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グレンバーギー 27年 1995-2022 Wu Dram Clan 3rd Anniversary Collection 57.7%

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GLENBURGIE
Wu Dram Clan 3rd Anniversary Collection
Aged 27 years
Distilled 1995
Bottled 2022
Cask type Hogshead #6688
700ml 57.7%

評価:★★★★★★★(7)

トップノートはウッディさが強く感じられるが、徐々に林檎のコンポートや桃の缶詰、微かにナッツやハーブのニュアンスを伴う、華やかで艶やかな香りが開いていく。
口当たりはややドライ寄りだが、香り同様フルーティーでオーキーな華やかさが含み香で広がり、余韻はトロピカルなフルーティーさと共に、乾いたウッディネスとスパイシーなフィニッシュが長く続く。

序盤は樽感が強く感じられるかもしれないが、長期熟成のグレンバーギーとバーボンホグスヘッド樽の組み合わせに予想されるフレーバーがしっかりと備わった、期待を裏切らない1本!

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ウイスキー界のマトリックス、あるいはブルーマン、そんな呼び名があるとかないとか、Wu Dram Clan 3rd Anniversary Collection。WDCのメンバーで、Kyoto Fine Wine & Spiritsのオーナーである王子さんがセンターを飾るグレンバーギーは、これまでのKFWSのリリースでも複数見られた、多くの愛好家が好むフルーティーさを備えた、飲み応えのあるリリースです。

グレンバーギーと言えばバランタインの構成原酒。ロングモーンやベンリアック、とマーティンなどと比べると、あまり話題になってこなかったモルトですが、感覚的には今から10年くらい前あたりから、ボトラーズリリースのグレンバーギーで20年熟成超のものがフルーティーで美味いと評価され、人気を確立していった印象があります。

一口にフルーティーと言っても、ある程度ウイスキーの経験値を得た愛好家であれば、内陸のノンピートモルト+バーボン樽やボグスヘッド樽の組み合わせは、こうなるだろうという予想が立てられるところ。その中でもグレンバーギーは、酒質の関係か、華やかでありつつフルーティーさがトロピカル寄りに出るというか、一層好ましい仕上がりとなることが多いモルトの一つです。

その証拠という訳ではありませんが、先日、とある方から突然ブラインドを出題され、ノージングだけでグレンバーギーと熟成年数等の各要素を絞り込めた。それくらい、際だった要素を発揮する樽が見られます。

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“グレンバーギー 32年 Old & Rare 1988-2020 43.6%
ノージングでバーギーと答えたら変態扱いされたが、近年でここまで華やかでフルーティーなのは限られる。枯れ感ある華やかさ。ドライアップルや白葡萄、濃縮したオーキーなフレーバーが余韻まで続く。ピークの終わりの美味い酒“

今回の1本にも、そうしたグレンバーギーに求める良さ、愛好家がフルーティータイプのモルトに求める要素、高い品質がしっかりと備わっていることは、テイスティングノートで記載の通りです。

なお、WDCにおける王子さんの紹介文は、日本から来たサムライで、“グルメで品質に妥協のない男”であることが書かれています。
「our Man from Japan, the samurai, fearless and always on our side. Quality is at the top of the list for Taksad. He is our gourmet and convinces with his sensory skills.」
ともすれば、今回の王子さんをセンターに置いた本リリースが、WDCのコンセプトたる「高品質であること」を体現したリリースというのは、あながち思い込みではないと思えるのです。

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アンネームドアイラ 30年 1991-2022 WDC 3rd Anniversary Collection 51.4%

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UNNAMED ISLAY (Lapharoaig)
Wu Dram Clan 3rd Anniversary Collection
Aged 30 years
Distilled 1991
Bottled 2022
Cask type Bourbon barrel #2674
700ml 51.4%

評価:★★★★★★★(7)

