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シーバスリーガル 12年 1950年代流通 43%

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CHIVAS REGAL 
BLENDED SCOTCH WHISKY 
AGED 12 YEARS 
1950’s 
750ml 43% 

評価:★★★★★★★(7)

香り:土っぽさを伴う古典的な麦芽香と、角の取れたピートスモークと共に穏やかに香る。奥には焼き洋菓子や熟した洋梨を思わせる甘みがあり、じわじわと存在を主張する。

味:まろやかで膨らみのある口当たり。ほろ苦さを伴う麦芽風味、内陸のピート、香り同様の果実感や蜜を思わせる甘み。余韻は穏やかなスモーキーさとナッツやパイ生地のような香ばしさがほのかにあり、染み込むように消えていく。

全体的に素朴で、近年のウイスキーにあるようなキラキラと華やかな要素はないが、熟成した原酒本来の甘みとコク、オールドボトルのモルトに共通する古典的な麦感、土っぽさ、そこから連想される田舎っぽさに魅力がある。構成原酒はおそらくそこまで多くなく、樽感も多彩とは言えないが、純粋に当時のモルト原酒の質の良さだけで愛好家の琴線に訴えかけてくる。
複雑さや熟成感、華やかさを好むなら、それこそ現行品のアルティスや25年が良いだろうが、個人的には素材の良さが光る味わいも捨てがたい。

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オールドブレンデッドにおいて、地雷率No,1と言っても過言ではないのがシーバスリーガル12年。
その原因が、キャップの裏側の材質にあるのは周知のことと思います。では、そのキャップがコルクだったらどうでしょうか?
実はシーバスリーガル12年は、発売初期の1939年から1950年代までコルクキャップが採用されており、例のキャップが採用される1960年代以降のロットよりも地雷率が低い(コルク臭の危険はあるため、ゼロではない)という特徴があります。

だったら1950年代以前のボトルを飲めば良いじゃない。
って、それで解決したらどんなに話は簡単か。その理由は2つあり、同銘柄が日本に入り始めたのは1960年代から、本格的に流通したのは1970年代からであることがまず挙げられます。
当時シーグラム傘下となっていたシーバス社はキリン・シーグラムの立ち上げに関わり、シーバスリーガル12年はキリンを通じて日本市場への正規流通が始まったという経緯があります。
そしてその時点では、ラベルのリニューアルと合わせてキャップも例のヤツに代わっており。。。
また後述の通り、シーバスブランドの1950年代は復活の最中で、並行輸入もなかったようです。そのため、日本市場をどんなに探しても、1950年代流通品を見かけることは無いわけです。

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(ペルノリカール社プレスリリースから画像引用:シーバスリーガルのラベル遍歴。2022年にはまた新たなデザインへと変更が行われている。)

では、この1950年代のシーバスリーガルはどこの市場にあるかというと、答えはアメリカです。
元々シーバスリーガル12年はアメリカ市場をターゲットとして、1938年(一説によると1939年)にリリースされていました。しかしそれ以前は社として原酒の売却があったり、その後勃発した第二次世界大戦で輸出産業が崩壊するなど厳しい状況にあり、シーバス社は1949年にシーグラム社の傘下に入ります。

そして1950年にミルトン蒸留所を取得し、その後ストラスアイラへと名前を変更。(この時は名前の変更を行っただけで、特段何か大きな変更をしたわけではないようです。)
今回のレビューアイテムであるシーバスリーガル12年は、まさにミルトン蒸留所時代の原酒をキーモルトとしており、モルト比率の高さからか古き良き時代のモルトの味わいが濃く、一方で少し田舎っぽさ、素朴な感じのある仕上がりとなっています。

