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清里フィールドバレエ 32回開催記念 イチローズモルト 秩父 58% 眠れる森の美女

カテゴリ:
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Ichiro's Malt 
(Chihibu Distillery) 
Single Mlalt Japanese Whisky 
Kiyosato Field Ballet 
32nd Anniversary 
700ml 58% 

評価:★★★★★★(6)

香り:黒砂糖やオランジェットの甘い香り、紹興酒を思わせる香ばしさ。奥には赤系のドライフルーツ、微かに針葉樹のようなハーバルなニュアンスも伴う。徐々にベリーやオレンジ、ドライフルーツのアロマが強く感じられる、多彩な樽香が複雑に絡む重厚的なアロマ。

味:リッチでボリューミー。シェリー樽やワイン樽を思わせる色濃い甘さが、奥からオーキーな華やかさを伴って広がる。続いてビターなウッディネス、微かに椎茸やアーモンド、酒精強化ワインの要素。余韻は口内のパチパチとした刺激を伴い、長く綺麗に纏まっている。

第32回フィールドバレエの演目であった「眠れる森の美女」をテーマとして、秩父蒸溜所のモルト原酒をブレンドしたシングルモルトウイスキー。女性的な要素を表現するためにポートワイン樽の原酒が使われ、バーボン樽原酒のフルーティーさ、華やかさをベースに、香味の随所で特徴的な要素が感じられる。
引き出しの多いウイスキーで、初見では香味の認識や表現を難しく感じてしまうかもしれない。大きめのグラスで空間を使って開かせると複雑で芳醇に。少量加水でベリー系の果実感が眠りから目覚め、好ましい要素を引き出すことが出来る。

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毎年夏に開催される、バレエの野外公演“清里フィールドバレエ”。
2014年の定常公演25周年からリリースが続く、清里フィールドバレエ記念ボトルの最新作。基本的には萌木の村のBAR Perchで提供されていますが、3/1に一般向けにも発売されて、即完売となったようです。
Twitterのほうで昨年12月にレビューを投稿しておりましたが、発売を受けてブログの方でも詳しくまとめていきたいと思います。

リリースの系譜は、
25thが白州メインのピュアモルト。
26th〜29thが羽生と川崎メインのブレンデッド。
30thが白州シングルモルト30年。
31thと32ndは秩父のシングルモルト。
イチローズモルトとサントリーからそれぞれ記念ボトルがリリースされてきましたが、長期熟成原酒で構成されてきた30周年までのリリースと異なり、31thからは秩父蒸留所の原酒がメインとなって、リリースの傾向が変わった印象を受けます。

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それは単にシングルカスクでリリースするのではなく、複数樽バッティングのシングルモルトとして31th、32ndともそれぞれ軸になる原酒があり、演目のストーリーに合わせて香味を作るブレンダーの狙いを紐解いていく面白さもあります。
例えば第31回の演目は白鳥の湖。同演目のテーマは光と闇。これは7年熟成の秩父モルトのバッティング。光をイメージするオーキーでフルーティーな原酒に、闇のパートは色濃くピーティーに仕上がったチビ樽原酒を用いて表現されていました。

そして2021年の夏に公演された第32回清里フィールドバレエの演目は「眠れる森の美女」。
前作に続いて、難しいオーダーです。ブレンドに使われた原酒は7樽から、バーボン、シェリー、ワイン…様々な香味要素がある中で、酒質は前作とは異なりノンピートがメインで、うち女性的な香味をポートワイン樽で表現されているのだと思います。ただ、これは狙って造られたのか、自分の考えすぎかはわかりませんが、このウイスキーはテイスティングで触れたように紐解くのに時間と工夫が要る、ちょっと難しさを感じるものです。

それはトップノートにある重く霞がかかったような、シェリーや紹興酒を思わせるアロマ。果実味、華やかさ、ウッディな要素、好ましいと感じる香味要素の上に”それ”があることで、少し近づきがたい印象を受けてしまいます。
もちろん、そのままテイスティングしてマズいとか、そういう類のものではないのですが…。演目に倣って表現するなら、王女を眠りから覚ますには、王子様の口づけが必要なのだと。

