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ジュラ 20年 ブティックウイスキー Batch.3 48.8% For 信濃屋

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JURA 
MASTER of MALT 
THAT BOUTIQUE-Y WHISKY 
Aged 20 years 
Distilled 1998 
Batch 3 
Cask type Hogshead #2150 
Exclusively for SHINANOYA 
500ml 48.8%

評価:★★★★★★(6)

香り:発酵したような乳酸系の香りがトップノートにあり、合わせて乾草を思わせるドライなウッディさと、土埃のようなほろ苦さ。スワリングすると発酵臭の奥から麦芽由来の甘み、白色系果実のフルーティーさ、微かに溶剤的な刺激も伴い、垢抜けないが複層的なアロマが感じられる。

味:香りに反して素直な麦芽風味主体のフレーバー構成で、何よりボディがしっかりとして厚みがある。微かにオーキーで、青りんご系の品の良いフルーティーさのアクセント。徐々に香りで感じた乳酸系の要素が鼻腔に抜け、余韻はほろ苦く、乾いた麦芽とウッディなフレーバーが長く残る。

ジュラらしさと言う点では、野暮ったく、垢抜けない点であろうか。決して洗練されていないが、そうしたフレーバーが合わさって嫌味ではない複雑さが魅力としてある。まさに地酒として求めているものの一つと言えるかもしれない。特徴的な香味としては、信濃屋公式のテイスティングコメントには「メスカル」とあるが、要素の一つに見られる乳酸、発酵したようなニュアンスがそれだろう。熟成したテキーラにも似たフレーバーだが、メインは麦芽風味、厚みのあるボディ、そしてホグスヘッドで熟成されたウイスキーの華やかさとフルーティーさが、ウイスキーであることを主張する。
テキーラ好きが飲んだらどのような反応をするだろうか。
 
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とあるイケメンからサンプルを頂いたので、レビューを書いてみました。この状況下ではBAR飲みも出来ないので、ありがたい限りですね。
ジュラ蒸留所については、1963年に操業を開始(再開)して以降は、ノンピートないしライトリーピーテッド仕様のモルトが仕込まれていましたが、2002年からピーティーなモルトがリリースされるようになり、2009年にはヘビーピーテッドもオフィシャルからリリースされています。

ボトラーズリリースを見てみると、1989年リリースのシグナトリー社のヘビーピーテッドがあり、少なくとも80年代からそうした原酒を仕込んでいたようです。
今回のリリースは、実質的にはほぼノンピートと言われる仕込みだと思われますが、フレーバーの中にピートに似た雑味のようなフレーバーが混ざっています。とある国内蒸留所でも見られる特徴なのですが、ノンピートとピートの仕込みを併用した際に、例えばスチルの洗浄をしっかり行わないまま仕込みを切り替えると、設備に染み込んだ成分がフレーバーとして移ることがあります。

それは明確にピートフレーバーと言う感じではないのですが、まさに今回のリリースに見られる個性のように、ちょっとビターで、土っぽくて…これはこれで悪くないアクセントに繋がったりするのです。スコットランドではクライヌリッシュ的製法というヤツですね(笑)。

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さて、ジュラ蒸留所の個性、あるいはその個性から見て今回のリリースはどうなのかと、問われると中々難しいです。
そもそも、アイラを除くアイランズモルト、アラン、ジュラ、スキャパ、タリスカー、トバモリー、ハイランドパークと言った蒸留所は、スコットランドの他の地域に比べてフレーバーの統一感がほとんどありません。それはひとえに”島”といっても、資本はバラバラで、東西南北(東にはないですがw)様々な場所にあることも考えられそうですが、もう一つそれを際立たせているのが、ジュラやトバモリー蒸留所のような、洗練されてない酒質にあると言えます。

