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アーストン 10年 アイルサベイ 40% シーカスク & ランドカスク

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AERSTONE 
AILSA BAY DISTILLERY 
SINGLE MALT SCOTCH WHISKY 
Aged 10 years 
700ml 40% 

SEACASK "SMOOTH AND EASY"

評価:★★★★★★(6)

香り:華やかでフルーティー。洋梨やすりおろし林檎を思わせるオーキーなアロマに、ナッツ、麦芽の白い部分の香り。微かに乾草のような乾いた植物感と土の香りがアクセントとして混じる。

味:口当たりは柔らかくスムーズだが、40%の度数以上にリッチでコクとしっかりと舌フレーバーがある。蜂蜜を思わせる甘み、麦芽風味が粘性をもってしっかりと舌の上に残りつつ、オークフレーバーのドライな華やかさが鼻孔に抜けていく。余韻は土っぽさと乾草のような乾いた植物感、微かにスモーキーでビターなフレーバー。序盤の甘みを引き締め、穏やかだが長く続く

アイルサベイ蒸留所の原酒を、同蒸留所の熟成庫で熟成させたもの。一言でグレンフィディック12年を思わせる構成だが、それ以上に厚みがあり、味わい深い。樽構成としては、バーボン樽だけでなく、リフィルシェリー樽の香味もアクセントになっているのだろう。グレンフィディックの華やかさにバルヴェニーの麦芽風味や甘みを足したような、両者の良いとこどりで今後が楽しみな酒質である。
コストパフォーマンスにも優れており文句のつけようがないが、SEA CASKに由来するフレーバーについては難しい。しいて言えば、味わいのコク、舌の上に残るそれが塩味の一要素と言えなくもないか・・・。このリリースに塩気を感じることが出来る感度の味覚を自分は持ち合わせていない。


LAND CASK "RICH AND SMOKY"
評価:★★★★★(5)

香り:やや酸の混じったスモーキーなトップノート。若い原酒特有のゴツゴツとした質感のあるピート香で、土系の香りと合わせて、焦げた木材、クレゾール、根菜的なニュアンスも混ざる。奥には麦芽とオーキーなアロマ、レモンやグレープフルーツを思わせる要素もあり、スワリングで主張が強くなる。

味:オイリーで柔らかいコクと甘み、燻した麦芽のほろ苦さとスモーキーさと、ほのかに柑橘系のフレーバーのアクセント。序盤はピートフレーバーと麦芽風味に分離感があるが、後半にかけて馴染む。余韻はスモーキーで微かに植物系のえぐみ、根菜っぽさを伴う。

アイルサベイ蒸留所の原酒を、グレンフィディック、バルヴェニー留所の熟成庫で熟成させたもの。
ピートフレーバーのしっかり備わったモルトで、樽構成含めて過去にリリースされたオフィシャルボトルと同じベクトル上にある1本で、おそらくピートレベルは20PPM程度。他社シングルモルトで類似の系統を挙げるなら、レダイグやポートシャーロット。根菜や焚火の煙、内陸ピートの強い主張に対し、酒質は柔らかく、麦芽の甘みがしっかりと広がる点も特徴と言える。なお、香りはこれらが合わさって複雑なアロマを感じられるが、味の面では少々分離感があるため、ストレートよりハイボール等がお薦め。

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2007年に稼働した、ローランド地方・アイルサベイ蒸留所から10年熟成のシングルモルトリリース。海辺と内地山間部、2か所で異なる酒質のものを熟成させた、これまでにないコンセプトのウイスキーです。2018年頃に発売されていたのですが、マイナー蒸溜所ゆえに日本に入ってくるのが遅かったのでしょう、今年に入ってからようやく市場で見られるようになりました。

