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寒松一色 20年 シングルカスク 57% マルスウイスキー

カテゴリ:
KANSYOU-ISSIKI
TAKANO SOHONTEN
Single Cask Whisky
Aged 20 years
700ml 57%

グラス:木村硝子テイスティング
場所:個人宅
時期:開封後1ヶ月以内
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:かりんとうや黒砂糖を思わせる香ばしいく甘い香り立ち。メープルナッツ、くるみ、そして樹皮を思わせるような強く深いウッディネス、鼻腔を刺激するヒリヒリとしたスパイシーさ。

味:パワフル、ビターでスパイシーな口当たり。皮付きアーモンド、くるみ、キャラメリゼ、徐々に渋み。奥には蜜のような甘みがあり、味に深みを与えている。
余韻はドライで無骨なウッディネス、スパイシーでハイトーンなフィニッシュ。

果実よりは黒糖系のお菓子やナッツを思わせる、ジャパニーズらしい強い樽感が主体。個人的には松の樹皮を連想するゴツゴツとした色の濃いウッディさでもある。
加水するとメープルシロップ、キャラメルのような甘みが濃く、刺激は穏やかになるがボディが急速に失われる。


その筋の方々には知らぬ人はいないという、マスターソムリエ高野豊氏が、当時の信州蒸留所に貯蔵されていた原酒を全てテイスティングし、選び抜いたとされる1樽。ネーミングは、かの有名な"寒松一色千年別"と、中央アルプスの岩肌に立つ孤高の松の木を思わせる味わいから、寒松一色と名付けたのだそうです。

自分もこの手の樽感を感じるウイスキーからは、無骨というかゴツゴツとした松の木の樹皮を連想し、度々テイスティングにも用いています。
勿論香味が"そのもの"というわけではないのですが。。。似た樽感のものを上げるなら、1990年代の余市、あるいは流通が多かったものだと蒸留所で販売されていたカスクストレングス新樽熟成10年ものが該当。後は、羽生でも似たようなニュアンスを感じるボトルがあり、ほぼ全てがジャパニーズウイスキーというのも興味深いところです。

その熟成に使われた樽は不明ながら、香味から推察するにチャー済みのバーボン樽、あるいは2回目くらいの新樽と思われます。
何かと勘違いしてシェリー樽のモルトで硫黄がキツイと思い込んでいたため、今回のテイスティングは目から鱗。酒質の経年変化に対して20年間で強く出た樽感が、スコッチモルトとは異なるバランスを生み出しています。


ちなみに、このボトルには疑問点が2つあります。
1つはボトリング時期。
2013年第一四半期頃が濃厚と思われますが、この寒松一色は20年熟成のモルトで、WEB上には"13年熟成時点で選定して7年追加熟成した"という記述もあります。
逆算すると蒸留時期は1992年〜1993年の一時期となるわけですが、信州蒸留所は1992年に操業を休止していることを考えると、このボトルの原酒は蒸留所休止間際も間際か、あるいは1993年に蒸留された別な「国産ウイスキーの原酒」ということに。香味的にはマルスと言われればマルスなんですが・・・樽が強すぎて如何とも。

そしてもう1つは、今も残る酒販店のPR文面をみると、この寒松一色の味わいは「樹齢千年の松の木」とあり、立派な松の木(それこそ、国や県からなんらかの指定をされているはず)なのだろうとWEBを探してみるも、自分の調べが足りないのかそれらしいものが信州周辺から出てこないこと。
どうせならセットで紹介したかったですね。

駒ケ岳 津貫エイジング 寶常セレクション2017 50% 蒸留所限定

カテゴリ:
KOMAGATAKE
Tsunuki Aging
Ho-jo- Selection 2017
Distilled in Shinsyu
Matured at Tsunuki Ageing Cellar
700ml 50%

グラス:国際規格テイスティング
場所:BAR飲み
時期:不明
暫定評価:★★★★★(5)

香り:ツンとしてアタックの強い香り立ち。ピーティーでスモーキー、シトラスやレモンピールの柑橘香、やや乳酸っぽさも混じる。

味:ハイトーンでスパイシー、荒さとアタックの強い口当たり。ハーブ、うっすらとグレープフルーツ、そして苦味と土っぽさを伴うピートフレーバー。唾液と混ざると蜜っぽい甘みも感じる。
余韻はスモーキーでハイトーン、口内に刺激を残しつつ長く続く。

