タグ

タグ:ブレンデッド

アマハガン ウェビナーエディション 47% 長濱蒸溜所 ワールドブレンデッド

カテゴリ:
IMG_1037

AMAHAGAN 
World Blended 
Webinar Edition 
Malt & Grain 
Released in 2021 
700ml 47%  

評価:★★★★★★(6)

香り:バニラやメレンゲクッキーを思わせる甘く香ばしいオーク香に、構成するモルト原酒に由来するケミカルな要素と植物っぽさを伴うトップノート。奥にはパイナップルシロップ、アーモンドスライス等のフルーティーさ、ナッティーなアロマ。スワリングするとメープルを思わせるメローな甘みも微かに感じられる。

味:スムーズで甘酸っぱくモルティーな香味構成。硬さの残る白桃、パイナップル系のケミカルなフレーバーに、ナッツや麦芽の香ばしさ。それらを長熟グレーンのとろりとメローな甘み、ビターなウッディネスが包み込んでいく。
余韻はほろ苦くスパイシーで、ピリピリとした刺激の中にオークフレーバーがアクセントとなって長く続く。

アマハガン通常品と同系統の原酒が、ブレンドの軸に使われているであろう香味構成。そこに熟成年数が長く、グレーンをはじめ異なるキャラクターの原酒も使われていることで、ブレンドながら全体的にスケールが大きく、変化に富んだ仕上がりとなっている。
フルーティーさは近年の愛好家が好む要素が主体的である反面、構成原酒の一つであるハイランドモルトに由来する”癖”も感じられる。少量加水すると、一瞬植物系のフレーバーが強まった後、オーキーな華やかさや麦芽由来の軽い香ばしさ、そしてフルーツシロップを思わせる甘みがと、好ましい要素が開いてくる。ハイボールも悪くなく、飲み方を選ばない1本。

lemon_amahagan

長濱蒸溜所がリリースする、ブレンデットウイスキー「AMAHAGAN」。同蒸溜所が調達した輸入原酒に、長濱蒸溜所で蒸留・熟成したジャパニーズ原酒をブレンドしたワールド仕様のハウスウイスキーで、今回のリリースはその特別版となります。

ラベルを彩るのは、漫画レモンハートで知られ主要キャラの面々。原酒の構成は
・長濱蒸溜所のモルト原酒
・熟成年数の異なるハイランドモルト3種
・2001年蒸留のスペイサイドモルト
・長期熟成のグレーン原酒
の6種類という情報が公開されています。
ブレンドは2020年9月に長濱蒸溜所が開催したセミナー「NAGAHAMA BLEND CHALLENGE」において、セミナー参加者に加え、講師を務めた静谷さんが手掛けたレシピを長濱蒸溜所で微調整したもの。
商品名のWebinarはネットでのセミナー等の意味であり、コンセプトである「愛好家の、愛好家による、愛好家のためのウイスキー」の通り、セミナーを通じて愛好家が作り出した味わいをリリースに繋げた訳ですね。

IMG_1041

私はこのセミナーに参加していないので、当日作られたレシピも、使われた原酒の素性についても、公開されてる以上の情報はありません。ですが、流石に”わからない”では記事として面白みもないので、今回はテイスティングを通じて、香味からレシピを紐解いて、こうではないかと言う予想を以下にまとめてみます。
まず、ブレンド構成はノーマルなアマハガンに共通する香味と、そこにはない香味の2系統に分類出来、それらが混ざり合うことで複雑で厚みのある味わいを作り出していると感じました。

前者の香味を形成しているのは、(つまりノーマルなアマハガンと共通する系統の原酒が)、長濱モルトとハイランドモルト3種、2系統の原酒です。
軽い香ばしさの混じる麦芽風味が主体である長濱モルトに、ややケミカルなニュアンスに加え、特徴的な癖を伴うフルーティさ。ハイランドモルト表記で、この香味をもったブレンド用原酒を年数違いで構築出来るのは。。。あの近代的な蒸留所でしょう。
8年、10年、18年。外箱に書かれているレモンハートのマスターがブレンドする原酒がまさにそれと言われても違和感なく。例えばノーマル品には同じ蒸留所産のもう少し若い原酒も使われているところ。8年クラスがメインにあり、今回のレシピではその分10年、18年クラスの比率が増えているのではと。

