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カリラ 2006-2017 ディスティラーズエディション 43%

カテゴリ:
CAOLILA
Distillers Edition 
Distilled 2006
Bottled 2017
Moscatel Cask Finish
700ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:BAR飲み@Y's Land IAN
時期:開封後数日程度
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:ピーティーでドライな香り立ち、焦げたようにほろ苦く、乾いた麦芽、微かな塩素を思わせるアクセントとほのかにレモンのような柑橘香。

味:マイルドな口当たりから淡いヨード、燻した麦芽や牧草、ほろ苦い風味とコクが染み込むよう。ほのかにレモンキャンディを思わせる酸味もある。
余韻はクリアでピーティー、燃えかすの灰のようなスモーキーさを伴い、長く続く。

シェリーシェリーした樽感はないが、カリラらしいクリアさが余韻にありつつ、後熟による程よい樽感がボディのコクに繋がって、バランス良く楽しめる1本。


ここまで1ヶ月間細々とレビューしてきたMHDのニューリリース、ディスティラーズエディション(DE)2017ラインナップ。そのトリを飾る1本は、個人的に今年のDEを象徴するような樽使いと感じた、甘口のシェリー酒であるモスカテルシェリーのシーズニングカスクでカリラを後熟させた1本です。

カリラはオフィシャル12年が一昨年くらいから出来がいいと話題になり、実際5000円程度という価格帯の中では、優良なリリースであると言えます。
それこそスペシャルリリースのアンピーテッドが非常にわかりやすいわけですが、クリアな酒質を活かすリフィル系の樽構成にピートフレーバーが溶け込む。オールドのそれと比べると麦感や塩気は軽くなりましたが、現行のスタイルとしては方向がはっきりとしているリリースと言えます。


他方、DEはブレ幅が強いというか、カリラのクリアでスモーキーなキャラクターに対し、モスカテルが強すぎるとなんだかわからなくなる、実はバランスが難しい組み合わせなのではないかと感じているところ。
ただ今年のDEは、全般的にシーズニングで用いられたワインの影響がライト寄りになったというか、その香味がアクセント寄りとなったものが多く、物足りなさを感じつつもそれが逆にまとまりの良さに繋がった印象もあります。

中にはタリスカーのように使われたワインではなく、樽材そのものの香味が強く出たものもありましたが、カリラは上記のようにアクセント程度に留まったワイン感がバランスの良さにつながっている。適度な熟成感と合わせてオフィシャル12年と違いはありながら、しかし破綻せず枠の中にある。そんなリリースだと思います。

クラガンモア 2002-2017 ディスティラーズエディション 40%

カテゴリ:
CRAGGANMORE
Distillers Edition 
Distilled 2005
Bottled 2017
Port Wine Cask Finish
700ml 40%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:BAR飲み@Y's Land IAN
時期:開封後数日以内
暫定評価:★★★★★(5)

香り:ドライでウッディな香り立ち。やや草っぽさが強く、ハーブ、お茶のえぐみ、徐々に乾いた麦芽香。奥には灰のような微かなピート香も感じられる。

味:口当たりから草っぽさ、葉物のサラダを食べたような香味から、モルティーなほろ苦さ、カステラ、ケーキシロップを思わせる甘み。余韻はややべたつくがほのかなスモーキーさを伴い穏やかに長く続く。

薬草、あるいは香草的なニュアンスを含む香味で、一口目は特にそれが強く、草を食べてるように感じた1本。今年のディスティラーズエディション中最も特異な味わい。
他方何口か飲んでいると上記ニュアンスが気にならなくなり、モルティーさが主体に。


ここ数年のディスティラーズエディションで、最もポジティブな特徴がなかったと言えるのがクラガンモア。
オーク系のニュアンスと共に案外良いねと思ったのは2015リリースですが、今年はあまりいい意味ではない方向に特徴的。ネガティヴ一辺倒なのは気が引けますが、これがポートワイン樽の難しさなのかなと感じる要素です。

クラガンモアは麦感と蜂蜜のような甘み、そして内陸系のスモーキーなアクセントがある、質の良い酒質を持った蒸留所です。オフィシャル12年も比較的出来が良く、今回のボトルは時間経過でその酒質由来の香味が後付けの樽感をカバーしてくるあたり、持ってるものは間違いない。
やはりクラガンモアは余計なことしないで、そのまま蒸留所の個性を伸ばした方が良いと改めて感じたところです。長熟のボトラーズリリースとか、数は少ないながら美味しいものが結構ありますし。

