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グレンマッスル No,7 NAGAHAMA BLEND 56.2% 発売情報とスペースの告知

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GLEN MUSCLE
No,7 "Episode 1/3" 
NAGAHAMA BLEND 
Peated Malt Japanese Whisky & Scotch Whiskies 
Aged 3 to 30 years old 
700ml 56.2% 

評価:★★★★★★(6)

香り:エステリーでスモーキー、焦げた木材、石炭のような香ばしさ、焦げ感を伴うピート香に、パイン飴のような人工的な要素も伴う黄色系のフルーティーな甘さと、鼻孔を刺激するドライなアタック。スワリングすると蜜入りの林檎、あるいは蜂蜜のような粘性をイメージする要素もあり、時間経過で馴染んでいく。

味:香りに反して柔らかい口当たりから広がる、骨格のはっきりした酒質。 アメリカンオークに由来するバニラ、黄色系フルーツ、そして酒質由来のエステリーさとフルーティーでケミカルな甘み。ピーティーでスモーキーな含み香。微かに海苔のような海藻を思わせる要素。余韻はオーキーな華やかさとほろ苦いピートフレーバー。麦芽風味の包み込むような柔らかさが、鼻孔に抜けるスモーキーさを残して穏やかに消えていく。

エステリーでフルーティーでスモーキーなブレンデッド。スモーキーフレーバーはライト~ミディアム程度で、強く主張せず香味の複雑さに繋がっている。注ぎたては少しばらつくような印象もあったが、グラスの中で加速的に馴染み、開いていく。多様な原酒を用いたカスクストレングスのブレンデッドの特徴とも言える変化であり、こうしたリリースの醍醐味と言える。
少量加水するとケミカルな甘さ、アメリカンオーク由来の熟した洋梨、微かにトロピカル要素を纏った香味がスモーキーフレーバーよりも前に出て、よりフルーティーな味わいへと変化する。

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長濱浪漫ビールから、2021年7月1日に発売される予定のグレンマッスル第7弾ブレンデッドウイスキー。グレンマッスルとは何か、についてはもう説明不要ですね。美味しいだけでなく、尖った面白さのあるウイスキーをコンセプトに、今回のリリースも監修・協力させて頂きました。

No,7の構成原酒は
・長濱蒸溜所で蒸留、3年熟成を経たピーテッドジャパニーズモルトウイスキー。
・スコットランドから調達した、20年熟成のグレーンウイスキー。
・同じくスコットランド産の10年~30年熟成のモルトウイスキー。
レシピを監修するにあたり、長濱蒸溜所から提供頂いた10種類以上の原酒の中からこれらを選定し、ブレンド比率を模索。表記や価格設定から、若い原酒やグレ―ンの比率が多いのではないかと思われるかもしれませんが、長濱モルトを軸に、20年熟成以上の原酒は全体の約半分。モルト比率も75%と、リッチな構成になっています。

※ご参考
本リリースの販売は、以下、長濱浪漫ビールオンラインショップにて行われます。
発売日:2021年7月1日 12:30~
価格:14850円(税込み)
ボトリング本数:200本
URL:長濱浪漫ビール オンラインショップ | (romanbeer.com)

※ご参考2
リリースに先立ち、メンバーによるtwitterスペースでのグレンマッスルNo,7に関する配信を行います。
開催日時:6月23日22:00~23:00
ホストアカウント:@koutetsuotoko
※スピーカーはメンバーに限りますが、質問時間は設定させて頂きます。DM等で質問頂いても問題ありません。


今回のリリースの特徴は、なんといっても3年熟成のジャパニーズウイスキーと、最長30年熟成のスコッチウイスキーという、異なる地域における熟成年数最大10倍違いの組み合わせです。情報がオープンになっている日本のリリースとしては、最も幅広い組み合わせのブレンドではないでしょうか。(非公開のものを含めるとわかりませんが。)
かつてはジョニーウォーカーブルーラベルや、フェイマスグラウスに見られたXX to XX years 表記を用いるのは、目指すブレンドの方向性示すため。原酒の組み合わせとしては、現時点では日本だからこそ実現できるものとも言えます。

中でもキーモルトである長濱モルトについては、我々から長濱蒸溜所に「是非使わせてほしい」と、お願いしていたもの。そのため、まず活かしたかったのは長濱モルトの個性です。多少若い要素はあるのですが、3年熟成とは思えない口当たりの柔らかさと、創業初期の原酒に比べて骨格のはっきりとした麦芽風味、柑橘、そしてじわじわと主張を強くするピートスモーク。熟成に使われた樽は、アイラ島の某蒸留所で使われていたクォーターカスクであり、まさに聖地からのギフトとして、ピートフレーバーをより複雑なものにしてくれている、将来が楽しみな原酒です。

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この原酒に対して何を合わせていくか。難しいのは、単に熟成年数が長い原酒を混ぜれば美味しくなるというわけではないことです。
例えばグレーン。前回のリリース(No,6 Nicebulk‼)で追いグレーンとして使った、38年熟成のグレーンも選択肢としてはあったのですが、この長熟グレーンはウッディなフレーバーが強く、色濃くメローな甘みもしっかりあるタイプで、少量でも全体のバランスに作用してしまいます。単体で飲んだり、”追い”で使うなら良いのですが、ブレンドの繋ぎとして必要な量を使うと、モルトの個性を潰してしまうだけでなく、ウッディさが目立って余韻が苦くなってしまうのです。

一方で、今回使用した20年熟成のグレーンは、単体ではそこまででもないのですが、適度にドライ、エステリーでフルーティーな甘みもあり、ウッディさも目立たない。潤滑油として実にいい仕事をしてくれました。
モルトも同様で、30年熟成のスコッチモルトは、ハイランドモルトの乾いた牧草や麦芽を思わせる垢抜けないキャラクターの中に、好ましいフルーティーさのある穏やかなタイプ。これも使いすぎるとメリハリのない味わいになってしまいます。あえて10年~30年という幅を持たせた組み合わせにしているのは、1番から9番まで4番打者を揃えるのではなく、逆に価格ありきで若い原酒を大量に使うのでもなく。適材適所で、主役を引き立てるために適切な分量で使っていくことが、多層的でバランスの取れた味わいを作るために必要だったのです。