一方で、ブレンド全体のバランスに寄与しつつ、通常リリースにない香味の幅、複雑さにつながっているのは、2001年蒸留のスペイサイドモルトと、長期熟成のグレーン原酒、2つの仕事と考えます。
グレーン原酒は香味に感じられるとろりとした甘みと、熟成の長さを感じるビターなウッディネス。これは以前グレンマッスルNo,2のリリースで、似たような個性の原酒を使わせてもらった経験から、20年程度の熟成を予想。個性の違いが出にくいグレーン原酒なので蒸留所はハッキリとわかりませんが、ノースブリティッシュあたりではないでしょうか。(輸入なのでブレンドグレーン表記かもしれませんが。)

そして2001年蒸留のスペイサイドモルトは、淡麗寄りながら麦芽風味があり、多少スパイシーな酒質をブレンドの中から紐解きました。中間ではハイランドモルト由来のフルーティーさを邪魔せず、軽やかなスパイシーさで存在感を出してくるようなイメージです。
ブレンド向けとされる蒸溜所の中だと、ダフタウンなどのライトで柔らかいタイプ。。。ではなく、淡いようで主張する時はする、ベンリネス、キース、ブレイバルあたりを連想します。
その上でブレンドレシピはこれまでの経験から、長濱2、ハイランド4-5、スペイサイド1、グレーン2-3とか。
こうしてブレンドを紐解いて、あれこれ考えるテイスティングは楽しいですね。なお答えは分からないので、今度こっそり聞いてみますw

※ウェビナーエディション、くりりんの予想レシピ ()は比率
・長濱蒸溜所のモルト原酒:ノンピート、バーボン樽の2~3年熟成(20)
・熟成年数の異なるハイランドモルト3種:南ハイランドの某近代的蒸留所、8年、10年、18年熟成(40~50)
・2001年蒸留のスペイサイドモルト:ベンリネス、グレンキース、ブレイバルのどれかと予想(10)
・長期熟成のグレーン原酒:ノースブリティッシュまたはブレンデッドグレーン20年(20~30)




考察ついでに余談ですが、今回のリリースにはBARレモンハートの主要キャラクターが描かれ、今までのアマハガンとは異なるラベルデザインが採用されています。
これはリカーマウンテンさんとレモンハートのファミリー企画さんが共同で開始された、飲食店応援プロジェクトが関係しているのではないかと思われます。
こちらはイラスト販売益でオリジナルボトルを作成し、それを日本の飲食店に配布すると言う壮大なプロジェクト。ウイスキー業界としては初の試みではないでしょうか。既に中身のウイスキーの仕込みは完了し、イラストの価格次第で配布本数が決まる、という発信もSNSで見かけました。

長々書いてしまいましたが、今回のブレンドは長濱蒸溜所が作るアマハガンブランドに共通する“らしさ”がありつつも、そこに新しい個性、味わいが加わった面白いリリースだと思います。
愛好家のための〜というコンセプトは、まさに自分が関わらせて貰っているGLEN MUSCLEや、先日の三郎丸蒸溜所との原酒交換、蒸溜所で行われている泊りがけでのウイスキーづくり体験企画なども同じベクトルにあるものと言えます。そうしたウイスキー作りの方向性が長濱蒸溜所にあるからこそ、さまざまな企画に積極的に挑戦されているのかもしれません。
上記企画に加え、次のリリースも楽しみにしております。

IMG_1040

オールドパー スーペリア 43% 近年流通品

カテゴリ:
FullSizeRender

Old Parr 
Superior 
Scotch Whisky  
2000-2010's 
750ml 43% 

評価:★★★★★★(6)

香り:薄めたキャラメル、カステラの茶色い部分のような穏やかで色が少しついたような古酒系の甘やかさに、微かな鼻腔への刺激、スモーキーさを伴うトップノート。時間経過で熟成した内陸モルトに由来する品の良いフルーティーなアロマと熟成樽由来のウッディネスが開いてくる。

味:マイルドで軽いコクのある口当たり。シェリー樽由来のウッディさ、薄めたキャラメルや鼈甲飴、熟成したグレーンの甘みと香ばしいモルトの風味から、じわじわとビターで土っぽいピーティーさが染み込むように広がる。 
余韻は穏やかでありながら存在感のあるスモーキーさが鼻腔に抜け、ピートとウッディなほろ苦さ、口内をジンジンと刺激する。

ウイスキー愛好家の中で話題になることはあまりない1本だが、それは日本市場において本ブランドのギフト向けと言う位置づけや、ブレンデッドのノンエイジという外観からくる印象もあったと推察。
しかし、中々どうして香味は多彩で味わい深く、熟成したスペイサイド、ハイランドモルトがもたらすフルーティーさや、若干アイラ要素を伴うピーティーな原酒がいい仕事をしている。ストレートも悪くないが、加水やロックで飲むと”場を壊さない味わい”をゆったりと楽しめる。さながら潤滑油としてのウイスキーである。

