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グレンモーレンジ 18年 1990-2000年代流通 43%

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GLENMORANGIE 
YEARS 18 OLD 
SINGLE HIGHLAND RARE MALT SCOTCH WHISKY 
1990-2000’s 
750ml 43% 

評価:★★★★★★(6)

香り:甘やかで柔らかい香り立ち。ブラウンシュガー、キャラメル、微かにみたらしの要素も混じる色濃い甘さ。合わせて牧草、麦芽香もしっかりと感じられる。

味:香り同様に柔らかくしっとりとした口当たり。まずはシェリー樽熟成を思わせる色濃い甘さ、キャラメルや微かにダークフルーツ。そしてやや野暮ったさに通じる麦芽風味、バニラやパン生地の甘さ、徐々にほろ苦くビターなウッディネス。

現行18年の華やかさとも、1世代前の90年代初頭流通の陶酔感伴うシェリー系18年(写真下)とも異なる、2000年前後の緩やかで甘やか、そして少し植物感などが混じる野暮ったさ、牧歌的な麦芽風味の混じる癒し系。
洗練されても突き抜けてもいないがそれが良い、どこか安心感を感じてしまう、この流通時期らしいモーレンジの個性を味わえる1本。

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初めて飲んだというわけではなく、今まで何度も飲んでいるボトルですが、レビューしていなかったので掲載します。

バーボン樽や麦芽風味のフレーバーがメインにある10年と加えて、シェリー樽熟成原酒の要素を感じられるのが、1990年からリリースを開始したとされるグレンモーレンジ18年です。
ただ同じ18年といっても、時代によってフレーバーの方向性は変わっており、今回はその点を少し掘り下げていきます。

現行品の18年は、シェリー樽原酒こそ使われているものの役割は全体に厚みを出す程度。現行18年の象徴とも言える、ラグジュアリーな華やかさは、バーボン樽熟成原酒の役割となっています。
一方で、1990年のリリース当初の18年は、シェリー樽原酒の個性が強く出て、そのクオリティはまさに黄金時代。甘やかでフルーティーで艶やかで…陶酔感を感じさせるもの。
どちらのボトルもその流通時期を俯瞰して、ハイレベルな1本であることは間違いありません。

そして今回紹介する1990年代後半から2000年代流通のグレンモーレンジ18年は、属性としてはそのどちらにも属さない。
シェリー樽原酒は60−70年代の黄金時代とは言いがたく、バーボン樽原酒は近年の市場を抑えた華やかでフルーティーさを全面に出せるようなものでもない。この時期のグレンモーレンジらしい野暮ったさのある麦芽風味を主体として、華やかでもフルーティーでもない、甘やかさとウッディさが備わった味わいが特徴です。

シングルモルトウイスキー市場は2000年代以降に本格的に拡大してきた歴史があり、いわばそこまでは、どんな味わいが市場で評価されるのか各社手探り状態だったところ。シェリー樽の色濃い甘さやダークフルーツを思わせる果実感。バーボン樽の華やかで黄色系のフルーティーさを思わせるオークフレーバー。そしてトロピカルフルーツ。
この辺を意識して各社がリリースをし出したのは、まさに最近なんですよね。

そうした歴史から、今回のグレンモーレンジ18年は、ブレンデッドウイスキー全盛期からの過渡期の1本。18年だけでなく、同時期の10年も妙に野暮ったいフレーバーが目立つ構成となっています。
ただ、この野暮ったさが完全に悪かというと決してそうではないんです。都会に住んでいると田舎の空気に心が安らぐ瞬間があるような、洗練されていないものに味を感じるというか。。。
何れにせよ、今のウイスキーにはない魅力を持った1本であると言えます。

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今回のレビューアイテムは、御徒町にオープンした「リカースペース榊」でテイスティングしました。
チャージ2000円と、通常のBARに比べると高額なように感じますが、無料で飲めるボトルに加え、このモーレンジが1杯●00円など、基本的には原価に近い価格で提供。
また、強い匂いを出さないフードは持ち込み自由など、フリーな感じも面白い。
色々飲んで勉強してみたい方、おすすめのBARです。

