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厚岸 ブレンデッドウイスキー 小雪 48% 二十四節気シリーズ

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THE AKKESHI 
BLENDED WHISKY 
SYOUSETSU 
20th. Season in the 24 Sekki 
700ml 48% 

評価:★★★★★★(5-6)

香り:トップノートはプレーンな甘さの後で、焼き芋のような香ばしさ、微かな焦げ感と土のアロマ。じわじわとスモーキーで、奥にはオレンジやカスタード、オークフレーバーが潜んでいる。

味:口当たりはスムーズで瑞々しい。グレーンや樽由来の甘みの後から、柑橘、シェリー樽のヒント、麦芽風味とピート香がバランス良く広がる。余韻にかけて軽やかなスパイシーさとミネラル、ほろ苦く穏やかにスモーキーなフィニッシュ。

ピート、麦芽、グレーン、樽、それぞれが過度に主張せず、バランスの良い印象を受けるブレンデッドウイスキー。熟成感が増してきた結果がはっきりと出ており、ストレート、ロック、ハイボール、様々な飲み方でも楽しめる。特にハイボールがオススメ!
ストレートでは少しボディが軽い印象を持ったが、これは使用している厚岸熟成グレーンの質によるところか。この時期の降っても積もらない小ぶりな雪の如く…。

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二十四節気シリーズ、折り返しの第13弾。
飲んだ最初の一言は「まとまってきたなぁ」と。第一印象でそう感じるほど、今回のリリースもまたそれぞれの原酒の個性、樽感がバランス良くまとまっており、それぞれの原酒の成長が感じられる仕上がりです。
樽構成はバーボン樽メインに、モルトはミズナラ樽や繋ぎのシェリー樽がそれぞれ1〜2割か。微かに赤みがかった色合いにも見えるので、ワイン樽も少量使われているかもしれません。

原酒構成はモルト6:グレーン4、あるいは5:5といった、比較的グレーン原酒が全体を慣らしている印象。ピートフレーバーもその分穏やかで、ノンピートモルトも一部使われてる感じですね。
以前リリースされたブレンデッド大寒もそうでしたが、最近の冬のブレンデッドリリースはあえてグレーンの比率を上げているのか、加水によって全体がさらに慣らされてまとまりが良く、一方で少し軽いというかしんとしているというか、ボリューミーな傾向にある春から夏にかけてのブレンドの対極にあるように感じます。

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(2023年5月にリリースされた、ブレンデッドウイスキーとしては前作となる厚岸“小満”。原酒が熟成を増してバランスの良さを感じるのは今作と同じだが、ブレンド比率と構成原酒の違いで小満の方が躍動感を感じる。)

こうしたタイプのウイスキーは、味のインパクトが少ない分、面白みがないという印象を受けるかもしれません。
ただ、真逆に強すぎる個性、強すぎる主張のものは、毎日付き合うのが疲れるモノです。ウイスキーの完成系は一つではなく、毎日飲んでも飽きがないくらいの、ちょっと地味なくらいの味わいも完成系の一つだと言えます。
ブレンデッドウイスキーの場合、特に大手製品のスタンダードグレードはまさにそんな感じですね。

じゃあ厚岸の限定リリースにそれを求めるか?というと、それもまた好み次第ですが。。。こういうブレンドを自前の原酒だけで作れるようになってきた、というのが蒸留所としても成長の証。
1ショットで途中加水も試しながら、あるいは別途ハイボールも飲んでも飲み疲れない。むしろグレーンがよく伸びて、ストレートとはまた違う印象もあるくらいです。
厚岸蒸溜所のウイスキーとして、入門の1本にしてみても良いと思います。

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(厚岸蒸溜所の裏手。早い秋の終わり、忍び寄る冬の気配…)

厚岸 シングルモルト 白露 55% 二十四節気シリーズ

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THE AKKESHI 
Single Malt Japanese Whisky 
"Hakuro" 15th season in the 24 "Sekki" 
700ml 55% 

評価:★★★★★(5)

香り:ビターでスモーキーなトップノート。焦げた樽感、根菜、スパイシーでウッディなアロマ。奥には麦芽やオレンジママレードの甘さも感じられ、複雑で強く広がる。

味:リッチでピーティーな口当たり。最初はねっとりと厚岸らしいコク、オレンジや黒砂糖を思わせる甘みが感じられるが、即座に柑橘の皮、ピート、濃く入れたほうじ茶、ビターなフレーバーがピートスモークと共に支配的に広がる。余韻はビターでスモーキー、土や根菜を思わせる要素とタンニンが混ざりあう。

