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グレンフィディック12年 スペシャルリザーブ 40%

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GLENFIDDICH 
OUR ORIGINAL TWELVE 
Aged 12 years 
700ml 40% 

評価:★★★★★(5)

トップノートにはやや硬質感があるが、青りんごや洋梨を思わせる華やかなオーク香、微かにレモンピールを思わせるニュアンス。時間経過で奥から麦芽由来の甘さも混じる、爽やかなフルーティーさが心地よい。
一方、味わいは香りに比べて少々広がりが乏しい。麦芽由来のほろ苦さ、柔らかい甘みが舌の上で感じられ、余韻は砂糖漬けドライレモンピールを思わせるビターなウッディネス、ほのかにオーキーな華やかさが鼻腔に抜けていく。あっさりとしたフィニッシュ。

ラベルにはオロロソシェリー樽とバーボン樽で12年熟成と記載があるが、色合い、香味から察するに熟成はほぼバーボン樽で、シェリー樽はアメリカンオークのリフィルか。香りはオークフレーバーがしっかり感じられるが、40%加水の普及品ということもあって、味わいは小さくまとまっている。やや硬さもある。しかし柔らかく甘みのある麦芽風味主体の素直な酒質と、アメリカンオーク由来のオークフレーバーという、定番の組み合わせから流行りを外さない安定感は、このボトル最大のポイント。何と言ってもハイボールがオススメ。

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先日、酒育の会のWEBマガジン「Liqul」に投稿したウイスキーコラム、”Re-オフィシャルスタンダードテイスティング”で紹介したグレンフィディック12年です。
昨年市場に出回り始めたリニューアル後の現行品ボトルで、いつかコラムで取り上げようとボトルだけは買ってあったのですが、年明けの更新に回ってしまいました(汗)。

グレンフィディック12年スペシャルリザーブ 平凡にして非凡な1本:Re-オフィシャルスタンダードテイスティング Vol.10 | LIQUL - リカル -

コラムにも書いたように、グレンフィディック12年は味、価格、流通量、それらのバランスが優れた、定番品として申し分ない1本だと思っています。
勿論、万人向けオフィシャルスタンダードとして突き抜けた仕様にはなっていないため、嫌なところが少ない反面、良いところも控えめで。。。だから面白みがないし、1杯の満足感としてはそこまでと感じる方も多いと思います。

ですが、軽やかな熟成感と爽やかなフルーティーさは、近年のスペイサイドモルトのキャラクターど真ん中であるだけでなく、若さも目立たない点は好感がもてる仕上がり。
ハイボールとの相性はバッチリであるだけでなく、同ブランドにおける上位グレードにも通じる、フルーティーさが備わっているのもポイントだと思います。
ちゃんとハイエンドへのステップ、エントリーグレードとしての役割も果たしているんですよね。

どこにでもあり、目立った仕様もないため平凡すぎて軽視されがちですが、改めて飲んでみると、なんだ結構良いじゃないかと、その非凡さを感じる銘柄の代表格。年間100万ケース以上販売しながら、このクオリティが維持されているのは凄いことです。

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一方で、2015年から販売されていた(日本市場では2016年頃から)、写真の1世代前のボトルと比べると、リニューアル後の今回のボトルは、麦由来の甘みがプレーン寄りになって、その分樽由来のフレーバーに硬さが目立つようになったと感じています。

これはさらに古い世代のボトルと現行品を比べると、一層華やかに、しかし麦芽風味はプレーンに、という変化が感じられると思います。
理由はわかりませんが、やはりあれだけ量産しているので、多少なり品質や樽使いに影響があっても仕方ないのかなと。それはが今回はた、またまハイボールに合う仕上がりだったというだけなのかも。
ですがそんなことを言ったら、同じく12年のシングルモルトで売り出している某静かな谷のように、リニューアルする毎に樽感が薄く若さが目立って、いったいどうしたのかという銘柄も散見されるなか。他社スペイサイドモルトがリニューアルする度に、グレンフィディックの安定感が際立つ結果になっているようにも感じます。

