タグ

タグ:ボトラーズ

オスロスク 15年 2006-2021 55.5% GM for ハリーズ金沢

カテゴリ:
IMG_3736

AUCHROISK 
GORDON & MACPHAIL 
For Harry’s KANAZAWA 
Aged 15 years 
Distilled 2006 
Bottled 2021 
Cask type Refill Bourbon Barrel 
700ml 55.5% 

評価:★★★★★★(6)

香り:華やかでオーキー、バニラ、ココナッツ、洋菓子系の甘さ。序盤はウッディでドライなトップノートだが、徐々に熟したバナナや洋梨、フルーティーな甘さが開いてくる。

味:コクがあって柔らかい度数を感じさせない口当たり。麦芽風味と合わせてオークフレーバーの塊。マロングラッセと黄色フルーツのアクセント。徐々にドライでウッディ、スパイシーなフィニッシュ。
時間経過でオークフレーバーの塊が解け、林檎のコンポートや白葡萄を思わせる甘く華やかなフレーバーが広がってくる。

近年のGMコニチョらしい蒸溜所の個性を活かしたカスク。リフィルバーボンバレルだが、1st fillかと思うくらいに濃厚なオーキーさがあり、それでいて渋みが強いというわけではない。オスロスクらしい適度な厚みのある酒質、柔らかい麦芽風味が馴染んでいる。
時間経過での変化についてはコメントの通りで、開封直後やグラスに注いだ直後は絡まって一つの塊になっているフレーバーが、徐々に解け、広がっていく点がこのボトルの注目すべき点である。また、加水の変化も同様でしっかりと伸びてくれる。これは手元に置いて1本付き合いたいボトル。

IMG_3720

先日より応援記事を投稿している、BARハリーズ金沢さんの記念ボトル。
経緯については過去記事に記載の通り、三郎丸蒸溜所ともつながりの深いBARハリーズ高岡が金沢駅前に移転することとなり、その店内内装にかかる費用としてクラウドファンディングが行われています。
このボトルはそのリターンの1つとなっているもので、今回サンプルを頂いたのでレビューを掲載します。

IMG_3734
※クラウドファンディングは11月18日まで。初期の目標額である300万円は達成しており、500万円のネクストリターンも達成間近。後30万円!!
樽焼きステーキ&ウイスキーが楽しめるモルトバー「ハリーズ金沢」を作りたい‼ - CAMPFIRE (キャンプファイヤー) (camp-fire.jp)

オスロスクのリリースは最近少なく、特に近年間違いのないGMコニチョとなれば、気になっている人も少なくなかったのではないかと思います。
で、飲んでみた感想としてはやはり間違いなかったわけです。カスクストレングスでハイプルーフらしい余韻の強さ、麦芽系のフレーバーの厚み、熟成を経たことによる奥行きがあり、それでいて近年のトレンド的なフレーバーは外さない。一見すると通向けというか、地味なところがあるスペックですが、ある程度飲んだ愛好家にとってはこういうのが良いんです。

某ロールスロイスとか政府公認第一号とかより、タムデューとかノッカンドゥ―とか…こういうちょっとマニアックなところのほうが”くる”んですよね。
また、今回のボトルのポイントはリフィルのバレルでありながら、しっかりとしたオークフレーバーが備わりつつ、逆にウッディすぎないバランスの良い仕上がりがポイントです。開封後の変化が良好であることから、それこそハリーズ金沢が今後長く金沢の地でウイスキーを広めていくにあたり、5年後であっても10年後であっても変化を楽しめるような、同店にとって基準であり、基盤になるようなボトルだと感じます。これは良いカスクを選ばれましたね。

ハリーズ金沢のオープンは11月23日(火)。マスターの田島さんから頂いた写真を見て、その雰囲気の良さにびっくりしました。なんで東京にないんでしょうか(笑)
カウンターの一枚板の雰囲気、マーブル模様のような木目は、同店が以前あった高岡の銅器を思わせる模様の洋でもあります。
昨日の東京のコロナ感染者は7名。月曜日とはいえ今年一番低い数字。いよいよ現実を帯びてきたアフターコロナの社会。。。三郎丸蒸留所にも去年以来いけてませんし、北陸に脚を運ぶ楽しみがまた一つ増えました。

IMG_3644
IMG_3674

ADN-97 (オルドニー) 24年 1997-2021 ビハインドザカスク 53.3%

カテゴリ:
FullSizeRender

ADN-97 (ALDUNIE) 
SINGLE CASK BLENDED MALT 
BEHIND THE CASK 
OVER 24 YEARS 
Distilled 1997/06/18 
Bottled 2021/08 
Cask type Barrel #1507 
750ml 53.3% 