ここで王子の口づけに該当するのが、少量の加水、そして大ぶりなグラスです。
色々試しましたが、この組み合わせが一番全ての要素を引き立ててくれました。グラスに注ぎ、スワリングすることで、城を覆う暗い木々と茨の森とも言える上述の重たい霞が晴れていき、奥から好ましい要素が湧き上がってきます。
そして少量加水。100年の呪いが解ける変化と言うには大げさですが、先に触れたシェリーや紹興酒を思わせるアロマが逆転し、グラスの中で芳醇で複雑なアロマを形成していくのです。

勿論この演目は様々なストーリーパターンがあるように、今回の自分のレビュー(解釈)がすべて正しいわけではありません。
ただ、良いウイスキーであればこそ、一つの視点で見るのではなく、時間をかけて、あれこれ考察しながら様々な飲み方を試してみる。これぞ嗜好品の楽しみ方です。
今回も萌木の村の舩木村長からテイスティングの機会を頂きましたが、じっくりテイスティングさせて頂いたことで、贅沢な時間を過ごすことが出来ました。

素敵なプレゼントをありがとうございました。
一昨年、昨年と伺えておりませんが、今年こそ清里に伺いたいですね。
改めまして、御礼申し上げます。


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余談:大ぶりなグラスについて
今回のテイスティングでは、いつもの木村硝子のテイスティンググラス以外に、ガブリエルグラスを使っています。
「すべての酒類の魅力をこのグラス1つで引き出せる」というのがこのグラスのウリ。ホンマかいなと、赤、白、日本酒、ウイスキー、ブランデーと色々使ってみましたが、確かにそれぞれの香りの構成要素をしっかり引き出して、鼻孔に届けてくれる気がします。口当たりも良いですね。

ただ、構成要素を引き出すのはそうなんですが、良いところも悪いところも誤魔化さずに引き出してくるので、例えば若い原酒主体で繋がりの粗いブレンドとかだと、思いっきりばらけてしまいます。
先日、とある企画で試作したレシピの1つは見事に空中分解しました(笑)。
今回のようにテイスティングツールの1つとして、ウイスキーの良さを違う角度から引き出すだけでなく。例えばブレンドの試作をした後、その仕上がりを確認する際にも活用できそうです。

清里フィールドバレエ 2020 白鳥の湖 63% イチローズモルト 秩父蒸留所

カテゴリ:
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Kiyosato Field Ballet
31th Anniversary 
Ichiro's Malt 
Single Malt Japanese Whisky
Chichibu Distillery 
Aged 7 years 
1 of 680 Bottles 
700ml 63%

暫定評価:★★★★★★★(6ー7)

香り:甘やかで穏やかに立ち上る熟成香。トップノートに梅や杏を思わせる酸が微かにあり、アーモンドを思わせる香ばしさと、ほのかに酵母やピーテッド麦芽そのもののようなスモーキーさ、麦芽香が続く。グラス内で刻々と変化する個性のみならず、その残り香も実に魅惑的。秩父らしいスパイシーさと、長期熟成したウイスキーをも連想するウッディで甘酸っぱい樽香が感じられる。

味:しっとりとした口当たりから反転して力強い広がり。序盤は秩父原酒らしいハッカ、和生姜を思わせるスパイシーさが一瞬あった後、置き換わるようにウッディな甘み、微かに林檎のカラメル煮、オレンジジャム、古典的なモルティーさが穏やかなピートフレーバーを伴って広がっていく。
余韻はフルーティーな甘みとモルティーな香ばしさ、ジンジンとした刺激はゆったりと落ち着き、微かに残るピート香がアクセントとなる、官能的なフィニッシュが長く続く。

ノンピートモルトとピーテッドモルト、2樽合計4樽のバッティングとのことだが、それ以上に感じられる複層的な味わい。ノンピート3樽、ピーテッド1樽という構成だろうか。香味に起承転結があり、序盤は秩父らしい個性の主張がありつつも、余韻にかけてピーテッドの柔らかいスモーキーさと、モルティーな麦由来の古典的な甘みに繋がる。度数63%に由来する香味の厚み、広がりがある一方で、それを感じせない香りの穏やかさと口当たりの柔らかさも特徴と言える。

