タグ

タグ:モルトヤマ

アンジュ・ジアール 15年 ウイスキーカスクフィニッシュ for モルトヤマ 59.1%

カテゴリ:
IMG_6551

ANGE GIARD 
CALVADOS 
Aged 15 years old 
Malt Whisky Cask Finish (8 month)  
Bottled 2021 
For Maltyama 
700ml 59.1% 

香り:カスクストレングス&ハイプルーフらしくはっきりと強く、その中に独特のこもったような甘酸っぱさ。シロップ漬けの杏や赤リンゴ、徐々にカルヴァドスとは異なる甘味と香ばしさ、キャラメルやバニラ系の樽香が顔を出す。

味:口当たりはコクがあってパワフル、ややドライだが林檎の蜜の甘みと、梅酒を思わせる粘性、ほのかな渋み。じわじわとほろ苦くウッディで、煎餅のような香ばしいフレーバーが混ざってくる。
余韻はハイトーンな刺激の中に熟成林檎酢の香りが鼻腔に抜けた後、ビターな中に蜂蜜を思わせる甘みが残る長いフィニッシュ。

カルヴァドスとしては中短熟という熟成年数で、単体としては若さというか奥行きにかける部分があるものの。カルヴァドスらしさにモルトの厚みと樽感が合わさった、リッチな仕上がりが特徴的な1本。林檎と麦、それぞれが出し得るフレーバーで、お互いに足りない部分を補うペアとしての強みが感じられる。
今の時期はストレートよりソーダ割がおすすめ。さっぱりとしてそれでいて飲みごたえがあり、通常のカルヴァドスソーダに比べて満足感も高い。

IMG_9290

ウイスキー専門店、モルトヤマが昨年リリースしたカルヴァドスのPB。
蒸留所(ブランド)はアンジュ・ジアールで、ここは自社蒸留ではなく、他の生産者や農家が作った原酒を買い付けて熟成してリリースしている、カルヴァドスのボトラーズと言えるメーカー。
モルトヤマからはこれまで2種類のカルヴァドスPBがリリースされており、今回のリリースは14年以上熟成させたカルヴァドスを、モルトウイスキーを熟成していた空き樽で8ヶ月間フィニッシュした、ボトラーズらしいリリースであると言えます。

樽の素性は明らかになっていませんが、比較的樽感とモルトの香味が強いこと。シェリー系の香味は感じられないことから、樽感が強く出るフレンチオーク系の新樽で熟成していた、若い原酒を払い出した後のものではないかと予想します。フランス国内には蒸留所が約80ヶ所あるそうですから、そのあたりのものが使われていても違和感はありません。
また、ボトリング本数533本から払い出し時の欠損を1割と考えると、原酒の量は約400リットル。8ヶ月の追熟ですからエンジェルシェアはほぼないでしょう。ホグスヘッド以上、バット未満と中途半端なサイズとなるため、バレルサイズでの2樽バッティングの可能性もあります。

このようにユーザー側からすれば謎の残るスペックですが、1本丸っと飲んだ感想として、その品質は間違いのないものと言えます。
元々ベースとなるカルヴァドスが、多少癖強めの酒質にカスクストレングス。パワフルでドライな男性的な味わいであるところ。そのままだと通好みな1本となっていたものが、モルトウイスキーカスクのフィニッシュでいい塩梅に繋ぎとなる樽感増し、そして厚みのあるモルティーでねっとりとしたフレーバーが付与されており、前述のドライさが軽減。樽感強めで甘みと“らしい”フレーバーが両立した、遠目で見ると疑似的なオールドカルヴァドスとも言える仕上がりになっていると言えます。

FullSizeRender

味にうるさい自分の知人に仕様を伏せて飲ませてみたところ、「あーこれ美味しい時代のカルヴァドスの味がする」といってグビグビ飲んでいたので、モルトウイスキーの個性は言わなきゃわからないくらいに融合しているなと(逆に意識すると、とても解る)。
ただ、このリリースは度数59.1%と中々に強敵です。熟成年数も決して長熟ではないので、ハイプルーフを飲み慣れない人にいきなりどうぞと言っても難しく。まして万年嫁募集中のモルトヤマさんよろしく、レディーキラーに使おうというのも無理な話ですが、そこは常に獲物を狙う男、おすすめはソニックだそうです。

