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アマハガン ハンドフィル 蒸溜所限定品 62% ”Recommend for Highball”

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AMAHAGAN 
World Blended 
Edition Hand-filled 
”Recommend for Highball”
Cask type Sherry 
Bottled 2022 
500ml 62% 

評価:★★★★★(5)

香り:ツンとして鼻腔に強い刺激を伴うクリアなトップノート。薄めたキャラメル、焦げたオーク、ほのかにドライプルーンのような甘さも感じられる。

味:香り同様にピリピリとした刺激が口内にありつつ、味はしっかりと樽由来の甘み、ケミカルな要素があり、焦げたキャラメルのほろ苦さ、ほのかにグラッシーでニッキのようなスパイシーさが余韻に繋がる。

蒸留所限定ブレンドの一つ。ブレンドの主体は5年程度と思われる若い内陸原酒で、香味とも刺激は残るが、それ以外に樽や原料由来の甘さ、ウッデイネス、各種フレーバーはそう悪いものではなく、未熟香もほぼ感じられない。そのため、推奨されているハイボールにするときれいに伸びて、軽やかな飲み口からチャーした樽の風味をアクセントに、余韻にかけてドライフルーツの甘みが程よく感じられる。
何より購入までの行程で楽しめる、エンターテイメントとしての魅力が素晴らしい。各クラフトもこうした取り組みをもっと実施してほしい。

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長濱蒸溜所で販売されている、蒸留所来訪者向けのオリジナルAMAHAGAN(アマハガン)。
アマハガンについての説明は不要かと思いますので割愛しますが、既製品のそれと異なるレシピでブレンドしたものをオクタブサイズのカスクに詰め、蒸留所内で追加熟成している商品です。
今回、ウイスキー仲間からお土産としていただいたのでレビューを掲載します。

ロットや原酒の切り替わりで名称も変わっていますが、今回のは”Recommend for Highball”
ベースとなるブレンドは、比較的若い輸入モルト原酒に長濱のモルトをバッティングし、プレーンでアタックが強く、それでいて品の良いフルーティーさを感じる構成。ストレートだとアタックが多少強く感じられますが、ロックやハイボールなら、そうした刺激が落ち着いて穏やかに楽しめるというレシピとなっています。

また、そのブレンドをオクタブのシェリーカスクで追加熟成。シェリーカスクというと色合いの濃さと香味への強い影響を予想されるかもしれませんが、樽事態はそれなりに使い古されているので、リチャーした樽材由来の香ばしく焦げたようなウッディさがある反面、シェリー樽でイメージする感じは前面に出ない、程よく付与された仕上がりとなっています。

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このシリーズの面白いところは、単に蒸留所限定品というだけではなく、その購入方法、手順にあります。

元々スコットランドの蒸溜所では、ハンドフィル、またの名をバリンチとして、蒸留所のビジターセンターで購入者が樽から直接ボトリングし、蒸留所限定のウイスキーを購入できるシステムがあります。
そのシステムを、日本の酒税法下でできる範囲で踏襲したのが、このAMAHAGAN Hand Filledになります。
写真付きで購入までの流れを紹介していきます。

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①購入希望者は蒸溜所側の購入履歴ノート、ラベルにその日の日付、購入者の名前等を記載。

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②500mlのボトルに樽から直接ウイスキーを詰める。

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③最後に、ラベルを貼って、キャップに封をして、お買い上げ。

というのが一連の流れ。
既に課税した限定ウイスキーが樽に詰められていて、それを量り売りで販売しているということではあるのですが、記帳、ラベルサイン、ボトリングという本来済ませておける作業、実施する必要のない管理(記帳)を、あえて購入時にお客さんの手で行うことで、特別感が得られるのです。
だって、蒸留所を見学しにきて、そこのオリジナルウイスキーがあるだけでも嬉しいのに、一連の流れを経験したなんて、普通に楽しすぎるでしょう。まさにエンターテイメントです。

