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ウイスキーバイブル 2019 主要部門をアメリカンウイスキーが独占 ジャパニーズ部門はポールラッシュが受賞

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今年もジムマーレイ著、ウイスキーバイブルにおけるワールドウイスキーオブザイヤーが発表されました。
個人的にはボジョレー解禁的な印象もある、ウイスキー業界の風物詩なこの発表。ああ、もうすっかり秋ですねぇ。。。

ジムマーレイ氏の活動ついては今更説明は不要と思いますが、ざっくりまとめると、毎年1000種類以上のウイスキーをテイスティングし、コメントとスコアリングをまとめた著書"ウイスキーバイブル"の執筆を手がける、非常に大きな影響力を持つテイスターです。

そのスコアリング基準は不明確な点もありますが、近年の評価では、
2016年クラウンローヤル・ノーザンハーベスト・ライ
2017年ブッカーズ・ライ13年
2018年テイラーフォーグレーン12年
と、各年のウィナーがアメリカ・カナダ方面に寄っていることから、その趣向が見えてくるようです。
2015年の山崎シェリーカスクから一転して、クラウンローヤルが選ばれた年など「正気とは思えない」と辛辣なコメントが寄せられたこともありましたが、なるほどここまで続くと一貫していますね。

長熟バーボンに備わる艶やかな甘みや、ハイプルーフで突き抜けた味わいは自分も求めている要素の一つであり、スコッチとの対比に異論を唱えるつもりはありません。ただ、その時々の思い切った線引きが、ジムマーレイ氏の評価なのでしょう。
今年はそれがさらに極まった内容となり、ワールドウイスキーオブザイヤーと、シングルカスクオブザイヤーの主要2部門をバーボンが受賞。全体でもトップ3銘柄のうち2銘柄がアメリカンで、異なるカテゴリーのコンペを見るような結果となりました。

■The full list of winners
◆2019 World Whisky of the Year

William Larue Weller 128.2 Proof 
- Buffalo Trace Antique Collection 2017

◆Second Finest Whisky in the World

Glen Grant Aged 18 Years

◆Third Finest Whisky in the World
Thomas Handy Sazerac Rye 127.2 Proof

◆Single Cask of the Year
Blanton’s Gold Edition Single Barrel



ワールドウイスキーオブザイヤーを受賞した、William Laure Wellerは飲んだことがありませんが、バッファロー・トレースの長熟となれば、一定以上のクオリティがあると見て間違いないと思います。
リミテッドであるアンティークコレクションは、小麦を主原料とする原酒のうち総じて10数年間の熟成を経てピークに到達した樽から、毎年度リリースされているシリーズのようです。
今回受賞したのは2017年ロット。スペックなどから察するに、芳醇で柔らかくドライな含みから、ボリュームのあるウッディネスと艶やかな甘み、パンチのある余韻といったところでしょうか。

そして全シングルカスクのベストかどうかはさておき、高い評価も納得出来るのが、ブラントン・ゴールドラベル 51.5%です。
今オススメのハイプルーフバーボンを聞かれたら、1万円未満なら自分でも勧めている銘柄の一つ。現行品はボディが少し細い気もしますが、オールドバーボンにある香味の共通項を備えた、熟成感あるリッチでメローな味わい。何よりもスタンダードとして安定して購入出来るのが嬉しいですね。
ラベルに書かれたボトリング日付が古いほうが香味が濃い傾向があり、2000年以前のものなど特にオススメです。


SCOTCH WHISKY
Scotch Whisky of the Year 
Glen Grant Aged 18 Year Old 
Single Malt of the Year (Multiple Casks) 
Glen Grant Aged 18 Year Old 


続いて、各区分毎の受賞銘柄からピックアップすると、今年もスコッチカテゴリーでトップながら、全体では2番手だったグレングラント18年。
これで3年連続トップ3圏内、しかしウィナーにはなれず。レベルが高いのは間違いないのですが、そろそろ永遠の2番手とか言われそうな。。。(笑)

グレングラント18年は、先日とある企画でブラインドテイスティングで飲む機会があったばかり。やや軽めの酒質にアメリカンホワイトオークの華やかさとフルーティーさ、そして少し枯れ草のようなウッディネス。加水調整によるバランスも良く、うまく仕上げられた美味しいモルトでした。
味は万人に好まれ易いタイプですし、BARでも使いやすいモルトウイスキーだと思います。