まだまだ荒さと刺激が残る若いモルトウイスキー。ピートフレーバーがアクセントになって若いがそれなりに飲めてしまう、津貫エイジングの効果は樽由来と思しき柑橘の香味と、加水で現れる蜜っぽさにあるだろうか。


本坊酒造の第2蒸留所となる鹿児島県は津貫蒸留所。津貫では蒸留が2015年から開始され、ニューポットの販売も始まっています。
また、津貫蒸留所は元々本坊酒造の焼酎工場の一つで、蒸留所稼働前から試験的に信州蒸留所の原酒を熟成させており、その原酒が「津貫エイジング」としてもリリースされています。

今回のボトルは、その津貫エイジングの蒸留所限定品。蒸留所のゲストルーム的な位置付けである、元社長宅を改築したという"寶常エリア"でのみ販売されている1本。詳しい素性はわかりませんが、津貫エイジングの原酒3樽をバッティングしたシングルモルトと裏ラベルにはあります。

飲んだ印象では、原酒のタイプはピーテッド、熟成年数は体感3年程度で樽はバーボンだと思うのですが、以前リリースされた津貫エイジングより度数が低いのに荒さが強いというか、樽感も異なると感じる仕上がり。
津貫は気温が信州に比べて高く、3年丸々津貫で熟成させていたらもう少し樽感が強く出ても良い印象で、例えば使われた樽がリフィルだったとか、3樽のうち1樽くらい異なる傾向の原酒が混じっているのではないかと感じました。
ここは情報を持ってる方に実際のところを伺いたいですね。


ウイスキーの熟成に樽が重要なのは言わずもがなですが、その樽の働きに影響するのが熟成環境です。
個人的に信州、津貫共原酒は標準以上のクオリティがあると感じているところで、後はこの環境がどのように原酒を育むのか。今後のリリースにも期待しています。

駒ケ岳 30年 1986-2016 シェリーカスク 48% 本坊酒造

カテゴリ:
KOMAGATAKE
Hombo Shuzo
Aged 30 years
Distilled 1986
Bottled 2016
Cask type Sherry
700ml 48%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:BAR飲み(Y's Land IAN)
時期:開封後1ヶ月程度
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:華やかでオーキーなウッディネス主体の香り立ち。濃いオーク香は檜などの木材も連想させる。ドライアプリコット、黄桃、メープルシロップ、ほのかにシナモンなどのスパイスも。

味:角の取れたウッディな口当たり。香り同様の濃いオークフレーバーや熟したアプリコット、パフュームとは異なる甘く華やかな化粧香が鼻腔に抜ける。
余韻はドライでウッディ、口の中がサラサラする、樽由来の渋みも伴い長く続く。

シェリーカスク表記だが、リフィルだったのかシェリー感が非常に薄い樽だったのか、新樽のような華やかなウッディネスが主体。
その樽感が非常に厚く、濃く、ラベルと関連づけるならコロンや化粧をたっぷりとつけた女性のようで。。。少量加水すると樽感が浮ついてボディの薄さが目立ち、アンバランスになってしまう。


本坊酒造(マルスウイスキー)が所有する最長熟成の原酒のリリース。この30年シングルモルトは、シェリーカスクの度数違いが2種類リリースされていました。
2種類の構成は、共に1986年蒸留の原酒2樽のバッティングで、カスクストレングスと加水タイプ。ただボトリング本数や香味から推察するに、シェリー樽2樽からブレンド比率を変えて、2タイプのシングルモルトを作ったものと考えられます。

個人的にマルスのシェリーカスクは硫黄や椎茸感が強かったりで、あまり良い印象はなく、このボトルも若干警戒していましたが。。。今回の2本はそうした要素はおろかシェリー樽らしいシェリー感ではなく、例えば新樽をシェリー酒で洗っただけというような印象。
華やかな樽香、オークフレーバー、あるいは檜風呂に入っているような木の香りに包まれる。ジャパニーズらしくありシェリー樽らしくない、といった風味が充実しています。

この前作としてリリースされたナチュラルカスクストレングス・アメリカンホワイトオーク30年に近い要素もあり、ブラインドで出題されたら、アメリカンホワイトオークの新樽長期熟成と答えてしまうかもしれません。


写真左側、もう一つの30年シェリーカスクも後日記事にしますが、ベースとなっている原酒が同じであるためか、この2種類の香味の方向性はほぼ同じ。
そのあまりの樽感の濃さ、華やかさ、整えたような構成で、テイスティングした際「叶姉妹みたいなボトル」と話題になりました(笑)。