少量加水すると甘酸っぱさ、オールドモルトを思わせる古典的なニュアンスが前面に出て、スモーキーフレーバーと交わり一体的に広がっていく。ジャパニーズらしさと、在りし日のスコッチモルトを連想する要素が渾然一体となった官能的な味わいは、間違いなく愛好家の琴線に響くだろう。
それにしても、秩父モルト2樽だけでこの味わいがつくれるとは、俄に信じられない。麦芽か、樽か、通常とは異なる特別な何かが作用しているように感じる。こうしたミステリアスな要素がウイスキーの魅力であり、面白さである。

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山梨県・清里、萌木の村で毎年8月に開催されているバレエの野外公演。定常公演としては日本で唯一という”清里フィールドバレエ“の第31回公演を記念したボトルが、2020年夏から遅れること約半年、3月下旬からリリースされることとなりました。
本サンプルは、リリースに先立って萌木の村 舩木村長から頂いたものです。ボトルの提供はBAR Perchで先行して行われており、今後は一部BARを中心に関係者限りで展開されていくとのことです。

清里フィールドバレエ記念ボトルは、第25回記念としてサントリーから特別なブレンドが。第26回から第29回はイチローズモルトから羽生原酒と川崎グレーン原酒を使ったブレンデッドウイスキーがリリースされていたところ。これだけでも伝説と言うには十分すぎるリリースでしたが、節目となる2019年第30回開催では、再びサントリーから白州30年という過去例のないスペックのボトルがリリースされていました。
※過去作のレビューはこちら

一方、別ルートで聞いた話では、イチローズモルトに羽生原酒と川崎グレーン原酒のストックはほとんど残っていないとのこと。サントリーも毎年毎年協力出来るわけではないでしょうし、ならば今後、フィールドバレエとして過去作に相当するスペックのボトルがリリースされることは難しいのでは・・・と。実際、2020年夏を過ぎてもリリースの報せはなく、第30回をもって記念リリースは終わってしまうのかと、そう感じてすらいました。
(そうでなくても、第30回の1本は、フィールドバレエシリーズのフィナーレと言われても違和感のない、奇跡的なリリースでもありました。)

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ですが、コロナ禍にあっても第31回清里フィールドバレエが開催されたように、ウイスキーとしてのフィールドバレエも終焉を迎えた訳ではありませんでした。
同ウイルスの影響で苦しい想いをしている関係者、BAR・飲食業界に少しでも活気を、前向きな気持ちを与えることが出来たらと、舩木村長がイチローズモルト・秩父蒸留所を訪問して直接オファー。
今作は、秩父蒸留所のモルト原酒のみで造る、全く新しいチャレンジとしてフィールドバレエ記念ボトルがリリースされたのです。

今作のテーマは、第31回フィールドバレエの演目であった「白鳥の湖」です。
そのストーリーを構成する白と黒、善と悪の要素に照らし、スタンダードな個性のノンピートタイプの秩父モルトと、ピーテッドタイプの秩父モルト、正反対な2つの原酒が選ばれ、ブランドアンバサダーでもある吉川氏によってバッティングされたものが今作のシングルモルトとなります。

熟成年数は7年、使われた樽は4樽(うち1つはチビ樽)、ボトリング本数は680本とのこと。バーボンバレルからのボトリングでは、同じ年数だと180~200本程度となるのが秩父蒸留所で良く見られるスペックであるため、4樽のうち3樽がバーボンかホグスヘッドとすれば、ほぼ全量使われているものと考えられます、少なくともどちらか片方の樽は、最低500本程度は取れる、大きな樽で熟成した原酒が使われたのではないかと推察されます。

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それでは、この新しいチャレンジとも言えるリリースを、香味で感じられた要素から紐解いて考察していきます。