ブランデーの類ってストレート以外でどう飲んでいいかわからないという声を聞きますが、お湯割、ソーダ割、そしてソニックと、実は結構自由にアレンジして良いものなのです。
かつてスコッチウイスキーにショットグラスというイメージがあったように。前時代的なブランデーグラスで、ペルシャ猫膝に乗せてバスローブ姿でくるくるというイメージが先行しちゃってる影響ですね。(下の画像のような…)
個人的に、このジャンルでのソーダ割りは甘いは美味い、そして適度な酸味を好む日本人の趣向にマッチしており、ウイスキーハイボールを越えるポテンシャルを秘めていると感じています。
実際、今回のボトルも6月以降ソーダ割が進む進む。。。気がついたら先日天に還っておりました。

IMG_6553

近年、熟成したウイスキーの高騰から、特に1万円前後という愛好家が手を出しやすい価格帯において良質なリリースを実現しようと、ウイスキーだけではなくラムやコニャック、そしてカルヴァドスなど様々な酒類への横展開が行われています。
長期熟成ウイスキーにあった熟成感や、かつてのウイスキーにあったフルーティーさ、類似の個性を、なるべく手頃な価格帯で実現しようという視点からの試みで、それこそスコッチモルトウイスキーソサイエティからラムやジンがでる時代。今やこうしたリリースは珍しくなったと言えます。

その中で、モルト専門店のチョイスしたカルヴァドス。やはり我々に対して「こういうの」というメッセージを感じるものです。本数の多さからまだ購入出来るようですが、家に一本あって困らない、チビチビ、ぐいぐい飲んでいける。価格的にも内容的にも良いリリースだと感じました。ご馳走様でした!

キルホーマン 7年 2013-2021 #623 for HARRY'S TAKAOKA 57.1%

カテゴリ:
FullSizeRender

KILCHOMAN 
Aged 7 years 
Distilled 2013.8 
Bottled 2021.4 
Cask type 1st fill Bourbon Barrel #623 
Selected by T&T with くりりん 
Exclusively for HARRY'S TAKAOKA 
700ml 57.1% 

評価:★★★★★★★(6-7)(!)

香り:ややドライな香り立ち。フレッシュで強いピートスモークと合わせてシトラスのようなシャープな柑橘感、薬品香のアクセント。奥には煙に燻された黄色系フルーツが潜んでおり、時間経過で前に出てくる。

味:香りに反して口当たりは粘性があり、燻した麦芽やナッツの香ばしさ、ほろ苦さに加え、熟したグレープフルーツやパイナップル等の黄色系の果実感。年数以上の熟成感も感じられる。
余韻は強くスモーキーでピーティー。麦芽の甘みと柑橘感、微かに根菜っぽさ。愛好家がアイラモルトに求めるフルーティーさが湧き上がり、力強く長く続く。

若さを感じさせない仕上がりで、ストレートでも充分楽しめるが、グラスに数滴加水するとフルーティーさがさらに開く。逆にロック、ハイボールは思ったより伸びない。香味にあるシャープな柑橘香、燻した麦芽、黄色系フルーティーさの組み合わせを既存銘柄に例えるなら、序盤はアードベッグで後半はラフロイグのよう。粗削りであるが良い部分が光る、将来有望な若手スポーツ選手に見る未完成故の魅力。エース候補の現在地を確かめて欲しい。

FullSizeRender

富山県高岡のBAR HARRY'S TAKAOKA(ハリーズ高岡)向けPB。2017年にウイスキーBARとしてリニューアルした同店の、4周年記念としてボトリングされたものです。
ボトリングは昨年12月頃から調整しており、本当は8月上旬に届くはずが、コロナの混乱で1か月スライド…。同店の周年には間に合いませんでしたが、中身はバッチリ、届いて着即飲してガッツポーズしちゃいました。今回は、そんな記念ボトルの選定に関わらせてもらっただけでなく、公式コメント掲載や、ラベルに名前まで入れて頂きました。

