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グレンエルグ 12年 ピュアモルト1990年代流通 43%

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GLEN ELG 
AGED 12 YEARS 
Pure Malt Scotch Whisky 
1990's 
750ml 43% 

グラス:国際規格テイスティング
時期:不明
場所:お酒の美術館 神田店
評価:★★★★★(5)

香り:ややドライでハイトーン。バニラや洋梨を思わせる麦芽の甘さに、カシューナッツ、青竹のような植物っぽさを伴うウッディさ。単調気味だが嫌みな要素は少ない。

味:香り同様にドライな麦芽風味。軽いスパイシーさとこちらも若竹のような青みがかったニュアンス。
余韻はクルミの薄皮を思わせるようなほろ苦さに、ウッディで微かにオーキーな華やかさが感じられる。

樽感はあまり強くなく、プレーンでやや癖のある麦芽風味が主体のピュアモルト。ディーンストンメインと言われても違和感はない。またそこに中性的なハイランド(あるいはスペイサイド)モルトを加えたような構成。決して悪くはないが、麦芽風味主体のなかでそれが分厚いわけでもない、ちょっと中途半端なボトル。ストレート以外にハイボールなどで。

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1990年、ディーンストン蒸留所を買収したバーンスチュワート社がリリースしたピュアモルト。先日紹介したグレンエルグ17年のスタンダードグレードに辺り、こちらは比較的多くのボトルがリユース市場で見られます。

構成原酒については不明ですが、まずこの風味、癖のある麦芽感はディーンストンでしょう。(あるいはタリバーディンとかそういうマイナーどころですが、繋がりがない。)
ディーンストン蒸留所は1982年に閉鎖されており、上記買収にともなって1年後に再稼働するわけですが。時期的には閉鎖前1980年前後の原酒を使い、そこに他社から調達した内陸の癖の少ないモルトを加えたものと推察
大半がブレンド用のモルトなのか、サードフィル以降のプレーンな樽で熟成していたのかと思えるくらいに樽感は淡く、プレーンオークで感じられるやや青みがかったようなニュアンスがドライな香味の中に備わっています。

数が多いことと中身が不明なこと、味も特別ななにかがあるわけではないため、プチオールドなジャンルに入るピュアモルトでありながら、そこまで価格が高等していないのも本リリースの特徴。まあ確かにこの辺買うならグレンフィディック12年の90年代とか買いますね(汗)。。。
特別悪くはないが、良くもない。結果特別選らばれる要素もない・・・不遇な子。ああ、こういう個性なんだと経験値にするか。
17年にあったような武器(シェリー感)が無いのが、辛いところですね。

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(グレンエルグ 17年 ピュアモルト。こちらも麦芽風味に癖があるというか、ひっかかりのある味わいだが、シェリー感がオールド好きの琴線に触れる要素を備えており、この点が強みである。レビューはこちら



バーンスチュワート 21年 ブレンデッドウイスキー 43% 1990年代流通

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BURN STWART 
BLENDED SCOTCH WHISKY 
Aged 21 years 
1990's 
750ml 43% 

グラス:不明
場所:お酒の美術館 池袋店
時期:開封直後
評価:★★★★(4)

香り:注ぎたてはドライであまり香りが開かないが、徐々にフローラルでパフューミーなアロマが支配的に。ポプリ、香水、乾いた麦芽とバニラの甘さ。

味:口当たりは水っぽく、薄いような印象があるがワンテンポ置いてフローラルな含み香。ややカラメル系の甘味と乾いた麦芽のほろ苦さ。フィニッシュはパフューミーでドライ、長く支配的に残る。

評価についてはもはや単純に好みの問題であり、基準点から加点することは出来ない。この手のフレーバーが大丈夫という方は問題なく楽しむことができるであろう、比較的モルティーでリッチな香味の広がりがある。ただ、それが自分にとっては苦手以外の何物でもない系統であったということである。