アイルサベイは、グレンフィディック、バルヴェニー、キニンヴィを有するグランツ社が、同社のグレーン蒸溜所であるガ―ヴァンの敷地内に建設した蒸留所です。
グランツ社は、その名を冠するブレンデッドウイスキー・グランツを中心としたブレンド銘柄を、バルヴェニーやキニンヴィ蒸留所の原酒を用いてリリースしていたところ。近年、シングルモルトとしてブランドを確立していたグレンフィディックに続き、バルヴェニーも需要が増えてきたことで、新たにブレンデッド用のモルト原酒を調達する必要が生じていました。

また、同社は傘下にピーティーな原酒を作る蒸留所が無く、ブレンドの幅を広げ、需要が増えているスモーキーなブレンデッドウイスキーのリリースに必要な原酒の確保も課題であったと言えます。
そこで建設・稼働させたのが、このアイルサベイ蒸留所でした。稼働後しばらくはリリースがありませんでしたが、2016年頃にピーティーなシングルモルトをリリース。しかしこれが魅力のある仕上がりだったかと言われれば…SPPMという酒質の甘さを示す指標など、面白いコンセプトはあるけど、やはりブレンド用かなと、あまり惹かれなかったことを覚えています。



その後、アイルサベイ蒸留所については特に調べることもなく、アイルサベイ=ピーテッドモルトだと早合点してしまっていたのですが。。。今回のレビューを書くにあたり、前回から5年越しで蒸留所の全容を把握。グランツ社の原酒調達にかかるロードマップと、アイルサベイ蒸留所の真の姿をようやく認識にするに至りました。

現在のアイルサベイは、16基のポットスチルを持つローランド最大規模の蒸留所。スチルはバルヴェニー蒸留所と同様の形状をしており、ブレンドに用いられる原酒の代替を目的の一つとしています。また、仕込み工程全体では、バルヴェニータイプのモルト以外の原酒を仕込むことも可能なように設計されており、ピーテッドモルトは千重の一重でしかなかったということになります。

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今回のレビューアイテムであるアーストン10年のSEA CASKとLAND CASKは、この2種類をテイスティングすることで、先に触れたアイルサベイ蒸留所のハウススタイルと可能性を味わうことが出来る、実に面白いリリースとなっています。

SEA CASKが、数PPM程度で華やかな風味を主体とするスペイサイドタイプの原酒であるのに対し、内地で熟成させているLAND CASKが20PPM程度でスモーキーさの際立った仕上がりなのは、海=アイラ、アイランズ=ピーティーと言うスコッチモルトに対する一般的な認識からすれば、「逆じゃない?」と思えなくもありません。
ですが、アイルサベイ蒸留所は下の地図でも明らかなように元々海辺に建設されていることや、バルヴェニー蒸留所の原酒を代替する目的があります。つまりアイルサベイ蒸留所で仕込み、熟成させているスタンダードなモルトなのだとすれば、このリリースの位置づけもなるほどと思えてきます。

一方で、精麦設備を持つバルヴェニー蒸留所では、1年間のうち、内陸のピートを焚いて麦芽を仕込んでいる期間があります。これを用いることで、これまでグレンフィディック、バルヴェニー両蒸留所では、少量ながらピーテッドモルトのリリースも行われてきました。
アイルサベイ蒸留所で用いられているピート麦芽が、バルヴェニー蒸留所で仕込まれているとすれば、熟成されているLAND CASK=ピーテッドモルトと言うのも、わからなくもありません。
…公式ページに説明がないので、あくまで個人的な推測ですが(汗)。

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両リリースをテイスティングすることで見えてくる共通する特徴は、コクのある甘み、麦芽風味。SPPMという指標を用いて管理されているほど、蒸溜所としてこの点を意識しているように感じます。
そして今回のリリースだけで判断はできないものの、狙い通りの酒質に仕上がっていというか、それ以上のものを生み出してくる可能性もあると言えます。