こうして仕上がったブレンドを改めてテイスティングすると、3年の長濱原酒の個性を活かすというコンセプトもあるのですが、30年熟成を中心に、スコッチモルトにあるフルーティーな個性を長濱モルトの若さ、しっかりとした骨格で支えるような、2つのコンセプトが見えてくる味わいに仕上がったように感じています。
また、そこに合わさるスモーキーフレーバーも香味の複雑さに一役買っており、ブレンデッドウイスキーだからこそ造れる味わいの醍醐味に通じていると言えます。
若い原酒の良さ、長期熟成原酒の良さ、それぞれのネガ要素を打ち消して、良い部分を伸ばす。今回リリースするうえで、理想としたブレンド像に近づけることが出来たように思います。

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(左から、30年熟成スコッチモルト、38年熟成、20年熟成スコッチグレーン。ラベルは上の長濱3年も含め、テストプリントの名残。)

以上、今回も様々な原酒をテイスティングしましたが、ブレンドに使うだけではもったいないと感じた原酒が2つありました。
我々はその原酒をブレンドにおけるキーモルトとしつつ、あえてそのままでリリース出来ないかと考え…例によって長濱さんにワガママを言い(笑)。
サブタイトルとなっているNo,7 Episode 1/3は、グレンマッスルNo,7が3部作であり、今後は先の構成原酒を用いたリリースが2種類予定されていることを意味しています。リリース本数、時期についてはまだ正式に確定していませんが、飲み比べることでブレンドの奥深さと楽しさを一層感じて頂けるのではないかというのが、今回のGLEN MUSCLE No,7を通じた狙いでもあるのです。


最後に、今回のラベルは古典的なボトラーズリリースのデザインをイメージして仕上げました。
GLEN MUSCLEのラベルづくりは、方向性を決めるため、いくつか異なるデザインコンセプトで案を作り。そこから選ばれた案の中で複数パターン作り、何れも関係者間のアンケートで最終的なラベルを決定しています。
今作も方向性として案1,2,3と作ってみたのですが、一番手間のかかった案2が「バーボンっぽい」として一番不人気だったのが、いかにもデザインの世界らしいなぁと感じる出来事です(笑)。

そして最後はテストプリントを繰り返し、実際に張り付けて外観をチェック。前作は蒸留所側とのやり取りが不足し、これが不十分でアンバランスな感じになってしまいました。ボトルは曲面なので、貼り付けてみてみると微妙にバランスが変わるんです。
こうして調整しては印刷し(カラープリンタ無いので近所のコンビニで)、セットとなった今回のラベル。ポットスチルの画像は、勿論長濱蒸溜所のものです。内外とも悩んで、苦労して、形になったものを飲む喜び。評価は自画自賛しても仕方ないので参考程度に★6としていますが、こればかりは何物にも替えられない達成感がありますね。

ブレンド監修では、長濱浪漫ビールさんに今回も本当に色々わがままを言って、無理を聞いて頂きました。改めて皆様に感謝申し上げます。
そして7月1日の発売後は、愛好家各位が本リリースを手に取って頂ければ幸いですし、あるいはBAR等でのテイスティングで楽しんでいただけたら、関わらせて頂いた一人として嬉しい限りです。

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※補足:リリースの監修にあたり、メンバー全員が監修料や販売金額の一部といった報酬の類は一切受け取っていません。また、本ボトルに関しても、一般ユーザー同様通常価格で長濱浪漫ビールから購入しております。

三郎丸蒸留所×長濱蒸溜所 日本初のクラフトブレンドが実現

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先日、ジャパニーズウイスキーの基準発表に関連し、三郎丸蒸留所の声明を紹介させて頂きました。内容に関して賛同する意見がSNS等で多く見られ、また同時に原酒交換によって実現する”クラフトジャパニーズブレンド”への期待も高まっていたところ。
そのわずか10日後。三郎丸蒸留所、そして長濱蒸溜所から、早くも原酒交換によるコラボ企画「日本初のクラフトブレンデッドウイスキー」の発表がありました。

複数の蒸留所が連携して企画し、同時にプレスリリースまで行う。これまで日本の蒸留所には見られなかった動きにワクワクしてしまいます。
自分はどちらの蒸留所も、創業初期(三郎丸蒸留所はリニューアル後)から毎年見学させて貰っているだけでなく、オリジナルリリースでの関わりもあり、他の愛好家よりも近い関係にあると言えます。
後日、レビューも掲載したいと思いますが、今日はわかる範囲で今回のリリースに関する情報をまとめ、紹介していきます。


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リリースは写真左から
長濱蒸溜所 INAZUMA
ブレンダー:長濱蒸溜所 屋久佑輔
・BLENDED MALT JAPANESE WHISKY "SYNERGY BLEND" 47% 700本
・WORLD BLENDED MALT WHISKY "EXTRA SELECTED" 47% 6000本
※プレスリリースはこちら

三郎丸蒸留所 FAR EAST OF PEAT
ブレンダー:三郎丸蒸留所 稲垣貴彦
・"FIRST BATCH" BLENDED MALT JAPANESE WHISKY 50% 700本
・"SECOND BATCH" BLENDED MALT WHISKY 50% 5000本
※プレスリリースはこちら

※販売は3月30日から、両蒸留所が運営するオンラインショップ並びに関連酒販等で行われます。
なお、FAR EAST OF PEATのBatch1、IZUNA2本セットが3月8日から14日まで抽選受付となっています。詳細は各社の酒販またはメールマガジンなどを参照ください。



■ブレンデッドジャパニーズウイスキー2種
INAZUMAは、長濱蒸溜所のノンピートモルトと、三郎丸蒸留所のピーテッドモルトを使用(どちらもバーボン樽熟成)。
FAR EAST OF PEATは、三郎丸蒸留所のヘビーピーテッドモルト(バーボン樽熟成)と、長濱蒸溜所のライトリーピーテッドモルト(アイラクオーターカスク熟成)を用いたものとなります。

使われている日本産原酒の蒸留時期は、双方とも2017年で、熟成年数は3年強と言うことになります。
つまり3年熟成のブレンドモルト?と感じるかもしれませんが、どちらも2020年にリリースされたシングルモルトは若さを感じさせない仕上がでした。また、2017年蒸留の長濱モルトは柔らかく穏やかな風味、三郎丸モルトはヘビーで広がりのある風味で、系統は異なるものの、どちらの酒質も共通してブレンドで馴染みの良さを感じる点があり、若いから…という思い込みは早計と言えます。