我々ウイスキー飲みって、常にフルコースの満足感を求めているわけでも、波乱万丈の展開をグラスの中に求め続けているわけでもないんですよね。食中酒や風呂上りにさっぱり飲みたいという時に、このハイボールはピッタリなのです。
ノーマルなブレンデッドで、例えば角やデュワーズのように、同様にオーキーなフレーバーを備えたものとも異なる、ハイボールでのバランス、味わいの深さと満足感。適材適所、デイリーウイスキーってこういうヤツだと思います。

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余談:グレンフィディック蒸溜所の蒸留器については、写真のように異なる形状のもの、加熱方式も間接だけでなく一部直火蒸留があるなど、複数のタイプが存在します。
これらで蒸留されたニューメイクは、同じタンクに混ぜて貯められるため、スチル毎で見れば原酒の造り分けが行われているものの、全体としては均一化されている蒸留所であるのだそうです。
なるほど、香味のブレの少なさはそこにあるのかと、安定感の裏付けに加え、時代時代で味が変わってきているのは、麦芽品種の違いだけでなく、この一団を構成するスチルの形状や蒸留方式が時代で一部変化し、樽詰めされるグレンフィディックの原酒を構成するピースが変わってきているからかもと、予想しています。

グレンアラヒー 12年 48% 2020年ロット

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GLEN ALLACHIE 
Aged 12 years 
SLEYSIDE SINGLE MALT SCOTCH WHISKY
Release 2018 (Lot of 2020) 
700ml 46%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後2か月程度
評価:★★★★★(5ー6)


香り:ツンと鼻腔を刺激する硬質感のある香り立ち。黒砂糖やかりんとうのシェリー樽由来の色濃いアロマ、スワリングするとバナナや焼き芋を思わせる焦げ感のあるオーク香も混じってくる。

味:はっきりとシェリー樽のニュアンスに、とろりとした厚みのある樽感と麦由来の甘さ。若い原酒の酸味もあるが、すぐにオーキーな華やかさが開き、それらが混ざり合ってパチパチと軽やかな刺激とカカオを思わせるほろ苦さを伴うフィニッシュへと繋がる。

若い要素の垣間見れるモルトで、厚みと強さのある酒質を樽感でカバーしたような構成。シェリー系のフレーバーの濃さ、バーボン樽由来の華やかさが備わっており、粗削りだがリッチな仕上がりである。オススメは少量加水。硬質感がやわらぎ、2系統の樽それぞれに由来する香味が混ざり合った柔らかい甘さ、スムーズな口当たりへと変化する。これからのシーズンにオススメな、デイリーユースの1本。

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いつの間にかシェリー系リリースへとシフトしていた、グレンアラヒー12年の現行ボトル。
2018年のリリース初期から2019年のロットでは、色は下の写真の通り、10年、12年、18年と大きい違いのない、琥珀色ベースの色合いでしたが、2020年頃のロットから1st fillのシェリー樽比率が増えたのか、外観は全くの別物となっています。(Whisk-eさんのWEB画像も差し替えられました。)

当然フレーバーも変化しており、旧ロットの「若さの残る麦芽風味からバーボン樽由来の華やかさ」という構成が、後半の華やかさはそのままに、前半がシェリー系の色濃い甘みとビターなフレーバーに上塗りされています。
元々聞いていた情報では、グレンアラヒー12年のシェリー樽比率は30%とのことです。そこから全体の割合が変わったというよりは、内訳がリフィルのオロロソ主体から、1st fill PXシェリー樽主体となったのではないかと推察。ロット差というには大きな違いですが、総じて好ましい変化だと思います。

