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ニッカ セッション 43% ブレンデッドモルトウイスキー

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NIKKA WHISKY
SESSION 
Blended Malt Whisky 
700ml 43% 

グラス:SK2、木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅(サンプル)
時期:開封後1週間程度
評価:★★★★★(5-6)

香り:ほのかに乳酸系の酸を伴う、ケミカル様な香り立ち。プレーン寄りのオーク香と乾いたウッディネスに、微かにドライオレンジ。焦げたようなモルティーさとピート香が混じる。

味:香り同様の構成。口当たりは酸味を帯びたケミカルなフルーティーさ。モルト100%だけあって、コシのしっかりした味わいに、多少ギスギスとした若い要素もあるが、モルト由来の甘みと加水で上手く慣らされている。後を追うようにほろ苦く香ばしいピートフレーバーが広がり、乾いた樽香を伴って余韻へ続く。

プレーン寄りの樽感に、ベンネヴィスと若めの新樽熟成余市という印象を受ける構成。若さを目立たせず、現在の相場を考えたら上手くまとめている。レシピ上は宮城峡や他の輸入原酒も使われているのだろうが、前述2蒸留所の個性が目立つため、残りの蒸溜所(原酒)は繋ぎと言える。余韻にかけての焦げたようにビターなスモーキーフレーバーは余市モルトの特徴。ベンネヴィスの特徴についてはもはや触れる必要はないだろう。前述の通り樽感がプレーン寄りなので、ハイボールにすると面白い。

(今回はサンプルテイスティングのため、画像は友人が撮影したものを借りています。Photo by @Bowmore80s)

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9月末にニッカからリリースされた新商品。ブラックニッカの限定品ラッシュの印象が強くて意識していませんでしたが、新ブランドの立ち上げは実に6年ぶりとのことです。
今年3月には看板商品である竹鶴ピュアモルトが終売&リニューアルしており、2020年はニッカにとって2015年以来の大きな方針転換を行った年と言えます。

特に大きかったのが、「竹鶴ピュアモルト」のブレンドレシピの変更だと感じています。
これまでは「ベンネヴィス」が使われていると噂されていた、ソフトでケミカルな、フルーティーなフレーバーの混じる構成を見直し、香味の上では100%、あるいはほぼ余市と宮城峡の組み合わせと思える、全く異なる味わいにシフトしてきたのです。

そしてその後、間を置かず発表されたのが、今回のレビューアイテムである「ニッカ・セッション」。ニッカウヰスキーとしてはおそらく初めて、ベンネヴィス蒸留所の原酒が使われていることを、公式にPRしたリリースです。

発売発表直後、飲まずして「つまり旧竹鶴ピュアモルトでしょ」と思った愛好家は、きっと自分だけではなかったと思います。しかし上述のとおり竹鶴ピュアモルトがリニューアルして香味が変わっており、使われなくなった原酒はどこに行くのかというところで、”華やぐスコティッシュモルトと、躍動するジャパニーズモルトの競演”なんてPRされたら、考えるなと言うほうが無理な話でじゃないでしょうか(笑)。

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(左から、ニッカ・セッション、竹鶴ピュアモルト、旧竹鶴ピュアモルト。)

ただ、当たり前な話ですが、ニッカ・セッションは旧竹鶴ピュアモルトのレシピをそのまま持ってきたようなブレンドではありませんでした。
上の写真で色合いを見ても、その違いは明らかですね。
先日、LIQULのコラムRe-オフィシャルスタンダードテイスティング Vol.8で、竹鶴ピュアモルトとセッションを特集した際にまとめさせてもらいましたが、旧竹鶴ピュアモルトと新作2銘柄の間ではっきりと線が引かれた、過去との違いを明確にしたレシピだとも感じています。