評価:★★★★★★(6)

香り:まるで蜂蜜のようなトップノート。独特の酸味と熟した洋梨、白葡萄、花の蜜のような甘みのある香り。微かに乾いた麦芽の香ばしさ、オーク香が混じる。

味:スムーズでややウッディ。香り同様の含み香に、奥から麦芽の甘み、コクが追い付いてくる。徐々にドライで華やか、軽やかな刺激を伴いつつ、アメリカンオーク由来のオーキーな余韻が染み込むように長く続く。

香味のベースはグレンフィディックに似た傾向があるものの、「蜂蜜に近い」ではなく「蜂蜜そのもの」を思わせる香味が特徴的なモルト。また、ボトルやラベルからソーテルヌワインを彷彿とさせるが、その香味にも似た要素があると言えなくもない。少量加水するとすりおろした林檎のような甘みとフルーティーさが、蜂蜜を思わせるアロマの奥から開く。また、香り以上に味のほうでまとまりが良くなり、一層白色系や黄色系のフルーティーさが感じられる。
ロック、ハイボールも悪くはないが、ストレートや少量加水をグラスでじっくり楽しみたい。

IMG_3139

先日、対談記事を掲載した、ボトラーズブランド「BEHIND THE CASK」のファーストリリースのうちの1つADN-97。気になっていたボトルで、ウイスキー仲間経由でボトルごとお借りしました。中身はウィリアムグランツ社がグレンフィディック・バルヴェニー蒸溜所の敷地内に建設した第三蒸留所、キニンヴィのティースプーンモルトで、なんとも通好みなリリースを一発目に持ってきたなと驚いたことを覚えています。

このボトルをレビューするにあたっては2つの切り口があり、一つはキニンヴィという蒸留所のスタイルから見てどうかということ。そしてもう一つが、ビハインドザカスク社のリリースコンセプトとしてどうかということです。
今回の更新ではこの2つの視点で順番に説明していきます。(※同社リリースコンセプト等については、先日更新した記事を確認ください。)



■蒸溜所のハウススタイル
キニンヴィはグランツやモンキーショルダー等のブレンデッドに使われるため、10年ほど前はリリースがない幻の蒸留所の一つと言われてきました。一時ヘーゼルウッド名義で濃厚シェリー系がリリースされたのですが、酒質がよくわからない。。。その後オフィシャルから、リフィル系統の樽構成の23年、17年などがリリースされ、蒸溜所の個性を把握できるようになりました。

そもそも親会社がブレンド用に代替品として仕込んだモノ。当たり前と言えば当たり前なのですが、その個性は非常にフィディック寄りだったんですよね。
フィディック寄りで若干ローランド的というか、軽やかな植物感とエステリーな華やかさがあるというか。バルヴェニーのように麦芽風味が膨らむ感じではありませんが、一般的に兄弟が同じDNAを受け継いでどこか似たところがあるような感じ。
実際、同じ敷地内にあるということもあって、キニンヴィの仕込みはバルヴェニー の設備を一部共用する形で行われているとのことで、造りの面からも納得のいく個性でした。

Kininvie-Stillhouse
(※キニンヴィのポットスチル。グレンフィディックのスチル形状のミニチュア版とも言われているが、手前の初留釜は大きく独特の形状をしており、香味の違いに影響していると考えられる。画像引用:https://www.whiskyandwisdom.com/kininvie-the-distillery-emerges/)

ではこのADN-97はどうかというと、使われた樽の影響か特殊な香味が付与されています。樽はバーボン樽なのですが、ひょっとすると元々熟成に使われていたバーボン樽と、ティースプーン的な処理をした後で原酒を詰めなおしたバーボン樽が違うのかもしれません。

ベースの酒質は上述の個性から外れたものではありませんが、香りのトップに来る蜂蜜そのものを思わせる香りは、通常のWG社のモルトのどれにも当てはまらないもので、このボトルの個性にも繋がっています。(内陸系のモルトには、蜂蜜のような香りがするものはいくつもありますが、似た香りと、そのものを思わせる香りでは、大きな違いがあります。)

IMG_3135

■BEHIND THE CASKのリリースコンセプト
さて、冒頭述べたように、特筆するところはもう一つ。それは、ビハインドザカスクのリリースコンセプトである「ソムリエがサーブするウイスキー」。ワインと同じく、経年変化、温度変化なども見て楽しんでほしいとするものです。
先日同社代表の澤田さんと対談させてもらった際、このADN-97については