JAPANESE WHISKY
Japanese Whisky of the Year 
The Hakushu Paul Rusch 

ジャパニーズ区分では、萌木の村がリリースした、ポールラッシュ生誕120周年記念シングルモルトウイスキー(白州)が選ばれています。
秘蔵の長期熟成原酒とヘビーピート原酒を使い、日本的な熟成感のある多彩な香味。柔らかく角の取れた香り立ちでありながら、その味わいは内に秘めた想いが感じられるような芯の強さとピートの存在感。まるで往年のポールラッシュ氏その人を思わせるようなウイスキー。
一般市場には流通がありませんが、一部のBARと、萌木の村では飲むことが可能な1本。今日は我が家でもささやかにテイスティングといたします。
(※リリース当時のテイスティングコメントはこちら。

この他、ディアジオのスペシャルリリースからコレクティヴァムXXVⅢなど、昨年から今年にかけて話題になったボトルもいくつか、カテゴリー毎に受賞しています。
詳細は以下の通り。なお、ウイスキーバイブルの表紙には毎年度ジムマーレイ本人の姿が書かれているわけですが、今年はどう見ても精神生命体。。。あるいはハリーポッターあたりに出てきそうな精霊の類。
テイスティングすることのべ何万、ついにそのグラスの中には魂が宿ったのでしょうか(汗)。

 
SCOTCH
Scotch Whisky of the Year
Glen Grant Aged 18 Year Old

Single Malt of the Year (Multiple Casks)
Glen Grant Aged 18 Year Old

Single Malt of the Year (Single Cask)
The Last Drop Glenrothes 1969 Cask 16207

Scotch Blend of the Year
Ballantine’s 17 Year Old

Scotch Grain of the Year
Berry Bros & Rudd Cambus 26 Years Old

Scotch Vatted Malt of the Year
Collectivum XXVIII

Single Malt Scotch
No Age Statement
Laphroaig Lore

10 Years & Under (Multiple Casks)
Laphroaig 10 Year Old

10 Years & Under (Single Cask)
Berry Bros & Rudd Ardmore 9 Year Old

11-15 Years (Multiple Casks)
Lagavulin 12 Year Old 17th Release Special Releases 2017

11-15 Years (Single Cask)
Cadenhead’s Rum Cask Mortlach 14 Year Old

16-21 Years (Multiple Casks)
Glen Grant Aged 18 Year Old

16-21 Years (Single Cask)
Bowmore 19 Year Old The Feis Ile Collection

22-27 Years (Multiple Casks)
Talisker 25 Year Old Bot.2017

22-27 Years (Single Cask)
Scotch Malt Whisky Society Glen Grant Cask 9.128 24 Year Old

28-34 Years (Multiple Casks)
Convalmore 32 Year Old

28-34 Years (Single Cask)
Gleann Mor Port Ellen Aged 33 Year Old

35-40 Years (Multiple Casks)
Benromach 39 Year Old 1977 Vintage

35-40 Years (Single Cask)
Glenfarclas The Family Casks 1979

41 Years & Over (Multiple Casks)
Tomatin Warehouse 6 Collection 1972

41 Years & Over (Single Cask)
The Last Drop Glenrothes 1969 Cask 16207

BLENDED SCOTCH
No Age Statement (Standard)
Ballantine’s Finest

5-12 Years
Johnnie Walker Black Label 12 Year Old

13-18 Years
Ballantine’s 17 Year Old

19 – 25 Years
Royal Salute 21 Year Old

26 – 50 Years
Royal Salute 32 Year Old Union of the Crowns

IRISH WHISKEY
Irish Whiskey of the Year
Redbreast Aged 12 Year Cask Strength

Irish Pot Still Whiskey of the Year
Redbreast Aged 12 Year Cask Strength

Irish Single Malt of the Year
Bushmills Distillery Reserve 12 Year Old

Irish Blend of the Year
Bushmills Black Bush

Irish Single Cask of the Year
The Irishman 17 Year Old

AMERICAN WHISKEY
Bourbon of the Year
William Larue Weller 128.2 Proof

Rye of the Year
Thomas H
Handy Sazerac 127.2 Proof

US Micro Whisky of the Year
Garrison Brothers Balmorhea

US Micro Whisky of the Year (Runner Up)
Balcones Peated Texas Single Malt

BOURBON
No Age Statement (Single Barrel)
Blanton’s Gold Edition Single Barrel

No Age Statement (Multiple Barrels)
William Larue Weller 128.2 Proof

Up To 10 Years
Eagle Rare 10 Year Old

11 – 15 Years
Pappy Van Winkle Family Reserve 15 Year Old

16 – 20 Years
Abraham Bowman Sweet XVI Bourbon

11 Years & Over
Orphan Barrel Rhetoric 24 Year Old

RYE
No Age Statement
Thomas H
Handy Sazerac 127.2 Proof

Up to 10 Years
Knob Creek Cask Strength

11 Years & Over
Sazerac 18 Year Old (2017 Edition)

CANADIAN WHISKY
Canadian Whisky of the Year
Canadian Club Chronicles: Issue No
1 Water of Windsor 41 Year Old

