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ジュヴレ シャンベルタン VV セニョーリ ダルセロ 13%

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SEIGNEURIE DARCELOT
GEVREY CHAMBERTIN
VIEILLES VIGNES
2012
De Aureo Spirito Collection
750ml 13%

フレッシュで少々硬さがあり、ドライクランベリーなどのダークフルーツ、赤と黒色を思わせるベリー系の果実、スパイシーな香り立ち。徐々に蜜っぽい甘さ。
口当たりは重みのある濃さ、ブルーベリー、あるいは黒スグリ、葡萄の皮。余韻は程よいタンニンとピリッとしたスパイスのアクセント。
時間経過で少し鉄っぽいニュアンスも感じられる。

やや硬さが残っているが、時間を置くと果実味が開いてくる。VVゆえか適度な深みと濃縮感もあり、まだ熟成させる事が出来たと感じるボトル。


昨年レビューしたコートドボーヌ・ヴィラージュ2014、伊勢丹ギフトセットの片割れ。
年数について明確な基準はないものの、数十年以上の古木から採れる葡萄で作られているVV(ヴィエイユ・ヴィーニュ)表記のシャンベルタン。
自分の経験の浅さから、通常のそれとの違いはわかりませんが、古木の方が根が深い一方、収穫量が落ちるので、濃い味わいの葡萄が取れるようです。例えるならスープの出汁をとる老鶏みたいなものでしょうか。

セットだった2本のうち、格的にはこのシャンベルタンの方が上と思われる構成。
ワインに明るい知人曰く「(シャンベルタンのほうは)そこそこだね」とのこと。まあこれが1本2000円台の価格帯で手に入るなら文句はないのですが、2本で10800円は、幾らブルゴーニュを代表する2地区のそれとは言え強気すぎじゃないの伊勢丹さん?という、ギフト故の見えない何かが付与されているワインでもあります。


濃くありながらくすみのない色合い。硬さはありますが、香味とも比較的整っていて、単体でもなんだかんだと飲めてしまう。
合わせるなら、生ハムなどの肉類より、ブリーやカマンベールといったチーズとの相性が良いように感じました。

さて、ブルゴーニュで最も有名と言われるシャンベルタンのワイン。ぐぐって頂ければそれを紹介するサイトはいっぱいでてきますので、その特徴については専門のサイトを参照して頂くとして。。。その感想は、一言で沼ですね。
様々なこだわりのある作り手と、異なる土壌の特性が、フレッシュなベリー感のあるものからどっしりと男性的な長熟向きのワインまで、素晴らしいワインを多く生み出してきた歴史があり。ウイスキー好きでベリー系の風味が琴線にある方は、まさにこの地方で良いものを飲むと沼にハマって しまうだろうなと感じます。

ただ、既に高い評価とブランド価値のある地域でもあり、良いものは手を出せないほど高騰している状況。「無名のものでもそれなりな作り手もいますよ」なんて話も聞きましたが、踏み込むには相応の覚悟と軍資金が必要で、さながらそれは、この地方のワインを愛したナポレオン のごとく。。。

勿論自分にはそんな覚悟はないので、今年はイタリアやカリフォルニアあたりのワインを適度に楽しんで、ウイスキー好きの寄り道的な選択肢に紹介できればと思っています。

セニョーリ ダルセロ コートドボーヌ ヴィラージュ 12.5%

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SEIGNEURIE D'ARCELOT
COTE DE BEAUNE-VILLAGES
De Aureo Sprito Collection 
2014
750ml 12.5%

透明感のある色合い。ベリー系の酸味や加水柘榴ジュース、軽いタンニン、赤い花を思わせる繊細な香り立ち。
口当たりは軽め、中間は少々平坦で単調気味、ほのかに蜜っぽさ。序盤に感じたドライクランベリーなどの果実味が、余韻で葡萄の皮を思わせるタンニン、苦味へと繋がって重さが残る。

まるで皮ごと絞った葡萄ジュース。30分ほどの時間経過で酸味が強くなり、アンバランスに。
ベーコンや甘辛く味付けた肉類との相性が良く、むしろその手の食事と合わせることを前提としたようなワインで、単品では飲みやすいが少々飽きがくる味わい。


伊勢丹がギフト向けに展開している、ブルゴーニュワイン飲み比べセットのうちの1本。主要品種はおそらくピノ・ノワールで、ひょっとしてガメイも使ってませんか?というニュアンスも。

中身はアウレオ・スピリットという古典的な製法普及グループの一員であるダルセロ氏が選定しているワインの一つ。。。らしいのですが、私のようにウイスキー側の人間にして見れば聞いたこともなく、一般の方ならなおのこと。まあウイスキーでもこういう誰?(もしくは何?)ってブランドありますし、そういうものだと思って話を進めます。

