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三郎丸蒸留所 The Ultimate Peat Glass オリジナルハンドメイドグラス

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さる6月23日、三郎丸蒸留所からハンドメイドのオリジナルグラス「The Ultimate Peat Glass」が発売されました。
オンライン販売分は即日完売しましたが、今後も増産、継続販売が予定されていること。
何より私自身が本グラスの設計・企画に関わらせてもらっていることもあり、開発の流れやグラスの特性、使い心地など、私個人の視点での情報も含めて当ブログで紹介させて頂きます。

商品名:The Ultimate Peat Glass
価格:15,000円(消費税込16,500円)
製作:木本硝子株式会社
付属品:グラスケース、グラスクロス
公式サイト:ニュースリリース
関連情報:木本氏、稲垣氏のクロストーク

※グラスの特徴
・ピート香を開きつつ、適度に樽や酒質由来の香りを馴染ませる。蒸留所の個性を感じやすい。
・リムの返しとエッジの処理から、口当たりはスムーズで柔らかく、ウイスキーを味わいやすい。
・全体的に滑らかで一体感のある、まさにハンドメイドというデザイン。

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The Ultimate Peat Glassは、三郎丸蒸留所のコンセプト(ピートを極める)をより確かに感じてもらうことをテーマに開発された、ウイスキー用のテイスティンググラスです。
グラスが変わると香味も変わるウイスキーにおいて、蒸留所マネージャーからの提案であり、お墨付き。
言い換えるとピーティーなウイスキーを最高に楽しめるグラスという位置付けで、個人的には三郎丸に限らずスモーキーさと樽由来のフレーバーが一定以上にあるウイスキーに対して、相性が良いグラスに仕上がっていると感じています。

◾️The Ultimate Peat Glass製作の流れ
同蒸留所マネージャーの稲垣さんは、ベルギービールのように、飲み方の提案としてウイスキーも蒸留所毎にオリジナルグラスがあると良いのではないかという考えがあり。
一方で、私自身はかねてから、ウイスキーを楽しむ上では、ワインのようにその種類、銘柄毎に適したグラスが必要ではないかと考えていたところ。
昨年から稲垣さん、モルトヤマの下野さん、そして私で硝子会社を複数訪問してそれぞれ話を伺い。その中で稲垣さんの紹介から木本社長の熱意に触れ、パートナーとしてグラス作りを行なって頂くことになります。

※関連する話は上述のクロストークでも語られていますので参照してみてください。

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とは言え、オリジナルグラス作りは、そう簡単に進む話ではありません。
数ミリ単位の形状の違いであっても、香味に大きな影響を与えるということ。
また、グラスは手吹きのハンドメイド、機械作りのマシンメイドがありますが、どちらもグラスの形状を決めるための金型が必要で、まずはデザインの方向性を定め、その金型を設計しなければ試作も出来ないということ。
そう、職人がゼロからぷーっと膨らませてイメージに合う形を試作してくれるわけではないのです。

この金型、決して安くなく、何パターンも作るとそれだけ販売価格に影響します。
最初の段階で可能な限り確度の高いデザイン案を作る必要があるわけですが、ご存知のようにグラスの形状は様々です。
そのため、まずは既製品のグラスを使ってウイスキーとの相性を確認すべく。木本硝子さんに我が家からウイスキーグラスやワイングラス、持ってるグラスを大量に持ち込み、コンセプトに近いデザインを絞り込みました。

この時の様子は、上述のクロストークでも語られています。木本社長としても、ここまでやる顧客は初めてだったようです(笑)。※上の写真は、ある程度絞り込んだ後のものになります。
某有名メーカーの大ぶりなグラスだけでなく、よく知られている形状のテイスティンググラスも、目指す香味の方向性ではないと稲垣さんの一刀両断でバシバシ除外。開かせすぎたり、全く開いていなかったり…、木本さんだけでなくT&Tの二人も「え、そんなに持ってきたの?」と驚いていましたが、むしろ持ってきていて良かったと、この時ばかりは安堵しました。