IMG_0477

近年まで日本市場におけるオールドパーの定常ラインナップにおいて、上位グレードに位置付けられていた1本。シルバー、12年、18年クラシック※、そしてこのスーペリアですね。※ブレンデッドモルト仕様だった18年クラシックは2015年頃に終売。
モノはアメリカ市場向けとして作られていたため、日本の正規品であっても750ml仕様がスタンダード。というか、1980年代以降のオールドパーはアメリカ、メキシコ、アジアと関連する免税店を含む地域への輸出向けのブランドとなっているため、ヨーロッパ向けスタンダードである700ml仕様は造られておらず、日本向けも全て750mlとなっているのが実態としてあります。

さて、スーペリアが「販売されていた・・・」として過去形なのは、2019年11月にディアジオが日本市場向けオールドパーのブランド・リニューアルを発表するとともに、終売となっていた18年をブレンデッドウイスキーとして復活。そのラインナップにスーペリアはなく、一部酒販では製造終了の文字も見られるようになったためです。
中身がどれだけよくても、熟成年数表記があるほうが高級感が出るし、12年との違いも分かりやすいためでしょうか。現時点で日本向け公式サイトに情報は残っているようですが、今回のブランド戦略の変更と共に、徐々にフェードアウトしていく流れが見えます。
ご参考:オールドパー、リニューアルのお知らせ (oldparr.jp)


スーペリアは熟成した原酒のみならず、若い原酒まで幅広く用いることで、深みとコク、熟成感だけでなく、若い原酒に由来する骨格のしっかりした味わいを両立しようとブレンドされています。
こうしてテイスティングしてみると、確かに、熟成した内陸モルトのフルーティーさ、シェリー樽に由来する甘さ、そして若い原酒の刺激は香りの奥、味では余韻でアクセントとして若干感じられる。また、アイラモルトに由来すると思われる染み込むようなスモーキーさも特徴的で、レビューの通り中々味わい深いブレンドに仕上がっています。

構成原酒としては、オールドパーはグレンダランとクラガンモアがキーモルトであるとされていましたが、現代はこの2つだけでなく、ディアジオ社が持つ様々な原酒が用いられているようです。
というのも、クラガンモアやグレンダランは、古くは麦芽風味に厚みがあり、内陸系のピーティーさも主張してくるような原酒でしたが、両蒸留所とも現代はライト化が進み、特に蒸溜所が建て替えられたグレンダランのキャラクターは1985年以降大きく変わっています。
そのため、フルーティーさはともかくピートは異なる原酒の力を借りなければ出てこない。。。
例えば、カリラやラガヴーリンといった蒸留所の短熟、中熟原酒を隠し味に、内陸原酒の中熟、一部長熟原酒(一部シェリー樽熟成を含む)をブレンドしたとすれば、こういう仕上がりにもなるのかなと予想しています。


余談ですが、オールドパーはリユース市場での流通量が多い銘柄の一つです。
それは先に書いたように、ギフトとして使われることが多い一方で、もらった人が飲まずに放出してしまうため。また、オールドボトルは状態がよくないモノが多いことでも知られているわけですが、となれば取引価格は下がっていきます。一方で、コルクキャップで金属臭とは無関係な近年流通品のスーペリアも割を食っているのか、手頃な価格で取引されていることが多くあります。(2次流通価格を基準とするわけではありませんが、本ブレンドは終売品でもあるので。)

レビューの通り中身は熟成した原酒がたっぷり使われた、安価なブレンデッドやモルトでは実現できない深みのある味わいです。
この手のブレンドは、シングルモルトやボトラーズリリース等の個性を楽しむモノではないので、単品では物足りなさがあるやもしれませんが、その場の主役になるのではなく、例えば知人との談笑の場、読書や観劇のお供といった、場を壊さず空気を温めるような潤滑油としての使われ方なら、充分なクオリティがあると感じます。
そんな需要があるようでしたら、是非リサイクルショップやオークションを探してみてはいかがでしょう。

サントリー オールド 43% 2021年現行品

カテゴリ:
FullSizeRender
SUNTORY OLD WHISKY 
A TASTE OF
The Japanese Tradition 
700ml 43% 

