タグ

タグ:山崎

シングルモルト 山崎 リミテッドエディション2022 43%

カテゴリ:
IMG_9078

SUNTORY 
THE YAMAZAKI 
SINGLE MALT JAPANESE WHISKY 
LIMITED EDITION 2022 
700ml 43% 

評価:★★★★★★(6)(!)

香り:華やかでオリエンタルなトップノート。少々刺々しいが、ミズナラ由来のお香や和柑橘を思わせる独特の要素と、微かに黄色系のドライフルーツのアロマ。ただし持続力がなく、前面にあるミズナラ系のアロマの奥はスパイシーでドライ寄りなウッディさ。

味:やや粗さのある口当たり。とろりとした蜜っぽい質感に、含み香りではっきりとミズナラ系のニュアンス、オレンジなどの果実感を伴うドライなウッディネス。乾いた麦芽とヒリヒリとした刺激、口内から鼻腔に届くオリエンタルなアロマ。ほろ苦くスパイシーな余韻が長く続く。

香味のまとまり具合は若い原酒の影響か少々荒削りで、イメージとしてはやすりがけ前の木材。しかしその木材には光るものがある。はっきりとしたミズナラ香と強めのウッディネスを、ワインやシェリー樽由来の甘みを繋ぎにして、若いなりにまとめられた構成。持続力があまりないが、山崎らしさがわかりやすく、各香味がはつらつと主張するバランスは、これはこれでアリ。原酒の成長と、作り手の確かな技術を感じる1本。

IMG_9079

NAS山崎が美味しくなったので、リミテッドはどうだろうと飲んでみました。所謂サンプルでお持ち帰りというヤツです。

感想はテイスティングの通りですが、このリミテッドエディション2022は、昨年リリースされたリミテッドエディション2021同様に12年熟成以上のミズナラ熟成原酒を軸としたもの。
現行品のシングルモルト山崎のオフィシャルがNAS、12年、18年、25年と連なる香味の系譜の中で、リミテッドという位置付けから山崎らしさ、サントリーらしさを限られた原酒の中でわかりやすく強調して作っているのが非常に面白く、印象的な1本でもありました。

山崎リミテッドエディション2022は現在公式で抽選販売を受付中とのこと。これはボトルで飲んでも良いですし、BAR飲みでも後述するサントリーの最近の原酒使い含めて色々経験を得られる1本となっています。
※サントリー 山崎公式サイト:https://www.suntory.co.jp/whisky/yamazaki/news/108.html

FullSizeRender

山崎リミテッドエディションは、現時点では2014〜2017年まで発売された第1期。2021年からリリースされている第2期に整理されます。
第1期の山崎リミテッドエディションは、20年以上熟成のシェリーやポートワイン樽原酒を軸にしており、それ以前に新リリースされた山崎NASも赤ワイン樽原酒の存在を強調。当時の山崎18年や25年はミズナラ系のキャラクター以上にスパニッシュオーク樽のシェリー感を強調していた時代であり、ミズナラはどちらかと言えばアクセント。山崎は「グレードが上がるほど重厚で複雑なウッディネス」これがキャラクターとなっていました。

ところが、近年にかけて山崎関連のブランドには、重厚さに通じるシェリー樽やワイン樽原酒の比率が下がり、目に見える違いとして色合いがどんどん薄くなってる一方、ミズナラの個性が強くなっている印象を受けます。
先日、とある方のご好意で2022年ロットの山崎12年、18年と響21年を飲み比べましたが、山崎18年はモルト100%でボディこそ厚いものの香味は上述の通り。響21年はグレーンのキャラクターを除くとシェリー感は以前ほどなく、あるのはパンチョンやバーボン系のオーク感とミズナラの個性的な香味。間違いなくサントリー味なんだけど…あれ、これもどっちも同じ系統だなと。

ミズナラ風味が強くなったというより、シェリー感が薄くなった分、隠れていた他の香味を感じやすくなっただけというのもあるかもしれませんが…。
そこで今回のレビューアイテムである山崎リミテッドエディションです。第1期の酒精強化ワイン樽原酒から、第二期はミズナラ樽へとコンセプトを変えており、かつ新樽原酒をメインに据えています。
最近はエントリーグレードのローヤルでもミズナラ要素を感じられるようになってたりで、それもおそらくこのミズナラ新樽原酒由来でしょう。サントリーのブランド形成と軸とする原酒戦略が、シェリーからミズナラへと変わった(というよりシェリーがフェードアウトしつつある)ように感じられます。


