。追熟に使われたシェリーカスクは2〜3回使われたものか、全体を馴染ませている反面、シェリー感としては控えめで基本はバーボン樽由来の濃いオークフレーバーが主体。
構成原酒はおそらく2種類。一つは「かねてより弊社が貯蔵熟成しておりました原酒(背面ラベル記載)」で、10年程度の熟成を思わせるフルーティーさ。もう一つが4〜5年熟成と思しき安積蒸溜所のスパイシーで骨格のはっきりとした原酒。これらが混ざり合い、複層的な仕上がりを感じさせる。個人的にかなり好みな味わい。

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安積蒸留所を操業する笹の川酒造が、第二熟成庫の建設を記念してリリースした1本。440本限定。
本製品は安積名義ですがブレンデッドジャパニーズの区分であり、安積蒸留所の原酒に加え、背面ラベルに記載の通り「同社が貯蔵してきた原酒(国産)」がブレンドされ、シェリーカスクで18カ月のマリッジを経ているのが特徴となります。

本リリースについてはこれ以上明確な情報がなく、同社山口代表の言葉をそのまま伝えれば「シークレットリリースについて公式に情報を発信できませんが、そこも含めて予想しながら楽しんで頂きたい。」と。
また「愛好家がそれぞれの視点から予想を発信することは止めない」とのことなので、当方もいち愛好家として、本リリースの構成原酒等に関する予想を、以下にまとめていきます。

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予想の結論から言えば、構成原酒は
・安積蒸留所ノンピートモルト バーボン樽 4年程度熟成原酒
・秩父蒸留所ノンピートモルト(安積蒸溜所熟成) バーボン樽 10年程度熟成原酒
この2種類を1:1程度か秩父側多めの比率でバッティングして、リフィルシェリー樽でマリッジ。シェリー感は明示的にこれという色濃いものは出ていませんが、繋ぎとなるような品の良い甘さが付与された上で、50%に加水調整したものではないかと。

フレーバーとしては、秩父蒸溜所が昨年リリースした秩父 THE FIRST TENに似た、熟成を経たことで得られるフルーティーさと濃いオーキーさがあり。そこにほのかな酸味、骨格のはっきりしたスパイシーさと麦芽風味…これは安積蒸溜所のノンピート原酒でリリースされた、安積 THE FIRSTの延長線上にある個性。
既存のリリースからも感じることが出来る個性が、混ざり合ったブレンデッドモルトであると考えています。

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また、今回のリリースの特徴であり、そのヒントではないかと思うのが、シングルモルトではないのに安積(#あずみじゃないよあさかだよ)名義となっていることです。
笹の川酒造のウイスキー貯蔵庫には、蒸溜所の操業前から秩父蒸留所の原酒が10樽ほど保管されており、私の記憶が確かなら、該当原酒は蒸溜所を見学した2018年時点で8年熟成だったはずです。

その時点で今回のリリースに通じるフルーティーさが既にあったわけですが、2021年までマリッジ期間の18か月を含め3年強の熟成を経たとすれば、今回のリリースの構成原酒として違和感はなく。
何より蒸溜所は異なるとしても、ウイスキーの熟成で重要なファクターである”熟成環境”が、ほとんどの期間を安積蒸留所の環境下にある原酒なら、安積名義としてリリースするブレンデッドモルトウイスキーであっても同様に違和感のない構成であると言えます。

以上のようにいくつかの状況材料と、こうだったら良いなと言う願望が混ざった予想となっていますが、少なくともブレンドされている原酒の片方は10年前後の熟成期間を彷彿とさせるものであることは違いなく。そうなると、国内蒸留所でそれだけの原酒があって、しかも笹の川酒造が”かねてから熟成させていた”となる蒸溜所は、おのずと限られているわけです。

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(建設中の安積蒸留所の第二熟成庫。画像引用:笹の川酒造安積蒸留所公式Twitter

