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リトルミル 25年 1988-2014 パールズオブスコットランド #136 49.9%

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LITTLEMILL 
The Pearls of Scotland 
Rare Cask Selection 
Aged 25 years 
Distilled 1988 
Bottled 2014 
Cask No, 136 
700ml 49.9% 

グラス:国際企画テイスティング
時期:開封後1年程度
場所:自宅
評価:★★★★★★(6)

香り:ケミカルで和紙っぽさを伴うドライなアロマ。合わせてオーキーな華やかさ、バニラ、パイナップルキャンディを思わせる人工的な甘みとフルーティーさ。また、微かに青みがかったようなニュアンスとハーブの爽やかさ、乾いたウッディネスを感じる。

味:ややオイリーで香り同様にケミカルなフレーバーと、若干青みがかったフルーティーさ。蜜のような甘味と粘性を感じた後で、余韻はウッディでほろ苦く、微かにナッツを思わせる香ばしさとハーブ香を、オークフレーバーに伴う張り付くようなフィニッシュ。

いかにもボトラーズリトルミルらしい個性。アメリカンオークとの組み合わせがケミカルなフルーティーさを底上げして、良い方向に作用している。加水すると柑橘系、あるいはビタミンCタブレットのような甘さ。少し粉っぽいような人工的な質感が香りに感じられ、ジェネリック系統のトロピカルなフルーティーさもじわじわ広がる。一方でボディは緩くなりやすく、加減が難しい。ハーフに数滴が適量か。

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最近見なくなってきたボトラーズ・リトルミル。ローズバンクやブローラなど、現在高額で取引される閉鎖蒸留所も、ほんの5~10年くらい前はボトラーズリリースが豊富にありましたが、近年一気に高騰した背景を考えると、リトルミルもいよいよその時が近づいているのかもと感じます。

閉鎖or稼働のどちらにあっても、高騰する蒸留所とそれなりな蒸留所の線引きは、オフィシャル側の後押しの影響が強い、というのが自分の理解です。
価格はブランド力に直結するバロメーターです。ブランドを作るのはボトラーズ、オフィシャルどちらもあり得ますが、販売網とPR力はやはりオフィシャルの方が強く。特に大手が何十万円という値付けで限定リリースを出し、それが市場に受け入れられた瞬間、その前例に引き上げられる形で、安価に取引されていたボトラーズ側の高騰が始まるという流れが近年多く見られます(逆にロングモーン等は、ボトラーズとユーザーがブランドを作った例)。

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リトルミルは先日レビューさせていただいた、セレスティアルエディション1977(写真上)が、6000ポンドととんでもない価格設定でリリースされましたが、日本市場に入る間もなく完売したという流れを見るに、いよいよ・・・という訳です。
リトルミルが?という意見もあると思いますが、この手の流れに味や個性はあまり関係ないんですよね。そういう疑問点がありながらも高値で流通するボトルがリトルミルだけではないことは、周囲をちょっと見れば事例に当たるように思います。

またリトルミルといえば、紙っぽさやハーブのような癖が特徴としてあげられる一方で、近年に限らず熟成したものはトロピカルなフルーティーさを持っているボトルが多く見られ、最近だとNGという声もある反面、好む声も多くなったように認識しています。
60年代、70年代は麦由来の要素を含む真の意味でトロピカルと言えるものが。80年代からはケミカルな要素を含むアイリッシュウイスキーを思わせるタイプが主流。ネガもありますが、今回のボトル含めてキャッチーな要素が備わっているんですよね。

余談ですが、今回レビューする1988年あたりの蒸留所の遍歴を見ると、リトルミルの閉鎖は1994年。加えて1984年から89年まで創業を休止したという情報もあります。
当時のウイスキー需要減から生産調整に入っていたとしても違和感はありませんが、ボトラーズリリースが84,85,86、そして今回の88と続いていて、確認できないのは1987年のみであることを考えると、実際は少量生産されてそれがボトラーズメーカー(ボトラーズに転身する前のブレンドメーカー)に買い取られており、近年の集中的なリリースに繋がったのではないか。
87年については、蒸留所の親会社がギブソンインターナショナル社に変わった年であることから、この年の一時期だけ稼働していなかったのでは。。。と推察しています。