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このボトルは、LIQULのオフィシャル銘柄紹介記事(Vol.6 進化するグレンアラヒー)を書くにあたり、18年との比較テイスティング用に購入したものでしたが、思いっきりアテが外れました(笑)。
元々、18年をメインに持ってくるつもりで、その発展途上にあるボトルとして12年を使う予定だったのですが・・・箱を開封してびっくり、何この色、予定と違う、さあどうするか。

ただし飲んでみると樽感はわかりやすく、若い中にも好ましい要素があり、5000円以内という価格帯を考えれば十分勝負できる構成。同価格帯で濃厚なシェリー系のリリースが減る中で、”はっきりとしたシェリー感”と言う新たな武器を得たように感じて、これはこれで個別に取り上げていくボトルだと。急遽記事の構成を変更し、タイトルも「進化するグレンアラヒー」としました。

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一方、今回ブログを書くにあたり改めて飲んでみて、当時は気づかなかったことが1つ。2020年ロットからの12年の変化は、新たにリリースされたPX&オロロソシェリー樽100%の15年も意識したマイナーチェンジだったのではないか、ということです。

2018年、グレンアラヒーのシングルモルトがリリースされた当時は12年の次が18年で、シェリー感がそこまで主張しない18年と同じベクトル上にあるバッティングだと感じていました。その後、シェリー100%15年が登場したことで、15年や18年に続くブランドのエントリーグレードとして、双方の特徴を持つようにブレンドを調整したのではないかと。
実際、15年で主に使われているPXシェリー樽の特徴が、12年でもフレーバーの柱の一つとなっています。

そして何より、このような方針変更を、しれっとやってしまえることも、特筆すべきポイントだと思います。
グレンアラヒーは1960年代にマッキンレーのブレンド向け原酒を作るために創業した蒸留所で、以降位置づけは変わらず近年に至ったわけですが、オフィシャル通常リリースの、それもボリュームゾーンである12年にこうした変化が出来るということは、原酒のストックが潤沢だからこそでしょう。薄くなることはよくある話ですが、濃くなるのはなかなかありません。
あるいは、ハウススタイルを模索している最中ということなのかもしれません。オフィシャルの通常ラインナップと言うと、フレーバーが安定してブレ幅が少ないイメージがありますが、こういう変化からあれこれ考えるのも面白いですね。

ロングモーン 18年 ダブルカスクマチュアード 48% シークレットスペイサイド

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LONGMORN 
18 YEARS OLD 
DOUBLE CAKS MATURED
Cask type American Oak Barrels and Hogsheads 
700ml 48% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅
時期:開封後1か月程度
評価:★★★★★★(6)

香り:華やかでオーキー、ドライな香り立ち。奥にはメレンゲクッキーのような甘さ、砂糖をまぶしたオレンジやパイナップルなどのドライフルーツ。スワリングしていると洋梨を思わせる品の良いフルーティーさも感じられる。

味:口当たりはスムーズで、乾いた麦芽風味から粘性のある黄色い果実風味が広がる。まるでクラッカーの上に洋梨のジャムやリンゴのコンポートを載せて食べたよう。余韻にかけてはウッディで軽いスパイシーさ。オーキーな華やかさと黄色いフルーツがバニラ香を伴って鼻腔に抜け、ドライな質感の中にねっとりとしたオークフレーバーが舌の上に残るように長く続く。

スペックからの予想を裏切らない構成。香味ともアメリカンホワイトオーク系、オーキーな華やさが主体で、近年のロングモーンらしくボディは軽めだが、線が細いというわけではなく樽感の中に麦芽由来の甘みもほのかに感じられる。少量加水すると濃縮感のあった中盤以降のオークフレーバーが伸びて、スムーズに楽しめる。ハイボールも美味しいが、これじゃなくても良いかもしれない(汗)。
また、キーモルトとしての位置づけから、シーバスリーガル・アルティスあたりとの飲み比べも面白そう。