ラベルの圧に反して、あるいは度数に反して香味は上品で複雑。穏やかな香り立ちから、華やかなオークとナッツ、乾いた麦芽に角の取れたスモーキーさ、柑橘やグレープフルーツ。
口当たりも同様に、じんわりと角の取れた柑橘感とオークフレーバー、ピートスモーク、海のアロマが混ざり合って広がる。
最初の一口も美味いが、二口目以降に複雑さが増してさらに美味い。熟成は足し算だけではない、引き算と合わさって作られる、上質な和食のような繊細さが熟成の芸術たる1本。

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香味の傾向から、おそらくラフロイグと思われる1本。
ラベルからイメージされるバッキバキでゴリゴリな味わい(失礼)ではなく、女性的というか紳士的というか、実に優雅でバランスが取れた長期熟成アイラモルトです。

バーボンバレルで30年も熟成したら、もっと樽感は強く、ウッディでオーク感マシマシな感じに仕上がりそうなものですが、熟成環境が冷涼で一定、それである程度湿度が高く、長期熟成期間中にタンニンが分解されていく過程を踏まえれば、こうしたリリースにもなりえるのか。
この淡い感じは、今回の原酒の供給もとであるシグナトリーのリリースを俯瞰した時に見られる特徴にも一致しており、同社の熟成間強によるものとも考えられます。

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Wu Dram Clanは、KFWSの王子さんを含む、ラベルに描かれている3名の愛好家で構成されるプライベートブランドです。既に数多くのリリースを手がけており、その全てが非常にクオリティの高いスピリッツであると、愛好家間では多少高くてもこのブランドなら、という指標の一つにも鳴っています。

今回のリリースは、同ブランド3周年を記念して、アイラモルト、グレンバーギー、キャパドニックの3種がリリースされたもの。
3名それぞれが酒類におけるスペシャリストと言えるレベルの愛好家であり、このリリースでラベルに大きく描かれたBoris氏は

「our Man from Munich, moving things in the background, hunting and analyzing in cold blood. No matter how tough the negotiations get, Boris will handle it. But in the end it has to be peated.(最終的にはピーテッド化する)」と紹介されるほど、高い交渉力と、ピーテッドモルトに対するこだわりがあるそうです。

その氏がセンターなラベルとあれば、とっておきとも言えるアイラモルトも納得ですね。古き良き時代を思わせる要素と、近年のトレンドを合わせたようなフレーバーのバランス感も、WDCやKFWSのリリースによく見られる傾向です。
改めて非常にレベルの高い1本でした。

シークレットハイランドモルト 30年 48% GLEN MUSCLE No,7 Episode 3/3 

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SECRET HIGHLAND MALT 
SCOTCH WHISKY (SINGLE MALT)
Aged 30 years old 
Distilled 1990 
GLEN MUSCLE No,7 Episode 3/3
For Whisky Lovers & Drinkers, Blinded by Fear 10th Anniversary
700ml 48% 

香り:ブラウンシリアルのような香ばしいモルティーさとナッツ、乾いた牧草、じわじわと熟成由来の甘くオーキーな樽香、古びた家具。オレンジ果汁やバルサミコ酢のような甘みと重みのある酸も伴う複雑なアロマ。

味:口当たりはオイリーで粘性があり、どっしりとしている。合わせて乾いた紙っぽさとシリアル。樽由来の要素はほのかなシェリー要素と度数落ちの華やかさ、ナッツ、軽くスパイスを伴う。
余韻はカカオ多めのチョコレートを食べた後のようなほろ苦さ、しっとりとした中にピリピリとした舌への刺激を伴って長く続く。

複雑で個性的。近年多く見られるバーボン樽でプレーンな酒質を熟成して華やかキラキラ系に仕上げた、ある種現行品のトレンドとは異なる方向性。2ndフィルあたりのシェリーバットで長期熟成したのか、ほのかなシェリー感、オーキーな熟成香、ビターなウッディネスと複雑な要素が感じられる。
時間経過で香りのほうは華やかさ、樽香優位となり、好ましい要素が強くなってくる。香味とも個性と樽感が濃縮した状況であり、加水するとそれが綺麗に伸びる。好みは分かれるだろうが、短期熟成原酒では出てこない奥行き、スケールが感じられる1杯。