今回のリリースの魅力は、7年半熟成と若いモルトでありながら、若さに直結するフレーバーが目立たず年数以上の熟成感があること。そしてブラインドで出されたら「ラフロイグ10年バーボン樽熟成」と答えてしまいそうな、余韻にかけてのピーティーなフルーティーさにあります。

キルホーマンは、バーボン樽で7~8年熟成させると好ましいフルーティーさが出やすくなる、というのは過去の他のリリースでも感じられており、その認識で言えば、今回のボトルの仕上がりは不思議なものではありません。
ただ、個人的な話をすると、キルホーマンは2019年に話題になった100%アイラ9thリリースで醸成された期待値や、グレンマッスル向けキルホーマンでの経験もあって、「100%アイラこそ正義」と感じてしまっていた自分がおり。。。ノーマル仕様の酒質の成長に注目していなかったため、尚更驚かされたわけです。

FullSizeRender

本記事では、今回のボトルの魅力を語る上で、キルホ―マン100%アイラにも少し触れることとします。
100%アイラとノーマルリリースの違いは、麦芽の製麦工程にあります。
100%アイラは蒸留所周辺の農家が生産した麦芽を、キルホーマン蒸溜所でモルティング。生産量は年間全体の25%で、設備の関係かフェノール値も20PPM程度と控え目に設定されています。一方で、今回のリリースを含むノーマルなキルホーマンは、ポートエレン精麦工場産の麦芽を使用し、50PPMというヘビーピート仕様となっています。

ローカルバーレイスペックでフロアモルティングした麦芽を前面に打ち出しているためか、あるいはピートを控えめにしているためか、100%アイラは麦芽風味を意図的に強調してボディを厚くしている印象を受けます。
そうしたフレーバーは、今後の熟成を経ていく上で将来性を感じさせる大事な要素でしたが、全体の完成度、バランスで見たときに、現時点ではそれが暑苦しく過剰に感じられることもあります。

今回のボトルは100%アイラほど麦感やボディはマッシブでなく、ピートが強めでボディが適度に引き締まったスタイリッシュタイプ。昔のCMで例えるなら、ゴリマッチョと細マッチョですね。
また、キルホーマンの製造工程の特色としては発酵時間を非常に長く取っており、かつては70~80時間程度だったところが、現在は最長110時間というデータもあります。そうした造りの変化が由来してか、これまでリリースされてきた2000年代のビンテージに比べて酒質の雑味が控えめで、フルーティーさがさらに洗練されているのです。

100islay_barley

つまり、過剰に麦感や雑味が主張しないからこそ、樽感(オークフレーバー)を上手に着こなし、今回のようなアイラフルーティータイプに仕上がったと。
この原酒が後5年、10年熟成したらさらに素晴らしい原酒になるかと言われると、樽感が強くなりすぎてややアンバランスになってしまうのではないかという懸念もありますが、1st fillバーボン樽ではなくリフィルホグス等を使えば15年、20年という熟成を経た、一層奥行きあるフルーティーな味わいも期待できると言えます。

もはや優劣つけ難い2つの酒質と、それを生み出すキルホーマン蒸留所。
近年、アイラモルトのオフィシャルリリースが増え、安定して様々な銘柄を楽しめるようになりましたが、一方でシングルカスクorカスクストレングスの尖ったジャンルは逆に入手が難しくなりました。愛好家が求める味わいを提供していくという点で、10年後にはアイラモルトのエースとなっている可能性は大いにあります。

以上のように、ウイスキー愛好家にとって魅力ある要素が詰まったキルホーマン蒸留所は、ハリーズ高岡が目指す「ウイスキーの魅力を知り、触れ、楽しむことが出来る場所」というコンセプトにマッチする蒸留所であるとも言え、同店の節目を祝うにピッタリなチョイスだったのではとも思えます。
今後、何やら新しい発表も控えているというハリーズ高岡。北陸のウイスキーシーンを今後も支え、盛り上げていってほしいですね。

IMG_4846
(2017年8月、リニューアルした直後のハリーズ高岡のバックバー。オフィシャルボトルが中心で、現在と比べると実にすっきりとしている。これが数年であんなことになるなんて、この時は思いもしなかった。現在はウイスキーバーとして北陸を代表すると言っても過言ではない。)

