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PORT DUNDAS
Single Grain Scotch Whisky
Aged 52 years
Distilled 1964
Bottled 2017
Cask type Refill American Oak Hogsheads
700ml 44.6%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後数日程度
場所:Y's Land IAN
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:上品なチャーオーク香、メープルシロップやバタースコッチ、ほのかにオレンジや熟したパイナップル。コクのある甘いアロマが柔らかく広がる。

味:スムーズでクリーミーな甘みが感じられる。バニラ、穀物のグリッツ、洋菓子やハニーブレッド。濃厚で綺麗なバーボンのようであるが、中間から余韻にかけてやや単調気味でもある。
余韻は樽香主体でウッディだが、ほのかにアロエ、サトウキビのような植物的アクセントもあり、ドライで長く続く。

半世紀を超える熟成でありながら、クドさの少ない熟成感が味わえるグレーンウイスキー。香りには甘みだけでなく樽由来と思しき果実香がアクセントとなっている一方、味は甘露であるが少々単調気味。しかしディアジオらしいナチュラルな樽づかいが、この熟成年数でもブレないのは流石の一言。


ポートダンダスは2009年(ウイスキーマガジン誌の記録では2010年)に閉鎖された、グラスゴー近郊の丘の上にあった、グレーンウイスキー蒸留所。MHDの資料によれば、ホワイトホースのボトリング設備(こちらは現在も稼働している模様)にあり関係が深かったとのことで、確かに地理的にもアイラ島から原酒の海輸が可能で、本土流通の要として関係が深かったというのも頷けます。

また、過去には20年熟成のポートダンダスがスペシャルリリースシリーズからリリースされましたが、このリリースは新樽、バーボン樽、シェリー樽で長期間追加熟成された原酒でバッティングされており、強めの樽感が特徴としてあったところ。今回のように一気通貫でアメリカンオークのリフィルホグスヘッドのリリースは、樽材の関係からバーボン寄りのテイストですが、自然な樽感の中に酒質の味わいがメインで楽しめるのがポイントとも言えます。

まあ個人的にはグレーンウイスキーの香味は何年熟成しても何樽でもグレーンはグレーン、というイメージもあるのですが、今回のボトルのような主張の強く無い単一樽での長期熟成が作り出す、マイルドでメローな味わいは個性の一つと言え。ウイスキーに馴染みがない方から愛好家まで、広く楽しめるのも強みかなと感じています。 

参照:Lost Distilleries ポートダンダス蒸留所 Whisky Magazine

さて、ディアジオ傘下のグレーンウイスキー蒸留所では、現在フル稼働中で"帝国の心臓"とも言われるキャメロンブリッジが有名。しかし今回のポートダンダスに加え、1993年に閉鎖したカンバスなども規模の大きなグレーンウイスキー蒸留所だったようです。
跡地を調べてみると、ポートダンダスはディアジオ関連のオフィスが一つあるだけで、後は目立った設備はなく更地になった後に再開発が行われています。
まあ主要都市グラスゴーのシティーセンターから1マイルちょっとの立地ですから、当然と言えばそうなのかも。

一方、カンバスはというと、敷地内は大量の貯蔵庫が並ぶ設備へと変貌を遂げており・・・その近くにはスペイサイドクーパレッジまで。そう、先日別な記事でも紹介した、同社集中熟成庫の一つと思しき設備となって現在に至っています。
自分の推測に過ぎませんが、かつては物流速度などの制約から、消費地の近くにブレンド、ボトリングのための設備が必要だったものの、技術が発達した現代は状況が異なり、一箇所集中の方がむしろ管理はしやすくなる。効率化の結果が見えるようでもあります。

こうした大規模蒸留所の跡地を調べると、思いがけず「この設備は何?」というものが見つかったりで、ネットが発達した現代だからこその楽しみだなと感じています。