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GLEN MUSCLE No,7 シリーズ3部作の最終リリース。そして最終リリース。
ブランドについての説明は…もう不要でしょう。間に厚岸ブレンデッドのNo,8が入ったため順番が前後していますが、昨年6月に長濱蒸溜所からリリースされたNo,7 Episode1/3 Blended Whisky 3 to 30 yearsの構成原酒の1つであり、表記されている最長熟のモルトウイスキーです。

当時の経緯や狙い等については過去記事を参照いただくとして、このブレンデッドウイスキーNo,7 Episode1/3では
・長濱蒸留所で蒸留、3年熟成を経たピーテッドモルトジャパニーズウイスキー
・スコットランドから調達して20年熟成のグレーンウイスキー
・スコットランド産の10年〜30年熟成のモルトウイスキー
10種類以上の原酒から使用原酒が選定され、レシピが形成されたわけですが、中でも中核的な役割を担う2つのシングルモルトウイスキー(1994年蒸留26年熟成、1990年蒸留30年熟成)が、No,7 Episode 2/3と今回のNo,7 Episode 3/3となります。

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No,7 Episode1/3は、構成原酒の中でも長濱蒸留所のピーテッドモルト原酒3年の個性を屋台骨として、エステリーなフルーティーさ、奥行きや複雑さ、熟成感を付与する方向でブレンドレシピが構成されており、その要素を形成するのが、先に述べた2種の原酒です。

軽やかだが華やかでエステリー、フルーティーなハイランドモルト1994。
モルティーで個性的だが、熟成感を備えたハイランドモルト1990。
両者の属性は、さながら陽と陰。
かつて、サントリーのマスターブレンダー鳥井信治郎氏が「ええ匂いいうもんは、やっぱりウ○コの香りが入ってんとあかんのや」とコメントしたように、香水を作る際には様々なアロマが組み込まれる中でマイナス面の香りが必須とされるように。
複雑で奥行きのある香味には、同じ系統の原酒を混ぜ合わせるだけでなく、異なる属性、異なるベクトルの原酒の組み合わせによって生じる香味の幅の広さが重要であり、そのバランスを如何にとるかがブレンダーの力の見せ所だと考えています。

その意味で、今回のシークレットハイランドモルト30年は、陰陽どちらかと言われたら、陰にあたる個性であり、個人的には主役になるモルトウイスキーではないと感じていました。(少なくとも、近年のトレンドには逆行するものであると)
ただ、グレンマッスルメンバーの1人である倉島氏がこの原酒の可能性を評価し、自信が主催するウイスキーグループ“Blinded by fear”の10周年記念も兼ねてリリースを進めていくこととなります。

結果、こうして3部作が揃ってみると、まず目指したブレンドがあり、ブレンドを構成するキーパーツであり、そのフレーバーの幅の両端を味わえる構成原酒をセットでというのは、純粋に面白い取り組みです。愛好家が面白いと感じてくれるような、GLEN MUSCLE らしいリリースであり、単体としてだけでなく、ブレンドの構成原酒として視点を変えて、3本を飲み比べて頂けたら嬉しいですね。

蛇足ですが、今回のラベルは前作Episode 2/3の華やかで春や南国をイメージするようなデザインに対し、葉も花も落ちた冬の水辺に立つ1本の木に白と黒の文字という、対局にあるデザインで作成してみました。ラベルから伝わる香味の印象もさることながら、このラベルに使われた写真が、構成原酒のヒントになっているのもポイントです。
あまりメジャーな場所ではないようですが、非常に雰囲気のあるスポットです。興味がある方は探してみてください。

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さて、 GLEN MUSCLEは、気がつけば2018年のファーストリリースから約4年、一般にリリースされたもので10本、シークレットも含めると11本というリリースを重ねたブランドとなりましたが、どれも異なる取り組みがあり、コンセプトがあり、愛好家がワクワクするような、面白いと感じるような仕組みを盛り込むことができたのではないかと考えています。

