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ロングロウ 18年 オフィシャル 46% ブラインド

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LONGROW
Aged 18 years
Cask type Sherry
Release 2013
700ml 46%

【ブラインドテイスティング解答】
地域:キャンベルタウン
蒸留所:スプリングバンク(ロングロウ)
年数:12年程度
樽:シェリーを含むバッティング
度数:43%程度
仕様:オフィシャル、加水

グラス:木村硝子テイスティング
時期:不明
場所:自宅@ブラインドサンプル
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:蝋燭、生焼けホットケーキ生地とキャラメルが混じったような甘いアロマ。スワリングしているとウッディで黒砂糖を思わせるシェリー香とオレンジママレードを思わせる熟成感。

味:水っぽさのある甘い口当たりから、香り同様に蝋のような麦芽風味が主体。ほのかに粉末魚粉、奥には黒砂糖やカラメルソースを思わせるシェリー風味。ややべたつく甘みから、ほろ苦く土っぽいさ、若干の渋みを感じるドライな余韻。味の濃さの割に長くは続かない。

スプリングバンク蒸留所系列の独特の個性があり、関連するボトルであることは間違いない。ボディと個性はしっかりしているが、何処と無くシェリー感に混ざったような、あるいは水っぽさとも感じる。フレッシュシェリー樽的なモノが使われて、シェリーそのものが結構混じっているのだろうか。


ウイスキー仲間のぎんがさんからのブラインド出題、ラスト1本。このサンプルはここまでの2本(グレンカダム、ダラスデュー)とは異なり、個人的には非常にわかりやすい個性が備わっていて、ノージングで系列蒸留所、つまり近年のスプリングバンク仕込みであることは絞れました。

ウイスキーを飲むと、モルティング済みの麦芽の白い部分をかじったような・・・おしろいやお粥のような香味がする原酒があります。
近年のスプリングバンク系列の場合、その風味が濃いというか独特。自分の感覚では蝋燭っぽさだったり、ホットケーキミックスをこねた後のなま生地のような香味だと認識しています。
該当するのはヘーゼルバーン、スプリングバンク、ロングロウ、そしてキルケラン。前者の麦芽風味はハイランド地方を中心に多く見られますが、後者の香味が出ているのは近年のスプリングバンク系列以外で経験がありません。

そこにビターなくらい効いたピートとなれば、残るはスプリングバンクかロングロウです。
一方、口当たりで感じた樽感の緩さというか水っぽさ、そして中間から余韻にかけての樽感のベタつきが今回のアヤ。まだ若く樽感と酒質が一体化してないような。。。熟成年数が12〜15年くらいのオフィシャルシングルモルトで43%程度を想定しましたが、正解はどちらもそれより長く高い。開封後の時間経過によるものか、樽成分由来か、ただまあ冷静に考えると、予想したバンク系列の蒸留所の時点でオフィシャルは46%仕様でしたね(笑)。


そんなわけで、ノージングの段階である程度絞れていたブラインドでしたが、弾幕となったのが今回の出題意図。このサンプルに似てると思うと提示されていたのが、「スプリングバンク21年2018年リリース」。
まさか同じ系列の蒸留所を入れてくるか?と散々勝手に悩まされました。
ああ、全くなんて腹黒い出題者なんでしょう。

自分は今年のスブリングバンク21年は飲めていないため、この構成についてコメントできないですが、2017年リリースの21年は先日飲む機会があり、やはり先に述べたように麦芽風味に独特の個性が感じられます。
ピートの有無、発酵層や蒸留器、そして麦芽の品種。これらが入れ替わっても該当するフレーバーは替わらないため、これはスプリングバンクのフロアモルティング由来と考えるのが妥当。。。ただ、実際のところどうなのかはわかりません。
しかし近年、様々な蒸留所で酒質が細くなりつつある中、こうした樽でもピートでもない小手先だけではない個性は得がたいもの。蒸留所として高い評価を受けているのも、納得出来ると感じています。


以上で今回のブラインド出題の解答は終了です。
テイスティングの経験を得られるだけでなく、その独特な出題方法から、サンプルに対する認識のキャッチボールをしているような興味深いブラインドでした。ぎんがさん、改めて出題ありがとうございました!