シェリー樽もミズナラ樽も、バーボン樽に比べてコストがかかる樽です。
その特性は、1st fillの爆発力は凄いが2nd fill以降は同じ濃さと味わいが見込めない一発屋のスパニッシュオークのシェリー樽に対し、一度作れば新樽からリフィル以降まで安定して香味を得られるミズナラ樽の方が、香味という観点では長期的には使いやすいのかもしれません。
管理や欠損などの難しさもありますが、2回目以降は長熟も狙えますし、国内で樽を製造できるというのも、物流に混乱があるこの状況では利点。何より、シェリー樽よりジャパニーズブランドとしての強みにも繋がります。

2017年でリリースが止まっていたリミテッドエディション。なぜこのタイミングで復活したのか。なぜ軸となる原酒を変えてきたのか。
考え過ぎかもしれませんが、その裏にはサントリーのリリース全体にかかる、戦略の一端があるように思えるのです。

シングルモルト 山崎 ノンエイジ 2020年リリース 43%

カテゴリ:
IMG_20200522_213659
SUNTORY 
YAMAZAKI 
SINGLE MALT WHISKY 
No Age 
Release 2020 
700ml 43% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後1週間程度
場所:自宅
評価:★★★★★★(6)

香り:やや粗さはあるが、オーキーで複雑なウッディネスを感じる香り。その樽香は、アメリカンオーク由来のバニラと華やかさに、ミズナラ香のアクセント。微かにワイン樽由来と思しき果実香やハーブなど、複数の樽が交じり合う山崎らしさがある。

味:口当たりはマイルドで、香り同様に複数の樽由来のフレーバーが粘性の中から主張する。バニラや砂糖漬けオレンジピール、微かに杏子や干し柿。鼻孔に抜けるオークの華やかさと香木を思わせる樽香。奥行きはそれほどでもなく、余韻にかけてスパイシーさ、若さ由来の刺激も若干あるが、フレーバーティーのような甘味を伴うタンニン、ほろ苦いウッディネスと共に長く続く。

山崎12年系統のフレーバーが感じられ、バランスが良くなった山崎NAS。さながら山崎12年レプリカといったところ。多少の粗さはあるが、特筆すべきは香味のなかに感じることが出来るミズナラ香。全体の軸になるアメリカンオークの華やかさが熟成感を増し、微かに混じるワイン樽のベリー香と余韻の苦味が、香味全体にボリュームを与えている。
加水すると香りはさらにオーキーな華やかさが主体に、味わいはややビターな印象であるが、サントリーのウイスキーらしく香味のバランスは保ったまま伸びる。

IMG_20200522_213735

美味しくなった、という話を聞いていた山崎のノンエイジの2020年生産ロット。サントリーやニッカは毎年毎年原酒の調整からか、微妙に味を変えてくる傾向があり、それが良い方向に作用しているという話です。

以前の山崎ノンエイジは、リリース初期の頃だとワイン系の原酒が強く、それで若さを誤魔化したような印象があり。。。数年前に購入して飲んだものは、そのワイン系の味わいが穏やかになって山崎12年に共通する香味が感じられる一方、パンチョンの若い原酒がメイン?というくらいに華やかさよりも乾いた木のドライでビターな主張が目立つ、ハイボール用かと思う構成が印象に残っていました。

※2016年~2017年流通の山崎ノンエイジ。当時感じた感想と、今回のボトルとの違いは平均した熟成感とミズナラのニュアンスにある。当時からオークフレーバーはあったが、若さが目立っており、最新ロットにかけて全体が整ったであろうことが、コメントを比較することで見えてくる。

そのため、良くなったと言っても、ちょっとオーキーな華やかさが強くなったとか、そんなもんでしょ?と。侮っていたのですが、これは飲んで驚きです。
勿論、これまでのNAS山崎と比較してベクトルが大きく変わった、というわけではありません。しかし山崎に求める香味がはっきりしたというか、軸となるべき原酒の熟成感が増したというか。12年に比べたら粗さはあるものの、要所を抑えているような印象を持つシングルモルトに仕上がっているのです。

