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アマハガン ハンドフィル 蒸溜所限定品 62% ”Recommend for Highball”

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amahagan_handfill

AMAHAGAN 
World Blended 
Edition Hand-filled 
”Recommend for Highball”
Cask type Sherry 
Bottled 2022 
500ml 62% 

評価:★★★★★(5)

香り:ツンとして鼻腔に強い刺激を伴うクリアなトップノート。薄めたキャラメル、焦げたオーク、ほのかにドライプルーンのような甘さも感じられる。

味:香り同様にピリピリとした刺激が口内にありつつ、味はしっかりと樽由来の甘み、ケミカルな要素があり、焦げたキャラメルのほろ苦さ、ほのかにグラッシーでニッキのようなスパイシーさが余韻に繋がる。

蒸留所限定ブレンドの一つ。ブレンドの主体は5年程度と思われる若い内陸原酒で、香味とも刺激は残るが、それ以外に樽や原料由来の甘さ、ウッデイネス、各種フレーバーはそう悪いものではなく、未熟香もほぼ感じられない。そのため、推奨されているハイボールにするときれいに伸びて、軽やかな飲み口からチャーした樽の風味をアクセントに、余韻にかけてドライフルーツの甘みが程よく感じられる。
何より購入までの行程で楽しめる、エンターテイメントとしての魅力が素晴らしい。各クラフトもこうした取り組みをもっと実施してほしい。

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長濱蒸溜所で販売されている、蒸留所来訪者向けのオリジナルAMAHAGAN(アマハガン)。
アマハガンについての説明は不要かと思いますので割愛しますが、既製品のそれと異なるレシピでブレンドしたものをオクタブサイズのカスクに詰め、蒸留所内で追加熟成している商品です。
今回、ウイスキー仲間からお土産としていただいたのでレビューを掲載します。

ロットや原酒の切り替わりで名称も変わっていますが、今回のは”Recommend for Highball”
ベースとなるブレンドは、比較的若い輸入モルト原酒に長濱のモルトをバッティングし、プレーンでアタックが強く、それでいて品の良いフルーティーさを感じる構成。ストレートだとアタックが多少強く感じられますが、ロックやハイボールなら、そうした刺激が落ち着いて穏やかに楽しめるというレシピとなっています。

また、そのブレンドをオクタブのシェリーカスクで追加熟成。シェリーカスクというと色合いの濃さと香味への強い影響を予想されるかもしれませんが、樽事態はそれなりに使い古されているので、リチャーした樽材由来の香ばしく焦げたようなウッディさがある反面、シェリー樽でイメージする感じは前面に出ない、程よく付与された仕上がりとなっています。

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このシリーズの面白いところは、単に蒸留所限定品というだけではなく、その購入方法、手順にあります。

元々スコットランドの蒸溜所では、ハンドフィル、またの名をバリンチとして、蒸留所のビジターセンターで購入者が樽から直接ボトリングし、蒸留所限定のウイスキーを購入できるシステムがあります。
そのシステムを、日本の酒税法下でできる範囲で踏襲したのが、このAMAHAGAN Hand Filledになります。
写真付きで購入までの流れを紹介していきます。

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①購入希望者は蒸溜所側の購入履歴ノート、ラベルにその日の日付、購入者の名前等を記載。

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②500mlのボトルに樽から直接ウイスキーを詰める。

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③最後に、ラベルを貼って、キャップに封をして、お買い上げ。

というのが一連の流れ。
既に課税した限定ウイスキーが樽に詰められていて、それを量り売りで販売しているということではあるのですが、記帳、ラベルサイン、ボトリングという本来済ませておける作業、実施する必要のない管理(記帳)を、あえて購入時にお客さんの手で行うことで、特別感が得られるのです。
だって、蒸留所を見学しにきて、そこのオリジナルウイスキーがあるだけでも嬉しいのに、一連の流れを経験したなんて、普通に楽しすぎるでしょう。まさにエンターテイメントです。

なお、樽の中身は完全に払い出さず、少量残った状態で次のロットやレシピに加えている、所謂ソレラシステム的な運用がされており、ウナギのたれのように徐々に味わいが複雑に、奥行きを持っていくことも期待できます。
長濱蒸留所でハンドフィルの販売が始まったのは2020年あたりから。そこから何度もロットが切り替わる息の長い企画となっており、その成長や限定レシピの登場がファンの間では蒸留所訪問時の楽しみの一つとなっています。
中には成熟したハンドフィルを買うために、定期的に蒸留所を訪れる猛者もいるそうです。