実際、SEA CASKはアメリカンオークに由来する華やかさと、蒸溜所の特徴である麦芽由来のフレーバーが合わさって、蜂蜜のような甘みや、洋梨や林檎を思わせるフルーティーな個性。樽構成の違いからか、少し乾草のようなフレーバーも混ざりますが、ドライ寄りなフレーバーが強くなった現行品ではなく、20~30年前流通のグレンフィディックやバルヴェニー蒸留所のモルトを思わせる、40%加水とは思えないフレーバーの厚みが魅力です。正直3000円台のシングルモルト現行品で、このクオリティは素晴らしいです。

一方でLAND CASKはちょっと若いというか、単体では麦芽の甘みに対してピートフレーバーの分離感があるため、現時点では個性を楽しむという飲み方に。ただ、SEA CASKと比較したり、ハイボールにしたり、あるいはそもそもの目的であるブレンドに使われていくなら、力を発揮するでしょう。
ピートと麦芽、その2つの個性の間を他の原酒やグレーンが埋めて凸凹が合わさるようなイメージですね。実際LANⅮとSEA CASKに10年熟成のグレーンを適当にブレンドして遊んでみましたが、悪くありませんでした。既にグランツからピーテッドがリリースされているので、構成原酒としてセットで飲んでみるのも良いと思います。


海の塩気と陸の土っぽさ、みたいな熟成環境によるフレーバーの違いを感じるのがリリースの狙いかと思いきや、構成している原酒のコンセプトから違うという奇襲を受けた本リリース。
というか、SEA CASKのほうに塩気を感じられるかというと、そもそも熟成期間を通じて人間が感知できるだけの塩分量(塩味の認識闘値:1リットルあたり0.585gとして、海水の塩分濃度3.4%から計算すると…)が樽の中に入り込むには無理があります。加えて熟成環境以外の要素として、ピートも極少量で、加水も衛生面で基準値を満たした水が使われているという条件下では、ちょっと一般人の味覚嗅覚では困難なのではないかと考えられるわけです。

他方で環境の違いが温度や湿度にあると考えるなら、アイルサベイ蒸留所はバルヴェニー蒸留所に比べて若干ながら温暖な環境が予想されるため、例えば樽由来のフレーバーが強く出る等の効果も期待できます。結果として、SEA CASKでは予想以上の完成度と、LAND CASKでは面白さと可能性を楽しむことが出来たので、このリリースは先入観を持たず、あくまで今後グランツの主要原酒となるアイルサベイ蒸留所の2つのキャラクターとして楽しむのがお薦めです。

リトルミル 23年 1988-2012 ダンスシリーズ 54.7%

カテゴリ:
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LITTLEMILL 
The Dance 
Aged 23 years 
Distilled 1988 
Bottled 2012 
Cask type Bourbon Hogshead 
700ml 54.7% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:不明
場所:自宅
評価:★★★★★★(6)

香り:ケミカルなニュアンスと共に、華やかなオーク香。微かにハーバル、ジャスミンのようなアロマ。フルーティーさはキャッチーなタイプで、メロンやオレンジキャンディ、和紙紙系のニュアンスを伴う。

味:オイリーな口当たりのなか、駄菓子のオレンジやパイナップルフレーバーを思わせるケミカルなフルーティーさ。余韻にかけて果実の皮を思わせるほろ苦いウッディさ、ハーブ、オーク由来の華やかさがアクセントとなって長く続く。

最近で言うところのジェネリックトロピカル系統。樽感は程よく、リトルミルらしい紙感や、人工的というか薬っぽいケミカルなフルーティーさを主とするタイプ。ただ、オイリーで粘性を感じる口当たりと、ケミカルな要素があざとさにも感じられる。この辺りのキャラクターが、一部の愛好家から熟年の人間を連想させると言われる所以だろう。
加水すると一瞬薬っぽいアロマ、若干ネガティブな風味も出てくるが、すぐに軽やかなフルーティーさ、オーク香が広がる。