シーグラム社傘下でしたが、まだグループ内での扱いが低かったのか、潤沢に原酒を使えたわけではなかったのでしょう。樽もプレーンオークメインか、現代のシーバスリーガルのようなハデな樽感もありません。だからこそ、こうして飲んでみてモルトの味わいを楽しみやすいというのは皮肉なことです。
一方、1960年代に入ると35カ国に輸出されるようになるなど、シーバスリーガルのブランドが評価され、そして1970年代〜1980年代には洋酒ブームとバブル景気の日本市場へ大量に投入されていくことになり、そのボトルは現代の市場の中で地雷となって多くの犠牲者と、それでも当たりを引きたいというコアなファンを生み出すことに繋がっています。

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(1980年代流通のシーバスリーガル12年。70年代とではロゴが微妙に異なるなど変化はあるが、基本的に同じデザインが踏襲されている。)

今回のレビューでは、1950年代のシーバスリーガルのテイスティングを、歴史背景を交えて紹介しました。
なるほど、キャップに汚染されていない真のシーバスリーガルとはこういう味なのか・・・とはならないんですよね。

本記事冒頭、「だったら1950年代以前のボトルを飲めば良いじゃない。って、それで解決したらどんなに話は簡単か。その理由は2つあり、」と書いて、その理由の1つである“ブランドの歴史と流通国”に関する話をつれつれと書いてきたわけで、そう、理由はもう一つあるんですよね。
それは、1950年代のシーバスリーガル12年はブランドとして復活の最中であり、テイスティングでも触れたように、あまり多彩な原酒を使っていたような感じがしないわけです。それは上述のように歴史背景を紐解く上でも、矛盾のない話と言えます。

そして、60年代以降輸出を拡大した同銘柄には、シーグラムグループが保有するさまざまな原酒が使われているわけで、50年代とレシピが同じとは思えません。
ということは、結局我々愛好家が気になって仕方がない日本で認識されているシーバスリーガルのオールド「本来の味」にたどり着くには、地雷原の中からダイヤ一粒を探す、茨の道を進むしか・・・

あ、これ考えたらアカンやつですか。こんだけ長々と書いておいて結局何を言いたかったんだお前は?
・・・そこでくりりんは考えることをやめた。

【完】

くりりん先生の次回更新にご期待ください

ロッホローモンド シグネチャー ブレンデッドウイスキー 40%

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LOCH LOMOND 
SIGNATURE 
SINGLE BLENDED SCOTCH WHISKY 
700ml 40% 

評価:★★★★★(5)(!)

香り:柔らかく香る甘く焦げたオークのウッディさ。キャラメルと微かにケミカル、ボール紙、軽い刺激とスパイシーなアロマを伴う。

味:口当たりは緩く、序盤にのっぺりした質感から徐々に焦げたウッディネス。フレーバーとしてはグレーンの緩やかで柔らかい甘味、らしいフルーティーさと麦芽風味。余韻は焦げたオークのほろ苦さとバニラを伴って、ケミカルな甘さが残る。

スムーズで柔らかく、あまり若さも感じないが、ストレートだとややプレーンな香味が中心。一方で、濃いめのハイボールにすると、余韻にジェネリックトロピカル系のフレーバーがあって好ましい。シングルブレンデッドという造りがロッホローモンドらしい面白さだが、それ以上に、このクオリティで2000円ちょっとという市場価格を実現出来る、ロッホローモンドの強みが光る1本。

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モルト、グレーン、構成原酒全てがロッホローモンド蒸留所産の単一蒸留所ブレンデッド(シングルブレンド)。
スコッチウイスキーでブレンデッドと言えば、各地にある蒸留所から原酒を調達し、様々な原酒を用いて作成するのが一般的であるところ。このロッホローモンド名義のブレンデッドは、全ての原酒を単一蒸留所で製造し、ブレンドしていることが最大の特徴となっています。

ロッホローモンド蒸溜所には
・様々な酒質のモルトウイスキーを作るための、2種類の蒸留器。(うち、一つは複数タイプの酒質の生産が可能なローモンドスチル)
・グレーンウイスキー用の設備は通常の連続式蒸留機と、カフェスチル。
・年間10000丁の樽を補修、生産可能な樽工場。
・生産したウイスキーのボトリング設備。
と、無いのはモルティング設備くらいという、ウイスキー生産に必要な全てを自社で賄えるだけの機能を有しています。