ロッホローモンド クラシック シングルモルト 40%

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LOCH LOMOND 
CLASSIC 
SINGLE MALT SCOTCH WHISKY 
700ml 40% 

評価:★★★★★★(6)

香り:硬さの残る麦芽香とすりおろした林檎、蜂蜜、ほのかにオーキーな華やかさがアクセント。基本的に品良くバランスの良い構成で、奥にはパイナップルや柑橘を思わせるフルーティーな要素も感じられる。強くはないが好ましい香り立ちである一方で、時間経過で単調気味になっていくなど、平均熟成年数の若さを感じさせる要素もある。

味: スムーズだがオイリーで厚みのある口当たり。蜂蜜を思わせる甘さに、オレンジシロップや黄色系のケミカルなフルーティーさ。後半にかけて軽やかな刺激があり、余韻はビターでほのかにスモーキー。じわじわとピートとウッディなほろ苦さが広がり、フルーティーな甘さと混じちぇいい意味での複雑さが長く続く。

香味に好ましいフルーティーさがあり、微かなピートが全体を引き締めて、フレーバーのバランスも良好。40%加水モルトの平均的なそれより厚み、飲み応えを感じられ、これでエントリーグレードクラスのNASかと驚かされる。
一方で時間経過やハイボールにすると樽由来の要素が弱まるのか、ややドライ寄りの変化。麦芽由来の風味と仄かなピートスモークで、食中酒や暑い時期に飲むには丁度いい。
いずれにせよ、ロッホローモンドだからと偏見を持っていた時代は遥か遠く、価格的にも内容的にも使い勝手の良いシングルモルトである。

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最近のスコッチモルトの中で、年々酒質が向上し、ラベルチェンジもいい方向に作用していると感じる数少ない事例。ロッホローモンド蒸留所のエントリーグレードであるクラシックが、今回のレビューアイテムです。

ロッホローモンド蒸留所の酒質にいつから変化があったか、それはこれまで度々レビューで触れているので割愛しますが、2000年代前半と考えられます。
では、流通しているオフィシャルボトルの変化についてはどうか。以前、青色にメタリックカラーでクラシックと表記されていた、2015年前後流通のロットはグラッシーで癖の強さが目立っており、悪くはないけど良くもないというか、まさに文字通り”クラシック”なロッホローモンドスタイルが残っていたのです。

一方、当時からインチマリン12年には好ましいフルーティーさが強く「ロッホローモンド良くなったんじゃない?」と、徐々に愛好家の評価を変えていったところ。
その後2020年~2021年にかけて、ロッホローモンドは3ブランドあった全てのオフィシャルリリースを、以下の写真のようにロッホローモンド・XXXXXXに統一。日本市場での評価がどこまで反映されたかはわかりませんが、香味の傾向は全て同じフルーティーベースになり、蒸留所としてこうあろうという方向性、新しいハウススタイルを感じさせてくれます。

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※ロッホローモンドは、ピーティーなインチモーン、フルーティーさ重視のインチマリン、そしてバランスをとったロッホローモンドとで整理されている。NAS製品は12年クラスに比べると麦芽風味の硬さ、プレーンさが目立つ傾向はあるが、バランスは悪くなく、上述3銘柄に共通する個性を楽しめる。

今回テイスティングレビューしたクラシックも同様に、市場のトレンドを押さえた、21世紀のロッホローモンドのフレーバー構成が特徴。
原酒としては5〜12年クラスの若いものからスタンダードなクラスまで、広く使っているようで。熟成したモルトのフルーティーさと若い麦感が程よく合わさった構成。
ともすると、他銘柄だと口当たりのオイリーさ、とろりとした要素がしつこく感じられることがある一方で、このクラシックは後半から余韻にかけての軽い刺激と苦味が、それを引き締めてくれています。