例えば一般的な内陸モルトウイスキーの構成は、麦芽風味にオークフレーバーというシンプルな仕上がりのものが多いです。ジュラはここに発酵したような要素、酸味、土っぽさ、あるいは硫黄や鉄分のような、少しよどんだ要素が混じるなど、軽やかで綺麗な仕上がりとはならないのです。
麦芽の調達はポートエレンだし、発酵槽や糖化槽はステンレスなので、鋳鉄製のような影響はなさそう。昔のジュラはもっと素直な構成だったのですが、90年代くらいから変化しているような…やはり仕込む原酒の種類が増えた関係でしょうか。

こうして要素の多いウイスキーは、言い換えれば繊細と言えるかもしれませんし、安定もしにくい傾向があります。今回のリリースは好ましいフレーバーが主体で、垢抜けなさは全体のアクセントに。水清ければ魚棲まず。どちらの存在もバランス次第でウイスキーのフレーバーの厚みになるのです。一口目は「あれ?」と思うかもしれませんが、なんだか飲めてしまい、もう1杯飲んでも良いかなと手が伸びる。
最近ジュラ蒸留所の20年熟成クラスのボトラーズリリースが多いので、月並みですが比較テイスティングするのも面白いかと思います。

ゲゲゲの鬼太郎 ハイランドパーク 15年 & ウィリアムソン 5年 for 東映アニメーション音楽出版

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GEGEGE NO KITARO
ORKNEY SINGLE MALT & BLENDED MALT WILLIAMSON 


先日、ウイスキー繋がりの知人Sさんから、このウイスキーを飲んで感想を教えてほしいとリクエストがありました。なんならブログ掲載用にボトルごと貸すからと。コロナもあって最近BARに行けてないので、これは本当にありがたい。二つ返事で了承し、ボトルをお借りしました。

モノは、東映アニメーション音楽出版さんが信濃屋さんの協力でリリースしたウイスキー2本。どちらも蒸留所表記がありませんが、オークニーモルトはハイランドパーク、ウィリアムソンはラフロイグのティースプーンモルトと思われます。
自分は同漫画の作者である、水木しげる氏が長く住まれた東京都調布市に所縁があり、何かと目にする機会も多かったところ。今回のリリースについても情報は知っていましたが、こうしてテイスティングできる機会を頂けるのは、これも縁というヤツかもしれません。

今回、Sさんからは
・蒸留所について、ハウススタイルから見てこのボトルはどう感じるか。
・熟成樽は何か(どちらもHogshead 表記だが、フレーバーが大きく異なる)
・ウィリアムソンの”澱”

この3点について、感想を頂きたいとのリクエストを頂いています。
特に”澱”はモノを見るのが一番だと、ボトルごと送って下さったようです。蒸留所については先に触れた通りですが、頂いた質問への回答を踏まえつつ、まずはこれらのリリースをテイスティングしていきます。

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KITARO 
Distilled on Orkney 
”HIGHLAND PARK” 
Aged 15 years 
Ditilled 2004 
Bottled 2020 
Cask type Hogshead "Refill Sherry"
700ml 63% 

香り:淡くシェリー樽由来の香ばしい甘さを伴う、微かにサルファリーな香り立ち。焙煎した麦やコーヒーを思わせる要素、奥に蜂蜜のような甘みと腐葉土の香りがあり、時間経過で馴染んでいく。

味:口当たりはパワフルで樽由来の甘さ、麦芽の香ばしさをしっかりと感じる。香り同様に乾煎りした麦芽、シリアル、シェリー樽に由来するドライオレンジやメープルシロップ、そして徐々にピーティーなフレーバーが存在感を出してくる。余韻はビターでピーティー、微かに樽由来のえぐみ。度数に由来して力強いフィニッシュが長く続く。

借りてきた直後はサルファリーな要素が若干トップノートに出てきていたが、徐々に馴染んで香ばしい甘さへと変わってきている。使われた樽はリフィルシェリーホグスヘッドと思われ、樽に残っているエキスが受け継がれ、濃厚ではないがバランス寄りのシェリー感。ストレートではやや気難しいく、ウッディなえぐみもあるが、加水すると樽由来の甘み、フルーティーさ、そしてピート香が開いてバランスが良くなる。これはストレートではなく加水しながら楽しむべき。
ハイランドパーク蒸留所のハウススタイルは、ピートとシェリー樽の融合。それを構成する原酒の1ピースとして違和感のない1樽。