なお、なぜ富山在住でもない自分が、ハリーズ高岡の周年記念ボトルに関わっているかと言うと…本BARが4年前にリニューアルした直後、モルトヤマの下野さんの紹介で訪店。以降、富山訪問時(三郎丸訪問時)は必ず来店させてもらい、周年記念の隠し玉を贈らせてもらったり、勝手にラベル作って遊んだりと、何かと交流があったことに由来します。あれからもう4年ですか、月日が経つのは早いですね…。

そんな節目の記念ボトルにお誘い頂き、関わらせてもらったというのは、光栄であるという以上に特別な感情も沸いてきます。関係者の皆様、改めまして4周年おめでとうございます!

Harrys takaoka


※補足:本リリースへの協力に当たり、監修料や報酬、利益の一部等は一切頂いておりません。ボトルについても必要分を自分で購入しております。


【続報】T&T TOYAMAボトラーズ事業 クラウドファンディング

カテゴリ:

5月13日から募集を開始した、T&T TOYAMAのジャパニーズウイスキーボトラーズ事業のクラウドファンディング。目標額の1000万円を30分で達成し、その後支援額は順調に伸び3000万円を突破。支援者の一人として、どこまで伸びるのか楽しみにもなってきました。

一方、企画者である下野さん曰く、「短期間でここまで支援が集まることは想定外」で、既に支援プランの大半が売り切れ状態に。。。そこで新しいリターンの追加共に、3500万円のネクストゴールとして設定されたのが、建設予定のウェアハウスに試飲用のスペースを造るというもの。ウェアハウス内で樽出しの原酒をテイスティングする…いや、ウイスキー好きが憧れる浪漫です。是非達成してほしいですね!
※本記事を書いた時点で、達成まで残り160万円。ネクストゴール達成を踏むのは何方でしょうか。



7972d5b6-de27-4243-9532-57c240d3f32e

※追加されたプラン(5月15日)
・クラウドファンディング支援者100人突破記念ウイスキー700ml × 2本セット

※追加されたプラン(5月20日)
・三郎丸蒸留所 樽熟成ウメスキープロトタイプ+ウメスキーセット
・T&T TOYAMAプレミアムメンバー入会&シークレットオンラインセミナー
・モルトヤマが富山で一日おもて『なしざんまい』


企画の詳細については以前記事にもしていますので、詳しい説明は割愛しますが、近年急増する日本のウイスキー蒸留所にあって、小規模なクラフトメーカーが直面する課題である、リリースや原酒の多様性、熟成、製品化に関する課題を解決する一助となるプロジェクトが、T&T TOYAMAのジャパニーズウイスキー・ボトラーズ事業です。

この事業の実施には、熟成場所となる広い土地と建物の初期費用のみならず、樽調達、原酒調達にかかるコスト、何よりボトリングや販売に関して必要となる資格の問題と言った、様々な”壁”があり、現在まで実現されてきませんでした。

そのコストについては、クラウドファンディングのネクストゴールの設定にあたり、
・土地、建物、設備:2億円(約2800㎡、建坪260)
・原酒購入、樽購入等年間費用:2000万円
という初期投資コストの情報が、ウェアハウスの設計と合わせて公開されています。
正直、自分と同い年の人間が億単位の金額を使うプロジェクトを立ち上げているなんて、周囲にはありません。素直に尊敬しますし、プロジェクトの意義としてもさることながら、人生をかけたであろう取り組みに、ウイスキー関係なくいち友人として可能な限り応援したいとも思うわけです。

ボトラーズの役割
※ボトラーズ事業を通じてボトラーズメーカーが担う、ウイスキーリリースまでの領域と課題(点線部分)

とはいえ、流石に今回のネクストゴールは、プロジェクト公開初日と同じ勢いで支援が入ることはないだろう、土日で応援記事を書こうじゃないか。。。と、準備していたらですね。ネクストゴールと共に追加された3プランのうち、「T&T TOYAMA シークレットオンラインセミナー」の支援枠が、即日完売してしまったわけです(汗)。改めて期待値の高さを感じた瞬間でもあります。

