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グレンマレイ NAS 1980年代流通 特級表記 43%

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GLEN MORAY 
SINGLE HIGHLAND PURE MALT WHISKY 
1980’s 
750ml 43% 

評価:★★★★★★(5ー6)

香り:乾いた麦芽や干藁、収穫の終わった田んぼと秋の空を連想させるようなプレーンでモルティーな香り立ち。ほんのりと柑橘感もあるが、全体的にシャープでよく言えばイキイキとしており、若さに通じる要素も残っている。

味:軽やかな口当たり、香り同様に乾いた麦芽と品の良い甘みと仄かな土っぽさを伴うプレーンなモルティーさ。奥行きは控えめ、多少ピリピリとした刺激があり、すっきりとドライな余韻に繋がる。

やや単調な構成だが、ラベルの雰囲気そのままに、オールドスコッチモルトに共通する牧歌的雰囲気を感じさせる味わい。現行のスコッチモルトに比べて遥かに地味な構成だが、それが良い。
なお右上に映る同時期流通の12年とは同系統の味わいだが、12年に比べ樽感が淡く、コクやフルーティーさも控えめであることから、5〜8年程度の若い原酒が主体と思われる。


グレンマレイのオフィシャルで、あまり見かけない(たまにオークションで見かける程度)珍しいトールボトル。同ブランドは1970年代〜1980年代あたりで5年、8年、10年表記と、若いエイジングのトールボトルがリリースされており、その中でも5年表記が80年代後半あたりには見かけなくなるので、後継ボトルではないかと思われます。

スコッチウイスキーのトレンドは、デラックス表記から12年以上の熟成年数表記で高級感を出す、現代に通じるブランド戦略へとシフトしていた時期。5年表記は1970年代以前こそスタンダードでしたが、足枷にしかならない表記なら外してNAS仕様にしてしまえと。実際、現在リリースされいているグレンマレイもNASのクラシック、12年、18年という感じで、その意味ではクラシックの先祖と言えるボトルであり。
また、流通量の多い同時期の12年表記に比べて樽感が控えめ、プレーンで若さのある当時の麦芽風を味わえるため、テイスティングする価値のあるボトルだと感じています。

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(1970年代流通のグレンマレイ5年。グレンリベット表記がなんともソソる。)

個人的にこうしたオールドボトルの良さは、味もさることながらラベルにあると考えています。
現行品のスコッチモルト、特にスペイサイドモルトの系統は、雑味を減らし、軽やかな仕上がりのものが多くなっています。そこに最近のトレンドであるバーボン樽と組み合わせて、華やかでフルーティーな構成にする、洗練されたというか、都会的と言えるような仕上がりが多く見られます。

その過程で、今回のモルトに感じられたような麦芽風味、土っぽさ、どこか田舎くさく郷愁を感じる要素も削ぎ落とされ、現行品のモルトでは多くの蒸留所で失われた要素となっているわけですが。
ラベルについても、古くは今回のボトルにあるような蒸留所やスコットランドの風景画を用いるなど、蒸留所ごとの個性を現地と結びつけるのがトレンドの一つだったところ。最近は視認性を重視してスタイリッシュに、それこそカジュアルで都会的なデザインのものが多くなっており、香味同様にいい意味での田舎臭さ、言わば風情が失われているようにも感じられるのです。

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画像引用:https://www.thespiritsbusiness.com/2022/07/glenmorangie-unveils-playful-redesign/

銘柄は違いますが、先日発表されたグレンモーレンジのラベルチェンジは、その代表的な例でした。これはこれでさまざまな場所でウイスキーが飲まれるようになった現代では、イベント会場やクラブ、レストランなど明るい雰囲気のお店にもマッチするでしょうし、グレンモーレンジを知らない人でもまず目を引くデザインだと言えます。

こういうのもアリではあるのですが、オーセンティックBARの雰囲気にこのデザインのモーレンジはどうなんだろうとか、スコッチモルトのラベルはもっと風情あるじゃ…なんて、原理主義的な考えが沸々と湧いてきてしまうのです。

バルヴェニー 8年 1970年代流通 43% 

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BALVENIE 
PURE MALT WHISKY 
Over 8 Years 
1970’s 
750ml 43% 

評価:★★★★★★(6)

【ブラインドテイスティング】
蒸留所:グレンアラヒー、グレンフィディック
年数:12年程度
樽:アメリカンオーク系のプレーンカスク
度数:43%
その他:1970〜1980年代流通あたりのオフィシャルオールドボトル

