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EXTRA NIKKA
NIKKA WHISKY
Finest Malt Pot Still
1960"s
640ml 37%

グラス:木村硝子
量:30ml程度
場所:自宅
時期:開封後1ヶ月程度
評価:★★★☆(4)

香り:微かにスモーキーで乾いた穀物を思わせる香ばしさのある香り、ほんのりと甘み。それ以外はクリアでほとんど香りが立たない。まるで甲類焼酎や刺激の少ないウオッカのよう。

味:少しピリッとした刺激と水アメを思わせる甘さ。焼き芋のような香ばしさも感じる。中間はべったりとして変化に乏しい。余韻は弱く、微かに乾いた穀物っぽさを感じた後ですっきりと消える。

ハイボールにすると異常にすっきりとした飲み口で、アルコールも感じない、余韻で微かにブラウンシュガーの甘み。
ウイスキーというよりただただ飲みやすいお酒、ジャパニーズウイスキー黎明期の味。
通称"丸壜ニッキー"の名は、ニッカウイスキーファンか、あるいは竹鶴政孝関連の書籍を読まれたことがある人なら、一度は目にした事があると思います。
1950年代、日本で激化したとされる"2級ウイスキー商戦"で、当時の弥谷副社長が発売を提案したのが丸壜ニッカ(丸壜ニッキー)です。
価格を下げて容量は増やす。目先の利益ではなく数年先の利益を見込んだ商法で、販売及び収益増に繋げ、ニッカウイスキーの基盤を築いたというストーリーは、ニッカの社史を語る上では外せないエピソードの一つと言えます。

前置きが長くなりましたが、その後1962年、酒税法の改正により2級ウイスキーの原酒の混和率が0〜10%(旧税法では0〜5%)に引き上げられたことを受け、後継品としてリリースされたのが、今回のエキストラです。
ラベルにある「Finest malt pot still」や「Guarantued matured in wood」など、現在には見ない記載に加え、「NO METHYL ALCOHOL」という戦後の酒業界を伺い知ることが出来る表記に、ロマンと 時代を感じます。

当時の発売広告をみると、原酒をたっぷり入れて、さらに美味しくなったということが書かれています。
とはいえ、上限ギリギリまで入っていても残り90%は水やブレンド用アルコール。飲んでみると香味は弱く、奥行きも少ない。申し訳程度に原酒の香味が感じられると程度で、あくまでウイスキーに馴染みがなかった当時の市場のための商品であることが明確に伝わってきます。

つまり、嗜好品として香味を楽しむというより、飲みやすく、気持ちよく酔うためのアルコール的な位置付け。それを裏付けるかのようにハイボールで飲んだ時の飲みやすさはとんでもなく、まるで「まろやかな水」のように炭酸の刺激とともに口の中に入ってきます。
ボトリングから半世紀以上、経年による変化もあるとは思いますが、何もなさすぎて逆に違和感を覚えるほどでした。


余談ですが、丸壜ニッカの発売とほぼ同時期に、今年60周年を迎えたブラックニッカもリリースされています。
丸壜ニッカは2級であるのに対して、ブラックニッカは特級規格で発売され、「これぞ日本洋酒界の代表!」と、価格も内容も高級路線でした。
対する丸壜ニッカはその後のブランド編成の中で姿を消しますが、現在販売されているブラックニッカクリアブレンドに、その姿を見るように思います。

画像引用(エキストラニッカ広告):https://www59.atwiki.jp/nikka/sp/pages/305.html