セントマグデラン 25年 1982-2007 インプレッシブカスク 60.2%

カテゴリ:
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St. Magdalene 
Impressive Cask 
Aged 25 years 
Distilled 1982 
Bottled 2007 
700ml 60.2% 

グラス:テイスティンググラス
場所:BAR Fingal
時期:開封後3ヶ月程度
評価:★★★★★★(6)

香り:乾いたウッディネス、干し草とハーブ、ニッキのようなニュアンスも伴う、強くスパイシーなアロマ。奥には微かに洋梨を思わせるような華やかなオーク香、おしろい等の麦芽系のニュアンスも伴う。

味:とろりとした麦芽風味の甘味に加えて、乾いたウッディネスとエッジの鋭いアルコールのアタック。洋梨、バニラ、徐々にオーキーで華やかな含み香も混じる。
余韻はハイトーンでヒリヒリとする刺激に加え、乾いたウッディネス。ほろ苦く麦芽風味の残滓を伴って長く続く。

度数もあって、香味ともウッディなアタックは強いが、味の中盤に素性の良い麦芽風味、品の良い甘味が感じられる。樽はアメリカンオークのリフィルカスクだろうか。少量加水するとアタックの強さは多少こなれ、麦系の甘味は包み込むようでもある。中々通好みのモルトであるが、やはりトロピカルフルーツは居なかった。


今は無き、1983年に閉鎖されたローランド地方の蒸留所、セントマグデラン(リンリスゴー)。
DCL傘下であり、用途は主に同グループのブレンドへの活用。同グループのスタンダードクラスのブレンデッドに感じられる、無個性でスパイシーな刺激は、この辺りの原酒由来ではないでしょうか。
高い生産能力と原酒貯蔵のキャパシティを持つ蒸留所だったようですが、ウイスキー不況に陥った1980年代には設備も老朽化しており、他の閉鎖蒸留所同様、生産調整の影響を受けたというわけです。

そのキャラクターはスパイシーで時に紙っぽさもあり、やや個性的なところはあるものの、自分の中で嫌いな蒸留所というわけではなく、麦芽風味など好みの要素もあります。
ただ、このボトルについてはリリース当時の印象が極めて悪かった。それは購入の決め手となった、メーカーのテイスティングコメント故(以下、画像参照)。当時自分はウイスキーを本格的に飲み始めたばかりのころで、南国フルーツ!!とホイホイ釣られてしまったんですね。

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結論から言えば、そんなものはどこにもなかったわけです。
ポジティブにとれば、淡いオーク香があり、それが麦系のフレーバーと合わさって品の良いフルーティーさのようでもありましたが・・・当時は結構強引に拾ったようにも記憶しています。
スパイシーでクリーミーというのは確かに。あとはパワフルであることは間違いありません。それはもう、開けたての頃はバッキバキにスパイシーで、え、これデレるの?このツンは南国感になるの?と。

その後、1年ちょっと保有し、真価を認識することなく残りを誰かに譲ったかしてしまいましたが。。。今回フィンガルのバックバーで見かけ、今の自分ならどう感じるんだろうかと、久々にテイスティングしてみたわけです。

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(BAR Fingalは、今年の6月で開業から21周年を迎えた。この日は次回のリカルについての相談に。同誌では様々な企画が練られており、つい脱線してそちらの話がメインに。)

約10年ぶりにテイスティングしたこのボトル。相変わらずスパイシーでアタックは強いのですが、ボトリング後10年の瓶内変化によって良い方向に変化したのか、麦系の甘味がより感じやすくなっているように思います。
まあ南国感については無いと断言できるのですが(これもきっと、サンプルの入れ替わりなど、いい加減なお国柄に由来する事故があったのだろうと推察)、過去の自分のテイスティングコメントを見ても、麦芽風味などの要素は拾っているものの、今回の方が全体的に好ましく感じました。