しかし、記念ウイスキー2本セットは前回の記事で紹介しているので、残るは三郎丸ウメスキープランと、モルトヤマ渾身のネタ枠。残りは300万円弱でネクストゴールも達成秒読みで…これって記事書く必要あるのか?。
いや、きっと自分だからこそ発信できるネタがあるはずだ。ウメスキー樽熟原酒は、以前蒸留所訪問した際に熟成途中のものを試飲済みだし。前回も即日達成してこんな流れだった気がするけど、気にしない気にしない。
そんなわけで、この記事では記事を書いている時点で、残っている2つの新支援プランについて、紹介していきます。


三郎丸蒸留所 樽熟成ウメスキープロトタイプ+ウメスキーセット
支援額:16,500円
ウイスキーベースで造った梅酒”ウメスキー”と、そのウイスキー梅酒を樽熟成した新商品のセットがリターンにあるプラン。新商品はまだ名前が決まっておらず、その銘を提案できる、応募券もついています。
このプランだけ三郎丸色が強く、一見してT&T TOYAMAのボトラーズ事業と関係が無いように見えますが、梅酒を払い出した樽(梅酒樽)で、調達した原酒を熟成するという計画もあるそうで、後々一つの線に繋がっていくプランなのだとか。

その味わいについて、製品版のものはまだわかりませんが、熟成途中の原酒を飲んだ限り、フルーティーでマイルド、梅というよりは熟したプラムのような甘酸っぱさ、林檎の蜜を思わせる甘みもあり、余韻は樽熟を思わせるウッディさが甘みを引き締める。熟成を経てさらにリッチでまろやかになっていると思われます。
日本人の味覚に響く、素直に美味しい言える梅酒でした。某S社さんの同系統の商品と比較すると、あちらが万人向け量産品ならこちらは手作り、そんなキーワードを彷彿とさせる濃厚さが魅力です。

モルトヤマが富山で一日おもて『なしざんまい』
支援額:494,974円
WEBは饒舌、リアルは塩対応で知られるモルトヤマの下野さんが、富山を1日おもてなし。
もはやネタですよね。何だこの金額はという疑問については、下野さん曰く”これが選ばれることなく最終日を迎えて、「ナシ(下野さんの別通称)がしくしく」という語呂合わせを含め、今後のT&T TOYAMAブランド戦略で有効活用する”、大変自虐的なプランを想定しているようです。
“他は選ばれたけど、僕は選ばれない、まさに独身系瓶詰業者(インディペンデントボトラー)”とでも言うつもりなのでしょうか。

「でもこれ、応募あったらどうするの?」
という問いに対して、絶対にないから、と話していましたが…。既に同クラウドファンディングでネタ枠だった”高所作業車名づけプラン”が購入済みとなっている件について考えると、1度あることは2度あるんじゃないかなぁと。
私の財布では荷が重いですが、どなたか英雄の登場を期待しております(笑)。

saburomaru_warehouse
185789947_619122332382233_4458291737116704524_n

過去の記事とも重複した話になりますが、スコットランドではウイスキー蒸溜所が造った原酒を、ブレンドメーカーやボトラーズメーカーが買い取り、様々なリリースに繋げてきました。その例に倣えば、T&T TOYAMAのプロジェクトは今後のジャパニーズイスキー業界の継続的発展のため、必要な1ピースであると言えます。

勿論、類似の事業が過去から現在にかけて、なかったわけではありません。例えば、イチローズモルトで知られるベンチャーウイスキー社の立ち上げを支えた、笹の川酒造の原酒買い取りと各種リリース。軽井沢蒸溜所の原酒を受け継いだNo,1 Drinks社のリリースもまた、広義の意味では日本のウイスキーのボトラーズ事業と言えるでしょう。

ですが、今回T&T TOYAMAの立ち上げる、ジャパニーズウイスキーボトラーズプロジェクトのように、
・ニューメイクから原酒を調達し、自社の熟成庫で自社調達した樽で熟成させた原酒をリリースする。
・熟成環境の提供や、ボトリング設備のレンタルといった、ウイスキーをリリースするために必要な機能を提供するサービス。
という、ただ熟成した原酒を買い付けるだけではない、多くの蒸溜所と二人三脚でウイスキー業界を成長させていくような構想は、今までにないものです。