さて、ここからは仮定の話の上で、自分の願望というか、笹の川酒造とイチローズモルトの繋がりについて紹介します。

今や世界的なブランドとなったイチローズモルト。その設立前、肥土伊知郎氏が東亜酒造・羽生蒸留所の原酒を引き取った際、笹の川酒造がその保管場所を提供したという話は有名です。
ただしこれは微妙に事実と異なっており、日本の酒税法の関係から原酒を買い取ったのは笹の川酒造であり、イチローズモルト(ベンチャーウイスキー)の体制が整うまでは、笹の川酒造がイチローズモルトのリリースを代行していたのです。

ウイスキーブームの昨今なら、こうしたビジネスも受け入れられるでしょうが、当時は2000年代前半、ウイスキー冬の時代真っ只中。ほぼ同時期、余市蒸留所ですら1年間創業を休止した時期があったほどで、日本のウイスキー産業は明日もわからぬ状況でした。
そんな中大量の原酒を買い取り、血縁があるわけでもない1人の人間のチャレンジに協力する。なんて男気のある話だろうかと、思い返すたびに感じます。

さらに、笹の川酒造に保管されていた秩父蒸留所の原酒10樽。これは確か2010年頃に蒸留されたもので、ブームの到来はまだ先であり、蒸留所として製品がリリースされる前の頃のもの。
原酒を購入した経緯もまた、両者の繋がりの強さ、冬の時代を共に超えていこうという助けの手であるように感じます。

一方で、笹の川酒造が安積蒸留所として2016年にウイスキー事業を再開するにあたっては、秩父蒸留所と伊知郎さんが協力したのは言うまでもありません。
今回のリリースの構成原酒を秩父と安積とすれば、それは単なるブレンデッドとは言えない、熟成期間以上に、長く強い繋がりが産んだウイスキーであると言えます。個人的には待望の1本ですね。
単純に日本のブレンデッドモルトとして飲んでも美味しい1本ですが、是非そのバックストーリー含めて考察し、楽しんで貰えたらと思います。

清里フィールドバレエ 2020 白鳥の湖 63% イチローズモルト 秩父蒸留所

カテゴリ:
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Kiyosato Field Ballet
31th Anniversary 
Ichiro's Malt 
Single Malt Japanese Whisky
Chichibu Distillery 
Aged 7 years 
1 of 680 Bottles 
700ml 63%

暫定評価:★★★★★★★(6ー7)

香り:甘やかで穏やかに立ち上る熟成香。トップノートに梅や杏を思わせる酸が微かにあり、アーモンドを思わせる香ばしさと、ほのかに酵母やピーテッド麦芽そのもののようなスモーキーさ、麦芽香が続く。グラス内で刻々と変化する個性のみならず、その残り香も実に魅惑的。秩父らしいスパイシーさと、長期熟成したウイスキーをも連想するウッディで甘酸っぱい樽香が感じられる。

味:しっとりとした口当たりから反転して力強い広がり。序盤は秩父原酒らしいハッカ、和生姜を思わせるスパイシーさが一瞬あった後、置き換わるようにウッディな甘み、微かに林檎のカラメル煮、オレンジジャム、古典的なモルティーさが穏やかなピートフレーバーを伴って広がっていく。
余韻はフルーティーな甘みとモルティーな香ばしさ、ジンジンとした刺激はゆったりと落ち着き、微かに残るピート香がアクセントとなる、官能的なフィニッシュが長く続く。

ノンピートモルトとピーテッドモルト、2樽合計4樽のバッティングとのことだが、それ以上に感じられる複層的な味わい。ノンピート3樽、ピーテッド1樽という構成だろうか。香味に起承転結があり、序盤は秩父らしい個性の主張がありつつも、余韻にかけてピーテッドの柔らかいスモーキーさと、モルティーな麦由来の古典的な甘みに繋がる。度数63%に由来する香味の厚み、広がりがある一方で、それを感じせない香りの穏やかさと口当たりの柔らかさも特徴と言える。