INAZUMAの組み合わせはノンピートとピーテッド。ノンピートでバーボン樽熟成の長濱モルトは、麦の甘さ、オーク樽由来のフルーティーさが酒質の柔らかさと合わさって穏やかに味わえるタイプであり、それがピーティーさがメインの三郎丸モルトのパワーを包み込む、足りない部分を補うような仕上がりが期待できます。
またFAR EAST OF PEATが使っている長濱のモルトは、アイラクォーターカスク熟成ということで、実物も見たことがありますが、これはラフロイグ蒸留所のもの。麦芽の甘みとスモーキーさに加わる、アイラ由来のフレーバーの一押し。。。この競演がどのようなシナジーを生むのか、実に楽しみです。

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(今回のブレンドに用いられた原酒は、両蒸留所ともアップデートが施される前に仕込まれたものである。例えばポットスチルは、三郎丸は旧世代のスチルを改修したもので蒸留されている。長濱は現在より再留器が小型で、スチルの数も異なる。詳細は以下対談企画を参照。)

■ワールドブレンデッド2種について
今回の企画では、どちらのブランドにも輸入モルト原酒を使った、ワールドブレンデッド仕様がラインナップされています。
振り返ってみると、三郎丸蒸溜所はムーングロウで、長濱はアマハガンで、それぞれWorld Whisky Awardで部門受賞を経験するなど、自社モルトとバルク原酒を使ったウイスキーについても評価されているのです。

個人的に、オリジナルリリースの関係で両蒸留所の保有する原酒を飲む機会を頂いてますが、それぞれ異なる企業、蒸留所から調達されているもので、国内での追加熟成も経て全く違う素材としてブレンドに作用すると感じます。
両ブレンダーが目指す方向性の違いも含め、一体どんな味わいになっているのか。これまでのウイスキーシーンにはなかったユニークな試みであり、個人的にはこのワールドブレンド仕様の仕上がりに、密かに期待しています。

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(長濱、三郎丸両蒸留所で関わらせてもらったオリジナルブレンデッド。どちらの蒸留所にも自前、輸入で様々な原酒があり、品質も一定以上が担保されている。)

■両蒸留所のウイスキーと造り手の想い
三郎丸蒸留所、長濱蒸留所については、酒育の会のLIQULにて特集対談記事が公開されています。
偶然ですが、長濱蒸留所編の公開は、まさに本日からです。
今回のリリースをきっかけとして、両蒸留所に興味を持たれた方は、ぜひ以下の記事も参照いただければと思います。
創業から現在に至るまで、どのような変化があったのか、目指すハウススタイルや、造り手の想いなど、対談形式でまとめています。

【ジャパニーズクラフトウイスキーの現在】
Vol.1 三郎丸蒸留所編:https://liqul.com/entry/4581

Vol.2 長濱蒸留所編:https://liqul.com/entry/5209

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※自画自賛気味ですが、WEB公開されている記事の中では両蒸留所の情報を一番網羅している記事だと思います。

今回のリリースは、冒頭述べたようにジャパニーズウイスキーの基準制定を受け、三郎丸から原酒交換に取り組むという発表があった矢先のことでした。「いやいや、動き早すぎでしょ」と感じた方も少なくないのではないでしょうか。

実は、今回の企画の発起人と言える三郎丸蒸留所の稲垣マネージャーは、それこそ蒸留所をリニューアルして再稼働させた時から原酒交換のプランを持っており、他の蒸留所の見学や情報交換を行うなど、基準が形になる前から動きを進めていました。
私もクラフトウイスキー間の連携推進や、グレンマッスルでのジャパニーズブレンド構想があり、お互いに何が出来るか話をする中で、今回の一件もそういう動きがあると伺っていました。

鶏と卵の話ではありませんが、ジャパニーズウイスキーの基準に関する話を受けて原酒交換が動いたというよりは、ブレンドづくり含めて準備を進めていたところ、今年に入って唐突に動きがあり「いつやるの?今でしょ!」と、両蒸留所がリリースにGOサインを出した。という流れであるようです。
ですがその前後関係は些末なこと。これによって原酒交換の前例が出来、ノウハウも両蒸留所にあることになります。蒸留所として今後も取り組みを進めていくことに変わりはなく、むしろ各社にとっても追い風となる実績が作れるのではないかと期待しています。

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長濱蒸留所の屋久ブレンダーと、三郎丸蒸留所の稲垣マネージャー(兼ブレンダー)は、両蒸留所の距離が他の蒸留所に比べて離れていないこと、長濱蒸留所は規模が日本最小、三郎丸蒸留所は生産量が日本最小で、お互いに小さな蒸留所であることなど、何かと繋がりを感じるところがあり、意見交換をしてきたそうです。
例えば長濱蒸留所の原酒で、ある仕様が2018年頃から変わったのですが、それは稲垣さんのアドバイスからだったという話も聞いたことがあります。

詳しくは、ボトル購入特典となっている両ブレンダー対談動画で語られると思いますのでここでは伏せますが、こうして造り手同士が繋がって、お互いに品質を高めていく。
日本のウイスキーのルーツたるスコッチウイスキーは、大手メーカーと中小メーカーの共存共栄から発達してきた歴史があります。日本ではこれからクラフトを中心にそうした動きが出て来ればと、今回のリリースを第一歩とした動きに期待してなりません。

先の基準は、海外市場で既に反響を呼んでおり、ひょっとすると業界が想定していた以上の影響が今後出てくるとも考えられます。
そうして考えると、日本のウイスキー業界は、新しい時代に突入したと言えるのではないでしょうか。
新時代におけるクラフトウイスキーの魅力とは何か、そして市場を取るための計画は如何に。単に作れば良いだけではなく、大手との違いは何か、強みはどこにあるのか。必ずしも原酒交換だけが選択肢ではありません。
例えば蒸溜所がある地域のシェアだけは絶対に抑えると、地域限定ボトルのリリースというのもあるでしょう。厚岸蒸留所のような●●オールスターを作るというのも1手です。
基準に加え、今回のコラボレーションリリースが呼び水となって、クラフトウイスキー(自社ウイスキー)のさらなる魅力を、各社が考えていくようになるのではないかと思います。

規制下での創意工夫から、新たな付加価値が生まれるのは、産業界で数多起こってきた出来事の一つです。まずは今回のリリースを楽しみにしたいところですが、ここからのジャパニーズクラフトウイスキー業界の動きにも注目していきたいですね。