香りのトップノートは度数63%を感じさせない穏やかさ。ウイスキーには香りの段階である程度味のイメージが出来るものが少なからずありますが、このウイスキーは逆に香りから全体像が見えないタイプで、ピートスモークの奥にあるフルーティーさ、甘やかな熟成香に味への期待が高まる。まるでステージの幕がゆっくりと上がり、これからどのような展開、演出があるのかと、息を飲む観客の呼吸の中で始まる舞台の景色が連想されるようです。

飲んでみると、香り同様に穏やかな始まりで、バーボン樽とは異なる落ち着きのあるウッディな甘みがありつつ、力強く広がる秩父モルトの個性。これはノンピート原酒に由来するものでしょうか。秩父モルトの殆どに感じられる独特なスパイシーさ、そこからモルティーな甘みとピーティーなほろ苦さ、穏やかなスモーキーさへと、まさに白から黒へ場面が変化していきます。

物語において、結末はその印象を決定づける重要な要素です。
本作は、スモーキーフレーバーをアクセントに、リフィル系の樽の自然なフルーティーさ、ウッディな要素、そしてモルト由来の香ばしさと甘みが渾然となり、白と黒の個性が混ざり合うフィニッシュへと繋がっていく。軽く舌を痺れさせた刺激は観劇を終えた観客から響く喝采のようでもあり、名残を惜しむように消えていくのです。

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(直近リリースでバーボン樽系ではないフルーティーな秩父としては、THE FIRST TENがある。このリリースに感じたリフィルシェリー系のフルーティーさは近い印象があるものの、スモーキーさと後述する特別な要素で、異なるウイスキーに仕上がっている。)

ここで特筆すべきは、樽由来の要素として1st fillのバーボンやシェリー樽といった、俺が俺がと主張してくるような強い個性ではなく、麦芽由来の風味を引き立て、穏やかな甘みとフルーティーさをもたらしてくれる引き立て役としての樽構成です。その点で、このリリースに使われた樽は香味から判別しにくくあるのですが、バーボン樽だけではない複雑さがあり、なんとも絶妙な塩梅です。

何より、レビューにおいて”官能的”という表現を使うに足る特徴的なフレーバーが、このシングルモルトの魅力であり、ミステリアスな部分もであります。
ウイスキーのオールドボトルや、あるいは適切な長期熟成を経たウイスキーが持つ、ただドライでスパイシーなだけではない、独特の風味・質感を持ったモルティーさとフルーティーさ。このボトルは7年という短期熟成でありながら、そうした個性が溶け込み、香味において愛好家の琴線に触れうる特別なニュアンスを形成しています。

秩父の原酒はノンピート、ピーテッドとも様々飲んできましたが、こうしたフレーバーを持つものはありませんでした。
素性として、何か特別な仕込みの原酒か・・・可能性の高さで言えば、どちらかの原酒を熟成していた樽、またはマリッジを行った樽が羽生や川崎グレーンといった長期熟成原酒を払い出した後の樽だったりとか、白と黒の原酒の間をつなぐ存在がもう一つあったとしても不思議ではありません。
さながらそれは、フィールドバレエが公演されている、夏の夜の空気、清里の大地の香りのような、フィールドバレエたる舞台を形作る重要な1ピースのようでもあります。

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このブログを読まれている方はご存知かもしれませんが、私は秩父第一蒸留所のモルト原酒に見られる特定のスパイシーさ、えぐみのような個性があまり好みではありません。
飲んでいるとこれが蓄積されてきて、胸焼けのような感覚を覚えて、飲み進まなくなることがしばしばあるためです。

が、このウイスキーでは嫌味に感じないレベルのアクセント、多彩さを形成する要素にすぎず、むしろ好ましいフレーバーへ繋がって、味わい深く仕上がっています。確か秩父に★7をつけるのは初めてですね。
それこそ純粋に味と1杯の満足感で言えば、過去作である第26〜29回の羽生原酒と川崎グレーンのブレンドリリースに負けていません。長期熟成による重厚さは及ばないものの、若い原酒のフレッシュさと、それを補う落ち着いた樽の要素とピート香、余韻にかけて全体のバランスをとっている特別な要素の存在。。。今だから創れる味わいがあるのです。