そうした機能を活用し、同社はこれまで
モルトウイスキー:
・スタンダードなロッホローモンド
・フルーティーなインチマリン
・ピーティーなインチモーン

グレーンウイスキー:
・シングルグレーン
・ピーテッドグレーン

大きく分けて以上5系統のリリースを、それぞれのブランド名で実施していたところ。昨年から方針を変更し、ブランド大項目を全て「ロッホローモンド」に統一しています。

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今回のレビューアイテムであるロッホローモンド・シグネチャーは、現地では2019年に販売を開始したもので、日本に入荷していなかっただけで時系列は前後しますが、現在はモルト、グレーン、ブレンド、全てが「ロッホローモンド」としてリリースされているというわけです。(※現地法律上は問題なし)

わかりにくい、と感じるかもしれませんが、それは同社の販売戦略であって、とにかく「ロッホローモンド」を認知させる戦略という観点からすれば正しい方法です。
というか、このリリース事態がすごいことなのです。ただでさえ一定品質以上のモルトとグレーンを低価格に抑えて量産出来る蒸溜所は限られているにも関わらず、ロッホローモンドの原酒は5年、8年熟成でも若さが目立たず甘みや麦芽風味、フルーティーさのある個性が特徴的です。

また、今回のリリースではブレンドの後のマリッジが600丁から形成されるオロロソシェリー樽とリチャーアメリカンオーク樽でのソレラシステムが特徴とされています。ここで使われる樽は樽の保守管理に加え、リチャーを自社の樽工場で行っているもので、シェリー感よりもチャーした樽の香ばしさ、ウッディさが香味のアクセントになっています。
ともするとプレーンな香味になりがちな若い原酒のブレンドに、香味の変化、幅を与えているのです。
ウイスキー市場を陰に陽に支えるロッホローモンド。今後も意欲的なリリースに期待しています。



以下、雑談。
ウイスキーの値上がりが複数社から発表され、我々サラリーマンの懐を直撃している昨今ですが。
そんな中でも2000円台のリリースにこのロッホローモンドシグネチャーに加え、面白いリリースが複数登場しています。

・アイリッシュウイスキー「バスカー」
・シングルモルト「グレングラント アルボラリス」
・シングルブレンデッドスコッチ「ロッホローモンド・シグネチャー」

これまで、2000円前後のスコッチウイスキーというと、バランタイン、ジョニーウォーカー、シーバスリーガル。。。などの有名ブランドの12年クラスが主流。
特にホワイトホース12年は、あまり知られていませんが昭和の洋酒ブーム時に発売された限定品をルーツとした、日本市場限定品。40年近く限定品としてリリースが継続されているベストセラーで、手軽に飲めるスモーキーなウイスキーの一つです。

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ここに殴り込みをかけてきたのが上述の3銘柄。
トロピカルフレーバーを”売り“にしたバスカーは、ブレンドは軽やかな飲み心地、先日発売されたシングルモルトが同じ価格帯でさらにしっかりとした味わいがある。
グレングラント アルボラリスは、10年、12年に通じるアメリカンオーク由来の華やかさがあり、ロッホローモンドは上述の通り。
全てハイボールにして飲むと、地域、樽、製法、それぞれ個性の違いが感じられ、いやいやウイスキー楽しいじゃ無いですかと思えるラインナップ。

これから暖かくなってきて、夏場のハイボール要員としてはなんぼあっても良いボトルですからね。今年は有名ブランド1つ、そして上記3銘柄をセットで充実した家飲みを楽しんでみてはいかがでしょうか。

アーストン 10年 アイルサベイ 40% シーカスク & ランドカスク

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AERSTONE 
AILSA BAY DISTILLERY 
SINGLE MALT SCOTCH WHISKY 
Aged 10 years 
700ml 40% 

SEACASK "SMOOTH AND EASY"

評価:★★★★★★(6)

