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LIQULコラム 5月号はブルイッラディ&ポートシャーロット レビュー

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酒育の会発行のフリーペーパー「LIQUL(リカル) 5月号」が発行されました。
もう前置きは不要かと思いますが、自分は昨年から、Re-オフィシャルスタンダードテイスティングというタイトルで、新たに発売した銘柄やリニューアルして味が良くなった銘柄等、オフィシャルボトルにおける注目銘柄の紹介記事を寄稿させてもらっています。

同誌は酒販店やBAR等協賛店舗での配布と合わせ、今年2月からWEBマガジンとしても展開されており、類似の内容(WEBマガジンのほうが字数制限が緩いので、内容が濃い場合もある)が、隔日程度の頻度で1記事ずつ更新されています。
そして先日5月9日、5月号向けに寄稿した記事がWEBマガジンのほうに掲載されましたので、記事中では書かなかった話等と合わせて紹介していきます。


Re-オフィシャルスタンダードテイスティング Vol.5
ブルックラディ”アイラバーレイ&ポートシャーロット10年”
(LIQUL本誌の内容は、上のWEB版を800文字程度に要約したものとなります。)

今回のピックアップは、アイラに島あってアイラ由来の個性と異なる特徴を持つ蒸留所、ブルックラディ

同蒸留所の日本名称は「ブルイックラディ」だったのですが、親会社であるレミーコアントローのブランド再編により、2018年頃から「ブルックラディ」に名前が変わっていました。
蒸留所は1995年からの休止、2001年の再稼働、そしてその後のラインナップ整理を経て、再稼働後の原酒は
・クラシックラディ(ブルックラディ):旧世代のキャラクターを引き継ぐノンピートタイプ
・ポートシャーロット:ヘビーピーテッドモルト
・オクトモア:世界最強のピーテッドモルト
主に以上のブランドに整理され、リリースされています。

”ブルイックラディ”時代は、休止前に仕込まれたライトピートタイプの原酒が一部で使われているなど、若干ピーティーな銘柄があったように記憶していますが(例えば、2000年代にリリースされた17年など)、再稼働から時間が経ち、原酒の熟成が進んできたことで、各ブランドの住み分けが一層はっきりしてきました。
クラシックラディは90年代のクリアトール時代に通じるベクトルで、懐かしい味わい。オクトモアは相変わらずぶっ飛んでいる(というかぶっ壊れている)。そしてこの数年内、上述の3ブランドのうち最も完成度を向上させたのが、ポートシャーロットだと感じています。

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(現行品のクラシックラディからイメージ出来る、クリアトール時代のラディ。洗練された印象のない素朴な麦芽系で、それが逆に良さでもあるが、個性に乏しい。まさにブレンド向けの原酒という時代の1本。)

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(2020年時点、ポートシャーロットのオフィシャルスタンダード。度数が50%あり、飲み応えもある。アイラバーレイ仕様もリリースされているが、こちらはまだ熟成10年未満の原酒で構成されている。)

今回の記事を書くきっかけは、なんといってもこのポートシャーロット10年。
2018年にリニューアルして10年表記になってから、これまでの若さが先に来る香味構成に熟成感が伴うようになり、内陸系のスモーキーさとこだわりの麦芽風味、それぞれに繋がりが生まれてバランス良く楽しめるようになっていました。
実はリカルの執筆を始めるに辺り、紹介しようと決めていたうちの1本でもあります。

一方、記事化にあたって最も表現で悩んだのは、「ピートフレーバーの違い」でした。
ブルックラディは麦芽風味にこだわり、アイラ島やオークニー島で契約農家による栽培を行うなど、ワインで言う”テロワール”をウイスキーでも表現することをブランドモデルに掲げています。
その麦芽由来のフレーバーは確かにしっかりとしており、それはノンピート仕様のブルックラディ・アイラバーレイやベアバーレイを飲むことで理解出来ると思います。

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(クラシックラディとは異なり、しっかりとした麦芽風味の主張、麦由来のフルーティーさが楽しめる、バーレイシリーズ。ブルックラディ再稼働計画のなかで、オーガニックで地場生産のモルトはプランの1つに掲げられていた。なおこのリリースはノンピート仕様のはずが、微かにピート香がするような。。。?)