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(ブレンドの熟成状態を確認する屋久ブレンダー。今回のロットが終わりそうなので、次のブレンドをどうしようか…とレシピを模索されている。Photo by C)

現在、日本各地にウイスキー蒸留所が創業し、その数は将来60カ所を超えるとも言われています。
そんな中で、大きくはピートの有無、樽感の違いでしか味わいに変化をつけることが出来ないウイスキーは、香味だけで60種類も明確な違いや注目されるブランドを作れるかと言ったら、それはかなり難しいと考えます。

勿論そうした努力は必要で、高品質でこだわりのウイスキーを作るという1点でブランドを確立できれば良いですが。
例えば地域観光と結びつけるローカル色や、体験型のエンターテイメント色、あるいは横のつながりで他のメーカーとの連携など、ウイスキーの味以外で愛好家を惹きつける取り組みが今後一層必要になってくるのではないかと思います。
値段と香味は大体同じだったら、あるいは多少高くても、買うのは思い入れがあるところ。となるのが人(オタ)の心情というものです。

その点、長濱蒸留所は本当にそこを上手く掴んでくるんですよね。
社長がアイディアマンで、良いと思ったものはガンガン取り込む、意思決定から実行までがめちゃくちゃ早いというのもあります。このハンドフィルだけでなく、先日の長濱フェスもまさにその一例です。あれの企画って動き出したの。。。(ry
現場はめちゃくちゃ大変だと思いますが、でもそれは間違いなくファン獲得につながって、ブランド向上につながって、5年後、10年後の自分達を後押しする原動力になるのです。
長濱蒸留所だけでなく、多くのクラフト蒸留所でウイスキー以外の要素も含めて様々なアイデアが実行されて、愛好家を増やしてくれれば良いなと思います。

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オマケ:7月17日(日)、社長の企画思いつきで開催された長濱ウイスキーフェスでは、蒸留所前でひたすら焼き鳥を焼く同氏の姿があり。イベント後は各社との繋がりや原酒調達のため、スコットランドに旅立ったという。改めて記載すると、同氏は長濱浪漫ビールの社長であり、全国規模の酒販店リカーマウンテンの社長でもある。

三郎丸 ハンドフィル 3年 #275 レビュー& 三郎丸Ⅰ マジシャン リリース情報

カテゴリ:
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SABUROMARU 
HAND FILLED 
Single Malt Japanese Whisky 
Aged 3 years 
Distilled 2017 
Bottled 2021 
Cask type Bourbon Barrel #275 
700ml 63% 

評価:★★★★★★(6)

香り:メンソールのように爽やかな刺激のあるアルコールのトップノート。合わせてスモーキーで、徐々に麦芽由来の甘みとバーボンオークのバニラ、グレープフルーツとオレンジ、粘性をイメージする質感の中にハーブ香のアクセント。時間経過で消毒液のようなアロマも混じる。

味:オイリーでコクのあるどっしりとした口当たり。香りに反して度数ほどの強さは感じず、野焼きや焚火の後のスモーキーさを連想させる含み香に、合わせて香り同様の柑橘感とほろ苦さ、バーボンオークのアクセント。余韻はピーティーでビター、ここでアルコールの高さが口内に広がり、ジンジンとした刺激を伴いつつ、長く続く。

蒸留所のハウススタイルの良い部分が強調されつつも、若さゆえ粗削りな面もある。まさに原石のウイスキー。少量加水するとアルコール感がやわらぎ、スモーキーさ、麦芽由来の甘みが感じやすくなる。ヨード系のフレーバーは無いが、もとより”偉大な巨人”を彷彿とさせる質感があったところ。このカスクはバーボン樽由来のフレーバーとオイリーな酒質の組み合わせが、ボウモアを彷彿とさせるキャラクターとしても感じられる。果たしてこの原石は磨かれていくことでどのような輝きを放つだろうか。

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三郎丸蒸留所で、来場者向けに販売されていた限定品。2017年の仕込みの原酒の中で、一番の出来と言われている1樽です。
ハンドフィルは別名バリンチとも言われ、来場者がビジターセンターで樽からボトルに直詰めして購入するシステムが最大の魅力ですが、日本では酒税法の関係から、そのシステムを導入している蒸留所はほとんどありません。
このリリースも既にボトリングされた状態で販売されているため、日によって熟成が進んで味が違う、と言うものではありませんが、基本的には蒸留所に行かなければ購入できない、まさに三郎丸蒸留所ファンのためのアイテムとなっています。※一部は同社酒販サイトALCで限定販売されていました。