「AND-97は開封直後から蜂蜜、洋梨、そして花のような甘みと酸味を感じる香りがあり、香味ともあまりトゲトゲしいところはありません。これらの要素がグラスの中で馴染み、開いていくことから、比較的早飲みのイメージです。温度としては、軽く冷えた状態からサーブすると、常温に戻る過程で変化をさらに楽しんで貰えるのではないかと思います。」

とあり、だったら白ワインのように冷やして飲もうと。ただ借り物であるボトルごと冷やすのはちょっと憚られたので、小瓶に移して冷蔵庫へ。1時間弱冷やしてからワイングラスに移し、徐々に温度を戻しながら飲んでみました。
するとなるほど確かに、香りが少し硬さを帯びるのですが、それが逆に冷気を伴う香りと合わせて蜂蜜レモンドリンクのような爽やかさを伴う香りとなり、徐々に蜂蜜感が強く、果実系のアロマが開いてくるような変化。香味が開くという過程をわかりやすく楽しめました。

グラスと温度で変化をつけることで、同じボトルでも楽しみが広がる、新しい選択肢だと思います。ユーザーとしてはそれをテイスティングの際の指標ともできますし、BAR等で独自の解釈で提供があっても面白いと思います。

因みに今回のリリース名称ADN-97は、Aldunieを略したもので、97は蒸溜年と考えられます。とすればもう一つのリリースであるグレーンのIGN-89は、Invergordon 1989となりますね。
なお、同社から予定されている次のリリースはGNR-13、シェリー系であるとのこと。つまり…Glen rothesの短熟圧殺系でしょうか。シェリー系は時間をかけて変化を見ていくタイプも考えられるため、公式からの発信を楽しみにしております。

BEHIND THE CASK (ビハインドザカスク) 代表に聞く ブランドコンセプトとリリース方針

カテゴリ:
quLJffWE

2021年、 青森県で立ち上がったボトラーズブランド「BEHIND THE CASK」
自分の周囲では、先日 T&T TOYAMA社やドラムラッド社が活動を開始しましたが、ウイスキー市場の拡大を背景にまた新しいブランドがスタートしていました。

BEHIND THE CASK
WEB:https://www.behindthecask.com/
SNS:https://twitter.com/BehindtheCask
ADDRESS:〒030-0862 青森県青森市古川2-10-9
TEL:050-8881-6239

同社のリリースについては、独自調達した原酒を日本国内でボトリングしている風景や、フランスの白ワインを思わせる特徴的なボトルデザインが目を引き、注目を集めています。しかし、リリースコンセプトやメーカースタンス、そしてボトルのラベル表記は謎に包まれた部分がありました。

先日、SNSで同社のローンチリリースADN-97の簡易レビューを投稿した際、公式アカウントから「質問を受け付ける」旨のレスポンスを頂き…。
これはチャンスと直接お話しを伺ってみたところ、これまでの日本のメーカーにはない「ワインとウイスキーのハイブリット」視点のコンセプト等、面白い試みが判明したのです。

今回の更新は前編後編構成。前編記事では、同社代表である澤田氏に伺った内容を以下に対談形式でまとめ、先に触れた「謎」の部分を解説していくと共に。後編記事ではリリースされたウイスキー2種についてもレビューしていきます。

behindthecask_sns

■対談内容まとめ
同社との対談はかなりボリューミーなものになったため、要点を以下にまとめます。詳細まで把握したい方は、本編を確認ください。

BEHIND THE CASK社概要:
・イギリス等で調達した原酒を輸入し、日本国内でボトリング。
・ワインボトルにワインコルク、ラベル含めワインを想起させる外観が特徴。
・2021年8月に1stリリース。1989年5月蒸留のブレンデッドグレーンIGN-89、1997年6月蒸留のブレンデッドモルトADN-97をローンチ。

Q1:なぜワインボトルでリリースしているのか。コンセプトを知りたい。
⇒「ソムリエがサーブするウイスキー」をコンセプトとしている。それは、ワインのようにウイスキーにおいても瓶内変化、温度、グラス等、原酒の変化とポテンシャルを引き出す手法に拘って楽しんで欲しいというメッセージを込めており、コンセプトを体現する為にワインボトルを採用している。

Q2:原酒の調達は?なぜ国内でボトリングしているのか。
⇒原酒調達は元ケイデンヘッド社のマーク・ワット氏に協力頂いている。ボトリングについては、ワインボトルはイギリスの工場ではボトリング出来ず、自分の考えるコンセプトを形にして発信する為、日本で独自にボトリングしている。