赤ワインにおいて、ウイスキー好きの好みにヒットする要素にベリー系の香味があり、ベリー系と言えばブルゴーニュでピノ・ノワール種は避けられません。
今回のヴィラージュ表記のコートドボーヌは、ブルゴーニュ地方の同地区において2つ以上の村のワインをブレンドしているもので、格付けとしては単一ワイナリー→コートドボーヌ表記→ヴィラージュ表記で一番下なのですが、まあ単一だろうが混ぜてようが、問題は味です、味。

(伊勢丹のワインギフトセット。もう片方は村名ジュヴレ・シャンベルタン。重口のワインで異なる飲み口のワインを楽しむセットとのこと。)

それにソコソコのお値段がつけられている飲み比べセットなので、そう悪いものは混ぜてないだろうと、期待しないまでも警戒もしていない予想だったわけですが。 
他方で「近年のブルゴーニュは屍の広がる荒野、打率の悪さに殺意を覚える。特にセール品のボトルに安ウマなんて期待するな。」というのがワインにも明るいウイスキー仲間達の言葉にあり。
その点、今回のボトルは決定的に悪いわけではないものの、全体的にフレーバーの質が軽く単調気味で、それでいて飲み終わった後で妙な重さが口の中に残るので単品では飲み飽きてくる。ウイスキー好きに勧めるワインとも、想定される値段通りのレベルがあるとも言い難いボトルでした。

それにしても伊勢丹の担当者はなぜこのワインを選んだのか。万人向けの味といえばそこまでですが、単にシャンベルタンの方に予算を取られたのか、異なる飲み口という飲み比べに比重が置かれただけなのか。
テイスティングの通り食事と合わせると足りない中間部分の厚み、複雑さが補足されてそこそこ楽しめるので、これはそういうワインなのかもしれません。

羽生蒸留所 伊知郎 2000-2014 三越伊勢丹 58.5%

カテゴリ:
羽生蒸留所伊知郎2000
ICHIRO
HANYU DISTILLERY
Aged 14 years
Distilled 2000
Bottled 2014
Cognac Cask Finish
700ml 58.5%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:個人宅@TWD氏
時期:不明
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:ツンとしたハイトーンなアルコール感に、ナッティー、キャラメルアーモンド、微かに杏子を思わせる酸味を伴うウッディなアロマ。

味:パワフルな口当たり、香り同様酸味のあるウッディネス、松の樹皮、焦げたキャラメル、アタック強く余韻にかけて強い渋みとアルコール感。
ウッディーな苦味を伴うハイトーンでスパイシーなフィニッシュ。

荒削りでハイトーン、酒質的には重いというより中間がクリアで鋭く強いイメージ。多彩さがあるタイプでは無いが、そこに上乗せされた樽感が無骨でジャパニーズらしくもある。ストレート、または少量の加水で。
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三越伊勢丹が同デパート向けにボトリングしたオリジナルボトル、2本のうちの1つ。もう1本の1991については先日記事にさせていただいたところで、今回は残る2000年蒸留となります。

ベースとなった原酒は活性系のバーボン樽熟成か、シェリー樽のような濃さはなく、そこにコニャックカスクでのフィニッシュ。飲み口で感じられる酸味がらしさ・・・かもしれませんが、全体的にコニャックカスクの影響は控えめで、アタックの強い酒質に焦がした樽感という構成になっています。飲みごたえのある感じですね。
個人的にはもうちょっと甘み、奥行きが欲しくもありましたが、さらに樽感が強くサルファリーな1991より、こちらのほうが素直に羽生らしさも樽感も楽しめるように思います。
ジャパニーズウイスキー、まして地ウイスキーのように温度管理まで通常手が回らないような熟成環境にあっては、10~15年前後くらいのほうがちょうど良い熟成感に仕上がるのかもしれません。 

ちなみにこの当時、2000年代は既に肥土伊知郎氏がサントリーから東亜酒造に戻り、ウイスキー製造に関わっていた時期になります。
羽生の原酒は1980、1990年代に比べて2000年代はアタックの強さは変わらないものの、癖が少なくクリアな傾向にあるという印象があります。
ウイスキー冬の時代にあって時代に合わせようとされたのか、原料等の品種の変化によるところか、今の秩父につながる味わいとして考えると中々面白い指標とも感じました。