24節気シリーズの折り返し、第12弾。厚岸のリリースは総じて麦芽とピート、そしてミズナラ樽由来のフレーバーが軸になることが多い。今作はここにシェリー樽やワイン樽由来の個性が合わさった、系統の異なるウッディネスの二重奏とピート由来のビターなフレーバーが、複雑で濃厚に広がる。また、口当たりねっとりとした質感はラム樽由来だろうか。
ベースの酒質は熟成を経て間違いなく成長しているが、個人的には樽感の強さが本作は少々アンバランスに感じられた。ハイボールもややタンニン、渋みが濃く、フレーバーの複雑さを評価するか全体のバランスを評価するかで好みが分かれる印象。好きな人は間違いなく好き。

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3ヶ月に一度のペースでリリースされる、厚岸蒸溜所の二十四節気シリーズ。気がつけばファーストリリースから3年が経過。いやいや、24本って長いなーと思った2020年のその時から、気がつけば折り返しの12弾です。

原酒は3年ベースだったものが平均4年となり、熟成感や香味のまとまりが明らかに良くなってきた最近の厚岸リリース。今作も酒質の成長が感じられる味わいとなっています。
一方で今作、白露は樽由来の風味が強くてアンバランス、好みの分かれる部分があるなと感じさせる要素もありました。
樽構成比率は、北海道産を含むミズナラ樽が15%、シェリー樽15%、ワイン樽30%、バーボン樽30%、ラム樽10%あたりと予想。ピーティーな原酒の割合も多く、ウッディでビターな仕上がりはレビューの通りです。

発売した8月下旬に即開封、その後時間を置きながらじっくりテイスティングしていくものの、どうしても自分はこの苦味が気になってしまう。
特に今年は夏が長かった、というかこの記事を書いてる11月上旬であっても、半袖半ズボンで居られる気温が続いてますが、ようやく夜は涼しくなってきて、ふとアウトドアで飲んでみるとこれが悪くない。焚き火と紅葉、清涼な空気と厚岸 白露、是非そんな組み合わせを試して欲しいです。

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さて、二十四節気シリーズで積極的に3年、4年と言う若い原酒を使っている厚岸蒸溜所のリリースですが、勿論それを使わなければリリースなんて出来ないという原酒事情はさておき、もう一つはリフィルカスクを作るという目的があります。
元々寒暖差が大きく夏場は温暖な日本の気候、昨今は地球温暖化で北海道であっても30度越えは珍しくありません。

その環境において長期間の熟成を目指す場合、古樽の確保は厚岸に限らず各クラフト蒸留所の共通課題と言えます。
将来に向けて原酒を確保しておく必要があるのでは?こんなにリリースして大丈夫か?
たまにそんな疑問も見聞きしますが、いやいや将来に向けては原酒だけでなく、その時間で適正な熟成感をもたらす樽と熟成環境の確保が必要なんです。
30年経って蓋を開けたら全部激渋タンニン丸じゃ、とてもリリース出来ません。

また厚岸蒸溜所は目指す“厚岸オールスター”たる機能、原料が揃ってからが本当のスタート。現時点では、発表されていないモルティング設備と厚岸ピートのパーツが残っていますので、スタート地点まであと一歩といったところでしょうか。
ノンピート原酒は今作の白露にも使われているように、北海道産麦芽のりょうふう、ミズナラ樽、酵母で仕込まれたものがあるため、着実に準備は整っていますが、厚岸ピートについてはまだ準備段階なのです。

かつて再稼働したアードベッグが、10年計画でオフィシャルスタンダードを復活させましたが、それと同じように厚岸蒸溜所もそれくらいの時間が必要なのだと思います。
そう考えると、二十四節気シリーズに残されたあと12作、残り3年間を経た先が蒸留所としてはちょうど10年です。
今回のリリースで見られた酒質の成長と樽感のアンバランスさ、これが将来どのように実を結ぶか。次回作も今から楽しみです。

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厚岸蒸溜所 せいめい(清明) シングルモルトジャパニーズウイスキー 55%

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THE AKKESHI 
Single Malt Japanese Whisky PEATED 
Bottled 2022 
"Seimei" Season
"Radiance of Pure Life"
700ml 55%

評価:★★★★★★(6)


香り:フレッシュで強いトップノート、序盤は鼻腔への刺激が酸と共にあるが、徐々に古酒感のあるどっしりとした甘さ、黒土、カカオ、微かにオレンジの要素があり、温度の上昇で前に出てくる。

味:厚岸蒸溜所の個性たる柔らかいコク、麦芽の甘み、柑橘を思わせる酸味と共に、徐々に存在感のあるピートフレーバー。微かな塩気。余韻は徐々にスパイシーで、ほろ苦いピートスモークがソルティーなニュアンスを伴って長く続く。

樽構成はほぼバーボン、シェリーとワインがアクセント、隠し味にミズナラと予想。厚岸らしいキャラクターとして麦芽由来の甘みとコク、フレーバーの幅の多彩さが若さを包み込む、バランスの良い仕上がり。
ハイボールにすると未熟感少なくクリアでコクのある味わいから、ピートフレーバーが鼻腔に抜けていく。過去リリースでは芒種に似ており、将来性も強く感じるGOODリリース!