Q3:同ブランドのラベル表記(ボトリング日と熟成年数)に関する疑問。
日本ではなくイギリスで樽から払い出されて輸入した原酒について、表記されたボトリング日は国内のもの。イギリスでの払い出し日から間隔が開いていないか。また、日本への輸送期間も熟成年数に含まれていないか。
⇒輸送期間は熟成年数に含まれていないが、既存ラベルは誤解を招きやすい表記だったと感じており次回から修正する。なお、1stリリース2種の払い出しは2021年6月頃で、その後原酒を空輸している。

Q4:疑問は解消したが、こうした情報を発信した方が良いのでは。
⇒ミステリアスなところから興味関心を持って貰えればと考えていた。しかし誤解にも繋がってしまったと思う。今後は当社が考える飲み方、飲み頃等、SNS等で積極的にコンセプトを発信していく。

FBoN4w5VEAMbrkr

■対談本編(対談者:BEHIND THE CASK 代表 澤田氏)
くりりん(以下、く)「…前略…。”BEHIND THE CASK”は、デザインや中身について評判が良いようです。一方で、ラベルを見て疑問に思うところや、ブランドコンセプトがわかりにくいと感じていました。こちらについてまず伺いたいと思います。」

澤田(以下、澤)「お手柔らかによろしくお願いします(笑)。当社のブランド、BEHIND THE CASKは始動にあたってミステリアスなところをアピールしようと考えていました。これは何だろう、どんな会社だろう、興味を持ってもらえるのではないかと考えたわけです。そのため、リリースにかかる情報や、コンセプト等の発信をあえて積極的に行っていませんでした。ただ、結果として一部誤解を招いたところもあったと思います。」

く「私としてもこの機会に正しく理解していきたいと思います。早速ですが、ラベルの表記についてです。まず1stリリースの2本は2021年8月ボトリングと表記されていますが、これらは日本で熟成されている原酒ではないため、樽出しはイギリスと考えられます。つまり日本への輸送期間分、払い出し日が数カ月単位でズレていますよね。」

FullSizeRender

澤「はい、当社は日本国内でボトリングをしていますが、原酒は選定したものをイギリス等からタンク又は仮ボトリングした状態で運んできています。そのため、1stリリース2本については、イギリスでの払い出し日から輸送期間があった上で、国内でのボトリング日となります。」

く「日本では法律上ラベル表記の整理がありません。その記載がルール的にNGかというとそうではないのですが、一般的なリリースの理解で言えば、消費者は直前まで樽に入っていたと誤解してしまいませんでしょうか。」

澤「言い訳がましくなりますが、その点まで考えが及んでおらず、多くのお問い合わせも頂きました。おっしゃる通りですので、次回のリリースでは本国側での樽からの払い出し日を明記しつつ、必要に応じて日本での瓶詰め日を併記する形にしたいと思います。」

Ez3JtoIVoAQUgsH
(※同社SNSで公開されているボトリング設備の一部)

く「もう1点気になるのが、熟成年数の表記です。例えば今回のボトルADN-97の場合、蒸留年1997年6月に対し、日本でのボトリング日2021年8月からの起算で熟成年数がカウントされていませんでしょうか。海路で運んだ場合、イギリスからではどんなに早くても4カ月、今は半年くらいかかってしまうと思います。そうなると、熟成年数は24年ではなく23年ではないかと思うのですが。」

澤「実は今回は、イギリスから原酒を輸出してもらう直前で輸出方法に関して待ったがかかり、時間が無かったため空輸に切り替えたのです。当初、選定した原酒をタンクで輸入する予定だったのですが、本国側で仮ボトリングしてくれと言われてしまい。。。AND-97の払い出しは2021年6月で、そこから1か月程度で国内へ。ラベルには2021年8月と表記して造ってしまっていたため、日本国内での詰替えが急ピッチの作業となってホントに焦りました(汗)」

く「エアーだったんですね。それなら納得です。また仮ボトリングという苦肉の策をとったことや、ラベルの表記が消費者の疑問に繋がってしまったと。熟成年数についてはこちらの深読みしすぎだったこともわかりましたし、個人的に最大の疑問点がクリアになりました。」

日本におけるPB ボトラーズの整理
(※日本のボトラーズブランドがPBリリースを行う流れの概要図。本国でラベル貼付け含めボトリングを行うケース①はSWAの審査が厳しいことや、ラベルの自由度が著しく制限されることもあり、現在はSWAの基準を満たす仮ラベルで審査を通し、日本国内で独自のラベルに張り替えるケース②が多い。BEHIND THE CASK社のリリースはケース③の予定が、ケース②とのハイブリッドになったもの。)