そうこうして行く中で、残ったグラスの形状とサイズから、徐々に目指す方向性が見えてきます。
完全にストレート形状ではなく、多少の膨らみがあり、リムは味わい易さのために少し返しをつける…。
このイメージを形にしていくのがグラスメーカー、木本社長の仕事です。
なお、金型が決まったらあとはデザインを調整できないかというとそんなことはなく。そこから少し金型を削るなど、微調整を加えて行くことは可能です。
試作品が完成後は、稲垣さんが直接木本社長とやりとりされ、当初の予定では4月のはずが2ヶ月遅れの6月下旬、ついに発売となりました。

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※開発当初予定になかった、付属の専用グラスクロス。美味しいお酒は美しいグラスで飲んで欲しい、造り手への敬意として急遽追加した。

形状検討の際にもう一つ考える必要があったのが、“ウイスキーを楽しむ”ことにおける、美味しさとテイスティング性能のバランスです。
例えばウイスキーを深掘りする、テイスティング目的なら、良いも悪いも含めて可能な限り香味要素をはっきり拾える形状のグラスが望ましいと言えます。ですが、それが美味しいか、楽しいかというと、悪い部分も強く拾うグラスが一般に好まれるとは言えません。

今回のThe Ultimate Peat Glassは、テイスティング性能は担保しつつも、広げる香味は良いもの、美味しさ寄りであるべきというのが稲垣さんの考えで、そのための工夫が設計に反映されていきます。
一方、ここでテイスティング性能寄りのグラスも作れないかと、下野さんがここまでの情報から新しい提案をするに至るのですが…。
詳細は、正式な発表があったら、改めて本ブログでも公開していこうと思います。

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※グラスの奥深い世界に、今までの価値観が崩壊して、思わず目を覆う下野さん。

◾️ The Ultimate Peat Glassの性能検証
そうして完成したThe Ultimate Peat Glassですが、性能、使い勝手について、本記事では一般にテイスティンググラスとして使われていることが多いグレンケアンと、国際企画ワインテイスティンググラス、この2脚と比較しながら解説していきます。

まず重量ですが、
・グレンケアン テイスティンググラス (約130g)
・国際規格ワインテイスティンググラス (約120g)
・三郎丸 The Ultimate Peat Glass (約90g)

持った感じは、重心が真ん中寄り上部にあるので90gという数字よりも少し重く感じるかもしれませんが、逆にスワリングはしやすいですね。
強度は…食洗機や強い衝撃、あとは捻り洗い等をしなければ、つまり通常のハンドメイドテイスティンググラスと同等程度、特に繊細すぎる設計にはなっていません。

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比較テイスティングに使用するウイスキーは、コンセプトに合わせ、三郎丸Ⅱ シングルモルト 加水とカスクストレングスの2種。それぞれ30ml注いでの比較となります。
三郎丸モルトの強いピートフレーバーと、Zemonによって生み出される厚みと甘みのある酒質、熟成環境に由来する3年としては強めの樽感をどう広げるか。

【香り立ち】
いずれも同系統のアロマを拾えるが、グレンケアンは香りがボヤけたような、水っぽさが混じる。国際規格は逆にシャープでテイスティングはしやすい一方、ピートの強さだけでなくネガティブな要素を拾いやすく、特にカスクストレングス版ではその特性が際立つ。
一方でThe Ultimate Peat Glassは、適度にシャープなピート香に、樽由来の甘さが混じり、水っぽさもなくバランスよく感じられる。カスクストレングス版でも同様で、香りを広げつつもアルコールの刺激は強すぎない程度に抑えられている。

【味わい】
グレンケアン、国際規格はリム形状が特に変わらないこともあり、大きな違いは感じられないが、強いて言えばグレンケアンの方が口当たりは丸みがある。
一方で、The Ultimate Peat Glassはリムの返しとハンドメイドグラス特有のエッジ加工の丁寧さで、ウイスキーがスムーズに口内に導かれるだけでなく、口当たりも柔らかく感じられる。

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どの系統が良いかというのは好みの問題もあり、以下はあくまで主観的な考察ですが。
最も三郎丸モルトの良い部分を拾いやすかったのは、やはりThe Ultimate Peat Glassでした。昨年受け取った試作品の方向性の通りに仕上がっており、コンセプト通りのグラスだと思います。
ただ、最初にウイスキーの各要素をしっかり開かせるため、三郎丸以外の若いウイスキー、雑味要素が強い原酒だと、注いでから開いた要素が馴染むまで少し時間がかかるかもしれません。
その意味では、酒質が、造り手が試されるグラスという面も…。