なお、樽の中身は完全に払い出さず、少量残った状態で次のロットやレシピに加えている、所謂ソレラシステム的な運用がされており、ウナギのたれのように徐々に味わいが複雑に、奥行きを持っていくことも期待できます。
長濱蒸留所でハンドフィルの販売が始まったのは2020年あたりから。そこから何度もロットが切り替わる息の長い企画となっており、その成長や限定レシピの登場がファンの間では蒸留所訪問時の楽しみの一つとなっています。
中には成熟したハンドフィルを買うために、定期的に蒸留所を訪れる猛者もいるそうです。

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(ブレンドの熟成状態を確認する屋久ブレンダー。今回のロットが終わりそうなので、次のブレンドをどうしようか…とレシピを模索されている。Photo by C)

現在、日本各地にウイスキー蒸留所が創業し、その数は将来60カ所を超えるとも言われています。
そんな中で、大きくはピートの有無、樽感の違いでしか味わいに変化をつけることが出来ないウイスキーは、香味だけで60種類も明確な違いや注目されるブランドを作れるかと言ったら、それはかなり難しいと考えます。

勿論そうした努力は必要で、高品質でこだわりのウイスキーを作るという1点でブランドを確立できれば良いですが。
例えば地域観光と結びつけるローカル色や、体験型のエンターテイメント色、あるいは横のつながりで他のメーカーとの連携など、ウイスキーの味以外で愛好家を惹きつける取り組みが今後一層必要になってくるのではないかと思います。
値段と香味は大体同じだったら、あるいは多少高くても、買うのは思い入れがあるところ。となるのが人(オタ)の心情というものです。

その点、長濱蒸留所は本当にそこを上手く掴んでくるんですよね。
社長がアイディアマンで、良いと思ったものはガンガン取り込む、意思決定から実行までがめちゃくちゃ早いというのもあります。このハンドフィルだけでなく、先日の長濱フェスもまさにその一例です。あれの企画って動き出したの。。。(ry
現場はめちゃくちゃ大変だと思いますが、でもそれは間違いなくファン獲得につながって、ブランド向上につながって、5年後、10年後の自分達を後押しする原動力になるのです。
長濱蒸留所だけでなく、多くのクラフト蒸留所でウイスキー以外の要素も含めて様々なアイデアが実行されて、愛好家を増やしてくれれば良いなと思います。

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オマケ:7月17日(日)、社長の企画思いつきで開催された長濱ウイスキーフェスでは、蒸留所前でひたすら焼き鳥を焼く同氏の姿があり。イベント後は各社との繋がりや原酒調達のため、スコットランドに旅立ったという。改めて記載すると、同氏は長濱浪漫ビールの社長であり、全国規模の酒販店リカーマウンテンの社長でもある。

シーバスリーガル 12年 1950年代流通 43%

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CHIVAS REGAL 
BLENDED SCOTCH WHISKY 
AGED 12 YEARS 
1950’s 
750ml 43% 

評価:★★★★★★★(7)

香り:土っぽさを伴う古典的な麦芽香と、角の取れたピートスモークと共に穏やかに香る。奥には焼き洋菓子や熟した洋梨を思わせる甘みがあり、じわじわと存在を主張する。

味:まろやかで膨らみのある口当たり。ほろ苦さを伴う麦芽風味、内陸のピート、香り同様の果実感や蜜を思わせる甘み。余韻は穏やかなスモーキーさとナッツやパイ生地のような香ばしさがほのかにあり、染み込むように消えていく。

全体的に素朴で、近年のウイスキーにあるようなキラキラと華やかな要素はないが、熟成した原酒本来の甘みとコク、オールドボトルのモルトに共通する古典的な麦感、土っぽさ、そこから連想される田舎っぽさに魅力がある。構成原酒はおそらくそこまで多くなく、樽感も多彩とは言えないが、純粋に当時のモルト原酒の質の良さだけで愛好家の琴線に訴えかけてくる。
複雑さや熟成感、華やかさを好むなら、それこそ現行品のアルティスや25年が良いだろうが、個人的には素材の良さが光る味わいも捨てがたい。