■ボトル形状とリリースコンセプトについて
く「BEHIND THE CASKのリリースは、やはりこのシャトーイケムを思わせるワインボトルやコルク、ラベルデザインが目を引きます。1stリリースでは日本国内で詰め替えてまでこのボトルにしている、これらには狙いがあるのでしょうか。」

澤「この説明は、当社が目指すモデルメーカー、当方の経歴、リリースコンセプトという順に説明させて頂ければと考えています。
まず、当社はフランスのウイスキーボトラーズ、ミシェル・クーブレ社を、目指すモデルの1つに掲げています。こだわりの樽の調達、独自の熟成というところには辿りつけていませんが、将来的に実現する方法は既に目星をつけています。
そして当方の経歴ですが、元々ワインから洋酒関連のビジネスに関わり始めました。ソムリエの資格を取得し、ボルドー大学でテイスティングコースを受講しました。一方で、ウイスキー分野ではウイスキーの製造にも関わってきました。そうした経験の上で、自分は“ソムリエがサーブするウイスキー”をイメージし、BEHIND THE CASKのリリースにワインボトルを採用したという経緯があります。」

d8d6608d

く「ミシェル・クーブレ社のリリースもワイン的な外観がありますね。一方で、お話ありました“ソムリエがサーブするウイスキー”について、もう少し詳しく説明頂けますでしょうか。ソムリエのサーブというと、ワインの状態や温度、様々な要素を最適なところでグラスに注ぐ、というイメージがあります。この考えをウイスキーにも取り入れるというメッセージでしょうか。」

澤「はい、この点がこれまで充分説明できていなかった、当社リリースのコンセプトだと思います。
ウイスキーをはじめ、お酒はボトリングされた後も日々変化していくものです。ワインはまさに変化を見極めていかなければならないお酒の代表であり、ピークを迎えて最適な状態で飲むワインの素晴らしさは筆舌に尽くしがたいものです。ウイスキーにおいても、早飲みするもの、多少空気に触れさせたほうが良いもの、数年間の時間を経て面白い変化が見込めるもの、ワイン同様に様々なタイプがあります。私はソムリエとしての経験、そしてウイスキー愛好家としての経験から、変化も含めてウイスキーを楽しんでほしい。こうしたメッセージを込めて、ワインを想起させる外観、仕様をBEHIND THE CASKのリリースに採用させて頂きました。」

IMG_3105

く「なるほど、非常に良くわかりました。それで“ソムリエがサーブするウイスキー”なんですね。確かにサルファリーなシェリー樽熟成ウイスキーが、時間経過でベリー香を纏うものに変化したり、バーボン樽熟成のものもウッディさの角が取れるなど、変化を楽しみながら、我々愛好家は日々ウイスキーと向き合っています。今後、BEHIND THE CASKのリリースは、飲み頃、変化の予測も含め、提案していくということになるのでしょうか。」

澤「そうですね、まだ情報発信ツールやサイトなども整理している最中で、そこまでまとめられていないですが、次のリリースに向けて準備を進めていければと思います。また、SNS等に投稿される愛好家の皆様からの感想も確認させて頂き、リリースしたボトルの変化に関するフィードバックとさせてもらえればと考えています。」

く「ひょっとしてラベルの大部分を占める空白は、ボトルの状態や開封日等をメモしておくようなイメージで作られたりしました?」

澤「いえ、そこまでは考えていませんでした(笑)。ですが、ワインでもセラーに入れた日をメモしたり、タグをつけられたりする方もいらっしゃいますから、そういう使われ方があってもいいかもしれません。」

E-Hu3siVIAQz9YW

■原酒の提供とパートナーについて
く「細かいことで恐縮ですが、ワインボトルを使用する理由は理解できましたが、これを国内でボトリングする理由を教えてください。」

澤「端的に言えば、それを実現できるボトリングメーカーがイギリスに無かったことです。BEHIND THE CASKに用いる原酒は、CADENHEAD’Sのマネージャーだったマーク・ワット氏の協力を得て確保した原酒の中から、趣旨に沿ったものを選んでいます。一方で、これをイギリス本国でボトリングしようとすると、ワインボトルがボトリングラインに合わなかったり、メーカー側にも在庫がないので、当社のように少数リリースで規格にないボトルやラインの調整までは行ってくれません。自分が考えるコンセプト、メッセージを込めたリリースとするためには、国内でボトリングを行うしかなかったのです。
また、だったらノーマルなボトルで良いじゃないかと思う方も居るかもしれませんが、細部にまで拘ってこそ、プライベートリリースの魅力に繋がると考えています。」

markwatt
(※マーク・ワット氏。ケイデンヘッド社を退職後、Watt Whisky Campanyを立ち上げ引き続きウイスキーリリースに関わっている。画像引用:https://whiskyfacile.wordpress.com/2020/05/16/interview-mark-watt-campbeltown-whisky-company/)