オールドブレンデッドを探求していると、こんな銘柄があったのかと思うボトルに関わっている率が高いと感じる一つがバーンスチュワート社。先日も同社がリリースしていた時代のグレンエルグをレビューしたところですが、今回のボトルもほぼ同時期、1990年代に同社が外部調達した原酒を使って作られたとされるブレンデッドです。

バーンスチュワート社は、1948年に創業した蒸留所を持たない零細的なブレンデッドメーカーですが、1988年に買収されて経営者が変わった後、拡張路線を辿ります。
具体的には
1990年 ディーンストン蒸留所
1993年 トバモリー蒸留所
2003年 ブナハーブン蒸留所
をそれぞれ取得。ディーンストンとトバモリーはウイスキー不況を受けて1982年に閉鎖されていた蒸留所であり、それを再稼働させての事業拡張です。

単に再稼働といっても、電源を入れ直せば動くというものではなく、設備の修繕や改修、人員の配置など金も時間も当然かかります。特に1993年からの10年間はトバモリーの再興に尽力したようで、蒸留所の大規模な改修やレダイグブランドの復活など、近年のブランドの基礎を作ったと言っても過言ではありません。
2003年のブラックボトルブランドと、ブナハーブン蒸留所をエドリントンから取得した際は、閉鎖されていた蒸留所という訳ではなかったものの、その後ブナハーブンは順調に販売量を伸ばして現在に至っています。
(バーンスチュワート社そのものは、2002年と2013年の買収によって、それぞれ親会社が変わっている。)

さて、今回のボトルの流通時期は、同社がディーンストンとトバモリーを取得したあたり。ですが、このブレンドのキーモルトはこのどちらでもないと考えられます。
なにせ、テイスティングの通りとてつもなくパフューミーな香味であるため。両蒸留所とも癖のある原酒を作りますが、該当するフレーバーが出ていたことはなく、テイスティング前のこのどちらかが使われているのでは。。。という期待は脆くも崩れたわけです。

流通時期を1995年前後と考えると、原酒の仕込みは1970年代前半。ボウモアにしてはピーティーさが乏しいので、旧エドリントンあたりからグレンタレットの原酒でも調達したのではないでしょうか。
構成は比較的モルティーで、モルト6:グレーン4くらいか。加水の影響か少し口当たりで水っぽさはありますが、香味の広がりはしっかりとしていて、麦芽系の風味もパフュームライクな中に感じられます。

ただ、社名を掲げたブレンドで、こういうフレーバーを出すというのは、もう好みの違いとしか言えません。
当時のバーンスチュワート社の経営陣とブレンダーは、このフレーバーが良いと判断したということなのですから。
好みと思う方、我こそはと思う方は是非どうぞ。昨年話題になった言葉を借りれば「挑戦する勇者を止めはしない」です。

グレンエルグ 17年 ピュアモルト 1990年代流通 43%

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GLEN ELG 
Pure Malt Scotch Whisky 
Aged 17 years 
1990's 
750ml 43% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:不明
場所:サンプル@BAR 1two3
評価:★★★★★★(6)

香り:ややドライだが、品の良い色濃い甘さ。キャラメリゼ、あるいはブラウンシュガーと強くはないがいくつかのダークフルーツが合わさったオールドシェリー香。奥には湿ったウッディさ、微かにクレヨンのようなニュアンスも。

味:香り同様のカラメル系のオールドシェリー感。デーツ、キャラメルプディング、合わせてオイリーで微かにオリーブオイルのような癖に加え、スパイシーな刺激も伴う。
余韻はほろ苦く中盤に感じられたスパイシーさ、麦芽風味の粉っぽさがじんわりと染み込む。

無名だがシェリー感に光るものがあるピュアモルト。かつてのシェリー樽原酒の代表的キャラクターの一つだった、カラメル系の風味が主体だが、ベース部分には癖のある麦芽風味もある。決して悪くない味付けなのだが、なにか引っ掛かりがある飲み口で、キーモルトのキャラクターが出ているように感じられる。加水すると余韻が不思議とドライ気味に振れるが、シェリー感のなかにオーク由来の華やかさが開き、引っ掛かりも薄まって異なる表情が楽しめる。