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オールドブレンデッドにおいて、地雷率No,1と言っても過言ではないのがシーバスリーガル12年。
その原因が、キャップの裏側の材質にあるのは周知のことと思います。では、そのキャップがコルクだったらどうでしょうか?
実はシーバスリーガル12年は、発売初期の1939年から1950年代までコルクキャップが採用されており、例のキャップが採用される1960年代以降のロットよりも地雷率が低い(コルク臭の危険はあるため、ゼロではない)という特徴があります。

だったら1950年代以前のボトルを飲めば良いじゃない。
って、それで解決したらどんなに話は簡単か。その理由は2つあり、同銘柄が日本に入り始めたのは1960年代から、本格的に流通したのは1970年代からであることがまず挙げられます。
当時シーグラム傘下となっていたシーバス社はキリン・シーグラムの立ち上げに関わり、シーバスリーガル12年はキリンを通じて日本市場への正規流通が始まったという経緯があります。
そしてその時点では、ラベルのリニューアルと合わせてキャップも例のヤツに代わっており。。。
また後述の通り、シーバスブランドの1950年代は復活の最中で、並行輸入もなかったようです。そのため、日本市場をどんなに探しても、1950年代流通品を見かけることは無いわけです。

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(ペルノリカール社プレスリリースから画像引用:シーバスリーガルのラベル遍歴。2022年にはまた新たなデザインへと変更が行われている。)

では、この1950年代のシーバスリーガルはどこの市場にあるかというと、答えはアメリカです。
元々シーバスリーガル12年はアメリカ市場をターゲットとして、1938年(一説によると1939年)にリリースされていました。しかしそれ以前は社として原酒の売却があったり、その後勃発した第二次世界大戦で輸出産業が崩壊するなど厳しい状況にあり、シーバス社は1949年にシーグラム社の傘下に入ります。

そして1950年にミルトン蒸留所を取得し、その後ストラスアイラへと名前を変更。(この時は名前の変更を行っただけで、特段何か大きな変更をしたわけではないようです。)
今回のレビューアイテムであるシーバスリーガル12年は、まさにミルトン蒸留所時代の原酒をキーモルトとしており、モルト比率の高さからか古き良き時代のモルトの味わいが濃く、一方で少し田舎っぽさ、素朴な感じのある仕上がりとなっています。

シーグラム社傘下でしたが、まだグループ内での扱いが低かったのか、潤沢に原酒を使えたわけではなかったのでしょう。樽もプレーンオークメインか、現代のシーバスリーガルのようなハデな樽感もありません。だからこそ、こうして飲んでみてモルトの味わいを楽しみやすいというのは皮肉なことです。
一方、1960年代に入ると35カ国に輸出されるようになるなど、シーバスリーガルのブランドが評価され、そして1970年代〜1980年代には洋酒ブームとバブル景気の日本市場へ大量に投入されていくことになり、そのボトルは現代の市場の中で地雷となって多くの犠牲者と、それでも当たりを引きたいというコアなファンを生み出すことに繋がっています。

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(1980年代流通のシーバスリーガル12年。70年代とではロゴが微妙に異なるなど変化はあるが、基本的に同じデザインが踏襲されている。)

今回のレビューでは、1950年代のシーバスリーガルのテイスティングを、歴史背景を交えて紹介しました。
なるほど、キャップに汚染されていない真のシーバスリーガルとはこういう味なのか・・・とはならないんですよね。

本記事冒頭、「だったら1950年代以前のボトルを飲めば良いじゃない。って、それで解決したらどんなに話は簡単か。その理由は2つあり、」と書いて、その理由の1つである“ブランドの歴史と流通国”に関する話をつれつれと書いてきたわけで、そう、理由はもう一つあるんですよね。
それは、1950年代のシーバスリーガル12年はブランドとして復活の最中であり、テイスティングでも触れたように、あまり多彩な原酒を使っていたような感じがしないわけです。それは上述のように歴史背景を紐解く上でも、矛盾のない話と言えます。