蒸留所の個性をそのまま伸ばすと言えば、クラガンモアはスペシャルリリースも何度かリリースされており、2014年には25年がラインナップされていました。ブログに掲載していませんが、以前IANやイベントで飲んだ際は麦由来の甘みと香ばしさ、ドライフルーツの酸味がある美味しいモルトだったと記憶しています。
なんて書いていたら、久しぶりに美味しいクラガンモアが飲みたくなりました。今度飲みに行ってきます(笑)。

ダルウィニー 2001-2017 ディスティラーズエディション 43%

カテゴリ:
DALWHINNIE
Distillers Edition
Distilled 2001
Bottled 2017
Oloroso Sherry Cask Finish
700ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:BAR飲み@Y's Land IAN
時期:開封後数日程度
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:穏やかでドライな香り立ち。最初は麦芽や干し草を思わせるニュアンスから、徐々にホットケーキやシフォンケーキを思わせる甘いアロマが広がる。

味:スムーズな飲み口、ドライで乾燥した麦芽を思わせるオーソドックスなモルティさ。中間には柔らかいコクに香り同様の品のいい甘み。
余韻はオークのビターなウッディネスと麦芽風味、鼻に抜ける干し草の香り。染み込むように長く続く。

まさにモルトの風味と言える、酒質主体でモルティーな味わい。樽感は補う程度で、ほどよい甘みとアメリカンオークを思わせる乾いた草やウッディさが適度に香味に混じっている。


昨年のディスティラーズエディションから、シリーズ中最も大きな方向転換があったと言えるのが、このダルウィニーです。

昨年のリリースはオーキーでフルーティーさが強く、ややウッディなタンニンも合わせて強く感じられたところ。今回は樽感よりもモルティな香味が主体でまさにモルト風味。こうもはっきりと方向性の違うリリースですが、共通しているのはどちらもオロロソフィニッシュと言いつつ、一般に知られるオロロソシェリーらしい感じではないことにあります。

(高台に位置するダルウィニー蒸留所は、気象観測所としても機能していたことで知られている。ではその観測設備はどんなものだったかというと、学校の校庭にあるようなローテクな装置が一つだけという。。。Photo by T.Ishihara)

スタンダードなダルウィニーのオフィシャルボトルは、大人しい味わいながらハイランドらしい柔らかい麦芽風味が広がる、もっと一般に評価されてもいいウイスキー。特に一昨年リリースされたダルウィニー・ウインターズゴールドはその特徴たる麦芽風味が厚く、樽感も綺麗。個人的に5000円以内でオススメのハイランドモルト筆頭です。

対して今年のディスティラーズエディションは、テイスティングの通り同じ麦芽風味でも傾向が異なっており、ほろ苦く乾燥したような傾向が主体。これはこれで良くできた香味であり、麦系風味の仕上がりの違いとして飲み比べをするのも面白いと思います。

オーバン 2003-2017 ディスティラーズエディション 43%

カテゴリ:
OBAN
Distillers Edition 
Distilled 2003
Bottled 2017
Montilla Fino Sherry Cask Finish
700ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:Y's Land IAN
時期:開封後数日以内
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:ドライで品のいい甘み。ほのかにレーズンのアクセントと蜂蜜、オレンジピール。乾いたウッディネス、若干の干草ぽさから徐々に麦芽香が開く。

味:スムーズな口当たり、おしろいを思わせる麦芽風味が主体。柔らかいコクのある甘みが淡いシェリー感とともに広がる。余韻にかけてピートがほのかに感じられ、ほろ苦いフィニッシュに繋がる。

樽感と酒質のバランスが良く、品のいいシェリー感がハイランドらしい麦芽風味とともに感じられる。特に味わいは麦芽風味が中心で、余韻にかけてのピートフレーバーがオーバンらしさでもある。


今年のDE(ディスティラーズエディション)を象徴するような樽使いの1本。
昨年は比較的強めの樽感でしたが、今年はフィニッシュに使われた樽が酒質を圧殺するのではなく、荒い部分をマスクしてバランスを整えるような構成が印象的。ここ数年のオーバンDEの中で最も出来がいいのではないかと感じました。