※関連記事:
三郎丸蒸留所 ニューポット2020 アイラピーテッド&ヘビリーピーテッド 60% +蒸留所からの意思表明 
「ジャパニーズウイスキーの表示に関する基準」に潜む明暗
ウイスキーにおけるジャパニーズウイスキーの表示に関する基準(日本洋酒酒造組合)


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ニッカ セッション 43% ブレンデッドモルトウイスキー

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NIKKA WHISKY
SESSION 
Blended Malt Whisky 
700ml 43% 

グラス:SK2、木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅(サンプル)
時期:開封後1週間程度
評価:★★★★★(5-6)

香り:ほのかに乳酸系の酸を伴う、ケミカル様な香り立ち。プレーン寄りのオーク香と乾いたウッディネスに、微かにドライオレンジ。焦げたようなモルティーさとピート香が混じる。

味:香り同様の構成。口当たりは酸味を帯びたケミカルなフルーティーさ。モルト100%だけあって、コシのしっかりした味わいに、多少ギスギスとした若い要素もあるが、モルト由来の甘みと加水で上手く慣らされている。後を追うようにほろ苦く香ばしいピートフレーバーが広がり、乾いた樽香を伴って余韻へ続く。

プレーン寄りの樽感に、ベンネヴィスと若めの新樽熟成余市という印象を受ける構成。若さを目立たせず、現在の相場を考えたら上手くまとめている。レシピ上は宮城峡や他の輸入原酒も使われているのだろうが、前述2蒸留所の個性が目立つため、残りの蒸溜所(原酒)は繋ぎと言える。余韻にかけての焦げたようにビターなスモーキーフレーバーは余市モルトの特徴。ベンネヴィスの特徴についてはもはや触れる必要はないだろう。前述の通り樽感がプレーン寄りなので、ハイボールにすると面白い。

(今回はサンプルテイスティングのため、画像は友人が撮影したものを借りています。Photo by @Bowmore80s)

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9月末にニッカからリリースされた新商品。ブラックニッカの限定品ラッシュの印象が強くて意識していませんでしたが、新ブランドの立ち上げは実に6年ぶりとのことです。
今年3月には看板商品である竹鶴ピュアモルトが終売&リニューアルしており、2020年はニッカにとって2015年以来の大きな方針転換を行った年と言えます。

特に大きかったのが、「竹鶴ピュアモルト」のブレンドレシピの変更だと感じています。
これまでは「ベンネヴィス」が使われていると噂されていた、ソフトでケミカルな、フルーティーなフレーバーの混じる構成を見直し、香味の上では100%、あるいはほぼ余市と宮城峡の組み合わせと思える、全く異なる味わいにシフトしてきたのです。

そしてその後、間を置かず発表されたのが、今回のレビューアイテムである「ニッカ・セッション」。ニッカウヰスキーとしてはおそらく初めて、ベンネヴィス蒸留所の原酒が使われていることを、公式にPRしたリリースです。

発売発表直後、飲まずして「つまり旧竹鶴ピュアモルトでしょ」と思った愛好家は、きっと自分だけではなかったと思います。しかし上述のとおり竹鶴ピュアモルトがリニューアルして香味が変わっており、使われなくなった原酒はどこに行くのかというところで、”華やぐスコティッシュモルトと、躍動するジャパニーズモルトの競演”なんてPRされたら、考えるなと言うほうが無理な話でじゃないでしょうか(笑)。

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(左から、ニッカ・セッション、竹鶴ピュアモルト、旧竹鶴ピュアモルト。)

ただ、当たり前な話ですが、ニッカ・セッションは旧竹鶴ピュアモルトのレシピをそのまま持ってきたようなブレンドではありませんでした。
上の写真で色合いを見ても、その違いは明らかですね。
先日、LIQULのコラムRe-オフィシャルスタンダードテイスティング Vol.8で、竹鶴ピュアモルトとセッションを特集した際にまとめさせてもらいましたが、旧竹鶴ピュアモルトと新作2銘柄の間ではっきりと線が引かれた、過去との違いを明確にしたレシピだとも感じています。

下の表はレシピというか、味わいから感じた銘柄毎の各原酒の個性の強さを、主観でまとめた個人的なイメージです。
あくまで主観なので、実際のレシピで使われている分量とは異なると思いますが(例えば、宮城峡のようにソフトな原酒は量が多くても目立ちにくい)、ポイントはピーティーな余市モルトの利かせ方だと考えています。
旧竹鶴ピュアモルトでは淡い程度だったその存在が、新作2銘柄では最近の余市に見られる、あまり樽の内側を焼いてないような新樽の香味に、ピーティーで香ばしいモルティーさが合わさり、特に余韻にかけて存在感を発揮して来ます。

主観的分析

ベンネヴィスは、わかりやすいいつものケミカルっぽさのある個性。中にはピーティーな原酒もありますが、余市のそれとはキャラクターが大きく異なります。
その余市のピーテッドモルトの使い方で、これぞニッカという分かりやすい個性があるのは、輸入原酒の有無に限らず、ニッカの原酒が使われているという、明確なメッセージを発信しているように思えてきます。

それは、2銘柄を新たにリリースした理由にも繋がるものです。
原酒不足対応、将来を見据えた計画、流通量の安定化・・・様々な要因が説明されてきましたが、違和感はこのセッションのリリース。リニューアルした竹鶴ピュアモルトの出荷本数は年間30000ケースと旧時代と比較して相当絞ってきた中で、セッションの初年度は様子見で50000ケースです。
本当に原酒が足りないなら、宮城峡より生産量が少ない余市モルトをセッションに回す(少なくとも旧竹鶴よりは効かせている)ことや、そもそもセッションのリリースをしないで、旧竹鶴ピュアモルトを継続する選択肢だってあったと考えられるわけです。

昨今、「輸入原酒をジャパニーズウイスキーとして、あるいはそれを連想させる名前の商品に用いてリリースすることの賛否」が注目されていることは、改めて説明する必要はないと思います。
つまり、消費者意識の高まりを受けて、竹鶴は100%日本産と再整理し、もう一つ軸となるブランドを、輸入原酒とニッカの明確なキャラクターの中で、情報公開しつつ造ったのではないかと。
(実際、ジャパニーズウイスキーの基準に関する議論を受けたリリースの動きがある、なんて話を昨年聞いたことがありましたし。)