樽はバーボン樽、アメリカンオークがメインと思われる構成。ただ、ほのかにシェリー樽を思わせるようなコクのある甘み、オレンジ系のフレーバーがいい仕事をしていて、ホグスヘッドやバットも繋ぎとして使われているように感じます。
またロッホローモンドは蒸留所敷地内に樽整備工場も備えており、余韻にかけて感じるほろ苦さ、ビターなウッディネスは、同工場で整備したリチャー樽由来ではないかとも思われます。

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なんというか、普通エントリーグレードのボトルって、ストレートで飲むとあまり触れられるところが少なくて、ハイボールに逃げて終わりってことも少なからずあるんですが…。このボトルはストレートでも見るところが多く、普通に楽しめます。
公式サイトに書かれている「ノンヴィンテージながら非常にエレガントでフルボディな味わい」も、あながち言い過ぎではないなと。ちょっとハリボテ感があるようにも感じますが、この価格帯ならもう十分でしょう。

ただ、ハイボールについてはレビューの通りドライ寄りに変化しちゃうので、個人的にはもう少し甘みやコクが欲しかったところ…最後にちょっとしたアレンジを紹介。
ロッホローモンド蒸留所は連続式蒸留機としてカフェスチルを導入しており、グレーンも自前で蒸留している、スコットランドでも数少ない蒸留所です。

そうして作られたグレーンは、シングルブレンデッドとしてシグネチャーに活用されるだけでなく、ノンピートグレーン、そして世にも珍しいピーテッドグレーンの2種類が、それぞれシングルグレーンとしてリリースされており・・・。
単体でもメローで適度な熟成感もある、美味しいグレーンですが、クラシックモルト6、シングルグレーン4くらいでブレンドしてハイボールにすると、これがいい具合に甘さとコクが出て、フルーティーさも底上げしてくれるのです。
どちらも、3000円前後、2本で6000円くらい。下手な限定品を買うより断然楽しめる組み合わせだと思います。

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余談:以上、ロッホローモンド・クラシックのレビューでした。が、記事を書くにあたって公式サイトを見たらですね、なんか、また、ラベル変わってませんかね(笑)。
この前変えたばかりなのに。。。ただ冒頭述べたように、近年のロッホローモンド銘柄はラベルチェンジの度に原酒が代替わりしてクオリティを上げてきましたので、今回のラベルチェンジにも期待しています。

シークレットハイランドモルト 30年 48% GLEN MUSCLE No,7 Episode 3/3 

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SECRET HIGHLAND MALT 
SCOTCH WHISKY (SINGLE MALT)
Aged 30 years old 
Distilled 1990 
GLEN MUSCLE No,7 Episode 3/3
For Whisky Lovers & Drinkers, Blinded by Fear 10th Anniversary
700ml 48% 

香り:ブラウンシリアルのような香ばしいモルティーさとナッツ、乾いた牧草、じわじわと熟成由来の甘くオーキーな樽香、古びた家具。オレンジ果汁やバルサミコ酢のような甘みと重みのある酸も伴う複雑なアロマ。

味:口当たりはオイリーで粘性があり、どっしりとしている。合わせて乾いた紙っぽさとシリアル。樽由来の要素はほのかなシェリー要素と度数落ちの華やかさ、ナッツ、軽くスパイスを伴う。
余韻はカカオ多めのチョコレートを食べた後のようなほろ苦さ、しっとりとした中にピリピリとした舌への刺激を伴って長く続く。

複雑で個性的。近年多く見られるバーボン樽でプレーンな酒質を熟成して華やかキラキラ系に仕上げた、ある種現行品のトレンドとは異なる方向性。2ndフィルあたりのシェリーバットで長期熟成したのか、ほのかなシェリー感、オーキーな熟成香、ビターなウッディネスと複雑な要素が感じられる。
時間経過で香りのほうは華やかさ、樽香優位となり、好ましい要素が強くなってくる。香味とも個性と樽感が濃縮した状況であり、加水するとそれが綺麗に伸びる。好みは分かれるだろうが、短期熟成原酒では出てこない奥行き、スケールが感じられる1杯。