このボトルは、ウイスキーラバーズ名古屋2018のIANブースで提供されます。
駒ケ岳30年シェリーカスクが2種類開いていて、同時に飲める機会というのも中々無いのではないでしょうか。
非常に樽感の濃いウイスキーで、少量でも満足感は充分。テイスティングの際は間にパンやクラッカーを挟むこともオススメします。

シングルモルト 駒ケ岳 小彼岸桜 ネイチャーオブ信州 52%

カテゴリ:

KOMAGATAKE
KOHIGAN SAKURA
Nature of Shinshu No,2
(No Aged)
700ml 52%

グラス:不明
量:計30ml程度
場所:個人宅
時期:開封後2ヶ月程度

【ブラインドテイスティング】
地域:日本
蒸留所:秩父
熟成年数:6年程度
樽:活性樽ベース
度数:57%
暫定評価:★★★★★(5ー6)

香り:ドライでアタックの強い、ミントやスパイスのアロマを伴うオークの華やかさ、ほのかに焦げたニュアンスもある。加水でドライパイナップルやアップルビスケットを思わせるフルーティーさ。

味:ウッディでスパイシー。ピリピリと若さを感じる荒さから、ねっとりと甘くシロップ漬けのチェリー、キャラメル、焦がしたバーボンオークに古樽のえぐみが広がる。
余韻は淡くピーティーで序盤同様に樽香を伴うハイトーンなフィニッシュ。

若さを樽由来の香味が補っているウイスキー。日本的な樽感だ。香味共に奥行きはそれほどないが、バランスは整っている。加水は崩れやすいのか量が難しい、少量までならバランスが良くなる。


先週末、ウイスキー仲間宅で開催された持ち寄りブラインドテイスティング大会で、主催者Jさん出題の1本です。
小彼岸桜は昨年末にリリースされた、マルスウイスキーのブランド、"ネイチャーオブ信州"の第2弾。自然の恵みに感謝する意味を込めて、再稼働後2013年に蒸留された3年熟成程度の原酒をベースに、その自然が育んだ信州蒸留所休止前の20年ものの原酒をバッティングした意欲作です。

このウイスキーは、昨年のウイスキーフェスで試飲して以来のテイスティング。
ノージングでジャパニーズであることはほぼ絞れていたものの、甘く強い樽香に、スパイシーでピーティーなフレーバーを主として拾い、一瞬余市蒸留所か?と連想。(活性樽と書いたあたりに名残がw)
しかしそれにしてはボディがあまり厚くなく、短熟気味なフレーバーも感じられ、マルスか、イチローかと悩んで樽由来のえぐみにそれっぽさを拾ってイチローの道へ、というのが流れです。
まあ冷静になると、淡くピーティーで短熟だけでは整えられないバランスなど、イチローのシングルモルトは除外される条件がいくつもあり、そこを拾いきれなかった経験の浅さが出てしまった結果でもありました(汗)。

前述の通り、"小彼岸桜"は、前作の"竜胆"に続き長熟原酒と短熟原酒のバッティングです。
前作の方がピーティーでしたが、この第二弾はピートフレーバーを抑え目にしつつ、その分樽を強くしてきた印象。長熟はリチャードバーボン主体、若い方はポート系の樽も使ってそう。そして両者に共通するのが、若さがありながら全体のバランスが整っていることにあります。

大手メーカーとクラフトメーカーの製品にある違いの一つに、ストックしている原酒の種類があるわけですが、特に熟成年数は製品の出来にモロに効いてきます。
近年ニューポットの段階から狙った酒質を作るノウハウが確立しつつありますが、それでも長熟と短熟の仕上がりの差を埋めるには至っていません。
つまり「長期熟成」のストックを使えるというのは、クラフトメーカーの中では大きなアドバンテージであるわけです。

個人的には竜胆の方が好みでしたが、今作は前作に比べ、ブレンドテーマがわかりやすい構成とも感じました。そのストックを使って次作は何がリリースされるのか、今後も魅力あるリリースを期待しています。

シングルモルト 駒ケ岳 30年 1986-2016 マルスウイスキー 61%

カテゴリ:
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KOMAGATAKE
Mars Whisky
Aged 30 Years
Distilled 1986
Bottled 2016
Cask type American White Oak
700ml 61%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:計30ml程度
場所:BAR飲み+自宅
時期:開封後2ヶ月程度
暫定評価:★★★★★★★(6ー7)