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NEZUMIOTOKO 
WILLIAMSON "LAPHROAIG" 
Blended Malt Scotch Whisky 
Aged 5 years 
Ditilled 2011 
Botteld 2017 
Cask type Hogshead "Bourbon"
700ml 52.5% 

香り:しっかりとスモーキーで、淡くシトラスやレモングラスのような爽やかな柑橘香に、アイラモルトらしい潮気、海辺を連想させる要素も伴う。

味:短い熟成期間を感じさせない口当たりの柔らかさ、オイリーなコク。ピートフレーバーには乾燥させた魚介を思わせる要素に、バニラや淡くオーキーなフルーティーさ樽由来のオーキーなフレーバーも感じられる。余韻はスモーキーでほろ苦い、ソルティーなフィニッシュが長く続く。

BLENDED MALT表記だが、所謂ティースプーンなので実質的にラフロイグと言える。蒸留所のハウススタイルと、ポテンシャルの高さを感じる1本。若いは若いのだが、若さの中で良い部分がピックアップされており、未熟要素は少なく素直な美味しさがある。加水すると香りはより爽やかに、ラフロイグらしい柑橘感を後押しする淡いオークフレーバーと、薬品を思わせる含み香が開く。ストレート、加水、ハイボール、好きな飲み方で楽しみたい夏向きの酒。

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以上のように鬼太郎はハイランドパークで、樽はシェリーホグスヘッド(恐らくリフィル)。
ねずみ男はラフロイグで、樽はバーボンホグスヘッド。通常、ホグスヘッド表記だとバーボンのほうを指すことが一般的なので、鬼太郎ボトルは珍しい仕様と言えます。

続いて質問事項の一つだった、ねずみ男の”澱”ですが、写真の通り、確かにすごい量が入ってますね。
ウイスキーの澱と言われるものは大きく2種類あり、1つはボトリングをする際、樽の内側が崩れて黒い粉として入り込むケース。通常はフィルタリングするため除外されますが、リリースによってはわざと入れているのではないかというくらい、シェリー樽だろうがバーボン樽だろうが、一定の量が必ず入っているものもあります。

もう1つは、保存環境の寒暖差からウイスキーの成分が固形化したり、樽から溶け出た成分が分離して生じるものです。先の”黒い粉”よりも粒が細かく、ふわふわと舞い上がる埃のような感じになり、例えるならクリームシチューを作っていて分離してしまった乳成分のようなモノ。
今回のリリースは、加水していないのに度数が52%まで下がっています。熟成を経て度数は変動するものですが、一般的なバレルエントリーは約64%で、そこから5年で10%以上低下しているのはかなり早い。樽の内部で何か特殊な変化があったことが予想できます。
また、ボトリング時期が2017年で、2020年のリリースまで約3年間ボトリングされた状態で保管されていたことを考えると、その間に何らかの変化があったとも考えられられます。

飲んだ印象としては、これらの合わせ技によって発生した澱であるように感じますが、灰を被ったようなこの特殊な仕様は、今回のラベルである”ねずみ男”とマッチしている点が興味深いですね。
香味についても、Williamson=ラフロイグと言える個性はもとより、若い原酒ながらフィルタリングをしていないことによる厚みと複雑さ、そしてボトリング後の時間経過によって熟成年数らしからぬ落ち着いた感じもあり、なかなか面白い1本に仕上がっていると思います。

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一方で、鬼太郎のハイランドパークは、先に触れたように珍しいラベルの表記なのですが、仕様としても珍しいと言えます。
それは近年のハイランドパーク蒸溜所はオフィシャルリリースにはシェリー樽を、ボトラーズリリースにはバーボン樽を融通する傾向があると言われているため。バーボン樽熟成のボトラーズリリースはいくつか市場に見られますが、シェリー樽のほうは貴重なのです。(それでいて、63%という樽詰め度数からほとんど下がってない高度数設定も、ボトラーズだからこそと言える珍しい仕様です。)