※本サンプルは、1年以上前にBAR 1two3のマスターと交換(ほぼプレゼントに近い)させていただいたモノでしたが、サンプルケースに仕舞ったまま忘却。棚卸しをしたところ発掘し、レビューさせていただきました。不義理をしてしまい、申し訳ございません。

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バーンスチュワート社が1990年代初頭にリリースしていたブレッドモルト。
蒸留所は不明ですが、ラベルにはハイランドのモルトウイスキー表記があり、実際目立ったピートフレーバーであるとか、ローランドの三回蒸留的な個性は感じられません。シェリー感のベースには個性的な麦芽風味がメインにあるウイスキーです。

同社は1988年からブレッドメーカーとして本格的な活動を開始しており、1990年にはディーンストン蒸留所を、1993年にはトバモリーを傘下としています。(ブナハーブンは2003年から傘下に移行。)
このボトルがリリースされた当時、バーンスチュワート社はディーンストンが主力蒸留所であり、じゃあ蒸留所はそこか。。。というのは早計。当時のオーナーはハイラムウォーカー社と繋がりがあり、同時期に該当蒸留所が無いピーティーなピュアモルト「グレンブレア12年」もリリースしているなど、手広く原酒を調達していた実績があります。

とは言え、酒質部分の癖というか麦芽風味は、ディーンストンと言われて納得な個性があり、一部使われているのは間違い無さそうです。
それこそ、この17年に感じられるシェリー感を伴うハイランドモルトバルクを、ハイラムウォーカー経由で調達し、ディーンストンの原酒とブレンドしてリリースしたとすれば違和感の無い話。当時はこういうGM系のカラメル味のある原酒が潤沢にあり、様々なリリースの共通項ともなっていました。

10年前なら珍しくもなかった香味構成ですが、今改めて飲むと懐かしさを覚える1ピースを備えているウイスキー。数は少ないですが、マイナー銘柄故に相場もそこまでではないので、この手の味わいを求めてる人にはオススメです。
また、同時期のグレンエルグは17年のほか12年、20年もリリースされています。12年はシェリー感は控えめで、ブラウンシュガー系の甘味にドライな麦芽風味。20年はまだ試せていませんが、12年→17年の傾向なら結構しっかりシェリー系かも?
いずれ試してみたいですね。


余談ですが、バーンスチュワート社は拡張路線をとりつつも、資金繰りには苦労していたという情報も残されています。グレンエルグブランドは1996年、エリザベス2世の70歳を祝う18年のシングルモルトがバーンスチュワート社ではなく、ジェームス・マクドナルド社からリリースされており、その前の時点でブランドを売却していたものと思われます。
そうすると、今回のラベルのグレンエルグは、数年単位でしかリリースされなかった、短命な銘柄だったようです。

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今日のオマケ:ストーム ワインズ フレダ ピノ・ノワール 2017

南アフリカのピノ。このワイナリーからは区画違いで異なるタイプのワインがリリースされており、先日飲んだ同ワイナリーの別銘柄(リッジ ピノ・ノワール)が開いてくると結構良かったので、じゃあもう一つのほうはどうだろうと、手頃な価格での巡り合わせがあったので1本手配してみました。

新世界のピノというと、一般的には熟した果実のような濃厚な甘酸っぱさ、パワフルな味わいのものがイメージされますが、ブルゴーニュ愛好家の作り手が醸すこのピノは、新世界っぽさは多少ありつつも、軸にある味わいはもろブルゴーニュ系統。
冷涼感がありつつも豊かな香り立ち。クリアな赤黒系果実、微かに土壌のアロマ。ラズベリーやブルーベリーのフルーティーさと存在感のある酸味、端整なタンニン。