ボトルの経年変化に加え、自分自身も長くウイスキーを経験し続けたことで、アルコールのアタックへの許容値が増えたのかもしれません。
今回のボトル以外にも、過去微妙だと感じたものも、改めて飲むと気付きがあることが多く。今後は見かけ次第そうしたボトルにもトライしてみようと、改めて思いました。

ブラドノック 10年 サムサラ 15年 27年 日本流通ラインナップ レビュー

カテゴリ:
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スコットランド最南端の蒸留所。ブラドノック蒸留所の原酒は、かつてはブレンデッドウイスキー・ベルの原酒等に活用されていたものの、所属するDCL全体の生産調整で1993年に操業を休止。
他のローランド地方の蒸留所とほぼ同時期の閉鎖であり、同地区の衰退が見てとれる出来事の一つであったわけですが、ここで前オーナーとなる建築家レイモンド・アームストロング氏が蒸留所を1994年に買収。紆余曲折の末、2000年に生産量年間10万リットルという条件付きでの再稼働※を果たします。

レイモンド氏の時代は、小規模なシングルモルトブームの時期。ブラドノックからは今風に言えばスモールバッチリリースと言える、熟成年数がバラバラないくつかのモルトや、ブラドノックを再度復興させようとする物好きな(失礼)有志によるボトラーズブランド・ブラドノックフォーラムがリリースされていましたが、2010年に再度蒸留を休止し、2014年に破産。
いよいよこのまま消えていくものと思われましたが、奇しくもウイスキー業界は世界的なブームに突入しようとしていたところ。オーストラリアの事業家チームが蒸留所を買収したことで、本格的な再稼働を果たすことになります。

後述するように、レイモンド氏はブラドノック蒸留所をウイスキー製造とは異なる目的で買い取ったとされていますが、結果的にここで繋がった20年間が、リトルミルやローズバンクら他のローランド閉鎖蒸留所と現在の姿を分けたとも考えられます。

そうして蒸留所の創業200周年にあたる2017年に発売を開始したのが、NAS"サムサラ"、15年”アデラ”、27年”タリア”。2018年には10年もラインナップに加わり、今年に入って日本市場にも流通が始まりました。
今回、これら4種のサンプルを入手。飲んでみるとなかなか個性的な味わいというだけでなく、それぞれのボトルに共通するハウススタイルが感じられたため、まとめてレビューすることにしました。


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BLADNOCH 10 years old 
LIMITED RELEASE
700ml 46.7%
暫定評価:★★★★★(5-6)

香り:注ぎたてはリンゴキャンディーのようなフルーティーさと酸を感じるアロマ。時間経過で微かに発酵したような香りと、干し草、ドライでトーンの高い刺激に加え、少しケミカルのような要素も感じる。

味:ややスパイシーで、乾いたウッディネスとバーボンオーク、バニラとほのかにフローラルな含み香を伴うパフュームライクな口当たり。香りの印象とはだいぶ異なっており、余韻はドライで麦芽由来の甘み、ヒリヒリとした刺激を伴って長く続く。

香りからベンネヴィスやロッホローモンド系かと思いきや、味わいは乾いた草、軽やかなパフューミーさがあり、蒸留所のキャラクターを理解することが出来る。主として使われている樽はアメリカンホワイトオーク、バーボン樽だろう。
少量加水すると、香りはテキーラのような植物感、味はバーボンを思わせるメローな穀物感が顔を出してくる。なかなか特徴的なウイスキーだが、単語から感じられるほどのネガティブさはなく、不思議と飲めてしまうバランスの良さがある。

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BLADNOCH NAS ”SAMSARA”
LIMITED RELEASE
700ml 46.7%
暫定評価:★★★★★★(5-6)