勿論、サントリーから碧”AO”、キリンから陸、ブレンデッドとグレーンと言う、2社が強みをもつ領域でワールドウイスキーが展開される中で、ニッカも後れをとるなと得意領域で新商品をリリースしてきた、ということかもしれませんが、これら3商品のリリース背景に、原酒不足問題だけでなく、大なり小なり「ジャパニーズウイスキーの基準問題」が影響していることは間違いないでしょう。

こうしたリリースに市場が、消費者が、どのように反応するか、各社はブランド価値向上を狙いつつ、そこを見ているようにも思います。
とはいえ、味以上にレアリティに惹かれる人が多いのもボリュームゾーンの特徴なので、ワールドウイスキーがブームの恩恵を100%受けていられるかは微妙なところ(実際、これら3つのワールドウイスキーは普通に店頭で買えますね)。ひょっとすると、一時的な整理になる可能性もあります。
しかし、日本におけるワールドウイスキーは、新しい可能性と成長の余地のあるジャンルであり、個人的には日本だからこそ作れるウイスキー造りの一つとして、今後も探求を続けてほしいと感じています。



今回は軸となる情報は同じながら、LIQULと異なる視点で記事を書きました。
なんというか、新リリースの楽しさだけでなく、色々と考えさせられるリリースでしたね・・・ニッカ・セッションは。
では、今回はこのへんで。

グレンマッスル No,3 テイスターコメントやBAR入荷情報について

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4月13日に発売された、グレンマッスル No,3 New Born Little Giantおよびその構成原酒。
現在の社会的状況下でのリリース故、不安はありましたが、まさかの数分で完売。
今回のボトルは、イベント等で事前に飲む機会もなく。3作目とはいえ、素性のよくわからない決して安くもないウイスキーに、ここまでの関心を持っていただけて本当に感謝です。

SNSを見ると、買えなかったけど飲んでみたい、どこのBARで飲めるのかわからない。オフィシャルの○○に比べたら割高なのではないか等の様々な反響もありました。
飲めるBARについては、これまで第1作、第2作でも掲載しており、今回も可能な範囲で情報をまとめましたのでこの記事で紹介していきます。
また、先に公開したNo,3のレビュー記事では、ブレンドの行程や三郎丸蒸留所の紹介を主としており。”グレンマッスルとは”の部分を省略していましたので、メンバーのコメントと合わせて改めて記事にまとめたいと思います。

※記事構成
・グレンマッスルのブランド位置付け
・テイスターレビュー(座談会形式)
・グレンマッスルNo,3が飲めるBARリスト

※参考:本ブログでのレビュー

■グレンマッスルとは
グレンマッスルはウイスキー好きのためのオリジナルブランドであり、愛好家が飲んで楽しめるような、笑顔になるようなリリースを目指しています。それは何を基準としているかというと、オフィシャルスタンダードとは異なる領域で、”美味しいだけでなく、ちょっと尖った魅力のあるリリース”であることです。

尖った要素としては、ワクワクするようなバックストーリーや、あるいは特定の個性を強調するような、オフィシャルのそれとは異なるバランスであるとかです。
従来、このジャンルは主にボトラーズリリースが担っていた領域です。
もちろん現在もそうなのですが、原酒の枯渇や価格の高騰から、選択肢は減少傾向にあります。予算を増せば手に入るのは当たり前ですが、ボトラーズメーカーを介して1万円前後という価格帯で、該当するリリースを実現することは困難な状況と言えます。 

ならば自分達で作ることは出来ないか。具体的には国内蒸留所やウイスキーメーカー協力のもと、彼らが保有する原酒を用いてメンバーがブレンドやリリース全般の監修、テイスティング(評価)等を行うもので。。。言い換えると、実例と共にメーカー側に愛好家としての意見を伝えているとも言えます。
そしてそれを実際に作るか、アレンジを加えてリリースするかは、メーカーの判断に委ねられています。

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■グレンマッスルテイスターの評価
No,3に対する自分の感想は、先日熱く語らせてもらった通りです。ではメンバーはどう感じているのか。
本リリースは4月13日発売ですが、JWフェスに合わせてのもので、2月中旬の時点でボトリングは完了、うち1本をサンプルとして取り寄せ、都合のついたメンバーで状態確認をしていました。
その際のメンバーの感想を、トーク形式でまとめていきます。これからグレンマッスルNo,3を飲まれる方は、その手引きとしても楽しんでもらえたら幸いです。


※2020年3月 新宿ウイスキーサロンにて
”ありえたかもしれないマッスルトーク”

くりりん:三郎丸蒸留所からグレンマッスル3のサンプルボトルが届きました。我々がレシピを作った時点から、ちょっとだけ各原酒の熟成も進んでいるので、改めてテイスティングしてどうでしょうか。

静谷:度数はあるのに、思ったより香り立ちが優しいですね。ドライでそこから焚き木を思わせるスモーキーさが、柑橘系の要素と共にある。

木下:・・・(ええやん)。

倉島:黒土や根菜、内陸系のピート香ですが、潮気も伴うような。アルコールの刺激、あとはジンジャーやスパイスを思わせる要素が複数感じられる。ちょっとBBQっぽい煙と甘さも出てきます。

くりりん:香りはそうなんですが、口に含むと一気にきますね。

倉島:確かに。最初はオイリーな感じですが、生き生きとしたピートとスパイシーな刺激に切り替わる。それをふくよかなモルティーさが支えています。

静谷:オレンジビターズみたいな柑橘感、ほろ苦さは味でも感じます。スモーキーさは囲炉裏のような穏やかな感じにまとまっていくんですが、スパイス系のフレーバーが残りますね。

くりりん:若い原酒由来のニュアンスがありつつも、ネガではなくフレッシュな部分に現れていると思います。オイリーでボディのしっかりした酒質や柑橘系のニュアンスは、三郎丸らしさでもあります。

木下:・・・(味もええやん)。

倉島:若さはありますが、このバランスというか複雑さというか、杯が進んでしまうボディ感が良い。

静谷:加水も良いですね。柑橘系の酸味がはちみつ林檎酢みたいな柔らかい感じに変化する。ああ、これはハイボールも良さそう。ちょっと贅沢ですが(笑)

木下:・・・(これはロックやな)。あ、静谷さんロックグラスと氷もらって良いですか?