日本における空前のウイスキーブームがもたらす、おそらくは今後無いであろう機運の高まり。大きなプロジェクトを立ち上げるのは、タイミングが重要です。クラウドファンディングの募集期間は残り約1か月。既にプロジェクトは確定しており、後はネクストゴール含めてこのプロジェクトがどこまで育ち、形になっていくのか。一人の応援者として楽しみにしています。


マクダフ 13年 2006-2020 GM 52.9% For モルトヤマ #101695

カテゴリ:
IMG_0931

MACDUFF 
CONNOISSEURS CHOICE
GORDON& MACPHAIL
Aged 13 years
Distilled 2006
Bottled 2020
Cask type Refill Bourbon Barrel #101695 
For Maltoyama 
700ml 52.9%

評価:★★★★★★(6)(!)

香り:オーキーで華やかなトップノート。洋梨やドライパイナップルを思わせるフルーティーさ、ココナッツ、ほのかにバタービスケット。注ぎたて(開封直後)はドライでスパイシー、ハーブや木材の削りカスのようなアロマがトップにあるが、徐々に黄色系のフルーティーさと蜜っぽさ、麦芽由来の甘みが強くなり、加水するとさらに開いてくる。

味:スムーズな口当たりから、柔らかいコクのある麦芽風味と軽いスパイシーさ。香り同様にアメリカンオーク由来の華やかな含み香があり、洋梨の果肉、砂糖漬けレモンピールとナッツを思わせる甘みとほろ苦さ。余韻は程よくドライでウッディ、オーキーな黄色系フルーツの残滓を伴って穏やかに続く。

オークフレーバーと麦芽風味主体。リフィルバレルなのがプラスに働いた、樽感と酒質のバランスの良さが魅力的な1本である。開封後時間経過、または少量加水すると香りにあったドライな刺激が穏やかになり、すりおろし林檎や白葡萄のフルーティーさ、ホットケーキなどの小麦菓子を思わせる甘さといった、好ましい要素が充実してくる。40%程度まで加水するとさらに麦芽風味が充実し、まさにデヴェロンだなぁと言う感じ。フレーバーを楽しむなら段階的に加水を推奨するが、ハイボールにしても良好で、夏向きの味わいを楽しめる。
近年のGMコニッサーズチョイスらしい、蒸溜所のハウススタイルを活かした仕上がり。蒸留所の限定品やハンドフィルを買ったら、こんな感じのものが出てくるんじゃないかという完成度の高い1本。

FullSizeRender

先日、T&T TOYAMA ジャパニーズウイスキーボトラーズ事業の紹介をしたので、今回は手元にある富山関係リリースのレビューでも。T&Tなら ニンフのラフロイグやアードベッグって手もあるんですが、この状況じゃ読んで貰った後でBAR飲みって訳にもいかないですし、ここはまだ買えて家飲み向きなボトルで。。。
というわけでこのGMコニッサーズチョイスのマクダフ、まだ買えるんですよね。価格も同じようなフレーバーを持ったオフィシャルや、他のシングルカスクリリースとの比較でも違和感なく、味も悪くない。というかむしろ良い部類なのに、なんででしょう。スペックが地味だからかな?

構成は安定のバーボン樽熟成、黄色系フルーティー・ハイランドモルト。リフィルバレル熟成なので、ドカンとオーキーで突き抜ける感じではないですが、その分マクダフらしい麦芽風味がフルーティーさと合わせて開く綺麗な仕上がり。過剰なウッディネスなどネガティブな要素が少ないだけでなく開封後の変化も良好で、ドライ気味な部分が徐々にこなれて好ましい要素が開いてきます。

私見ですが、マクダフの魅力は若いリリースから見られる麦芽風味と、熟成を経ていくと現れる綺麗なフルーティーさにあると感じており。今回の一本は長熟のカスクではないものの、それらに通じる魅力を感じさせてくれると思います。
その他の飲み方では、ロックにするとちょっとウッディさが目立ちますが、軽やかで冷涼なオーク香が心地よく、加水やハイボールは言わずもがな。特にハイボールはこれからのシーズン、テラスや野外でゴクリとやったら優勝案件でしょう。アレンジとしてレモンピールをちょっと絞ったり、あるいはスペアミントなんて浮かべてみたり。。。単にオーキーなだけでなく、酒質由来のフレーバーの素性が良いので、様々な飲み方にマッチしてくれます。


