タグ

タグ:江井ヶ嶋

T&T TOYAMA ジャパニーズウイスキーボトラーズ事業を始動 リリースの個性と期待について(追記あり)

カテゴリ:
IMG_0897

富山県のウイスキー専門店「モルトヤマ」の下野さんと、若鶴酒造・三郎丸蒸留所の稲垣さんが共同で運営するブランド「T&T TOYAMA」による、日本初のジャパニーズウイスキーの本格的なボトラーズプロジェクトが始動。
独自ブランド「Breath of Japan(日本の息吹)」のリリースに加え、日本のウイスキー業界の継続的発展に繋がる計画が、5月12日のyoutube Liveで公開されました。

ジャパニーズウイスキーというジャンルに限れば、世界初の取り組みとも言える事業の始動にあたっては、同ブランドの一口カスクオーナー制度等リターンを含む”クラウドファンディング”も本日正午から募集が開始され、開始30分で目標額の1000万円を達成!!!
追加のリターンとして、オリジナルブレンデッドウイスキーのプランも公開されています。

本記事では、同プロジェクトが目指すボトラーズメーカーとしての活動と役割を紹介しつつ、リターンにもなっている提携蒸留所の現在の酒質や、Breath of Japanとしてリリースされるボトルの期待値についてまとめていきます。
※各蒸溜所の情報について読みたい方は、記事後半部分まで飛ばし読みをしてください。

T&T TOYAMA ジャパニーズウイスキーボトラーズプロジェクト
クラウドファンディング
募集期間:5月13日~6月30日
目標額:1000万円(達成済み)
補足:支援者が100名を突破したことを受け、新しい支援プラン(オリジナルブレンデッドリターン)が追加されました。
世界初!ジャパニーズウイスキーボトラーズ設立プロジェクト - CAMPFIRE (キャンプファイヤー) (camp-fire.jp)


IMG_E0895

T&T TOYAMAが描く”本格的”なボトラーズプロジェクトとは。
ボトラーズメーカーは、蒸留所等から樽(原酒)を買い付け、その原酒を自社で熟成、ボトリングしてリリースしています。
一例として、オフィシャルブランドが大量の原酒をバッティングし、加水して品質を整えたものを定常的にリリースしているのに対し、ボトラーズは1樽またはスモールバッチを樽出しの度数そのままでボトリングすることで、原酒や樽の個性を際立たせたウイスキーをリリースする傾向があり、それが愛好家にとって大きな魅力となっています。

国内外から買い付けた原酒を、シングルカスク・カスクストレングスでリリースする。これだけなら、日本でも酒販店やBAR等のプライベートリリースで見られるもので、特段珍しくはありません。
ですが、買い付けた原酒を”自社の貯蔵庫で、自社で調達した樽で熟成させ、ピークを見極めてリリースする”という、欧州のボトラーズメーカーが一般的に行っている行程については、日本ではまだどのメーカーも行っていない取り組みであり、”本格的なボトラーズブランド”となるわけです。

なぜ日本ではボトラーズブランドが立ち上がらなかったのか。
理由については
・日本には蒸留所が少なかったため。
・原酒を交換したり、他社に販売するという取り組みが一般的ではなかったため。
・日本において自社で原酒を貯蔵し、ボトリングして販売する行為は、酒販免許以外に酒造免許の取得※が必要となり、事業者の負担が大きいため。
※酒造免許の取得には、酒造設備や専用の建屋が必要。

以上3点が要因と考えられます。また、ウイスキーの消費量が低迷していたこともあるでしょう。
しかし、ブームを受けて世界的に日本のウイスキーが求められ、2014年時点で9箇所だった蒸留所は2021年には34か所と約4倍増。今後さらに増加傾向にあるわけですが、蒸溜所の数が急激に増えたことと、JWの基準が制定されて業界の流れが変わったことで、”作ればどこかで売れる”という今までのビジネスプランが通用しなくなりつつあります。