ブルックラディは再稼働後から「生産からボトリングまでを一貫してアイラ島で行う唯一の蒸留所」ということもPRしてきました。
しかし、この”生産”にはモルティングが含まれておらず、ピートもアイラ島のものではありません。スコットランドの内陸にある設備で仕込まれた麦芽が、現在のブルックラディでは使われているのです。
そのため、ポートシャーロットは、アイラ産のピートが持つヨード系のフレーバーをほとんど持たないキャラクターとなります。

冒頭、「アイラ島にあってアイラらしくない」と書いたのは、まさにこのピート由来のフレーバーの違いにあります。
その土地の風土や気候、環境の違いを意味する”テロワール”をブランドのモデルとしながら、ウイスキーのフレーバーにおいて重要な役割を担うピートがアイラ島産ではないというのは、ちょっと整理が難しい。
ご存じの通り、単にピートフレーバーやスモーキーさといっても、ピートの成分によって得られるフレーバーは大きく異なるのです。

ただし、味が悪いという話ではなく、あくまでPRにおける整理の問題です。
これを香味の点から好意的に解釈したのが、コラム中に書いた、ヨード香は麦芽由来の風味を邪魔してしまうこともあるため、ブルックラディの素朴かつ熟成によってフルーティーさを纏う酒質由来のフレーバーとスモーキーさを両立させるため、内陸のピートを使っているという考察です。


率直に言えば、これはブルイックラディの「妥協」だったのではないかと思います。
理想的には一貫して、麦の生産、仕込みもアイラ島で全て行いたいが、ウイスキー産業が今ほど勢いづいていない再稼働当時の状況では、資金調達の難しさに加え、アイラ島の農家で指定の麦芽をつくってもらうという試みも、理解が得られず首を縦に振ってもらえない。
”ウイスキー・ドリーム”にも書かれていた時代背景の通り、ピートと麦芽を確保し、アイラ島で精麦することまではたどり着けなかったのではないかと考えられます。

しかしブルイックラディはその後現地の農家との関係を構築。現代のウイスキーブームを後押しに、ついに2023年までに精麦設備をオープンさせ、オールアイラ島産のウイスキー作りに着手する「一貫生産計画」を発表するに至っています。

親会社であるレミー・コアントローから発表された、ブルイックラディ蒸留所に関する投資計画のプレスリリース(2019年5月17日)

これが現地のピートも使った仕込みに繋がるのか、あるいはアイラ島で作られた麦芽の使用比率が全体の42%と増えてきたので、単なる生産効率化のためなのか、現時点で詳しいところはわかりません。
某蒸留所のマネージャーから伺った話では、アイラ島のピートの採掘権(採掘場所)はかなりいっぱいいっぱいで、まとまった量での新規参入は難しいという話もあります。

個人的に、このオールアイラ島産のモルトに興味がないわけではありません。今回のコラム記事で、苦手なのでついスルーしてしまったオクトモアも、アイラピートで仕込んだらどうなるのかなど、リリースの幅がさらに広がることは間違いありません。
しかし、ブランド全体としては、既に他の蒸留所で作られているモルトと似てきてしまうのではないか。ブルックラディ(ピーテッド)は今のフレーバーの系統で良いのではないかと思ったりもします。

先に述べたように、売り方の整理はありますが、バーレイシリーズで作られる麦由来の風味のしっかりした原酒、特にベアバーレイなどは大きな可能性を感じるものですし、ピーテッドタイプの原酒が熟成を経た先の姿もまた楽しみです。
何より、他のアイラモルトと異なるのは、再稼働後に誕生したポートシャーロット等のピーテッド銘柄には、1960~70年代の黄金時代の縛りがないことです。
例えばボウモアのトロピカルなフルーティーさといった、昔を意識するものがない、求められるのは常に成長し続ける今の姿です。
今後どのようなリリースが行われていくのかはわかりませんが、アイラ島のなかで独自のブランドを作り上げていく、そんな存在であり続けてほしいなと個人的な希望を書いて、この補完記事の結びとします。

蒸留所外観

以下、LIQUL5月号繋がりで余談。
リカルでは毎号ピックアップ特集記事のテーマが決まっており、この5月号は「もっと洋酒を楽しむためのファーストステップ・ブランデー編」です。
そのフルーティーさ、奥深い独特の甘味、ウイスキー愛好家からも関心が寄せられているブランデージャンルの全体像を知るには、ぴったりな内容となっています。(1st Stepと言いつつ安易な入門記事ではない、蒸留方法から生産地域の特徴まで、幅広く網羅されている記事です。)