蒸留所のマネージャーである稲垣さんは、地元とファン(愛好家)との繋がりを大事にしていきたいと常々語られており、イベントの開催等厳しい状況下であっても、ファンのために出来ることを考えて、実行に移しています。
このハンドフィルボトルについても、自身だけでなく某有名ブレンダーから2017年のベストだと評価された原酒を使用したことに、その姿勢が表れていると感じます。

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リリースの前置きというか原酒の位置づけ紹介はこのくらいにして、中身について。どの点が素晴らしい樽だったのかと言うと、2017年の仕込みの原酒にあるネガティブなフレーバーの少なさに加え、三郎丸らしいコクと厚み、ややオイリーさのある味わいが、バーボン樽由来のフルーティーさを伴ってはっきりと感じられるところだと考えています。

2017年仕込みの三郎丸は、マッシュタン等旧時代の設備を引き継いでいるため、酒質にぼやけたところがあり、それがオイリーな質感となって2018年以降に比べて強く感じられる特徴があります。
また、旧時代の設備の影響から、先にリリースされた三郎丸0等では、その質感の中に青っぽさというか、硫黄系のニューポッティーなフレーバーが混じり、良い部分と悪い部分が混ざり合っているのが特徴でもありました。

該当するオフフレーバーは仕込みの調整と、設備の更なるリニューアルによって2018年にはほぼ消えていくことになるのですが、カスクナンバーから推察するに、#275はおそらく2017年の仕込みの最後のほうのロットだったのでしょう。若く、はつらつとした香味構成は3年少々という熟成期間からすれば当たり前で、粗削りな部分は否めないものの、三郎丸の2017年と2018年の間を繋ぐキャラクターとも言える、次の年への期待が高まる1本だと言えます。

なお、個人的に同リリースにはもう一つ惹かれる要素があり、それは昨年リリースさせて頂いたGLEN MUSCLE No,3とNo,5に使われたキーモルト、#274の隣樽でもあったことです。
#274は2.5年でボトリングしたため、一層パワフルな個性に仕上がっていましたが、飲み比べると共通する要素があり、良い原酒を使わせてもらえたんだなと、改めて稲垣さんの心意気に感謝した次第です。
リリースから少し時間が経っており、飲めるところはBAR等飲食店に限られるため、現在の状況では中々飲みに行くのも難しいかもしれませんが、三郎丸ファンは是非テイスティングしてみてください。

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さて、話は次のテーマへ。先日同蒸留所が毎年販売している、1口カスクオーナー制度のオーナー向けの蒸留所見学会が開催されたところ。その場で三郎丸0 "THE FOOL"に続くシングルモルトリリース、三郎丸Ⅰ "THE MAGICIAN"が発表されました。(当方は参加しておりませんが、情報を頂きました。)

三郎丸Ⅰは、2018年仕込みの1st fillバーボン樽熟成原酒のみを使った3年熟成のウイスキー。
スペックとしては、昨年リリースされた三郎丸0と蒸溜年以外は同じということになりますが、三郎丸蒸留所は2017年から2018年にかけて、マッシュタンを三宅製作所にオーダーしたものと交換したことで、酒質にも変化が生じています。
具体的には、旧世代の残滓と言えるオフフレーバーが減り、麦芽風味でぼやけていた部分の骨格がはっきりと、特に柑橘系を思わせる要素とピートフレーバーが際立つようになるなど、その香味に衝撃を受けたのが2018年のニューメイクです。※当ブログレビュー記事はこちら

ゼロからイチへ。ラベルに書かれたカード「MAGICIAN(正位置)」は、新しい一歩を示す意味があるそうです。あえて昨年のリリースと同じスペックにしているのは、蒸留所の進化を感じてほしいから、という狙いが見えてきます。
リリース単体に対して昨年以上の完成度の期待もさることながら、いよいよここから三郎丸蒸留所の新しい世代が始まるのだと、初号機の起動(リリース)が今から楽しみです。
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グレンオード 11年 2008-2019 ハンドボトル 54.8% 蒸留所限定

カテゴリ:
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SINGLETON GLEN ORD 
HAND BOTTLED 
Aged 11 years 
Distilled 2008 
Bottled 2019 
700ml 54.8% 

グラス:木村硝子テイスティング
時期:不明
場所:自宅@サンプル
評価:★★★★★★(6)

香り:ほのかに青みがかったニュアンスのある、スパイシーでドライな香り立ち。乾燥した木材、食パンの白い部分、微かにバニラを思わせる甘さも感じられる。

味:とろみのあるオークフレーバーと麦芽風味。すりおろした林檎を思わせる柔らかく品のいい甘味から、乾いたウッディネス。じわじわとハイトーンな刺激が余韻にかけて広がり、スパイシーなフィニッシュが長く続く。

