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The Whisky Tasting Club 第1回セミナーの開催について 6/30(月)19:00〜

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先日代表テイスターを拝命することとなったWTCことThe Whisky Tasting Clubですが、早速初回のテイスティングセミナーを開催することとなりました。

テーマは「スペイサイドらしさ」。スコッチウイスキーの生産地域はメーカーや団体によって区分が分かれるものの、一般的にはアイラ、アイランズ、キャンベルタウン、スペイサイド、ハイランド、ローランド、に整理されることが多いところ。
地域ごとの個性は度々愛好家の中で話題になり、個人的にアイラ、スペイサイド、ハイランドは蒸留所によって異なるため絶対的ではないものの、近年では地域の個性としてこういう酒質や味わいに寄せていこうというメーカー側の意図が見えるモノが多いと感じています。

今回のセミナーでは、リリースされたばかりの THE TASTER LINKWOODを軸に、6つのシングルモルトからその個性を紐解いていきます。
ポイントは知識からではなく、講師である代表テイスター及び参加者が感じた香味から個性の理解にアプローチするということ。WTCでは今後も「テイスティングを通じて学ぶ、体験する」をテーマに、様々なセミナーを企画します。
セミナーの進め方は色々工夫していきますので、参加いただけたら幸いです。

余談ですが、シークレット2種は私からの無償提供となります。初回セミナーですし、皆さんにより一層楽しんでいただけるよう、ちょっとくらいはオマケをと。
参加申し込みは以下、Saketryのサイトからチケットをご購入ください。なお、セミナーはWTC会員に限らず参加登録いただけます。
よろしくお願いします!

※参加申し込み:https://www.saketry.com/743177.html
※本セミナーは無事定員となりました。当日はよろしくお願いします。また今後2回目以降も企画しておりますので、引き続きご関心を頂けると幸いです。(6月21日追記)

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The Whisky Tasting Club セミナー①
 「改めて問う、スペイサイドらしさとは?」

 かつては密造のメッカから、時代を経て現代のウイスキー造りの起点ともなったスコットランド・スペイサイド地域。WTC初回のセミナーでは、時代と共に変化してきた同地域の蒸留所がもつ個性、らしさについて、代表テイスターである吉村宗之氏とくりりん氏の2人がそれぞれの解釈を述べ合います。
スペイサイド地方の個性は時代とともに変化しており、その要点を、リリースされたばかりの「ザ テイスター リンクウッド」を軸に、6種のウイスキーを通じて体験いただきます。

【開催日時】
6月30日(月)19時15分~21時00分
 ※19時00分開場

【会場】
TOKYO ALEWORKS TAPROOM
(東京エールワークスタップルーム板橋)
東京都板橋区板橋 1-8-4 板橋 Cask Village 1階

【参加費】
4,000円(税込)

【参加定員】
20名様限定(先着順)

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【テイスティングアイテム】

・オープニングハイボール
・ザ テイスター リンクウッド13年 2011-2024 51.3%
・ザ モルトマン リンクウッド17年 2006-2023 52.2%
・ウイスキースポンジ Edition No,99 グレンマレイ 32年 51.8%
・シークレットボトル①
・シークレットボトル②
※いずれも15mlでの提供となります。
 ※シークレットボトル①、②はスペイサイド地方の蒸留所のシングルカスクとなります。

 【WTCについて】
 The Whisky Tasting Club(WTC)はスコッチモルト販売(株)が運営する会員制サイトです。SAKETRYオンラインショッピングサイトや系列店舗と連動し、会員ポイントを利用してお得にお買い物をお楽しみいただけるサービスを2023年8月から展開しております(登録・年会費ともに無料)。

URL: https://whisky-tastingclub.com/
SNS(X): https://x.com/WhiskyTastingC

 whisky-tastingclub.com

ストラスミル 36年 1988-2024 ホグスヘッド 46.6% BAR Eclipse first 10周年記念

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STRATHMILL
BAR Eclipse first 10th Anniversary
Aged 36 years
Disitlled 1988
Bottled 2024
Cask type Hogshead
For Kanpaikai
700ml 46.6%

評価:★★★★★★(6)(!)