熟成のベースは、比較的ピート香が強い原酒が用いられたようで、樽由来の甘くビターな香味が強くある中でもしっかり主張してきます。
ハイランドパーク蒸溜所では、オークニー島で採れる麦芽やピート以外に、スコットランド本土のもの、あるいは試験的にですが古代品種の麦芽やアイラ島で採れるピートを使った仕込みも行われているなど、様々なタイプの原酒を仕込んでいる蒸留所です。中でもシェリー樽の甘みとピート由来のスモーキーさは、ハイランドパーク蒸溜所の”らしさ”、ハウススタイルを形成する重要な要素です。

今回のリリースに使われたのはリフィルシェリー・ホグスヘッド樽であると考えられるため、濃厚なシェリー感ではありませんが、近年のオフィシャルリリースに見られる味わいと同様の要素があり、以前何度か飲んだシングルカスクのプライベートボトル(以下、画像参照)に通じる一本だと感じました。

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話は少しそれますが、かつてボトラーズリリースは、オフィシャルリリースと同等の完成度、あるいはそれ以上の美味しさを併せ持つ個性的なウイスキーを、当たり前のようにリリースしていました。
一方、昨今は長期熟成の原酒が枯渇。合わせてシングルモルトがブームになり、オフィシャル各社がブランドを拡充すると、ボトラーズメーカーへ提供する原酒の量が減少し、今まで当たり前だったものが当たり前にリリースされることはなくなりました。
現代のウイスキー市場では、オフィシャルリリースは総合的な完成度と無難な美味しさを、ボトラーズリリースは原酒の個性と面白さを、そこには必ずしも美味しさは両立しないという住み分けになっており、ステージが完全に切り替わっています。

そうした中、ボトラーズ各社や酒販メーカーが今までと異なる視点、価値を持たせたリリースを企画するようになり、今回のような一見するとウイスキーとは関係ない、異なる文化との融合もその一つです。
かつてイタリアのMoon Import社がリリースしていた”美術品シリーズ”に共通点を見出せる発想とも言えますが、今回のボトルは漫画とのコラボという異文化融合ラベルでありながら、バックバーにあっても違和感のないデザインを心がけたとのこと※。確かに、他社からリリースされているコラボ品に比べて、落ち着いた配色、シンプルなデザインとなっています。
※参照:ip-spirits(ウイスキー販売) |

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長々と書いてしまったので、最後にまとめと言うか雑感を。
私をはじめとして愛好家視点では、ゲゲゲの鬼太郎とウイスキー?なんで?と、そういう疑問が先立つところがあるんじゃないかと思います。
鬼太郎達が住んでいる場所が、上の写真のオークニー諸島やアイラ島のような、牧歌的で、それでいて不毛の大地にあるかと言うとちょっと違う気もしますが、スコットランドの蒸留所にはケルピーなどの精霊やゴーストの伝承は数多くあります。
そういう”伝承”など現地のエピソードを絡める発信があると、リリースそのものにも違和感がなくなってくるのかもしれません。あるいは国産蒸留所とのコラボとかですね。付喪神、八百万の神、百鬼夜行、日本ではその手の話題に事欠きませんから。

一方で、中身は先にまとめたように、
ハイランドパークは王道というか、ハウススタイルの1ピースを切り取ったような味わい。
Williamson(ラフロイグ)は蒸溜所のポテンシャルと、ボトラーズリリースらしい面白さ。
ボトルをお借りしたということで、1か月間くらいかけてテイスティングしましたが、ハイランドパークはその間も刻々と瓶内での変化があり、ラフロイグは最初から最後まで安定していました。

ゲゲゲの鬼太郎は漫画として長い歴史を持ち、今なお親しまれる漫画ジャンルのベストセラー。来年は水木しげる氏生誕100周年にあたり、映画も制作中のようで、今回のリリース含めて今後話題になっていきそうです。一方、両蒸留所もまたスコッチモルトの中で長い歴史を持ち、高い人気があるものです。その点を繋がりと考えれば、蒸溜所のチョイスも繋がりが見えてくる…か。
個人的にアニメラベル=色物のような第一印象があったことは否定できませんが、カスクチョイスは信濃屋さんということで、ボトラーズリリース受難の中にあっても、面白いカスクを持ってくるなと、楽しんでテイスティングさせて頂きました。
貴重な機会を頂き、ありがとうございました。ボトルは今度オマケをつけてお返ししますね!