香り:キャラメルナッツのような甘みと軽い香ばしさ、奥には熟成したチーズのような深みのある酸。乾いた粉っぽいオークのニュアンス、おがくず、鼻孔へのトーンの高い刺激がスワリングと共に感じられる。

味:まとまった口当たり。ドライプルーンや蜜っぽい甘み、ほのかにハーブなど、シーズニングシェリーにも似たスウィートな樽感に加え、微かにフローラルな要素が中間から開いてくる。余韻はドライで微かにソーピー、ナッツを思わせるフレーバーも伴う。

酒質そのもののキャラクターや熟成感は前述の10年と大きく違いはないが、バーボン樽熟成の原酒をベースに、オーストラリア産の赤ワイン樽でフィニッシュしたという蒸留所新体制の色が垣間見える作品。ワインカスクフィニッシュは全体への厚みに加え、多少あざとい甘さもあるが、ともすればシーズニングシェリーに近いフレーバーにも繋がっている。
加水すると、フィニッシュの要素が薄くなるのか、ベースになったバーボンオーク由来と思しき10年でも感じたメローな甘みに加え、ソーピーさが味で主張してくる。

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BLADNOCH 15 years old ”ADELA”
OLOROSO CASK EXPRESSION
700ml 46.7%
暫定評価:★★★★★★(5-6)

香り:オロロソシーズニング樽の濃厚なアロマ。ドライプルーンやチョコチップクッキーのような甘みと焦げたような苦みが前面にあり、奥には発酵したような酸、時間経過でゴムっぽさも感じる。

味:黒糖麩菓子を思わせるような甘みとドライプルーンの柔らかい酸味、合わせてややビターなウッディネスが序盤から広がる。後半にかけてほんのわずかにフローラル。また、口当たりは粘性が感じられるが、徐々にピリピリとした刺激が顔を出し、余韻はスパイシーでウッディ。しっかりとドライでローストアーモンドとダークフルーツのニュアンスも伴う。

オロロソ樽で熟成された原酒のみで構成されている。そのため、シーズニングシェリー樽のキャラクターがメインに備わっているため、酒質由来の香味はだいぶ奥に抑え込まれている。しかしふとピントが合うたびに、香りの酸や、味のフローラルさは消えていないことが伝わってくる。少量加水すると樽由来のゴム感やビターな要素が落ち着き、多少バランスが良くなる。
決して悪くはなく、近年のシェリー系のキャラクターを好むなら評価される仕上がりと言える。ただしこの手の味わいを求めるなら、このモルトである必要はないというジレンマも抱えている。

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BLADNOCH 27 years old ”TALIA”
RARE RELASE
700ml 46.7%
暫定評価:★★★★★★(6)(!)

香り:トップノートはリンゴ酢や梅酒のような酸を主体に感じるオーキーなアロマ。水で湿った和紙、くぐもっておりかなり特徴的。時間経過でオーキーでフローラルな要素も伴う。

味:少しの水っぽさ、角のとれたウッディネスと共に床用ワックスのような含み香を一瞬感じ、合わせて微かにフローラル。これらの後からナッツの軽い香ばしさと、リンゴのコンポートや熟したパイナップル、トロピカルなフルーティーさが広がる。余韻はドライでウッディ、軽いフローラルさと紙っぽいニュアンスを伴う。

多彩な香味だが、なんとも独特。一時期のリトルミルにも近い。1990年代蒸留の原酒でありながら、トロピカルなフレーバーを伴う点はこのボトル最大のポイントであるが、それ以外の要素が確実に好みを分けるだろう。
過度に主張しない樽感はリフィルバーボン、リフィルシェリーらのバッティングで、近年の上位グレードに良くある綺麗な作られ方。少量加水すると香りの酸が軽減され、アメリカンオークの華やかさが開き、余韻にかけてのフルーティーさへスムーズに繋がる。全体的に香味が伸びて、好ましく大きな変化が感じられた。