緊急事態宣言に伴う自粛生活で、夜の街に出歩けない日々が続いているとは思いますが、SNSでは7bookscoverなる取り組みが広まっていたりで、夜の時間で読書や勉強をされる方も少なくない模様。
まだまだ涼しさを感じる5月の夜。こちらの記事を、ブランデー片手に宅飲みのお供にいかがでしょうか。

ポートシャーロット 10年 オフィシャル 50% 2018~

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PORT CHARLOTTE 
HEAVILY PEATED 
AGED 10 YEARS 
Release 2018~
700ml 50% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:不明
場所:BAR LADDICH
評価:★★★★★★(6)

香り:ドライでややシャープなピーティーさ。乾いた麦芽、金柑のようなそこまで強くない柑橘香。焚き火のあとの植物が焦げたようなニュアンス、微かに塩素系の要素を伴う。

味:とろりとオイリー、コクのある口当たり。バニラと土っぽさ、焦がした麦芽のほろ苦さ、バーベキューや燃えさしを思わせる含み香。序盤の粘性のあとからスパイシーな刺激がピートフレーバーと共に広がる。余韻ははっきりとスモーキーで長く続く。

適度な熟成感があるピートと麦の酒。イメージは野焼き。麦とピートフレーバーの間に若干解離があるが、これは熟成を経てさらに改善していくだろう。加水すると麦系の香味、甘味が開いてくる。比較的早く失われるが、柑橘系の要素もある。少量加水して46%程度に整えて飲むのがオススメ。


最近良くなったと感じる現行ボトルの一つ、ポートシャーロットの10年。これまでのオフィシャルスタンダードに比べて、バランスが良くなり、麦の甘さとピート由来の焚き火の後のようなスモーキーさをしっかり味わえるようになりました。
同じラインナップには、アイラ島で生産された麦芽のみで仕込まれたアイラバーレイもリリースされていますが、こちらは麦感が強い一方でピートとの馴染みにまだ若さがあるというか、樽感も少し独特なところが・・・将来に期待しつつも現時点では10年の方が好みです。

ブルイックラディは1995年に閉鎖され、2001年に再稼働。閉鎖前はノンピートからライトピートのプレーンな麦の酒で、10年程度ではそうでもなくとも、20年、30年と熟成を経て、林檎系のフルーティーさなどのエレガントなフレーバーを備えていくのが魅力でした。
一方で再稼働後は麦芽に加えて、ピートの強さなど、ウイスキーを構成する要素のそれぞれにこだわったブランド戦略を展開しており、従来のブルイックラディのノンピートスタイルは残しつつも(微妙に洗練されていないというか、熟成を経てフルーティーになるかは定かではないが)、様々なスタイルのリリースを展開している点に詳細な説明は不要かと思います。


今回紹介するポートシャーロット10年の、原酒のメインはバーボン樽熟成。(樽の構成比率比率:1st fill bourbon 65%、2nd fill bourbon 10%、2nd fill French Wine Cask 25%)
これまで、PC○等でリリースを重ねてきたものが、いよいよ区切りを迎えたリリースです。
バーボン樽というと華やかでフルーティーな印象もありますが、樽感はそこまで強くフルーティーというタイプではなく、むしろメインはピートと麦。また、一部ワイン樽が使われていることから、口当たりで感じるコクや甘味を後押ししているのは該当する樽の成分なのかもしれません。

ポートシャーロットのコンセプトは、先に述べたブルイックラディのエレガントな酒質にピートフレーバーをマッチングさせるというものですが、現時点のブルイックラディは麦系の味わいであり、エレガントか。。。というには違和感が。
しかし、麦芽風味については、再稼働後のブルイックラディはアイラバーレイシリーズを展開するなど、”テロワール”を表現することをテーマとしているだけに、はっきりとした主張のある構成となっており。ピートもアイラ島産のものでないため、焦げ感やタールのようなニュアンスはありつつ、薬品香は控えめですが、逆にそれが独自の味わい、魅力に繋がっているように思います。

ブルイックラディ 15年 1990年代流通 43%

カテゴリ:
BRUICHLADDICH
Islay
Aged 15 years
1990's
750ml 43%

グラス:テイスティンググラス
時期:不明
場所:BAR LIVET
評価:★★★★★★(6)