それでは、それぞれのグラスで違いがでた考察として、まずは香りの違いにフォーカス。要因としてリムの口径、返し、ボウルの広がり具合が考えられます。
まずリムの口径はそれぞれ約43mm、46mm、46mm。実は国際規格とThe Ultimate Peat Glassは口径がほぼ同じなのですが、前者はボウル部分から緩やかに広がってすぼまるように広い空間が作られるのに対して、後者はボウルの広がりが大きく、その空間がリムの返しに向けて国際規格以上にすぼまっています。

国際規格のような形状のグラスは、各要素が良いも悪いもダイレクトに伝わってくる傾向があり、テイスティング向きの形状と言えます。テイスティングに限れば、安くて丈夫で使い勝手の良い、オールラウンダーなテイスティンググラスなんですよね。あともう1回り小さい製品があると、嬉しいんですが…。
一方でThe Ultimate Peat Glassは丸みを帯びた縦長なフォルムですが、口当たりで効果を発揮する“返し”がある分、グラスの中に適度な広さの空間が作られ、樽と酒質の香りの要素が滞留して馴染むこと。またすぼまったところから広がるように鼻腔へ導かれるため、開いた香りがダイレクトではなく、適度に逃がされることでバランス良く感じられるのだと考察します。

なおグレンケアンは、リムの口径は一番狭いのですが、液面から上の空間があまり広がらず、滞留もせず、そのままリム部分へと繋がるため、香りが広がりきらないのではないかと。。。
では容量を20mや15mlにしたらどうか。ハイプルーフのもの、特に長期熟成で奥行きのあるウイスキーはバランスが取れるような気もしますが、比較すると少しぼやけた香りになりがちです。
テイスティングと美味しさ、引き出す要素を中間くらいで見ると、こんな感じなのかもしれません。
まさに入門向けというグラスの一つであり、改めて、ある程度飲み慣れた人はグレンケアンから拘りの1脚にステップアップしても良いのでは、とも思える結果となりました。

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◾️余談&結びに
今回のグラス製作の話が出た時「僕の考えた最強のグラス」の要素が、
・リーデル ソムリエ ブルゴーニュ グランクリュのような薄さと返しのあるリム。
・既に蒸留所で販売されている、三郎丸テイスティンググラスから、大きくかけ離れないデザイン。
・サイズ感は国際規格と同等または一回り小さくした程度。
・木村硝子テイスティンググラスのような、リムから台座まで滑らかなフォルム。
でした。

私の趣味でデザインを決定したわけではありませんが、出来上がったグラスをみてみると、まさに上記の「さいきょうぐらす」の系譜とも言えるデザインとなっており、その意味でも完成品には特別な思い入れがあります。
何より、グラス製作という、通常いち愛好家では関われないことまで関われる機会を頂けたことに感謝しかありません。
お酒におけるグラスの重要性はわかっているつもりでしたが、グラス製作の経験で、さらに知見を深めることが出来たと思います。

最近自分の周囲でオリジナルハンドメイドグラスのリリースが複数あり、造り手のコンセプトを反映した、個性的な形状のグラスが揃ってきました。
ウイスキーのグラスは、比較のために同じグラスを常に使うことは理に適っていますが、1本のウイスキーを理解しようとしたならば、複数のグラスで多角的に個性を見て行くこと。あるいはその個性を最大に活かすグラスを探索することも、ウイスキーの楽しさだと思います。

例えば、ストレートの入門グラスとして知られる「咲グラス」で飲んだ後、The Ultimate Peat Glassで同じウイスキーをテイスティングすると、その違いに驚くと共に、これまで見えなかった個性や、異なる視点でのイメージを掴めるかと思います。
これも嗜好品の“沼”とされる世界の一つ…。
掘り始めたらキリがないですが。せっかくこうした機会と共にグラスも手元にあるので、今後は比較含めてグラスレビューもやっていこうと思います。
あぁ、ウイスキーって楽しい!