香り:華やかで濃縮したようなウッディネス、ややドライな香り立ち。強い木香はまるで檜風呂、あるいはバンガローの中にいるよう。胡桃やカシューナッツなどのナッティーさ、ハーブ、徐々にアプリコット、ドライパイナップルの甘酸っぱさに加え、微かに燻したような薫香も混じる。

味:とろりとした口当たりから強くウッディー、松ヤニや無骨な木のフレーバーにドライパイナップルや林檎の果実感、ほのかに蜂蜜、徐々に土っぽさを伴う。ボディはしっかりとしており、樽香は強いが綱渡りのようなバランスを保っている。
余韻はドライで乾いたウッディネス。ピート香が木香の奥からじわじわと立ち上ってきて長く続く。

とにかく木の香味である。加水するとえぐみが多少出るものの、味わいはパイナップルやピートなどのストレートで感じた要素がそのまま伸びてくる。樽由来のフレーバーを濃縮したような香味は確実に好みを分けるが、ジャパニーズウイスキーらしさを突き詰めた形の一つであると感じる。 


昨年、本坊酒造ことマルスウイスキーが発売した、シングルモルト駒ケ岳の最長熟成品となる1本。
1986年に蒸留され、アメリカンホワイトオーク樽で熟成されてきた原酒4樽をバッティングした、同蒸留所の歴史が詰まったリリースです。
というのも、信州蒸留所は1985年に竣工、操業を開始しており、今回リリースされた原酒はほぼ創業当時から貯蔵され続けてきた原酒が使われているという事になります。
その間、1992年には信州蒸留所が操業を休止し、2011年に再び蒸留を再開、そしてウイスキーブームの到来・・・紆余曲折を経ているわけですが、そのあたりはまた別な機会にまとめるとして、肝心の香味のほうに触れていくとします。

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(2011年2月、蒸留を再開した当時の信州蒸留所の蒸留器。現在は新しい蒸留器に交換されており、この蒸留器は屋外に展示されている。どこか余市のそれに近い形状で、今回テイスティングした駒ケ岳は、この蒸留器の初期の原酒に当たる。)

テイスティング中にも書いたとおり、基本的には熟成に使われたアメリカンホワイトオーク樽由来のフレーバーが非常に濃く、樽材を舐めているような印象すら受けます。
スコッチモルトではあまり見られないこの熟成感は、使われた樽もさることながら、やはり熟成環境の気温、湿度の違いだろうなと感じるところ。余市、宮城峡、羽生、いくつかの国内蒸留所にも同様の傾向が見られ、この熟成感がジャパニーズウイスキーらしさの一つと言えます。

その濃いフレーバーをなんとか受け止め、ギリギリ形にしている駒ケ岳の酒質は、癖は少ないが厚みのあるタイプ。度数が高いこともプラスに作用し、この30年はギリギリのところでバランスを保っています。
また、複数樽バッティングであることが複雑さ、味わいの奥行きに貢献しているように感じます。
樽香の強さゆえ、多くの量を一度に飲もうとすると鼻も口もすぐに飲み疲れてしまいますが、少量を口に含んでゆっくり転がすと奥から果実味が開き、ピートフレーバーと合わさって味わい深い構成。 1分1年、信州の森の中に佇む蒸留所の姿を思い浮かべ、30分くらいかけてゆっくり飲んで良い、そんなウイスキーだと思います。


かつて本坊酒造は、竹鶴政孝の実習ノートを元に、鹿児島、山梨の蒸留所でピーティーでヘビータイプのウイスキーを製造。この信州でウイスキー事業を行うにあたっては、日本人向けのライトな味覚に合わせたスタイルのウイスキーを作るつもりだったそうですが、出来上がっていたのはこれまでリリースされた様々なボトルの通り、中長期熟成向けの原酒だったようです。 

蒸留に関するノウハウも確立していなかった時代だけに、手探りで行うことも多かったのでしょう。
確かに鹿児島時代に比べて癖は少なく洗練されていますが、ライトスタイルを目指しながらピーテッド麦芽が使われているのも、蒸留所の系譜と、同タイプの麦芽の方がノンピートより安かった、この2つの側面に時代を感じます。


このボトル、最初は日本橋のIANさんでテイスティングしたものの、日本で30年という予想通りあまりの樽の強さに閉口気味。その後ウイスキー仲間のIさんから小瓶を頂き、改めてゆっくり家飲みしたところ、熟成年数が織りなす味わい深さ、上述の様々な要素を感じ取ることが出来ました。ありがとうございます!

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