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酒置場整理してたら出てきたシリーズ。1994年に閉鎖されたローランド地方の蒸留所、リトルミル。
リリース当時は「最近リトルミル増えてきたよね」なんて、食傷気味ですらあったのですが(市場でも余っていましたが)、5年強経過した現在は閉鎖蒸留所としてオフィシャル、ボトラーズとも価格急上昇中。気が付けば高値の花という蒸留所になっています。
それこそ、昨年発売されたオフィシャルの40年や29年なんて、同じ蒸留所とは思えない価格設定でした。

リトルミルの特徴は、ダンボールだとか紙っぽさだとか、とても食指が動かないような個性的なフレーバーで語られていました。
しかし最近は潮目が変わってきて、「トロピカルなフルーティーさ」などのフルーティーなフレーバーとセットで語られることが増えてきています。
リトルミルのリリースを購入またはBARで注文する際、近年では前者のニュアンスを多少折り込みつつ、後者の個性を強く期待して・・・と言う方も多いのではないでしょうか。
この状況、昔はパッとしないクラスメイトが、同窓会で会ってみたら流行りのファッションを着こなして180度印象が変わっていたような感じと言いますか、あれ?お前こんなだったっけ?みたいな。記憶にある姿とのギャップを感じる古参愛好家も少なくないと思います。

リトルミルの酒質、系統はアイリッシュ寄りの個性があり、若い時はそこまでフルーティーでもなく、むしろ紙っぽさや植物感等”○○警察出動”な要素が目立ちますが、熟成を経て樽由来の風味と交わって熟成感が出てくると、次第に”ジェネリック・トロピカル”とも言われるフルーティーさや、モノによってはよりはっきりとしたトロピカルフレーバーが備わってくるように感じています。



今回のボトルは、その例に漏れずジェネリック系です。
一方で、上の記事にもあるように、昨年オフィシャルからリリースされた29年熟成のリトルミルなど、30年近い熟成年数となるものには、60年代蒸留のモルトに通じるようなトロピカルフレーバーが感じられるものもあります。 80年代以降の蒸留でありながら、なぜこうした個性が生まれたのかは謎ですが、ローモンドスチルを用いた独特な蒸留方法が影響しているのかもしれません。

それを裏付けるように、リトルミルの個性は後継の蒸留所であるロッホローモンドに受け継がれており、原酒の作り分けでリリースされる現在のインチマリンが、熟成したリトルミルに最も近い個性を持っていると感じています。
同蒸留所は、2000年代以降蒸留のシングルカスクやシングルモルトから酒質が向上しており(理由は不明)、インチマリンの場合は蒸留方法の工夫や樽使いから、若い熟成年数であってもフルーティーさがはっきり出ているものもあります。最近はオフィシャルの12年に次いで、2000年代の原酒の比率が増えてきた18年も徐々にフルーティーになってきました。

以前セミナーで聞いた話では、現存するリトルミルの原酒は、1990年代のものはまだあるが、80年代以前はほとんど無いとのことです。現在のブランド戦略から考えれば、残された原酒はリミテッドリリースとして、とんでもない価格でリリースされていくのだと思います。
しかしその個性を楽しみたい人はロッホローモンド(インチマリン)がある。 まだボトラーズ含めて該当する蒸留時期のリリースの少ない蒸留所ですが、今後2000年代以降の原酒が、20年熟成、30年熟成と育つ中で、より明確に好ましいフルーティーさを纏っていく姿を、過去にリトルミルにあった変化から期待したいです。

オーヘントッシャン 8年 1980年代流通 特級表記 43%

カテゴリ:
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AUCHENTOSHAN 
TRIPLE DISTILLED SINGEL LOWLAND MALT 
Aged 8 years 
1980's 
750ml 43% 

グラス:国際規格テイスティング
場所:お酒の美術館 神田店
時期:開封後1週刊程度
評価:★★★★★★(6)