香り:華やかでフルーティー。洋梨やすりおろし林檎を思わせるオーキーなアロマに、ナッツ、麦芽の白い部分の香り。微かに乾草のような乾いた植物感と土の香りがアクセントとして混じる。

味:口当たりは柔らかくスムーズだが、40%の度数以上にリッチでコクとしっかりと舌フレーバーがある。蜂蜜を思わせる甘み、麦芽風味が粘性をもってしっかりと舌の上に残りつつ、オークフレーバーのドライな華やかさが鼻孔に抜けていく。余韻は土っぽさと乾草のような乾いた植物感、微かにスモーキーでビターなフレーバー。序盤の甘みを引き締め、穏やかだが長く続く

アイルサベイ蒸留所の原酒を、同蒸留所の熟成庫で熟成させたもの。一言でグレンフィディック12年を思わせる構成だが、それ以上に厚みがあり、味わい深い。樽構成としては、バーボン樽だけでなく、リフィルシェリー樽の香味もアクセントになっているのだろう。グレンフィディックの華やかさにバルヴェニーの麦芽風味や甘みを足したような、両者の良いとこどりで今後が楽しみな酒質である。
コストパフォーマンスにも優れており文句のつけようがないが、SEA CASKに由来するフレーバーについては難しい。しいて言えば、味わいのコク、舌の上に残るそれが塩味の一要素と言えなくもないか・・・。このリリースに塩気を感じることが出来る感度の味覚を自分は持ち合わせていない。


LAND CASK "RICH AND SMOKY"
評価:★★★★★(5)

香り:やや酸の混じったスモーキーなトップノート。若い原酒特有のゴツゴツとした質感のあるピート香で、土系の香りと合わせて、焦げた木材、クレゾール、根菜的なニュアンスも混ざる。奥には麦芽とオーキーなアロマ、レモンやグレープフルーツを思わせる要素もあり、スワリングで主張が強くなる。

味:オイリーで柔らかいコクと甘み、燻した麦芽のほろ苦さとスモーキーさと、ほのかに柑橘系のフレーバーのアクセント。序盤はピートフレーバーと麦芽風味に分離感があるが、後半にかけて馴染む。余韻はスモーキーで微かに植物系のえぐみ、根菜っぽさを伴う。

アイルサベイ蒸留所の原酒を、グレンフィディック、バルヴェニー留所の熟成庫で熟成させたもの。
ピートフレーバーのしっかり備わったモルトで、樽構成含めて過去にリリースされたオフィシャルボトルと同じベクトル上にある1本で、おそらくピートレベルは20PPM程度。他社シングルモルトで類似の系統を挙げるなら、レダイグやポートシャーロット。根菜や焚火の煙、内陸ピートの強い主張に対し、酒質は柔らかく、麦芽の甘みがしっかりと広がる点も特徴と言える。なお、香りはこれらが合わさって複雑なアロマを感じられるが、味の面では少々分離感があるため、ストレートよりハイボール等がお薦め。

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2007年に稼働した、ローランド地方・アイルサベイ蒸留所から10年熟成のシングルモルトリリース。海辺と内地山間部、2か所で異なる酒質のものを熟成させた、これまでにないコンセプトのウイスキーです。2018年頃に発売されていたのですが、マイナー蒸溜所ゆえに日本に入ってくるのが遅かったのでしょう、今年に入ってからようやく市場で見られるようになりました。

アイルサベイは、グレンフィディック、バルヴェニー、キニンヴィを有するグランツ社が、同社のグレーン蒸溜所であるガ―ヴァンの敷地内に建設した蒸留所です。
グランツ社は、その名を冠するブレンデッドウイスキー・グランツを中心としたブレンド銘柄を、バルヴェニーやキニンヴィ蒸留所の原酒を用いてリリースしていたところ。近年、シングルモルトとしてブランドを確立していたグレンフィディックに続き、バルヴェニーも需要が増えてきたことで、新たにブレンデッド用のモルト原酒を調達する必要が生じていました。