シングルモルト山崎の魅力は、複数の蒸留器で作り分けられる原酒に、バーボン、シェリー、パンチョン、ミズナラ等、多様な樽の使い分け。恐らく単一蒸留所としては世界最高峰と言える原酒の作り分けと、それを活かしたブレンド技術によって作られる、響以上に重厚なウッディネスだと思っています。
こうしたウッディさは温暖な熟成環境である日本らしさに通じる一方、熟成を経ていかなければまとまらず、昨今多くのクラフトが苦労しているように、サントリーもまた若い原酒の使い方で苦労していた印象はあります。それがここに来てハイボールブームを受けて増産していた原酒が使えるようになってきたのでしょうか。粗削りながら、より12年に通じる原酒構成に変わってきたと感じます。

それこそ、価格、入手難易度等を総合的に考えると、現在手にはいるジャパニーズシングルモルトのなかで、家飲みで楽しむならこのボトルで良いのではないかと思えるほど。
こうなると、同じグレードとなる白州ノンエイジも良い変化が出ているのではないかと気になるところ。追ってモノを調達して、レビューしたいと思います。


※6月6日追記:最新ロットを購入し、レビューを公開しました。こちらも過去のロットに比べて良い変化を感じられました。

2019年を振り返る ~印象に残ったボトルや出来事など~

カテゴリ:

1年があっという間に過ぎ去ってしまった・・・なんてことを毎年呟いている気がしますが。(もう歳だなぁ・・・とも)
日々こうしてブログを更新していると、過ぎ去ってしまった時間の存在を実感出来る、日記的な感覚があったりします。

2019年に更新したレビュー数は270程度、総数は1500を越えました。うち投稿していない銘柄もあったりで、何だかんだ500銘柄は飲んでいると思います。
また、今年はブログ活動をしてきた中でも、最も繋がりの広がった年で、楽しいことも多かったですし、考えさせられる事柄も少なからずありました。
2019年最終日の更新では、これら1年で経験したことの中から、印象に残っている出来事やボトルをまとめて振り返っていきます。

a19394d7

■Liqulの執筆開始&グレンマッスルのリリース
最も印象的だった出来事は、勿論この2つ。
まずひとつ目が、酒育の会の代表である谷島さんからお声がけいただき、Liqulでオフィシャルボトルレビューの執筆を開始したこと。
同紙がWEB媒体へと移行する来年からが本番なので、今年は準備運動的な意味合いもありましたが、業界で活躍されている皆様と一緒に活動することができたのは、大きな刺激になりました。

また、執筆にあたりアイコンを新垣先生に描いて貰えたのも、ウイスキーの縁で実現した出来事のひとつです。
某海賊漫画風くりりん似顔絵。個人的にはすごく気に入っているものの、仲間内から「こんな悪い表情出来てない」と言われておりますがw
2020年最初の記事は既に入稿済みで、先日リニューアルが発表されたアランの新旧飲み比べが掲載される予定です。

そしてもうひとつの出来事は、オリジナルリリース「グレンマッスル18年ブレンデッドモルト」が実現したことですね。
宅飲みした際の酔った勢いで始まった計画でしたが、愛好家にとってのロマンをこうして形に出来たことは、ブログ活動というか人生の記念になったといっても過言ではありません。
実現に当たってご協力頂いた笹の川酒造、ならびに福島県南酒販の皆様、本当にお世話になりました。。。

0b18060d

グレンマッソー18年は、国内で3年以上貯蔵されていたものとはいえ、輸入原酒(バルク)を使ったブレンデッドモルトウイスキーです。
突き抜けて旨いリリースとは言えませんが、キーモルトを探るミステリアスな面白さに、嗜好品として楽しんでもらえるバックストーリー。加えて香味にも流行りの系統のフルーティーさがあり、一定レベルのクオリティには仕上がっていたと思います。

何の思い入れもなくとりあえずサンプルだけ手配して、複数のなかから比較的まともなものを選んで・・・というような選定方法では、我々愛好家側の色は出せないと思っての”ブレンド”というジャンルでしたが。SNS等で「今年印象に残ったウイスキーのひとつ」と、何人かに言って貰えていたのが嬉しかったですね。
そして第一歩が踏み出せたことで、それに続く新しい動きもあり、来年はそのいくつかを発表出来ると思います。我々の作った味がどんな感想をいただけるのか、今から楽しみです。