香り:林檎や白葡萄、ハーブの爽やかなトップノート。続いてナッツ、干藁や穀物を思わせる要素、微かにオリーブのようなアクセント。繊細でありながら豊かな広がりを感じるアロマ。

味:若干のオイリーさを伴う柔らかく甘い口当たり。続いて軽い香ばしさ、華やかなオーク香が含み香として感じられ、香り同様の干藁や穀物系のフレーバーが牧歌的な印象に通じている。 余韻は軽やかなウッディネス、ドライで微かに青みがかった白色果実とホワイトペッパーのスパイシーな刺激を伴う。

香味の要素だけ見れば、まさにストラスミルのハウススタイルをそのまま体現したような一本。
トップノートにある爽やかな果実味と軽やかな香ばしさは、洗練された都会的な印象に通じる一方で、踏み込むとそこには牧歌的な、あるいは多少粗雑なところがあり、それが親しみ易さ、味わい深さに通じている。ああ、この肩肘張らない感じはエクリプスの雰囲気を想起する。林檎を思わせる白色果実がトップにあるのも心憎い、10周年記念の一本。

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乾杯会から5月30日発売されるストラスミル。
シードル(林檎)王子こと藤井さんがオーナーである、神田のBAR Eclipse first(エクリプス)の開業10周年を記念した一本です。

エクリプスは2015年にウイスキーとシードルの専門店として開業したBAR。藤井さん自身がウイスキーコニサーであるとともに、シードルについても本場フランスで多くの醸造所を巡るだけでなく、2021年には地元群馬県に自身でシードル醸造所(吹上シードリー)を立ち上げ、理想とするシードルの製造&販売を開始するなど、この10年間でいちバーマンの枠を遥かに超えた活動をされてきたところ。
今回のリリースは、そんな藤井さんらしさが全面に感じられる、10周年を記念するにふさわしいボトルとなっています。

というのも、藤井さん=麦と林檎であるのは上述の説明からご理解いただけると思いますが。
林檎系のフレーバーがあるウイスキー銘柄としてはグレンキースが有名、しかしそのグレンキースと合わせて、近しい個性を持つとされているのがストラスミルです。
ストラスミルについてはJ&Bの構成原酒で、あとは花と動物シリーズからリリースがある程度、オフィシャルリリースがほとんどないこともあって、あまり知られていない銘柄。あえて有名なほうではない、マイナーどころを攻めてくるの、らしい感じがしますね(笑)。

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※2014年のスペシャルリリースにラインナップされたストラスミル25年。こちらは1970年代の原酒で構成されており、1980年代よりも骨太な印象を受けるが軸となる香味要素は変わらない。

1980年代のストラスミルらしい軽やかさ、そして自然な林檎感のあるチョイス。かつてディアジオからスペシャルリリースとして発売されたストラスミル25年に通じる要素もあり、ボトラーズによってアレンジされたボトルではない、ハウススタイルが感じられるのも本ボトルの特徴。
ラベルの女性が手にしているのは、シードル醸造所のある群馬の品種、ぐんま名月でしょうか?
りんごを皮ごと丸齧りしたような、そんな瑞々しくも華やかで、故にちょっと雑味も混じる味わいなウイスキーです。

藤井さんとは他にも何かと繋がることが多く、古くはウイ文主催のテイスティング大会で偶然隣同士だったり…それをお互い知らずに川口のビアパブで出会ったり…その後も、神田の駅でホーム飲みしたり、イベントではキングオブキングスや、共同リリースやらあれこれ。
今回も乾杯会さんを通じたリリースにあたり、本ボトルのコメント、紹介文を書かせて頂きました! 
改めまして、10周年おめでとうございます。

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※2019年の4周年記念の際、プレゼントしたオリジナルラベルのウイスキー。このデザイン、どこかで見たことがあるような…(笑)


ロングモーン 17年 2007-2024 伊藤若冲“老松孔雀図” 46.6% for 乾杯会

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LONGMORN 
Aged 17 years 
Distilled 2007 
Bottled 2024 
Cask type Bourbon Barrel #700016 
for Kanpaikai 
700ml 46.6% 

評価:★★★★★★(6-7)

香り:林檎のような白色果実やバニラの華やかさ、乾いた麦芽、微かにレモンピールを伴うオーク香。徐々に白葡萄を思わせるフルーティーさも開き、時間経過でクリーミーな質感に変化する。

味:序盤はソフトな麦芽風味から、ナッツ、そしてリンゴや白桃を思わせるフルーティーさ、華やかなオークフレーバーが広がり充実していく。
余韻は白桃を思わせるフルーティーさと軽やかな刺激が、じんわりと染み込むウッディネスを伴い長く続く。

モルティーかつフルーティーな香味が溶け込む充実した一本。46%台まで度数が落ちていることもあって主張は強くないが、それ故に香味のカドが取れ、各要素が馴染み、優しく包み込むような味わいは熟成の妙を感じさせてくれる。王道的なロングモーン。