く「神は細部に宿る、ということですね。確かに、今回リリースされた2種類については、色合い的にもまさにイケムのような仕上がりで、ボトルを手に取ってみると独特な存在感があり、バックバーにあっても目立ちそうです。なお、コンセプトに絡んだ想定はどのあたりだったんでしょうか」

澤「IGN-89は長期熟成のグレーンで、瓶内変化のスピードは非常に緩やかです。すぐにでも飲めますが、ややドライでウッディな質感があるため、その点の変化が期待できます。温度としては常温で、ただし冬場は少し温めるくらいがいいと思います。
AND-97は開封直後から蜂蜜、洋梨、そして花のような甘みと酸味を感じる香りがあり、香味ともあまりトゲトゲしいところはありません。これらの要素がグラスの中で馴染み、開いていくことから、比較的早飲みのイメージです。温度としては、軽く冷えた状態からサーブすると、常温に戻る過程で変化をさらに楽しんで貰えるのではないかと思います。」


ADN-97

く「赤ワインや白ワインのような捉え方ですね。そうした発信がリリースと合わせてあると、他社にはない試みとなって一層面白さが出てくるように思います。後はグラスの指定や…デキャンタージュ等も考えられますね。」

澤「はい、まさにデキャンタージュについては考えていました。ウイスキーをデキャンタージュする方法を取り入れている愛好家がいるとも聞いていますが、オフフレーバーの軽減、アルコールや樽香のトゲトゲしさをコントロールできるのではないかと考えています。ウイスキーにはウイスキーの良さが、ワインにはワインの良さがあり、無理にこれらを融合させるつもりはありませんが、良さを引き出せると感じられる手法は試していきたいと考えています。」

く「長々と質問にお答えいただき、ありがとうございました。最後に今後のリリース予定や、BEHIND THE CASKとしての活動予定についても教えてください。」

澤「現在第2弾のリリースに向けて準備を進めています。詳しくはコメントできませんが、今回はシェリー系で記号はGNR-13とだけ…。なお、先ほどコメントさせて頂きましたように、今後はラベル表記に誤解が生じないよう表記を見直すとともに、BEHIND THE CASKのコンセプトに沿った発信もしていくつもりです。そういう意味では、2ndリリースこそ真の意味でのローンチであり、皆様に評価頂く機会になるものと思っています。
また、当社の活動について長期的な視点で言えば、現在所管の税務署とも相談しながら、日本国内でどのような取り組みを実施できるのか、新しいアイディアも模索しています。既にいくつかは整理を終えており、後はリリースが落ち着き次第、次の動きを展開していきます。」

く「日本国内ではプライベートブランドが珍しくなくなり、当たり前に市場にある時代となりました。そんな中で、どうやって独自色を出していくか、持ち味を活かすか、それが我々愛好家にとっても重要な指針となります。是非、その魅力をさらに打ち出していけるようなリリースや活動を展開していってください。本日はありがとうございました。」


※補足※
ボトラーズメーカーの定義について。明確に定められていませんが、
①原酒を買い付け、独自ブランドを販売しているオフィシャル以外のメーカー。
②買い付けた原酒を独自に熟成し、シングル○○としてボトリングしてリリースしているメーカー。
一般的にボトラーズの理解は①、②の条件を満たすものとなります。しかし日本企業の場合、②を満たすことが以下背景から困難であり、厳密にいえば日本のプライベーター、酒販等がリリースする独自ブランドの大半は、ボトラーズと言うよりはインポーターのPBブランドとなります。

現在のイギリスの法律では、シングルモルトを樽で輸出することが出来ないこと。日本においても樽で原酒を保有し、熟成させたうえで課税してボトリングするには、酒販免許ではなく酒造免許が必要で、しかも酒造免許の取得には様々なハードルがあること。大きくはこの2点が障壁となるためです。
従ってBEHIND THE CASK社も現時点ではボトラーズとは言えない区分となりますが、この点について新しいプランを進めているそうです。

~後編に続く~

ドラムラッド ラフコースト batch#1 エイジオブイノセンス 54.5%

カテゴリ:
FullSizeRender

DRAMLAD 
The Age of Innocence 
Rouch Coast 
Islay Malt Whisky 
Cask type Red wine cask finish 
Bottled 2021 
Batch #1 
700ml 54.5% 