評価:★★★★★(4-5)(!)
※ストレートの評価。ロック、濃いめの水割りで食中酒として楽しむべき。その場合は+★1

香り立ちは穏やか、甘い熟成した原酒のウッディなアロマが一瞬感じられ、シリアルのような穀物香、サトウキビ、踏み込むとそれを突き破るようにツンと刺すような刺激がある。
口当たりは少々あざとくもあるとろりとした甘さの中に、若干ピリピリとした刺激、若さが感じられる。一方で、シェリーやバーボンオークの熟成した山崎原酒の甘み、ウッディさがふわりと鼻腔に届き、ブレンドの方向性を示している。余韻はビターでやや単調。少し口内に張り付くように残る。

感覚的には10年程度熟成した原酒を軸に、それを若いグレーン原酒で引き延ばしたという構成。
そのため、香味ともトップノートに山崎蒸留所の原酒を思わせる甘やかなウッディさがあって「おっ」と思わせる一方で、該当する熟成原酒を構成の1~2割とすると、8~9割が若い原酒とも感じられる構成であり、グレーン系の風味や、香味の粗さも目立つ。キーモルトの主張はプラス要素であるが、ストレートではやはり安価なウイスキーであることも認識出来てしまう。

ところがこれをロック、水割りにすると、上述の悪い部分が薄まり、熟成原酒由来のフレーバーが伸びて一気にバランスが良くなる。安心感すら感じる味わいだ。特に日常的な食中酒としての使いやすさは特筆もので、特別なシーンのための1本ではない、だからこそ長く親しめる。そんな作り手の意図が感じられるリリースである。

水割り

最近SNS、クラブハウス、いろんなところでプッシュしていますが、個人的に評価急上昇中の1本が、サントリーオールドです。
先日発表されたジャパニーズウイスキーの基準、これと合わせて日経新聞の報道※では、サントリーのブレンデッドで「ジャパニーズウイスキー」に該当するのは響、季、ローヤル、リザーブ、オールドとされており。特にオールドはジャパニーズウイスキーの中で最も長い歴史があり、最も安価なリリースとなります(1950年発売、現行価格1880円)。せっかくだからこの辺をちゃんと飲んでみるかと、購入してみたわけです。※参考記事

正直、びっくりしましたね。あれ?こんなに美味しかったかなと。(驚きついでにLiqulにもコラムを寄稿したので、近日中に掲載されると思います。)
以前飲んだものは、華やかだけど結構ペラいという印象で、ハイボールなのかロックなのか、どちらで飲んでも半端な感じでしたし、そもそも80年代以前のオールドボトルはお察しレベルでした。
原酒の多様性か、あるいは基準に合わせてレシピを変えてきたのか、間違いなく現行品が進化しており、キーモルトの良さに加え、楽しめる飲み方があるウイスキーになっているのです。


補足すると、ストレートでは粗さというか、あざとい感じが、値段相応という部分に感じられます。なので、飲み方によって評価は変わるかもしれません。美味しさの質もちょっと違いますし。
ですが、トップノートに感じられる熟成した山崎蒸留所の原酒を思わせる香味が、水や氷を加えることで、若い原酒の刺激、濃いめの甘さ、香味の粗い部分と混ざり合って平均化され、綺麗に伸びてくれる。非常によく考えられているウイスキーだと思います。

IMG_0193

価格帯で前後のラインナップと比較すると、この山崎の熟成原酒由来と思える甘やかなウッディネスは角やトリスには感じられず、リザーブともキーモルトのキャラクターが異なります。これらは白州のバーボン樽原酒のキャラクターである華やかさ、爽やかなオーク香を感じるんですよね。

構成の違いは、サントリーが各銘柄をどのように飲んで欲しいと考えているかで変わっていると推察します。
上述の通りオールドは水割りで甘み、熟成した原酒の香味が伸びて、ゆったりと楽しめる。柔らかく甘い含み香がまさに和食に合うような、落ち着きのある味わいです。
一方、角やリザーブはハイボールでさっぱりと、オーク香と炭酸の刺激で爽やかに楽しめる。それこそ揚げ物などの居酒屋メニューに合いそうなのがこちらの飲み方です。オールドのハイボールは、悪くないけどそこまでという感じで、線引きされているようにも感じます。


歴史を振り返ると、オールドは和食に合うウイスキーという位置付けでリリースされた系譜があります。
想定された飲み方はまさに水割りやロックといった、日本の酒文化に根付いた飲み方。ラベルにThe Japanese  Traditionと書かれているように、狙いの違いが感じられるだけでなく、これをジャパニーズウイスキーの基準に合致させてきた点にも驚かされました。