香り:やや古酒感のあるアロマ。べっこう飴や乾いたザラメを思わせる甘いアロマに、やや醤油系のヒネ、干し草っぽさのあるドライなニュアンスを伴う。

味:スムーズだがハイトーン。エッジのたった口当たりに、きび糖のような雑味のある甘さ、微かにレーズンを混ぜたキャラメル、シェリー系の淡いアクセントが感じられる。
余韻はかりんとうやオールブランの軽い香ばしさとほろ苦さ、スパイシーな刺激を伴って長く続く。

3回蒸留らしくピリピリと尖ったような刺激が特徴的な香味構成があり、そこに素朴なモルティーさ、樽由来の甘味が合わさっている構成。少量加水すると、あまやかでコクとほろ苦い味わいがバランスよく延びるあたりに、ベース部分の良さ、時代を感じる。

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今回のボトルは、オーヘントッシャン蒸留所が1984年にモリソン・ボウモアに買収される直前の流通品。その後ボウモア社が1994年にサントリー傘下となったため、この辺りから日本市場との繋がりは強くなって色々リリースが増えていきます。
その反面、このモリソンボウモア買収前の時代は、日本市場では中々レアな銘柄だったのではないかと思います。

今このボトルがバックバーにあると、コアな愛好家が「オッ」と思うんでしょうけれど、1980年代前半頃は洋酒ブーム真っ只中とはいえ地味なラベルに誰も知らない(そもそもどのブレンドに使われているのかもわからない)オーヘントッシャンは、無名もいいところだったはず。
きっと売れなかったんだろうなぁと。ラベルにかかれた三回蒸留表記なんて、なんのこっちゃという感じだったんだろうなあと思われます。


さて、その3回蒸留の原酒ですが、特徴はプレーンでクリアな味わい・・・というよりは、クリーンな反面香味にあるトゲトゲしさ、エッジが立ったような刺激にあると感じます。(現行品のオフシャルスタンダードのオーヘントッシャンは、加水が効きすぎてこのシャープな部分がべったりとした感じに・・・。)
蒸留を繰り返すことで、丸かった酒質から香味、雑味が取り除かれ、シャープに削られていくことでそのような特徴が出るのではないかと予想。結果、その個性が良い方向に出ることもありますが、そもそも3回蒸留の原酒は樽と混ぜてもいまいち混ざりきらないというか、プレーンな樽で熟成させるならともかく、混ぜても何となく特異な質感が残るような印象があるのです。

酒質の引き算とも、あるいは鉛筆削りをしているようでもある三回蒸留ですが、これは昔の麦感が豊富で厚みのあった酒質では、プレーンな原酒を作る上で有効な手法だったのではとも感じています。
今回のボトルや、同銘柄の12年などを飲んで見ると、さすが70年代のまだ麦芽風味が強かった時期の作だなという麦芽風味が残っており、素朴な味わいを楽しむことができるのです。
少しばかり癖はありますが、これはこれで良いシングルモルトだと思いました。

リトルミル 29年 1990-2019 47.3%

カテゴリ:
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LITTLE MILL
Aged 29 years 
Distilled 1990 
Cask type Refill bourbon casks 
Finished Oloroso Sherry Cask & Limousin Oak Cask 
Only 600 Release 
700ml 47.3% 

グラス:国際規格テイスティンググラス
時期:開封直後
場所:ー
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:やや重めの香り立ち。ゴムやオリーブオイル、湿った段ボールのようなニュアンスが最初は感じられるが、徐々にオーキーでスパイシー、後熟に使われたリムーザンオーク由来か、香木を思わせる要素も開いてくる。

味:素晴らしい。香りに反して華やかかつリッチでフルーティー、微かにケミカルな要素を伴うが、60年代のモルトに通じるトロピカルなフルーティーさがまず最初に開く。ライチやマンゴスチン、そこにパイナップルという果実の色合いは白から黄色に変化していくイメージ。余韻はウッディでドライ、序盤のフルーティーさは消えて華やかなオーク香、ハーブティー、微かに和紙のような香りが鼻腔に抜けていく。