香り:穏やかな香り立ち。モルティで土っぽさを伴う古典的麦芽香から、微かに林檎や柑橘(オレンジというよりは文旦、ジャクソンフルーツ系)。薄めた蜂蜜。少し若い原酒なのか、ピリピリと鼻腔を刺激するアタックもある。

味:使い古したアメリカンオーク樽での熟成と思しきプレーンな甘さと程よい華やかさ。加水で整えられた柔らかく素朴な麦芽風味は、ホットケーキや洋梨の果肉のような白い甘さ、柑橘系のフルーティーさがあり、余韻にかけては香り同様の刺激に加えてほのかにピーティー、土っぽい要素とほろ苦さが全体を引き締める。

幾らでも飲めそうな、しみじみうまい、癒し系のオフィシャル加水のオールドボトル。麦芽由来の甘さに厚みがあり、ピート香と合わせて地酒的というか田舎的というか、古き良き時代のハイランドモルト。こういうボトルを飲むと、下のラベルに書かれたような景色がイメージされて、ふと郷愁に駆られてしまう。

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今回のブラインドボトルは、以前、関内のBAR Old⇔Craft の米本マスターから出題いただいたものです。自分が所有していた5リットルのミニ樽を貸した際のお礼、ということで。飲み残しがあったのでレビューがてらサクッと掲載します。

バルヴェニー蒸留所はグレンフィディックと共に、ウィリアムグランツ(WG)社傘下の蒸留所。グレンフィディックに隣接する場所に建設され、第二蒸留所という位置付けながら、モルティング設備や大規模な熟成庫、ウイスキーの需要増と共にポットスチルも8基まで増設するなど、ウィリアムグランツ社におけるウイスキー生産の中核的な機能を有する重要な蒸留所となっています。

長らくグレンフィディックがシングルモルトを中心にリリースし、バルヴェニーはグランツなどのブレンデッド向けという位置付けでしたが、1973年にシングルモルトを初リリース。
最近はシングルモルトの需要増でバルヴェニーの人気も増えはじめてブランドを確立しており、結果、WG社ははブレンド向け蒸留所としてアイルサベイを建設・稼働することとなり、ますますシングルモルトリリースに比重が増えているという傾向があります。

今回の出題ボトルは、その1973年にリリースされた、同蒸留所における初期リリース時代のラベルとなります。
ボトルも当時のグレンフィディックと同じものが流用されており、ラベルはシンプルで・・・というかWG社が当時リリースしていた各ブランドから比較すると明らかに間に合わせ感のあるもので。フィディックが人気だからとりあえず出してみよう、また、仕上がり(樽使い)も独自路線でなくフィディック系統で良いだろう。だからグランツ向けのプレーンオーク熟成のものからバッティング・加水して出しておけ、そんな空気感すら漂ってくるようです。

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(同時期流通のグレンフィディック10年 JAPAN TAX付き(右)と、今回のバルヴェニー8年。飲み比べが面白そうに見えるが、当時にフィディックは闇落ち時代、1960年代前半の原酒を使っており激しくパフューミーであるため注意が必要。)

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(バルヴェニー シングルモルトリリースのラベル系譜。右の初期リリースから、1980年代のファウンダーズリザーブ、10年、そして1990年代には現在に通じる形状のデザインとなる。1970年代だけ明らかにやる気が…というのは気のせいだろうか。)

バルヴェニーのオールドというと、個人的に1980年代リリースからシェリー系の印象が非常に強く。今回のブラインドではオールドのオフィシャルで、酒質が麦系暑く甘め、ほのかなピートの当時らしい内陸系という整理からでは、悔しいかな正解まで導くことができませんでした。
むしろ、パフューム時代を抜けたグレンフィディックの1970年代後期、1980年代流通あたりのボトルに通じるところが多く、このあたりは同じ傘下の蒸留所と考えたら納得できるところですが、ラベルもハウススタイルも、キャラクターが定まっていない時代ゆえのリリースと言えるのかもしれません。

一方で、バルヴェニーは何もブレンド向けのプレーンな原種ばかりを作っていたのではなく、この1970年代あたりからシングルモルトを意識した樽使いを始めるのか、後のリミテッドリリース、TUN1401といった長期熟成原酒各種で非常に良質なリリースを重ねて、ブランドとしても確立していくこととなります。
とするならば、このシングルモルト8年は、現代のバルヴェニーへと通じるターニングポイントにして、始まりの1本。日本市場でもなかなか見かけないボトルであり、貴重なものをテイスティングさせていただき感謝ですね。
ただでさえ、米本マスターからはちょっとアレなブラインドを出題されることが多かったので(笑)