下の表はレシピというか、味わいから感じた銘柄毎の各原酒の個性の強さを、主観でまとめた個人的なイメージです。
あくまで主観なので、実際のレシピで使われている分量とは異なると思いますが(例えば、宮城峡のようにソフトな原酒は量が多くても目立ちにくい)、ポイントはピーティーな余市モルトの利かせ方だと考えています。
旧竹鶴ピュアモルトでは淡い程度だったその存在が、新作2銘柄では最近の余市に見られる、あまり樽の内側を焼いてないような新樽の香味に、ピーティーで香ばしいモルティーさが合わさり、特に余韻にかけて存在感を発揮して来ます。

主観的分析

ベンネヴィスは、わかりやすいいつものケミカルっぽさのある個性。中にはピーティーな原酒もありますが、余市のそれとはキャラクターが大きく異なります。
その余市のピーテッドモルトの使い方で、これぞニッカという分かりやすい個性があるのは、輸入原酒の有無に限らず、ニッカの原酒が使われているという、明確なメッセージを発信しているように思えてきます。

それは、2銘柄を新たにリリースした理由にも繋がるものです。
原酒不足対応、将来を見据えた計画、流通量の安定化・・・様々な要因が説明されてきましたが、違和感はこのセッションのリリース。リニューアルした竹鶴ピュアモルトの出荷本数は年間30000ケースと旧時代と比較して相当絞ってきた中で、セッションの初年度は様子見で50000ケースです。
本当に原酒が足りないなら、宮城峡より生産量が少ない余市モルトをセッションに回す(少なくとも旧竹鶴よりは効かせている)ことや、そもそもセッションのリリースをしないで、旧竹鶴ピュアモルトを継続する選択肢だってあったと考えられるわけです。

昨今、「輸入原酒をジャパニーズウイスキーとして、あるいはそれを連想させる名前の商品に用いてリリースすることの賛否」が注目されていることは、改めて説明する必要はないと思います。
つまり、消費者意識の高まりを受けて、竹鶴は100%日本産と再整理し、もう一つ軸となるブランドを、輸入原酒とニッカの明確なキャラクターの中で、情報公開しつつ造ったのではないかと。
(実際、ジャパニーズウイスキーの基準に関する議論を受けたリリースの動きがある、なんて話を昨年聞いたことがありましたし。)

勿論、サントリーから碧”AO”、キリンから陸、ブレンデッドとグレーンと言う、2社が強みをもつ領域でワールドウイスキーが展開される中で、ニッカも後れをとるなと得意領域で新商品をリリースしてきた、ということかもしれませんが、これら3商品のリリース背景に、原酒不足問題だけでなく、大なり小なり「ジャパニーズウイスキーの基準問題」が影響していることは間違いないでしょう。

こうしたリリースに市場が、消費者が、どのように反応するか、各社はブランド価値向上を狙いつつ、そこを見ているようにも思います。
とはいえ、味以上にレアリティに惹かれる人が多いのもボリュームゾーンの特徴なので、ワールドウイスキーがブームの恩恵を100%受けていられるかは微妙なところ(実際、これら3つのワールドウイスキーは普通に店頭で買えますね)。ひょっとすると、一時的な整理になる可能性もあります。
しかし、日本におけるワールドウイスキーは、新しい可能性と成長の余地のあるジャンルであり、個人的には日本だからこそ作れるウイスキー造りの一つとして、今後も探求を続けてほしいと感じています。



今回は軸となる情報は同じながら、LIQULと異なる視点で記事を書きました。
なんというか、新リリースの楽しさだけでなく、色々と考えさせられるリリースでしたね・・・ニッカ・セッションは。
では、今回はこのへんで。

シングルカスク 余市 10年 2007-2017 マイウイスキーづくり 60% &LIQUL連載記事紹介

カテゴリ:
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YOICHI 
NIKKA WHISKY 
SINGLE CASK MALT 
Aged 10 years 
Distilled 2007.04.14 
Bottled 2017.10.18 
Cask type New American Oak #408021 
700ml 60% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:不明
場所:自宅@テイスティングサンプル
暫定評価:★★★★★★★(6ー7)