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【咲グラス】ウイスキーをストレートで楽しむための最適なグラスづくり

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ウイスキーのブラインドテイスティングで定期的に競い合い、ライバルとも言っていい関係にあるシズタニエンこと静谷和典氏から「オリジナルグラスが出来上がったので、使用感を教えて欲しい」と連絡頂き、そのサンプルを使わせいただきました。

今回のオリジナルグラスの構想、出発点はハイボールでウイスキーに慣れ親しんだ人たちに、さらにウイスキーを楽しんで貰うにはどうしたらいいか。
ウイスキーの個性を全面に打ち出したカクテル「ウイスクテイル」や、ウイスキーをストレートでフードとペアリングする「ウイスキーニコラシカ」など、バーマンならではのアイディアを形にしてきた静谷さんが、純粋にウイスキーそのものを、つまりウイスキー単体をストレートで楽しんでもらうためのツールとして打ち出したのが、オリジナルテイスティンググラス「SAKI(咲)グラス」でした。


咲(SAKI)グラス
製造:非公開(国内にて職人のハンドメイド)
設計・監修:静谷和典

※咲グラス先行販売サイト:https://ideamarket.yomiuri.co.jp/projects/whisky-glass2022
9月15日(木)午前0時から、100脚分が先行販売されます。(酒販店や百貨店等で通常販売も調整中とのこと。)

グラスの製作エピソードやこだわりの数々は、上記URL先のクラウドファンディングサイトにまとめられています。
自ら手吹でグラスを作った経験、既存テイスティンググラスの分析、3Dプリンタを使った試作の数々、そしてブランド化する上での戦略…コロナ禍という苦境の中、休業という普段は生まれなかった時間を使った挑戦。
素直に凄いなと、同年代でここまでやれるのかと、ただただ感服する内容となっています。

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さて、当ブログでは咲グラスの使用感や、色々使ってみた上で見えてきた特性、ウイスキーのジャンルとの相性に焦点を当ててまとめていきます。
エピソードをあらためて紹介するのも良いですが、どういう性能のグラスなのか、実際に使用した印象を知りたい人が大半だと思いますので。。。
で、どうだったかというと。ウイスキーの良い部分を引き出し、親しみやすくする。まさに「ストレートでウイスキーを楽しむ」というコンセプトの通りのグラスだったのです。

香り:開かせて馴染ませる。各要素を引き出しつつ、特にウイスキーそのものが持つ麦芽や樽由来の甘さを引き立てて馴染ませることで、アルコール感を和らげる。

味:口当たりの部分がフィットするようにアーチを描いており、ウイスキーが抵抗なく口の中に導かれる。それによって口当たりが良く、アルコール感も穏やかに感じられる。

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相性:長期熟成から短熟、バーボンからスコッチ、あるいはラムやコニャックなど、多くの銘柄、ジャンル、仕様にマッチするオールマイティさが最大の魅力。
強いて言えば、甘さよりもクリアでシャープなピート香を楽しみたいようなアイラモルトは開かせる香味の傾向が異なるため、違うグラスを選びたい。また、香りが強い酒類に向いているため、香りがそもそも立たないような安ウイスキーは期待できない。40%台のブレンデッドよりは45%以上ある比較的個性のはっきりしたリリース(シングルカスクなど)に適正がある。
例えば、ジャパニーズクラフトで10年未満の高度数ウイスキーに対し、非常に良い仕事をしてくれる。

その他:全体としては適度な大きさで、ステムは細く、軽く仕上がっており、手に持った際に違和感が少ない(重量、70〜80g)。一方で、ボウルやリムは某社最高級ワイングラスのような薄さではなく、例えばケースに入れて自然に持ち運べる程度の耐久性が見込めるのも特徴と言える。

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以上が一般に使われている、ノーマルなテイスティンググラス、グレンケアン、国際規格グラス等と比較しながら、色々と飲み比べてみた使用感、感想です。特に初心者向けと見た場合ほとんどダメ出しするところのない、非常に良いグラスでした。

タイトルにある「ウイスキーをストレートで…」ひいては、ハイボールからのステップアップでウイスキーの個性をストレートで楽しんでほしいというコンセプトに対して、飲み慣れない人が敏感に感じ取る要素、飲みにくさに繋がる粗さ、アルコール感を軽減し、日本人が美味しさの基準にするといっても過言ではない「甘さ」を引き出す点が、グラスの特性として特筆すべきところです。