加えて、クラフト蒸留所が持つ原酒でブレンドPBをリリースする(監修する)という、今でこそ珍しくないものの、当時一般的だったPB=シングルカスクのサンプルから選定、とは異なるコンセプトの先駆けの一つとして実施したことも、新しいジャンルの可能性をを発信することが出来たのではと感じています。

なにより私自身このブランドを通じて、ウイスキーをリリースするという事に内部から関わり、ウイスキーのブレンドからラベルの作成、事務手続きまで、ただ飲んでブログを書いていただけではわからない経験をすることができました。例えば造り手の領域での話が小指の先くらいはわかるようになった。これは0と1くらい大きな違いです。
それはメンバー各位同様であり、私がT&T TOYAMAやお酒の美術館等のブレンドPBを担当させて貰ったように、現在はそれぞれが経験を活かし、フリーのブレンダーやカスク選定者としてリリースに関わる等、確実に活動の幅を広げています。

GLEN MUSCLEはこれで活動を休止しますが、メンバーが居なくなるわけではありません。ブロガーくりりんの活動は続きますし、愛好家が面白いと思えるような、美味しいだけでなくワクワクするようなウイスキーは、今後もまたどこかで、違う形でリリースされていくことになります。
ですが一つの節目として。この企画にご理解、ご協力をいただいた造り手の皆様、ウイスキーメーカーの皆様、そして手にとって頂いた愛好家の皆様。
まずはこの場をお借りして、御礼申し上げます。
本当にありがとうございました。
それではまたどこかで、違う形でお会いしましょう。

ロッホローモンド(オールドロスデュー)29年 1990-2020 for WuDC 48.2%

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LOCH LOMOND 
(Old Rhosdhu) 
Aged 29 years 
Distilled 1990 
Bottled 2020 
Cask type Refill Hogshead #416 
For Wu Dram Clan 
700ml 48.2% 

評価:★★★★★★(6)

【ブラインドテイスティング】
地域:ハイランド
蒸溜所:ロッホローモンド、ブナハーブン
年数:27年前後
樽:リフィルバーボンホグス
度数:48%程度
その他:現行品ボトラーズシングルカスク

香り:トップノートは華やかで、ライチや洋梨のような白系フルーティーさに、ボール紙のような紙っぽさ、ケミカル様の甘さ、薬っぽさ。モルティーな香ばしい甘さも混じる。

味:ややピリピリとした刺激のある口当たり、そこからオリーブ、オイリーでビターなクセのある要素。合わせてケミカル系の甘み、熟成感を感じさせる樽由来の華やかさ、フルーティーさがあり、乾いた和紙や枯感のあるオークのスパイシーさが混ざって長く続く。

長期熟成の度数落ちを思わせる華やかさに、オイリーで紙っぽさとケミカル感の混じる独特の個性が印象的なモルトウイスキー。好みは分かれるが、良い部分を評価する見方も出来るバランス。
年程度熟成されたシングルカスクリリースであり、香味にある癖、オイリーさはロッホローモンドの年代前半の印象。個人的に馴染み深い香味であり、一択予想でも良かった。

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先日、ウイスキー繋がりの@SLAINTE_MHORさんから頂いたブラインドテイスティングの挑戦状。その回答と正解発表はスペース放送でLIVEで実施しましたが、ブログにもまとめていこうと思います。
第一問目はロッホローモンド。この蒸留所は個人的に非常に馴染みがあって、それこそ1990〜2010年代まで、隔年刻みで飲んでいるくらいキャラクターを把握しています。

そのため、今回のブラインドもノージングで「はい100%ロッホローモンド」と特定していたほど。年数、度数、樽とそのあたりのスペックも想像通りであり、またリリースはインポーター兼酒販のKyoto Fine Wine & Spiritsの代表である王子さんがメンバーとなっている、ドイツのボトラーズメーカーWu Dram Clanですが、今回のようなちょっと枯れた原酒にある強い華やかさは、このボトラーズメーカーが好んで選ぶ傾向があるもので、その点も答えを見て納得というリリースでした。