そして、60年代以降輸出を拡大した同銘柄には、シーグラムグループが保有するさまざまな原酒が使われているわけで、50年代とレシピが同じとは思えません。
ということは、結局我々愛好家が気になって仕方がない日本で認識されているシーバスリーガルのオールド「本来の味」にたどり着くには、地雷原の中からダイヤ一粒を探す、茨の道を進むしか・・・

あ、これ考えたらアカンやつですか。こんだけ長々と書いておいて結局何を言いたかったんだお前は?
・・・そこでくりりんは考えることをやめた。

【完】

くりりん先生の次回更新にご期待ください

キリン 富士 シングルブレンデッド ジャパニーズウイスキー 43%

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FUJI 
KIRIN FUJIGOTENBA DISTILLERY 
SINGLE BLENDED JAPANESE WHISKY 
700ml 43% 

評価:★★★★★(5ー6)

香り:トップノートはややドライ、エステリーな要素とほのかに溶剤系のニュアンス。奥から柔らかく熟した果実を思わせる甘い香りが、モルト由来の香ばしさと合わせて感じられる。穏やかで品の良い香り立ち。

味: 口当たりは柔らかく、穏やかな甘酸っぱさ。グレーン系の甘みとウッディネスから、モルト由来のほろ苦さ、薄めたカラメル、ほのかな酸味。香りに対して味は淡麗寄りで、雑味少なくあっさりとした余韻が感じられる。

基本的にグレーン由来のバニラや穀物感が中心で、ほのかにモルト由来の香味がアクセントになっているという構成。グレーン8にモルト2くらいの比率だろうか。樽もバーボン主体であっさりとしていて飲みやすく、綺麗にまとまった万人向けの構成。その中に富士御殿場らしい個性を備えたブレンデッドでもある。
ストレート以外では、ハイボール、ロック共に冷涼感のある甘い香り立ちから、飲み口はスムーズで軽やか。微かに原酒由来と思しき癖があるが、食事と合わせるとまったく気にならない。

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キリン・ディスティラリー社が操業する富士御殿場蒸留所から、2022年6月にリリースされたシングルブレンデッドウイスキー。
以前、ロッホローモンド・シグネチャーブレンドの記事でも記載していますが、シングルブレンデッドとは1つの蒸留所でグレーン、モルト、どちらも蒸留・熟成してブレンドしたウイスキーが名乗れるカテゴリーで、ジャパニーズではこのリリースが初めてではないかと思います。

同社はかねてから「クリーン&エステリー」というコンセプトでウイスキーを作ってきましたが、ブランドとしてはプラウドとか、DNAとか、モルトをPRしていた時もあれば、グレーンメインの時もあり、ブランドイメージは紆余曲折があったところ。富士山麓から富士へとメインブランドを移行した現在は「美しく気品あるビューティフルなウイスキー」を目指すブランドを掲げています。

商品開発にあたっては、シングルブレンドだからこそ表現できる、蒸留所としての個性、テロワール。それを実現するため、同社が作ってきたライト、ミディアム、ヘビータイプのグレーン原酒に、モルト原酒をブレンドし、美しいハーモニーを奏でるようにブレンドしたとのこと。
開発コンセプトの詳細なところは、田中マスターブレンダーと土屋氏の対談記事に詳しくまとめられており、公式リリースを見ても社としてかなり気合の入ったブランドであることが伺えます。(参照:https://drinx.kirin.co.jp/article/other/4/

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さて、当ブログの記事では、そうした開発側のコンセプトを踏まえつつ、1人の飲み手として感じたこと、知っていることなどから、異なる視点でこの「富士シングルブレンデッドジャパニーズウイスキー」を考察していきます。