香り:ウッディでハイトーンな刺激のあるパワフルなアロマ。熟したバナナやバニラ、キャラメルソースを思わせるチャーオーク。合わせてタールや葉巻を思わせる軽い酸味と焦げたような樽香を伴う。

味:口当たりはメローで甘酸っぱく、そしてパワフル。ドライオレンジやキャラメルソース。そこに燻した麦芽、やや焦げたようなウッディなフレーバーから、香り同様に葉巻を思わせる含み香がスパイシーなフィニッシュとともに長く続く。

フルーティーさよりも、樽由来のウッディさと、麦芽系の味わいが中心のカスク。新樽由来のエキスは濃厚で、ハイプルーフ由来の口当たりの強さを包み込むように感じられる。ただしそのウッディさのなかに、蒸留所のキルン見学で感じたような土や植物の焦げた香り、ピートに通じるニュアンスを含んでいる点がこのカスクの個性を構築している。

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先日、我が家に届いたマイウイスキーづくりの余市。同じようにマイウイスキーのボトルを所持している愛好家とボトル交換を実施したのですが、その際交換ボトルとは別にオマケでいただいたのが、#408021のテイスティングサンプルです。
飲んだ印象は、なんともらしい余市というもの。メローでビター、リッチな新樽感に、酒質由来の甘酸っぱさが混じるパワフルな味わい。甘味、酸味、苦味のバランスが良いですね。度数は60%とマイウイスキーボトルのなかでも特にハイプルーフ仕様故、強い刺激もありますが、新樽のエキスがオブラートのようにそれを包み込んでいます。

マイウイスキーの余市は、初期の頃は色々幅があったようですが、自分が参加した頃は新樽+10PPM以下の極ライトピート、あるいはノンピートで仕様が固定されていたと記憶しています(マイウイスキー上級編を除く)。一方、この2007年は多少ピートが強いのか、あるいは樽由来の要素がピートに類似する風味に繋がったのか、焦げた木材を思わせるビターな味わいの中に、タールや葉巻葉のようなニュアンスが混じる点が面白い仕上がりでした。

もっとフルーティーなものとか、スモーキーでソルティーなタイプを好まれる方のほうが多いと思いますが、自分はこの余市は結構好み。なんとも、通好みな余市だと思います。

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酒育の会 LIQUL
Re-オフィシャルスタンダードテイスティング(番外編)
特別なオフィシャルボトル - 2020.3.1公開

※LIQUL Twitter 開設してました(笑)

さて、ちょうど良いのでご紹介。
昨日公開された酒育の会ウェブマガジン「Liqul(リカル)」の連載記事は、番外編としてシングルモルト余市の紹介を踏まえつつ、特別なオフィシャルボトル「マイカスク」を味わうことの魅力について書いてみました。

オフィシャル余市は、2015年のリニューアル(というかニューリリース)の際、同価格帯だった余市10年に比べて明らかに若さが目立つ、旧NAS余市の実質的な値上げではないかなどかなり厳しい評価を受けたことは記憶に新しいと思います。
その後しばらく様子を見てみると、新樽熟成原酒に共通する樽感が、少し濃くなったようなロットが現れ、若さが多少控えめになったように感じられました。
(イベントで質問しても、ニッカ側はなにも変えていないというコメントでしたが・・・。気のせいかな?)

そのニッカらしい味わいを構成しているのが、これまでレビューしてきたマイウイスキーづくりボトルのような、新樽熟成の余市原酒です。オフィシャルスタンダードをテイスティングした流れで、新樽熟成のシングルカスクを飲むと、スタンダードにおける役割がわかりやすいと思います。あるいは蒸留所で販売されている、ウッディー&バニリックでも良いですね。こちら若さは強いものの、ニッカ味の残った良いリリースです。