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日本では2020年9月に、本国では7月にペルノリカールから発売されたシークレットスペイサイドシリーズ。同シリーズはシーバスブラザース社傘下の蒸留所の中でも、これまでシングルモルトのオフィシャルリリースが積極的にはされてこなかった
・キャパドニック
・ロングモーン
・グレンキース
・ブレイズオブグレンリベット
スペイサイド地域の4蒸留所から構成される、シングルモルトブランドです。

要するにシーバスリーガルのキーモルトでもあるこのシリーズ。バランタインからも同じようなシリーズが出ていますし、有名ブレンドの構成原酒やブレンデッド向けだった蒸留所からシングルモルトがリリースされるのは、最近のトレンドとなってきているようです。
※シークレットスペイサイドのラインナップ詳細は、ブランドサイトニュースリリースを確認いただければと思います。

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(シークレットスペイサイドシリーズ。ロングモーンは18年、23年、25年の3種類がリリースされている。)

しかし全て18年熟成以上という中長熟ラインナップというだけでなく、一応限定品扱いとはいえ閉鎖蒸留所であるキャパドニック蒸留所の原酒を、ピーテッドとノンピートの2パターンでリリースしてくるとは思いませんでした。
それだけ原酒のストックが潤沢で、代替の蒸留所もあるということなのでしょうか。とはいえ、世界的なウイスキーブームの中で閉鎖蒸留所の原酒というのはある日突然入手困難になるものです。BAR等をやられている方は、将来用にストックされても面白いかもしれませんね。

改めまして今日のレビューアイテムは同シリーズから、みんな大好きなロングモーン18年です。
ロングモーンは数年前に16年が終売となり、新たにリリースされたNAS仕様のディスティラーズチョイスを海外から取り寄せてテイスティングして・・・率直に言えば残念な気持ちになったという記憶のある蒸留所です。(その後16年も新たにリリースされていたようですが、こちらは未確認。)

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(ロングモーン・ディスティラーズチョイス。若く、そして樽の乗りも熟成期間相応というシングルモルトだった。)

近年の同蒸留所の傾向としては、酒質がライトかつドライになっており、これは他のスペイサイドの蒸留所にも見られる変化ですが、ロングモーンの変化は特に大きかったように思います。
一方で、今回の18年はどうかと言うと、これは悪くない、むしろ良いです。
アメリカンホワイトオーク主体の、華やかでドライ、黄色系のフルーティーさがあるタイプ。樽の分析とかはする必要なく、近年のロングモーンの酒質にバーボン樽とホグスヘッド樽で熟成させたらこうなるよね、というどちらの意味でも期待を裏切らない仕上がりとなっています。

この手のフレーバーはボトラーズに多かったタイプですが、最近はオフィシャルでも増えてきました。市場で人気の味に合わせてきたというところでしょうか。また、18年にしては樽感が濃厚な部分もあり、20年以上熟成した原酒も一部使われているのではないかと推察します。幅広く原酒を使ってバランスをとれるのは、オフィシャルの強みですね。

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さて、この香味の系統だと、ライバル筆頭候補は相変わらずグレンモーレンジ18年です。
中身のレベルは同格。となると気になるのは価格です。
その他、近い熟成年数かつクオリティのシングルモルトも含めて市場価格を比較してみると・・・

・ノッカンドゥ21年 43% 9000~10000円程度
・グレンモーレンジ18年 43% 10000円程度※
・ロングモーン18年 48% 11000~13000円程度※
・グレンバーギー18年 40% 12000円程度
・ベンリアック20年 43% 12000円程度
・グレングラント18年 43% 14000円程度※
※はオークフレーバーが特に強く出ているタイプ。

となって、後はネームバリューや、蒸留所が持つ話題性等も考えたら、これは良いところにまとめてきたとも思います。
No,1候補グレンモーレンジ18年は健在ですが、度数を考えたら5%高いロングモーンも充分選択肢に入る。昨年、アラン18年がシェリー系にシフトして、ライバル不在になったジャンルでしたが、これは強力な対抗馬の登場です。