オスロスク 15年 2006-2021 55.5% GM for ハリーズ金沢

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AUCHROISK 
GORDON & MACPHAIL 
For Harry’s KANAZAWA 
Aged 15 years 
Distilled 2006 
Bottled 2021 
Cask type Refill Bourbon Barrel 
700ml 55.5% 

評価:★★★★★★(6)

香り:華やかでオーキー、バニラ、ココナッツ、洋菓子系の甘さ。序盤はウッディでドライなトップノートだが、徐々に熟したバナナや洋梨、フルーティーな甘さが開いてくる。

味:コクがあって柔らかい度数を感じさせない口当たり。麦芽風味と合わせてオークフレーバーの塊。マロングラッセと黄色フルーツのアクセント。徐々にドライでウッディ、スパイシーなフィニッシュ。
時間経過でオークフレーバーの塊が解け、林檎のコンポートや白葡萄を思わせる甘く華やかなフレーバーが広がってくる。

近年のGMコニチョらしい蒸溜所の個性を活かしたカスク。リフィルバーボンバレルだが、1st fillかと思うくらいに濃厚なオーキーさがあり、それでいて渋みが強いというわけではない。オスロスクらしい適度な厚みのある酒質、柔らかい麦芽風味が馴染んでいる。
時間経過での変化についてはコメントの通りで、開封直後やグラスに注いだ直後は絡まって一つの塊になっているフレーバーが、徐々に解け、広がっていく点がこのボトルの注目すべき点である。また、加水の変化も同様でしっかりと伸びてくれる。これは手元に置いて1本付き合いたいボトル。

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先日より応援記事を投稿している、BARハリーズ金沢さんの記念ボトル。
経緯については過去記事に記載の通り、三郎丸蒸溜所ともつながりの深いBARハリーズ高岡が金沢駅前に移転することとなり、その店内内装にかかる費用としてクラウドファンディングが行われています。
このボトルはそのリターンの1つとなっているもので、今回サンプルを頂いたのでレビューを掲載します。

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※クラウドファンディングは11月18日まで。初期の目標額である300万円は達成しており、500万円のネクストリターンも達成間近。後30万円!!
樽焼きステーキ&ウイスキーが楽しめるモルトバー「ハリーズ金沢」を作りたい‼ - CAMPFIRE (キャンプファイヤー) (camp-fire.jp)

オスロスクのリリースは最近少なく、特に近年間違いのないGMコニチョとなれば、気になっている人も少なくなかったのではないかと思います。
で、飲んでみた感想としてはやはり間違いなかったわけです。カスクストレングスでハイプルーフらしい余韻の強さ、麦芽系のフレーバーの厚み、熟成を経たことによる奥行きがあり、それでいて近年のトレンド的なフレーバーは外さない。一見すると通向けというか、地味なところがあるスペックですが、ある程度飲んだ愛好家にとってはこういうのが良いんです。

某ロールスロイスとか政府公認第一号とかより、タムデューとかノッカンドゥ―とか…こういうちょっとマニアックなところのほうが”くる”んですよね。
また、今回のボトルのポイントはリフィルのバレルでありながら、しっかりとしたオークフレーバーが備わりつつ、逆にウッディすぎないバランスの良い仕上がりがポイントです。開封後の変化が良好であることから、それこそハリーズ金沢が今後長く金沢の地でウイスキーを広めていくにあたり、5年後であっても10年後であっても変化を楽しめるような、同店にとって基準であり、基盤になるようなボトルだと感じます。これは良いカスクを選ばれましたね。

ハリーズ金沢のオープンは11月23日(火)。マスターの田島さんから頂いた写真を見て、その雰囲気の良さにびっくりしました。なんで東京にないんでしょうか(笑)
カウンターの一枚板の雰囲気、マーブル模様のような木目は、同店が以前あった高岡の銅器を思わせる模様の洋でもあります。
昨日の東京のコロナ感染者は7名。月曜日とはいえ今年一番低い数字。いよいよ現実を帯びてきたアフターコロナの社会。。。三郎丸蒸留所にも去年以来いけてませんし、北陸に脚を運ぶ楽しみがまた一つ増えました。

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ADN-97 (オルドニー) 24年 1997-2021 ビハインドザカスク 53.3%