また、同社は傘下にピーティーな原酒を作る蒸留所が無く、ブレンドの幅を広げ、需要が増えているスモーキーなブレンデッドウイスキーのリリースに必要な原酒の確保も課題であったと言えます。
そこで建設・稼働させたのが、このアイルサベイ蒸留所でした。稼働後しばらくはリリースがありませんでしたが、2016年頃にピーティーなシングルモルトをリリース。しかしこれが魅力のある仕上がりだったかと言われれば…SPPMという酒質の甘さを示す指標など、面白いコンセプトはあるけど、やはりブレンド用かなと、あまり惹かれなかったことを覚えています。



その後、アイルサベイ蒸留所については特に調べることもなく、アイルサベイ=ピーテッドモルトだと早合点してしまっていたのですが。。。今回のレビューを書くにあたり、前回から5年越しで蒸留所の全容を把握。グランツ社の原酒調達にかかるロードマップと、アイルサベイ蒸留所の真の姿をようやく認識にするに至りました。

現在のアイルサベイは、16基のポットスチルを持つローランド最大規模の蒸留所。スチルはバルヴェニー蒸留所と同様の形状をしており、ブレンドに用いられる原酒の代替を目的の一つとしています。また、仕込み工程全体では、バルヴェニータイプのモルト以外の原酒を仕込むことも可能なように設計されており、ピーテッドモルトは千重の一重でしかなかったということになります。

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今回のレビューアイテムであるアーストン10年のSEA CASKとLAND CASKは、この2種類をテイスティングすることで、先に触れたアイルサベイ蒸留所のハウススタイルと可能性を味わうことが出来る、実に面白いリリースとなっています。

SEA CASKが、数PPM程度で華やかな風味を主体とするスペイサイドタイプの原酒であるのに対し、内地で熟成させているLAND CASKが20PPM程度でスモーキーさの際立った仕上がりなのは、海=アイラ、アイランズ=ピーティーと言うスコッチモルトに対する一般的な認識からすれば、「逆じゃない?」と思えなくもありません。
ですが、アイルサベイ蒸留所は下の地図でも明らかなように元々海辺に建設されていることや、バルヴェニー蒸留所の原酒を代替する目的があります。つまりアイルサベイ蒸留所で仕込み、熟成させているスタンダードなモルトなのだとすれば、このリリースの位置づけもなるほどと思えてきます。

一方で、精麦設備を持つバルヴェニー蒸留所では、1年間のうち、内陸のピートを焚いて麦芽を仕込んでいる期間があります。これを用いることで、これまでグレンフィディック、バルヴェニー両蒸留所では、少量ながらピーテッドモルトのリリースも行われてきました。
アイルサベイ蒸留所で用いられているピート麦芽が、バルヴェニー蒸留所で仕込まれているとすれば、熟成されているLAND CASK=ピーテッドモルトと言うのも、わからなくもありません。
…公式ページに説明がないので、あくまで個人的な推測ですが(汗)。

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両リリースをテイスティングすることで見えてくる共通する特徴は、コクのある甘み、麦芽風味。SPPMという指標を用いて管理されているほど、蒸溜所としてこの点を意識しているように感じます。
そして今回のリリースだけで判断はできないものの、狙い通りの酒質に仕上がっていというか、それ以上のものを生み出してくる可能性もあると言えます。

実際、SEA CASKはアメリカンオークに由来する華やかさと、蒸溜所の特徴である麦芽由来のフレーバーが合わさって、蜂蜜のような甘みや、洋梨や林檎を思わせるフルーティーな個性。樽構成の違いからか、少し乾草のようなフレーバーも混ざりますが、ドライ寄りなフレーバーが強くなった現行品ではなく、20~30年前流通のグレンフィディックやバルヴェニー蒸留所のモルトを思わせる、40%加水とは思えないフレーバーの厚みが魅力です。正直3000円台のシングルモルト現行品で、このクオリティは素晴らしいです。