クラフト蒸留所は自社でブランドを確立していくために、良質な樽、熟成場所やボトリング設備の確保、販路と認知度向上、あるいはブレンド用原酒の調達や当面の資金計画と言った、”ウイスキー造り”以外の領域に課題がある状況です。※下画像参照。ボトラーズメーカーに関連する活動が点線部分に該当。
イギリスでは、大手ブレンドメーカーによる原酒提供以外に、例えばボトラーズメーカーの老舗であるGM社やシグナトリー社などが、上述の課題を解消する(結果として)の役割を古くから担い、ブレンデッドウイスキーとは異なるブランドを確立したことが、業界成長の一助となりました。
つまり、日本においてウイスキー業界が継続的発展を遂げるためには、今後同様の役割を担う活動が必要になってくるわけです。

ボトラーズの役割

T&T TOYAMAが立ち上げる「ジャパニーズウイスキーボトラーズ事業」は、
単に原酒を買い付けてリリースするだけではなく、熟成、瓶詰、販売、蒸溜以降の行程において、特にクラフトウイスキーメーカーを後押しするプロジェクトでもあります。既に国内クラフト6蒸留所から原酒提供について合意しているだけでなく、現在進行形で他蒸留所とも話を進めているそうです。
詳細については、クラウドファンディングの募集ページに詳しくまとめられているので参照いただければと思いますが、端的にまとめると以下の通りです。

【T&T TOYAMA ボトラーズ事業概要】
・富山県内に独自の貯蔵庫(最大貯蔵量約3000樽)を建設し、原酒を熟成。
・富山県産ミズナラ材等を用いた県内での樽製造のみならず、独自に樽を調達して熟成に使用。
・若鶴酒造が所有するボトリング設備等を、同事業だけでなく、他社のリリースにも提供。
・T&T TOYAMAとしてリリースするジャパニーズウイスキーは、下野氏、稲垣氏らがこれまでのウイスキーリリースの経験を活かし、原酒の状態を見極めてボトリング。原酒提供元とは異なる環境がもたらす、原酒の成長にも期待。

IMG_0898
※2021年5月時点で、T&T TOYAMAとパートナーシップを提携した蒸留所一覧

2693408_m
※富山県南砺市の風景と建設予定の熟成庫。例えば九州・鹿児島と富山の異なる気候に加え、通常蒸留所で使用するものと異なる樽での熟成など、違う環境で育った原酒が、将来どのような個性の違いに繋がるのか。ボトラーズブランドにおけるウイスキーの醍醐味とも言える。

最高気温分布
※各蒸溜所の最寄りの気象台過去5年間の月別最高気温の平均値。(御岳は最寄りに類似環境と思われる観測点が無く、鹿児島気象台の観測データを使用。)熟成に大きな影響を与える夏場の違いに加え、冬場の気温差も影響を与えると考えられる。

さて、本プロジェクトのクラウドファンディングの数あるリターンで、最も注目を集めるのは1口カスクオーナー+T&Tプレミアムメンバーのセットでしょう。
対象となっているのは、江井ヶ嶋、御岳、嘉之助、桜尾、三郎丸の5蒸留所で、これらのニューメイクを熟成するカスク(後日リリースされる「Breath of Japan」)の権利を1部保有できるもの。リリースまでは数年かかりますが、その間は設立記念パーティーや、イベントでのサンプルテイスティング等のリターンが受けられるようです。

ただ、既存リリースがある三郎丸や嘉之助と異なり、設備を改修した江井ヶ嶋や、リリースが行われていない御岳、桜尾については未知数です。情報の無い蒸留所に、決して安くない金額を投入するのは、如何にブームとは言えど覚悟のいることかと思います。。。

実は今回、別件のウイスキー活動の関係で、クラウドファンディングのリターン対象となる蒸留所の原酒が全て手元にあるのです。いくつかの蒸留所は、以前感じていた印象とはいい意味でまったくことなる原酒を作り出しており、経験を積んで日々進化するクラフトの成長を感じています。
前置きが長くなりましたが、今回の記事でもう一つの目的である、蒸溜所の個性やT&T TOYAMAの活動を通じたリリースの期待値を、主観として以下にまとめていきます。
関心あります方、リターンを選ぶ際の参考にしていただければ幸いです。また、既に支援をされたという方は、今後出てくるであろうリリースをイメージする一助となればと思います。