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ロッホローモンド蒸留所(オールドロスデュー)のモルトは、2003年蒸留あたりから酒質が向上。近年評価されるアイリッシュ系のケミカルフルーツ、いわゆるジェネリックトロピカルを量産しており、かつて濡れた段ボールだのユーカリ油だの言われた時代からは完璧に脱却した酒質となっています。
マネージャーが新規着任してその指揮の元でウイスキーの造りわけが行われたり、シングルモルトの需要が増えてブレンド向けではない意識で原酒が作られる様になったからか?
とにかく最近のロッホローモンドは、18年くらいまでなら間違いないと言えるリリースが多いです。

一方で、2000年以前、1990年代はどうかと言うと、これがなかなか難しい。フルーティーさが強く当たりもあれば、独特の癖が強く出ていてちょっとこれは。。。というものも。玉石混合とはまさにこのことですね。
個人的に1993〜1994年あたりは、ボディ軽めながらフルーティーさが強い原酒が多い様に感じていて、今回の1990年はクセ強目が多いなと言う印象。なのであとは運次第。ただ近年では熟成を経て樽由来のフルーティーさ、華やかさが強くなってきたものも見られており、今回はその中でも良い原酒を選んでリリースされたんだなと。選定者の酒類ブローカーやボトラーとの繋がりの良さ、樽の巡りの良さに流石だなーと思わされます。

また、最近では別ブランドでドラムラッドさんがリリースしたのが1993のロスデューです。この辺りもフルーティー系の、同様の仕上がりを期待出来るのではと予想しており、後日レビューをまとめたいと思います。

ジャパニーズボトラーズメーカー T&T TOYAMA の現在を探る

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北陸のウイスキー専門店モルトヤマの下野孔明氏。
そして若鶴酒造・三郎丸蒸留所の稲垣貴彦氏が設立した、ジャパニーズボトラーズメーカー T&T TOYAMA。

これまで日本にはボトラーズといっても貯蔵庫を国内に保有するメーカーはなく、熟成済みの原酒を買い付けてボトリングする、インポーターブランドが主流でした。
そこでT&T TOYAMAは独自の熟成庫建設を計画し、 2021年4月から6月にかけクラウドファンディングも実施。結果、約4000万円という資金を集めたのは記憶に新しいと思います。

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勿論、土地代含めてこの規模の貯蔵庫が4000万円で建つわけがなく・・・。原酒の調達だってタダではありません。銀行からの融資や各種助成金の活用など、ブランド立ち上げに向けて両名がこなしたタスクは膨大だったと推察されます。

その熟成庫建設に関しては、下野氏のFacebookで進捗報告が行われていましたが、率直に言って自分達で情報を取りに行かないと進展が見えないもどかしさはありました。
しかし同社WEBページが整備され、先日WEBメディア(nippon.com)による特集記事で詳しい情報も発信されました。
さらに、T&T TOYAMAの活動としては、来年創業が予定される岐阜県・飛騨高山蒸溜所のコンサルティングも発表されるなど、具体的な動きが見えてきたところ。
同クラウドファンディング支援者として、また2人をよく知る1人として、現時点のまとめ記事を掲載させて頂きます。

※浮田泰幸氏によるT&T TOYAMA の特集記事。同ブランドについて、国産ウイスキーの現状と合わせて詳しくまとめられている。


■T&T TOYAMA 公式ページのオープン
2021年9月に公式ページがオープンし、ブランドの概要やコンセプトが発信されるようになりました。
情報量的にはまだこれからという感じはありますが、クラウドファンディングのリターンであった支援者の名前も掲載されており、個人的に知っている人も多いことから、ちょっとした同窓会名簿のようでもあります。