※参照記事

IMG_20191230_092617

■ジャパニーズウイスキーの定義とワールドブレンデッド
さて、輸入原酒と言えば、2019年は輸入原酒を使いつつ「ジャパニーズ的な名称を用いたリリース(疑似ジャパニーズ)」が、前年以上に見られたのも印象的でした。
一部銘柄に端を発し、ウイスキーの成分表記についても少なからず話題となりました。こうした話は、すべて情報を開示したり、事細かに整理したからといってプラスに働くものとは限りませんが、法律上の整理と一般的なユーザーが求める情報量が、解離してきているのは間違いありません。
今の日本は、昭和のウイスキー黎明期ではないんですよね。

一方で、大手の動きとしてはサントリーが「ワールドブレンデッドウイスキー AO 碧」を新たにリリースしたこともまた、2019年の印象的な出来事のひとつだったと感じています。
ワールドブレンデッド表記は、自分の記憶ではイチローズモルト(ベンチャーウイスキー)が2017年頃から自社リリースに用い始めた表記。ジャパニーズウイスキーブームのなかで、それとは逆行するブランドを業界最大手であるサントリーが立ち上げたのは驚きでした。

c1d924c4-s

ウイスキー文化研究所ではジャパニーズウイスキーの定義作りが進み、既に素案が公開されている状況にあります。
来年のTWSCはその定義に基づいてカテゴリーの整理が行われていますし、4月にはジャパニーズウイスキーフェスティバルが開催される予定であると聞きます。

シングルモルトウイスキーでは、産地が重要な要素となるため基準に基づく産地呼称等の整理が必要ですが、ブレンデッドはジャパニーズだけでなく、広い視点で考えなければならないとも思います。
他産業ではMade in Japanブランドが世界的に強みと言っても、日本製のパーツや材料が評価されている部分もあれば、国内外問わず作られたそれらを、日本の技術や品質追求の考えの下で組むことで形成されている部分もあります。
サントリーの碧を始め、ワールドブレンデッド区分のウイスキーは、日本の環境だけでなくブレンド技術という日本の技をブランドに出来る可能性を秘めたジャンルと言えます。

つまり輸入原酒(バルクウイスキー)もまた、使い方次第で立派なブランドとなるのですが、問題なのは酒ではなく”売り方”。どこのメーカーとは言いませんが、海外市場をターゲットに、紛らわしいを通り越したえげつない商品をリリースしている事例もあります。
現在作られている基準をきっかけに、そうした整理にもスポットライトが当たり、業界を巻き込んだ議論に繋がっていくことを期待したいです。

※参照記事

■2019年印象に残ったウイスキー5選
小難しい話はこれくらいにして、行く年来る年的投稿ではお決まりとも言える、今年印象に残ったウイスキーです。
まず前置きですが、今年は冒頭触れたとおり、500銘柄くらいはテイスティングをさせていただきました。
中には、サンプル、持ち寄り会等でご厚意により頂いたものもあります。皆様、本当にありがとうございました。

オールドの素晴らしいものは相変わらず素晴らしく、そうでないものはそれなりで。一方ニューリリースでは原酒の個性が弱くなり、ボトラーズは特にどれをとってもホグスヘッド味。。。のような傾向があるなかで、それを何かしらとタイアップして売るような、ラベル売り的傾向も目立ちました。
市場に溢れる中身の似たり寄ったりなリリースに、食傷気味になる愛好家も少なくなかったのではないかと推察します。

その中で、今年印象的だったボトルを年始から思い返すと、オフィシャルリリースや、作り手や選び手の想いが込められたものほど、そのバックストーリーの厚みから印象に残りやすかったように思います。
個人的な好みというか、その時その時の美味しさだけで選ぶなら、カテゴリーから上位を見てもらえれば良いので、面白味がありません。味以外の要素として、そのリリースに込められた情報、背景、個人的な思い入れ等も加味し、”印象に残ったウイスキー”を選んでいきます。
なお先の項目で触れている、グレンマッスルやサントリー碧も該当するボトルなのですが、二度紹介しても仕方ないので、ここでは除外します。(ニューポット、ニューボーンについても、来年まとめるため対象外とします。)