※本記事に使用した「Photo by K67」表記のある写真は、ウイスキー仲間のK67さんが撮影されたものを提供頂きました。サイトはこちら

キルホーマン 6年 2009-2015 for サロン・ド・シマジ向け 59.9%

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KILCHOMAN 
SINGLE CASK RELEASE 
For Salon de SHIMAJI 
Aged 6 years 
Distilled 2009 
Bottled 2015 
Cask type Oloroso Sherry Butt #407 
700ml 59.9% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後2年程度
場所:自宅 
評価:★★★★★(5ー6)

香り:微かにサルファリーなニュアンスがあるが、それ以上にヨード香と磯っぽい香り、燻した麦芽や焦げた木材、ピートスモークのアクセントが強い刺激と共に薫る。

味:パワフルでピーティー。オイリーな質感のある麦芽風味から、後半にかけて口内を刺激するアルコールの高さ、ひりつくような飲み口。
余韻は強いピートフレーバーに、微かにチョコレートの甘さ、塩気を伴って長く続く。

粗さの残る口当たりだが、カリラとラガヴーリンを足して2で割ったような、王道系アイラモルト。
開封直後はシェリー感は淡いのにサルファリーなニュアンスが目立つ、なんとも評価に困るモルトだったが、時間経過で硫黄要素が抜けて、麦とピートにヨード、樽由来のコクのある甘味、ヤングアイラとしてなかなか楽しめる1本に変化してきた。
加水すると香りで硫黄要素が目立つが、味にはシェリー樽由来の甘味もあり、バランスは悪くない。なにより、葉巻との相性は光るものがあり、選定者の意図が伝わってくる。

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テレワークで家から出ていないこともあり、曜日感覚、日付感覚が欠如し、月末だったという認識がなく・・・思いっきり「リカル」の締め切りを失念していました(汗)。
自分は原稿を長々書いてしまうので、字数制限の関係上紙媒体向けとWEB向けでそれぞれ1本ずつ書くことから、平日夜の時間はリカルに集中。そして週末は子供に集中。というわけでブログがご無沙汰になりました。

今日のレビューは、来月6月にリリースされる、自分関連のボトルとかけ、キルホーマンのストックから。
4年前、信濃屋さんからリリースされた、サロンドシマジ&PEN向けのキルホーマン・シングルカスクリリース。この時期はポンド/円の相場が1ポンド190円と日本側に厳しく、中身も若い熟成年数故にシェリー感が淡く、バチバチと粗さの残る口当たりにサルファリーなニュアンスが目立ってしまう。。。
1本購入していたのですが、香味的にも価格的にもちょっと扱い辛いリリースという印象でした。

シェリー感は淡いのに硫黄が目立ったのは、硫黄感とシェリー酒由来の要素が樽材の表層にあるのに対し、その内側にある樽材由来のエキスでは、熟成の影響が時間差になるためと考えられます。表層部分から先に溶け込んでいくので、熟成の若いウイスキーは樽感がそこまで強くないのに、硫黄要素が目立つ結果になったのではと。
ただ、開封直後から葉巻との相性は良く、選び手の好みが反映されているボトルでもありました。完全禁煙な家飲みでは使い辛いけどBARでなら…と、今は無き池袋の某BARで葉巻を持ち込んで楽しんでいたのを覚えています。