(オーバン蒸留所は港町の真っ只中にあることで知られている。写真はオーバンの埠頭から見た夕日。街並みがより美しくコーティングされる瞬間。Photo by Y.A)

オーバンのDEに使われているのは、MHDの資料によるとモンティージャ・フィノシェリーでシーズニングしたシェリー樽(原文ママ)。
シェリー酒と言えばスペインのヘレス地方のワインですが、同様の酒精強化ワインはヘレス地方に限らず、様々な地域で作られています。今回のモンティージャ地方(原産地呼称、モンティージャ・モリレス)のワインは、ほぼ同じ製法なのですが、原料が甘口ワインで知られるペドロヒメネス種であること、それ故糖度が高く度数が上がるため、フィノタイプでは酒精強化を行わないという特徴があるようです。

最も、これは通常の製法であって、今回のようにシーズニングに使われているものが、どこまで同じタイプかはわかりません。
おそらく「モンティージャ」とまで指定してるので、ペドロヒメネス種を原料としているのはそうなんだと思うのですが。そのためか、従来のフィノカスクに比べて少し甘みやレーズンを思わせる風味が感じられるのも特徴だと思います。

(スペシャルリリース2018 画像引用:

なお、オーバンと言えばここ数年オフィシャルからスペシャルリリースがありませんでしたが、来年日本に入ってくるロットにはオーバン21年がラインナップされています。
DEも悪くないのですが、やはりスペシャルリリースの樽使い、蒸留所の個性を活かす構成は別格なものがあります。個人的にオーバンは好きな蒸留所でもあるので、来年のリリースが今から楽しみです。

ラガヴーリン ディスティラーズエディション2017 43%

カテゴリ:
LAGAVULIN
Distillers Edition 2017
Distilled 2004
Bottled 2017
PX Sherry Cask Finish
700ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:BAR飲み@Y's Land IAN
時期:開封後数日以内
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:濃厚で落ち着きのあるアロマ。スモーキーで少しひねたような濃い甘み、たまり醤油、だし感、ほのかにヨード。徐々に焦げたようなウッディネスも感じられる。

味:とろりとした口当たり。オイリーでスイート、ドライプルーンやケーキシロップ、コクのある甘みからじわじわとドライでソルティーな風味が開いてくる。
余韻はピーティーでほろ苦く、序盤の甘みが強く残らないスモーキーなフィニッシュ。

香味ともPXシェリーカスクらしい濃厚さに加え、それが余韻にかけてしつこく残らない。荒さも樽と加水で程よくマスクされており、ピーティーさ、ソルティな香味が開いてバランスの良い仕上がりが感じられる。


毎年のリリースの中でもこれだけは外さないという印象の強い、安定のラガヴーリン・ディスティラーズエディション。リリース全体的に、毎年香味のベクトルが大なり小なり変わっていることがDEの楽しみでもあるのですが、このラガヴーリンだけはここ数年大きな変化はなく、同じ方向性の中でしっかり仕上げられていると感じています。

強いていえば、シェリー感が年々軽く、後半に感じられる塩気も同様に軽くなったという感じですが、今年のロットはその分バランスが整ったような印象。ロット差と言われるとそれまでという感じですらあり、安心して楽しめる1本です。


ラガヴーリン蒸留所のモルトの素晴らしさは、際立った個性とか厚みのある酒質とか、評価軸は色々あるのですが、個人的にはこの安定感なのかなと感じています。
言い換えると、時代を選ばない大ハズレの無さ。他のアイラの蒸留所は「アチャー」というものが少なからずあるのですが、ラガヴーリンはよっぽどキワモノなスペックでない限り安定感抜群。特に王道を行くオフィシャルはもう、現行品16年と20〜30年前のオールドを比較して、現行品は現行品で良いよねという評価が得られる数少ない蒸留所。スコットランドの中でも際立った存在だと思います。

ラガヴーリンDEは、通常のラガヴーリンの原酒を、最後の数ヶ月(公式には3ヶ月以上)PXシェリーカスクでフィニッシュ。DE全体でも一番濃い味わいに仕上がっていることが多いですね。
その樽由来か、古酒っぽいニュアンスも備わって、まろやかでどっしりとした存在感。スペシャルボトルのカスクストレングスはシャキッとしたピートやソルティさが魅力ですが、加水には加水の良さがある。今年のロットも楽しませていただきました。

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