※クラウドファンディング、1口カスクオーナー制度のリターン
支援額:55000円~
・T&T TOYAMAプレミアムメンバー入会※
・選択された蒸留所いずれかのシングルモルトウイスキー700ml各1本の一口カスクオーナー証
・裏ラベルに指名を掲載
・T&T TOYAMAロゴ入りオリジナルグラス1脚
・T&T TOYAMAロゴ入りオリジナルTシャツ1着
・熟成庫壁面とT&T TOYAMAホームページへのお名前の掲載

※プレミアムメンバー会員の特典
・ボトラーズ設立記念パーティへのご招待(富山県内で開催)
・熟成庫の特別見学会へのご招待
・会員バッジの送付
・フェスでの原酒等の特別試飲が可能

【スケジュール】
2021年3月 原酒の買付交渉を開始
2021年5月 クラウドファンディング開始
2021年10月 熟成庫の建設着工予定
2021年12月 クラウドファンディングリターンの発送
2022年4月 熟成庫の完成予定・原酒の熟成の開始
2025年以降 商品のリリース

FullSizeRender
※蒸溜所がリニューアルした2017年に行われた、記念パーティーの様子。今回のリターンにはこうしたパーティーの招待券や、熟成庫等の見学権が含まれている。

IMG_3238
※リターン対象となるボトルは、全て富山県内の樽工場でトースティング(樽の内側の炭化部分を削り落とし、炎で炙らずじっくりと木材を焼く加工)を施した、特殊なバーボン樽を使用する。新樽に近く、一方で一度熟成使われていることからアクが抜け、より香ばしくメローなフレーバーが期待できる。

tttoyamar

■江井ヶ嶋蒸留所の原酒について:
少なくとも、私個人の印象を隠すことなく伝えるならば、この5蒸留所の中で最も懐疑的な蒸留所が江井ヶ嶋だったと言えます。
熱意を感じない作り手、お世辞にもセンスが良いとは言い難いカスクマネジメント、熟成環境とマッチしない酒質。。。ただ、SNS繋がりの知人から、近年の江井ヶ嶋は専門スタッフの配属で仕込みが改善し、設備もアップデートされて酒質が大きく向上したという話を聞いていました。
テイスティングしたのは2018年蒸留のカスクサンプルと、2019年蒸留のニューメイクです。はっきり言って別物ですね。今までのように雑味が強いのに厚みがなく、樽感の乗りも悪いといった原酒ではなく、麦芽由来の柔らかいコクと程よい酸味、軽い香ばしさを伴う素朴な味わいが主体の、洗練されてバランスの良い酒質へと大きな変化を遂げています。熟成後は、間違いなくこれまでの江井ヶ嶋蒸留所のイメージを払拭してくれることでしょう!!

■御岳蒸留所の原酒について:
焼酎銘柄”富乃宝山”で知られる、西酒造が2019年に創業したのが御岳蒸溜所です。西酒造については、以前クラフトジン「尽」のリリースで話を伺った際、明確なビジョンを持って造りの工夫をしていたことが印象的で、ウイスキーについても密かに楽しみにしていました。
酒質についてはクリアでありつつボリュームのしっかりある、丁寧な造りも伺えるような素晴らしい品質のニューメイクです。傾向としてはハイランドモルト的ですが、クリアにしようとすると香味はプレーンで厚みが少なくなるのが傾向としてある中で、相反する特性をまとめ上げ、原料由来の良い成分を引き出していると言えます。ニューメイクの時点で、麦芽由来の豊かなコク、そして穏やかなフルーティーさがあり、余韻で未熟要素が残らない。飲んでいてワクワクしてきます!
なお、西酒造ではシェリー樽100%で熟成を行っているため、異なる樽で熟成するT&T TOYAMAのリリースはそれだけで貴重と言えます。将来的にシングルモルトがリリースされた際には、飲み比べをするのも楽しみですね。