少量加水すると甘酸っぱさ、オールドモルトを思わせる古典的なニュアンスが前面に出て、スモーキーフレーバーと交わり一体的に広がっていく。ジャパニーズらしさと、在りし日のスコッチモルトを連想する要素が渾然一体となった官能的な味わいは、間違いなく愛好家の琴線に響くだろう。
それにしても、秩父モルト2樽だけでこの味わいがつくれるとは、俄に信じられない。麦芽か、樽か、通常とは異なる特別な何かが作用しているように感じる。こうしたミステリアスな要素がウイスキーの魅力であり、面白さである。

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山梨県・清里、萌木の村で毎年8月に開催されているバレエの野外公演。定常公演としては日本で唯一という”清里フィールドバレエ“の第31回公演を記念したボトルが、2020年夏から遅れること約半年、3月下旬からリリースされることとなりました。
本サンプルは、リリースに先立って萌木の村 舩木村長から頂いたものです。ボトルの提供はBAR Perchで先行して行われており、今後は一部BARを中心に関係者限りで展開されていくとのことです。

清里フィールドバレエ記念ボトルは、第25回記念としてサントリーから特別なブレンドが。第26回から第29回はイチローズモルトから羽生原酒と川崎グレーン原酒を使ったブレンデッドウイスキーがリリースされていたところ。これだけでも伝説と言うには十分すぎるリリースでしたが、節目となる2019年第30回開催では、再びサントリーから白州30年という過去例のないスペックのボトルがリリースされていました。
※過去作のレビューはこちら

一方、別ルートで聞いた話では、イチローズモルトに羽生原酒と川崎グレーン原酒のストックはほとんど残っていないとのこと。サントリーも毎年毎年協力出来るわけではないでしょうし、ならば今後、フィールドバレエとして過去作に相当するスペックのボトルがリリースされることは難しいのでは・・・と。実際、2020年夏を過ぎてもリリースの報せはなく、第30回をもって記念リリースは終わってしまうのかと、そう感じてすらいました。
(そうでなくても、第30回の1本は、フィールドバレエシリーズのフィナーレと言われても違和感のない、奇跡的なリリースでもありました。)

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ですが、コロナ禍にあっても第31回清里フィールドバレエが開催されたように、ウイスキーとしてのフィールドバレエも終焉を迎えた訳ではありませんでした。
同ウイルスの影響で苦しい想いをしている関係者、BAR・飲食業界に少しでも活気を、前向きな気持ちを与えることが出来たらと、舩木村長がイチローズモルト・秩父蒸留所を訪問して直接オファー。
今作は、秩父蒸留所のモルト原酒のみで造る、全く新しいチャレンジとしてフィールドバレエ記念ボトルがリリースされたのです。

今作のテーマは、第31回フィールドバレエの演目であった「白鳥の湖」です。
そのストーリーを構成する白と黒、善と悪の要素に照らし、スタンダードな個性のノンピートタイプの秩父モルトと、ピーテッドタイプの秩父モルト、正反対な2つの原酒が選ばれ、ブランドアンバサダーでもある吉川氏によってバッティングされたものが今作のシングルモルトとなります。

熟成年数は7年、使われた樽は4樽(うち1つはチビ樽)、ボトリング本数は680本とのこと。バーボンバレルからのボトリングでは、同じ年数だと180~200本程度となるのが秩父蒸留所で良く見られるスペックであるため、4樽のうち3樽がバーボンかホグスヘッドとすれば、ほぼ全量使われているものと考えられます、少なくともどちらか片方の樽は、最低500本程度は取れる、大きな樽で熟成した原酒が使われたのではないかと推察されます。

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それでは、この新しいチャレンジとも言えるリリースを、香味で感じられた要素から紐解いて考察していきます。