一方でLAND CASKはちょっと若いというか、単体では麦芽の甘みに対してピートフレーバーの分離感があるため、現時点では個性を楽しむという飲み方に。ただ、SEA CASKと比較したり、ハイボールにしたり、あるいはそもそもの目的であるブレンドに使われていくなら、力を発揮するでしょう。
ピートと麦芽、その2つの個性の間を他の原酒やグレーンが埋めて凸凹が合わさるようなイメージですね。実際LANⅮとSEA CASKに10年熟成のグレーンを適当にブレンドして遊んでみましたが、悪くありませんでした。既にグランツからピーテッドがリリースされているので、構成原酒としてセットで飲んでみるのも良いと思います。


海の塩気と陸の土っぽさ、みたいな熟成環境によるフレーバーの違いを感じるのがリリースの狙いかと思いきや、構成している原酒のコンセプトから違うという奇襲を受けた本リリース。
というか、SEA CASKのほうに塩気を感じられるかというと、そもそも熟成期間を通じて人間が感知できるだけの塩分量(塩味の認識闘値:1リットルあたり0.585gとして、海水の塩分濃度3.4%から計算すると…)が樽の中に入り込むには無理があります。加えて熟成環境以外の要素として、ピートも極少量で、加水も衛生面で基準値を満たした水が使われているという条件下では、ちょっと一般人の味覚嗅覚では困難なのではないかと考えられるわけです。

他方で環境の違いが温度や湿度にあると考えるなら、アイルサベイ蒸留所はバルヴェニー蒸留所に比べて若干ながら温暖な環境が予想されるため、例えば樽由来のフレーバーが強く出る等の効果も期待できます。結果として、SEA CASKでは予想以上の完成度と、LAND CASKでは面白さと可能性を楽しむことが出来たので、このリリースは先入観を持たず、あくまで今後グランツの主要原酒となるアイルサベイ蒸留所の2つのキャラクターとして楽しむのがお薦めです。

バランタイン17年

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BALLANTINE'S
AGED 17 YEARS 
BLENDED SCOTCH WHISKY 
Lot 2020~
750ml 40% 

評価:★★★★★(5-6)

香り:ややドライで穏やかな香り立ち。洋梨や林檎等の白色果実を思わせる華やかでフルーティーなオーク香、乾燥した乾草や穀物のような軽く乾いたウッディネス。

味:コクがあってクリーミー、スムーズな口当たり。オーキーで華やかな含み香、グレーン由来の蜜のような甘さ、熟成したモルトの甘酸っぱさがアクセントにあり、微かなスモーキーさとほろ苦いウッディネスがじんわりと残る。

穏やかでバランスの整った味わい。アメリカンオークで熟成された内陸モルトらしい、華やかでフルーティーな香味と、グレーンのコクのある甘みが混ざり合い、近年のトレンドとも言えるキャラクターを形成している。
面白みは少ないが、実に飲みやすい。飲む温度によってキャラクターに変化があり、20度以上ではグレーンがオークフレーバーを後押ししながら前に出て、クリーミーな質感が強調される。一方で、20度未満だと線が細く爽やかな味わいとなり、ロックやハイボール等、冷やして飲むことでも強みが発揮される。繊細なバランスの上に構築された、ガラス細工のようなブレンドながら、飲み方とシーンを選ばない、ブレンダーの技が光る1本。

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ザ・スコッチことブレンデッドスコッチウイスキーを代表する銘柄の一つである、バランタイン17年。
ジョニーウォーカー、シーバスリーガルと並んで、日本では”ど定番”とも言えるブレンデッドスコッチウイスキーですが、そのためか現行品をちゃんとテイスティングしたことがあるという人は少ないようにも感じます。

バランタインというと、マニアな愛好家ほど、赤青紋章、赤白紋章と、オールドボトルをイメージしてしまうかと思います。
実際、現行品とオールドのバランタインと比べると、モルト由来の香味はライトになり、それをグレーンの甘さで補っているところや、60~70年代のものと比較するとスモーキーフレーバーもかなり控えめで、癖が無いというか、面白みがないというか・・・愛好家の琴線を刺激する個性は強くありません。

