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テンプルトン ライ バレルストレングス 2020年リリース 56.55%

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TEMPLETON RYE 
BARREL STRENGTH 
LIMITED BOTTLED 2020 
750ml 56.55% 

評価:★★★★★★

香り:スパイシーでパワフル、チャーオーク特有のメープルシロップと、微かに溶剤や焦げた香りを含んだ色濃い甘さ。そこにシナモン、ジャスミン、ライウイスキーのハーバルな個性。オレンジ系のフレーバーティーのような、紅茶葉の渋みと人工的なニュアンスを伴う。

味:スムーズでメローな口当たりから、ハーバルな含み香や林檎を思わせる甘みの後で、甘酸っぱさ、徐々にハイトーンでスパイシーな刺激が口内に広がる。ライウイスキーらしいフレーバーに、度数相応の強さと粗さのある味わいと言える。余韻はスパイシーでほのかにビター。ウッディなタンニンが染み込むように長く続く。

完全に通好み。原料比率的にも香味的にも、一般的なバーボンウイスキーの中に含まれているライのニュアンスを濃縮した構成で、調整されていない香味故に少々アンバランスにも感じられる。ライウイスキーの個性とは何かを勉強するための1本としても良いだろう。
加水すると刺激はやわらぎ、ハーバルなアロマがふわりと広がるが、ボディはかなり軽くなる。個人的にはロックよりハイボールがお薦め。主張しすぎないチャーオークのフレーバーに、軽やかな口当たり。程よく残るライウイスキーの個性で度数を感じず、ぐいぐい飲めてしまう。カクテルベースとしても面白い。ただし元の度数は56%であるため、ストロング系よろしく思考停止に陥りやすいので注意。

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現代のバーボンウイスキーの原料構成は、基本的に大半がコーンであり、10~20%程度のライ麦、5~10%程度が大麦で、銘柄によっては小麦が一部使われるという構成が一般的です。
一方で、ライウイスキーは51%以上のライ麦から構成され、かつてはペンシルベニア州等を中心に造られていたものが、バーボンのカクテル需要が増えたことで徐々に淘汰されていったそうです。

しかし、昨今ライウイスキーを再評価する動きが業界・市場にあり、様々な銘柄がリリースされてきています。このテンプルトンライも同様で、実は2006年に誕生した比較的新しいブランドです。
マッシュビルはライ麦95%、大麦5%。大麦は糖化酵素を利用するためと割り切って考えれば、ほぼオールライウイスキー。昔の言葉を使えば、Pure Rye Whiskyということになるでしょうか。スタンダード品は4年熟成、度数40%と、万人向けとも言える仕様で販売されていますが、2018年から今回テイスティングしたバレルストレングスのハイプルーフ仕様が限定リリースされています。

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(テンプルトンライと言えば、ずんぐりとした形状のボトルデザインで知られているが、本国ではボトルデザインの変更等が発表されている。また、10年熟成品のリリースも発表されているが…)

バレルストレングスの熟成年数は非公開ですが、特段長期熟成という感じはなく、おそらくスタンダード品とほぼ同じ、5年前後というところでしょうか。ライ麦に由来する風味は、スタンダードの40%仕様のボトルとは比べ物にならず、力強くスパイシー、独特の癖のある風味を楽しむことが出来ます。
この個性は好みが分かれるところと思いますが、個人的な好みとしては現代のバーボンよろしく樽感が足りないので、ウイスキーエレメンツをエントリー。カクテルベース、ハイボールにするならそのままですが、ストレートやロックで楽しむなら、古き良き時代を思わせる濃厚さが琴線に響きます。

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さて、誤解してほしくないので前置きすると、テンプルトンライは好きな銘柄の一つです。今回のバレルストレングスも、個性的ですが充分好みの範囲です。
ただし、この銘柄を紹介するにあたっては、避けて通れないエピソードがあり、それを以下にまとめていきます。
日本のウイスキーメーカー、あるいはスコッチウイスキーにあっても対岸の火事ではない話です。

テンプルトンライのブランドを保有しているのは、アイオワ州にあるテンプルトン蒸溜所です。元々、同ウイスキーは禁酒法時代に同州の農民が造っていたもので、確かにアルカポネが愛飲していたというエピソードもあるようです。
一見すると、長い歴史があるように見える同ブランドですが、
・現在販売されているそれは2006年に復活した新しいブランドであること。
・マッシュビル等、禁酒法時代のものを再現しているわけではないこと。
という事実があります。