評価:★★★★★★(6)

香り:ピーティーでBBQのような強いスモーキーさと甘さの混じる香り立ち。やや根菜的なニュアンスと土っぽさ。甘酸っぱい果肉やソースを思わせるアロマもある。

味:口当たりはピーティーで粘性のある質感と、燻してほろ苦い麦芽風味。ピリッとした刺激もありつつ、甘酸っぱく赤みがかったニュアンスがアクセントに。余韻はスモーキーでドライ、舌の上にヨードを伴う粘性とウッディネス、ピートの土っぽさが残る。

主体は燻した麦芽とピートのリッチな味わい。赤ワイン樽後熟による甘酸っぱさ、べたつかない程度に粘度のある質感が、若さをカバーして程よいアクセントになっている。蒸留所は奥にある根菜っぽさやピートフレーバーの系統からラ〇ヴーリンと予想。
ハイボールにするとソルティーなフレーバーが引き立ち、ソーダの気泡と共にパチパチとピートスモークが燻製黒胡椒のように口の中を刺激していく。確かにこれはハイボールに合う1本。


ドラムラッドのセカンドリリース。Twitterのほうでは簡易レビューをUPしていましたが、記事にしていなかったのでこちらにも。
同社の3種のブランドラインナップの中では、エントリーグレードに位置付けられているエイジオブイノセンスの最初の1本。このグレードでは、若くても個性がわかりやすいものや、フィニッシュ等の面白さ、ウイスキーの魅力を気軽に楽しめるウイスキーをコンセプとしたシリーズです。

今回発売されたラフコーストは、今後シリーズ化していくという、アイラシングルモルトの1本。
テイスティングしてみると、仕上がりは悪くなく、そして確かに面白い。カスクフィニッシュの効き具合がちょうど良い塩梅で、全体のバランスに寄与しているだけでなく、蒸溜所のハウススタイルと思しき個性も感じられるのがポイントだと感じます。
若いモルトでもピーティーなものは、ピートにカバーされてある程度飲める仕上がりになります。しかしワインカスクはチャレンジ要素です。過去別ボトラーズから同じようなスペックのリリースは珍しくないものの、個人的にあんまりヒットしたことが無かった組み合わせだったので、今回も多少警戒していたわけです。

特にハイボールに合うというのは目から鱗でしたね。これが今回のリリースで一番面白いと感じたところと言えます。
ヤングアイラがハイボールに合うのは、別に今さら感のある話ですが、ワインカスクでハイボールというのは意外。公式コメントでは「真夏の深夜にゆっくり愉しむハイボール」とありましたが、実際に飲んでみると、ゆっくりどころかゴクゴクと秒で溶けるハイボールです(笑)。

lagavulin_sea
(シリーズタイトルとなっているRouch Coast(ラフコースト)は、”荒れる海岸”を意味する。写真は個人的にこのボトルの中身だと考えている蒸留所を、少し離れた先にある岬から撮影したもの。海は荒れてないけど…イメージして補完してください。)

ドラムラッドのリリースは、これまでのインポーターにはあまり見られなかった、選び手とリリースイメージを明確にしていることが、ブランド価値の一つとなっています。
選定者が信頼できるプロというのが、ここで生きてくるのか。あるいはこの人が大丈夫だと言って選んだんだから飲んでみようと思えるのか。確かに今回のリリースは、ドラムラッドじゃなかったら自分は飲まなかったでしょうし、公式解説あった通り面白い仕上がりでした。

そのドラムラッドさん、次のリリースは同じエイジオブイノセンスからリンクウッド2010-2021が9月15日に発売だそうです。
中身はホグスヘッド樽での熟成により、若いモルトながら甘く華やかに仕上がっていると聞いています。確かに、リンクウッドの酒質にホグスヘッドなら、少々ドライな感じでもオーキーなフレーバーに後押しされて、万人に愛されるスペイサイド地域らしさのあるリリースとなりそうですね。
コロナ禍故に中々飲みに行くことは出来ませんが、次回作も楽しみにしています。
参照:https://www.bar-times.com/contents/93040/

E-63AeGUUAIT1Xk


ジュラ 20年 ブティックウイスキー Batch.3 48.8% For 信濃屋

カテゴリ:

FullSizeRender

JURA 
MASTER of MALT 
THAT BOUTIQUE-Y WHISKY 
Aged 20 years 
Distilled 1998 
Batch 3 
Cask type Hogshead #2150 
Exclusively for SHINANOYA 
500ml 48.8%

評価:★★★★★★(6)