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GLEN MUSCLE No,7 シリーズ3部作の最終リリース。そして最終リリース。
ブランドについての説明は…もう不要でしょう。間に厚岸ブレンデッドのNo,8が入ったため順番が前後していますが、昨年6月に長濱蒸溜所からリリースされたNo,7 Episode1/3 Blended Whisky 3 to 30 yearsの構成原酒の1つであり、表記されている最長熟のモルトウイスキーです。

当時の経緯や狙い等については過去記事を参照いただくとして、このブレンデッドウイスキーNo,7 Episode1/3では
・長濱蒸留所で蒸留、3年熟成を経たピーテッドモルトジャパニーズウイスキー
・スコットランドから調達して20年熟成のグレーンウイスキー
・スコットランド産の10年〜30年熟成のモルトウイスキー
10種類以上の原酒から使用原酒が選定され、レシピが形成されたわけですが、中でも中核的な役割を担う2つのシングルモルトウイスキー(1994年蒸留26年熟成、1990年蒸留30年熟成)が、No,7 Episode 2/3と今回のNo,7 Episode 3/3となります。

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No,7 Episode1/3は、構成原酒の中でも長濱蒸留所のピーテッドモルト原酒3年の個性を屋台骨として、エステリーなフルーティーさ、奥行きや複雑さ、熟成感を付与する方向でブレンドレシピが構成されており、その要素を形成するのが、先に述べた2種の原酒です。

軽やかだが華やかでエステリー、フルーティーなハイランドモルト1994。
モルティーで個性的だが、熟成感を備えたハイランドモルト1990。
両者の属性は、さながら陽と陰。
かつて、サントリーのマスターブレンダー鳥井信治郎氏が「ええ匂いいうもんは、やっぱりウ○コの香りが入ってんとあかんのや」とコメントしたように、香水を作る際には様々なアロマが組み込まれる中でマイナス面の香りが必須とされるように。
複雑で奥行きのある香味には、同じ系統の原酒を混ぜ合わせるだけでなく、異なる属性、異なるベクトルの原酒の組み合わせによって生じる香味の幅の広さが重要であり、そのバランスを如何にとるかがブレンダーの力の見せ所だと考えています。

その意味で、今回のシークレットハイランドモルト30年は、陰陽どちらかと言われたら、陰にあたる個性であり、個人的には主役になるモルトウイスキーではないと感じていました。(少なくとも、近年のトレンドには逆行するものであると)
ただ、グレンマッスルメンバーの1人である倉島氏がこの原酒の可能性を評価し、自信が主催するウイスキーグループ“Blinded by fear”の10周年記念も兼ねてリリースを進めていくこととなります。

結果、こうして3部作が揃ってみると、まず目指したブレンドがあり、ブレンドを構成するキーパーツであり、そのフレーバーの幅の両端を味わえる構成原酒をセットでというのは、純粋に面白い取り組みです。愛好家が面白いと感じてくれるような、GLEN MUSCLE らしいリリースであり、単体としてだけでなく、ブレンドの構成原酒として視点を変えて、3本を飲み比べて頂けたら嬉しいですね。

蛇足ですが、今回のラベルは前作Episode 2/3の華やかで春や南国をイメージするようなデザインに対し、葉も花も落ちた冬の水辺に立つ1本の木に白と黒の文字という、対局にあるデザインで作成してみました。ラベルから伝わる香味の印象もさることながら、このラベルに使われた写真が、構成原酒のヒントになっているのもポイントです。
あまりメジャーな場所ではないようですが、非常に雰囲気のあるスポットです。興味がある方は探してみてください。