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全体をまとめると、"例のフレーバー"を持った特徴的な原酒、ということ。
今回テイスティングした4種は、100%UD社時代の原酒で構成される27年と、レイモンド時代に少量蒸留されていた原酒を主としているSAMSARA、10年、15年。蒸留時期が90年代と2000年代、2つの時代に別れますが、本質的なキャラクターは大きく変わっていないように感じられます。

つまり香りにある発酵したような酸と、味に感じるフローラルな軽いパフューミーさ。後は乾燥した植物。これが現在のブラドノックのハウススタイルなのでしょう。また、40%加水ではべたつくような口当たりになりがちなところ、46.7%の独特な仕様で、フレーバーの広がりや全体のバランスにも繋がっているようです。

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(今回レビューした4種のリリースに加え、2018年にはワインフィニッシュの17年、そしてバイセンテナリーリミテッドリリースの29年(上写真、価格5000£!!)もリリースされるなど、引き続き旧世代の原酒を使ったリリースが展開されている。27年はリトルミル等にあるようなフルーティーさも備えていたが、こちらの構成は果たして・・・。)

ラインナップを通じてベースにあるキャラクターが変わらないという特徴から、この蒸留所のハウススタイルを知りたいという方は、ひとまず10年を飲めば良く。好ましいと感じるならば、他のボトルもオススメできます。
強いて言えばシェリー感の強い15年は、その場合であっても好みと異なるかもしれませんが・・・。
いずれにせよ、スコッチウイスキーのオフィシャルからパフューム系のフレーバーが消えた現代では、その手の愛好家にとっては喜ばしいリリースが復活したとも言えます。

一方で、過去リリースされていたボトラーズやオフィシャルのブラドノックには、そのフレーバーがあったりなかったりするのと、あっても軽いタイプのものが多いので、何らかの理由でどちらかに変化する、不安定な特性を持っているのかもしれません。
2015年以降、ブラドノックはポットスチルを増設するだけでなく、それまでの設備も一新。生産量は年間150万リットルとレイモンド時代の15倍にまで引き上げられており、それらによる影響はどう出るのか。
バッカスのサイコロがどんな目を示すかは、新しい世代のリリースを待って判断することになりますが、それまで果たして現代の市場にこのウイスキーがどう受け入れられ、評価されていくのか。様子を見たいと思います。

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※外界と隔離されたような時間が流れるブラドノック周辺の景観。レイモンド氏が蒸留所を買収した理由は別荘地としてのものだったとされる。再稼働の経緯には、蒸留所周辺住民への配慮や前々オーナーであるUD社との間で結ばれていた買収条件など、様々な事情があったとされ、そうした背景がウイスキーマガジンの記事に詳しく特集されている。

補足:サンプルテイスティングのため、ボトルの画像はTHE WHISKY EXCHANGE からお借りしています。

リトルミル 40年 1977-2018 セレスティアルエディション 46.8%

カテゴリ:
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LITTLE MILL 
Aged 40 years 
Celestial Edition  
Distilled 1977 
Bottled 2018 
Bottle No,1 of 250 
30ml(700ml) 46.8% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:ー
場所:自宅@試飲サンプル
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:ややドライな香り立ち。花の咲いたハーブのような植物感と紙っぽさに加え、キャラメルコーティングしたナッツのようなメローなウッディネス。加熱したリンゴや熟した白葡萄、奥からトロピカルなフルーティーさ。時間経過でケミカルなニュアンスと、インクっぽさも微かに。

味:若干青さのあるケミカルな甘みと紙っぽさ、リンゴの蜜や杏のジャムのような粘性のある樽由来の風味。後半にかけてじっとりと、オーキーな華やかさと熟したトロピカルフルーツのような甘い香味が現れ、ウッディでほろ苦いフィニッシュのなかで長く残る。