■嘉之助蒸留所の原酒について:
当ブログでも何度かレビューしている嘉之助蒸留所。6月には初のシングルモルトリリースも控えており、愛好家の期待も高まっています。
嘉之助蒸留所の酒質については、綺麗な酸味を伴う酒質で適度なコクがあり、未熟要素も少ないため温暖な気候と相まって3~5年程度で仕上がる比較的短熟向きという印象。樽香の乗りも良く、素性の良い酒質だと思います。また、作り手の熱意だけでなく、長く焼酎造りに携わってきたことでの技量の高さも高品質なウイスキーを生み出すポイントになっています。
これまでリリースされてきたバーボン樽熟成のニューボーンはフルーティーで、焼酎樽熟成のものはメローで穏やか、今回のT&T TOYAMAのカスクでは、鹿児島よりも気温が低い熟成環境も合わせて、そのいいとこどりが狙えるのではないかと感じています。

■桜尾蒸留所の原酒について:
江井ヶ島と並んで(立地的にも)今回のダークホースとも言える、中国醸造が創業する桜尾蒸留所。クラフトジンは知っていても、どんな原酒が造られているかは未知数の蒸留所かと思います。
あるいは、地ウイスキーの戸河内をご存じの方は、過去のリリースから連想されるかもしれませんが、蒸留所として設備や環境は一新されており、使われている原酒も違うため全くの別物です。
2018年蒸留のカスクサンプルを飲んだ第一印象は、「あ、グレンマレイっぽい」。柔らかくクリアで未熟要素が少ないだけでなく、バーボン樽由来の黄色系のオーキーなフルーティーさが適度に感じられる。。。まさにスペイサイドモルトのようで驚かされました。ニューメイクも洗練されており、強い個性を感じない代わりに樽由来のフレーバーを邪魔しない、現代的なウイスキーが期待できます。

■三郎丸蒸留所の原酒について:
最後は言わずと知れた、三郎丸です。日本の蒸留所の中で唯一ピーティーな原酒のみを仕込む蒸留所であり、そのピートも2020年からアイラ島のピートを使った仕込みにシフトするなど、2017年の大規模リニューアル以降は様々な工夫を取り入れ、愛好家の注目度も年々高まっています。
リターンの対象となる2021年仕込みのニューメイクはまだテイスティングできていませんが、2020年仕込みのアイラピーテッド原酒を飲む限り、乳酸発酵由来のフルーティーさ、麦芽風味、そして微かに潮気を伴うピーティーなフレーバー。オールド・アードベッグを目指すという作り手の方針も合わせ、熟成後が楽しみで仕方ないニューメイクです。
さながら北陸の小さな巨人。あるいは日本のクラフトの至宝。ことこの蒸留所のカスクに関しては、もはや勝利は約束されたようなものです。

FullSizeRender

tttoyamablend

なお、その他のリターンとしては、単純にブランドの設立を応援するもの等もありますが、上記1口オーナー制度以外に、ウイスキーのリターンがあるものとして新たに追加されたのが、

■支援者100名突破記念、焙煎樽マリッジのブレンデッドウイスキー
支援額:22000円~
・ブレンデッドモルトウイスキー『遊』(ブレンダー:モルトヤマ 下野)
・ブレンデッドウイスキー『創』(ブレンダー:若鶴酒造 稲垣)

こちらについては、三郎丸蒸留所のヘビーピーテッドモルト原酒をキーモルトとし、輸入原酒をブレンドしたスモーキータイプのウイスキーを、一口オーナー制度のリリースにも使われる「焙煎バーボン樽」でマリッジしたもの。『創』はクラフト、ラベル(右)に書かれた獅子頭は”匠”を、『遊』は自由に造ることをイメージしているのだとか。未知数な部分もありますが、直近のリリースを見る限り間違いはないものとなりそうです。