リッジのほうは涼しい区画で作られた葡萄。フレダのほうは暖かい区画で作られているそうで、最初から親しみやすいバランスの違いはなるほどねと。
そういう意味で自分の経験値では、仏っぽさはリッジのほうがあると感じましたが、フレダも年によってはこんなのもあるんじゃない?なんて思ってしまうくらいの美味しいワインでした。

値段は通常6000円前後とそれなりですが、同じクオリティのワインをブルゴーニュで買おうと思うと、1.5倍くらいかかりますよという位置付けのようです。もうちょっとお手頃なら月1~2くらいで使うのに・・・。
ちなみにこのワイン、デミグラスソース系の煮込み料理との相性は抜群でした。

グレンブレア 12年 ピュアモルト 1990年代流通 43%

カテゴリ:
GLEN BLAIR
PURE MALT
12 Years old
1990's
750ml 40%

グラス:テイスティンググラス
時期:開封直後
場所:お酒の美術館 神田店
暫定評価:★★★★★★(6)(!)

香り:注ぎたては蜂蜜や麦芽風味を感じるが、合わせてしっかりとピーティーでスモーキーなニュアンスが開き、支配的になっていく。

味:口当たりはピーティーで、クリアな麦芽風味、干草、塩気、ドライな刺激、オイリーなコク、からスパイシーなフィニッシュへ。戻り香にはヨードや磯臭さもある。

樽感はそこまで強くないが、しっかりとしたコク、少し癖のあるハイランドタイプの麦感、島系のスモーキーさと特徴のあるモルトウイスキー。無名だがレベルの高い1本。こういうボトルがあるからオールド探求は面白い。


原酒不明のブレンデッドモルトですが、前述の通り若いなりに完成度の高さが光る通好みの銘柄。それも結構素性のいいモルトが使われているようで、その証拠に開封から1週間しないうち、来店したコアウイスキーラヴァー達に飲み尽くされてしまったのです。
もう1杯くらい飲みたかったなあ。。。

製造するバーンスチュワート社は、近年はブレンデッドウイスキー・ブラックボトルをリリースするメーカーとして、ウイスキー好きな方なら一度は聞いたことがあるかもしれません。
ただ、それは2003年からのこと。このグレンブレアがリリースされた1990年代初頭は規模を拡張しようと動いていた時期にあたり、所有蒸留所はまだディーンストンのみ。1993年に休止中だったトバモリー蒸留所を買収し、2003年にブナハーブン、そしてブラックボトルの版権も手中に収めたという流れです。

さて、これでこのグレンブレアがオイリーさのある麦芽風味主体のウイスキーなら、はいはいディーンストンねと、なんの違和感もなかったのですが。。。その構成は島要素7、ディーンストンっぽい癖を含むハイランド要素3といった具合。テイスティングの通りスモーキーでピーティー、強いアイラ要素が前面に感じられます。
ディーンストンでもトバモリーでもない(ヘビーピートなレダイグの蒸留は2007年から)、いったいなんの原酒が使われているのかが最大の謎でした。

キャラクター的にはちょっとクリアでピーティーで、酒質はオイリーさがあってスパイシー。ブナやラディはまずありえないし、キャラ的にボウモアでもラフロイグでもなく、1980年前後の蒸留からアードベッグも困難。ラガヴーリンが他のグループ企業に提供されているとは思えず、あるとすればカリラでしょうか。
現時点でこのうちから絞り込むに足る、確たる情報はないのですが、味からぱっと連想したのはタリスカー。個人的にはカリラよりタリスカーと思える香味なのです。

調べて見ると、トバモリーとタリスカーは薄いながら繋がりがあるようで、ひょっとすると原酒の融通もあるかも。
またもう一つが、バーンスチュワート社は会長が元ハイラムウォーカー社のマネージャーだったようで、この繋がりで良質な原酒を手に入れたか。。。
しかしまあ何と言っても美味しいピーティーなモルトで、オークションで無名銘柄相応の価格に落ち着くなら、普通に3本は購入したいと考えたのは、率直な評価です。

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