まず「クリーン&エステリー」とされる、キリンのウイスキー”らしさ”とは何か。なぜそのらしさは生まれたのか。
それは同社におけるグレーンウイスキーとモルトウイスキーのルーツにあり、話は同蒸留所の立ち上げ(1970年代)まで遡ります。

キリンビールは当時世界のウイスキー産業に大きな影響力を持っていたシーグラムグループとの合弁会社としてキリン・シーグラムを設立し、富士御殿場蒸留所を1972年に建設。翌1973年にはロバートブラウンをリリースしたことは広く知られています。
こうした経緯から、富士御殿場蒸留所はスコッチとバーボン、両方のDNAを持つなんて言われたりもするわけですが、それは製造設備だけではなく、良質な輸入原酒を調達することが出来たということでもあり、実際上述のロバートブラウンは輸入原酒を用いて開発、リリースされていたことが公式に語られています。

一方、当時の日本市場で求められた飲みやすくソフトなウイスキーを作る上で、足りないパーツがグレーンと、スコッチモルトとは異なるクリーンな原酒でした。
例えば現代的なブレンデッドのレシピで、モルト2,グレーン8でブレンドを作る場合、モルトとグレーン、どちらを輸入してどちらを自前で作ったほうが良いかと言われれば、輸送コスト、製造効率からグレーンということになります。

そこで富士御殿場蒸溜所は、シーグラム社のノウハウを活かしグレーンスピリッツを造りつつ、その後はバーボン系のヘビーなものから、カナディアンやスコッチグレーンのライトなもの、その中間点と、日本でも珍しいグレーンの造り分けを可能とする生産拠点として力を入れていくことになります。
また、モルト原酒に関しては、当時のしっかりと骨格のあるモルティーなスコッチタイプの原酒とは異なる(あるいはそれを邪魔しない)、ライトでクリーンなものが作られるようになっていきます。

つまり、シーグラム社と共に、日本市場にウイスキーを展開するにあたって必要だと考えられた原酒を自社で生み出す過程で、富士御殿場蒸留所の方向性は「クリーン&エステリー」となり。
それが現代に至る中で洗練され、今後は国際展開を狙う上で知名度があり、仕込み水や熟成環境で恩恵を受ける富士山の美しく壮大な外観と掛けて「ビューティフルなウイスキー」となっていったのです。

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サントリーやニッカに代表される、多くの国内蒸留所でモルトが先に来るところ。キリンのウイスキーは独立した一つの蒸留所としてウイスキーを作り始めたのではなく、グループの一員として、商品開発をする上で必要なモノを補う形でウイスキーを作り始めた、立ち位置の違いがあった蒸溜所創業初期。

しかし2000年代にはウイスキー冬の時代があり、シーグラムグループも影響力を失い、キリン独自のブランド確立が求められて以降、苦労されていた時期もありました。
ですが同社の強み、ルーツであるグレーン原酒の作り分けを活かしつつ、大陸に咲く4本の薔薇関連も活用して富士山麓ブランドでファンを増やし。近年では「富士シングルグレーンウイスキー」に代表されるアメリカ、カナダ、スコッチという各種グレーンウイスキーの良いとこどりとも言える、自社原酒だけでのハウススタイルを確立。
またそれをベースとし、クリーンなモルトと掛け合わせて、「富士シングルブレンデッドジャパニーズウイスキー」が誕生し、キリン・ディスティラリーはジャパニーズウイスキーメーカーとして大きな一歩を踏み出したのです。