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さて、 GLEN MUSCLEは、気がつけば2018年のファーストリリースから約4年、一般にリリースされたもので10本、シークレットも含めると11本というリリースを重ねたブランドとなりましたが、どれも異なる取り組みがあり、コンセプトがあり、愛好家がワクワクするような、面白いと感じるような仕組みを盛り込むことができたのではないかと考えています。

加えて、クラフト蒸留所が持つ原酒でブレンドPBをリリースする(監修する)という、今でこそ珍しくないものの、当時一般的だったPB=シングルカスクのサンプルから選定、とは異なるコンセプトの先駆けの一つとして実施したことも、新しいジャンルの可能性をを発信することが出来たのではと感じています。

なにより私自身このブランドを通じて、ウイスキーをリリースするという事に内部から関わり、ウイスキーのブレンドからラベルの作成、事務手続きまで、ただ飲んでブログを書いていただけではわからない経験をすることができました。例えば造り手の領域での話が小指の先くらいはわかるようになった。これは0と1くらい大きな違いです。
それはメンバー各位同様であり、私がT&T TOYAMAやお酒の美術館等のブレンドPBを担当させて貰ったように、現在はそれぞれが経験を活かし、フリーのブレンダーやカスク選定者としてリリースに関わる等、確実に活動の幅を広げています。

GLEN MUSCLEはこれで活動を休止しますが、メンバーが居なくなるわけではありません。ブロガーくりりんの活動は続きますし、愛好家が面白いと思えるような、美味しいだけでなくワクワクするようなウイスキーは、今後もまたどこかで、違う形でリリースされていくことになります。
ですが一つの節目として。この企画にご理解、ご協力をいただいた造り手の皆様、ウイスキーメーカーの皆様、そして手にとって頂いた愛好家の皆様。
まずはこの場をお借りして、御礼申し上げます。
本当にありがとうございました。
それではまたどこかで、違う形でお会いしましょう。

ダルウィニー 2006-2021 ディスティラリー エディション 43%

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DALWHINNIE 
DISTILLERY EDITION 
DOUBULE MATURED
(BOURBON - OLOROSO CASK)
Distilled 2006 
Botteld 2021 
700ml 43%

評価:★★★★★★(6)

香り:柔らかく甘い麦芽香にオークの乾いたウッディネス。そこに混ざるシェリー樽由来の色濃い樽香。2つの要素がはっきりとは混ざり合っておらず、複層的に感じられる香り立ち。

味:マイルドな口当たり。 蜂蜜や麦芽糖、はっきりとした甘みが広がり、徐々にビター。シェリー樽由来のドライプルーンやブラウンシュガーを思わせるフレーバーがアクセントになっている。
余韻はほろ苦く、じんわりとウッディネスが染み込むように消えていく。

スタンダードのダルウィニー15年に感じられる、ハイランドモルトの代表格と言えるような牧歌的な麦芽風味に、オロロソシェリー樽の色濃いフレーバー、ウッディネスが混ざり合う。特徴的なのは、後熟に用いたシェリー樽のフレーバーが完全に一体化しているわけではなく、香味とも麦芽風味→シェリー樽と段階的に変化していくことにある。
少量加水すると、前者のフレーバーにある青みがかった要素が一瞬顔を出すが、一体化していなかった2つの要素が混ざり合い、熟したオレンジや洋菓子を思わせるアロマとして感じられる。相変わらず派手さはないが、地味に旨い通好みの1本。

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愛好家御用達の隠れた名酒、ダルウィニー。
ダルウィニーはディアジオ社のクラシックモルトシリーズとして位置付けられ、まさにハイランドの代表として1980年代後半からリリースが続いているわけですが。
そのクラシックモルトシリーズを様々な樽で後熟させて毎年リリースしているのが、ディスティラリーエディション(以下、DEと表記)です。