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先月初頭にリリースされた、厚岸24節気シリーズの第7弾。せいめい。
・・・7・・・7!?
特に驚くことでもないのかもしれませんが、もう1/4がリリースされたんですね。

ちょっとぼやきタイム入りますが、最近1週間があっという間なんですよ。
朝起きて、洗濯機回して、朝ごはん作って皿洗いして、洗濯物干してゴミ捨てして、会社行って会議出て、残業して23時くらいに帰ってたまにスペースやって1日が終わる。
そんなルーティンを繰り返してたら、気がついたら週末が来ていて、それを繰り返したら1ヶ月が終わっている。

このボトルも個人的には開封したばっかりというつもりなんですが、Twitterに速報レビュー掲載してから1ヶ月以上経ってるんですよ。これが加齢か・・・
って掲載が遅れた言い訳はこれくらいにして。

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(厚岸24節気シリーズ過去6作。厚岸から見る水平線、湿原の地平線を連想するブレンド3作に比べてシングルモルト4作は個性的なデザインにもなっている。)

今作のシングルモルト「晴明(せいめい)」は、蒸溜所側に確認したところ、
バーボン樽原酒 73%
シェリー樽原酒 13%
ワイン樽原酒 10%
ミズナラ樽原酒 2%
以上の原酒構成であるとのこと。
芒種に近いなと感じた印象は間違いではなく、むしろシェリーやワイン樽の比率が高いと思われる分、甘酸っぱさや柑橘系のフレーバーなど、いい意味での複雑さが増している構成。

そしてこれらがバランスよく感じられるのは、原酒の平均熟成年数が増えたことだけでなく、輸入麦芽だけでなく、北海道麦芽を使ったことで原酒のフレーバーの多彩さが全体を包み込んで、若い感じはありつつも、不思議と飲み進めることができてしまう。個性を楽しめるウイスキーとして仕上がっている点が一つ。

もう一つは、造り手のブレンドノウハウの向上もあると考えられます。
厚岸蒸留所は24節気シリーズを作り上げるにあたり、1リリースして1ブレンドレシピをつくってまたリリースするという、その場その場で手元に使える原酒を使う手順ではなく。
1年間のリリース計画を立て、その時点の原酒から成長を予想し、求める味に対して先にレシピを作り、原酒の成長を確認しつつ、必要に応じて若干レシピを変えていくようなスタイルをとっています。

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現時点で既に厚岸蒸溜所側には次回作だけでなく、シリーズ折り返し地点までの想定レシピが完成しているそうですが、この作り方は蒸留だけでなく熟成やブレンドの経験がないと出来ません。トライ&エラーを重ねながら、原酒だけでなく確実に蒸留所も成長してきている。。。ということを感じる仕上がりでもあるわけです。

北海道の熟成環境は、先日レビューした鹿児島、嘉之助蒸留所に比べると気温差が大きく、夏場を除いてはゆったりと熟成が進みます。
また、厚岸蒸留所では昨年夏から北海道内地ふらので試験熟成を行うなど、新しいチャレンジも始めており、話題は豊富ですが、熟成した原酒が真価を発揮するのはこれからであると。
そこに、先に触れたように作り手としての成長も合わさって、ますます完成度の高いリリースが増えてくるだろうと。
シリーズ次回作、今夏リリースのブレンデッドウイスキー大暑も楽しみにしております。

厚岸 ブレンデッドウイスキー 大寒 48% 二十四節気シリーズ

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AKKESHI BLENDED WHISKY 
DAIKAN 
A Fusion of the World Best Whiskies 
24th. Season in the 24 ”Sekki” 
Bottled 2022 
700ml 48% 

評価:★★★★★(5−6)

香り:軽やかでスパイシー、ツンとした刺激から和柑橘を思わせる酸を感じるトップノート、ほのかに焦げたようなスモーキーさ。徐々にバタークッキーのような甘み、軽い香ばしさ、微かに赤みがかったドライフルーツも連想させる。