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ADN-97 (ALDUNIE) 
SINGLE CASK BLENDED MALT 
BEHIND THE CASK 
OVER 24 YEARS 
Distilled 1997/06/18 
Bottled 2021/08 
Cask type Barrel #1507 
750ml 53.3% 

評価:★★★★★★(6)

香り:まるで蜂蜜のようなトップノート。独特の酸味と熟した洋梨、白葡萄、花の蜜のような甘みのある香り。微かに乾いた麦芽の香ばしさ、オーク香が混じる。

味:スムーズでややウッディ。香り同様の含み香に、奥から麦芽の甘み、コクが追い付いてくる。徐々にドライで華やか、軽やかな刺激を伴いつつ、アメリカンオーク由来のオーキーな余韻が染み込むように長く続く。

香味のベースはグレンフィディックに似た傾向があるものの、「蜂蜜に近い」ではなく「蜂蜜そのもの」を思わせる香味が特徴的なモルト。また、ボトルやラベルからソーテルヌワインを彷彿とさせるが、その香味にも似た要素があると言えなくもない。少量加水するとすりおろした林檎のような甘みとフルーティーさが、蜂蜜を思わせるアロマの奥から開く。また、香り以上に味のほうでまとまりが良くなり、一層白色系や黄色系のフルーティーさが感じられる。
ロック、ハイボールも悪くはないが、ストレートや少量加水をグラスでじっくり楽しみたい。

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先日、対談記事を掲載した、ボトラーズブランド「BEHIND THE CASK」のファーストリリースのうちの1つADN-97。気になっていたボトルで、ウイスキー仲間経由でボトルごとお借りしました。中身はウィリアムグランツ社がグレンフィディック・バルヴェニー蒸溜所の敷地内に建設した第三蒸留所、キニンヴィのティースプーンモルトで、なんとも通好みなリリースを一発目に持ってきたなと驚いたことを覚えています。

このボトルをレビューするにあたっては2つの切り口があり、一つはキニンヴィという蒸留所のスタイルから見てどうかということ。そしてもう一つが、ビハインドザカスク社のリリースコンセプトとしてどうかということです。
今回の更新ではこの2つの視点で順番に説明していきます。(※同社リリースコンセプト等については、先日更新した記事を確認ください。)



■蒸溜所のハウススタイル
キニンヴィはグランツやモンキーショルダー等のブレンデッドに使われるため、10年ほど前はリリースがない幻の蒸留所の一つと言われてきました。一時ヘーゼルウッド名義で濃厚シェリー系がリリースされたのですが、酒質がよくわからない。。。その後オフィシャルから、リフィル系統の樽構成の23年、17年などがリリースされ、蒸溜所の個性を把握できるようになりました。

そもそも親会社がブレンド用に代替品として仕込んだモノ。当たり前と言えば当たり前なのですが、その個性は非常にフィディック寄りだったんですよね。
フィディック寄りで若干ローランド的というか、軽やかな植物感とエステリーな華やかさがあるというか。バルヴェニーのように麦芽風味が膨らむ感じではありませんが、一般的に兄弟が同じDNAを受け継いでどこか似たところがあるような感じ。
実際、同じ敷地内にあるということもあって、キニンヴィの仕込みはバルヴェニー の設備を一部共用する形で行われているとのことで、造りの面からも納得のいく個性でした。

Kininvie-Stillhouse
(※キニンヴィのポットスチル。グレンフィディックのスチル形状のミニチュア版とも言われているが、手前の初留釜は大きく独特の形状をしており、香味の違いに影響していると考えられる。画像引用:https://www.whiskyandwisdom.com/kininvie-the-distillery-emerges/)

ではこのADN-97はどうかというと、使われた樽の影響か特殊な香味が付与されています。樽はバーボン樽なのですが、ひょっとすると元々熟成に使われていたバーボン樽と、ティースプーン的な処理をした後で原酒を詰めなおしたバーボン樽が違うのかもしれません。

ベースの酒質は上述の個性から外れたものではありませんが、香りのトップに来る蜂蜜そのものを思わせる香りは、通常のWG社のモルトのどれにも当てはまらないもので、このボトルの個性にも繋がっています。(内陸系のモルトには、蜂蜜のような香りがするものはいくつもありますが、似た香りと、そのものを思わせる香りでは、大きな違いがあります。)

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■BEHIND THE CASKのリリースコンセプト
さて、冒頭述べたように、特筆するところはもう一つ。それは、ビハインドザカスクのリリースコンセプトである「ソムリエがサーブするウイスキー」。ワインと同じく、経年変化、温度変化なども見て楽しんでほしいとするものです。
先日同社代表の澤田さんと対談させてもらった際、このADN-97については