このマクダフがリリースされた時、同時にシェリー樽熟成のグレントファースもリリースされ、愛好家の間で話題になっていました。
やっぱりGMってボトラーズは凄いですね。ボトラーズ苦境の現状にあっても普通にこういう樽が出てくる…そしてそれを相応な価格でPBとして回してしまうのですから、「GMの貯蔵量は化け物か」とか呟いてしまいそうです。
(勿論、そうした原酒を引っ張ってこれたモルトヤマさんの繋がりも、これまで数多くのPBをリリースしてきた経験・実績によるもので、一朝一夕に実現できることではありません。)

話が逸れますが、GMのコニッサーズチョイスは、かつては加水オンリーで、カラメルを添加したような甘みのある緩いシェリー感のあるボトルが中心。その後はそれのリフィル樽かというプレーンなタイプが主体。つまりシェリー樽熟成系が多かったわけです。
ところが、2018年頃にブランド整理を行ってリリースの方向性を変更すると、今回のようにシングルカスクでリリースするコニッサーズチョイスが登場。このシリーズでは先に触れたキャラクターから離れ、バーボン樽で熟成した原酒や、蒸溜所のハウススタイルやオフシャルリリースの延長線上にある味わいのリリースが見られるようになります。

おそらく、CASKシリーズなど別ブランドに回していた樽をコニッサーズチョイスで使うようになったのでしょう。また、GM社を含めてスコットランドの老舗ボトラーズは、1年のうち決まったタイミングで蒸留所からニューメイクや熟成原酒をまとめて買い付けており(そういう会議の場があるのだとか)、一部の原酒は他ボトラーズメーカーに回すなど、ブローカー的な活動もしています。
今回のボトルのように、今までのGMのリリースと毛色が違う、蒸溜所のハウススタイルが全面に出ているような樽は、ひょっとすると熟成原酒として買い付けたものからピークを見極めてリリースしたボトルなのかもしれません。

絶対的エースと言えるような、圧倒的パワーや存在感のあるタイプではありませんが、所謂ユーティリティープレイヤーとして、こういうボトルが1本あると助かる。そんなタイプのリリース。
ちなみにフレーバーの傾向としては、麦芽風味が豊富なものでクライヌリッシュ、グレンモーレンジ、アラン。ぱっと思いつくマイナーどころでダルウィニー、ダルユーイン、オード。。。この辺が好みな方は、このボトルもストライクゾーンではないかと思います。

シークレット スペイサイド 25年 1992-2018  For モルトヤマ 49.6%

カテゴリ:
136403168_o1
Single Malt Scotch Whisky 
A Secret Speyside 
Aged 25 years 
Distilled 1992 
Bottled 2018 
For Maltyama 5th Anniversary 
700ml 49.6%

グラス:国際企画テイスティング
時期:開封後1年程度
場所:自宅@サンプル
評価:★★★★★★(6)

香り:ドライで華やか、スパイシーなオーク香。バニラに加えて洋梨やマスカット、色の濃くない果実のフルーティーな要素、ジンジャー、また微かにマロングラッセのような甘くほのかにビターなアロマも伴う。

味:香りのドライさ相応のスパイシーな刺激、乾いた木材を思わせるウッディネス。ただし相反するまろやかさもある。
洋梨のピューレ、ファイバーパイナップル、微かにナッティー、所謂オーキーなフレーバー主体。徐々にリキュールのような甘さ、近年系のトロピカルなフルーティーさも感じられつつ、華やかでドライ、スパイシーなフィニッシュが長く続く。

最近増えているスペイサイドリージョン長熟系統に似た樽使い、というだけである程度分類が出来てしまう香味構成。ただ、このボトルは香りこそドライでスパイシーだが、熟成が適度で味わいにまろやかさがあり、余韻にかけて開いてくるフルーティーさが好印象。香りは及第点だが味は★6+加点。この段階的な変化は加水するとぼやけてしまうので、ストレートでじっくりと楽しみたい。