そういえば、グレンマッスルで三郎丸の原酒を用いたブレンドを作った際は、バーボン樽でのマリッジでしたが、エキスが多く残った樽だったのか、スモーキーさの中にウッディで色濃くメローな味わいが付与された、納得のリリースに仕上がりました。あんな感じが強調されたリリースになるのかなと。
これまでT&Tのニンフシリーズ含め数々のリリースに関わり、原酒やブレンドレシピを選定してきた二人の技量に期待したいですね。


最後に、今回のプロジェクトに関する個人的な期待として。
日本にはウイスキーの造り手がいて、ウイスキーを輸入・販売するインポーター、卸業者、酒販店がいて、一見して製造から販売までの流れが整っているように見えます。ですがその間を繋ぐ機能を持つ事業者がほとんど居ないことから、作り手が製造から販売の間にある、全ての製品企画・販売計画を建てる必要があります。
ですが、販売に繋げるのは簡単なことではなく、コストもかかります。また、小規模なクラフトほど原酒の作り分けは難しく、多様性を確保するのは容易ではありません。
この点を分業してきたのは本場スコットランドであったわけですが、T&T TOYAMAが始めるボトラーズプロジェクトは、日本のウイスキー業界になかった最後の1ピースとなりえ、ウイスキー史に残る挑戦的な取り組みであると言えます。

先日、日本洋酒酒造組合から発表されたジャパニーズウイスキーの基準(通称)を受け、市場の動き、造り手の意識が変わりつつあります。売り手市場は終わりを告げようとしており、各社は今までには無かった制限の中で、自社のブランドを確立していく戦略を求められているのです。
そうした中で、ボトラーズブランドのリリースが、オフィシャルリリースとの相互補完の関係で、ブランド全体のPRやリリースの多様性に繋がること。あるいは造ったばかりの原酒を安定して資金化できることは、蒸留所の安定に繋がることも期待できます。決して簡単な取り組みではありませんが、動き出したプロジェクトを見ると、逆にT&Tでしか出来なかったことではないかとも感じます。
日本のウイスキー業界の若きクラフトマンにしてクリエイター2人の大いなる挑戦。我々愛好家は勿論、業界全体で応援してほしいと願って、記事の結びとします。

tttoyama_cf

余談:クラウドファンディング最大のネタ枠だった「高所作業車名づけ権」が、開始数分で購入された件について。見ていて昼飯を吹き出しました。誰ですかこんな心意気のあるお方は・・・(いいぞもっとやれ!笑)
kousyosagyou

あかし 3年 2015-2018 日本酒カスク ゴーストシリーズ 61.5%

カテゴリ:
IMG_20190710_223653
AKASHI 
Aged 3 years 
Akashi Sake Cask Mtasured 
Distilled 2015 
Bottled 2018 
Cask type American Oak #101520 
500ml 61.5% 

グラス:シュピゲラウテイスティンググラス
時期:開封後半年程度
場所:BAR Harry's 高岡
暫定評価:★★★★(4→ - )

香り:小麦の焼き菓子、香木感のある粉っぽさのある華やかなオーク香。合わせて日本酒の古酒っぽさ、発酵した酸とアーモンドやくるみ、徐々に酸が強く、湿った布のようなアロマも混じってくる。

味:アタックの強い口当たり。はちみつ檸檬のような粘性と酸味、皮に混じる渋みはスパイシーさもあって和生姜のようなヒリつくニュアンスに、粗さを感じさせる。
余韻はドライでウッディ、発酵した酸、ニューポッティーな未熟感が粗さとなって若さを感じさせる。ハイトーンな刺激を残して長く続く。

樽が非常に強く出ており、粉っぽいオーク香に日本酒の古酒のようなヒネと発酵したような酸味。これが若い原酒をコーティングしており一見すると面白いのだが、酒質そのものが未熟なのだろう。一口二口と飲んでいく毎に、短熟故に取りきれなかった粗さと未熟な要素が口内、食道、胃を支配し、ボディーブローのように効いてくる。