先人の遺産ではない、現代の作り手と原酒が生み出す、清里フィールドバレエ記念ボトル、新しい時代の幕開け。ミステリアスな魅力も含めて、多くの愛好家に楽しんでもらえるウイスキーだと思います。
そして最後に私信となりますが、舩木上次さん、今回も素晴らしいリリースと、テイスティング機会をいただきありがとうございました。
コロナ禍という過去例のない事態であっても、最善を尽くし、一流を目指す。そのチャレンジ精神が形になったような、清里の地にもフィールドバレエにも相応しいウイスキーです。
是非今度、萌木の村で詳しい話を聞かせて頂けたら幸いです。


※4月7日追記:本件、関係者から2樽と聞いていましたが、正しくは4樽であるとの情報を頂きました。2樽だと色々腑に落ちない部分があったので、個人的にもすっきりしました(笑)。関連する部分を追記・修正させて頂きました。

清里フィールドバレエ 30周年記念 シングルモルト 白州 30年 48%

カテゴリ:
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KIYOSATO FIELD BALLET 
30th ANNIVERSARY 
SUNTORY SINGLE MALT WHISKY 
HAKUSHU DISTILLERY 
AGED 30 YEARS 
Distilled 1987,1988,1989 
Bottled 2019 
700ml 48% 

グラス:木村硝子テイスティング
場所:自宅@サンプル→BAR Perch
時期:開封後1ヶ月以内
暫定評価:★★★★★★★★★(9)

香り:注ぎ立てでふわりと広がる華やかなオーク香。甘酸っぱい黄色い果実香と、干し草や日本家屋を思わせる落ち着いたアロマ。果実香は序盤は金柑や花梨、そこからパイナップル、黄桃と多層的な変化があり、微かにハーブを思わせる爽やかさ。奥にはモンブランのような甘い洋菓子を思わせる香りも潜んでおり、徐々に全体に馴染んでいく。

味:ウッディで甘酸っぱい味わい。一瞬ドライな刺激はあるが、すぐに柔らかいコクが感じられるボリュームのある口当たり。レモンクリームや熟したすもも、パイナップルなど、香り同様に様々な果実を連想させる風味が華やかな含み香と共に広がる。
余韻はウッディで微かにピーティー、果実の残り香と共にオーキーな華やかさを纏って、最後までバランスが破綻せず長く続く。

思わず引き込まれ、恍惚としてしまう素晴らしいバランスのウイスキー。軸になる香味は白州の厚みのある酒質とアメリカンオークの組み合わせだが、一言で”華やか”といってもそれを構成する情報量が多く、多層的でありながら一体感を維持して余韻へ繋がる。この奥深さはもはや筆舌に尽くし難い。神様が作ったウイスキーじゃないだろうか。
少量加水しても崩れないが、ストレートでじっくりと時間をかけて味わう方がオススメ。これまで飲んできた白州のなかでも、最高の1本。

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毎年夏、山梨県清里・萌木の村で開催されているバレエの野外講演、清里フィールドバレエ。
この講演とウイスキーとの繋がりは、講演25周年となった2014年、当時サントリーの名誉チーフブレンダーであった輿水氏が記念ボトルを手掛けたことに始まり、翌26周年からはイチローズモルトの肥土氏へとバトンが引き継がれ、昨年まで計5作がリリースされてきました。

まるでフィールドバレエそのものを再現したように、様々な原酒が混じり合い、美しい仕上がりとなっていた25周年のブレンデッドモルト。以降は、その年その年で個性的なブレンドが物語の起承転結を表すようであり。また「響を越えるウイスキーを作る」という目標を掲げた肥土氏のブレンドは、年々完成度を増していくようでした。

職人には、最高の材料と、持てる技のすべてを使い、渾身の一作を作ることができる機会は、誉れであるとともにチャレンジでもあります。時にそれは依頼人の要求や経済的な理由等から、必ずしも与えられる訳ではありません。このフィールドバレエシリーズは、そうした意味で世界最高峰のブレンドに挑むという、得難い機会を与えていたのではないかと言えます。