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ただ、今回の記事の主目的は「オフィシャル余市美味しいor美味しくなった」ではなく、カスクオーナーとして自分にとって繋がりのある一樽を持ち、同じ時間を過ごした後に飲む1杯がもたらす”特別な瞬間”を紹介することにありました。
本来この企画はオフィシャル通常リリース、スタンダードクラスを中心に扱うものと位置付けているため、番外編としている理由はそこにあります。

記事では字数制限から省いてしまった内容があり、読み直して見ると目的がボケている。あるいは余市のレビューからラストの部分にかけて、自分が伝えたいことの繋がりの悪いように感じられ、手直ししたい気持ちがムクムクと沸いてきています。
どの記事にも大なり小なり反省点はあるのですが、これは改稿をお願いしようかな・・・。


記事中でも触れましたが、これまで年単位での熟成を前提としたオーナー制度は、国内ではニッカのマイウイスキーくらいしかなく、あとは直接蒸留所と交渉するか、スコットランドから買い付けるかくらいしかありませんでした。
それが、ここ数年で一部のクラフト蒸留所がカスク販売や共同オーナー制度はじめたことで、カスクオーナーになるハードルは大幅に下がりました。

自分が作った原酒が詰められるサービスというのはまだありませんが、長濱蒸留所のウイスキー塾や、三郎丸や安積のオーナー向け見学会など、特別なプログラムを通じてその蒸留所を深く知ることができる取り組みもあり。。。参加することで、蒸留所との繋がりが強く生まれ、まるで自分の分身がそこにあるように思えてくる。結果、ボトリング後の味わいを一層特別なものに高めてくれると思うのです。

ウイスキーを趣味とする我々愛好家にとって、そうして過ごす熟成期間もまた、充実したものになるのではないでしょうか。時を飲む贅沢があれば、時間をかける贅沢もある。
自分はクラフト蒸留所のいくつかで、共同オーナー制度を利用していますが、今からその特別なひとときが待ち遠しいですね。

ニッカ シングルカスク余市 1990-2010 日本丸就航20周年記念 61%

カテゴリ:
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YOICHI 
NIKKA SINGLE CASK MALT WHISKY 
For 20th Aniversary NIPPON MARU 
Aged 19 years 
Distilled 1990.12.22 
Bottled 2010.2.4 
Cask No, 128853 
750ml 61% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:不明
場所:自宅@テイスティングサンプル
評価:★★★★★★★★(8)

香り:メローなウッディーさ。松の樹皮やどんぐり、燻したような麦芽香の後からチャーオークの焦げ感を伴うバニラとキャラメルの濃厚なアロマ。樽香の奥にはチョコチップクッキーのような香ばしさを伴う甘味と垣間見える熟した果実感。強くはないが存在感のあるピートスモークに、微かに溶剤的な刺激も伴う。

味:リッチでメロー、パワフルでどっしりとしたボディ。キャラメルを思わせる甘味に松の樹皮やアーモンドのようなビ武骨なウッディさと香ばしさ。そこに熟したオレンジの果汁を思わせる甘酸っぱさが溶け込み、余市の酒質由来の要素を感じる。
余韻はややハイトーンでスパイシー。漁港を思わせる海の香りがウッディな樽香と共に鼻孔に届く。カカオの苦味、焦げたウッディさはこなれており、染み込むように長く続く。

麦、ピート、樽、そして時間がもたらすそれらの融合。余市が余市たる味わいが詰まった素晴らしい1本。60%を越えるハイプルーフだが、熟成によって口当たりはこなれ、それでいてパワフルでフルボディな新樽フレーバー。樽感の奥に潜む多彩なレイヤーから、余市における円熟味を味わえる1本とも言える。加水するとマイルドで、麦芽由来の甘味が開く。

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縁あって大変貴重なボトルをテイスティングさせていただきました。
それは、クルーズ船日本丸の就航20周年を記念し、船内限定で発売されていた余市のシングルカスク。流石豪華客船、凄い樽引っ張ってきたなと言う感じですが、リリース当時はブーム到来前。まだ普通に余市20年や、年に1度のヴィンテージシリーズが販売されていた頃ですから、この手の原酒が販売されていても違和感はありません。