ですが、軸となっているグレンバーギーに由来する華やかさや、近年のトレンドの一つと言えるオーキーなフレーバーは昔のリリース以上に際立っており、まさに王道と言える構成。じっくりテイスティングすれば、ミルトンダフやトファースに由来する麦芽風味が感じられるだけでなく、こうしたモルトの香味をまとめ、どう飲んでも崩れないバランスの良い味わいは、他有名ブレンドとは異なる造りと言えます。
ジョニーウォーカーが力のブレンドなら、バランタインは技のブレンドです。その場を壊さない、わき役としての働きから、飲み手の経験値に応じて表情も変わる。時代によって原酒の違いはあっても、ブレンダーの技は変わらない。現行品であっても楽しめるウイスキーなのです。


酒育の会 Liqul 
Re-オフィシャルスタンダードテイスティング Vol.13
バランタイン17年 ブレンドの奥深さと”魔法の7柱の真相”

https://liqul.com/entry/5700

そんなわけで、先日公開されたLiqulのコラム 「Re-オフィシャルスタンダードテイスティング」では、バランタイン17年を取り上げてみました。
前半部分はバランタイン17年の個性や楽しみ方についてということで、あまり捻った内容にはなっていませんが、重要なのは後半部分です。

バランタイン17年と言えば、”The Scotch”に加えてもう一つ、”魔法の7柱(Ballantine's magnificent seven)"という構成原酒に関する通称があり、主観ですが、日本においては後者のほうがメディア、専門書等で多く使われている表現だと感じます。
魔法の7柱は、バランタイン17年が誕生した1937年からの構成原酒とされ、まさにバランタインのルーツという位置づけなのですが、実際はどうだったのでしょうか。本当に7蒸溜所の原酒がキーモルトとして使われていたのか。当時の状況を、各蒸溜所の操業期間や市場動向などを参照しつつ、考察した記事となっています。

要点だけまとめると、
・1937年当初、バランタイン17年は、”魔法の7柱”を用いてリリースされていなかった。
・主に使われたのは、グレンバーギーとミルトンダフ。
・残る5蒸留所は、1950年代のブランド拡張時期に結びつき、実際に7蒸溜所がキーモルトとして使われたのは1968年~1980年代後半まで。
・魔法の7柱のうち、バルブレア、プルトニーの操業期間が考察の鍵。
・1987年以降はブランドが他社に移行。構成原酒が変化。

ということで、”魔法の7柱”は1950-60年代、ハイラムウォーカー社が輸出を拡大する際、原酒確保のために傘下とした5蒸溜所の情報が、元々あった2蒸留所と合わさって”構成原酒”として誇張(あるいは誤解)されて伝わったのではないかと。
つまり「魔法の7柱なんて最初はなかったんだよ!(ナッ、ナンダッテー)」と、ブランドエピソードの核心部分に踏み込んだ内容となっています。

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(バランタイン魔法の7柱が使われていた時代の17年、1960年代から1980年代初頭のラベル遍歴。一番右のボトルは1980年代後半、アライド社時代のものであるため、レシピ、フレーバー共に異なる。)

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ちなみに、”魔法の7柱”を誰が最初に使ったかと言うと、1942年設立の輸出管理団体SWA:Scotch Whisky Associationであるとされています(ただし、時期不明)。また、それを誰が日本国内に広めたかというと、調べた限り60年代から80年代にかけては、正規代理店であった明治屋の広告※上記参照 には該当する記述が見られず・・・。初めて情報が出てくるのは、1988年から正規代理店となるサントリー・アライド社の発信のようです。
参照:https://www.suntory.co.jp/whisky/Ballantine/chp-06-e.html

現在の市場を見てみると、”魔法の7柱”は欧州等他国でほとんどPRに使われていないこともあり、いわゆるマッカランにおける“ロールスロイス”と同じようなモノだったと考えられます。
サントリーが正規代理店になった当時、既にアードベッグが創業を休止していたりと、キーモルトは変わっていた時代なのですが…。(アライド社時代、公式ページのキーモルトには、ラフロイグの表記があった。)
それでも広まった魔法の7柱。語呂が良かったということもあるとはいえ、これぞ広報戦略だなと、考えさせられますね。