それこそ、このクオリティのものを2000円未満という価格で大量生産しているのですから、改めてサントリーの凄さを感じます。
それは原酒の質、種類もそうですが、ブレンド技術ですね。理想的な状況で美味しいモノを作れるのは当たり前で、限られた状況で如何に優れたものを作れるかがプロの技。例えば響21年ならハイボールも水割りもロックも、すべからく美味しくなるでしょう。ローヤル、リザーブも原酒のレベルがオールドより上なので、ストレートでもそこそこ飲めます。
一方このオールドは、原酒に加え、コスト面も制限が強くある中で、シーンを限定することでおいしさを発揮する点にそれを見ます。また、味わいに感じる熟成した原酒の香味から、コスト面はギリギリ、可能な限りを尽くした薄利なリリースではないでしょうか。

オールドは、昭和の一時期、世界トップクラスのセールスを記録した銘柄でしたが、その反動からか色々言われた銘柄でした。光が強ければ影も強くなる。ただ、当時のものを飲むと、その主張にもなんとなく納得してしまう味でもありました。

ジャパニーズウイスキーの基準に照らすと、冒頭述べたように最古にして最安値のジャパニーズウイスキーと位置付けられるのがオールドであり、ここまで紹介したように品質も文句のないレベルです。
それこそ同じ市場を狙うクラフトウイスキーメーカーはリリースの方向性、打ち込み方を考えないと真正面からでは太刀打ちできないとも思ってしまうクオリティ。
迫るジャパニーズウイスキー新時代。約30年の時を経て、昭和の大エースに改めて光が当たる時がきたのかもしれません。

三郎丸蒸留所×長濱蒸溜所 日本初のクラフトブレンドが実現

カテゴリ:
先日、ジャパニーズウイスキーの基準発表に関連し、三郎丸蒸留所の声明を紹介させて頂きました。内容に関して賛同する意見がSNS等で多く見られ、また同時に原酒交換によって実現する”クラフトジャパニーズブレンド”への期待も高まっていたところ。
そのわずか10日後。三郎丸蒸留所、そして長濱蒸溜所から、早くも原酒交換によるコラボ企画「日本初のクラフトブレンデッドウイスキー」の発表がありました。

複数の蒸留所が連携して企画し、同時にプレスリリースまで行う。これまで日本の蒸留所には見られなかった動きにワクワクしてしまいます。
自分はどちらの蒸留所も、創業初期(三郎丸蒸留所はリニューアル後)から毎年見学させて貰っているだけでなく、オリジナルリリースでの関わりもあり、他の愛好家よりも近い関係にあると言えます。
後日、レビューも掲載したいと思いますが、今日はわかる範囲で今回のリリースに関する情報をまとめ、紹介していきます。


nrb_inazuma_1


リリースは写真左から
長濱蒸溜所 INAZUMA
ブレンダー:長濱蒸溜所 屋久佑輔
・BLENDED MALT JAPANESE WHISKY "SYNERGY BLEND" 47% 700本
・WORLD BLENDED MALT WHISKY "EXTRA SELECTED" 47% 6000本
※プレスリリースはこちら

三郎丸蒸留所 FAR EAST OF PEAT
ブレンダー:三郎丸蒸留所 稲垣貴彦
・"FIRST BATCH" BLENDED MALT JAPANESE WHISKY 50% 700本
・"SECOND BATCH" BLENDED MALT WHISKY 50% 5000本
※プレスリリースはこちら

※販売は3月30日から、両蒸留所が運営するオンラインショップ並びに関連酒販等で行われます。
なお、FAR EAST OF PEATのBatch1、IZUNA2本セットが3月8日から14日まで抽選受付となっています。詳細は各社の酒販またはメールマガジンなどを参照ください。



■ブレンデッドジャパニーズウイスキー2種
INAZUMAは、長濱蒸溜所のノンピートモルトと、三郎丸蒸留所のピーテッドモルトを使用(どちらもバーボン樽熟成)。
FAR EAST OF PEATは、三郎丸蒸留所のヘビーピーテッドモルト(バーボン樽熟成)と、長濱蒸溜所のライトリーピーテッドモルト(アイラクオーターカスク熟成)を用いたものとなります。

使われている日本産原酒の蒸留時期は、双方とも2017年で、熟成年数は3年強と言うことになります。
つまり3年熟成のブレンドモルト?と感じるかもしれませんが、どちらも2020年にリリースされたシングルモルトは若さを感じさせない仕上がでした。また、2017年蒸留の長濱モルトは柔らかく穏やかな風味、三郎丸モルトはヘビーで広がりのある風味で、系統は異なるものの、どちらの酒質も共通してブレンドで馴染みの良さを感じる点があり、若いから…という思い込みは早計と言えます。