くりりん:度数は58%ですが、なんだかんだみんな杯が進んでますね(笑)。

静谷:シェリー樽原酒の比率がちょうど良いですね。これ以上多かったら加水やハイボールでバラけてたかもしれません。

倉島:バーボンオーク由来の甘みだけでなく、シェリー樽由来の甘味もちゃんとあるのが面白い。ブレンデッドらしさですね。味で感動するウイスキーではないかもしれないけど、飲んで笑顔になる楽しさ、力強さがあると思います。

木下:・・・(ロックええやん)。

くりりん:将来性という点ではどうでしょう。マッスル4(仮)に向け、現在進行形で同じブレンドの熟成が進んでいるわけですが。

静谷:ちょっと樽の繋ぎというか、余韻にかけて樽感が足りない印象が補われてくれたら面白いですね。

倉島:これはこれでまとまってるけど、完成していない要素もある。追熟の樽はバーボンでしたっけ。

くりりん:バッファロートレースの1st fillだと聞いてます。それを三郎丸蒸留所の冷温熟成庫に保管です。サンプリングして、樽感が足りないようなら、リリース時期や熟成場所を変えて貰うのも手です。
※冷温熟成庫:若鶴酒造にある日本酒用の原料を保管するための倉庫。原酒の一部はここで保管されている。温度は夏場でも20度に届かず、湿度も保たれており、スコットランドに近い環境となっている。

倉島:比較してテイスティングしたら面白そうですよね。そういう意味でも今回のリリースは様々な楽しさがあると思います。

くりりん:比較という意味では、構成原酒もあります。三郎丸蒸留所の可能性を楽しんでもらうというコンセプトとして、現在地、将来のイメージ、双方を比較して楽しんでもらえたら嬉しいですね。

静谷:現時点でも美味しいですが、若さはある。それが熟成を経て良くなっていく姿がはっきりイメージ出来るのが、すごくポジティブな感じだと思います。飲んでて元気でてきました。

くりりん:リリースがますます楽しみですね。リーダー、尺もあるんで最後に今日の総括いただけますか?

木下:ええやん!(ええやん!)

くりりん:皆さん、本日はありがとうございました。


■GLEN MUSCLE No,3 が飲めるBAR
本リストは、ご購入いただいた旨のご連絡、確認がとれたBAR・飲食店のリストとなります。この他、新たに情報がわかりましたら、随時更新していきます。(2020年4月14日時点)

BAR BOTA (北海道 小樽)
BAR Fish born (北海道 帯広)
BAR 無路良(北海道 札幌)
バルハルヤ(北海道 札幌)
洋食屋さん りもーね(岩手 滝沢)
BAR Harry's 高岡(富山 高岡)
BAR 無駄話(茨城 下妻
BAR レモンハート(東京 大泉学園)
旬味 菜野(東京 北千住)
BAR Boushu 蔵前(東京 蔵前)
BAR Groovy(東京 神田)
BAR Eclipse first(東京 神田)
BAR Algernon Sinfonia(東京 赤坂)
BAR もるとや(東京 池袋)
Jam Lounge (東京 高田馬場)
BAR Unite(東京 新宿)
BAR Louge(東京 新宿)
BAR 新宿ウイスキーサロン(東京 新宿)
BAR LIVET(東京 新宿)
BAR Highlander Inn(東京 人形町)
BAR Shu-shu(東京 葛西)
BAR Shanty Shack(神奈川 横浜)
&BAR Old⇔Craft(神奈川 関内)
BAR BARNS(愛知 名古屋)
BAR Rubin's Vase(愛知 名古屋)
ANNIE HALL BAR (京都 ハトヤ瑞鳳閣)
BAR Kaguya(京都 宇治)
BAR シルバームーン(京都 伏見)
BAR TANKS(京都 今出川)
BAR MINMORE HOUSE(大阪 北新地)
BAR SIMON(大阪 難波)
BAR Hotaru (大阪 神山町)
憩処ありがとう(岡山県 笠岡)
BAR TRANSENDANCE(広島 中区胡町)
BAR Shamrock(香川 高松)
BAR Higuchi(福岡 博多)
BAR poco rit(沖縄 松山)

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■最後に
今回のグレンマッスルリリースは、新型コロナウイルスの感染拡大の最中という、大変難しい状況の中で行われました。
ご購入いただいた皆様もそうですが、製造元である若鶴酒造、ならびに三郎丸蒸留所の皆様は、別途ニュースにもなっている高度数アルコール製造対応の真っ只中で、本リリースを行っていただいたということになります。
本当に、頭が上がりません。。。

今回のリリースにあたっても、ジャパニーズウイスキーということを考えれば、価格設定は強気にすることもできたはずです。
しかし我々が贔屓目抜きにみても、プライベートボトルとして妥当(むしろ安い)と思える設定や、蒸留所見学やブレンド作りにおける各種サポート等、本企画に理解をいただいた、三郎丸蒸留所の稲垣マネージャーの「愛好家と一緒にウイスキーを楽しみたい」という心意気があったからこそ、今回のリリースは実現したのだと思います。

レビューや裏ラベルでも触れていますが、グレンマッスルNo,3は、三郎丸蒸留所の将来を、可能性を楽しんでもらうウイスキーです。
それは時間が経てばなんとかなるだろう、という無責任なものではなくて、間違いないというある種の確信を持ってリリースするものです。
その将来のイメージを形にしたのが、No,3 New Born Little Giantであり、現在地が同時にリリースした構成原酒#274です。

勿論、トータルでの完成度としてはオフィシャルの同価格帯でもっと良いものがあると思います。ですが、前置きのとおりグレンマッスルはその領域でトップを目指すものではありません。
このリリースから感じられる将来への期待、ワクワクする気持ち、そしてオフィシャル加水リリースにはない尖った個性、通常のリリースでは語られないようなバックストーリー。。。それらを是非楽しんでいただくと共に、次のリリースにも期待頂けたら幸いです。

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……Special thanks to Saburomaru distillery manager T.Inagaki

See you Next Muscle No,4.