JAPANESE WHISKY
Japanese Whisky of the Year
The Hakushu Paul Rusch

EUROPEAN WHISKY
European Whisky of the Year (Multiple)
Nestville Master Blender 8 Years Old Whisky (Slovakia)

European Whisky of the Year (Single)
The Norfolk Farmers Single Grain Whisky (England)

WORLD WHISKIES
Asian Whisky of the Year
Amrut Greedy Angels 8 Year Old (India)

Southern Hemisphere Whisky of the Year
Belgrove Peated Rye (Australia)


※参照・引用
•JIM Murray's Whisky Bible
•The Whisky Exchenge

メーカーズマーク プライベートセレクト 萌木の村 ポールラッシュ生誕120周年記念 55.5%

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IMG_4971
MAKER'S MARK
PRIVATE SELECT
Paul Rusch's 120th Birthday
Barrel Finished With Oak Staves
750ml 55.5%

グラス:木村硝子テイスティンググラスの後バカラロックグラス
場所:自宅
時期:開封直後~
評価:★★★★★★★(6ー7)(!)

香り:バニラやバタークッキーを思わせる甘い香り立ち、ブルーベリー、植物や穀物の軽やかさ、ウッディーでスパイシーなアロマが続く。

味:濃厚でコクがあり、度数を感じさせないまろやかな口当たり。メープルシロップ、チェリーのシロップ漬け、オレンジママレード。序盤は甘酸っぱさの有る甘みから中間から後半はバランスの良いウッディネス、ほろ苦さが微かな焦げ感を伴って長く残る。

樽感が強く濃厚な味わいだが、余韻にかけて収束し、軽やかであまりしつこさがない飲み心地がメーカーズマークらしさとして感じられる。ストレート、ロック共に良好。テイスティンググラスよりはロックグラスやショットグラスで楽しむほうが香りのネガが少ない。夏のバーベキュー、野外で飲みたい1本。 シガーとの相性もいい。

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この7月、オーナーの元に届いたばかりの萌木の村オリジナルボトリング、メーカーズマーク・プライベートセレクトです。
ボトリング本数は237本。戦後、萌木の村がある清里の地の発展に大きく貢献した、ケンタッキー州出身の牧師、ポール・ラッシュ氏の生誕120年を記念したボトルでもあります。
同氏の生誕記念としては、今年の4月に先立ってシングルモルト白州もボトリングされており、生まれた地と、復興に尽力した地で育まれたそれぞれのウイスキーとのコラボは、同氏の生誕を祝うに相応しいチョイスと言えます。


メーカーズマーク・プライベートセレクトは、一度払い出したメーカーズマークのカスクストレングスを、フレンチオークを主体とした5種類10枚の木材(インナーステイブ)と共に再び樽詰めし、数ヶ月間後熟したものです。
この方法は既に市販されているメーカーズマーク46でもお馴染みであるだけでなく、蒸留所や現地ショップではオリジナルボトルも展開されていて、どの樽材を組み合わせるかで味に変化を与える狙いがあります。

今回のボトルのインナーステイブの比率は裏ラベルの通り、甘みの強いP2とCuに、スパイシーな香味の46が10枚中8枚となっており、濃厚で甘みが強く、苦味のニュアンスが少ない味わいが付与されているようです。

バーボンウイスキーは樽に新樽縛りがあり、連続式蒸留も行われる関係から、ともすれば香味が単調などという声も少なからずあるところ。近年では香味のライト化も著しく、長期熟成原酒も枯渇気味と聞きます。
そんな中で現地ウイスキー業界としては、原料比率や酵母を変えたり、メーカーズマークのインナーステイブだけでなくフィニッシュに異なる樽を使用したり、あるいは最初の熟成からアメリカンオークでなくフレンチオークの新樽を使うなど、多様性を生み出す様々な試みが行われ、これまでの常識が変わりつつあると感じます。