味:柔らかく瑞々しい口あたり。序盤は軽く平坦な印象を受けるが、じわじわとモルティーな甘み、柑橘や洋梨、ビターで土っぽいピートフレーバーが穏やかに広がっていく。
余韻はスパイシー、ピートフレーバーが染み込むように長く続く。

グレーン原酒を思わせるプレーンでスパイシーなニュアンスがトップにあり、そこから厚岸モルト由来の甘みや各種フレーバーが広がっていく。モルト比率は5割ほど、樽構成としてはバーボン樽メインで、複雑さはワイン樽やミズナラ樽といったところか。ピート香も控えめで体感10PPM未満、ノンピート原酒がメインであるようにも感じられる。
飲み方としてはストレート以外にはハイボールがおすすめ。軽やかですっきりとした中に、麦芽や樽由来の甘み、柔らかいスモーキーフレーバーを感じられる。

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厚岸蒸留所からリリースされる、二十四節気シリーズの第6弾。2022年2月下旬に発売されたブレンデッドウイスキーとなります。
厚岸蒸留所は一般的なクラフト蒸留所同様に、ブレンデッドウイスキーに必要なグレーン原酒を自社蒸留できていませんが、グレーンをスピリッツで輸入し、自社で3年以上熟成したものを用いているという拘りがあります。

さて、今回のブレンドは過去のリリースと大きく異なり、香味とも序盤が穏やかでピートフレーバーも強く主張しない。静謐とした雰囲気を感じさせる点が特徴だと言えます。
さながら、晴れた冬の日の空気というべきでしょうか。ベースにあるのは間違いなく厚岸蒸溜所のモルトウイスキーですが、地形の起伏、色、匂い、それらが雪によって白く塗りつぶされて平坦になった雪景色のよう。ツンと鼻を刺激する冬の寒さを感じさせつつ、グラスの中で静まり返っているのです。
おそらく過去作よりもグレーンの比率が多く(公式発表では過半数がモルトとのことですが、5:5ではないかと)、また過去作とは系統の違うグレーン原酒を用いているのではないかと推測されます。

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(厚岸蒸溜所からリリースされた、二十四節気シリーズのブレンデッド3種のラベル。ふと、このデザインは蒸留所から見える厚岸の景色、特に水平線の景色がモチーフではないかと思い当たった。)

このように第一印象を描くと、グレーン原酒でモルトの個性を塗り潰したような、薄っぺらく平坦なブレンドだと感じるかもしれませんが、如何に雪景色と言っても多少の変化があり、空気には地域の特色とも言える匂いが混じるように。ベースとなるモルトの香味に加えて、土の匂い、潮風、柑橘や白色果実、微かに赤みがかったドライフルーツ、徐々に複雑な印象を感じさせるのです。
樽の傾向としては、モルト、グレーンの熟成で最も比率が高いのはバーボン樽だと思いますが、複雑な印象に通じているのはワイン樽やミズナラ樽由来の香味ではないかと思われます。

なお、過去作との違いとしては、“雨水”が最も強くシェリー系の原酒のキャラクターを感じさせ、“処暑”は丸みを帯びつつもはっきりとしたピートフレーバーの主張があります。
それらを今回の“大寒”のレビュー同様に季節に置き換えるなら、雨水は春の空気が濃くなる時期であり、春の空気をシェリー樽原酒由来の甘く色濃いキャラクターで。
夏の処暑は暑さが峠を越した時期とされていますが、その名残として照りつける日差し、強い夕日がピートフレーバーで表現されているのではと。。。

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私のこじつけか、考えすぎかもしれませんが、これまでは感じなかったブレンドの傾向と季節の関係が、飲み比べることによって見えてきたようにも感じました。
現在のペースでリリースが進むと、次のリリースは約3ヶ月後にシングルモルト、その後ブレンデッドですから、時期的には9〜10月ごろでしょうか。既に寒露はリリースされているため、白露、秋分、霜降あたりになると思いますが、厚岸の季節がどのようにブレンドで表現されているかも、注目していきたいと思います。

厚岸蒸溜所 シングルモルト 立冬 55% 二十四節気シリーズ

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AKKESHI 
RITTOU 
SINGLE MALT JAPANESE WHISKY 
19th Season in the 24 "Sekki" 
700ml 55%  

評価:★★★★★(5ー6)

香り:トップノートはフレッシュで焦げたようなピート香。奥にはオレンジや若い木苺のような酸味、スパイシーなアロマがあり、時間経過でピートと馴染んでいく。開封後変化としては、ワイン樽由来の香味が開き、より果実香を感じやすくなる。