香りのトップノートは度数63%を感じさせない穏やかさ。ウイスキーには香りの段階である程度味のイメージが出来るものが少なからずありますが、このウイスキーは逆に香りから全体像が見えないタイプで、ピートスモークの奥にあるフルーティーさ、甘やかな熟成香に味への期待が高まる。まるでステージの幕がゆっくりと上がり、これからどのような展開、演出があるのかと、息を飲む観客の呼吸の中で始まる舞台の景色が連想されるようです。

飲んでみると、香り同様に穏やかな始まりで、バーボン樽とは異なる落ち着きのあるウッディな甘みがありつつ、力強く広がる秩父モルトの個性。これはノンピート原酒に由来するものでしょうか。秩父モルトの殆どに感じられる独特なスパイシーさ、そこからモルティーな甘みとピーティーなほろ苦さ、穏やかなスモーキーさへと、まさに白から黒へ場面が変化していきます。

物語において、結末はその印象を決定づける重要な要素です。
本作は、スモーキーフレーバーをアクセントに、リフィル系の樽の自然なフルーティーさ、ウッディな要素、そしてモルト由来の香ばしさと甘みが渾然となり、白と黒の個性が混ざり合うフィニッシュへと繋がっていく。軽く舌を痺れさせた刺激は観劇を終えた観客から響く喝采のようでもあり、名残を惜しむように消えていくのです。

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(直近リリースでバーボン樽系ではないフルーティーな秩父としては、THE FIRST TENがある。このリリースに感じたリフィルシェリー系のフルーティーさは近い印象があるものの、スモーキーさと後述する特別な要素で、異なるウイスキーに仕上がっている。)

ここで特筆すべきは、樽由来の要素として1st fillのバーボンやシェリー樽といった、俺が俺がと主張してくるような強い個性ではなく、麦芽由来の風味を引き立て、穏やかな甘みとフルーティーさをもたらしてくれる引き立て役としての樽構成です。その点で、このリリースに使われた樽は香味から判別しにくくあるのですが、バーボン樽だけではない複雑さがあり、なんとも絶妙な塩梅です。

何より、レビューにおいて”官能的”という表現を使うに足る特徴的なフレーバーが、このシングルモルトの魅力であり、ミステリアスな部分もであります。
ウイスキーのオールドボトルや、あるいは適切な長期熟成を経たウイスキーが持つ、ただドライでスパイシーなだけではない、独特の風味・質感を持ったモルティーさとフルーティーさ。このボトルは7年という短期熟成でありながら、そうした個性が溶け込み、香味において愛好家の琴線に触れうる特別なニュアンスを形成しています。

秩父の原酒はノンピート、ピーテッドとも様々飲んできましたが、こうしたフレーバーを持つものはありませんでした。
素性として、何か特別な仕込みの原酒か・・・可能性の高さで言えば、どちらかの原酒を熟成していた樽、またはマリッジを行った樽が羽生や川崎グレーンといった長期熟成原酒を払い出した後の樽だったりとか、白と黒の原酒の間をつなぐ存在がもう一つあったとしても不思議ではありません。
さながらそれは、フィールドバレエが公演されている、夏の夜の空気、清里の大地の香りのような、フィールドバレエたる舞台を形作る重要な1ピースのようでもあります。

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このブログを読まれている方はご存知かもしれませんが、私は秩父第一蒸留所のモルト原酒に見られる特定のスパイシーさ、えぐみのような個性があまり好みではありません。
飲んでいるとこれが蓄積されてきて、胸焼けのような感覚を覚えて、飲み進まなくなることがしばしばあるためです。

が、このウイスキーでは嫌味に感じないレベルのアクセント、多彩さを形成する要素にすぎず、むしろ好ましいフレーバーへ繋がって、味わい深く仕上がっています。確か秩父に★7をつけるのは初めてですね。
それこそ純粋に味と1杯の満足感で言えば、過去作である第26〜29回の羽生原酒と川崎グレーンのブレンドリリースに負けていません。長期熟成による重厚さは及ばないものの、若い原酒のフレッシュさと、それを補う落ち着いた樽の要素とピート香、余韻にかけて全体のバランスをとっている特別な要素の存在。。。今だから創れる味わいがあるのです。