香り:発酵したような乳酸系の香りがトップノートにあり、合わせて乾草を思わせるドライなウッディさと、土埃のようなほろ苦さ。スワリングすると発酵臭の奥から麦芽由来の甘み、白色系果実のフルーティーさ、微かに溶剤的な刺激も伴い、垢抜けないが複層的なアロマが感じられる。

味:香りに反して素直な麦芽風味主体のフレーバー構成で、何よりボディがしっかりとして厚みがある。微かにオーキーで、青りんご系の品の良いフルーティーさのアクセント。徐々に香りで感じた乳酸系の要素が鼻腔に抜け、余韻はほろ苦く、乾いた麦芽とウッディなフレーバーが長く残る。

ジュラらしさと言う点では、野暮ったく、垢抜けない点であろうか。決して洗練されていないが、そうしたフレーバーが合わさって嫌味ではない複雑さが魅力としてある。まさに地酒として求めているものの一つと言えるかもしれない。特徴的な香味としては、信濃屋公式のテイスティングコメントには「メスカル」とあるが、要素の一つに見られる乳酸、発酵したようなニュアンスがそれだろう。熟成したテキーラにも似たフレーバーだが、メインは麦芽風味、厚みのあるボディ、そしてホグスヘッドで熟成されたウイスキーの華やかさとフルーティーさが、ウイスキーであることを主張する。
テキーラ好きが飲んだらどのような反応をするだろうか。
 
IMG_1916

とあるイケメンからサンプルを頂いたので、レビューを書いてみました。この状況下ではBAR飲みも出来ないので、ありがたい限りですね。
ジュラ蒸留所については、1963年に操業を開始(再開)して以降は、ノンピートないしライトリーピーテッド仕様のモルトが仕込まれていましたが、2002年からピーティーなモルトがリリースされるようになり、2009年にはヘビーピーテッドもオフィシャルからリリースされています。

ボトラーズリリースを見てみると、1989年リリースのシグナトリー社のヘビーピーテッドがあり、少なくとも80年代からそうした原酒を仕込んでいたようです。
今回のリリースは、実質的にはほぼノンピートと言われる仕込みだと思われますが、フレーバーの中にピートに似た雑味のようなフレーバーが混ざっています。とある国内蒸留所でも見られる特徴なのですが、ノンピートとピートの仕込みを併用した際に、例えばスチルの洗浄をしっかり行わないまま仕込みを切り替えると、設備に染み込んだ成分がフレーバーとして移ることがあります。

それは明確にピートフレーバーと言う感じではないのですが、まさに今回のリリースに見られる個性のように、ちょっとビターで、土っぽくて…これはこれで悪くないアクセントに繋がったりするのです。スコットランドではクライヌリッシュ的製法というヤツですね(笑)。

jura

さて、ジュラ蒸留所の個性、あるいはその個性から見て今回のリリースはどうなのかと、問われると中々難しいです。
そもそも、アイラを除くアイランズモルト、アラン、ジュラ、スキャパ、タリスカー、トバモリー、ハイランドパークと言った蒸留所は、スコットランドの他の地域に比べてフレーバーの統一感がほとんどありません。それはひとえに”島”といっても、資本はバラバラで、東西南北(東にはないですがw)様々な場所にあることも考えられそうですが、もう一つそれを際立たせているのが、ジュラやトバモリー蒸留所のような、洗練されてない酒質にあると言えます。

例えば一般的な内陸モルトウイスキーの構成は、麦芽風味にオークフレーバーというシンプルな仕上がりのものが多いです。ジュラはここに発酵したような要素、酸味、土っぽさ、あるいは硫黄や鉄分のような、少しよどんだ要素が混じるなど、軽やかで綺麗な仕上がりとはならないのです。
麦芽の調達はポートエレンだし、発酵槽や糖化槽はステンレスなので、鋳鉄製のような影響はなさそう。昔のジュラはもっと素直な構成だったのですが、90年代くらいから変化しているような…やはり仕込む原酒の種類が増えた関係でしょうか。

こうして要素の多いウイスキーは、言い換えれば繊細と言えるかもしれませんし、安定もしにくい傾向があります。今回のリリースは好ましいフレーバーが主体で、垢抜けなさは全体のアクセントに。水清ければ魚棲まず。どちらの存在もバランス次第でウイスキーのフレーバーの厚みになるのです。一口目は「あれ?」と思うかもしれませんが、なんだか飲めてしまい、もう1杯飲んでも良いかなと手が伸びる。
最近ジュラ蒸留所の20年熟成クラスのボトラーズリリースが多いので、月並みですが比較テイスティングするのも面白いかと思います。

このページのトップヘ

見出し画像
×