オードらしい麦芽風味と、アタックの強さが主体である1本。樽はリフィルバーボンあたりか、あまり強く出ておらず、オードらしい麦芽風味を後押ししている。これが逆にファーストフィルバーボンの華やかさバリバリだったら逆に興冷めだった。若い原酒なので相応に粗さはあるが、蒸留所限定として充分なクオリティを備えたグッドリリース。

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オード蒸留所で実施することが出来る、ハンドフィルボトル。昨年参加させてもらった持ち寄り会後のサンプル交換の場で少量頂きました。Kさん、ありがとうございます。

グレンオードは元々ハイランドらしいキャラクター直系とも言える、牧歌的な麦芽風味と厚みのある酒質が個性であり、魅力でしたが、近年(シングルトンブランドになってからは特に)その魅力に陰りが出ていると感じていました。

そもそもこの手の麦芽風味をメインとする蒸留所は、スコッチウイスキー業界全体で原料や製法などの効率化から原酒のライト化が進む中、魅力であった麦芽風味や原酒のコクが弱くなったことで苦境に立たされているといっても過言ではありません。
バーボンバレルで10年では若すぎる。しかし20年熟成すると樽がメインになり、それなりに仕上がるけれどブームに乗ったファッションのようで、どこを見ても同じようなキャラクターに埋もれてしまうのです。(その点、最近話題のスペシャルリリース18年も上手く作ってあると言えます。)

個性に面白さや独自色を求めるのは一部の愛好家に限られるため、大多数を対象とするスタンダードリリースや、そうしたブレンドの構成原酒とするにあたっては、突き抜けたキャラクターは不要という考え方も理解できます。
ですが、蒸留所で購入するような限定ボトルは、その個性を追求してほしい。今回のボトルは粗削りながら原点回帰というか先祖返りというか、オードらしい魅力がメインに備わったタイプで、思わず笑顔になる1杯でした。

なお、写真ではラベルが逆さに貼られていますが、これはボトルを詰めてきてくれた人の好みというか、ユーザー側でラベルを張れることをメッセージにするため、あえて逆さに貼っているのだそうです。いずれにせよ、味のある外観ですね。

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グレンオード蒸留所のハンドフィル。購入時に専用の装置で一つ一つ払いだされるため、実体験者曰く結構手間らしいw
この樽はWhiskybaseでの拾い物画像なので、今回のものとはロット違いか、度数が異なる。それにしてもRe-juvinatedとはどういう意味なのか。。。

ボウモア 22年 1995-2018 ハンドフィル ♯1304 48.1%

カテゴリ:
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BOWMORE 
HAND FILLED 
Aged 22 years 
Distilled 1995
Bottled 2018 
Cask type Bourbon Barrel #1304 
700ml 48.1% 

グラス:木村硝子テイスティング
時期:開封後1年程度
評価:★★★★★★★(7)

香り:シトラスやグレープフルーツの綿を思わせる柑橘系の爽やかでほろ苦いフルーティーさと、バニラや蒸かした栗のようなオーキーな甘み、スモーキーで微かに焦げ香、塩素、消毒薬を思わせるアクセント。

味:オイリーでとろりとした粘性のある口当たり。香り同様の柑橘系フレーバーと、熟した南国果実の魅惑的なフルーティーさ。魚介出汁のスープ。徐々にウッディでオーキー、島系要素を伴うピーティーさに、柑橘の綿や皮のほろ苦く爽やかなフレーバーがアクセントとなって余韻で長く続く。

近年希少となった90年代前半のボウモアの良い部分がしっかりと感じられる素晴らしいボトル。グレープフルーツなどの柑橘にトロピカルフルーツ、強いピート、そして全体的にフレーバーが厚く紙っぽさを感じさせない作りも、この時代の特徴と言える。少量加水すると爽やかな柑橘系のアロマ、樽由来のフルーティーさが開くような変化があり、長く時間をかけて楽しめる。ハイボールも良好。

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今さら感はありますが、昨年旨いボトルと話題になった、ボウモア蒸留所のハンドフィル。やはり90年代のボウモアはバーボン樽との相性が良いと感じる仕上がりです。
同じハンドフィルで見られるこってこてのシェリー系より、バーボン樽のほうが酒質がもつ要素を後押ししており、個人的に好ましいボトルが多いように感じます。