先人の遺産ではない、現代の作り手と原酒が生み出す、清里フィールドバレエ記念ボトル、新しい時代の幕開け。ミステリアスな魅力も含めて、多くの愛好家に楽しんでもらえるウイスキーだと思います。
そして最後に私信となりますが、舩木上次さん、今回も素晴らしいリリースと、テイスティング機会をいただきありがとうございました。
コロナ禍という過去例のない事態であっても、最善を尽くし、一流を目指す。そのチャレンジ精神が形になったような、清里の地にもフィールドバレエにも相応しいウイスキーです。
是非今度、萌木の村で詳しい話を聞かせて頂けたら幸いです。


※4月7日追記:本件、関係者から2樽と聞いていましたが、正しくは4樽であるとの情報を頂きました。2樽だと色々腑に落ちない部分があったので、個人的にもすっきりしました(笑)。関連する部分を追記・修正させて頂きました。

秩父 10年 2008-2019 エイコーン #196 61.3%

カテゴリ:
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ACORN'S 
CHICHIBU 
MALT DREAM CASK 
Aged 10 years 
Distilled 2008 Dec 
Bottled 2019 Nov 
Cask type Bourbon Barrel #196
700ml 61.3% 

グラス:国際規格テイスティンググラス
時期:開封後1週間程度
場所:ジェイズバー
評価:★★★★★★(6)

香り:ドライな香り立ち。華やかさのなかに混じる甘酸っぱいウッディさ。バニラとオーク、ほのかにベリーや無花果のドライフルーツを思わせるアクセント。奥にはいつもの和生姜とハッカのスパイシーさ。

味:強い口当たり。 甘酸っぱいオークフレーバーは、アプリコットジャムや無花果の甘露煮。フルーティーさの奥からスパイシーさがあり口内を刺激する。余韻はドライでウッディ。フルーティーさの残滓を感じつつハッカやあくの残った筍、独特のえぐみ、ウッディな渋みを感じさせつつ、ドライなフィニッシュへ。

長熟バーボンが纏うような赤系のフルーティーさを備えた、不思議な樽感の秩父。オーソドックスに黄色いフルーツのバーボンオークで大正義だけではなく、その樽感がアクセントになっている。ベースの秩父味はいつもの通りだが、樽感が濃いこのボトルは他のそれらより余韻まで分離せず馴染んでいる。

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美味しいと評判の、エイコーンのMDC(モルト・ドリーム・カスク)です。
エイコーンと言えば先日のウイスキープラス5周年向けが個人的にちょっと。。。だったので、警戒していましたが確かに美味しい。ただし料理に例えるなら、かかってるソースが美味しい肉であり、ベース部分は安定の秩父。そしてなお価格。。。については言わぬが花でしょうか。

熟成樽はバーボンバレルとのことですが、アメリカンオーク由来の黄色系統だけでなく、少し赤みを帯びたようなフレーバー構成になっているのが特徴。バーボンそのものも、長期熟成したものはそういう果実風味をチャーオークフレーバーのなかに備えるものがあり、ひょっとしたらその系統の樽で熟成されたか、あるいは内側野焼き具合であるとか、なにかしらトリガーになる要素があったのかもしれません。
オーナーズカスクでこういう樽に当たるかどうかは、もう運次第ってのが面白さであり難しいところです。

そう言えば全然話は変わるんですが、どんぐりって食べれるんですよね。
息子が読んでた絵本を見て、昨年試してみたのです。あとなんの漫画か忘れましたが、どんぐりでラーメン作るみたいなのもあったなあ。。。と。灰汁抜きして加熱して、食べてみるとなるほど強引に例えるなら栗っぽい。でも灰汁がとても強いし渋い個体がw