ロングロウ 19年 1998-2017 シングルカスク ウィスク・イー向け 56%

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LONGLOW
SINGLE CASK
Aged 19 years
Distilled 1998
Bottled 2017
Cask type Refill Sherry Butt
An Exclusive Bottled for Whisky-e
700ml 56%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:持ち寄り会
時期:開封後1ヶ月以内
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:甘くどっしりとしたシェリー香、焦げたカラメルソースやみたらし醤油、コーヒーチョコレート。ピーティーなスモーキーさに加え、サルファリーな要素も混じっている。

味:パワフルでリッチな口当たり。キャラメルソースの甘みと焦げ感、ローストした麦芽風味。合わせてサルファリーなニュアンスも混じるが、全体的な濃さゆえすぐにかき消される。
余韻はドライでソルティ、ダシっぽさとピーティーなモルトスナックの香ばしさ、ほろ苦さを伴う複雑な余韻。

樽感が強いが、それ以上に酒質として際立った個性のあるヘビーな構成。今すぐ飲んでもロングロウとして愛好家から求められる要素はあると感じるが、10年、20年瓶熟させても面白そう。少量加水すると独特の麦系の風味に加えソルティな要素が判りやすくなるものの、硫黄要素も表面に出てくる。
それにしても、飲んでいて妙に食欲をそそられるのは自分だけだろうか。

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スプリングバンクのヘビーピーテッドタイプであり、コアな愛好者の多い銘柄でもあるロングロウ。
今回のリリースは、一言でアメリカンなグルメ。BBQのように大味でワイルドで、しっかりとしたタレ系の味付けの中に、素材由来の味わいも潜んでいる。そんな印象を持つシングルモルトです。

近年のロングロウでシェリーカスクというと、こうしたどっしりとした味付けのものが目立つようにも思います。
直近で近い熟成年数のリリースで、比較的色の薄かった18年にしてもやはりシェリー感が独特。出汁の混ざったカラメルというか、薄口醤油ダレというか。合わせて感じるサルファリーさが自分にとっては苦手な要素なので、毎日これを飲みたいとは思わないのですが、ハマる人はトコトンハマる、アイラとは違う中毒性があるのもわかります。

(スプリングバンク蒸留所はフロアモルティングを100%行う数少ない蒸留所。キルニングで使われるピートは写真奥の乾燥したタイプと手前の湿り気のあるタイプ、産地も異なる2種類が使われている。Photo by K67)

スプリングバンクとロングロウ、特にロングロウではその位置付け上ピートの個性が強く出ています。
かつてスプリングバンク蒸留所では、キャンベルタウン産の石炭やピートを用いた仕込みが行われていましたが、現在使われているピートは写真の乾燥タイプはトミントール、湿っているタイプはインヴァネス地区産という話。ただキャンベルタウンにもPeat bogはあるようなので、全く供給していないワケではないと思うのですが、需要と供給に対して他の地方のものも使わなければ生産が追いつかないということなのかもしれません。

ちなみに乾燥したピートに比べ、湿ったピートの方が強く煙が出る性質があります。つまりより強く燻すことが出来るということで、ピートを混ぜることで香味への影響を調整していると考えられます。
ロングロウは湿ったピートを多めに炊いて強く風味をつけているとか、スプリングバンクの方は乾燥タイプが多めとか、一口にピートと言っても色々あって、飲みながら考える楽しさがさらに増えますね。

ヘーゼルバーン 13年 2002-2016 DUTY PAID SAMPLE 55.9%

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HAZELBURN
DUTY PAID SAMPLE
Aged 13 years
Distilled 2002
Bottled 2016
Cask type F Conac Butt
700ml 55.9%

