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ブッシュミルズ 28年 1989-2018 メインモルト向け 48.6%

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IRISH SINGLE MALT WHISKY 
BUSHMILLS 
For Bar Main Malt 
AGED 28 YEARS 
Distilled 1989 
Bottled 2018 
700ml 48.6% 

グラス:テイスティンググラス
時期:不明
場所:Bar Main Malt 
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:濃厚なオークのニュアンス。黄桃やリンゴのコンポートを思わせるフルーティーさに加え、甘栗の香ばしさや薄めたキャラメルソース。若干青みがかったスパイシーさも感じる。

味:オーキーで粘性のあるリッチな口当たり。天津甘栗、キャラメルナッツ、黄桃の缶詰のとろりとした甘味。徐々に若干ケミカルなフルーティーさも混じってくる。 
余韻はドライで程よいウッディネス、紅茶を思わせるタンニンと、ややハイトーンだがオーキーな華やかさも伴う充実した長いフィニッシュ。

熟成した70年代蒸留のスペイサイドモルトのようなフレーバーと、アイリッシュのフルーティーさが混じりあった仕上がり。樽はリフィルシェリーホグスヘッドだろうか、全体的には樽由来のニュアンスが支配的だが、加水するとケミカルなフルーティーさが分かりやすくなる。

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BARメインモルト向け”となった”、ブッシュミルズ。そして、人類には早すぎたアイリッシュ。
近年のアイリッシュウイスキーと言えば、ジェネリックトロピカルとも例えられるケミカルなフルーティーさが特徴であり、特に長期熟成であるほど純粋なトロピカルフレーバーが期待されている傾向があります。
1988-1989年蒸溜などはその最たるところ。実際、昨年信濃屋からリリースされたジャポニズムや、TWA等各種ボトラーズからのリリースは、まさに該当するフルーティーさで多くの飲み手を虜にしました。

そのフレーバーを基準とするなら、この1989は些か異端な仕上がり。
余韻にかけて該当する要素は若干あるのですが、メインに感じられるのは樽由来のウッディなフルーティーさ。スペイサイド寄りのハイランドモルトを、アメリカンオークのリフィルシェリーホグスヘッドで長期熟成したような構成で、それも結構良い樽感が序盤を支配。酒質由来の要素と混ざりながらフィニッシュへと繋がる構成です。
もしブラインドで系統を拾い間違えると、ベンリアックやロングモーン、あるいはグレングラントあたりの同樽長熟、と答えるかもしれません。

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メインモルトはウイスキー好きの聖地として知られるBARのひとつであり、かつてはプライベートボトルBBI(ベンリアックバカ一代)のリリースや、ベンリアックの全リミテッドリリースが揃っていることでも有名でした。

それはひとえに、長熟ベンリアックにあったトロピカルなフルーティーさに、マスターである後藤さんが心奪われていたため。そして近年、その心は一部共通するフレーバーをもたらすアイリッシュへと移っており、バックバーは日に日にアイリッシュが増殖している状況。既に3/4以上が同ジャンルとなっていて、その他のウイスキーは背後の棚。いよいよアイルランドに制覇されようかという勢いです。(当人いわく、ベンリアックとは離婚調停中とのことw)

後「これな、他の89アイリッシュに比べると地味やねん。だから一般に売らんで抱えたんや。」
く「充分旨いじゃないですか。でも確かにアイリッシュというよりは、スコッチモルトの長熟っぽいですね。」
後「他の89アイリッシュと比べたらな。某メガネのとかめっちゃトロピカルやろ。」
く「確かに。でも我々が失われたトロピカルフレーバーを求めるように、この樽感も失われつつある味わいだと思いますよ。」
後「つまり我々人類には早すぎたんやな(笑)」

カウンター越しの会話。後藤さんのこれまでの好みから考えると、この原酒から感じるものはあったと思うのです。それも恐らくはポジティブな方向で。
それでもフープ経由等で一般にリリースしなかったのは、アイリッシュの今流行りの枠のなかで比較はしてほしくないという、親心のようなものがあったのか、あるいは愛ゆえの独占欲か。

そしてアイリッシュでありながらスペイサイドスコッチの長熟のような個性も備える今回の原酒は、スコットランドとアイルランドの交叉点にあるBAR メインモルトを象徴するボトルかもしれません。
現在の同店を体現したような味わい、神戸にお越しの際は是非お楽しみください。

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(2年半前のメインモルトのバックバー。この時アイリッシュはまだ半分に満たなかった。)

ブッシュミルズ 21年 2013年リリース 40%

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BUSHMILLS 
AGED 21 YEARS 
MATURED IN THREE WOOD 
Released in 2013 
700ml 40% 

グラス:国際企画テイスティング
時期:不明
場所:BAR Vision 
評価:★★★★★★(6)