INAZUMAの組み合わせはノンピートとピーテッド。ノンピートでバーボン樽熟成の長濱モルトは、麦の甘さ、オーク樽由来のフルーティーさが酒質の柔らかさと合わさって穏やかに味わえるタイプであり、それがピーティーさがメインの三郎丸モルトのパワーを包み込む、足りない部分を補うような仕上がりが期待できます。
またFAR EAST OF PEATが使っている長濱のモルトは、アイラクォーターカスク熟成ということで、実物も見たことがありますが、これはラフロイグ蒸留所のもの。麦芽の甘みとスモーキーさに加わる、アイラ由来のフレーバーの一押し。。。この競演がどのようなシナジーを生むのか、実に楽しみです。

nagahama_saburomaru
(今回のブレンドに用いられた原酒は、両蒸留所ともアップデートが施される前に仕込まれたものである。例えばポットスチルは、三郎丸は旧世代のスチルを改修したもので蒸留されている。長濱は現在より再留器が小型で、スチルの数も異なる。詳細は以下対談企画を参照。)

■ワールドブレンデッド2種について
今回の企画では、どちらのブランドにも輸入モルト原酒を使った、ワールドブレンデッド仕様がラインナップされています。
振り返ってみると、三郎丸蒸溜所はムーングロウで、長濱はアマハガンで、それぞれWorld Whisky Awardで部門受賞を経験するなど、自社モルトとバルク原酒を使ったウイスキーについても評価されているのです。

個人的に、オリジナルリリースの関係で両蒸留所の保有する原酒を飲む機会を頂いてますが、それぞれ異なる企業、蒸留所から調達されているもので、国内での追加熟成も経て全く違う素材としてブレンドに作用すると感じます。
両ブレンダーが目指す方向性の違いも含め、一体どんな味わいになっているのか。これまでのウイスキーシーンにはなかったユニークな試みであり、個人的にはこのワールドブレンド仕様の仕上がりに、密かに期待しています。

IMG_0062
(長濱、三郎丸両蒸留所で関わらせてもらったオリジナルブレンデッド。どちらの蒸留所にも自前、輸入で様々な原酒があり、品質も一定以上が担保されている。)

■両蒸留所のウイスキーと造り手の想い
三郎丸蒸留所、長濱蒸留所については、酒育の会のLIQULにて特集対談記事が公開されています。
偶然ですが、長濱蒸留所編の公開は、まさに本日からです。
今回のリリースをきっかけとして、両蒸留所に興味を持たれた方は、ぜひ以下の記事も参照いただければと思います。
創業から現在に至るまで、どのような変化があったのか、目指すハウススタイルや、造り手の想いなど、対談形式でまとめています。

【ジャパニーズクラフトウイスキーの現在】
Vol.1 三郎丸蒸留所編:https://liqul.com/entry/4581

Vol.2 長濱蒸留所編:https://liqul.com/entry/5209

21
※自画自賛気味ですが、WEB公開されている記事の中では両蒸留所の情報を一番網羅している記事だと思います。

今回のリリースは、冒頭述べたようにジャパニーズウイスキーの基準制定を受け、三郎丸から原酒交換に取り組むという発表があった矢先のことでした。「いやいや、動き早すぎでしょ」と感じた方も少なくないのではないでしょうか。

実は、今回の企画の発起人と言える三郎丸蒸留所の稲垣マネージャーは、それこそ蒸留所をリニューアルして再稼働させた時から原酒交換のプランを持っており、他の蒸留所の見学や情報交換を行うなど、基準が形になる前から動きを進めていました。
私もクラフトウイスキー間の連携推進や、グレンマッスルでのジャパニーズブレンド構想があり、お互いに何が出来るか話をする中で、今回の一件もそういう動きがあると伺っていました。