また、硫黄系の要素は開封後の時間経過で抜けていく部分があり、若さ由来の粗さ、刺激も多少角が取れていきます。今回久々に飲んでみて、この硫黄要素が抜けつつあり、ベースにあるアイラモルトとしてピート、ヨード、塩気、それらを含む麦芽風味という、まるでラガヴーリンとカリラを足して2で割ったような好ましい変化が見られました。
度数の強さもあってがばがば飲むボトルではないので、今後じっくりと成長を見ていくことが出来そうです。

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さて、続いては個人的には今日の本題というか、冒頭触れた自分絡みのリリースであるキルホーマンです。
先日の記事でも紹介させてもらったチームグレンマッスルからのプライベートリリースが、無事に日本に到着したとのことで、銘柄もオープンにしたいと思います。(もともと隠すレベルのものでもありませんがw)
今回はキルホーマン蒸留所から希少な1樽、100%アイラのバーボン樽熟成をボトリングすることが出来ました。

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  KILCHOMAN
100% ISLAY MALT
SINGLE CASK RELEASE
For TEAM GLEN MUSCLE
Aged 8 years
Distilled 2012
Bottled 2020
Phenol 20 PPM 
Cask type Fresh Bourbon Barrel #29
700ml 55.1%


企画が動いたのは昨年末。
近年のキルホーマン100%アイラのリリース7th~9thに大きな可能性を感じ、その構成原酒と同じスペックである、バーボン樽のシングルカスクで7~10年熟成のものを日本市場にリリース出来ないかと、Whisky-eさんを通じてキルホーマン蒸留所に働きかけていただいたところ。我々の熱い想いに共感頂けたのか、複数のカスクサンプル(すべてバーボン樽で100%アイラモルト仕様)が届き、その中から選んだのが今回の1樽となります。

キルホーマンの100%アイラは、通常のリリースに比べて生産量が少なく、まとまった熟成年数のものがなかなか市場に出回らないそうです。
サンプル段階では、バーボン樽&100%アイラキルホーマンという組み合わせから想定される、らしいフルーティーさと厚みのある麦芽風味、さらにカスクナンバー29(肉)というマッスル的めぐり合わせ。何より求めていたスペックのオフィシャルボトルに個人名まで入るという、普通は考えられないことまで実現させてもらいました。
いやーもう感無量ですね。
コロナウイルスの影響で混乱があったのか、ちょっとイレギュラーもありましたが、何とか日本に届いてくれました。

今回のリリースはチームグレンマッスル向けのプライベートボトルになりますが、メンバーの立ち位置はこれまで同様、本リリースへの協力で一般的に言うところの監修となります。
勿論、リリースを通じて我々が監修料や売り上げ等の利益を得ることはありません。
リリースにあたってはメンバー並びに関係者の購入分を差し引いた後、Whisky-eさんから酒販店を経由して一般販売となる予定です。(一般販売は6月22日から、税込み12000円前後予定)
ボトルは6月2週目あたりでメンバーの手元に届く予定なので、まず先行でレビューさせてもらいます。購入を検討されている方は参考にして頂けたら幸いです。

ボウモア 14年 1997-2011 セレブレーションカスク for 信濃屋 60% #80028 

カテゴリ:
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BOWMORE 
CELEBRATION OF THE CASK 
For SHINANOYA 
Aged 14 years 
Distilled 1997 
Bottled 2011 
Cask type Hogshead #80028 
700ml 60%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後2年程度
場所:自宅
評価:★★★★★★(6)

香り:ハイプルーフ故に鼻腔を刺激する強さと、バニラなどの樽由来の甘さ、微かに薪の灰。シトラスやグレープフルーツを思わせるニュアンスを含んだピート香。磯っぽさと魚介粉末のようなアイラ要素の奥には、古典的な麦芽風味に通じるアロマも潜んでいる。

味:ハイプルーフらしく強い口当たり、塩気を伴うオイリーさ、燻した麦芽のほろ苦さとピートフレーバー。ヨードや魚介系のニュアンスを強く感じる含み香が続くが、グレープルーツ系の果実感、仄かにトロピカルなフレーバーもあり、ボウモアらしさに通じるアクセントになっている。
余韻はスパイシーでピーティー。口内がひりつようなフィニッシュだが、フルーティーさの残滓がピートフレーバーと合わさって長く続く。