ダルウィニーDEは、オロロソシェリー樽でのフィニッシュで構成されていますが、このシリーズは各蒸留所において毎年毎年ロット差があり、ダルウィニーDEは特にその違いが大きいように感じます。
最近のロットだと、2016年はシェリー感というよりはエステリーで華やかなフルーティーさという、組み合わせであり得るとしたらアメリカンオークシェリー樽由来のフレーバーが際立ち。2017年や2018年はリフィルかな?という麦芽風味主体の構成だったところ。

この2021年リリースのダルウィニーDEは樽の傾向が大きく変わって、最近の他社オフィシャルリリースに見られるようなシェリー感が、麦芽風味に混ざって感じられます。シーズニングのオロロソシェリー樽で、スパニッシュオークのキャラクターに由来するものでしょう。
その上でノーマルな15年とDE15年を比較すると、どちらも同系統のフレーバーがベースにありつつ、ハイボールなどのアレンジのしやすさはノーマルに軍配があがり、単体で緩く飲んでいくならDEも良いなというのが、この2021年リリースの印象です。

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さてダルウィニーのオフィシャルラインナップは15年とDEで、後はウィンターズゴールドが市場にあり、基本それ以外に定常的に販売されているオフィシャルリリースはありません。
ディアジオは、ダルウィニーに限らず売れ筋である一部の銘柄を除いてラインナップを絞る戦略をとっているようなんですよね。
ことダルウィニーについてはボトラーズもないので、折角クラシックモルトとして地域を代表する銘柄にしているのだから、もう少しラインナップを増やしてくれても良いんじゃないかなぁと思うのですが。。。

ただ、限定品として不定期ながら長期熟成のリリースが数年毎に行われており、2000年代にリリースされた29年、32年は絶品。2006年リリースの20年は少々難ありでしたが…。
2016年にリリースされた25年は、15年の傾向で麦芽風味とフルーティーさを洗練&ボリュームアップさせたような味わい。
2020年にリリースされた30年は麦芽風味にやや枯れた要素がありつつも、奥行きと熟した洋梨のようなフルーティーさがあり、どちらも通好みの味わいで良い仕上がりでした。

こうしてリミテッドをテイスティングして現行品のスタンダードに戻ってくると、改めてその良さも感じやすくなる。
ダルウィニーというよりは、ディアジオのブランド戦略の巧みさでもありますね。

ロッホローモンド シグネチャー ブレンデッドウイスキー 40%

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LOCH LOMOND 
SIGNATURE 
SINGLE BLENDED SCOTCH WHISKY 
700ml 40% 

評価:★★★★★(5)(!)

香り:柔らかく香る甘く焦げたオークのウッディさ。キャラメルと微かにケミカル、ボール紙、軽い刺激とスパイシーなアロマを伴う。

味:口当たりは緩く、序盤にのっぺりした質感から徐々に焦げたウッディネス。フレーバーとしてはグレーンの緩やかで柔らかい甘味、らしいフルーティーさと麦芽風味。余韻は焦げたオークのほろ苦さとバニラを伴って、ケミカルな甘さが残る。

スムーズで柔らかく、あまり若さも感じないが、ストレートだとややプレーンな香味が中心。一方で、濃いめのハイボールにすると、余韻にジェネリックトロピカル系のフレーバーがあって好ましい。シングルブレンデッドという造りがロッホローモンドらしい面白さだが、それ以上に、このクオリティで2000円ちょっとという市場価格を実現出来る、ロッホローモンドの強みが光る1本。

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モルト、グレーン、構成原酒全てがロッホローモンド蒸留所産の単一蒸留所ブレンデッド(シングルブレンド)。
スコッチウイスキーでブレンデッドと言えば、各地にある蒸留所から原酒を調達し、様々な原酒を用いて作成するのが一般的であるところ。このロッホローモンド名義のブレンデッドは、全ての原酒を単一蒸留所で製造し、ブレンドしていることが最大の特徴となっています。