また、ロングモーンで18~20年熟成、同じようなフレーバー構成でボトラーズからリリースされたら・・・今この価格じゃ買えないです。
1990年代以前、ブレンデッド優先の時代に芽吹き、2000年代にかけてコアユーザーのニーズを満たし、地位を築いたボトラーズリリースですが、昨今はオフィシャルが強力ライバルとなりつつあります。

いやだって、こんなオフィシャル出されたら、これでいいやって思っちゃうじゃないですか。

行列に並んで食べられるかもわからない、人気料理店のこだわりの1品料理より、毎日食べられるチェーンレストランの上位メニューと言う選択肢。自分のような探求側の人間がその思考で良いのかと思いつつも、流石ペルノさん、いい仕事してますねぇ、としみじみ思わされた1本でした。

キャパドニック 14年 1977-1992 ケイデンヘッド 60.5%

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CAPERDONICH 
CADENHEAD'S 
AUTHENTIC COLLECITON 
AGEd 14 YEARS 
Distilled 1977 
Bottled 1992 
Cask type Sherry Oak 
700ml 60.5% 

グラス:木村硝子
時期:開封後10年程度
場所:自宅
評価:★★★★★★(6ー )

香り:ハイトーンで強いアタック。ローストしたアーモンドや麦芽のクッキー、かりんとうを思わせる香ばしい甘さがあり、その奥にはリンゴのカラメル煮、エステリーなフルーティーさも潜んでいる。

味:スウィートでリッチな口当たり。経年故に序盤はマイルドだが、徐々にハイプルーフらしくヒリつくような刺激を伴う。ボディは骨格がしっかりとしており、レーズンやオレンジを思わせるドライフルーツの甘み、微かに黒糖かりんとう。口内で膨らむように広がる。
余韻はスパイシーでシェリー樽由来のウッディな甘さに加え、焙煎麦芽を思わせるほろ苦い香ばしさが長く残る。

この時代のケイデンヘッドリリースらしく、開封直後はパワフルでバッチバチ。樽感は淡いがシェリー系で、硫黄要素が樽由来の甘みの中に目立つ、中々扱いに困るボトル。ただ、時間経過で随分こなれて美味しく頂けるまでに変化した。時代的に酒質に厚みがあることもあって、少量加水すると樽由来の甘み、フルーティーさが香味とも開き、高度数故の刺激も収まることで全体のバランスが極めて良くなる。


ケイデンヘッドからリリースされていた、オーセンティックコレクションシリーズ。通称グリーンケイデン。
黒ダンピーボトルの後継として、主に1990年代にリリースされていたもので、蒸留時期としては1970~80年代、熟成年数10~20年程度の、比較的短熟~中熟クラスのカスクストレングスが多いという特徴があります。

また、蒸留時期がシェリー樽からバーボン樽にシフトする狭間の期間にあったためか、熟成に使われている樽は一部長熟モノを除きリフィルシェリータイプ(中にはサードフィルっぽいものも)を主とするのも特徴の一つ。よってシェリー系の香味がメインにあるわけではなく、現在のようなアメリカンオークの華やかでオーキーな香味というわけでもない、樽香のプレーンなリリースが多くありました。

これらの特徴から、同シリーズは開封直後はとにかく高度数と熟成年数の若さからくるバチバチとした刺激が強かったのですが・・・それが逆に、樽出しとは、酒質由来の香味とはこういうものだと、あるいはボトラーズリリースとはこういうものだと。総合的な完成度として熟成のピークを見極めたというより、多少の粗さは目をつぶりつつ個性を楽しめる時期に入ったからリリースしたという、オフィシャルとは評価軸の異なるリリースが、グリーンケイデンの魅力だったとも感じています。
この辺は、シェリー系でも濃厚なタイプが多かったGM、樽だけでなく加水にも抵抗はなかったシグナトリーらとは異なるベクトルだったと言えます。