また、話をややこしくするのが、同蒸留所が蒸留プロセスを開始したのは2018年頃からであり、現在インディアナ州のMGP・ローレンスバーグ蒸溜所で蒸留・熟成された原酒を、アイオワ州の工場に運び、加水、ボトリングを行う生産プロセスが取られているということです。
つまり、現在販売されているテンプルトンライは、有体に言えば、単にライ比率が極端に高いウイスキー、ということになるのです。

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(2000年代のテンプルトン工場(左※1)、2017年に発表された蒸溜所拡張計画の完成予想図(右※2)。2000年代時点で蒸留設備はなく、拡張計画では手前側の建屋がビジターセンターとなり、奥に新たに蒸留棟と熟成庫が新設された。)

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(2018年から稼働を開始したテンプルトン蒸溜所のスチル。MGPで使われているコラム式連続式蒸留機ではなく、ポットスチルを用いた蒸溜が行われている。※3)

我々の身の回りでも見られる製法、というか商法ですね。
ところが、流石は訴訟大国アメリカ。当時ラベルに書かれていた内容である”アイオワ州で生産”、”禁酒法時代のレシピに基づいて”という実態との乖離から、消費者に誤認を与える虚偽広告として集団訴訟に発展したのです。結果、PRが行われていた2006年から2015年までの間にテンプルトンライを購入した消費者1人あたりに、3ドルから最大36ドルの補償が行われることで和解しています。※参照記事

大規模な蒸溜所に特定仕様の原酒をオーダーし、蒸溜設備を持たない様々なメーカーが商品をリリースする方法は、アメリカンウイスキー業界では割と当たり前だったりします。大型の連続式蒸留機の稼働コストはバカにならないので、効率主義というだけでは片づけられませんが。。。ブランドだけ売買されて、蒸溜所が今と昔で違うなんてのも日常茶飯事です。
とはいえ、確かにテンプルトンライの販売広告は、悪乗りしすぎた結果の一つということなのかもしれません。戦略とはいえ、過ぎたるは及ばざるが如し、何事にも超えてはならない一線はあります。

この訴訟をきっかけに、類似のケースとみられるブランドについての集団訴訟も計画されるなど、一部愛好家からはバカバカしいとまで言われる状況であるものの、アメリカンウイスキーのあり方について業界に一石を投じたのは事実です。ラベルやPR方法の見直しに加え、昨今のウイスキーブームを受けて自社で蒸留を開始するメーカーも増えてきている状況には、少なからずテンプルトンライ集団訴訟が関係していると考えられます。

ではこれがバーボン含め、アメリカンウイスキー全体の品質を上げることに繋がるのかと言われたら、それは「様子を見てみよう」としか言えません。
製造拠点が分散し、スモールバッチが増えることは単純に考えるとコストの増大に繋がります。また、昨今小規模な新興蒸留所によるクラフトバーボンが市場に出回り始めていますが、ノウハウの乏しい作り手によるウイスキーは、品質的に大手メーカー品に大きく劣るケースも珍しくありません。
果たしてアメリカンウイスキー業界の行く末は如何に。テンプルトン蒸溜所のウイスキーがリリースされるのは2022年。願わくば、一層高品質かつ、個性豊かなウイスキーが市場に増えることを願って、本記事の結びとします。

【画像引用】
※1 http://www.templetoniowa.com/Public/Business%20pages/Templeton%20Rye%20Distillery.htm
※2 https://thewhiskeywash.com/whiskey-styles/american-whiskey/templeton-rye-begins-construction-honest-goodness-distillery/
※3 https://templetondistillery.com/visit/

クラウンローヤル ノーザン ハーベスト ライ ”ウイスキーバイブル2016 ワールドベストウイスキー”

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CROWN ROYAL
Northern Harvest RYE
90% Rye Whisky
45% 750ml
"Jim Murray's 2016 World Whisky of the Year"
暫定評価:★★★★★(5)