他方で違和感という意味では、日本丸は商船三井客船、つまり三井グループに属する船であることが少しひっかかりました。
ニッカウイスキーが属するのはアサヒビールホールディングス。同社は特段どこのグループというわけではありませんが、過去の資金調達等の関係から実質的に住友グループの一員と見なされるほど深い繋がりがあります。そう、グループが違うんですね。

日常的な宴会から冠婚葬祭において、ビールを見るとグループがわかると言う話は耳にしたことがあると思いますが、それは販売経路にそのまま繋がります。この整理でいくと、三井グループはサッポロかサントリーと言われており。。。山崎、白州ではなく余市が詰められていたことに、些か違和感を感じたという訳です。
もっとも、この手の話は時代によって変わるの。最近の日本丸のレストランや、客室内の冷蔵庫にはアサヒスーパードライが使われていることから、そこまで気にする話じゃないのかもしれません。(あるいは2000年頃の三井グループと住友グループの合併話から、門戸が開かれたか。)

話がだいぶそれてしまいました。そろそろ中身にフォーカスしていきます。
今回のボトルはまさにアメリカンオークの新樽というフレーバーが主体ですが、ただ樽感が濃いだけでなく、熟成によって丸みを帯びている点。その奥には、余市らしい激しく主張しないじっとりとしたスモーキーさと、微かに漁港のような香りがアクセント。そして厚みのある酒質は、オレンジ系の果実の甘酸っぱさを伴う、リッチな樽感のなかに余市らしさが複数のレイヤーとなって合わさった、多彩な味わいが魅力であると言えます。

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(余市10年マイウイスキーの新樽熟成3種。どれも今回の日本丸20周年記念と大差ない色合い、度数構成であるが。。。)

同じ新樽の余市で比較すると、樽感という点では、上記マイウイスキーの余市10年も、今回の日本丸カスク(約20年熟成)と同じくらいの濃さがあります。
ですが、ここまでのバランス、多彩さが感じられたものはありません。勿論このはつらつとした味わいも決して悪くはないのですが。。。このまま10年寝かせてもこうはならない。恐らくそれは熟成期間の違いだけでなく、使われた新樽のサイズが違うのではと推察します。

最近のマイウイスキーや余市では、250リットルの新樽が中心です。しかしこの日本丸は、パンチョンやバットサイズの大型の新樽が使われているのではないか。それ故にじっくりと熟成が進み、約2倍の年月をかけてこの香味にたどり着いたのでは・・・と。
それこそ、ウイスキー不遇の期間を過ごしたからこそ生まれた産物であると共に、その時間がくれた贈り物のようなウイスキーだと感じます。
(画像検索でこのボトルに付属していたメーカーコメントのカードを確認しました。500リットルサイズの新樽が使われてるとのことです。2/25 追記)

なお蒸留は1990年12月22日となっているところ、日本丸の就航は同年9月です。同じ月の原酒って無かったのかなあとか。ひょっとして関係者が1990年に樽買いしていた?いやそれこそ先に触れたグループ違いの話が当時は強かったろうし・・・
これでなんの事情もなく揃えて来なかったなら、ニッカらしいなと思えてしまったりです(笑)。

余市 マンサニージャウッドフィニッシュ 2018年リリース 48%

カテゴリ:
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NIKKA WHISKY 
YOICHI 
MANZANILLA WOOD FINISH 
Bottled in 2018 
700ml 48% 

グラス:木村硝子テイスティング
時期:開封後1ヶ月程度
場所:自宅@サンプルIさん
評価:★★★★★(5)

香り:焦げたようなウッディさとサルファリーなニュアンス。醤油煎餅のような香ばしさ、微かなピート。奥にはやや若い酸、バニラの甘さも合わせて感じられる。

味:オイリーでコクのある口当たりだが、香り同様に酸味があり、ベースの若さを感じる作り。微かに干し柿とクリームの甘味。徐々にウッディで軽いえぐみがあり、椎茸の混じったコーヒーのようなサルファリーさとピートフレーバー。ドライでビターなフィニッシュが長く続く。