今回のリリースは、富士シングルグレーンと比較すると、熟成感は同等程度ですが原酒はミディアム、ライト系の比率が増えたのか、モルトの分ヘビータイプグレーンの比率が減ったのか、あっさりと、よりクリーンにまとめられており、一見すると面白みのないウイスキーと言えます。
特に開封直後は香味がドライで、広がりが弱いとも感じており、コンセプトの「味わいまで美しい」をこのように解釈されたのか、または一般的に流通の多いブレンデッドというジャンルに引っ張られすぎてないかと疑問にも感じました。
しかしこうして考察してみると、歴史的背景からも、蒸留所の培ってきた技術からも、そして狙う市場とユーザー層からも、これが富士御殿場蒸留所を体現するスタンダードリリースとして、最適解の一つではと思えてくるのです。

以上、中の人に聞いた話も含めてつれつれと書いてきましたが、1本のウイスキーからここまであれこれ考えるのはオタクの所業。しかし間口が広く、奥が深いのは嗜好品として良い商品の証拠でもあります。
キリン・ディスティラリー社は本リリースを軸に、国内のみならず中国、オーストラリアを含めた海外展開を大きく強化する計画であり。これまで今ひとつブームの波に乗れていなかった感のあるキリンが大きな飛躍をとげる。富士シリーズはそのキーアイテムとして、同社のルーツという点から見ても、これ以上ないリリースだと言える。。。
そんなことを酔った頭で考えつつ、キリがないので今日はこの辺で筆をおくことにします。

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以下、余談。
富士シングルブレンデッドは、モルトウイスキーとグレーンウイスキーを用いるブレンデッドでありながら、裏ラベルには国内製造(グレーンウイスキー)の表記があり、モルトウイスキーが使われてないのでは?実はグレーンウイスキーなのでは?等、異なる読み方が出来てしまいます。

実はこれ、改正された表示法(ジャパニーズウイスキーの基準ではない)の関係で、一番多いモノだけ表記すれば良いことになっており、モルトウイスキーはブレンドされてますが、表記されていないだけなのです。
ビール含む、酒類全般を見て改正された表示法なので、ウイスキーに全て合致しないことはわかりますが、なんとも紛らわしい。。。

三郎丸 THE SUN ブレンデッドウイスキー 2022 48%

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THE SUN 
SABUROMARU WHISKY 2022
The symphony of Saburomaru malt and World matured grain
700ml 48%

評価:★★★★★★(6)

香り:香り立ちは焦げたようなピーティーさ、アーモンドの皮を思わせる焦げた木材、仄かにスパイス。三郎丸モルトらしいスモーキーなアロマと合わせて角の取れたウッディネス、複数の樽由来の複雑な甘い香りが立ち上がり、全体をより複雑にしている。

味:オイリーで柔らかく、どっしりとしたコク、厚みのある濃厚な口当たり。三郎丸モルトらしいピーティーなフレーバーに、焦げた木材やグレーン由来の甘み、ほろ苦さ、微かにハーブ。後半から余韻にかけてはママレードジャムのような角の取れた甘酸っぱさ、濃い甘みがあり、余韻のスモーキーさとビターなフレーバーが全体を引き締めている。

富山県産ミズナラ樽熟成の三郎丸蒸留所2018年蒸留モルト原酒を軸に、シェリー樽、バーボン樽等で熟成した同蒸留所のモルト原酒と、12年以上(最長16年)熟成の輸入グレーン原酒をバッティングしたブレンデッドウイスキー。グレーンについては輸入後にワイン樽等で追加熟成を行ったものが使われている。

ブレンデッドというとグレーン主体の無個性な印象が香味の先入観としてあるが、このブレンドはかなりモルティーで、古典的なブレンド比率と予想される。そのため、味わいは三郎丸蒸留所の個性そのもの。それを追加熟成したグレーンと合わせることで、個性を楽しみやすくしつつ、ウイスキーとしては飲みやすく仕上げている。加水の具合もいい塩梅で不足は決して感じない、作り手のセンスを感じる1本。