そんなときにも連想する秩父味。ああ平常運行のウイスキー脳。秩父は秩父でも第2蒸留所はそういう個性が出ていないようなので、何が要因かはなんとなく。。。酒質由来とするかはともかく、それにしたって面白い個性です。

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今日のオマケ:アルト モンカヨ ヴェラトン 2014 グルナッシュ

スペインの濃厚赤。何やら近年パーカーポイント100点を複数回とってるオーストラリアの作り手が、共同ベンチャーとして立ち上げたメーカーによるもの。生産者側の実績は豊富。
エチケットがセンス良く、なにより値段も手頃だったので味も知らずに購入。ドキドキでしたが、これは良い買い物でした。

香りはブルーベリーやクランベリー、あるいはカシス。赤黒系の果実感が濃厚で、そこに杉やハーブ、少しきのこのようなニュアンスも混じる。ギスギスしておらず柔らかい香り立ちに、味も濃厚で度数もそれなりにあるほうだが、香り同様口当たりは柔らかく、余韻にかけて感じられる石榴のような酸味が樽香とともにアクセントになっている。

濃厚だが、それ故のバランスというか、丁寧さを感じる作り。系統はボルドーのカベルネでもブルゴーニュのピノでも、あるいは新世界のそれでもない。どっちかというとイタリアに近いような印象を受ける味わい。ああ赤ワイン楽しんでるなって思える1本で、自分は好きですね。みんなで集まってる時に、ワイワイ楽しめるワインだと思います。

イチローズモルト 秩父 オンザウェイ 2019 51.5%

カテゴリ:
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ICHIRO'S MALT 
CHICHIBU 
ON THE WAY 
Bottled 2019
700ml 51.5% 

グラス:国際規格テイスティング
時期:開封後1週間程度
場所:ジェイズバー
暫定評価:★★★★★(5ー6)

香り:トップノートは乾いたウッディネスと強めのアタック。フレッシュな林檎を思わせる果実香、柑橘の綿、乾燥した穀物っぽい軽い香ばしさから、メンソールやハッカ、スパイシーさが主張する。

味:口当たりはハイトーンでオーキーなウッディさ。バニラやドライアップル、樽由来の甘味にボリュームがあり。徐々にジャスミン茶の出涸らしのようなタンニン、えぐみを思わせるニュアンスも。
余韻はほろ苦くスパイシーで、和生姜やナッツの混じる乾いたウッディネスがクリアに抜けていく。

メインの樽はバーボンないしアメリカンオークと思われる乾いたウッディネス、オーキーさに由来するフルーティーさも感じられるが、下地にあるのは秩父の特徴。樽由来の要素は悪くなく、酒質部分と合わさって複雑でもあるが、馴染みきらないもどかしさ。まさにこれからの秩父へのオンザウェイ。

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秩父蒸留所の定期リリースのひとつ。。。といっても、2013、2015とリリースされた後で2017がなく2019年ですので、結構久しぶりな1本。
ON THE WAY(途中、~への道)というタイトルの通り、将来の秩父モルトの姿を見据えて、蒸留所に貯蔵された原酒をブレンドしてリリースされる発展途上のシングルモルトです。

ベースとなっているのは、同蒸留所の中で最も比率が高い、バーボン樽原酒と推察。
前作までは3~5年程度熟成の、比較的若い原酒のみで構成されていたところ。それ故ニューポッティーな若い酸であるとか、微かなピートであるとかも感じられたのですが、この2019年リリースは樽感が主体になっています。
ハイトーンな中に熟成感も伴うことから、6~8年くらいのものを軸に10年熟成くらいの原酒まで含まれているのではないかと思います。

ただその樽感はバーボンオークバリバリとはならず、ハイトーンななかに林檎系のフルーティーさとバニラ系の甘味が合わさって感じられる。複数年数の原酒がブレンドされた結果、オーキーではないクリーンなタイプと、ウッディーなタイプが相互に主張している感じ。
この構成を考察すると、意図して2つの樽感の中間を作り出そうとしたのではないかとも感じます。