乾杯会リリースの伊藤若冲ラベルシリーズ。乾杯会の代表である鄭さんが伊藤若冲好きということもあって、これまでもキルダルトンやアイリッシュとクオリティの高い原酒が詰められているところ。今回も熟成ロングモーン原酒がなかなか手に入らない中で、良い原酒を詰められてます。

ラベルに採用された伊藤若冲作「老松孔雀図」は、花王たる牡丹の間、岩の上に立つ白い孔雀と、松の老木が描かれた、落ち着いた華やかさ、格式の高さを感じさせる作品。
今回のロングモーンは、白色果実を中心としたフルーツと麦芽の白い部分を思わせる優しい甘さ、近年のロングモーン蒸留所の王道たる風味が牡丹と孔雀であり、古木のような落ち着きのあるオークフレーバー、ウッディネスが松の老木、まさに老松孔雀図を想起させる構成となっています。

近いリリースのイメージは、信濃屋さんが以前リリースしたOMCロングモーン15年 2000-2016 55.9%(以下写真)。乾杯会のロングモーンを飲んだ瞬間、このリリースが思い浮かんだんですよね。麦感がしっかりあって、それでいてナッティでフルーティー、樽感も華やか。今作はそれより落ち着きがある感じですが、いずれにしろ近年ロングモーンの中でも高い完成度であることは間違いありません。

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※先日乾杯会からリリースされた、ロングモーン1996-2014 ホグスヘッド 58.8% 金目猫ラベル。美味な一本だが、王道的なロングモーンとは異なる、華やかでフルーティーでグランシャンパーニュコニャックのような香味が特徴。


なお、乾杯会の鄭さんとは愛好家グループとして、あるいは酒販として乾杯会が立ち上げ前からの付き合いであり、何かとお手伝いをさせてもらっています。
今回のロングモーンも公式コメント等を書かせて貰いました。鄭さんは愛好家視点で自分の好みである原酒を引っ張ってくるので、コメント書くにしてもフォーカスするところがわかりやすいんですよね。あるいは「くりりんさん、これはちょっと違う個性かもしれない…、そこはわかるように描いて欲しい。」なんて言われる時も。

っていうか後発のボトラーズ(インポーター)でありながら、よくもここまで色々な原酒を引っ張ってこれるものだと、ただただ感心します。今、原酒を輸入してきてリリースするタイプのボトラーズは複数社国内にありますが、どこも原酒枯渇の影響を受けているのに…。聞けばアジア圏のグループ(The Lucky Choice)で原酒調達に動いている模様。いやはや本当にすごい。
リリースは4月29日、乾杯会のECサイトにて。またすでにいくつかのBARでもテイスティング出来るので、合わせてぜひ。

シグナトリー ブロガーズセレクト ダルユーイン 12年 2007-2020 57.6% for 信濃屋

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SIGNATORY VINTAGE 
BLOGGER’S SELECT 
DAILUAINE 
Aged 12 years 
Distilled 2007 
Bottled 2020 
Cask type Hogshead #303268 
700ml 57.6% 

評価:★★★★★★(6)

香り:柔らかい麦芽やすりおろし林檎、ワクシーな甘さを感じるトップノート。微かに青みがかった要素や柑橘を伴ってしっかりと香る。

味:度数を感じさせない、コクのある口当たりから膨らみのある麦芽風味、蜂蜜、オレンジ、かすかに青リンゴ。
余韻は長く程よくウッディで渋みが中盤にある麦芽由来の甘さを引き締める、微かな柑橘感も心憎い。

香味とも樽感控えめで麦芽風味メインの構成。よくある華やかでナッティなタイプのホグスヘッドではなく、リフィルなのかプレーン系の仕上がり。だがそれがいい。選定から5年の経年を経たことで、サンプル時点で感じられた青みがかったような風味や若さに通じる刺激はこなれ、良い塩梅にまとまっている。一方で、度数相応に膨らみのある豊かな麦芽風味。1周回ってくると、こういう味わいに魅力と落ち着きを感じてしまう愛好家視点でのチョイス。

個人的にはこれぞダルユーイン、スペイサイドの蒸留所だが太い麦芽風味はハイランドらしくもあり、このふわっと香る、広がる牧歌的な麦芽風味がそれに該当。またプレーンな樽使いと麦主体の風味でハイプルーフな仕上がりは、レアモルトシリーズを彷彿とさせるようで懐かしくもある1本。