香味の傾向としては、アメリカンオーク系フレーバーにボウモアの組み合わせという、ブラインドで最も正解率が高いだろうアイラモルト王道的な組み合わせの1つ。中身はやや粗さの残るボウモアだったが、経年変化(瓶熟)によってか多少丸くなっており、それによって奥に押し込まれていたベース部分の酒質由来の麦芽風味、オイリーな質感を伴うアイラフルーツとピートフレーバーが感じやすくなっている。加水も少量までならさらに香りの開きがある。グラスで時間を置いた際もいい変化が見られたので、まだ時間を置いても良いかもしれない。その時まで残っていればだが・・・。

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GWはステイホームということで、自宅で微妙な量を残したままになっているボトルや、頂いたテイスティングサンプルを楽しませてもらいました。
今回のボトルは、その飲み残しボトル1本。信濃屋向け・セレブレーションカスクのボウモア1997。最近めっきり見なくなった90年代ボウモアですが、これは当時飲み進まなかった1本。それがレビューの通り、瓶熟を経て結構良くなっていたのです。

発売当時はキャンベルタウンロッホの1993を筆頭に、1990年代蒸留ボウモアが注目された時期。脱パフューム、60年代への回帰、まあとにかく様々なリリースがありましたね。この信濃屋向けは、イベントあたりでサンプルを飲んで、これ結構良いじゃんと購入したボトルだったのですが・・・。開封直後の印象は、アルコール感が強く、ドライで果実味よりも塩気やピートフレーバーのほうが強く出ている印象。なんというか旨みが薄く感じられてあまり飲み進まなく、当時はハイボールで消費しきったと記憶しています。60%あったので、凶悪に酔えたんですよねぇ、これ(笑)。

97、98、99と、90年代後半あたりのボウモアは、90年代初頭から中頃に比べて味の幅というか、ボディが薄いものが増えていくので、樽次第でフルーティーなフレーバーが際立つ反面、それを外したボトルも散見されるのが、特に1997年のボウモアの特徴でもあります。
今回のボトルはホグスヘッドで14年熟成。王道系の味わいですが、使われていたのがバーボンバレルか、あるいはもう3~4年熟成していたなら、開封直後からわかりやすくフルーティーで美味しいボトルだったのではと思います。少なくともリリース当時は、樽感に対して、度数の強さが勝ってしまっていたのです。

このボトル、諸事情により2本あって、残っていた1本を1年半くらい前に開栓。開封直後の印象は当時とあまり変わらず。。。しかし約8年の瓶熟(うち、約2年弱の開封後放置)が変化を与えており、久々に飲んでみると先に触れた若さ、強かったアルコール感、ドライさが収まり、その奥にあったコク、魚介系のニュアンス、古典的なボウモアのフルーティーさに通じる要素が開いてきていました。そういえば試飲して感じた印象ってこんな感じだったなと。記憶はあいまいですが・・・。

おそらく、試飲の時は、飲んだのがカスクサンプルだったか、イベントでの輸送や環境によって結果的にこなれたような感じになっていたのでしょう。回り道はあったが、その状態に時間をかけてたどり着いた。度数の高さ故に経年変化を許容出来たことも、今のボトルの状態に繋がっていると思います。
先日、Wu Dram Clan向けハイランドパークのコメントで、瓶熟に関する質問を受けたばかりでしたが、思いがけずその事例を楽しむことが出来ました。

オールドプルトニー 10年 2008-2019 信濃屋 Whisky KID 60.4%

カテゴリ:
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PULTENEY 
SIGNATORY VINTAGE 
For Whisky KID from Shinanoya, Tokyo 
Aged 10 years 
Distilled 2008 
Bottled 2019 
Cask type 1st fill bourbon barrel 
700ml 60.4% 