オフィシャル通常品と同じような若い余市モルトに、シェリー樽のフィニッシュが合わさってサルファリーでビターな味わいに仕上がった、良くも悪くもニッカ味なモルト。シェリー樽の疑問は宮城峡の同限定品と同じで、シェリーそのものが混じったような淀みも健在。ただそれ以上にこのボトルは裏ラベルのコメントである。ピーチ?パパイヤ?トロピカルフルーツ?一体何があったのか。。。

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シングルモルト余市NASを、マンサニージャシェリーを50年間熟成していたソレラ樽で、18ヶ月間フィニッシュした限定品。
先日これの宮城峡をレビューしたところ、余市も飲みます?と、知人のIさんから頂いたもの。
「余市はまだ良いって話聞きましたけど、どうです?」という問いは、Iさんの(苦笑)によってお察しでしたが、まあこれも中々に疑問の残るボトルであったわけです。

まずシェリー感については同じ樽を使ってるわけですから、特徴はそのまま。
ただ宮城峡に比べ、原酒の個性の強さから通常のオフィシャルNAS系統の香味が分かりやすいので、どの辺がフィニッシュ由来なのか整理しやすく感じられました。
例えば、通常の余市NASはシェリー感はそこまで強くありません。サルファリーさもありません。若い余市の味はそういうものとして評価出来るのですが、その前提から見ると疑問点も際立つ訳です。

それは、マンサニージャ之如何にという部分と、なぜここまで硫黄後付けに拘るのか。そしてこの香味でもってピーチ、パパイヤ、トロピカルフルーツは無理があるような。。。という3本建て。
先の2点は過去記事でも触れていますので、ある程度割愛しますが、やっぱりこれマンサニージャシェリー樽ではないのでは?という疑問は強くなりましたね。
あるいはこの余韻にかけてのウッディさです。ベースを構成する一部に、意図的にオロロソシェリー樽の原酒を加えたのではとも思える味わい。中身と公開されている説明が一致しない違和感が、最後までぬぐえないのです。

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(同時にリリースされた宮城峡のマンサニージャフィニッシュ。オフィシャルと同じシングルモルトを、ソレラで50年使われたシェリー樽で18ヶ月フィニッシュしたものというが。。。レビューと樽に関する疑問はこちら。)

そしてこの余市に関しては「個人の感想であるため、効果と効能を保証するものではない」と言われればそこまでなのですが、ウイスキー界隈でのトロピカルフルーツとはかけ離れているようなレビューが、さらに違和感を強くしています。
ボトリングする前の、カスクサンプル段階で一部そういう香りのものがあったのか。。。なんの裏付けもないですが、ある種の営業戦略なのか。。。
香味が好みから外れているだけなら、それは食品や嗜好品ゆえ仕方ないことですが、こうもモヤモヤが残る酒は中々に珍しいです。

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今日のオマケ:クリスタルム ピーターマックス ピノ・ノワール 2018

南アフリカのピノ。新世界のなかでも仏寄りのタイプのものが多い印象の地域ですが、これはその合わせ技という感じですね。

クリアで土っぽさとキノコのような香りの混じる赤系果実香。少し酸が立って感じられる。注ぎたてはフレッシュで若い印象もあるが、クランベリーやチェリー、石榴のシロップを思わせるジューシーな甘酸っぱさ。人工出汁のようなべったりとした質感で口内にとどまる。余韻は酸味が優位になり、適度なタンニンを伴う。

分かりやすいピノ由来の赤系果実の味わいと、土っぽさもはっきり感じられるのが魅力のワイン。2018と新しいビンテージでこう飲めるのは如何にも新世界的な良さだし、何より価格が3000円台と使いやすいのも魅力です。より一層新世界的な味を求めるならカレラやコノスル、仏系の味を求めたらこういうワインが選択肢にあるのはウイスキーライフのサブポジとして申し分なしだと思います。