グレンマッスル 3rdリリース ジャパンメイドウイスキー 58% 三郎丸蒸留所

カテゴリ:
グレンマッスル三郎丸3表ラベルset
GLEN MUSCLE 
No,3 New Born Little Giant 
Blended Whisky 
Age Unknown 
Type Japan Made Whisky 
700ml 58% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後1週間程度
場所:自宅
評価:★★★★★★(6)

香り:注ぎたてはエステリーで乾いたオークのアロマから、徐々にスモーキーな香り立ち。焚き火のあとに残る灰や、焼けた土や木材、根菜っぽさの混じるピート香。微かに葉巻のような甘さに加え、柑橘とBBQソース。シャープな消毒薬品香も混じり、鼻孔を刺激する。

味:とろりとしたコクのある口当たり。強くスモーキーでピートフレーバーが主体に感じられ、合わせてモルティーでドライオレンジを思わせる甘酸っぱさ、麦芽やオークの甘味が広がる。
余韻は焼き畑の後のような、懐かしさを伴う秋の香りが鼻腔に抜ける。軽いウッディネス、はつらつとして強いピートフレーバーとスパイシーな刺激を伴い長く続く。

まさにマッスル。三郎丸モルトらしいパワフルなスモーキーさが主体にあるボトル。単に若いピーテッドウイスキーとは異なる複雑さと厚みがあり、使われている原酒のポテンシャルを感じさせる。やや奔放なところは、時間が解決してくれるだろう。なんともワクワクさせられる。
度数や香味の強さに反し、飲み口には柔らかさがあり、つい飲めてしまう不思議なバランス。ストレート以外ではロックがオススメ。

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ウイスキー好きによる、ウイスキー好きのためのウイスキー、グレンマッスル。
ブランドの説明は前作までで散々書いているため、過去記事を確認頂ければと思いますが一応前置き。このウイスキーはウイスキー好きが求める味わいを、愛好家チームがクラフト蒸留所や酒販メーカーの協力のもとで作り上げる、オリジナルウイスキーです。
僭越ながら、自分も関わらせて貰っています。

これまで、第1弾は福島県・笹の川酒造と福島県南酒販の協力で、第2弾は滋賀県・長濱ロマンビールと長濱蒸留所の協力で実現したところ。そして今回、第3弾となる”No,3 New Born Little Giant”は、富山県・若鶴酒造、三郎丸蒸留所の協力によって実現することとなりました。
販売は以下、若鶴酒造のオンラインショップにて、4月13日(月)12時から開始される予定となっています。

GLEN MUSCLE 
No,3 New Born Little Giant
Blended Whisky 
Japan Made Whisky
700ml 58%
価格:7500円(税別)


■グレンマッスルNo,3 概要
No,2のリリースから2か月しか経過していませんが、昨年の1stリリース後から同時に調整していた結果、この時期の発売となりました。
今回のグレンマッスルは、ラベルに書かれた「Japan Made Whisky※」の通り、日本で蒸留された原酒と、スコットランドからの輸入原酒をブレンドしたものとなります。
※Japan Made Whisky (日本製ウイスキー): ウイスキー文化研究所が提唱するウイスキーカテゴリーのひとつ。日本でジャパニーズウイスキーと外国産のウイスキーをブレンドし、瓶詰めしたものを指す。

キーモルトはもちろん、三郎丸蒸留所のモルト。同蒸留所がクラウドファンディング等による出資を集め、大規模な改修工事を経て生まれ変わった最初の年、2017年に仕込まれたフェノール値50PPMのへビーピートモルトです。
そこに
同社が保有する、熟成10年以上のスコットランド産の輸入原酒から、ピートフレーバーの有無に加え、バーボン樽熟成のもの、シェリー樽熟成のものなど複数チョイスしてブレンド。カスクストレングスでボトリングしています。

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(熟成庫での原酒選定風景。バーボン樽以外にシェリー、ミズナラ、ワイン等様々な樽が見られる。ちなみに三郎丸モルトはヘビーピート仕様だが、輸入原酒はピート、ノンピート、グレーン等様々なタイプを保有し、追加熟成が行われている。)

過去のグレンマッスルでは、メンバーがメーカーと共にプロトタイプを作り、合議制でレシピを決めていました。
一方、No,3のリリースレシピを決めるに当たっては、別な方法を採用しました。それは、あらかじめ同じ原酒をメンバーに配布し、決められた期日までに各自がブレンドを1つ作成。後はそれを持ち寄ってテイスティングし、最も評価の高かったレシピがリリースされるという、バトルロイヤル方式です。

今回のレビューでは、そのレシピ選定の流れを振り返りつつ、ブレンド構成や狙い、メンバーの込めた想いを紐解いて解説していきたいと思います。

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■キーモルトとレシピの選定
ブレンド作成にあたり、まずは原酒の選定です。
満場一致で選ばれたのが、バーボンバレルで約2年半熟成された三郎丸モルト Cask No,274でした。

2年半熟成だと、若くてニューポッティーさの残る、荒々しいものを連想するかもしれません。
しかし現在の三郎丸の原酒は、多少荒さはあるものの、若さに由来するネガティブな香味は少なく、フレッシュで強いピートフレーバーと厚みのある酒質。樽感も程良い程度であり、レベルの高いモルトウイスキーなのです。
改修工事前の印象から、最初は「え、三郎丸?」と疑問があったメンバーも、飲んだ後はこれだけをボトリングしたい!と希望したほどです。

よって、メンバー全員が#274の個性を活かすレシピで仕込んでくることは想像に難くなく、蓋を開けたらほとんど同じレシピばかりなんじゃと予想しましたが、全員が異なる解釈でレシピを作ってきたのは驚きでした。
誰がどんなレシピを作ってきたか、ここでは非公開とさせていただきますが、共通しているのが、構成の約半分は三郎丸モルトだったこと。そしてグレーンの比率は15%以下であったことです。

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(三郎丸の蒸留設備は、2019年から鋳造のポットスチルZEMONに換装されている。今回の原酒はその前のスチル、ネックから先が銅で、釜の部分はステンレスという、改修工事前とのハイブリッド仕様だった頃のもの。ZEMONのニューメイクも素晴らしいが、当時からしっかりと厚みのある原酒が出来ていた。関連する記事はこちら。)

では、違いが現れる要因はなんだったのか。これは、シェリー樽原酒の使い方だと考えられます。
配布された候補となる原酒の中に、ボトラーズにも多く見られた、某スペイサイドモルトを思わせる色濃いシェリー樽熟成原酒(以下、参照)がありました。
具体的には、このシェリー樽原酒のフレーバーが三郎丸モルトの個性を潰してしまうことを避けるため、全く使わなかったレシピと、逆にしっかり効かせたレシピ、そして隠し味や全体の繋ぎになる程度に使ったレシピの3パターンがあり、今回選ばれたのは後者の隠し味、繋ぎにシェリー樽を使ったものです。

