カテゴリ:

今回ニッカからリリースされた余市、宮城峡の限定品は、採算度外視感の強い2本でした。
それはこれまでの余市、宮城峡を愛飲してくれていた方々に対する感謝でもあり、謝罪でもあり、あるいは苦渋の決断でラインナップを絞ってしまったけど、我々は本当はこういうウイスキーを作りたかったんだという意思表示でもあるような。
気合いの入ったシェリー感たっぷりの宮城峡。熟成感のある新樽原酒がふんだんに使われた余市。
特に余市ヘビリーピーテッドは、余市らしさのあるレベルの高い味わいでした。

NIKKA WHISKY
SINGLE MALT
YOICHI
HEAVIRY PEATED
48% 700ml

評価:★★★★★★★(7)

香り:燻した麦芽や蜂蜜、ドライパイナップル、松の木、微かなベリー、ピーティーなフレーバー。
口開け時は特に複雑さがあり、スワリングするとその裏から華やかな熟成香が開いてくる。

味:コクのある口当たり。ほのかにシェリー樽のニュアンスを伴う甘酸っぱさはアプリコット、蜂蜜梅。そこから香ばしい麦芽風味と強いピーティーさ、フィニッシュは黒土やタールを思わせるビターなピート風味。
ボディは厚みがあって噛み応えがあり、塩気はマイルド、ドライでスモーキーな余韻が長く続く。

ピートの存在感は強いですが、あくまでバランスが取れたレベルのピート感。
香りの段階で一気に警戒心がほぐれます。後は熟成したモルトウイスキーの深みのある味わい。
なお少量加水すると華やかさが強く感じられるものの、香り、味、共に少々焦点がぼけてしまう気がします。


熟成感としては新樽熟成の15年〜20年程度をメインとし、
異なる樽の原酒もバッティングしたような構成。シェリー樽原酒の比率が旧オフィシャルラインナップに比べて控えめ、 変わりに新樽やリフィルバーボン系の原酒が主軸に使われているような味わいです。 若い原酒の傾向である舌触りの荒さは感じられません。
旧ラインナップのどれに似ているかと言われるとどれとも似ていない、新樽長熟の余市が好きな人は確実にヒットするだろう、そういう味だと感じます。
実際、多くの余市好きから驚きと評価の声が出ているようですね。私も大好きな味で、これこそ余市に求めている味わいです。つーか通常販売してほしい。
ヘビリーピートと聞くとピートに意識が行きがちですが、原酒そのものの質にも注目して欲しいです。

味の濃さとしてはオフィシャル20年に劣りますが、20年は例えれば濃厚豚骨魚粉つけ麺のように、新樽のみならずシェリー樽などでこてこてした味わい。
対するヘビリーピーテッドは材料を厳選した塩ラーメン。複雑だけどもバランスが良く、一本スジが通っている感じです。

蒸留所限定品も終売が相次いでおり、ひょっとすると暫く出会えないかもしれない余市らしさ。
別れを惜しみながら、手に入れた1本は飲み進めていくとします。