612c98f2
チャーしたスパニッシュオークの新樽で熟成された山崎。味は若い原酒を濃い樽感で整えたような粗さはあるが、その樽感がシェリー樽、あるいはシーズニングという概念を大きく変えた。味以外の"情報"で、これ以上のインパクトはない。是非飲んで欲しい1本。

97127bfa
最高の白州のひとつ。白州蒸留所シングルモルトで初の30年熟成という点も印象的だが、15本と極少数生産故、樽から全量払い出されなかったことがもたらした、アメリカンオーク由来の淀みのないフルーティーさ、良いとこ取りのような熟成感が素晴らしい。

f6132419
アメリカで多くのシェアを獲得していた、全盛期とも言える時代のオールドクロウ。
100年を越える瓶熟を経てなお濁らずくすまず、艶のある甘味と熟成ワインのように整ったウッディネスが素晴らしい。また味もさることながら、ボトルそのものが有するバックストーリーも申し分なし。記憶に刻まれた、文化財級の1本。

ce0d53d3
新しい蒸留所が示した新時代への可能性。樽由来のフルーティーさ、麦芽由来の甘味とフロアモルティングに由来する厚みのあるスモーキーフレーバーが合わさり、短熟らしからぬ仕上がりが評判となった。来年の10周年、そしてこれから先のリリースにも期待したい。

IMG_20191229_142309
マイ余市を選ぶつもりが、年末の持ち寄り会で滑り込んだ特別なウイスキー。2014年に天寿を全うされた、故竹鶴威氏に敬意を表した記念ボトル。ニッカが蒸留所を再稼働させた1990年の、最初の原酒をリメードホグスヘッド樽で熟成させたシングルカスクで、ニッカらしいウッディさにオークフレーバーと、ベンネヴィスらしいフルーティーさが合わさった、ファン垂涎の1本。

※その他候補に上がったボトル
・グレンファークラス 29年 1989-2019 ブラックジョージ
・リトルミル40年 1977-2018 セレスティアルエディション
・アラン 18年 オフィシャル
・アードベッグ 19年 トリーバン
・余市10年 2009-2019 マイウイスキー作り#411127

ちなみに、2019年はウイスキーだけでなく、ワインも色々飲んだ1年でした。
いくつか個別の記事を書いてみて、まだワインについては1本まとめて記事に出来るだけの経験が足りないと、オマケ程度でふれるにとどめましたが、ウイスキー好きに勧められるボトルもある程度固まったように思います。
ウイスキー愛好家のなかでも、ワインを嗜みはじめたメンバーがちらほら出てきていますし、来年はウイスキー×ワインの交流も進めていきたいですね。

IMG_20191226_194810

■以下、雑談(年末のご挨拶)
さて、本更新をもって2019年の投稿は最後となります。
まとめ記事ということで長くなりましたが、最後に来年の話を少し。。。

来年3月で本ブログは5周年を迎えます。
ブログ活動を再開した当時はどれだけ続くかなんて考えてませんでしたが、これも本当にあっという間でした。
ブログを通じて色々と繋がりも増え、執筆活動以外の動きもあり。先に記載した通り、来年は新たに発表出来ることもいくつかあると思います。

他方で、ブログ外のところでは息子が小学校に上がるなどの家庭環境の変化や、仕事のほうも任されている事業で管理職的な立ち回りが求められるようになってきて、公私とも変化の大きな年になりそうです。
自分にとってブログ活動は趣味であるため、継続はしていくつもりですが、今年から暫定的に行っている週休二日ルールを定着させるなど、時間の使い方を考えなければならなくなると思います。こうして、環境が変わっていくなかで何かを継続することは、本当に難しいんですよね。

楽しみである気持ちが半分と、不安のような複雑な気持ちが半分。。。というのが今の心境。そんな中でも、細々とでも活動は継続していくつもりですので、皆様来年もどうぞよろしくお願いします。
それでは、良いお年をお迎えください。

IMG_20191015_182940

エッセンスオブサントリー 第3弾 リッチタイプ ジャパニーズブレンデッド 48%

カテゴリ:
essence_of_suntory_rich_type
ESSENCE of SUNTORY 
BLENDED JAPANESE WHISKY 
RICH TYPE 
Bottled in 2019 
500ml 48% 