鶏と卵の話ではありませんが、ジャパニーズウイスキーの基準に関する話を受けて原酒交換が動いたというよりは、ブレンドづくり含めて準備を進めていたところ、今年に入って唐突に動きがあり「いつやるの?今でしょ!」と、両蒸留所がリリースにGOサインを出した。という流れであるようです。
ですがその前後関係は些末なこと。これによって原酒交換の前例が出来、ノウハウも両蒸留所にあることになります。蒸留所として今後も取り組みを進めていくことに変わりはなく、むしろ各社にとっても追い風となる実績が作れるのではないかと期待しています。

nagahama_saburomaru_2

長濱蒸留所の屋久ブレンダーと、三郎丸蒸留所の稲垣マネージャー(兼ブレンダー)は、両蒸留所の距離が他の蒸留所に比べて離れていないこと、長濱蒸留所は規模が日本最小、三郎丸蒸留所は生産量が日本最小で、お互いに小さな蒸留所であることなど、何かと繋がりを感じるところがあり、意見交換をしてきたそうです。
例えば長濱蒸留所の原酒で、ある仕様が2018年頃から変わったのですが、それは稲垣さんのアドバイスからだったという話も聞いたことがあります。

詳しくは、ボトル購入特典となっている両ブレンダー対談動画で語られると思いますのでここでは伏せますが、こうして造り手同士が繋がって、お互いに品質を高めていく。
日本のウイスキーのルーツたるスコッチウイスキーは、大手メーカーと中小メーカーの共存共栄から発達してきた歴史があります。日本ではこれからクラフトを中心にそうした動きが出て来ればと、今回のリリースを第一歩とした動きに期待してなりません。

先の基準は、海外市場で既に反響を呼んでおり、ひょっとすると業界が想定していた以上の影響が今後出てくるとも考えられます。
そうして考えると、日本のウイスキー業界は、新しい時代に突入したと言えるのではないでしょうか。
新時代におけるクラフトウイスキーの魅力とは何か、そして市場を取るための計画は如何に。単に作れば良いだけではなく、大手との違いは何か、強みはどこにあるのか。必ずしも原酒交換だけが選択肢ではありません。
例えば蒸溜所がある地域のシェアだけは絶対に抑えると、地域限定ボトルのリリースというのもあるでしょう。厚岸蒸留所のような●●オールスターを作るというのも1手です。
基準に加え、今回のコラボレーションリリースが呼び水となって、クラフトウイスキー(自社ウイスキー)のさらなる魅力を、各社が考えていくようになるのではないかと思います。

規制下での創意工夫から、新たな付加価値が生まれるのは、産業界で数多起こってきた出来事の一つです。まずは今回のリリースを楽しみにしたいところですが、ここからのジャパニーズクラフトウイスキー業界の動きにも注目していきたいですね。

※関連記事:
三郎丸蒸留所 ニューポット2020 アイラピーテッド&ヘビリーピーテッド 60% +蒸留所からの意思表明 
「ジャパニーズウイスキーの表示に関する基準」に潜む明暗
ウイスキーにおけるジャパニーズウイスキーの表示に関する基準(日本洋酒酒造組合)


nrb_inazuma_main (1)
156313091_3801548966549812_9095643075318605042_o

グレンマッスル BLENDED No,∞ ”For all my loves” 47.1%

カテゴリ:
グレンマッスル1982エディション表裏ラベル

GLEN MUSCLE No,∞ 
For all my loves 
Released in 2021
 
BLENDED 
Islay malt whisky Distilled 1991 
Highland malt whisky  Distilled 1996 
Scotch grain whisky Distilled 1982
by TEAM GLEN MUSCLE 
700ml 47.1% 

評価:★★★★★★(6)

香り:おがくずや乾いた植物を思わせるようなトップノートだが、スワリングすると缶詰のシロップや黄色系フルーツを思わせるフルーティーさ。オーク香に乾いたモルト、奥にパイナップルキャンディのような、人工的なニュアンスを伴う甘みも開いてくる。

味:口当たりはスムーズで柔らかい。ナッティーで枯れたような酸を感じる部分があるが、焼き洋菓子を思わせる甘みが包み込むように広がって、バランスは悪くない。後からオーキーな華やかさと微かにケミカルなフレーバー。余韻は香り同様に黄色系フルーツのフルーティーさが残り、ややウッディでドライなフィニッシュがじんわりと長く続く。

使われたハイランドモルトの特徴的なフルーティーさと熟成感、アイラモルトに由来するナッティーなフレーバーと枯れたような樽感。時間軸の違う二つの原酒を繋ぐ、グレーン原酒の柔らかい甘さが全体を整え、複雑でありながらバランスの良い味わいに仕上がっている。カスクストレングスのブレンデッドあるため、柔らかさの中に原酒由来の個性、強さもある。普通に美味しい1本。