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(我が家のグリーンケイデンたち。。。7年前時点。当時は60年代の長熟が注目の主流で、ちょっと外れた時期のグリーンケイデンは、そこまで高騰していなかった。行きつけのBARにモノが多くあったことや、このデザインが好きでかなり飲んだボトルである。)

前置きが長くなりましたが、こうした特徴に対して、このキャパドニックがどうだったかと言うと、だいたいは上記で述べたスタイルに合致して、その他ボトラーズリリースに見られる熟成したスペイサイドモルトのフルーティーさとは違い、モルティーな厚みが楽しめるタイプ。経年からアルコールが抜けてスカスカというわけではなく、55%くらいは残っているように感じます。
また、開封直後はシェリー感にネガティブな部分も多少あったわけですが、これがかなり時間をかけて抜けた結果、ドライフルーツ系の香味の要素の中に、かりんとうを思わせる香ばしさといったフレーバーに繋がっています。

先日キルホーマン・サロンドシマジ向けのレビューでも触れましたが、硫黄は適度に抜けてくれれば、後はそれが香味の下支えになって全体の厚みにも繋がってくる。このボトルはとにかく時間がありましたが(汗)、瓶熟の可能性を含めてしっかりと楽しませてもらいました。

リンクウッド 27年 1992-2019 ザ・ニンフ forハリーズ高岡 46.9% #5282

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LINKWOOD 
The Nymph "Blue Dun" 
Aged 27 years 
Distilled 1992 
Botlled 2019 
Cask type Hogshead #5282 
For Harry’s Takaoka 
700ml 46.9% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後1週間程度
場所:自宅
評価:★★★★★★(6)(!)

香り:オーキーでエステリー、ドライで華やかな香り立ち。じわじわとファイバーパイナップルやアプリコットなどのドライフルーツ、微かにすりおろしたリンゴや麦芽の甘やかなアロマ。オーク由来のハーブを思わせる要素も混じる。

味:香りはドライ寄りだが、口当たりはクリーミーで柔らかい。ナッツをまぶした焼き洋菓子の香ばしさ、熟した洋梨の柔らかい甘酸っぱさと蜜のような熟成感のあるフレーバー。ボディはミディアム程度。じわじわとほろ苦いグレープフルーツやオレンジピールの柑橘感を感じるウッディさ。微かなピート香が余韻にかけて感じられ、軽い刺激と共に全体を引き締めるようにまとまっていく。

自分の好きなタイプのリンクウッド。アメリカンオークとリンクウッドの組み合わせの代表的なフレーバー構成。そこに麦感の甘味がオーク由来のフルーティーさ、ウッディネスに混じり、華やかさ、果実味、軽い香ばしさと麦芽風味、そしてビターなフィニッシュへの変化を味わうことができる。度数は46.9%と下がっており、余韻は多少弱くもあるが、逆に飲み口の柔らかさとの一体感、バランスの良さに通じていて杯が進んでしまう。加水には向いておらず、ストレートでじっくりと楽しみたい。

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若鶴酒造・三郎丸蒸留所の稲垣マネージャーが、独身豚ことモルトヤマの下野さんと立ち上げたオリジナルブランドのファーストリリース。昨年スコットランドで確保してきた1樽で、若鶴酒造と同じ系列のBARである Harry's Takaoka(ハリーズ高岡)向けのプライベートボトルとして、5月18日にリリースされたばかりの1本です。

今回のリリースは、事前予告なく若鶴酒造、モルトヤマで一般販売が開始されたのですが・・・公開から約30分で完売。
リンクウッドにバーボンホグスヘッドという間違いない組み合わせに加え、最近リリースの少なくなってきた1990年代前半蒸留の中長熟モルトなら、今の相場だと2万円前半してもおかしくないのがあの価格。記載間違いか、味や品質の訳あり樽なのではと思った人も少なくないのではないでしょうか。

味については、レビューに記載のとおり問題なし。価格については「今回は運が良かった」との話を聞いていますが、ウィックおよびリラックスというグループ傘下の系列企業によるメーカーとのコネクション、輸入・流通で独自の強みがあるとしたら、今後のリリースにも期待が持てますね。