「AND-97は開封直後から蜂蜜、洋梨、そして花のような甘みと酸味を感じる香りがあり、香味ともあまりトゲトゲしいところはありません。これらの要素がグラスの中で馴染み、開いていくことから、比較的早飲みのイメージです。温度としては、軽く冷えた状態からサーブすると、常温に戻る過程で変化をさらに楽しんで貰えるのではないかと思います。」

とあり、だったら白ワインのように冷やして飲もうと。ただ借り物であるボトルごと冷やすのはちょっと憚られたので、小瓶に移して冷蔵庫へ。1時間弱冷やしてからワイングラスに移し、徐々に温度を戻しながら飲んでみました。
するとなるほど確かに、香りが少し硬さを帯びるのですが、それが逆に冷気を伴う香りと合わせて蜂蜜レモンドリンクのような爽やかさを伴う香りとなり、徐々に蜂蜜感が強く、果実系のアロマが開いてくるような変化。香味が開くという過程をわかりやすく楽しめました。

グラスと温度で変化をつけることで、同じボトルでも楽しみが広がる、新しい選択肢だと思います。ユーザーとしてはそれをテイスティングの際の指標ともできますし、BAR等で独自の解釈で提供があっても面白いと思います。

因みに今回のリリース名称ADN-97は、Aldunieを略したもので、97は蒸溜年と考えられます。とすればもう一つのリリースであるグレーンのIGN-89は、Invergordon 1989となりますね。
なお、同社から予定されている次のリリースはGNR-13、シェリー系であるとのこと。つまり…Glen rothesの短熟圧殺系でしょうか。シェリー系は時間をかけて変化を見ていくタイプも考えられるため、公式からの発信を楽しみにしております。

シークレットスペイサイド ブレンデッドモルト 19年 ドラムラッド 1stリリース 44%

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SPEYSIDE BLENDED MALT 
DRAMLAD JAPAN 
THE ONE DRAM SELECTION 
Aged 19 years 
Distilled 2001 
Bottled 2021  
Cask type Sherry #48 
700ml 44.0% 

評価:★★★★★★(6-7)

香り:ドライプルーンやナッツ、ブラウンシュガーを思わせるシェリー系のウッディネスに、紅茶、アプリコット、熟した洋梨等の華やかなオーク香が、枯れたようなドライな刺激と共に感じられる。シェリー感は濃すぎずクリア寄りで、夏場であっても嫌味にならない。

味:口当たりはスムーズで度数相応だが、骨格は崩れておらず、余韻にかけて軽くヒリつくような刺激が残る。この点は酒質由来の要素だろう。口内で広がるシェリー樽由来のダークフルーツ系の香味はバランス良く、香り同様の印象。じわじわとドライなオーク、カカオチョコレートを思わせるビターなウッディネスが染み込むように長く残る。

バランスの良いシェリー系ブレンデッドモルト。おそらくニューメイクからブレンドしているタイプと思われるが、印象としてはマッカラン、グレンロセス、タムデュー、リベットあたり。原酒同士はしっかりと融合し、濃厚過ぎないシェリー感に、オーキーなフルーティーさ、華やかさがアクセントとなって、近年流行りの圧殺シーズニングシェリー系とは一線を画す、一昔前のボトラーズリリースを連想させるフレーバー構成。
開封直後、真夏というシェリー樽熟成ウイスキーに厳しい時期でのテイスティングでありながら、これだけ飲める点が素晴らしい。これから秋、冬にかけてじっくり楽しんでいけるグッドリリース。

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先日紹介させて頂いた、ドラムラッド社のファーストリリース。同社の伊志嶺代表、及びテイスターが自信をもってチョイスしたというボトルです。販売開始即完売したリリースですが、運良く入手することができ、この1週間、じっくりとテイスティングさせて頂きました。

ボトラーズブランド・ドラムラッドについては当ブログでも紹介しておりますので、前置きは不要でしょう。同ブランドのアピールポイントの一つは、テイスターの顔が見えること。実績のあるテイスターが総意でチョイスする、美味しさ、面白さ、個性。。。これら明確な狙いのあるリリースにあります。
ただ、本音を書かせてもらえれば、1st リリースの情報を見た際、楽しみだというポジティブな想いだけでなく、おや?と思うところが無いわけではありませんでした。