香り:軽い苦味を連想させる麦芽香。オレンジピールやアーモンドの殻、干草を思わせるドライな植物感。微かに林檎のフルーティーなアクセント。えぐみを少し伴う。

味:スムーズな口当たり。ほろ苦く香ばしい麦芽風味、薄めた蜂蜜やオレンジジャムの粘性と甘み。微かにハッカを思わせるハーブ香を伴って鼻腔に抜ける。
余韻は微かなえぐみとほろ苦い麦芽風味。塩気を感じるコクを伴って長く続く。

まさにブレンド向けという、プレーンで特徴の乏しいモルトである。ピートフレーバーは明確に感じられず、素朴かつ少々野暮ったい雑味もあって洗練されてはいない麦芽風味主体。しかしそれが良さでもある。加水すると麦系の甘みが儚く、消えゆくような味わい。


1990年代中頃あたりからの流通品。この派手さのないデザインが、まさに名は体を表すようなリリースです。
ブルイックラディ蒸留所は、近年こそノンorライトピート、ヘビーピート、超ヘビーピートと様々な作り分けが行われていますが、かつてはほぼノンピートからライトピート程度の作りがメイン(ボトル、ロットによって多少誤差あり)。
今回のボトルは当時の特徴が現れており、これを飲むと現行品のブルイックラディ表記のボトルが、まさにクラシカルな構成を目指していることが理解できます。

同蒸留所は、1968年にインヴァーゴードン傘下となってから、最終的にホワイト&マッカイの傘下となって1995年に閉鎖されるまで、主にブレンデッドウイスキー用の原酒として位置付けられていました。
代表的な銘柄では、ロングマンディスティラリー社のグレンドロスタンや、フィンドレイター社のフィンドレイター。日本では特級時代のギフト向けにも展開されており、不安定ながら1980年代冬の時代を乗り越えることが出来たのは、輸出向け銘柄の貢献も少なからずあったのではと思われます。


(グレンドロスタンの1960年代流通。内陸系の要素が主体で、味わいはライトでプレーン。日本には阪急デパートが中心となって展開した。)

これらのブレンドにしても、コクやオイリーさはあるものの、あまり強く主張しない酒質が共通事項。
ライトなブレンドの需要が多く、ヘビーピートで癖の強い原酒より、内陸系のモルトがトップドレッシングとしてもブレンド用バルクとしても評価されていた時代ですから、それをアイラ島で作ろうとしたのでしょう。

今回のボトルは、そうした時代背景も伺えるような味わいも感じられます。
しみじみ美味いとは言え、特段華やかでもなく、野暮ったいようなどこか田舎臭いような。。。賛否が分かれる味わい。1980年代〜1990年代流通のオフィシャルスタンダードは得てしてそうした傾向がありますが、それが逆に良さでもあります。
まだこの時代のブルイックラディを試された事がない方は、勉強を兼ねて一度飲むと、経験値としては得られるものが多い1本だと思います。


(1990年代前半流通のブルイックラディ10年。こちらも同系統で、麦感主体の個性の乏しい味わい。熟成感は今回のボトルの方が強いが。。。)

ポートシャーロット 13年 2005-2018 BAR キッチン 55.3%

カテゴリ:
bar-kitchen-port-charlotte
PORT CHARLOTTE
Aged 13 years
Distilled 2005
Bottled 2018
Cask type Bourbon Barrel #1054
For BAR Kitchen & Gorden Promise
700ml 55.3%

グラス:リーデルコニャック
時期:不明
場所:BAR Kitchen
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:度数を感じさせない香り立ち。オレンジピールを含むオーキーな樽香に、スモーキーで焦げた木材、タール、微かにクレゾールのような薬品香が混じる。

味:しっかりと芯を感じさせるコクのある口当たり。乾いた麦芽、オレンジなどの柑橘、強い出汁感にほのかな酸味。ピートスモークが鼻腔にに抜けてくる。
余韻にかけては焦げた木材を思わせるピーティーさ、ひりつくような刺激を口内に残すフィニッシュ。

若いなりにレベルの高いアイラモルト。ピートは存在感があるが支配的ではなく、樽由来のニュアンスやベースにある麦感も感じ取れ、コクのあるボディがこれらをまとめている。ピートは基本的には焦げた木材やタール系統だが、微かに薬品香が混じる点がアイラモルトに通じるキャラクターとして感じられる点が面白い。