シングルカスク 余市 10年 2008-2018 マイウイスキーづくり 59% #409288

カテゴリ:
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NIKKA WHISKY 
YOICHI 
SINGLE CASK 
Aged 10 years 
Distilled 2008.5.24 
Bottled 2018.9.21 
Cask type New American Oak Cask #409288 
700ml 59% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:―
場所:自宅
評価:★★★★★★(6)

香り:焦げたチョコレートクッキーのような、ビターなトップノートと色濃い甘味。ウッディなアロマと合わせて焙煎した麦芽のような香ばしさ、微かに溶剤系のニュアンス。力強いアタック。

味:ウッディでスパイシー、パワフルな口当たり。チャーオーク由来のキャラメル系のメローな甘みの中で、オレンジやパイナップルの果汁を思わせるフレーバーがアクセントに。余韻は味わいの中で感じられた甘みを残しつつ、スパイシーで舌の上がざらつくような焦げ感を伴うウッディネスが長く続く。

樽感のしっかり溶け込んだウッディな味わいが主体。ビターな樽由来の香味構成に、余市らしい香ばしい麦芽風味と、フルーティーさに通じる酸がアクセントになっている。加水に負ける感じではないが、香りにワックスのような、味わいはビターオレンジのような、特に香りには異なる要素が加わる。


先日我が家に届いたマイウイスキーづくりの余市10年 Cask #411127。例によって購入できるだけ購入し、同様にウイスキー繋がりで違う年度のマイ余市を購入していた方々と、それぞれの余市をトレードしました。
こうして参加者同士で繋がりが生まれて、お互いのボトルをシェアできるのは参加者の特権というか、広義の意味で言えば樽オーナー制度ならではの楽しみだと思います。

今回のレビューアイテムは、北海道のSさんとトレードしたもの。自分のボトルよりも1年前の会のものです。
自分にとって節目の年だった、この2008年。企画そのものは知っていましたが、就職したばかりでとても平日休みをとれる状況になく・・・。2008年の余市は個人的に思い入れのあるボトルだったりします。

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(マイウイスキー余市の樽違い。同じ新樽で10年熟成だが、樽の状態、置かれた場所、あるいは熟成期間中の気候によって色合い、味わいが異なる。色合いだけで言えば中央と右2つはほぼ同じで、気持ち右側のほうが濃いような気もするが、香味はそれぞれ大きく異なる仕上がり。)

今回のボトルである、Cask #409288の特徴はビターなウッディネス。
ハイプルーフなカスクストレングスらしい、パワフルなアタックの強さ。フレーバーは焦がしカラメルのようなほろ苦さと舌の上でざらつくビターなウッディネスが主体としてあり、そこにチャーオークのメローな甘味、余市のニューメイクがもつ酸味が熟成によって変化した柑橘系のニュアンスがアクセントとなっています。

これが他の余市とどう異なるか。上写真の我が家で開封済みの同じ10年では、写真左の#411127はウッディーさが押さえ目な代わりにエステリーでフルーティーな果汁感があり。今回のレビューアイテムである#409288と、同じくらいの濃さを感じさせる色合いである#406599(右)は、仕込みが11月でボトリングも11月と熟成が最も短いが、熟成環境の違いか最も濃厚なウッディさとメローな味わいがメインにあります。
アルコール度数もほぼ同じですが、単に樽の強さだけでなく、アルコール感の感じ方、アタックの強さが異なるのも面白いです。

しかしこうして様々な新樽熟成の余市を経験して思うのが、新樽熟成とその樽感を受け止めるだけのパワフルな酒質を作り出す余市の偉大さ。たまにピークをはずしているものもありますが、どれも一定レベル以上に仕上がる安定感があり・・・。
決して万人受けの酒ではないと思いますが、我々愛好家としてはこれで良いんだよこれで、と思える尊いウイスキーなのです。

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