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シングルモルト 山崎 リミテッドエディション2022 43%

カテゴリ:
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SUNTORY 
THE YAMAZAKI 
SINGLE MALT JAPANESE WHISKY 
LIMITED EDITION 2022 
700ml 43% 

評価:★★★★★★(6)(!)

香り:華やかでオリエンタルなトップノート。少々刺々しいが、ミズナラ由来のお香や和柑橘を思わせる独特の要素と、微かに黄色系のドライフルーツのアロマ。ただし持続力がなく、前面にあるミズナラ系のアロマの奥はスパイシーでドライ寄りなウッディさ。

味:やや粗さのある口当たり。とろりとした蜜っぽい質感に、含み香りではっきりとミズナラ系のニュアンス、オレンジなどの果実感を伴うドライなウッディネス。乾いた麦芽とヒリヒリとした刺激、口内から鼻腔に届くオリエンタルなアロマ。ほろ苦くスパイシーな余韻が長く続く。

香味のまとまり具合は若い原酒の影響か少々荒削りで、イメージとしてはやすりがけ前の木材。しかしその木材には光るものがある。はっきりとしたミズナラ香と強めのウッディネスを、ワインやシェリー樽由来の甘みを繋ぎにして、若いなりにまとめられた構成。持続力があまりないが、山崎らしさがわかりやすく、各香味がはつらつと主張するバランスは、これはこれでアリ。原酒の成長と、作り手の確かな技術を感じる1本。

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NAS山崎が美味しくなったので、リミテッドはどうだろうと飲んでみました。所謂サンプルでお持ち帰りというヤツです。

感想はテイスティングの通りですが、このリミテッドエディション2022は、昨年リリースされたリミテッドエディション2021同様に12年熟成以上のミズナラ熟成原酒を軸としたもの。
現行品のシングルモルト山崎のオフィシャルがNAS、12年、18年、25年と連なる香味の系譜の中で、リミテッドという位置付けから山崎らしさ、サントリーらしさを限られた原酒の中でわかりやすく強調して作っているのが非常に面白く、印象的な1本でもありました。

山崎リミテッドエディション2022は現在公式で抽選販売を受付中とのこと。これはボトルで飲んでも良いですし、BAR飲みでも後述するサントリーの最近の原酒使い含めて色々経験を得られる1本となっています。
※サントリー 山崎公式サイト:https://www.suntory.co.jp/whisky/yamazaki/news/108.html

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山崎リミテッドエディションは、現時点では2014〜2017年まで発売された第1期。2021年からリリースされている第2期に整理されます。
第1期の山崎リミテッドエディションは、20年以上熟成のシェリーやポートワイン樽原酒を軸にしており、それ以前に新リリースされた山崎NASも赤ワイン樽原酒の存在を強調。当時の山崎18年や25年はミズナラ系のキャラクター以上にスパニッシュオーク樽のシェリー感を強調していた時代であり、ミズナラはどちらかと言えばアクセント。山崎は「グレードが上がるほど重厚で複雑なウッディネス」これがキャラクターとなっていました。

ところが、近年にかけて山崎関連のブランドには、重厚さに通じるシェリー樽やワイン樽原酒の比率が下がり、目に見える違いとして色合いがどんどん薄くなってる一方、ミズナラの個性が強くなっている印象を受けます。
先日、とある方のご好意で2022年ロットの山崎12年、18年と響21年を飲み比べましたが、山崎18年はモルト100%でボディこそ厚いものの香味は上述の通り。響21年はグレーンのキャラクターを除くとシェリー感は以前ほどなく、あるのはパンチョンやバーボン系のオーク感とミズナラの個性的な香味。間違いなくサントリー味なんだけど…あれ、これもどっちも同じ系統だなと。

ミズナラ風味が強くなったというより、シェリー感が薄くなった分、隠れていた他の香味を感じやすくなっただけというのもあるかもしれませんが…。
そこで今回のレビューアイテムである山崎リミテッドエディションです。第1期の酒精強化ワイン樽原酒から、第二期はミズナラ樽へとコンセプトを変えており、かつ新樽原酒をメインに据えています。
最近はエントリーグレードのローヤルでもミズナラ要素を感じられるようになってたりで、それもおそらくこのミズナラ新樽原酒由来でしょう。サントリーのブランド形成と軸とする原酒戦略が、シェリーからミズナラへと変わった(というよりシェリーがフェードアウトしつつある)ように感じられます。