秩父のモルトは「樽負けしやすく、長期熟成に向かない。」とする意見が、愛好家の間で少なからずあります。
そうした評価は蒸留所側にも届いているのでしょう。今年のモダンモルトのセミナーで、肥土さん本人が言及されており、同時に興味深い考察もされていました。
曰く、樽由来のフレーバーでタンニンは、熟成の初期はある程度まで濃くなるが、一定以上の期間を経ると分解されるため、秩父の原酒は10年以上の熟成に耐えられるのだと。
確かに、タンニンがポリフェノールなどに分解されるという現象は、熟成を通じて起こるもののひとつとされています。

つまり今回のボトルは、今ある原酒から将来こうなるのではというイメージのもと作ったのかなと。
ただ、ポリフェノールなどのタンニン由来の成分は渋味や苦味に繋がるだけでなく、樽から溶け出た成分、エキスは無くなる訳ではないので、ざらつくような感じやドライさは強くなる目論見通りに進むのかは神のみぞ知るところ。
日本はそもそも高温多湿なので、空調を使うなど特殊な環境に置かない限り、どの蒸留所も基本的に樽が強くなります。
あとはそれとどうバランスをとるか、いかに酒質部分のフレーバーと馴染ませるかがポイントであるわけですが。。。秩父の原酒はその独特の個性から、酒質に樽感が馴染みにくいんじゃないか、と最近思うのです。

長期熟成によって起こる樽内の変化には、原酒の味わい(分子構成)の均一化が進むというのもあります。
テイスティング中でも触れた、秩父の酒質そのものが持つハッカ、和生姜、あるいはえぐみの残った筍のような特徴。。。現時点の秩父はこの存在感が強いので、最初に樽感があって、後がこのフレーバーに続く、あまり馴染んでるようには感じられない要因となっています。(IPAカスクなどめちゃくちゃ個性の強い樽は後半部分まで圧殺されるため、逆にバランスがとれている。)
20年、30年熟成を目指すという秩父のゴールの姿は、この点がどうなっているのか。願わくば、適度に秩父らしさが残りつつ、馴染んだ味わいになっていると良いのですが。

イチローズモルト マデュロオリジナルブレンデッド 2019年リリース 58%

カテゴリ:
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ICHIRO'S MALT 
MALT & GRAIN 
MADURO ORIGINAL BLENDED 
French Oak Cask Finish 
Single Cask Blended Whisky 
Release in 2019 
700ml 58%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封直後
場所:BAR BLACK HEART @持ち寄り会
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:ボリュームのあるしっかりとした香り立ち。乾いた檜木やバニラクリームのような木香に、レモンバウムのような加工されて角の取れた酸を感じる。奥にはシナモンやハーブ、和生姜のスパイシーさも伴う。

味:ドライでウッディ、口内に広がる香り同様の木材感やバニラ香と、合わせてドライアップルや砂糖をまぶしたレモンピールのような甘酸っぱいドライフルーツ風味。若さもあるが、熟成感も同時に備えており、穀物系のニュアンスと共に余韻はしっかりとしたスパイシーさ、強い樽感で整えられたような味わいがある。

基本的にはイチローズモルトのワールドブレンデッド系統の味わいであるが、平均的な熟成感の高さがバランスを取り、フィニッシュに用いたフレンチオーク由来と思われる強いウッディネスが仕上げとばかりに濃厚に全体を覆っている。加水すると、原酒部分とのバランスが崩れるのか、バニラの甘みと共にウッディな香味と、若干の青さ、若さ由来のスパイシーさが目立ってしまう。


本日のレビューは、自分のような一般人でも、名前くらいは聞いたことがあるだろう高級ホテル・グランドハイアット東京にあるジャズラウンジ「マデュロ」が、イチローズモルトと共に企画したオリジナルウイスキーです。