20210122_105240

昨年、長濱浪漫ビール(長濱蒸溜所)からリリースされた、グレンマッスルNo,6 ”Nice bulk‼”のもう一つの形。
For all my loves、愛すべき全ての者たちへ。2021年のグレンマッスル・第一弾として、少量のみですがBAR等一部関係者限りでリリースとなりました。
No,∞の”∞”はメビウスの輪を意味していて、ゴールや正解が無いこと。個人的には、ブレンドが持つ無限の可能性の意味を込めています。

グレンマッスルやベースとなったNo,6の構成原酒については、過去のレビュー記事にまとめてありますので今回は割愛。このブレンドは、No,6のモルト原酒の組み合わせはそのままに、1982年蒸留のグレーンをブレンドした隠し玉となります。
企画の実現に当たっては、特にこのリリースのキーモルトならぬキー原酒、1982グレーンにメンバーの一人が拘ったことから、同氏の趣味が色濃く反映されたラベルデザインとなっています。(逆にNo,3,5,6は自分の趣味です(笑))

IMG_20201128_102755

ブレンデッドモルトウイスキーとしてリリースされたNo,6には、写真のように”追いグレーン”という形で、後からグレーン原酒を追加するアイディアが採用されていました。味の変化や、ブレンドにおけるグレーンの働きを楽しんで貰おうという試みで、こちらは愛好家の多くから好評を頂いたところです。

その際、どっちが好みかと言えばグレーンを混ぜたほうという評価が大半でした。
実際、我々もリリースに当たってグレーン有り無しのレシピを比較して、同様の印象をもっていたわけですが。だったら何でブレンデッドモルト+追いグレーンという、”混ぜない”選択をしたかというと、そのほうがリリースとして面白かったからなんですよね。
国内外の原酒を用いて、「美味しいだけではない、尖った魅力、面白さのあるウイスキー」を作る。これがグレンマッスルのコンセプトなのです。

一方で、グレンマッスルNo,6がグレーンをブレンドしてリリースされていたら、果たしてどんな評価になっていたのか。。。愛好家の声による後押しと、長濱浪漫ビールさんのご厚意により実現した「if」が、今回のグレンマッスルNo,∞になります。
No,6で追いグレーンが出来なかった方は、このブレンドとで飲み比べも楽しんで貰えると、”ブレンドにおける良質なグレーンの重要性”を、感じていただけるのではないかと思います。
使用したモルト原酒は、2つのうち1つが混ざりにくい(馴染みにくい)タイプのものでしたが、グレーンの一声による効果はてきめんです。二つの個性を繋ぎ、包み込み、余韻まできれいに伸ばしてくれています。

今回のボトルは原酒残量の関係から、本当に少量のみボトリングされているので、一般に発売されるかはわかりません。ですが、いつもグレンマッスルを購入いただいているBARには比較的入荷していると思います。コロナ禍、緊急事態宣言、きわめて難しい状況でありながら、今回もボトル購入を頂いた皆様には本当に頭が上がりません。
是非機会がありましたら、グレンマッスルNo,6のアナザーストーリーも、お楽しみいただければと思います。

glenmuscle20202021

はい、ということでご無沙汰しております。
ご無沙汰している間に2020年が終わって2021年になってました。
いかん。。。時間経過早すぎ。。。
この間に宿題もだいぶ溜まってしまいました。まあ決して遊んでいたわけではないんですが。

しかし去年の長期休暇があったとはいえ、誰ですか
「くりりん ウイスキー コロナ」だけでなく「くりりん ウイスキー 死亡」をGoogle検索した人は(笑)。
検索候補に出てきて吹き出しましたよ。
念のため書いておくと、今のところコロナには感染していませんし、バッチリ健康で生きてますから!!

そんなわけで近況報告がてら、2021年のグレンマッスル等PBの予定について。
ウイスキーだけでなく、今年はチロルチョコとタイアップ・・・はい、嘘です。今のところリリース時期が確定しているものはありませんが、ありがたいことに、いくつか現在進行形で話が進んでいます。
中には、既にメンバーでブレンドレシピの試作に着手している蒸留所もあり、構成原酒からして”面白い”と感じてもらえることは間違いないと思います。
後はどれだけ完成度の高いものを作れるかですが。。。今回は種類が多く特に難しいです。やはりみんなが笑顔になるような、そんなリリースに繋げていきたいですね。

また、グレンマッスル以外でも個人的にいくつかお話を頂いています。趣味としてウイスキーを楽しむ以上の世界を見せてもらっている、ありがたい限りです。
どのような形になっていくかはまだわかりませんが、今後ともよろしくお願いします。

IMG_20210125_083953
IMG_20210122_215930

このページのトップヘ

見出し画像
×