※T&T TOYAMA 公式WEBページ
https://tt-toyama.jp

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■南砺波での熟成庫建設
2021年10月に建設が始まったT&T TOYAMAのシンボルとも言える熟成庫。3月時点で屋根がついて、いよいよ完成に向けて形が見えてきたという状況です。
この熟成庫の特徴は、写真の通り木造であるということ。既存の蒸溜所に見られる石造りや倉庫を改造したものとは異なり、断熱性と調湿性に優れる直行集積材(CLT)材を用いることで、他の熟成環境との違いが期待できることにあります。

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熟成庫の仕様:木造、ラック式(最大貯蔵樽数、5000樽)

また、並行して原酒の調達も行われており、熟成庫が完成する今春に向けて国内蒸留所から数十樽の確保が完了しているとのこと。
同地区にある三四郎樽工房による焙煎バーボン樽の調達など、熟成環境以外に原酒に影響を与える要素もあり、オフィシャルブランドとの仕上がりの違いも注目です。
ウッドショック、コロナによる資材調達の遅れ、業界では様々な影響を聞くところですが、秋にはクラウドファンディングリターンの一つ、現地で完成記念のパーティーも予定されていることから、是非予定通り完成してほしいです。


■蒸留所運営のコンサルティング事業
今年に入って発表された新しい取り組みです。
T&T TOYAMAが蒸留所の設立、立ち上げから、ウイスキー製造、販売、マーケティングをサポートするという事業。
確かにT&T TOYAMAは、三郎丸蒸留所でウイスキー製造に関わる稲垣氏、モルトヤマとしてウイスキーの販売に関わる下野氏が立ち上げたメーカーであり、むしろこの2人だから可能な企画だと言えるわけです。

多くの蒸留所が立ち上がる現在の日本において、実体験に基づく知識と販売網は強みですし、何よりT&Tとして原酒の購入も出来るのは双方にメリットがある話だと思います。これはスコッチ業界において、ボトラーズメーカーが果たしてきた役割に共通するところがあります。
また、コンサルティングにあたって提供されるツールの一つに、「独自の樽管理アプリ」というのも面白いですね。

今年1月ごろ、稲垣さんが「アプリ作ったんですよ!」と電話口で言っていたのを思い出しましたが、自社向けかなと思っていたところ、なるほどこれに繋がる動きだったのかと。
これが実現したらクラフトメーカー樽管理コストの削減にも、管理の効率化にも繋がるので、完成したアプリの運用を早く見てみたいです。

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コンサルティング第一号としては、先日計画が公開された岐阜県・飛騨高山蒸溜所がサポートを受けることが発表されています。(※上画像、記事参照)

同蒸留所には三郎丸蒸留所が開発した国産鋳造ポットスチルZEMONの導入も決まっていて、ヘビーピートの三郎丸に、ノンピートの飛騨高山蒸溜所、という同じポットスチルから造られる異なる原酒の飲み比べも実現します。
三郎丸蒸留所は原酒交換によるブレンドも実施していますので、ZEMONブレンドなんてのも実現するんじゃないかと期待してしまいますが、それ以上にT&T TOYAMA の2人が関わって、特に製造面はポットスチルの開発者でありユーザーでもある稲垣さんがサポートするとなれば、間違いないものが出来るだろうと期待してしまいます。

なお飛騨高山蒸溜所を創業する舩坂酒造の有巣さんとは、個人的に三郎丸とは別の蒸留所に関連して交流があるので、同蒸留所については追って本ブログでも紹介していきたいと思います。

■結びに
コロナ禍で東京在住の当方はなかなか2人に直接会えませんが、電話やメッセンジャー等で情報交換をさせて頂くと、とにかく公開されている以上に様々な活動や企画を動かされていることが伝わってきます。
私を含めて3人とも80年代生まれ、ほぼ同世代でありながらここまでのことが出来るのかと、刺激にもなり、自分と比較してどんどん先に行ってしまう2人の凄さを身に染みて感じてしまいます。

新しい取り組みは必ずしも歓迎されるばかりではなく、前例主義の日本では難しい調整も増えるでしょうし、出る杭はなんとやらという諺もあります。
ですが、そうした苦労があった先にある未来を、私は見てみたいですし、その為にも引き続き応援していきたいと思っています。

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