香り:ソフトでスウィートなアロマ。ややウッディさが強く草系のニュアンスが強いが、ケミカルなシロップの甘さと華やかさも奥から開いてくる。

味:スムーズな口当たりで軽いスパイシーさと微かに乾いた植物感。主体はケミカルなアイリッシュトロピカルで、ライトで軽めのボディにシロップのような甘みも感じられる。
余韻はドライで華やか、ケミカルなフルーティーさがほろ苦いウッディネスと共に長く続く。

アイリッシュらしい構成。マイルドでフルーティーで、そしてケミカルで草っぽさがある。表面的にはシェリー樽由来のボリュームのあるウッディさが覆っているが、軸にあるキャッチーなフルーティーさとライトな酒質が、飲み進めることで感じられる。
この日はマスターのお土産として草餅を頂いた。合わせてみるとこれが中々美味。小豆とウイスキーの相性の良さも感じた1杯。

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ブッシュミルズ、オフィシャルスタンダードの上位グレード。ファーストリリースは海外情報だと2001年。オロロソシェリー樽、バーボン樽で最低19年熟成させた2タイプの原酒を50:50でバッティングし、2年間マディラワイン樽でマリッジした21年熟成品です。

同グレードは、リミテッドリリースとして年毎の生産量が限られている関係上、ロット差が比較的大きいとする評価があります。
最近のロットは飲めてないので数年前までの記憶ですが、特にシェリー樽系のフレーバーが安定していなかったように思います。ある年は強くウッディで、ある年は淡くバーボン系の原酒の個性が目立ってフルーティーさが強く出たり。。。
リミテッドリリースならロット差は当然あるものとも言えますが、セカンドフィル以降の比率の違いや、あるいは年によって樽の入手先が違っていたのかもしれません。

ただし基本的な構成は、3回蒸留らしい軽めの酒質にケミカルなフルーティーさ、樽由来の甘味とウッディネス、干し草のような植物感の組み合わせであることは変わりません。これのどの要素が強く出ているかの違いというところ。
また、今回のボトルは開封後比較的時間が経過しているものですが、アイリッシュらしいフルーティーさがしっかり開いていて美味しくいただけました。(同じロットを以前飲んだ時は、もうちょっと樽というか草っぽさが強かったような気がするんですよね。その辺がうまくこなれていたように思います。)

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今回のボトルは吉祥寺のBAR Visionさんでテイスティングしました。
吉祥寺は大学時代にバイトしていたり、そもそも縁のある街だったりで、同店にも8年くらい前に1度だけ伺ったのですが、そこからは中々伺えず。。。まあそう遠くないし、いつかまた行こうと思いつつ、気がつけば平成が終わってしまいましたよ。”いつか”ってのは案外来ないんですよね。

なお、Bar Visionは1杯1000円を基準に、手頃な価格設定でウイスキーを提供することを特徴の一つとしています。
近年はウイスキーの高騰が著しいわけで、この縛りが厳しいことは言うまでもありませんが、マスターの小林さんに「これは面白い、美味しいと思った現行品を」とリクエストして出来たのが今回のボトル。
数年前までは1万円くらいで売られていたことは覚えていて、なるほどこれは確かにと思って飲みましたが、記事化に当たって調べたら今は2万円越えてるとは・・・。

その他、色々飲んで名物(?)のカレーも食べて、葉巻で締める。楽しい時間を過ごさせていただきました。Visionさんの訪問記は改めてまとめたいと思います。

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ブッシュミルズ スチームシップコレクション ポートカスク 40% ブラインド

カテゴリ:
BUSHMILLS
STEAM SHIP COLLECTION
Limited Edition
Port Cask
700ml 40%

【ブラインドテイスティング回答】
地域:アイリッシュ
蒸留所or銘柄:特定できず
仕様:ブレンデッド
熟成年数:10年程度
蒸留時期:近年
樽構成:バーボン及び複数樽
度数:45%程度
暫定評価:★★★★★(5)

香り:紙っぽさとツンとした刺激、牧草や薬のような苦味を伴うアロマ。奥から穀物系の甘み、柑橘、バニラの要素も感じる。

味:ほろ苦く穀物的な味わいから、蜂蜜のような甘み、舌先にピリピリとした刺激とほのかにライムのような柑橘系のアロマが鼻腔に抜ける。
口当たりはオイリーだがボディ感はあまりない。余韻はべたつきのあるケミカル系の甘さとほのかな薬香を伴って長く続く。

オーク系のウッディさにべったりとした甘さやほのかな薬っぽさ。蒸留方法に特徴がある原酒が使われている印象。
ハイブリッドスチルを使っている新興国系かアイリッシュで迷う。ただそれにしては熟成年数をそこそこ感じるので、ただ単にアイリッシュなのかもしれない。

ウイスキー仲間で当ブログに写真も提供頂いているT.Ishiharaさんからの出題。
今から1世紀以上前。ブッシュミルズがアメリカへの輸出を開始した際に使われた蒸気船、その処女航海125周年を記念し、2016年に免税店向けに販売されたのが蒸気船シリーズ"STEAM SHIP COLLECTION"です。