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今から5年前の2020年1月、信濃屋の秋本スピリッツバイヤーから「ブロガーによる愛好家視点でのリリースをしよう」という呼びかけで以下4名のブロガーが集まり、亡き蓮村マスターと共に10種類以上のカスクから選定を実施したボトルが“ブロガーズセレクト”です。ラベルデザイン含め、メンバーで議論して形にしたリリースとなります。

【参加メンバー】
・くりりん 『くりりんのウイスキー置場
  X(@WarehouseWhisky
・sarichiiiii 『美味酒録
・Drinkers Lounge 『Drinkers Lounge 』
  X(@DrinkersLounge )
・子供銀行券  『東京ウイスキー奇譚
  X(@tk_whiskeykitan
・モルト侍 『モルト侍通信』『モルト侍
  園部隼也 X(@heavy_fifth
&信濃屋 スピリッツバイヤー 秋本

2020年3月時点でボトリングは完了していましたが、新型コロナの世界的な拡大に伴い業界が一旦クローズ。本当に世界は終わってしまうのではないかという100年に一度の混乱を経て、当時の記憶も薄れ、また、企画の発起人の1人であった蓮村さんが故人となられ…。
そう言えばあの時選んだカスクはどうなったんだろ、違うラベル貼って別リリースになってしまったのかな?なんて思っていたら、今年に入って唐突に「そろそろリリースします!」と連絡があり。あれよあれよという間に発売、そして本日時点で予約完売となりました。

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※選定当日の写真。秋本バイヤーがしみじみ語る「痩せてるなぁ…」

本記事では、リリース紹介と合わせて、当時の経緯を振り返っていきます。
当時、秋本さんが確保されていたカスクサンプルの中で候補となったのが、カリラ、オード、ダルユーイン、エドラダワーでした。他にはストラスミル、ストラスアイラ、インチガワーの12年前後があったかな。
安定のカリラ、コテコテシェリーのエドラダワー、若干の若さが残っているが麦芽風味が魅力のオードとダルユーイン。そこから何をリリースするか、ここが議論になったと記憶しています。

結論から言えば、その場で選ばれたのはカリラでした。
ただし当時のリリースでもありふれていたカリラやエドラダワーを、わざわざブロガー4人でチョイスしてどうなんだ?という意見があり。 一方で、オードやダルユーインは通好みで面白いが、商品として見た場合に受け入れられるものか?と。味も12年熟成とはいえプレーンで若さや青さが風味に残っており、難しいのではないかという議論もありで、満場一致ではなかったのです。

ちなみに私はオードやダルユーインを推していて、カリラ派とぶつかった記憶があります。確かに美味しいんだけどねと。最終的にその場は、1回目だしリリースとしての安心感も加味してカリラとなったのですが…。
その後、秋本さんと蓮村さんが相談してダルユーインも出そうということになり、2種類のリリースが決まったという経緯があります。
秋本さんがどうするか悩んでいたところに、「良いじゃん、やってみれば。余っても俺のところでどうにかしてやるよ」そんな後押しが蓮村さんからあった、と言う後日談。
そうした経緯を踏まえると、このダルユーインは中々感慨深いリリースでもあります。

また、今回のリリースはダルユーイン、カリラともに5年間の経年を経ているわけですが、これは秋本さんの判断。
瓶内熟成については賛否含めて諸説あるものの、今回については若々しさ、青みがかったフレーバーがこなれ、香味の膨らみはしっかり残っているという良い方向に作用。加えて、その間にウイスキー市場は大きく変化し、愛好家の世代交代やリリースへの興味関心も当時から変わっていて、SNSでの前評判を見てもダルユーインだから…という感じは一切ありませんでした。

さらに相場の変化に対し、魅力となったと断言出来るのが価格です。信濃屋からは、どちらのリリースも当時の想定価格で発売されることとなりました。
ダルユーイン 7980円+税、カリラ 11000円+税。カスクストレングス&シングルカスクのそれとしては、特に前者は私が飲み始めた頃のシグナトリーの価格と見粉うような設定。飲み頃と市場動向、リリースタイミング含めて、スピリッツバイヤーとしての見識の深さ、プロの仕事を見ましたね。

これらを総合して、今回のリリースは単にブロガーがチョイスしたと言うものではなく、プロによる見極め、サポート、後押しがあってこそのものだったと、補足させていただきたいと思います。


余談ですが、ダルユーインから入ってカリラに繋ぐと、ダルユーインの麦芽風味がカリラのピートフレーバーを底上げして、一層楽しめる。2本セットで迎えて欲しい組み合わせです。(価格的にも難しくない!)
既に店頭販売、予約分含めて完売となっておりますが、4月24日のリリース後は是非BARでも楽しんでいただけたらと思います。
改めて、貴重な機会を頂きありがとうございました! 