グラス:アランノベルティグラス
時期:開封後1週間
場所:BAR ヒーロー
評価:★★★★★★(6)

香り:山崎らしい甘く華やかで、香木っぽさの混じるウッディなアロマ。干し柿やアプリコット、オーキーでもあり熟成を感じる。その奥には白く乾いた木材、微かにハーバルなニュアンスも。

味:口当たりは厚みがあって甘やかでリッチ。柿のペーストや林檎のカラメル煮、加工した果実の甘みと香木を思わせるウッディネスが広がり、そこからさらにもう一段、乾いた木材を思わせる強いウッディさが口内を引き締める。
余韻はドライでスパイシー、木製家具、香木のオリエンタルな含み香を漂わせて長く続く。

熟成感と多層的なウッディネスを楽しめるブレンデッド。中でもミズナラ樽の香木を思わせる要素が主体。もはや響と言っても違和感のないサントリー味だが、余韻や香りの奥に強めのウッディさ、針葉樹系のニュアンスが存在するのが違いと言える。加水しても崩れずよく延びる。っていうかモロ響系統。ジャパニーズハーモニーがこうだったら。。。

IMG_20191109_092417

エッセンスオブサントリー第3弾。鏡板を杉材に変えた杉樽熟成のモルト原酒をキーモルトとし、白州、山崎、それぞれの原酒をベースとしているジャパニーズブレンデッド。
昨日レビューした白州ベースのクリーンタイプに比べ、この山崎ベースのリッチタイプは熟成感とウッディネスが強く、シェリー樽やミズナラ樽等の杉樽以外のフレーバーがしっかり備わっていることから、杉材の個性はクリーンタイプほどは目立たちません。

テーマとなる杉樽原酒は、ホワイトオーク樽で12年以上熟成させた山崎モルトを杉樽に移して6年以上後熟したフィニッシュタイプ。後はリフィルシェリー樽、ミズナラ樽で18年以上熟成させた山崎モルトや、同じく18年以上熟成の知多グレーンと、公開されている原酒が全て18年以上の熟成を経ているという、原酒不足な昨今では珍しい贅沢な仕様のブレンドです。
香味ともしっかり熟成感があって満足度は高く。また水楢と杉、2つの日本由来の木材が生み出すフレーバーの共演は、これぞジャパニーズハーモニーと言えるものだと感じます。

自分は響のような多層的なサントリーのブレンド構成を、樽感の十二単のようだと感じています。今回のブレンドで杉樽の存在感は、その着物のなかの1~2枚と言えるレベル。一番目立つ表の部分はミズナラで、間をシェリー、ホワイトオーク、そしてグレーンが繋いでいる。強調されたウッディネスに些か違和感はありますが、癖の強い原酒をキーモルトにしつつ、ここまで整ってまとめられるのは、サントリーのブレンド技術の高さを感じられる"エッセンス"だと思います。

essence_of_suntory_japanese_blended_whisky

ちなみに、昨日公開したクリーンタイプのレビューで、2つのラベルデザインが、どちらのブレンドも味わいのイメージとリンクしているように感じると書きました。

考えすぎか、あるいは偶然の一致かもしれませんが、ベースの部分の色使いが
クリーンタイプ:白色:白州や知多のスッキリとクリアなブレンド(白角や角瓶のベクトル)。
リッチタイプ:黄金色:熟成した山崎と知多の味わい深い多層的なブレンド(響のベクトル)。
ここにそれぞれ墨字の"和のデザイン"が、今回のテーマである杉樽由来のフレーバーを表しているという理解であり。このロジックで行くと、リッチタイプは杉樽の面積が少ないわけですが、実際先に書いたようにそこまでコテコテな構成ではありません。

その点で、リッチタイプは言わばブレンダーが納得のいく材料を使って作る、サントリーのブレンド技術を見るようなリリースでもあるのかなと。上で角と響と書きましたが、ブレンドの違い以上に原酒の格が違うんですよね。
まずはクリーンタイプで杉樽由来のフレーバーを感じ、その上でリッチタイプで理想系を味わう。そんな視点で楽しんで見てはいかがでしょうか。