IMG_20190710_224144

ジャパニーズウイスキーに関する情報のバイブルとも言える著書、ウイスキーライジング。その発売を記念して、小学舘プロダクションから限定500本リリースされたもの。
ウイスキーライジングの著者にして、ウイスキー情報発信サイト、Nonjattaを執筆するステファン氏がカスクを選定する、ゴーストシリーズの第9弾という位置付けでもあります。

この日本酒カスクは加水の50%仕様のものが別途リリースされており、仲間内でちょっとした話題になっていたボトルでした。
それは良い評価か、悪い評価かというと別れており、やはり自分で飲んで確かめなければ・・・と。結果、自分は後者のほう。
古酒に見られるヒネやキャップ臭など、後天的に付与されたネガ要素を除けば、大概のウイスキーで受け付けない、ということはないのですが、これは受け付けない類のもの。久々に、完璧に好みに合わないボトルに出会ってしまいました。


まず、日本酒カスクという新しい可能性の追求という意味では、このボトルが持つ意味は大きいと言えます。樽熟成する日本酒は珍しいですが、貴醸酒などもありますし、何より日本独自の文化である日本酒とウイスキーの組み合わせというのが、ワインカスクフィニッシュ同様の可能性、新しいブランドの確立を期待させるのです。
実際今回のリリースも樽感は面白く、ノージングのみでの第一印象は温暖な熟成環境からか3年の割りに強く出たオーク香があって、そこまで悪い印象はありませんでした。

しかし樽由来というよりも、酒質の部分で悪さをしているところが大きい。その比率は樽が3、酒質が7。
国内外問わずこれまで多くの蒸留所のニューメイクを飲んできましたが、中でも一部のクラフト系ニューメイクに感じられた若さ故の粗さ、蒸留で取りきれなかった未熟なニュアンス、渋味や辛味、あるいは発酵した野菜のような硫黄系のオフフレーバー。これが強い樽香の裏に潜んでいて、飲んでいると後から効いてくるのです。
これが、ダメな人と悪くないという人を分ける要因であると推察します。

そんなわけで、序盤は★4ー5くらいかなと思った評価は、後半にかけてネガティブな要素が目立ったため評価なしと、時間軸を分けての評価というイメージでまとめさせてもらいました。
今回のリリース、説明を良くみると日本酒?(粘性のある甘味と古酒系の酸味から貴醸酒樽?)と樽は、江井ヶ嶋のものではないようです。
どうせなら同じ酒造で作られた樽の組み合わせとかもみてみたいなと思います。

あかし 10年 60% オールドシェリーバット#5164 江井ヶ嶋酒造

カテゴリ:
IMG_6045
WHITE OAK
AKASHI
Shingle Malt Whisky
Aged 10 Years
Old Sherry Butt #5164
500ml 60%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅@サンプル購入
時期:不明
暫定評価:★★★★(4-5)

香り:焼けたゴムのようなビターなウッディネス。カカオ、焦げたキャラメル、度数らしく鼻腔への刺激も伴う。奥からハーブを思わせる薬草香と、発酵したような酸味もほのかに感じられる。

味:香りよりもスウィートで粘性を伴う一方、舌の上を刺激する強いアタックも感じる。ブラウンシュガー、ゴム感、ウッディなえぐみ。
余韻はハイトーンでヒリヒリとした刺激が非常に強く。あわせてサルファリー、カカオ90%チョコレートを食べた後のような粉っぽさや苦味を感じるウッディネスが長く続く。

それほど支配的ではない樽感に、あかしらしいアルコール感の強いアタックや薬草感。加えてクラフト的な熟成感とも言えるえぐみ、ウッディーさを伴う"地"的な個性豊富な1本。1:1程度まで加水すると、サルファリーさや刺激がある程度収まり、スムーズでシロップの甘みを伴ってバランスが一気に改善する。ストレートで一口飲んだ後は、加水しながら調整していくのがオススメ。