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(清里フィールドバレエ25thと、そこから代々続いたフィールドバレエ各種。同じような構成はひとつとない、それぞれが個性を持った素晴らしいウイスキー。これをすべて飲めるのは、現時点では萌木の村しかない。)

そして2019年、30周年を迎えることとなった同講演に合わせ、再びサントリーで作成された記念リリースにして、フィールドバレエシリーズの到達点とも言える1本が、このシングルモルト白州30年です。

構成原酒は1987年から1989年蒸留の白州原酒で、バレル、ホグスヘッド、パンチョンの3樽のみ。作成本数は僅か15本。。。山梨の地で育まれた3樽の原酒を福與ブレンダーが吟味し、萌木の村で提供される為だけに作られた渾身のリリース。何より白州として30年モノのリリースは初めてで、萌木の村とサントリーの繋がりの深さを感じます。(パッと見て白州30年と見えないのは、主役はあくまでフィールドバレエということか、あるいは大人の事情か。。。)

飲みに行かねばと思っていましたが、大変ありがたいことに舩木社長が友人・業界関係者向けに行うサンプル配布が自分にもヒット。伺う前にテイスティングの機会を頂きました。
※後日現地にも伺わせて頂きました。

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感想は。。。もはや改めて書くまでもなく、長々と書かれたコメントの量を見るだけでも、自分の感動は伝わると思います。
今回の一本を例えるなら、それはフィールドバレエにおける"主役"そのもの。同じくサントリーで作られた25周年のブレンデッドモルトは、白州以外に山崎の長期熟成原酒も加わり、樽材、熟成期間、方向性の異なる多彩さがひとつにまとまって、ブレンダーという脚本家の描く1本のストーリーを作り上げていたと言えます。

一方この30周年シングルモルトは、原酒が白州のみということもあり、舞台全体ではなく主役一人にフォーカスしたような、一つ一つの動作がはっきりと伝わる分かりやすさがあります。
表面的にはオーキーで華やか、しっかりフルーティーなウイスキー。木々の香りを運ぶ夜風と、月明かりのスポットライトが当たる、幻想的なステージで踊るバレリーナのよう。ただ熟成年数に反して嫌なところは少なく、良い部分が際立つのはミスのない演技故。そしてその華やかさを掘り下げていくと、細かい演出の数々と、積み上げてきたものの奥深さにただただ圧倒される。すさまじい技量が見えてくるのです。

昂った勢いそのままに書き連ねた考察と感想ですが、これが制作者の意図を正確に読み取っているかというと、保証はありません。
「専門性とは切り離されたところに、観客としての愉楽がある」、これはとあるライターさんの言葉ですが、嗜好品を楽しむということは、自分本意な感想を楽しむことでもあると思うのです。
改めて、自分がウイスキーを好きでいて良かったと。こんなにも素晴らしいウイスキーを味わうことが出来たことに、ただ感謝したい。素直にそう感じた一杯でした。

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余談:萌木の村、BAR Perchでは最近白州NAをベースにメロン烏龍茶を漬け込んだ、とろける白州ハイボールなど、新しいカクテルを模索中。メロン風味と白州の爽やかなウッディさ、これまでにない独創的な味ですが、案外破綻していない。。。?こちらも合わせて是非。猫のマークが目印です。

清里フィールドバレエ 29周年記念 イチローズモルト ジャパニーズブレンデッド 48%

カテゴリ:
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KIYOSATO FIELD BALLET
29th ANNIVERSARY
Ichiro's Malt & Grain
Japanese Blended Whisky 
Bottle No, 368/403
700ml 48%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅
時期:開封後1週間程度
評価:★★★★★★★(7)

香り:豊かな樽香、メープルやキャラメルナッツのような香ばしく甘い香り立ちから、時間経過でドライアプリコットの甘酸っぱさ、シュガースポットの出たバナナ。ほのかにミントの爽やかさも伴う。