昨年、福岡のBARキッチンが北京のGORDEN PROMISEと共同でボトリング・リリースしたオリジナルボトル。
「以前サンプルを取り寄せて試飲した際、これは良いぞと思える樽だったので、今回のボトリングでは自信を持ってチョイスした。」とは、BARキッチンのマスター岡さんの言葉。どうやら目をつけていた原酒を、今回ボトリングされたようです。

確かに、単にピートフレーバーがっつりというだけの仕上がりではなく、樽香が良い具合に混ざったバランスの良さ。度数ほどに強くないアタックもあって、近年詰ボトラーズとは思えない要素もあります。
一方で、もう少し安価にリリースできると思ったが、為替の関係で想定していた以上の設定になってしまった。という話も。。。2017年後半あたりは150円を超えるところまでポンドが回復していた時期で、これもまた海外からボトリングする難しさと言えます。

(リニューアルしたポートシャーロット10年と、アイラバーレイ2011。ウイスキーフェスティバル2018にて。薬品系ではなく燻したようなスモーキーさの奥に干した藁のようなニュアンス、アイラモルトのなかで個性的なピート香)

個人的にこれまでポートシャーロットというと、ジムマッキュワンの探究心というか、オクトモアほどではないが現代のピートフリークを狙ったリリースというか、ボトラーズではそれなりのモノがたまにでるものの、大概は若く荒削りであるため、積極的に主張の激しいオラオラ系ウイスキーを飲まなくても良いかと、あまり関心を持っていなかった部分はありました。

ただ、昨年のウイスキーフェスで、リニューアルした上記の現行品10年を飲んで好印象を持ったところから、アードベッグやラガヴーリンの対抗馬として、異なるベクトルのポートシャーロットの評価は急上昇中だったりします。
今回のボトルも、多少荒削りではあるものの、10年少々熟成のシングルカスクとしては充分すぎる仕上がり。近年の原酒高騰の中でも見劣りしない、良いリリースだと思います。


ブルイックラディ 10年 1990年代流通 43%

カテゴリ:
BRUICHLADDICH
ISLAY SINGLE MALT SCOTCH WHISKY
AGED 10 YEARS
1990's
750ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:不明
場所:個人主催テイスティング会
評価:★★★★★★(6)

香り:やや青みがかった麦芽香、エステリーさと微かに蜂蜜、徐々に干し草、トーストを思わせる軽い香ばしさを伴う。

味:若干の水っぽさを感じる口当たり。香り同様の構成で、干し草、乾いた麦芽、ほのかにすりおろした林檎のような甘み。余韻は程よくドライでスパイシー、あっさりとしている。

ハイランド寄りのキャラクターで、起伏の乏しいボディが少々没個性的。ただし余韻にかけてのまとまりはよく、1杯目のモルトとして向いている。ストレートで。


1990年代、クリアなデザインの15年に変わる前のブルイックラディ10年。1970年代流通品から続くラベルをルーツに感じるデザインですが、背面ラベルにイギリスバーコードは、古くても1990年ごろのものということになります。

香味の構成は、エステリーでフルーティーさが主体というより、ピート香のないプレーンなブレンド向けハイランドモルトという感じ。実際当時のラディはインヴァーゴードン系列の中核を為す銘柄の一つでしたし、1980年代流通の若いグレンドロスタンとかこういうモルティーさあるよなーと。
さらに古い時代のボトルや長期熟成のもの、あるいはフルストレングスなボトルは林檎系のフルーティーさがしっかり感じられて、それがオールドスタイルのラディらしさとも言えるのですが。。。まあ正直、ブラインドで出されたら自分の経験値では特定できないと思います。

1990年代より前のブルイックラディは基本的にノンピートからライトピートな構成。1993年にインバーゴードングループからホワイト&マッカイへと傘下を移すと、ピートレベルを強めた原酒の仕込みも始めるものの1995年に閉鎖。再稼働後はオクトモアやカスクフィニッシュなど奇抜なリリースが増えて、徐々にオールドスタイルのラディが薄れていく印象すらありますが、ちょっと前にリリースされていたラディ16年は、この時代にある古典的なキャラクターを維持していたように思います。

なお再稼働後に仕込まれた原酒となる最近の若いラディシリーズは、原料由来と思しき酸味、軽いボディが目立ってまた違うスタイルになりつつあるようです。
ベア種を含む地元アイラ島産の麦芽を使った仕込みなど、レミー傘下に移っても色々やってるようですが、近年のこの仕上がりは看板商品とも言えるピートフレーバーの乗りの良さを意識してるのでしょうか。。。


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