江井ヶ嶋酒造が久しぶりにリリースした、二桁熟成年数のシングルカスクウイスキー。中身についてはテイスティングを参照いただくとして、話のメインは樽についてです。

今回のスペックはオールドシェリーバットなる表記で、濃厚なシェリー感を期待してしまいますが、香味からシェリー酒の熟成が長い樽とも、あるいは1st fillとも言いがたく、オールドの意味は単に古いか、何度か使った古樽なのかなと推測。
江井ヶ嶋では単一樽で15年以上熟成させたシングルモルトがリリースされたことはなく、そのローテーションと樽感から、今回の樽は2回目か3回目の使用ではないかと考えられます。

この点については、ウイスキーテイスターの山岡さんが蒸留所で調べられた情報をFacebookで公開されています。
それによると、この樽はシェリー樽ではなくスパニッシュオークのブランデー樽。かつて江井ヶ嶋酒造がスペインからブランデーを輸入した際、入れ物としてセットで届いた樽で、少なくとも1度ウイスキーの熟成に使ったリフィルカスクとのこと。
ではなぜシェリー樽を名乗っているのかというと、考えられることは一つ。このスペインのブランデーが"シェリーブランデー"であり、シェリー(ブランデー)バットでの熟成だからと思われます。
シェリーブランデーは酒精強化前のワインを蒸留するため、香味はブランデー寄りですが、熟成はシェリー酒同様にソレラで行われる銘柄もあり、樽としての魅力は非常に感じます。

しかし仮に上記の通りとしても、表記の適正さについて新たな疑問が生まれるわけで。。。現在ジャパニーズウイスキーの基準について議論が進められているという話を聞きますが、輸入原酒の使用可否以上に表記の統一についてこそ、整備が必要と感じる次第です。

ちなみに、今回の樽と同じスパニッシュブランデー樽が使われたとされるボトルが、2010年に発売されたあかし12年です。
当時の説明文には「スパニッシュオークでの熟成」が記載されており、シェリーとは書かれていなかったものの、自分を含めて結構な人がスパニッシュオークシェリー樽と勘違い(汗)。

ピーティーでキャラメルのような甘みと熟成感、これまでリリースされてきたシングルモルトあかしの中で一番旨いボトルだと思うのですが、このボトルは硫黄感がなく今回とは異なる仕上がり。
ここで空いた樽もまた、今回のように10年以上熟成の原酒を育んでいる最中なのでしょうか。

ホワイトオーク あかし バーボンカスク 江井ヶ嶋酒造 55%

カテゴリ:
AKASHI
White Oak Eigashima
4 years old
Bourbon Cask #1129
500ml 55%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅
時期:不明@頂き物
評価:★★★★(4)

香り:クリアでスーッとするアルコール感、ほのかな酸味や薬草のニュアンスを伴う香り立ち。香り立ちは良くなく、加水すると酸味のあるパンのような素朴なアロマ、駄菓子のような甘さを感じる。

味:やや粘性があり、スパイシーでヒリヒリとしたアタック。溶剤や薬っぽさを感じる甘み、ウッディなえぐみと植物感を伴う。全体的に味わいに乏しい。
余韻はハイトーンでスパイシー、軽い穀物風味と刺激が張り付くように残る。

加水すると香味とも素朴な要素が感じられるが、バーボンカスク熟成として期待される華やかでフルーティーな要素は得られず、あるのはニュートラルでライトな香味の江井ヶ嶋らしい味わい。


3年くらい前にリリースされた、江井ヶ嶋酒造のホワイトオーク・バーボンカスク4年熟成。厳密には4年4ヶ月のうち3年間ホグスヘッド、1年4ヶ月バーボンバレルで熟成したというフィニッシュタイプの構成ですが、どちらもリフィルだったのか、バレルはファーストフィルでも熟成期間が短すぎたのか、香味に乏しく度数だけ高い。

メーカーコメントを見ると、樽感よりもニュートラルな香味を狙った模様。そのコンセプトなら納得できる一方、いかにも一時期の江井ヶ嶋らしい酒質を感じることが出来るリリースとなっています。

(江井ヶ嶋酒造のポットスチル。かつて奈良にあった幻の蒸留所、シルバーウイスキーで使われていたスチル形状を踏襲している。)