グラス:サントリーテイスティング
量:50ml以上
場所:ホテルラウンジ(個人所有ボトル)
時期:開封直後
暫定評価:★★★★★★(6-7)

ヘーゼルバーンはスプリングバンク蒸留所で作られるノンピート麦芽と3回蒸留が特徴、スプリングバンクの兄弟銘柄です。かつては実際に操業している蒸留所でもありましたが、こちらはキャンベルタウンのウイスキー産業衰退を受け1925年に閉鎖。1997年から、スプリングバンクの1銘柄として生産される形で復活しています。
閉鎖されたほうのヘーゼルバーンは、マッサンこと竹鶴政孝が修行した蒸留所の一つとしても有名ですね。

実は個人的にヘーゼルバーンはこれという良い印象は持っておらず、スプリングバンクやロングロウの陰に隠れているようなイメージすらありました。というかその元凶は、かつて販売されたヘーゼルバーンCV(初期のセット販売向け200mlボトル)にパフューム香を感じたり、当時リリースされていた8年のもっさりしたような味わいにピンとこなかったため。 
その後、スプリングバンクやロングロウは飲む機会がある中で、ヘーゼルバーンはほぼないまま時間だけが過ぎていきました。

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(スプリングバンク蒸留所のフロアモルティング風景。切り取られた1枚から伝統的な美しさを感じる。同製麦工程の効果について科学的な報告はないが、麦の乾燥が機械式と比べて均一でないことが香味の多様性に繋がるのではと推察。Photo by K67)

そして今回、偶然にもテイスティングの機会が巡ってきたのが、このDuty paid sampleです。
この見慣れないボトルは国内未流通はもちろん、基本的には現地ケイデンヘッドのショップと、スプリングバンク蒸留所(あるいはケイデンヘッド)と繋がりのあるショップで販売されている、まさに愛好家のための1本。
樽を全て払い出すのではなく、一部をボトリングして文字通り"税金支払い済みサンプル"の下に販売している・・・といった感じでしょうか。樽違いで複数種類がリリースされているだけでなく、ヘーゼルバーン以外にもロングロウ、スプリングバンクのリリースもあり、そのマニアックさ故か購入された方曰く、現地のショップには普通に在庫が残っているとのことです。


今回の1本はバーボンやシェリーではなく、フレンチオークのコニャックカスクとは変化球な・・・モノを見た瞬間から出来栄え以上に、どのような個性が感じられるかが楽しみでもありました。

麦芽系の素朴な香り立ち、干し草、微かにライチや洋梨のような果実香が混じる。3回蒸留だからローランドモルト的な個性というほど、エッジの鋭い飲み口や、ライトな味わいというワケではなく、スプリングバンクに共通する蝋っぽさを伴う麦の旨み、柔らかいコクとほのかな酸味があるしっかりとした造りのモルトです。
ともすればギスギスした味わいに感じられるような舌当たりや、コニャックカスク由来の酸味やウッディーさの強い樽感もなく、しみじみ旨い、バランスの良いところに落ち着いています。
この日、写真の分量で2杯も飲んでしまったことから、度数を感じさせない飲みやすさや美味しさは伝わるのではないかと思います。

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余談ですが、こちらは同じDuty paid sampleのロングロウです。
ヘーゼルバーンを飲んだ次の日の夜、偶然にも頂きました。
フレッシュシェリーカスクのホグスヘッド樽で、出汁っぽさのあるシェリー感が出ている一方、ピートや塩素、そして独特の麦感に樽由来のサルファリーさも混じり・・・随分やんちゃでそれぞれの個性がぶつかり合うような味わいでした。 

こうした個性豊かな味わいを楽しめるのも、単一原酒であり単一樽だからこそ。 現地でショップを訪れた方など、機会がありましたら是非このシリーズのボトルを試してみてください。 

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