味:リッチな樽感を感じる柔らかい口当たり。ウェハスチョコレートやピーナッツの甘みと軽い香ばしさ、濃く入れた紅茶のタンニン、オレンジジャムの甘み。余韻はビターで程よくドライ、微かにハーブや松の樹皮。メローな樽香が鼻腔に抜け、長く続く。

香味ともジャパニーズらしい樽感が主体だが、それが柔らかく多層的にまとまったブレンデッド。熟成した原酒こそのスケール感を感じさせてくれる。
少量加水すると、最初は樽香がギスギスしたような刺激を感じるものの、すぐに穏やかになり、メープルシロップを思わせる熟成したバーボンのような甘い樽香と、ママレードジャムのような甘酸っぱい口当たりも。

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今年もリリースされた、シリーズ第5作目となる清里フィールドバレエ記念ウイスキー。早速テイスティングさせていただきました。
作り手は前作同様、イチローズモルトの肥土伊知郎氏。シリーズ第2作からリリースを継続しているため、イチローズモルトとしては4作目となり、そしてこれが当面最後のリリースとなります。

清里フィールドバレエは、毎年8月に山梨県清里・萌木の村で開催されているバレエの野外公演。
ウイスキーとの関係は特段ありませんでしたが、今から4年前に公演25周年を記念したウイスキーをサントリーの輿水氏が手がけたことから繋がりが生まれ、その後は作り手を変えて1年に1度、公演に合わせた記念ウイスキーのリリースが継続されています。
その中で、伊知郎氏の目標は響30年を越えるウイスキーを作り上げること。フラグシップブランドの如く羽生蒸留所と川崎蒸留所の長期熟成原酒を惜しみなく使い、毎年異なるアプローチを感じさせるブレンドを仕上げていました。

今年はその集大成にして、自信作であるとの話も伺っています。
構成原酒である羽生モルトと川崎グレーンは、熟成期間や環境の関係などから樽感が強く、そのブレンドも基本的には同様のウッディネスとフルボディな構成が軸。
前作、28周年記念はフルーティーさとリッチな樽感に奥行きのバランスが良く、ファーストリリースの25周年とは違うベクトルで完成度の高いウイスキーであったところ。

今作、29周年の基本的な構成は上記の通りなのですが、それが飲み口から余韻にかけて存在感を維持しつつもソフトにまとまって、熟成によって得られた個性が繊細なものまで多層的に楽しめる点に、作り手が目指す形が見えるようです。

(清里フィールドバレエ・アニバーサリー25th、28th、29th。多層的で洗練された美しさを持つ25thに対し、26thからは限られた原酒の中でブレンドとしての完成度を年々上げてきた。)

使われた原酒はモルトが20〜25年熟成、グレーンはより長熟で40年弱といったところでしょうか。樽はホワイトオークの古樽的なウッディネスが強くバーボン、シェリー、プレーン、あるいはコニャックと区別がつきづらいものの、加水が効いてうまくまとまっています。

今回のブレンドを例えるなら、ゆっくりと沈んでゆく夏の夕日のようであり、々しいフィナーレというよりは、 観劇の興奮と終幕の寂しさの中で流れるエンドロールのようでもあります。
原酒のストックが厳しく、既存の組み合わせで作るイチローズモルトのフィールドバレエは今作で最後。ですが、そもそもイチローズモルトのフィールドバレエは26th限りの予定だったところ。リリース後、萌木の村を代表するレストラン・ビール醸造場が火災で全焼する事故が起こり、 しい状況に置かれた萌木の村の活動を後押しするため、27th以降の制作を続け られたというエピソードがあります。

作り手との繋がりを感じるエピソードですが、そのブレンドづくりも今作で区切り。萌木の村としては公演30周年の節目向け、新たな作り手に想いを託してリリースを継続する予定と伺っています。
自分は観客席に身を置き、まさにその観劇を見た心のままに一連の情景を思い返しつつ、また来年の夏の夜の出会いを心待ちにしているのです。

清里フィールドバレエ 28th イチローズモルト ブレンデッドウイスキー 48%

カテゴリ:
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KIYOSATO FIELD BALLET
28th Anniversary
Ichiro's Malt & Garin Japanese Blended
700ml 48%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅
時期:開封後1週間以内
評価:★★★★★★★(7)