IMG_20191006_211602

富山の酒販、モルトヤマが開業5周年を記念してリリースしたオリジナルリリースの1本。店主曰く、5周年記念の集大成と位置付けるボトルです。
少し前に静岡の某S氏と小瓶交換していたのですが、すっかり飲み忘れており。。。先日富嶽三十六景グレンキースを飲んでいて、あれそういえばあったよなと思い出し、今さらですがレビューをUPします。

蒸留所は非公開。飲んで早々わかるような明確な特徴もないのですが(もしヒントがなければグラントかバーギーあたりかと思うフルーティーさです)、ラベルに写っているのは樽のフープの鋲"リベット"とのことで、成る程そういうことねと。とすると、名前に"A"がついてるのは"The"の変わりで、スペイサイドの蒸留所のなかの一つという以上に文面上特定できないからか。
そう言えばこのボトルのリリース前に、モルトヤマの下野君はThe Whisky hoopのチェアマン坂本さんとスコットランドの蒸留所、ボトラーズメーカーツアーを実施していました。今回の原酒をその関係のなかで調達したとしたら、フープの意味はそういうこと?とも読めて、色々意味が込められてるラベルだと思えてきました。
今度イベントとかで会うと思いますので、その辺聞いてみたいと思います。

香味は華やかで強くドライ、そしてスパイシー。所謂オークフレーバーに該当する要素ですが、ドライさやスパイシーさに特徴的なものがあると感じます。それはかつてダンカンテイラーのピアレス香と言われたもの以上に作為的なニュアンスがあり、それが不味いとは言いませんが、どう処理した樽を使ってるのかは疑問の一つ。
少なくとも2000年代前半にかけてGM、シグナトリーケイデンヘッドやムーンインポートなど。。。ボトラーズ界隈の"Tier1"と言えるような古参主要メーカーは、こういう味わいのものをリリースしていませんでした。
そこに変化が出てきたのが、2000年代後半。ドイツ系ボトラーズ、ウイスキーエージェンシー社ら新興勢力の登場からです。

同社がリリースする長期熟成のモルトには、妙にスパイシーで華やかさの強調されたオーク香を持つものがあり、代表的なのが1970年代蒸留のスペイサイドリージョン。金太郎飴かってくらい、みんな同じ香味があるんですよね。
で、今回のボトルはそれに近いニュアンスがあり、近年系の仕上がりだなと思わせつつ、口当たりから広がるマイルドな甘味とトロピカル系統のフルーティーさが魅力。値段は相応に高いですが、1990年代蒸留ながら良い樽引いてきたなと。同酒販店の業界との繋がりと、その意味で5年間の活動の集大成と感じるような1本でした。

IMG_20191006_192832
今日のオマケ:ルナ・ヴィンヤーズ・ピノ・ノワール 2012
如何にも新世界ですという、濃厚で強いカリピノ。ピノらしいベリー香に、果実の皮や湿った木材、濃縮葡萄ジュースのようなジューシーな甘味と酸。樽は古樽主体か目立たず、余韻は程よいタンニンと微かにスパイス。ジューシーさが少々くどいというか、アルコールを思わせる若干の引っ掛かりもあり、食事と合わせるなら今でも充分飲めるが、飲み頃はまだ先にあると感じる。
2012年は当たり年との評価で、環境が良かった結果強いワインが産まれたのか。現時点のイメージは若手の豪腕速球タイプ。もう5年は様子を見てみたい。さらに成熟した選手に育つか、あるいは。。。

とある事情で、このワインが通常流通価格の半額以下とめちゃくちゃ安く手に入る機会があり。この手のワインの香味はウイスキー好きの琴線に触れるものがあるので、まず間違いないと、普段飲み用にまとめ買い。
ただあの価格だから買うのであって、日本での流通価格(5000円前後)で買うかと言われたら候補にない。。。というかカレラが最強過ぎる。濃厚で強いタイプならオーボンクリマでも良い。
とりあえず自分で2本、会社の飲み会等で2本、4本飲んだので残りは熟成に回す予定。来年の今頃、また様子をみたいと思います。

IMG_20190914_160112

このページのトップヘ

見出し画像
×