羽生蒸留所 伊知郎 1991-2014 三越伊勢丹 54.1%

カテゴリ:
羽生蒸留所伊知郎1991
ICHIRO 
HANYU DISTILLERY
Aged 23 years
Distilled 1991
Bottled 2014 
Cask type Madeira #1386 
700ml 54.1%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:個人宅@TWD氏
時期:不明
暫定評価:★★★★★★(5-6)

香り:淡くサルファリーな煙っぽいニュアンス、樽香強くウッディで熟成した梅酒のような酸味、黒砂糖、若干の植物感を伴う。

味:かりんとうのような甘みと香ばしさ、スパイシーで徐々にサルファリー。樽由来の香味は香り同様に濃く、リッチな味わい。
余韻はほのかな酸味とローストアーモンド、樽由来の苦みやえぐみが強く残る。

やんちゃというか、アンバランスというか、ジャパニーズらしい強い樽感が特徴的。酒質としても度数以上にアタックが強く、酸味を伴うアロマが甘みとともに樽由来の香味で後押しされ、羽生らしさとして感じられる。 
開封後数年単位で時間が必要。加水は硫黄が強くなる傾向があり、ストレートで。


三越伊勢丹限定品で2014年に発売されたイチローズモルト、羽生のマディラカスク。下の写真にあるように、2000年蒸留のコニャックカスクと共にリリースされ、2組の翼が対を成す、美しいデザインのボトルです。
当時はジャパニーズウイスキーブームが一気に拡大した時期、特に大陸方面からの買い付けが増えた時期でもあり、コレクターズアイテムとしての側面もあったと記憶しています。

また今回のリリースに限らず、羽生蒸留所からは、シェリー、バーボン、コニャック、マディラ・・・他のメーカーと比べても多様な樽が使われており、当時どのような考えでこうした樽を調達し、熟成に使っていたのか興味深くもあります。

ISETAN伊知郎

テイスティングで触れた「ジャパニーズウイスキーらしさ」は、酒質のフレッシュさに対して強く出がちな樽の影響、その両者によるバランスです。
同じ熟成期間を経たウイスキーでも、ジャパニーズのほうが短い期間で総じて強く樽の影響を受けている印象があります。
しかし、ジャパニーズウイスキーはスコッチウイスキーの流れを汲むもの。スコットランドと何が違う事でそうした影響が出るのかとすると、それは「温度(気温)」にあると考えています。

例えばこのカスクに限らず、近年リリースされた羽生蒸留所の原酒はほぼ全て、羽生で1度熟成された後、福島県郡山市の笹の川酒造の貯蔵庫に移され、そこで5~6年程度の時間をすごし、さらに今度は秩父に戻るというプロセスを経ています。
気象庁で過去の統計データを見てみると、羽生市のすぐ傍、気象台のある熊谷では2000年時、最高気温39.7度を9月に記録(最低気温は2月にマイナス4度)。スコットランドの平均気温を見ていただければ違いは一目瞭然、日本の方が全般的に高い温度環境の中で熟成されていたことがわかります。 

熟成のメカニズムでは、気温が高くなると樽材が膨張するため、寒い時期と比較して圧倒的にエキスが出ます。あまりに出すぎて、えぐみ、タンニンが強くなりすぎることも珍しくありません。
また、熟成はエキスだけで成り立つものではなく、寒さも必要です。低音環境下では樽材が縮み、これにより樽が呼吸するとされる条件が整うだけでなく、ウイスキーそのものも温度による体積の膨張、縮小、アルコールなどの揮発を繰り返していきます。
ウイスキーの熟成は"樽の呼吸"を伴うものであり、寒暖の差が大きいほうが熟成が早いとされるのは、こうした経緯によるわけです。

一方で気温の変化が比較的安定して、かつ冷温な環境下で長期間熟成させるほうが、分子の結合(あるいは樽材の縮小により産まれる微細な隙間)によりアルコール感が落ち着きやすいとする説もあります。
日本のクラフト系のウイスキーの大半は、羽生のようにツンとしたアルコール感と強い樽香が特徴的と感じるのは、こうした熟成環境によるところもあるのではないかと考えると、スコッチウイスキーとのスタイルの違いと環境の整合が取れるなと感じています。

ちなみに、この羽生の原酒は2004年頃に笹の川酒造の熟成庫に保管場所を移したわけですが、郡山市の気温は羽生市に比べると低く、しかし寒暖差という点では大きい傾向にありました。
怪我の功名というか、ポジティブな経緯ではないものの、これらの背景を考えれば、福島での熟成はそれはそれで価値のあるものだったのではないかと思えてきます。

先日、ブラインドで羽生のモルトを出題したところ、ハウススタイルついでにそんな話をする機会がありましたので、こちらでも自分の考えをまとめさせて頂きました。

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