それはドラムラッド社がラベル上でも掲げるビジョン「PRIDE MAKES DELIGHT」や、コアレンジのコンセプト「蒸溜所のハウススタイルを体現する樽や、今のウイスキーの旨さと豊かな個性を持った樽」を掲げるリリースの第一弾が、素性を明記できないシークレットシリーズかつ、ブレンデッドモルトであったことにあります。
また、スペックから「所謂シーズニング圧殺タイプかな」という予想もあって、個性がわかりにくいのではないか、果たしてコンセプトに合致するものなんだろうか…と、懸念する部分があったのです。




しかし、そうした印象はテイスティングしてみて消えました。
ブレンデッドモルトといっても、これはニューメイクの段階でバッティングされたものでしょう。もはや「スペイサイド地域産」という、一つの原酒と言っても過言でないレベルで融合し、同地域のモルトが熟成することで感じられる、軽やかでフルーティーな個性がしっかりと感じられます。一方で蒸溜所の個性としては、癖の少ないクリア寄りの酒質の中に、度数落ちでありながら骨格を残すアタック、刺激から有名蒸留所のいくつかを連想する酒質が感じられます。

シェリー感には現行寄りのシーズニング的な要素はありつつも、圧殺的なしつこさではなく、熟成によって付与されたオークフレーバーや、酒質由来のフルーティーさが混ざり合う点が好ましい。また、度数落ちのモルトに見られる、やや枯れたニュアンスと、それによって強調されるドライな華やかさがシェリー系の甘みの中でアクセントとなっています。
往年の愛好家にとっては、懐かしさも感じるウイスキーですね。個人的には、BBR社がリリースしていたブレンデッドモルトウイスキー、ブルーハンガー25年の1stや2ndリリースを彷彿とさせるキャラクターだと感じました。

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(BBR ブルーハンガー25年。初期のころのものは、やや枯れたようなシェリー感、オークフレーバーに、熟成を経たモルトのしっかりとしたフルーティーさが特徴的だった。今回のドラムラッドリリースは、近年寄りのシェリー感ではあるが、その中にこうしたリリースを彷彿とさせる要素が備わっている。)

スペイサイドという地域らしさに加え、現行品のウイスキーの中でも十分な美味しさ、魅力的な個性を秘めたカスクのチョイスは、シークレットというベールの中にそれを見出し、固定概念にとらわれず後押しする。テイスターチームがあってこそのリリースであるとも感じます。
というか、現行品でこれ以上のシェリー系のウイスキーを、この価格で調達するのは難しいのではないでしょうか。前情報で予想したことから一転して、なるほど、これこそドラムラッドの1stリリースに相応しいんじゃないかと思えました。

ブログ公開に先立ち、伊志嶺さんにメッセージを送ったところ、こうしたカスクは今後も調達できる見込みがあるとのこと。ドラムラッドのシークレットスペイサイドは今後も期待できそうです!

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THE AGE of INNOCENCE
ROUGH COAST 
Islay Single Malt
Batch1 Red Wine Cask 

さて、今回のリリースは同社の理念を体現したコアレンジである「THE ONE DRAM SELECTION」であったわけですが、8月19日には若い原酒だからこその個性、あるいはカスクフィニッシュ等によるこれまでにない新鮮さ、驚きのある味わいを楽しむグレード「THE AGE of INNOCENCE」の発売も予定されています。
ネーミングは「Rough Coast (荒れる海岸)」。これは今回のみのリリースではなく、今後もBatchを重ねる形で、リリースを継続していくシリーズになるのだとか。

近年のスコッチウイスキー業界では、オフィシャル側との関係で蒸溜所名を明記してのリリースが難しくなってきています。
アイラシングルモルトという表記はシークレットXXXXと同様に、いかにも現代のウイスキーという感じですが、中身はスモーキーさのはっきりした原酒で、ハイボールにもマッチするとのこと。カスクフィニッシュのリリースは当たり外れが大きい印象があり、普通なら抵抗を感じてしまいますが、このメンバーが選んだなら…と、早くも後押しされている自分が居ます。

PBリリースが増えてきた昨今の市場において、その中でもしっかりとしたメッセージ、選定者の顔が見えるというのは、一つ重要なファクターなんですね。


最後に。。。全く関係ないのですが、自分が使っているスマートウォッチのデザイン(配色)が、THE ONE DRAM SELECTIONラベルに似ているなと。ドラムラッドブランドにますます思い入れを持ってしまいそうです(笑)。
そんなわけで、今後のリリースも楽しみにしております!!

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