ブランド名となっている「Nymph(ニンフ)」は、ギリシア神話で川や泉に住むとされる妖精の名前です。そうした精霊はウイスキー樽にも住んでいるのではないか、というイメージから、ニンフが住む樽のウイスキーをリリースするというのが、ブランドコンセプトのようです。
とするとラベルに描かれるのは、当然美しい妖精の姿・・・かと思いきや、描かれているのは”毛鉤”。ご存じの方も多いと思いますが、川に住むトビケラやカゲロウなどの羽虫を総称してニンフとも呼び、その羽虫の姿をベースにした毛鉤もまた、ニンフと呼ばれているのです。(ブルー・ダンはそのニンフフライの配色と種類にあたります。)

先日、ラベルデザインとともにこのリリースの話を聞いた時は、「スコットランドはサーモンやトラウトフィッシングのメッカだし、ウイスキー好きは釣り人も多い。良いブランド名じゃないですか。」なんて返していた、学の無い趣味人な私。。。
稲垣さんも釣り好きだし、ラベルも毛鉤だし、マジで違和感なかったんですよね。
それが蓋を開けたら妖精ってどういうことやねんと。いや価格だけでなく味も良いので、妖精が住んでる樽として文句はありません(笑)。

近年多く見られるプレーンで主張の乏しいリンクウッドと違い、程よく残った麦芽風味、ほろ苦いウッディネス、しっかりとした熟成感にオールドスタイルなリンクウッドにも似た個性を感じます。
度数落ちは組み直しのホグスヘッド樽によくある仕様とはいえ、しかしこれが適度な落ち具合。抜けた感じ、枯れた印象は目立たず、アメリカンオーク由来のオーキーなフルーティーさとナッツを思わせる軽い香ばしさ、そしてクリーミーな麦芽風味とウッディネスが熟成を経て混ざり合う。2杯、3杯と杯の進む飲み口でありながら、シングルカスクらしい主張の強さも適度に感じられるバランスの良さが、このリリースのポイントです。

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(富山県高岡市駅前、BARハリーズ高岡のバックバーの一部。ウイスキーBARとして本格的に動き出してから3年間でみるみる増えた。近年リリースのボトルに限れば、日本全国でもこれだけボトルが揃うところは少ない。今回の1本は、同店にとっても待望のプライベートリリースとなる。)

一方、今回のリリースで謎なのが、27年熟成で300本というボトリング本数。ホグスヘッドなので250リットル容量として、年1%のエンジェルシェアで計算しても27年で180~190リットル、250本程度しか残らない計算になります。
つまりよほど水分の揮発が少なく、アルコールの揮発が多い環境にあった樽ということになるのですが、実はメーカー側から聞いていた本数にブレがあったそうで、300本と言われてラベルを作ったところ、最終的にはそれより少ない本数に落ち着いたのだとか。
うーん、なんというスコットランドクオリティ(汗)。

とはいえ熟成した原酒の確保が難しい状況下で、これだけの原酒をあの価格でプライベートボトルに出来たハリーズ高岡さん、なにより稲垣・下野ペアの引きの良さには軽く嫉妬してしまいそうです。
評価は、価格の件があるので(!)は確定。自分が大好きな味の系統なのもあって、★6からプラスで6.5前後のイメージ。もっとガツンとくる50%オーバーが好みの人には物足りないかもしれませんが、麦感とフルーティーな甘酸っぱさが苦味へと変化していく流れが、古典的なスペイサイドモルトを連想させて個人的にどストライクなのです。

あとは香りが注ぎたてから甘やかに広がれば★7固定なのですが、そこまで求めるのは無粋というものですね。従って7に近い6ということで。
時期は不明ながら、ニンフシリーズは次のリリースも予定されていると聞いていますので、次回作が今から楽しみです。

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