そのレシピのモルト比率は95%。つまりグレーンはわずか5%しか使われていない、かなり攻めた構成。本来ならモルトの風味が喧嘩しかねないレシピですが、使われたシェリー樽原酒がグレーンと共に繋ぎとなっているだけでなく、バーボン樽熟成原酒の比率が高い中で、異なる傾向のフレーバーを隠し味として付与しています。

口当たりの適度なコク、柔らかさ。香味に生まれた幅と厚み。。。グレーンが多いと軽さが出てしまうのを補って、”マッスル”の名に相応しい骨格のしっかりした味わいと、ブレンデッドとしてのバランスも感じられる仕上がりだと思います。

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(今回のレシピのキーモルト、三郎丸蒸留所のヘビーピーテッドモルト Cask No,274。2017年蒸留、2020年ボトリングで2年半熟成。熟成年数故の若さはあるが、その香味に素晴らしい将来性を感じる、原石たるモルト。)

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(グレンマッスルNo,3に使用されている、シェリー樽熟成輸入原酒。近年系圧殺シェリーのリッチで濃厚な樽由来のフレーバーが特徴。このままでも充分美味しいが、混ぜるとなると比率が難しい。

■リリースにあたって
こうして決まったレシピは、グレンマッスルの過去2作と比べると、180度香味の方向性が異なるタイプとなります。
1st、2ndと同じ系統のフルーティータイプが2作続いたところに、その欠片もないヘビーピーテッド仕様です。違和感を感じる人もいるかもしれません。

ですが、グレンマッスルは元々フルーティー系に特化したものではなく、”ウイスキー好きが求める味わいを作る。楽しめるウイスキーをつくる”がコンセプトです。
スモーキーフレーバー主体のタイプは好みが別れるため、万人向けというものではありませんが、愛好家が求める味わいのひとつであるのは事実。中核をなす三郎丸蒸留所の個性はそのままに、輸入原酒によってバランスがとれたことで、熟成が進んだ将来の姿をイメージ出来るような。ワクワクするような面白さもあるブレンデッドだと思います。

また、これは主に個人的なこだわりですが、日本のブレンデッドウイスキーは、単に日本で蒸留されたもの100%に拘らず、必要に応じて海外の原酒も一部使いならが、いいものは取り込んで、日本だから作れる美味しいウイスキーをブランドとして作っていくべきではないか、という持論があります。
今回のリリースは、クラフトのなかでもイチオシといえる三郎丸蒸留所の原酒に、香味の幅を広げる輸入原酒の組み合わせ。まさに持論として考えていたものの、一例となるようなリリースです。
新しい世代の蒸留所、作り手が紡いだ可能性を、是非楽しんでもらえたらと思います。

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■ラベルと今後について
ラベルは、2019年に蒸留所に新設された第2熟成庫の外壁写真がベースとなっています。アイラ島の某蒸留所で見たようなインパクトのあるペイントです。

前作No,2は、まず中身を見てほしいとして、ラベルは極めてシンプルなデザインにしました。
一方、今回は構成原酒の約半分が三郎丸蒸留所のモルト(ジャパニーズウイスキー)であることや、使われた輸入原酒もまた、同蒸留所で追加熟成を経たものであること。中身に加えて後述する次回作との関係性も含め、メッセージとして発信できるものにしようとデザインしてみました。

今後の話をすると、リリースされるNo,3は、ブレンド・バトルロイヤルを経て作られたうちの一部をボトリングしたもので、まったく同じレシピのものが、三郎丸蒸留所で追加熟成中です。
No,3をテイスティングしていて、少し樽感が物足りないというか、フレーバーの奔放さというか、あるいは全体のなかで馴染みの弱さを感じる人もいるかもしれません。それは決して手を抜いたリリースというわけではなく、最初から追加熟成することも前提としていたため。その意味で、このNo,3はNew born、ワークインプログレスとも言えるリリースなのです。
若鶴酒造によるグレンマッスル次回作は、キーモルトである#274が満3年熟成となってから、香味のバランスを見て決めていく予定です。

今回、複数の原酒をテイスティングしていくなか、グレンマッスルメンバーは、三郎丸蒸留所のモルトにスコットランドで巨人とも称される、偉大な蒸留所の姿に重なるものを見ました。
今はまだ、よちよち歩きの赤子のような存在かもしれませんが、それが時間を経て現実のものとなるか。。。そんな”小さな巨人となる可能性”を、このリリースの中にも感じて頂けたらと思います。

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■最後に
2020年4月8日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、緊急事態宣言が発令されました。それまでの外出自粛、海外からの旅行者規制、行動指針等からすでに大きな影響を受けていましたが、今回の発令において関連する都市の飲食店が休業を始めるなど、酒業界、BAR業界にも深刻なダメージが及んでいます。

元々、このグレンマッスルNo,3は、4月12日に開催予定だったジャパニーズウイスキーフェスティバルで、三郎丸蒸留所ブースにおいてお披露目するため、発売時期を調整していたものでした(Japan Made Whisky表記もイベントの方向性に合わせていたものです)。
しかしイベントが延期になり、日に日に状況は悪化し、極めつけはこの緊急事態宣言です。このまま発売するかどうかについても、悩ましいものでした。

グレンマッスルはウイスキー好きによるウイスキー好きのためのウイスキーです。
現在、先に述べた社会情勢により、愛好家のなかでウイスキーを楽しむことによって得られていた余裕や生活の彩りが、徐々になくなりつつあります。
だからこそ、このリリースを通じて、少しでもウイスキーを楽しんでもらえたら。。。そう考え、今回予定通りの発売が行われることとなりました。数量は限られておりますが、このリリースが皆様の笑顔に繋がれば幸いです。

2020年4月、チームグレンマッスル一同。


※補足:協力メーカーによるグレンマッスルの販売にあたっては、チームメンバーが売り上げの一部を受け取ることはありません。あくまで、我々はメーカーに協力し、監修やアイディアの提供を行っているにすぎません。また、その監修料等についても受けとることはありません。
リリースされた際も、各自必要本数をメーカーから購入しております。あくまでもウイスキーを楽しむことの延長線上にある活動ということを、ご理解頂ければと思います。

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