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アベラワー アブナック アルバ 58.9% Batch No,007

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ABERLOUR 
A’BUNADH ALBA 
ORIGINAL CASK STRENGTH 
Batch No,007 
Cask type 1st fill Bourbon Barrel 
700ml 58.9%

評価:★★★★★★(6)

【ブラインド予想】
地域:スペイサイド
年数:12〜15年熟成程度
度数:55%程度
樽:バーボンバレル
蒸留所:グレングラント

香り:勢いのある華やかでオーキーなトップノート。アメリカンオーク由来の要素がしっかり感じられ、乾いた麦芽や微かにナッツ、酒質の素性の良さを感じる。

味:コクのある口当たり、しっかりと広がりがある味わいで、蜂蜜や麦芽風味からじわじわ黄色系フルーツ、加熱した林檎。
余韻はほろ苦くウッディ、華やか。若干のスパイスとひりつくような刺激を伴う長いフィニッシュ。

バーボン樽熟成のミドルエイジ、スペイサイドモルトときたらイメージするだろうキャラクターの一つ。
比較的若い原酒と思われるが、複数樽バッティング故か口当たりに柔らかさがあるのも特徴。また、酒質に厚みがあり、樽感に負けず甘みやコクを主張するところが、近年のライト化に反した古典的な作りとして好感が持てる。確かに、これなら濃いめのシェリー感が付与されてもちょうど良く仕上がるだろう。


2000年にファーストリリースが行われた、アベラワー・アブナック(アブーナ)。アベラワーの樽出し原酒をカスクストレングスでボトリングする、熟成樽へのこだわりを打ち出したスモールバッチリリースです。
アブナックといえばシェリー樽熟成原酒。長く10年熟成未満の比較的若いものをバッティングしたカスクストレングス仕様という位置付けでしたが、今回紹介する“アルバ”は、2020年ごろからリリースされ始めた、1st fill バーボン樽熟成のアブナックです。

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シェリー樽熟成のアベラワー・アブナックは80近いバッチまでリリースを重ねている人気のブランドですが、その香味は初期の頃と比べるとだいぶ異なってきています。
写真は比較的初期のバッチ、No,6。おそらく2002〜3年ごろのものでしょう。何が違うって色合いですね。最近のロットが手元にある方は、是非写真のものと比較してみてください。明らかにシェリー樽に由来する色合いが異なり、薄くなってきています。

これはアベラワーに限ったことではありませんが、増加を続けるウイスキー事業者と生産量の中でシェリー樽の調達、確保はどの蒸留所も非常に難しい状況にあり、大手会社であっても四苦八苦しています。
そのため、アベラワーもいつまでシェリー樽メインでリリースを続けるのか。ここまで薄くなってしまったアブナックは、いっそバーボン樽に切り替えた方がいいのではないか。そのような声も、愛好家間で聞こえてくるほどでした。

そんな中で、ふと気がついたらリリースされていたのが、バーボン樽熟成原酒を使ったアブナック“アルバ”です。
アブナックはゲール語で“起源”を意味するとされています。アベラワーのリリースは、古くはシェリー樽熟成のキャラクターを前面に出したものが多く、例えば同じ路線として位置付けられているのが1980年代ごろまで流通していた8年角瓶。ただ、近年はシェリー樽とバーボン樽の熟成で、ダブルカスクマチュレーションをアピールするなど、少し風向きが変わってきていたところ。
これがアベラワーもう一つの起源であると、アブナックからホワイトオークを意味する“アルバ”がリリースされたわけです。

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なお、このように書くと今回のリリースは苦肉の策であるかに聞こえてしまうかもしれませんが、ブラインドテイスティングで飲んで素直におどろかされました。
アメリカンオーク樽由来の市場で評価されているフレーバーが備わって、それでいて酒質は軽すぎず、過度なウッディさも若いフレーバーも目立たない。複数樽バッティングなので、単体ではトゲトゲしさが残る原酒でもあっても、多少丸みを帯びているのでしょう。

ブラインドでイメージしたのはグレングラント15年でしたが、グラントほど軽くないし華やかでもない、この酒質由来の蜂蜜や麦芽の甘みはどうも違う。バルヴェニーの12年シングルバレル?いやしかしあれはもっとドライだし、該当するリリースがない・・・。
いつもはシェリー樽に隠れていた酒質、その素顔。シングルカスクとも違うオフィシャルならではの仕上がりは想像以上に良いものでした。
願わくば、このクオリティがリリースを重ねても継続されていくことを願っています。

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