この原酒が蒸留された2000年代後半の江井ヶ嶋にとって、ウイスキー作りは日本酒と焼酎仕込みの合間、夏の間に杜氏を遊ばせないように仕込ませるためのものという意味合いがありました。
そしてその方向性はまあ地ウイスキーとはこういうものさ」と言われると納得してしまうような、決して酒質で飲ませる味ではなく、課題を残す時期といっても過言ではありません。

その背景には、江井ヶ嶋がかつて海外にウイスキーを輸出した際、クリアでクセの少ないブレンドがヨーロッパの何処かで「これまでにない味わいだ」と大ヒット?(蒸留所スタッフ談)したのだとかで、そうした経緯からか、環境を活かした作りをするわけでも、ピートを炊いてアイラタイプの原酒を目指すこともなく、ただ癖を抑えたライトなブレンドに使える原酒が作られてきました。

また、1990年代の一時期ピーティーなウイスキーも仕込まれていたものの、これは麦芽を仕入れる際にピーテッド麦芽の方が安かったからという「商社の気まぐれ」説まであり。(本社側が、商社任せなのでピートレベルが変わっていたことを知らないとも。。。)
なんというか、酒質だけでなく作り手にも課題を残すウイスキーであったわけです。 

他方、ウイスキー冬の時代でも原酒を作り続けた企業方針は賞賛に値しますし、近年ではブームを受けて行程の見直しや、仕込み頻度も増えていると聞きます。
瀬戸内海にほど近い立地条件や、一時期垣間見た酒質的に、江井ヶ嶋はもっと上を目指せるはず。日本全国にクラフトが増えてきたからこそ、西の雄としてクラフト業界を牽引するような仕込みと仕上がりを期待したいです。

江井ヶ嶋 あかし 14年 セカンドリリース 58%

カテゴリ:

AKASHI 
White Oak 
Single Malt Whisky 
Aged 14 Years 
Spanish Oak Sherry Cask 12.1/2 years 
American Oak Sherry Cask 1.1/2 years 
French Oak White Wine Cask 1/2 years
700ml 58% 

グラス:グレンケアン 
量:ハーフショット 
場所:BAR飲み(Rasen) 
時期:開封後2年程度 
暫定評価:★★★★(4-5)

香り:プルーンを思わせる甘く濃厚なシェリー香に、煮干しの粉末のようなピーティーさ、クレヨンやペンキ、油絵の具の癖。若干の椎茸、強い渋みも感じる。

味:ねっとりとリッチな口当たりから、すぐにドライで苦味や溶剤系の癖とともに水分が奪われていく。ビターチョコ、油絵の具、煮干を思わせるピーティーさ。余韻はスパイシーで焦げた木と強いウッディネスを感じるドライな余韻。


先日はあかし15年を紹介しましたが、その約1年前にリリースされたのが14年。
14年は2種類リリースされ、今回のボトルはセカンドリリースに当たるボトルです。
なんで今更こんなものと言うと、この14年セカンドリリースも15年も、とある事情で飲まず嫌いして飲んでいなかったため、何事も経験だよなと意を決して挑んでみたわけです。

その理由が最初に発売された14年ファーストリリースに関する話。これ、スタッフが失敗作だったと明言してしまうくらい、まあとにかくアレな出来だったんです。
焦げた樽から出る悪い部分、溶剤系の香味など、悪い部分がずいぶん強く出たなーと感じる香味で、そこにねっとりと甘いシェリー。あの味はちょっと・・・とセカンド以降見向きもせず現在に至っていました。

このセカンドリリースはというと、上述の悪い部分に似た点は多少あるのですが、旨いかどうかはさておき、なんとか飲める味に仕上がっています。ねっとりと濃いシェリー感、油絵の具のような癖、強いウッディネス。強く出すぎたシェリー感を、ワイン樽でなんとか慣らしたような。
樽の質にもよるのでしょうけど、あかしは熟成環境的に12年程度が最長熟のボーダーなんだなと感じる味わいでした。

このページのトップヘ

見出し画像
×