ラインナップ構成は樽違いで3種類、シェリーカスク、バーボンカスク、そして今回のポートカスクの3種類がリリースされています。
今回のテイスティングアイテムは、その3種類のうち、ルビーポートを3年間シーズニングさせた、ポートカスクで熟成した1本。熟成期間は不明ながら、10年から14年程度の原酒が使われているという話もあります。
加水が効いていることもあると思いますが、シーズニングに使われたポートがそこまで強くないのか、あまりリッチなポート感ではありませんが、らしいケミカルなフルーティーさも奥に感じられるバランスタイプのウイスキーです。

ブッシュミルズ 蒸気船シリーズ ラインナップ。

ブラインドテイスティングの回答と比較してみると、ポートカスクの印象をどう捉えたかが「カギ」になったように感じます。
余計な雑念が入り新興国系もあるかも、なんて考えたりもしていますが、地域や蒸留方法による特徴、熟成感は概ね感じた通り。
他方で、ポートカスクやワインカスク熟成のウイスキーに見られるべたつきのある感じ、そこに加水が加わって奥行きのあまりないのっぺりとした質感を樽由来ではなくグレーンっぽいなと感じてしまったのが失着でした。
ワイン系、ポート系は普段あまり飲まない飲まないので、またしても意識の弱いところからミスリードしてしまったようです。

銘柄の絞り込みについても、これという確証を持てませんでしたし、アイリッシュやアメリカンはまだまだ経験が足りませんね。
この辺の理解、整理を進めることが今年の課題かなと思います。


余談ですが、この蒸気船シリーズは一部日本にも並行輸入されており、国内での購入も可能です。
ただ、日本の酒販サイトの一部では「ブッシュミルズ蒸留の125周年を記念したボトル」としての記載が見られ、それをそのまま引用するサイトも・・・。
ブッシュミルズの創業年については諸説ありますが、少なくとも200年以上は経過していますので、間違いのないようご注意ください。

ブッシュミルズ 12年 ディスティラリーリザーブ 40% ブラインド

カテゴリ:
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BUSHMILLS
DISTILLERY RESERVE
Aged 12 years
2017's
Cask type Ex sherry & Ex bourbon
700ml 40%

【ブラインドテイスティング解答】
地域:アイリッシュ
蒸留所or銘柄:クーリー
仕様:シングルモルト
熟成年数:12年程度
蒸留時期:近年
樽構成:バーボンバレル主体
度数:43%
暫定評価:★★★★★(5ー6)

香り:青みがかった華やかなオーク香、レモン、蜜感のある林檎、干草、うっすらとケミカルなトロピカル香も開いてくる。

味:若干の水っぽさのある口当たり、素朴な麦芽風味、クラッカー、すぐにバニラの甘みやケミカルなフレーバーが開いてきて支配的に。余韻はややべたつきがあり、ケミカルなシロップ、ネクター系の甘さ、ほのかな植物感が張り付くように残る。

アイリッシュか南ハイランドか非常に悩ましいボトル。アイリッシュにしてはモルティーさとオークが強いし、近年の南ハイランドにしてはあまり毒々しさがない。普通に考えればアイリッシュで、ブッシュミルズなど、このレンジのオフィシャルでトロピカル要素が強いところではない銘柄と予想。



先日に引き続き、ウイスキー仲間のIさんからのブラインド出題。Iさんが昨年現地を訪問した際、購入されたものだそう。

素直に考えればアイリッシュなのですが、どうにも南ハイランドがちらついて、最後まで地域で悩んでいたことが伺えるテイスティングの流れ。
その結果、ブッシュミルズも候補としておきながら、アイリッシュとスコッチの中間点的なモルトなのではないかと、キャラクターを明確にイメージ出来ないクーリーを諸情報から予想するという、自分の舌と鼻を信じられなかったテイスティングをしてしまいました。
こういう予想をすると、大概外れますw

アイリッシュは主要な銘柄以外それほど意識して飲んでいないので、ブラインドで地域がわかっても、どうしても不安が残ってしまいます。
他方、それ以外の要素は、ほぼほぼ感じたとおりでしたので、全体的には及第点かなと。アメリカンとアイリッシュの蒸留所毎のキャラクターの理解が、今後の課題でもありますね。


(ブッシュミルズ蒸留所外観。スコッチのそれを思わせるキルン塔の反対側、高層階の熟成庫がスコットランドとは異なる独特の雰囲気を醸し出している。Photo by T.Ishihara)

さて、このブッシュミルズ12年ディスティラリー・リザーブは、蒸留所限定で販売されているリリースの一つ(一部海外酒販では購入可能な模様)。以前は白いラベルのデザインでしたが、昨年からリニューアルし、この水色のデザインとなったようです。

蒸留所限定というと特別な印象を受けますが、 個人的にはオフィシャルスタンダードのベクトルから大きくそれないと感じる構成。 加水でバランスよく、樽感は基本リフィルとバーボンバレル主体か、シェリー系のこってり感は控えめ。
アイリッシュらしさの適度にある、万人向けのリリースだと思います。

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