ジャマイカラム クラレンドン 14年 2007-2021 for BARレモンハート 66.2%

JAMAICA RUM
CLARENDON
Aged 14 years
Distilled 2007
Bottled 2021
Cask type American Oak Cask
For BAR LEMON HEART 35th Anniversary
700ml 66.2%
評価:★★★★★★(6)(!)
香り:溶剤を思わせる鼻腔への刺激。合わせてコニャックのような華やかさと梅酒のような甘酸っぱさ。アプリコットや白葡萄、アップルパイを思わせるフルーティーさにハーブやハッカを思わせる要素が力強く、パワフルに感じられる。
味:トロリとした粘性を伴う口当たり。樽由来の甘み、程よいウッディネスと含み香は柑橘の皮と紅茶を思わせるようであり、パワフルで舌から喉を熱く燃やすような刺激が余韻にかけて喉の奥から口内へ戻ってくる。
近年のトレンドとも言えるフルーティーで華やかなラム。ジャマイカラムらしいパワフルで厚みのある香味、ラムらしいクセもあるが、わかりやすい美味しさから高度数に慣れてる人なら問題ないだろう。またロックやハイボールにしても悪くないため、ストレート以外の飲み方も許容する間口の広い面もある(ただしラムコークは薬品香強く厳しい、ウーロン割は以下略)。
何より、ラベルとなっているBAR レモンハートの由来であるラム銘柄「Lemon Hart 151Proof」を思わせる個性と、楽しそうに飲むメインキャラクター3名の姿に、ファンも口角が上がる美味しさと面白さを備えた1本である。

漫画だけでなくドラマとしても愛されるBARレモンハート、その原作の連載35周年を記念したボトル。
漫画の連載開始は1985年で、35周年というと2020年ですが、コロナ禍や物流の混乱、更に後述するご不幸もあってリリースが遅れ、2022年5月に発売となりました。
残念ながら、著者である古谷三敏氏は昨年12月にがんでお亡くなりになられてしまいましたが、原酒の選定、ラベルの執筆にはかかわられたとのこと。同氏もお気に入りの原酒であったとされています。
(参照・販売先:https://barlemonhart.com/shopdetail/000000000758/)
今でこそ、ウイスキーをはじめとした酒類の情報はインターネットを通じて容易に手に入れることが出来ますが、レモンハート連載開始当時は情報も少なく。そんな中で魅力的なキャラクターと、わかりやすくまとめられた蘊蓄の数々は、多くの愛好家に影響を与えたのではないかと思います。
かくいう私もウイスキーを本格的に飲み始めて以降、単行本も買い集め、キングスランサム、シングルシングルベレバーレイ、グレングラント38年…等々、これは飲んでみたいと、BARや酒屋でお酒を探すきっかけにもなりました。
また、自分でウイスキーのリリースに関わるようになってからは、いつか関わったボトルがレモンハートに掲載されたら良いなと。マスター、メガネさん、松ちゃんはどんなコメントをするんだろうか。そんなことも妄想したりしました。
その夢は、おそらく叶うことはなくなってしまった訳ですが…。



(今年4月にはお別れの会が都内で開かれ、ご招待頂きました。いち読者、いち愛好家として献花させて頂きました。)
さて、テイスティングノートでも触れたように、元々漫画BARレモンハートのタイトルの由来は、連載開始当時、アルコール度数が最も強いとされていたラム、Lemon Hart 151Proof (75.5%)からとられたものとされています。
Lemon Hartは、ウイスキーで言う山崎や白州のような、単一蒸留所の名前をとった銘柄ではなく、蒸留所非公開で買い付けた原酒を元にブレンド、生産されているブランドとなります。
そのため、1980年代と現代ではブランド所有者も変わり、蒸溜所も異なるとされていますが、オリジナルの151Proofは、ガイアナで作られる濃厚な色合いのデメラララム(ダークラム)。これは非常にパンチのある味わいである一方で、黒蜜やキャラメルのような濃厚な甘さ、ダークフルーツのアクセントがあり、カクテルベースはもとより、葉巻との相性も抜群のラムとなっています。
一方で、今回のPBリリースは、ジャマイカにあるクラレンドン蒸留所の原酒がボトリングされています。どこの蒸留所?と思われる方は、マイヤーズラムの構成原酒、というとイメージしやすいでしょうか。
しかしコアな愛好家だと、レモンハートの記念ボトルはオリジナルと同じデメラララム、ガイアナ産であってほしかった、という想いもあるかもしれません。ですが一時期、Lemon Hartはジャマイカラムもリリースしており、決して無関係というわけではありません。
また、味わいも濃厚な甘酸っぱさと華やかさがありつつ、余韻は151Proofのそれを彷彿とされる、ジャマイカラムらしいパワフルで燃えるような刺激もあって、いかにもワイルドな男の酒と言う感じに仕上がっています。
マスターはきっと笑顔になるし、メガネさんは良い酒だとニンマリ呟くでしょう。松ちゃんはひえーと叫んで水か氷を入れてくれと言って、マスターから「こんないい酒を水で割るなんてもったいない」なんて注意されているかもしれません。
なんだか原作蘊蓄成分多めな記事になってしまいましたが、単純に熟成ラムとして見ても、この1本は価格的にも香味的にも、ウイスキー好きにオススメな1本です。
特にシングルカスク系のリリースを普段から飲まれていて、ホグスヘッド樽で長期熟成した内陸モルトが好みな方。あるいはグランシャンパーニュ等の華やかなコニャックがお好きな方。ラムらしい癖は当然ありますが、それ以上にわかりやすい美味しさで、1日をキッチリ締めてくれることと思います。
メガネさん「強い酒を飲んで記憶が切れる時、これは最高の快楽の境地なんだよね」
では、今夜はこのあたりで。。。