香り:熟成感を感じる重みのある香り立ち。キャラメルやチョコチップクッキー、ナッツ、杏ジャムの酸味、ハーブの爽やかさ・・・まるで熟成庫の中にいるような多層的なアロマ。時間経過でウッディネス、ハーブを思わせるニュアンスが強くなっていく。

味:とろりとコクのある口当たり、黒砂糖、キャラメリゼしたアーモンドや胡桃の甘みとほろ苦さを感じた後、ドライアプリコット、熟成梅酒、落ち着いた甘酸っぱさからじわじわとタンニンが広がっていく。樽感は強いが決してしつこくない。
余韻は柔らかくドライ、酸味を伴うウッディネスとほのかなえぐみ。滑らかに伸びていく。

クラフトウイスキーとして完成度の高いブレンデッド。熟成感は体感30年ほどだが、それを越える古酒、傾向の違う原酒が使われてバランスが取られている印象もある。羽生らしさと重厚感のある香味、余韻にかけてのまとまり、柔らかさに注目したい。
加水すると飲み口はさらに柔らかく、樽感もおだやかになってポジティブな変化が見られる一方、甘みや果実味が多少犠牲になる。チェイサー片手にストレートで楽しみたい。
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清里、萌木の村で毎年夏に開催されているバレエの野外公演、清里フィールドバレエ。今まさに28年目の公演が行われている最中であり、今年もその公演を記念したウイスキーがリリースされました。

記念ウイスキーのリリースは3年前の25周年から始まり、今作のブレンダーは26周年、27周年に引き続きイチローズモルトの肥土伊知郎氏。
閉鎖蒸留所である羽生蒸留所のモルト原酒と川崎蒸留所のグレーンを使ったブレンデッドウイスキーで、どちらも原酒のストックが非常に少なくなり、もうリリースできないのではないか。。。という話も囁かれる中。貴重な原酒を使ったリリースを継続しているのは、イチローズモルトと萌木の村との結びつきの強さを感じます。

今回のリリース、純粋にブレンデッドとして26周年、27周年以上によく出来ている1本だと思います。
これまでのイチローズモルトによる2作、26周年は長期熟成グレーンのバニラ系のニュアンスが強く、27周年はモルト、樽が強く出て荒々しさも残る構成。
そして今年の28周年は、長期熟成モルトとグレーンがバランス良く調和、これまでと傾向が異なり濃厚でコクがありながら、ともすればしつこくなりがちな味わいが余韻にかけて穏やかにまとまる。
観劇が終幕することへの一抹の寂しさと、後に残るウッディネスがじんじんと興奮の名残のごとく感じられるのです。

勿論、同じ★7評価の中でもこれ以上に綺麗で華やかで、そしてスムーズなブレンデッドウイスキーが他に無いわけではありません。ネガティブな要素も少なからずあります。
ただ、今回のボトルはクラフトやジャパニーズの「らしさ」を備えつつ、多層的な香味として高いレベルでまとまっている点が素直に良さとして感じられるのです。
ウイスキーは時間と環境が育てるものだということを再認識した1杯でした。

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この2017年、萌木の村からはこれで3本もの記念ウイスキーがリリースされたことになりました。
ポールラッシュ生誕120周年のシングルモルトとメーカーズマークがそれぞれ4月と7月に。そしてこのフィールドバレエが8月に。タイミングもあるとは言え凄いペースです。
オーナーであり企画人でもある舩木氏は「清里の奇跡」と表現していましたが、願うだけで奇跡は起きないわけで、きっと様々な苦労や調整があったのだと思います。

清里フィールドバレエ記念ボトルは、サントリーが手掛けた25周年ボトルの、美しく華やかな味わいに始まったストーリーが、中間から後半は様々な動きと伏線が絡まる重々しい内容となり、今年のそれは起承転結で言うフィニッシュ、フィナーレとしてぴったりな内容でした。
順を追うならこの後はカーテンコール・・・。来年はどういったリリースが行われるのか、今から楽しみです。

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