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先日、三郎丸蒸留所から5320本限定でリリースされた、三郎丸の名を冠するもう一つのウイスキー。
自社モルト原酒と、追加熟成した輸入グレーンとの掛け合わせは、同じクラフトでは厚岸蒸溜所のブレンデッドウイスキーを彷彿とさせるコンセプト。ただ、スピリッツで輸入して全てを国内熟成している厚岸に対して、三郎丸は10年程度熟成の状態で輸入したものを追加熟成し、ブレンドに用いている点に違いがあります。

使われている三郎丸モルトは、三宅製作所製のマッシュタンを導入して、酒質として大幅な改善を果たした2018年蒸留。
これを富山県利賀産ミズナラ樽で熟成した原酒を軸に、三郎丸蒸留所のシェリーやバーボン等さまざまな樽での熟成原酒を用いてレシピを構築。スモーキーな香味に感じられるスパイシーさ、ママレードジャムのような濃厚なオレンジフレーバーがこの原酒由来でしょうか。
余談ですが、ミズナラ樽は熟成3年強で想像以上のエンジェルシェアがあったようで、想定していた以上に樽数を使ったと稲垣マネージャーがボヤいてました。

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(三郎丸蒸留所で熟成中のミズナラ樽。三四郎のロゴが目印。)


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(熟成中の原酒の状態を確認する稲垣マネージャー。スパニッシュオークカスクで2年強という原酒は、早くも色濃い甘さとウッディな香味が。)

そしてこのブレンドを紹介する上でもう一つ重要なパーツが、冒頭部分でも触れた追加熟成グレーンです。
実はこのブレンドに使われたグレーン、自分は一度飲んだことがありました。
それは三郎丸蒸留所とのタイアップでオリジナルブレンドを作ろうという企画を進めていた、2019年の夏のこと。提供いただいたサンプルの中に、追加熟成前のグレーンがあったのです。

結論から言えば、その時のグレーンはドライで甘みが足りず微妙だなあと。自分はブレンドを作る上で、違うものにチェンジしてもらったわけですが。しかし追加熟成を経て今回のブレンドに使われた12〜16年熟成のグレーンは、間違いなく口当たりの柔らかさ、全体のバランスとコクのある甘みに繋がる良い仕事をしています。
グレーンの追加熟成に使われたという焙煎樽も、メローなフレーバーを付与し、全体の1要素として貢献していますね。同じ樽はT&T TOYAMAが調達した原酒の熟成にも使われていて、そういう意味で将来が楽しみになるところでもあります。

今回のリリースはテイスティングで記載したように、三郎丸蒸留所のピーティーで厚みのあるフレーバーの個性を全面に出しつつ、それを複数の樽やグレーンでまとめ、奥行きを出し、一本筋の通った複雑さを形成したブレンドです。
これは荒削りながら響や鶴のような、日本の大手メーカーがリリースするブレンデッドウイスキーにも通じるコンセプトなんですよね。
そのコンセプトを実現するには、様々な樽を用いて熟成した、作り分けた原酒がなければなりません。日本最小規模ながらリニューアル以来コツコツと原酒を作り続けてきた、三郎丸蒸留所がついにこの領域に入ってきたかと。感慨深さも感じる1本でした。

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(THE SUNのハイボール。グレーンによる繋ぎが解けて、逆に多彩な味わいとなる。構成原酒由来のフレーバーを理解する上では、この飲み方が良いかもしれない。)

厚岸 ブレンデッドウイスキー 大寒 48% 二十四節気シリーズ

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AKKESHI BLENDED WHISKY 
DAIKAN 
A Fusion of the World Best Whiskies 
24th. Season in the 24 ”Sekki” 
Bottled 2022 
700ml 48% 

評価:★★★★★(5−6)

香り:軽やかでスパイシー、ツンとした刺激から和柑橘を思わせる酸を感じるトップノート、ほのかに焦げたようなスモーキーさ。徐々にバタークッキーのような甘み、軽い香ばしさ、微かに赤みがかったドライフルーツも連想させる。