角の取れた長期熟成の原酒に、多少枯れた要素も伴うが、メローで多彩な熟成感のある樽由来のフレーバーが全体をまとめている。樽感は重くなくバランス良い綺麗な仕上がり。またベースは良くも悪くもリトルミルらしい個性が感じられる。オフィシャルハイエンドに相応しい完成度の高いシングルモルトである。

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近年、閉鎖蒸留所であることからプレミアが付きつつあるリトルミル蒸留所。完全に閉鎖されたのは今から約25年前の1994年。2004年には火災も発生して設備が焼失し、敷地は既に荒れ地になっていますが、原酒の残りは第2蒸留所ロッホローモンドに移されていました。

その旧リトルミル蒸留所の数少ないオフィシャルリリースで、今年2月にリリースされたのが「リトルミル40年 セレスティアルエディション」。1977年蒸留の原酒をアメリカンオーク樽とファーストフィルバーボン樽で熟成し、バッティングした後3ヶ月間オロロソシェリー樽でフィニッシュした、リトルミルのオフィシャルリリースで最長熟成となるシングルモルトです。

ボトリング本数は250本。イギリスでは6000ポンドと、そのプレミアを証明するような価格設定でリリースされましたが、驚くべきことに既に完売しており日本に入荷することはなかったそうです。
一方、ロッホローモンドグループの日本正規代理店として製品を輸入・販売している株式会社都光が、非売品の販促サンプルを複数セット作成。今回ご厚意により、その一つをテイスティングする機会を頂きました。

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(リトルミル40年のサンプルセット。「飲まないか?」と聞かれ、ホイホイ承諾したは良いが。。。後日届いたブツの豪華さにビビったのは、自分だけではないはず。)

今回のリリースの背景に位置づけられているのが、リトルミル蒸留所の元マネージャー、ダンカン・トーマス氏です。
同氏は1931年にリトルミルを3回蒸留から2回蒸留に切り替え、整流器付きのヘッドを持つ特殊なハイブリットポットスチル(ローモンドスチルの原型)を考案・導入。現在のリトルミルやロッホローモンドの個性を確立するきっかけとなった、ハウススタイルの産みの親と言える人物です。

銘柄名である”CELESTIAL”は、空、天上、あるいは、この世のものとは思えないほど素晴らしいという意味。今回のリリースはトーマス氏の"遺産"として位置付けられるストックの中から、スコットランド・グラスゴーの上空で、特定の星が真っ直ぐに、同蒸留器のネック部分にある覗き窓のような配置で直線に並んだ1977年の仕込みである、特別な原酒のみを使用。セレスティアルの銘に相応しいシングルモルトに仕上がっているそうです。(ロッホローモンド、マスターブレンダー談)

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(付属冊子に書かれた、1977年10月11日スコットランド・グラスゴー上空のスターチャート。太陽、月、金星、土星、火星、木星が連なるように並んでいる。ドライなことを言うと、これがウイスキーの出来に影響したのかは不明。ただし彗星が来た年は素晴らしいワインが出来るというジンクスから考えると・・・。)

自分の知っているリトルミルという蒸留所のハウススタイルを考えると、壮大な前置きに期待と緊張感を覚えつつ、体調を万全にしてテイスティング。
香味ともやはりリトルミルらしい、時にダンボールとも例えられる紙系の要素や植物感がありつつ、余韻にかけては若干ケミカルなニュアンスも伴うトロピカルなフルーティーさ。現在のインチマリンやロッホローモンドにも似たようなニュアンスは備わっていますが、それはもっと人工的で、これも当時のリトルミルらしさと言えます。

また、今回のリリースは40年を越える長期熟成原酒ですが、樽感は圧殺するようなキャラクターではなく、ディアジオのスペシャルリリースにあるハイエンドシングルモルトのような綺麗な構成。むしろ樽由来の香味が酒質と混ざりあって多彩さにも繋がって、全体の完成度を高めています。
アメリカンオーク(おそらく3rdフィルクラスのシェリーカスクかウイスキーカスク)樽とバーボン樽、ボトリング本数から推察するに4樽ほどと思いますが、複数樽のバッティング故の多彩な樽由来の要素。これが
”紙”と”トロピカル”の2つのハウススタイルを繋いでいるのです。
いやいい仕事してますね。ブレンダーの気合いが伝わってくるようでもあります。