その好ましさの代表格が特有の南国感ですね。60年代ボウモアとの共通項とも語られる要素ですが、90年代のほうが柑橘系のニュアンス、グレープフルーツの綿のようなほろ苦さが強く、そこにピートや出汁感、そしてフェロモンを思わせる南国系のアクセントがアメリカンオークのオーキーなフレーバーと融合することで後押しされルように感じます。
アメリカンオークのシーズニングシェリー樽ではなく、バーボンバレルやホグスヘッドのほうが、オーキーさが強く出る傾向があるため、良さが際立つというか後押しされるというわけです。

今回のボトルは度数が50%を下回っているため早飲みタイプだと思いますが、基本的に酒精の強い長寿なボトルが多く、あと20年も瓶内熟成したらどうなるか。。。将来的に楽しみなビンテージでもあります。
フルーティーさで言えば1990年代後半も悪くないですし、2000年代も良いものはあります。ただ徐々に酒質が軽くなっていくのも特徴で、総じてフレーバーの複雑さと厚みがなくなって紙っぽさがでてくる傾向は否めない。
今回のテイスティングで、久しぶりに90年代の旨いボウモアを飲んで、当時の良さを再認識させてもらいました。

グレンドロナック ハンドフィル 25年 1993-2018 蒸留所限定 57.7%

カテゴリ:
GLENDRONACH
HAND-FILLED
Aged 25 years
Distilled 1993
Bottled 2018
Cask type Sherry Butt #698
700ml 57.7%

グラス:
場所:BAR ミズナラカスク (水楢佳寿久)
時期:開封後半年程度
暫定評価:★★★★★★(6)

【ブラインドテイスティング回答】
地域:スペイサイド
蒸留所:モートラック
熟成:20年程度
蒸留時期:1980年代後半~1990年頃
樽:シェリーバット・スパニッシュオーク
度数:58%程度

香り:ドライでスパイシー、ドライプルーンなどのダークフルーツ、香木やハーブのアクセント、かすかに黒蜜を思わせる甘酸っぱく濃厚なシェリー香。

味:パワフルで濃厚、しっかりとした酒質で余韻にかけてスパイシーな刺激も感じられるが、どこかこなれたような印象を受ける口当たりでもある。
余韻はビターで湿ったようなウッディネス、カカオチョコレートにベリーや黒葡萄、ハイトーンで長く続く余韻。

おそらくスパニッシュオークのシェリーカスクで、近年系シェリーの中でも評価されているタイプの香味が備わっている。十分美味しいのだが、もう少し甘みというか果実味が該当する香味に備わっていれば、さらに上の評価をつけていた。ストレートまたは少量加水で。


BARミズナラカスクにて、オーナーの篠崎さんが現地蒸留所にて購入されてきた、バリンチ(ハンドフィル)ボトル。何杯か飲んだ後で、最後の1杯に「ちょっとブラインドでもやってみます?」として出題いただいたものです。

シェリー感は所謂シガーモルトタイプ。テイスティングの通り強い酒質があり、かつ比較的涼しい場所にある内陸系の蒸留所で思い浮かんだのが、グレンファークラスやモートラック。どっちかと言えばモートラックかなぁという感じでしたが、該当する蒸留時期でグレンドロナックが出てこなかったのは不覚でしたね。。。 

一方で、口当たりには経年変化に近いようなこなれた印象もあり、熟成というよりボトリングから数年単位で時間が経ったのではないかと予想しましたが、思いっきり近年ボトルでした。
その違いはスペックを効いて納得。グレンドロナックのハンドフィルは、一度樽から払い出した原酒を90リットル程度のハンドフィル用のカスクに移し、そこから購入希望者が詰める形式で販売されています。
そのため、通常のボトリング行程と比較して空気に触れやすい環境にあることが、今回のようなこなれた印象に繋がったのかもしれません。

glendronach-hand-filled-visitor
(グレンドロナック蒸留所、ビジターセンターでのハンドフィル風景。購入者がラベルにサインし、ボトリングが行われる。画像引用:Peated perfection

ブラインドテイスティングの回答としては、樽と度数しか合致しておらず、それ以外は誤差の多い結果になってしまいましたが、誤認した部分と整合性の取れる理由もありましたので、納得のいく結果でもありました。何より、現地で購入された貴重なボトルのテイスティング機会を頂き感謝です。

それにしてもこういうスタイルのハンドフィルはまさに限定品という感じで、ロマンがありますよね。法律の問題などあるのだと思いますが(確か瓶詰め専用の部屋が必要とか)、現在日本の蒸留所で同じスタイルのハンドフィルの販売を行っているところはなく、あるのは酒屋の量り売りくらい・・・。
大手は難しいと思いますが、原酒の量がある程度確保できた数年後、クラフトディスティラリーなどはこうした試みを行っていただけないかなと思っています。

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