このメーカーズマークは、通常の熟成とは異なるニュアンスはありますが、それ以上に狙ってこの味わいを作り出したというところに、ポールラッシュ氏の「最善を尽くせ、そして一流であれ」とする開拓者精神が体言されているように感じます。 
本ボトルは萌木の村ホテルバー・パーチだけでなく、一部繋がりのあるBAR等にも展開されている模様。是非バーボンの新しい可能性に触れてみてください。


以下、余談。
今回のボトルのオーナーであり、萌木の村の代表である舩木上次氏が、Forbes Japan誌による"日本を元気にする88人"に選ばれました。
舩木氏は、ウイスキーに限っても清里ウイスキーフェスの開催で中心的な役割を果たすだけでなく、清里フィールドバレエ・オリジナルボトルでご存知な方も多いはず。
ご本人は「自分は88人目ですから」と謙遜されていましたが、選定の有無に関わらずその実績は疑いようもないところ。
自分も舩木氏のようにウイスキー業界を元気に出来るような、そんな活動をしていきたいものです。

ポールラッシュ生誕120周年記念 シングルモルトウイスキー 58% 清里 萌木の村

カテゴリ:

SUNTORY WHISKY
HAKUSHU
Paul Rush 120th Anniversary of Birth
Cask type Bourbon Barrel
700ml 58%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:20ml程度
時期:開封直後
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:ややドライでスモーキー。アーモンドや胡桃を思わせるナッティーさ、奥には古い家具、土っぽさ。スワリングすると蜂蜜の甘み、エステリーでアプリコットや煮た林檎を思わせる華やかさが開く。時間経過で古樽のニュアンスが馴染んで、熟成庫の中にいるようなアロマに。

味:穏やかな中からジンジンとした刺激を伴う、スパイシーでウッディーな口当たり。アプリコットジャムやドライオレンジ、甘酸っぱいオーキーなフレーバーから麦芽風味も開いてくる。
しっかりとしたボディ、余韻はドライ、スパイシーでハイトーン。強くはないが存在感のあるピートを伴い長く続く。

複雑で多層的なウイスキー。日本的な樽感と熟成感を内包したバランスの良さに加え、少量加水するとピートフレーバーが開き、余韻にかけての甘酸っぱいモルティーさと相まってなんとも自分好みの味わいに進化する。
歴代の清里限定ウイスキー(フィールドバレエ25th、26th、27th)のどれとも見劣りしないだけでなく、香味に備わる芯の強さはそれ以上の出来栄え。


清里ウイスキーフェスティバル2017に合わせ、主催である「萌木の村」が制作したウイスキー。生産本数は120本。かつて清里地方の開拓のみならず、日本の戦後の復興において大きな影響と功績のあった、ポールラッシュ氏の生誕120周年を記念したシングルモルトウイスキーでもあります。

原酒の選定に当たっては、山梨の地ゆかりの白州蒸留所のモルトウイスキーを複数樽バッティングし、カスクストレングスでボトリング。樽構成はバーボンバレルのみで、ポール氏の開拓者精神にちなんでか、樽に制限をかけた中で目指す味わいを実現するチャレンジでもあったのだそうです。 

飲んでみるとジャパニーズらしさの中に単一樽とは思えない複雑さと多層感があり、果実味の中にヘビーピート原酒由来と思われるスモーキーフレーバーが潜む。最初は複数樽どころか複数蒸留所かと思ったほどで、スペックを聞いて驚きました。
熟成年数は明らかにされていないものの、体感で20年前後の原酒を中心とした構成に、30年クラスの古酒も使われたのではないかという樽感も感じられます。 

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このポールラッシュ生誕120周年記念シングルモルトウイスキーは一般販売はしておらず、基本的には同萌木の村のホテルBARでの提供となるそうですが、本日から開催される清里ウイスキーフェスティバル2017においては提供ボトルの一つとなっています。
萌木の村は昨年起きた火災によって、主たる設備の一つであったレストランが消失する悲しい出来事がありました。
しかし、多くの愛好家からの支援や、同施設を経営される舩木氏のポール氏のごとく不屈のフロンティアスピリットによって、再建まであと少しというところまで来ています。

この週末の山梨の天候は晴れ。数日前まで雨予報だったのが、週末が近づくにつれて見る見る回復してきました。いまや予報上は絶好のイベント日和です。
イベントに参加される方は、是非記念ウイスキーもテイスティングしてみてください。

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