グラス:国際規格テイスティンググラス
場所:ジェイズバー
時期:開封後1週間程度
評価:★★★★★★(6)

香り:うっすらとバニラやオーク香の層があり、若干の酸、溶剤系の刺激を鼻孔に感じる。続いて干し草や微かにハーブ。レモン、焦げたようなスモーキーさがじんわりと広がる。

味:口当たりはブリニーで、とろりとしたおしろい系の麦芽風味と塩気、香りで感じた若さに通じる柑橘系の酸味から、ひりつくスパイシーな刺激があり。余韻にかけてほろ苦いピートフレーバー、ハイトーンなフィニッシュがはつらつとした若いモルトの個性を感じさせる。

ファーストフィルだが樽感はそれほどではなく淡い。樽にマスクされていないので味わいには若さに通じる要素が見られるが、麦芽風味と塩気、若干の溶剤っぽさに通じる刺激は、オフィシャルの加水リリースでは味わい難いプルトニーらしさ。尖った個性を楽しめる、ボトラーズに求めたい1本。

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(自分の写真があまりに貧相なので、ウイスキー仲間のMさんにお借りしました(笑))

信濃屋の新バイヤーである(あ)こと、秋本さんがカスクチョイスした、シグナトリーのプルトニー。ラベルに書かれたWhisky KIDは同氏の通称(ひょっとして蒸留所関係者からそう呼ばれた?)で、このプルトニーがバイヤーとしてのスコッチモルトのファーストリリースとなります。

KID、つまり”若手”ではありますが、TWDの活動等でこれまで度々テイスティングの勉強をお互いにしていたなかで、秋本さんのしっかりと原酒の特徴を捉えてくるテイスティングは、業界内でも高いレベルにあるものと感じています。
それ故、このリリースはまず間違いないと予想していた訳ですが、無理にハイエンドを追うのではなく、手にしやすい価格のなかで蒸留所ならではの個性が分かりやすく、そして通好みの美味しさのあるカスクをチョイスしてきたのは流石だなと思います。

やや若さは残っていますが、1st fill bourbon barrelにしては淡い樽感に、プルトニーらしい麦芽風味とスパイシーで若干溶剤的なニュアンスも伴う刺激。「そうそう、プルトニーの短熟原酒って、こんな感じだよなぁ」と。そして酒質由来の風味もそうなのですが、淡い樽感から蒸留所限定品を飲んでいるような印象を受けます。
それこそ、シグナトリーが蒸留所からある程度熟成した樽(例えば7~8年程度熟成したもの)を購入していたのでは?、と思えるような仕上がりです。


ボトラーズリリースの原酒は、樽使いだけでなく熟成環境が蒸留所と異なるケースがあり、オフィシャルと違うキャラクターとなってリリースされることがしばしばあります。
データ上の比較なので、必ずしも熟成環境に直結しないかもしれませんが、例えばプルトニーがある本土最北の地域(ウィック)。ここは夏が短く冬が長い、そして気温は短い夏場でも最高気温で16度前後、基本的には10度未満の時間帯が非常に長い地域とされています。
一方シグナトリーの熟成庫があるのは、南ハイランドのパース。ここは夏場で20度、平均最高気温で2度以上違う統計があるなど北ハイランドよりも温暖かつ、冬場はさらに寒く寒暖差もある地域とされています。

樽のエキスは温暖な時に蛇口が開き、寒冷な状態では閉まります。実際、プルトニーのシングルモルトは圧殺系のシェリーを除くと熟成年数に対して樽感が淡く、酒質由来の風味、刺激を感じやすい傾向があると感じており、今回のリリースはまさにその特徴にドンピシャだったわけです。
事実は違うかもしれません。単なる偶然かもしれません。が、専門性とは切り離されたところに愛好家としての愉悦はある。あーだこーだ楽しむ要素があるのが、良いウイスキーの条件であると思うなかで、今回のボトルはその条件にも合致したグッドリリースでした。
WHISKY KIDの次の1本、今後の展開にも期待しています。

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