味:柔らかく瑞々しい口あたり。序盤は軽く平坦な印象を受けるが、じわじわとモルティーな甘み、柑橘や洋梨、ビターで土っぽいピートフレーバーが穏やかに広がっていく。
余韻はスパイシー、ピートフレーバーが染み込むように長く続く。

グレーン原酒を思わせるプレーンでスパイシーなニュアンスがトップにあり、そこから厚岸モルト由来の甘みや各種フレーバーが広がっていく。モルト比率は5割ほど、樽構成としてはバーボン樽メインで、複雑さはワイン樽やミズナラ樽といったところか。ピート香も控えめで体感10PPM未満、ノンピート原酒がメインであるようにも感じられる。
飲み方としてはストレート以外にはハイボールがおすすめ。軽やかですっきりとした中に、麦芽や樽由来の甘み、柔らかいスモーキーフレーバーを感じられる。

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厚岸蒸留所からリリースされる、二十四節気シリーズの第6弾。2022年2月下旬に発売されたブレンデッドウイスキーとなります。
厚岸蒸留所は一般的なクラフト蒸留所同様に、ブレンデッドウイスキーに必要なグレーン原酒を自社蒸留できていませんが、グレーンをスピリッツで輸入し、自社で3年以上熟成したものを用いているという拘りがあります。

さて、今回のブレンドは過去のリリースと大きく異なり、香味とも序盤が穏やかでピートフレーバーも強く主張しない。静謐とした雰囲気を感じさせる点が特徴だと言えます。
さながら、晴れた冬の日の空気というべきでしょうか。ベースにあるのは間違いなく厚岸蒸溜所のモルトウイスキーですが、地形の起伏、色、匂い、それらが雪によって白く塗りつぶされて平坦になった雪景色のよう。ツンと鼻を刺激する冬の寒さを感じさせつつ、グラスの中で静まり返っているのです。
おそらく過去作よりもグレーンの比率が多く(公式発表では過半数がモルトとのことですが、5:5ではないかと)、また過去作とは系統の違うグレーン原酒を用いているのではないかと推測されます。

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(厚岸蒸溜所からリリースされた、二十四節気シリーズのブレンデッド3種のラベル。ふと、このデザインは蒸留所から見える厚岸の景色、特に水平線の景色がモチーフではないかと思い当たった。)

このように第一印象を描くと、グレーン原酒でモルトの個性を塗り潰したような、薄っぺらく平坦なブレンドだと感じるかもしれませんが、如何に雪景色と言っても多少の変化があり、空気には地域の特色とも言える匂いが混じるように。ベースとなるモルトの香味に加えて、土の匂い、潮風、柑橘や白色果実、微かに赤みがかったドライフルーツ、徐々に複雑な印象を感じさせるのです。
樽の傾向としては、モルト、グレーンの熟成で最も比率が高いのはバーボン樽だと思いますが、複雑な印象に通じているのはワイン樽やミズナラ樽由来の香味ではないかと思われます。

なお、過去作との違いとしては、“雨水”が最も強くシェリー系の原酒のキャラクターを感じさせ、“処暑”は丸みを帯びつつもはっきりとしたピートフレーバーの主張があります。
それらを今回の“大寒”のレビュー同様に季節に置き換えるなら、雨水は春の空気が濃くなる時期であり、春の空気をシェリー樽原酒由来の甘く色濃いキャラクターで。
夏の処暑は暑さが峠を越した時期とされていますが、その名残として照りつける日差し、強い夕日がピートフレーバーで表現されているのではと。。。

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私のこじつけか、考えすぎかもしれませんが、これまでは感じなかったブレンドの傾向と季節の関係が、飲み比べることによって見えてきたようにも感じました。
現在のペースでリリースが進むと、次のリリースは約3ヶ月後にシングルモルト、その後ブレンデッドですから、時期的には9〜10月ごろでしょうか。既に寒露はリリースされているため、白露、秋分、霜降あたりになると思いますが、厚岸の季節がどのようにブレンドで表現されているかも、注目していきたいと思います。

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