香りでは警戒させられたが、思えばこれも含めて香味は”らしさ”がしっかりあり、ハウススタイルに忠実なフラグシップと言える構成。特に味わいのフルーティーさは、なぜ1990年でこれが出るのかという、リトルミルマジック。少量加水すると全体的にまとまりが出て、マイルドでフルーティー。美味。

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先日、ロッホローモンド及びグレンスコシアの輸入代理店である都光さん、ならびにリカーマウンテンさんから、ロッホローモンドグループの最高執行責任者(上の写真の人)の来日に合わせて開催された、関係者向けテイスティングセミナーのお誘いをいただき、ホイホイ参加してきました。

会の目玉はなんといっても、ブランドのフラグシップにして、オフィシャル最長熟のリリースとなるリトルミル29年、そしてグレンスコシア45年の発表。ただ個人的には最近好ましい変化が多く見られるロッホローモンド蒸留所で、いったいどのような取り組みが行われているのか聞いてみたかったことから、非常に楽しみなセミナーだったのです。
その取り組み、原酒の作り訳に関する情報は、追って同銘柄のテイスティングレビューの際にでも紹介させていただくとして。。。

今回はリトルミルです。リトルミルは1994年に蒸留所を閉鎖、その後火災で焼失という悲運もありましたが、原酒はすでにロッホローモンド蒸留所に移されていたため、難を逃れています。
最近は、この原酒を使ってプレミアムなボトルが発表されており、先日テイスティングの機会を頂いたリトルミル40年セレスティアルエディションを始め、29年、27年、25年がそれぞれリリースされています。
原酒については「数は言えないが1990年代のものがまだ残されている」という話でしたので、この手のリリースはしばらく続いていくものと思われます。

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(今年の始め頃に発表された、リトルミル40年1977-2018セレスティアルエディション。長期熟成の原酒らしく、多彩なウッディネスとリトルミルらしいフルーティーさが織り成す奥深い味わい。レビューはこちら。)

さて、先日紹介したリトルミル40年は熟成期間の長さから樽感が強く出ていましたが、今回の29年は適度。リフィルバーボン樽で熟成された原酒のフルーティーさを活かした、良い部分が解りやすい構成です
後熟に使われたシェリー樽とリムーザンオーク樽の要素は、香りのほうでやや重たい雰囲気を作り出していたものの、味の方はそこまで目立たず、繋ぎに徹してバランスの良い仕上がりとなっています。正直、40年よりも今回のほうが好みでした。

一方、同時にテイスティングしていたビル氏のコメントは「典型的なローランドスタイルで、フローラルで、パフューミーで、ラベンダーなどの花のようですよね。」とのことで、たぶんこの味わいのフルーティーさをフローラル、パフューミーと指しているのだと思いますが・・・この辺は国の違い、感じ方の違いというヤツなんでしょう。
確かにリトルミルでも60年代蒸留のものがパフューム系統の香味に変化しかけているものに当たったことはありますが、このボトルはそうではなく。近い系統のボトルをあげると、クーパーズチョイスのリトルミル30年1985-2015。我々の言うところのトロピカル路線なのです。

そんなわけで、蒸留所の個性もありつつ美味しいリトルミルであるこの1本。
なお価格については、40年の6000ポンドほどではないものの、税抜380000円となかなか。
なんというか、ここまで来ると芸術品ですね。リトルミルにしても、ローズバンクにしても、亡くなってしまった芸術家の作品が、ある日突然注目されるような。
自分のような一般人ではそうそう飲めないような貴重な1杯、機会を頂きただただ感謝です。

リトルミル 25年 1988-2014 パールズオブスコットランド #136 49.9%

カテゴリ:
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LITTLEMILL 
The Pearls of Scotland 
Rare Cask Selection 
Aged 25 years 
Distilled 1988 
Bottled 2014 
Cask No, 136 
700ml 49.9% 