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元々好みが別れる蒸留所ではあり、このボトルもそういうキャラクターはあるのですが、それを抜きにしてレベルの高いボトルだと思います。

この40年以外には25年、27年、そして今後29年がリリースされる予定で、こちらは日本にも少量在庫があるとのこと。関西のほうではテイスティングイベントも開催されるようですね。
あのリトルミルが・・・なんて自分のような世代の飲み手は思ってしまうのですが、それだけ閉鎖蒸留所として注目を集めつつあるということなのだと思います。そして今回その一連のシリーズのトップに君臨する1本のテイスティングという、愛好家垂涎の貴重な機会を頂けたこと、改めまして感謝申し上げます。

ボトル画像引用:https://www.whiskyshop.com/

ローズバンク 11年 1980-1992 ケイデンヘッド 150周年記念 60.1%

カテゴリ:
ROSEBANK
CADENHEAD'S
AUTHENTIC COLLECTION
150th Anniversary Bottling
Aged 11 years
Distilled 1980
Bottled 1992
700ml 60.1%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後1ヶ月程度
場所:KuMC@NYさん
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:一瞬チョコレートクッキーやキャラメルアーモンドを思わせる甘いアロマを感じるが、すぐにハイトーンで鼻腔を刺激する鋭いエッジ、微かにメンソール。奥にはベリー系のニュアンスもあり、徐々に前に。樽の良さを感じる。

味:スパイシーで強いアタック。ドライベリー、チョコレートや黒砂糖、微かに青みがかったウッディネス。舌へのアタックは強く、ヒリヒリとした刺激が樽由来の甘みの後に続く。
余韻は程よくドライでビターだが、それ以上にハイトーンで強いキレ上がり。

良質なシェリー樽で圧殺した原酒。とはいえ、比較的若いうちにボトリングしたためか、シェリー感はリッチだが蒸留所の個性と言えるアタックの強さも残っている。少量加水すると多少樽と酒質の距離が縮まって一体感が増すものの余韻のキレは残る。


ボトラーズメーカーのケイデンヘッドが創業150周年を記念してリリースしていたオーセンティックコレクションシリーズの一つ。

同社からは昨年、175周年として様々なリリースが行われていましたが、この150周年のラインナップは長熟至上主義ではないというか、スコッチモルトでは70年代から80年蒸留で10〜20年熟成というマニアが唆るようなスペックが主体。
50年熟成近い不思議な味のタラモアとかも一部ありましたが。それこそこの時期なら60年代の原酒はまだまだ手に入る中で、原酒が潤沢だったというか、手探りだったというか、ウイスキー業界をにおける"時代"を感じる部分でもあります。

このローズバンクもその例に漏れず、11年熟成という短熟ハイプルーフでのリリース。
テイスティングの通り、3回蒸留原酒の鋭くハイトーンな香味が短熟ゆえに去勢されておらず、ファーストフィルシェリー樽と思しき濃厚な樽感が付与されていながら、それを酒質が突き破ってくるような感覚があり。このリリースの評価は、その若さというか、酒質とのバランスをどう捉えるかが大きいと思います。

自分はローズバンクというと、ちょっとやんちゃでキレの良いクリアな麦芽風味という印象から、このボトルはシェリー感に加えてそのらしさも一部感じられる点が面白いと思いますし、ボトラーズメーカー・ケイデンヘッドの1990年代ごろといえば、グリーンケイデンを筆頭にこういう酒質ピチピチのカスクストレングスが多かったですから、そういうらしさも備わったリリースだと感じています。

今回のボトルは、ウイスキー仲間の定例会、国立モルトクラブでテイスティングさせて頂きました。NYさん、いつも貴重なボトルをありがとうございます!

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