サントリー 山崎 11年 2003‐2014 ボタコルタ 55%

カテゴリ:
IMG_20190504_105147
SUNTORY SINGLE CASK WHISKY 
YAMAZAKI 
Aged 11 years 
Distilled 2003 
Bottled 2014 
Cask type Spanish oak BOTA CORTA 
For Whisky shop W. 
190ml 55%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅
時期:開封後1年程度
評価:★★★★★★(6-7)

香り:プルーンなどのダークフルーツを煮詰めたような濃厚な甘酸っぱいアロマ、合わせてコーヒー、カカオ多めのチョコレート、微かな焦げ感やいくつかのスパイス。香木を思わせる高貴なウッディネスを伴う。

味:角の取れた濃厚な口当たり、香り同様に煮詰めたダークフルーツ、黒蜜のとろりとした甘みと酸味、一呼吸置いて後に続くタンニン、ローストアーモンド、カカオのようなほろ苦さ。余韻は序盤の味わいに比べると広がりは軽めだが、スパニッシュオークシェリー樽由来の甘みが口内に揺蕩い、ドライでビターなフィニッシュが長く続く。

かなり濃厚に樽由来のエキスが溶け込んだウイスキー。香りは山崎25年に通じるようなスパニッシュオークの素晴らしいアロマだが、味わいは序盤に好ましさがある一方で、後半にかけて苦みが主張し、全体的にはやや単調気味。香り★7、味★6。ハーフショット程度で満足感あり、以降は微妙に飽きがきてしまうのは良いのか悪いのか・・・。

IMG_20190504_105221

GWの休みを利用し、酒置場を整理していたところ、存在を忘れていたウイスキーを何本か発見。そういえばこの山崎、最後は葉巻と合わせようかと収納した後で、すっかり忘れていました。

モノは2014年に、今は無き大阪のウイスキーショップW.向けにリリースされた山崎の限定品。同ショップ向けには毎年何らかの限定品があり、2013年にはフルボトルで類似スペックの山崎がリリースされていましたが、リリース本数が少なく希望者全員に渡りづらいという声を受け、翌年は190mlサイズでリリースされた経緯があったと記憶しています。
まだ本格的なブームが来る前のウイスキー市場、上記経緯から本数が多く余裕をもって買えたのも精神的に良かったですね。(今思えばケースで買っておけば良かった・・・w)

さて、ボタ・コルタ樽は所謂パンチョン樽のように、バットよりも幅が短く、鏡板が広い特徴を持った樽であり、容量は440リットル程度というのがメーカー情報。このウイスキーの濃厚さは、樽材以外に樽形状も作用しているのでしょう。
ではどんな樽かとネットで調べると、出てくるのは山崎や白州、サントリー関連製品の情報のみで、実物がまったくヒットしない。

勿論ボデガによって規模の違いから、使っているところもあるようでしたが、あまりメジャーではないのでしょうか。
そもそも本リリースに限らずサントリーが使用するスパニッシュオークのシェリー樽は、通常のシェリーの熟成に用いられたものではなく、あくまでウイスキー用にサントリーが作らせているシーズニングシェリー樽なので、規格や構成が微妙に違ってもおかしくありません。
まあそれでも美味しければいいということで・・・先に進ませてもらいます。

IMG_20190301_222142

さて、今回のテイスティングが1年前の開封時と大きく違うのは、先日リリースされたエッセンスオブサントリー第2弾による、サントリーのシェリー樽への理解の違いです。
今までだと、こんな濃厚な樽、いったい何を入れていたのか?と思っていたであろうところ。濃厚なダークフルーツの香味はスパニッシュオークそのものの成分由来ということが理解出来、熟成を紐解く大きなヒントとなりました。

また口当たりのアタックの強さや、えぐみや焦げた樹液のような、新樽にあったフレーバーが少ないため、ここがシーズニングを経たことで軽減された要素であるとともに、好ましい要素を付与し、香味が整ったところなのだと思います。
今回のボトルは香りが特に素晴らしい。ダークフルーツにコーヒー、カカオ、そしてサントリーのシェリー樽らしい香木を思わせるニュアンスがエッセンスに。

味の方は短熟故に多少複雑さには欠けますが・・・少量加水もあって飲み口は整っている。なんていうか、圧殺近年系シェリーのお手本のようなリリースですね。

このページのトップヘ

見出し画像
×