香り:ウイスキーで理解されているパフューム香とは異なる香水や芳香剤そのもののような人工的な華やかな香り立ち。レモンシロップ、アップルジュース、切り出した青竹のような清涼な植物感、深く吸い込むとゴム、軽油のようなケミカル、微かなセメダイン臭もある。
ボディは薄く香りは持続しない。時間経過で華やかさは収まっていき、穀物的な甘い香りが主体となる。

味:滑らかだがオイリーで徐々にべったりした口当たり、そこから酸味の少ないアップルジュース、スペアミント、華やかな穀物感。中間から後半にかけては淡い樽感も感じられるが、ボディに厚みはなく、やや単調気味。
フィニッシュは人工的なシロップのような甘み、べったりと長く残る余韻。

違和感を感じるほどの華やかさの中で、意識的に紐付けていけば、カナディアンらしさ、ライ系の風味も感じられるボトル。例えるなら近年見られるアイリッシュのフルーティーさを、グレーンで出そうとしたような。
グラスは液面が近いタイプのほうが香味がわかりやすいようで、グレンケアンでハーフショットなどでは細かい要素が拾いづらい印象。ハイボールはスッキリ系だが少々薬臭い。ロックにするとオイリーさが収まりグレーン系の香味と甘さが引き立つ。爽やかで引っ掛かりがなく、夏場に飲みたいウイスキー。


先日記事にしたジムマーレイ著のウイスキーバイブル2016、その中で全テイスティングアイテム中最高得点となる97.5ポイントを獲得。直近でリリースされたジャパニーズ、バーボン、スコッチらを抑えてワールドウイスキーオブザイヤーに輝いた、全世界注目のアイテムです。 
このウイスキーに関して、飲み手各位が注目する要素は、最高点に相応しい旨さがあるかどうかだと思います。
なので結論から書くと、マズくはないが旨いウイスキーとは言い難く、加点するかも悩みました。はっきり言って、これが世界一とする評価には疑問を感じざるを得ないレベルです。

口開けで感じた露骨な華やかさ、飲みやすさが琴線に触れたのかもしれませんが、そうであっても好みというかウイスキーに対する考え方、世界観の違いを感じます。
例えばパフュームボウモアが世界一のモルトだと評価するようなもの。大多数の飲み手は間違いなく賛同しないでしょう。

カナディアンウイスキーは、連続式蒸留器で穀類を原料としたもろみを蒸留する、ざっくり言ってしまえばグレーンウイスキーです。 
グレーンウイスキーの香味については飲んでいただくのが一番ですが、ライトなバーボンと言えば、流石にこのブログを読まれている方には、ほぼ全員に通じると思います。
ライト&スムーズ、華やかで軽やか、穀物的なバニラ風味、モノによってはフルーツ感もあるが香味の傾向は単調気味。
そうした傾向の風味は、このクラウンローヤル ライにもあるはあるのですが、香味の強いフレーバリングウイスキーに該当する原酒を9割以上使っていることが、今回の独特な香味に繋がっているようです。
注ぎたては特に芳香剤や薬品系の人工的な華やかさが支配的で、奥から感じられるグレーンの風味が逆に「あぁ、ウイスキーだ」と安心させてくれるほど。

これまでライウイスキーは何度か飲んできましたが、そのどれとも傾向が異なる。目をつぶってブラインドで出されたら、ウイスキーではないものを解答してしまうかもしれません。
ちなみに原料比率で全体の90%を締めるライ麦、このライ麦はカナダ産のものが使われており、かつてウイスキーマガジン上で特集された、ライ麦はヨーロッパ産のほうが適しているという特集にカウンターを入れた形にもなっています。

ライ麦を知る【後半/全2回】 ウイスキーマガジン
http://whiskymag.jp/rye_2/


クラウンローヤル ライは現時点で日本では販売されておらず、カナダでも昨年12月から売り切れが続出しているそうです。
そんな中、ウイスキー仲間のIさんが、ブログネタ、ならびにTWDのテイスティングで使ってくださいとボトルを届けてくださいました。
IさんとはFBでの繋がりで、お会いしたのは昨年11月のアラン20周年イベントで1度きり。それがこんな貴重な機会を頂けるとは・・・感謝以外に言葉がありません。
このボトルに開封を躊躇する理由もなく。即日開封、即日テイスティングさせていただきました。 (おかげで今日は寝不足ですw)
Iさん、本当にありがとうございました!

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