シェリー樽もミズナラ樽も、バーボン樽に比べてコストがかかる樽です。
その特性は、1st fillの爆発力は凄いが2nd fill以降は同じ濃さと味わいが見込めない一発屋のスパニッシュオークのシェリー樽に対し、一度作れば新樽からリフィル以降まで安定して香味を得られるミズナラ樽の方が、香味という観点では長期的には使いやすいのかもしれません。
管理や欠損などの難しさもありますが、2回目以降は長熟も狙えますし、国内で樽を製造できるというのも、物流に混乱があるこの状況では利点。何より、シェリー樽よりジャパニーズブランドとしての強みにも繋がります。

2017年でリリースが止まっていたリミテッドエディション。なぜこのタイミングで復活したのか。なぜ軸となる原酒を変えてきたのか。
考え過ぎかもしれませんが、その裏にはサントリーのリリース全体にかかる、戦略の一端があるように思えるのです。

山崎 リミテッドエディション2017 サントリー 43%

カテゴリ:
SUNTORY
YAMAZAKI
Single Malt Whisky
Limited Edition 2017  
No Aged
700ml 43%

グラス:サントリーテイスティング
場所:BAR飲み
時期:開封後1〜2ヶ月程度
暫定評価:★★★★★★(5→6)

香り:華やかでドライ、ツンとしたウッディネス。リンゴのカラメル煮、オレンジチョコ、香木を思わせるアロマ。時間経過で蜜っぽい甘さも感じられる。

味:ウッディでやや刺激のある口当たり。ドライオレンジピールから杏子のジャム、微かなハーブ、濃く入れた紅茶のタンニン。ボディが軽くドライな質感が目立つものの、徐々に粘性も感じられる。
余韻はドライでスパイシー、ほのかな焦げ感。華やかな樽香が染み込むように残るビターなフィニッシュ。

ボディは軽く、香りも浮ついたようで重厚な感じではないが、華やかなウッディさがあるボトル。サントリーらしさ、山崎らしさに通じる特徴的な樽香。ドライ気味でビターな味わいは、加水するとバランス良くなり蜜系の甘味が広がる。少量加水、あるいはロックも楽しめそう。


サントリーが毎年ギフト向けにリリースしている山崎の限定品。メーカーのテイスティングコメントは毎年同じですが、ブレンドの方向性という扱いのようで、年度毎に違う香味、仕上がりを楽しめます。

そのコンセプトは、シェリーやポート樽などによる20年以上の長期熟成原酒に、パンチョンやバーボン樽などの若い原酒をブレンドして仕上げるノンエイジ仕様。熟成で失われがちな香味のパワーを若い原酒で補った、両者のいいとこ取りということなのですが。。。この手のコンセプトは他社のリリースにもしばしば見られ、実態がかけ離れているケースも少なくなく。つまり、混ぜても香味や熟成感は完全に平均化されないので、下手すると若い原酒に食われていたり、嫌な部分が目立ってしまう場合もあります。

ブレンドには相反する要素が必ずあり、そこの間を埋めていかないと、一つの要素が孤立して目立ってしまうのです。(逆にギッチリ埋め過ぎても、それはそれで個性のぼやけた味になるのでバランスが難しいわけですが。)
この山崎リミテッドエディション2017はどうかというと、主たる香味の間を繋ぐ濃厚さのある原酒が少ないのか、長期熟成による華やかでウッディな樽感はしっかり感じられる一方、口当たりは妙にスパイシーでボディが軽い。同シリーズでは、特に2015からこうした傾向が顕著であり、今年はさらに突き詰めてきた印象があります。

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(先日久々に見学した山崎蒸留所。ちょうど蒸留器のメンテナンス中で、蒸留中のにおいを感じることは出来なかったが、これはこれで貴重なシーンを見学できた。)

華やかな樽香が感じやすい反面、全体的にはアンバランスとも言えるわけですが、加水すると水が架け橋となって間が埋まり、マイルドでフルーティーさを感じやすくなるポジティブな変化がありました。 
メーカーサイトには「まずストレートで飲んで欲しい」と書かれており、熟成した山崎らしい華やかな樽香をストレート感じた後は、ロックなど一般的なウイスキーの飲み方で肩肘張らずに楽しんでいけるのが、作り手のイメージなのかもしれません。

なお、テイスティングに記載したように、今回のボトルには香木に通じるウッディさがあります。
これはスパニッシュオークやアメリカンホワイトオークに由来する樽香、ブレンドの妙からくるものと思いますが、そうしたニュアンス漂う華やかでボディの軽い味わいは、サントリーがウリとする近年のミズナラカスクにも通じる方向性。個人的には"擬似ミズナラ"としても位置付けられる仕上がりで、意外な共通項にもブレンダーの技を感じました。

近年18年の出来がちょっとアレな中、そして12年が絶滅危惧種な中。この山崎リミテッドは代替品として案外良い仕事をするんじゃないかとも思います。

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