グラス:国際企画テイスティング
時期:開封後1年程度
場所:自宅
評価:★★★★★★(6)

香り:ケミカルで和紙っぽさを伴うドライなアロマ。合わせてオーキーな華やかさ、バニラ、パイナップルキャンディを思わせる人工的な甘みとフルーティーさ。また、微かに青みがかったようなニュアンスとハーブの爽やかさ、乾いたウッディネスを感じる。

味:ややオイリーで香り同様にケミカルなフレーバーと、若干青みがかったフルーティーさ。蜜のような甘味と粘性を感じた後で、余韻はウッディでほろ苦く、微かにナッツを思わせる香ばしさとハーブ香を、オークフレーバーに伴う張り付くようなフィニッシュ。

いかにもボトラーズリトルミルらしい個性。アメリカンオークとの組み合わせがケミカルなフルーティーさを底上げして、良い方向に作用している。加水すると柑橘系、あるいはビタミンCタブレットのような甘さ。少し粉っぽいような人工的な質感が香りに感じられ、ジェネリック系統のトロピカルなフルーティーさもじわじわ広がる。一方でボディは緩くなりやすく、加減が難しい。ハーフに数滴が適量か。

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最近見なくなってきたボトラーズ・リトルミル。ローズバンクやブローラなど、現在高額で取引される閉鎖蒸留所も、ほんの5~10年くらい前はボトラーズリリースが豊富にありましたが、近年一気に高騰した背景を考えると、リトルミルもいよいよその時が近づいているのかもと感じます。

閉鎖or稼働のどちらにあっても、高騰する蒸留所とそれなりな蒸留所の線引きは、オフィシャル側の後押しの影響が強い、というのが自分の理解です。
価格はブランド力に直結するバロメーターです。ブランドを作るのはボトラーズ、オフィシャルどちらもあり得ますが、販売網とPR力はやはりオフィシャルの方が強く。特に大手が何十万円という値付けで限定リリースを出し、それが市場に受け入れられた瞬間、その前例に引き上げられる形で、安価に取引されていたボトラーズ側の高騰が始まるという流れが近年多く見られます(逆にロングモーン等は、ボトラーズとユーザーがブランドを作った例)。

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リトルミルは先日レビューさせていただいた、セレスティアルエディション1977(写真上)が、6000ポンドととんでもない価格設定でリリースされましたが、日本市場に入る間もなく完売したという流れを見るに、いよいよ・・・という訳です。
リトルミルが?という意見もあると思いますが、この手の流れに味や個性はあまり関係ないんですよね。そういう疑問点がありながらも高値で流通するボトルがリトルミルだけではないことは、周囲をちょっと見れば事例に当たるように思います。

またリトルミルといえば、紙っぽさやハーブのような癖が特徴としてあげられる一方で、近年に限らず熟成したものはトロピカルなフルーティーさを持っているボトルが多く見られ、最近だとNGという声もある反面、好む声も多くなったように認識しています。
60年代、70年代は麦由来の要素を含む真の意味でトロピカルと言えるものが。80年代からはケミカルな要素を含むアイリッシュウイスキーを思わせるタイプが主流。ネガもありますが、今回のボトル含めてキャッチーな要素が備わっているんですよね。

余談ですが、今回レビューする1988年あたりの蒸留所の遍歴を見ると、リトルミルの閉鎖は1994年。加えて1984年から89年まで創業を休止したという情報もあります。
当時のウイスキー需要減から生産調整に入っていたとしても違和感はありませんが、ボトラーズリリースが84,85,86、そして今回の88と続いていて、確認できないのは1987年のみであることを考えると、実際は少量生産されてそれがボトラーズメーカー(ボトラーズに転身する前のブレンドメーカー)に買い取られており、近年の集中的なリリースに繋がったのではないか。
87年については、蒸留所の親会社がギブソンインターナショナル社に変わった年であることから、この年の一時期だけ稼働していなかったのでは。。。と推察しています。

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