その仕込みは約4年前、まさにマッサンによってウイスキーブームに火がついた時に行われたもの。
イチローズモルトが調達した10~20年熟成のスコッチ、アイリッシュ、アメリカン、カナディアンの各種原酒と、恐らく秩父以外に羽生、川崎らも含まれているであろう日本産の原酒。これらのブレンドをフレンチオーク樽で3年間フィニッシュし、カスクストレングスでボトリングした、ワールドブレンデッド規格のシングルカスクブレンデッドウイスキーです。(長いw)

今年の秩父ウイスキー祭の記念ボトルでも同じ規格のものがリリースされていましたが、印象としてはフィニッシュ樽の違いだけでなく、原酒の熟成感含めて全体のレベルがワンランク違うなと感じています。

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その構成等を香味から推察すると、モルトとグレーンの構成比率は5:5程度。国産原酒由来とおぼしき樽感と酸、そして勢いのある香味を、適度な熟成感のあるハイランドタイプの柔らかいモルト原酒とグレーンが繋ぐ。イチローズモルトらしい個性が感じられつつも、尖りきらない構成にまとめられています。
またフィニッシュ用の樽はフレンチオークの新樽だったのでしょう。樽熟ワインなどに感じられる、乾いた木香とバニラ系のアロマとウッディネスが強く全体を包み込んで、前述の仕上がりに繋がる要素となっているのです。

もうひとつの特徴として、フィニッシュ期間が3年間と長いことからか、ストレートで飲む分には味わいの解離が少ないように感じられます。
しかし加水すると原酒部分の要素が弱まるためか、樽感とのばらつきが少し出始め、特に1:1程度まで割った時の樽香の広がり方はかなり浮わついているようでした。
そのため、飲み方としてはテイスティンググラスよりもロックグラスなど口が開いたものを使って、ストレートあるいはロックで飲むと、香りが必要以上に増幅されず適度な距離感で楽しめるのかもしれません。
(ラウンジで、ジャズを聞きながらロックスタイルで飲むには丁度良いかもしれません。)


今回のリリースを含めてイチローズモルトのブレンデッドのポイントは、多様な原酒を使ったブレンデッドウイスキーでありながら、”イチローズモルトらしさ”という枠の中に収まっていることだと感じます。
例えば、響とマデュロはまったく個性が違います。あるいはバランタインなどのブレンデッドスコッチとも違います。当たり前の話ですが、輸入したスコッチ原酒のみを使えば、それっぽい味わいを作ることは出来るものの、イチローズモルトというブランドを考えると、ブレンデッドスコッチの再現は違いますし、響の再現も当然方向性が違います。

大手ブレンデッドメーカー各社と同様に、”ブランドらしさ”の上で、どのようなキャラクターを表現するかは、ウイスキーメーカーとして立ち位置の確立に繋がる重要な要素と言えます。
嗜好品であるため、好みの差異は個人個々で当然あるわけですが、その前提には他のイチローズモルトの製品同様に、ちゃんとイチロー味であることがあります。

長々書いてしまいましたが、このウイスキーが企画されたという2015年は、まだハイエンドグレードといえば長熟の羽生と川崎の樽感どっしりのリリースが多かった時期です。作られてはいましたが、ワールドブレンデッドという単語もありません。
それが、2019年の今飲んでも違和感の無いキャラクターに、こういう中長期的な視点でのブレンドの仕込みも行われていたんだなと。メーカーとしての戦略も感じたリリースでした。


以下、余談。
マデュロオリジナルブレンデッドは、公式情報を見ると同ラウンジ以外で飲むことが出来ないように読めますが、ブティックショップにてごく少量一般販売が行われたそうです。
このレビューはそのボトルをウイスキー仲間主催の定例会で頂いたもの。持ち主のミルキーKさんからは、開けたからには掲載してもらうというご希望あり、感謝の気持ちと共に、姿勢を正してテイスティングさせて頂きました。

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