また、現在長期熟成の原酒が枯渇し、リリースも高騰しています。そのため、ウイスキーとしてテイスティングする機会が増えているのは、20年熟成未満のスコッチやアイリッシュ、5〜10年程度のジャパニーズ。バーボンは元々長期熟成の流通量が少なかったですが、全体的に甘みが弱くなり、ドライな傾向にあります。その他、コニャックやラムなどが代替品として注目されていますが、これら今後の市場の主力商品とも言えるジャンルの良さを引き出す事も、咲グラスに期待できる特性です。
静谷さんはこれを科学的に分析して作ったわけではなく、さまざまな試行錯誤の中で、自身の経験を交えて導き出した。バーマンであり、マスターオブウイスキーだからこその経験と知識、そして直感による作品とも言えるわけです。

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形状を分析すると、グラスのボウル(底)部分が同じサイズのものより大きく広がって、それがポットスチルに見られる形状のように一旦すぼまることで、香りを広げるスペースが作られている。
このスペースでは、香りのポジティブな要素もネガティブな要素も増幅されますが、そこから口をつけるリムにかけて口径が広がり、スペースから距離がとられていることで、アルコール感が拡散し、まとまって鼻腔に届かないような構造であることが伺えます。

これが例えば、上の写真中央にある、卵の上部分をすっぱり切ったような… 自分がよく使っている木村硝子のテイスティンググラス0番や、さらに飲み口が窄まっている形状のものだと、香りの良い部分も悪い部分も、またアルコール要素が強く残って、飲み慣れた人向け、玄人向けのグラスになっていたのではないかと考えられます。

また、上の写真右側にある、Kyoto Fine Wine & Spirits さんのオリジナルグラスのような、液面から鼻腔までの面積と距離がある、大ぶりのグラスだったらどうなるか。
これはウイスキーの熟成感や奥行き、複雑さが試される構造になり、長期熟成ウイスキーは存分にその魅力を開かせる一方で、若いウイスキーには向かない形状になっていた。
つまり静谷さんが目指していた入門向けグラスとは異なるコンセプトになっていたわけで、こうして結果だけ見ると、これ以外に正解はないと思えるくらい、ダメ出しのしようがないグラスだったのです。

まあ、強いて言えば…香りを開かせる空間、変化の大きな形状が、最後の一口になるといつもの3割増しくらいでグラスを傾けないとウイスキーが口に入ってこない、というくらいでしょうか。。。口当たりについてはタリランド(写真左)のような構造で、ウイスキーがスッと口の中に入るのですが、機能面と造形面のバランスの問題で、難しい点なのです。
あんまり褒めすぎると、ステマ感が増してしまうのでイヤなんですけどね、正直このグラスには驚かされました。

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最近、ウイスキーグラスのリリースが増えてきて、さまざまな形状のものが誕生しています。
ただ、ウイスキーは1990年頃までは、ブレンデッドが中心の市場であり、そこから冬の時代を経て、2000年代に入ってシングルモルトが普及し始めた。
つまり飲みやすさ重視の時代から、個性を楽しむ時代が到来したのは直近10年程度のことであり、個性を楽しむ飲み方としてストレートが、ツールとしてテイスティンググラスが注目されるようになったのは、本当に最近のことなんですよね。

そしてその流れの中で、地域の特徴、品種の違い、テロワールと言われる要素を紐解くためにさまざまなグラスが造られたワインに倣って、多くのグラスが造られるようになっていくのは自然な流れであるように感じます。
ウイスキー業界におけるテイスティンググラスは過渡期にあり、今後はスタンダードなものから樽や度数、地域によってグラスの形状が確立していくのでは無いかと予想しています。

その中で、今回発表された咲グラスは、造り手と設計者の確かな知識、経験、技術によって作られる、ウイスキーの入門から応用まで幅広くカバーするオールマイティなテイスティンググラス。
グレンケアンに物足りなさを感じた人は、ぜひ一度手に取って、あるいは静谷さんのBAR(LI VET、Whisky Salon)で注文して、その違いを体感して頂けたらと思います。

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