ロッホローモンド蒸溜所には
・様々な酒質のモルトウイスキーを作るための、2種類の蒸留器。(うち、一つは複数タイプの酒質の生産が可能なローモンドスチル)
・グレーンウイスキー用の設備は通常の連続式蒸留機と、カフェスチル。
・年間10000丁の樽を補修、生産可能な樽工場。
・生産したウイスキーのボトリング設備。
と、無いのはモルティング設備くらいという、ウイスキー生産に必要な全てを自社で賄えるだけの機能を有しています。

そうした機能を活用し、同社はこれまで
モルトウイスキー:
・スタンダードなロッホローモンド
・フルーティーなインチマリン
・ピーティーなインチモーン

グレーンウイスキー:
・シングルグレーン
・ピーテッドグレーン

大きく分けて以上5系統のリリースを、それぞれのブランド名で実施していたところ。昨年から方針を変更し、ブランド大項目を全て「ロッホローモンド」に統一しています。

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今回のレビューアイテムであるロッホローモンド・シグネチャーは、現地では2019年に販売を開始したもので、日本に入荷していなかっただけで時系列は前後しますが、現在はモルト、グレーン、ブレンド、全てが「ロッホローモンド」としてリリースされているというわけです。(※現地法律上は問題なし)

わかりにくい、と感じるかもしれませんが、それは同社の販売戦略であって、とにかく「ロッホローモンド」を認知させる戦略という観点からすれば正しい方法です。
というか、このリリース事態がすごいことなのです。ただでさえ一定品質以上のモルトとグレーンを低価格に抑えて量産出来る蒸溜所は限られているにも関わらず、ロッホローモンドの原酒は5年、8年熟成でも若さが目立たず甘みや麦芽風味、フルーティーさのある個性が特徴的です。

また、今回のリリースではブレンドの後のマリッジが600丁から形成されるオロロソシェリー樽とリチャーアメリカンオーク樽でのソレラシステムが特徴とされています。ここで使われる樽は樽の保守管理に加え、リチャーを自社の樽工場で行っているもので、シェリー感よりもチャーした樽の香ばしさ、ウッディさが香味のアクセントになっています。
ともするとプレーンな香味になりがちな若い原酒のブレンドに、香味の変化、幅を与えているのです。
ウイスキー市場を陰に陽に支えるロッホローモンド。今後も意欲的なリリースに期待しています。



以下、雑談。
ウイスキーの値上がりが複数社から発表され、我々サラリーマンの懐を直撃している昨今ですが。
そんな中でも2000円台のリリースにこのロッホローモンドシグネチャーに加え、面白いリリースが複数登場しています。

・アイリッシュウイスキー「バスカー」
・シングルモルト「グレングラント アルボラリス」
・シングルブレンデッドスコッチ「ロッホローモンド・シグネチャー」

これまで、2000円前後のスコッチウイスキーというと、バランタイン、ジョニーウォーカー、シーバスリーガル。。。などの有名ブランドの12年クラスが主流。
特にホワイトホース12年は、あまり知られていませんが昭和の洋酒ブーム時に発売された限定品をルーツとした、日本市場限定品。40年近く限定品としてリリースが継続されているベストセラーで、手軽に飲めるスモーキーなウイスキーの一つです。

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ここに殴り込みをかけてきたのが上述の3銘柄。
トロピカルフレーバーを”売り“にしたバスカーは、ブレンドは軽やかな飲み心地、先日発売されたシングルモルトが同じ価格帯でさらにしっかりとした味わいがある。
グレングラント アルボラリスは、10年、12年に通じるアメリカンオーク由来の華やかさがあり、ロッホローモンドは上述の通り。
全てハイボールにして飲むと、地域、樽、製法、それぞれ個性の違いが感じられ、いやいやウイスキー楽しいじゃ無いですかと思えるラインナップ。

これから暖かくなってきて、夏場のハイボール要員としてはなんぼあっても良いボトルですからね。今年は有名ブランド1つ、そして上記3銘柄をセットで充実した家飲みを楽しんでみてはいかがでしょうか。

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