味:厚みがある厚岸らしい麦芽風味に続いて、若さを感じる酸、やや粒の荒さを感じさせるピートのほろ苦さ。微かに樽由来の赤系果実感があり、奥行きにつながっている。余韻はウッディでピリピリとスパイシーな刺激、ピーティーなフレーバーが強く残る。

構成原酒として公開されているミズナラ樽原酒やシェリー樽原酒という、色濃い原酒のイメージとは異なり、薄紅色がかった淡い色合い。あくまで香味は酒質メインだが、その奥行きに寄与するシェリー樽やワイン樽のアクセント、ミズナラ樽由来の要素は余韻でスパイシーなフレーバーとして感じられる。開封直後はこれらがはつらつと、それぞれ主張してくるが、開封後時間経過で馴染み、モルティーな甘みと複層的な樽由来の要素がまた違った表情を見せてくれる。

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厚岸蒸溜所シングルモルト 24節気シリーズ第5弾。りっとうです。
先日、2月下旬に大寒が発売され、さあレビューだと思ってブログ管理ページを見返したところ、立冬が下書き状態になっていて更新されていないことに気が付きました。。。
そういえば、Twitterやスペースでは取り上げましたが、ブログは最後の仕上げをしていなかったんですよね。大寒のレビュー前に、飲みなおして開封後変化も踏まえてレビューしていくことにします。

立冬の発売前情報では、北海道ミズナラ樽原酒をキーモルトとしたとあり、またシェリー樽原酒も多く使ったとのことで、どんなリッチな味わいになってくるか、非常に楽しみにしていました。
特に北海道ミズナラ樽原酒は個人的にかなり期待している原酒でもあるので、それがどんな仕上がりになったのか。
グラスに注ぐと、その色合いは薄紅色がかったライトゴールド。序盤は樽感がそれほど強く出ておらず、厚岸蒸溜所らしいコクと甘みのある麦芽風味、ピートも結構しっかり感じます。

これまでのリリースでは2016、2017年蒸留が主流だったところ、蒸留所としての成長が見られる2018年蒸留の原酒の比率が増えてきて、個性を感じやすくなっているのでは無いでしょうか。一方で、余韻にかけて徐々にウッディで、ワイン樽を思わせる個性も主張してきます。
このワイン樽は、ブルゴーニュ地方の赤ワイン樽とのこと。開封後はこのワイン樽由来の個性が少し浮ついて、ちぐはぐな印象もありましたが、時間経過で馴染んでバランスが取れてきているようでもあります。

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一方で、キーモルトとされるミズナラ樽原酒は、それが過半数を占めているというわけではないようで、ミズナラらしい独特の華やかなフレーバーというよりは、あくまで”全体の繋ぎ”と言う印象。むしろシェリー樽原酒やワイン樽原酒が、上述の麦芽風味に酸味と方向性の違う甘み、そしてウッディな苦味を付与して香味の複雑さを形成しています。

こうした原酒構成で言えば、今回のリリースは厚岸シングルモルトとして初めてリリースされた、サロルンカムイを彷彿とさせる要素もあります。同リリースは樽感が少々強めで、特にワイン樽原酒を強めに加えていたこともあり、麦芽風味主体というよりは樽感寄りの構成でしたが、それをベースからボリュームアップさせた感じだと言えるかもしれませんね。
全体的に原酒が若いため、馴染むの時間がかかるのは変わっていませんが、時間をかければ馴染むというのは原酒そのものにポテンシャルがあるということでもあります。

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原酒の成長もさることながら、蒸溜所、そして造り手の成長を感じるのがクラフト蒸溜所のリリースの面白さであり、魅力と言えます。
厚岸蒸溜所の情報については、これまでの記事等でまとめてきていますが、新たな原酒貯蔵庫を内地に調達するなど、この半年間で更なる動きを見せています。※上画像参照、厚岸蒸溜所Facebookより引用。

樽だけではなく熟成場所の違いもまた、原酒の成長に大きな影響を与える要素となり、原酒の種類が豊富にあるということは、後のリリースに様々な選択肢を与えてくれるものとなります。
例えば先日リリースされた大寒は、今までのリリースとは全く違う方向性のブレンドに仕上がっていました。これもまた、厚岸蒸溜所が操業5年少々という短い期間の中でも様々な原酒を仕込んできたからにほかなりません。
大寒については後日レビューさせて頂きますが、リリースを振り返るとそれぞれの違いもまた面白く、ウイスキーメーカーとしての成長も感じられます。新しいものだけでなく、定期的に過去作を振り返るのも、成長途中のクラフトの楽しみ方と言えるのかもしれません。

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