バランタイン構成原酒シリーズ

なお、現行品17年の公式ページからは”魔法の7柱”という表現は消えており、あくまで歴史上の1ピースという整理。キーモルトはグレンバーギー、ミルトンダフ、グレントファース、スキャパの4蒸溜所となっています。
紛らわしいのが「レシピは創業時からほとんど変わっていない」という説明ですが、このレシピというのは構成原酒比率ではなく、モルト:グレーン比率とかなんでしょう。このグレーン原酒についても、リリース初期に使われた原酒は不明で、1955年からはダンバードン蒸留所のものが使われていたところ。同蒸留所は2002年に閉鎖・解体され、現在はペルノリカール傘下、ストラスクライド蒸溜所の原酒を軸にしているようです。

これら構成原酒については、2018年から写真の3蒸留所のシングルモルトがバランタイン名義でリリースされたり、その前には〇〇〇エディション17年、という形で4蒸溜所の原酒を強調したレシピがリリースされるなど、ブランドがペルノリカール社傘下となってからは、新しい世代のバランタインをPRする試みが行われています。
ただ、新しい時代といっても、先に記載した通りグレンバーギー、ミルトンダフはバランタイン17年をブランド設立当初から構成してきた最重要原酒であり、実は核の部分は1937年から変わっていなかったりもします。量産分を補うため、トファースとスキャパが追加されていると考えると、実にシンプルです。

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余談ですが、バランタイン・シングルモルトシリーズからスキャパ蒸溜所の原酒がリリースされなかったのは、同蒸留所が1994年から2004年まで操業を休止していたため(原酒そのものは、1996年からハイランドパークのスタッフが年間6週間のみアルバイトで操業しており、ブレンドに用いる量は最低限確保されていた)、シングルモルトに回すほどストックが無かったためと考えられます。後継品も出ていることから、少なくともシリーズの人気が出なかったことが原因…と言うわけではないでしょう。

休止の影響を受けた時代は2021年で終わりを告げ、来年以降は17年向けに確保できる原酒の量も増えてくることになります。バランタインは昨年17年以上のグレードでラベルチェンジを行ったところですが、また2022年以降どんな動きがあるのか。
香味だけでなく、現行の王道を行くスタイルを形成するブレンダーの技を意識して飲んでみると、面白いかもしれません。

オールドパー スーペリア 43% 近年流通品

カテゴリ:
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Old Parr 
Superior 
Scotch Whisky  
2000-2010's 
750ml 43% 

評価:★★★★★★(6)

香り:薄めたキャラメル、カステラの茶色い部分のような穏やかで色が少しついたような古酒系の甘やかさに、微かな鼻腔への刺激、スモーキーさを伴うトップノート。時間経過で熟成した内陸モルトに由来する品の良いフルーティーなアロマと熟成樽由来のウッディネスが開いてくる。

味:マイルドで軽いコクのある口当たり。シェリー樽由来のウッディさ、薄めたキャラメルや鼈甲飴、熟成したグレーンの甘みと香ばしいモルトの風味から、じわじわとビターで土っぽいピーティーさが染み込むように広がる。 
余韻は穏やかでありながら存在感のあるスモーキーさが鼻腔に抜け、ピートとウッディなほろ苦さ、口内をジンジンと刺激する。

ウイスキー愛好家の中で話題になることはあまりない1本だが、それは日本市場において本ブランドのギフト向けと言う位置づけや、ブレンデッドのノンエイジという外観からくる印象もあったと推察。
しかし、中々どうして香味は多彩で味わい深く、熟成したスペイサイド、ハイランドモルトがもたらすフルーティーさや、若干アイラ要素を伴うピーティーな原酒がいい仕事をしている。ストレートも悪くないが、加水やロックで飲むと”場を壊さない味わい”をゆったりと楽しめる。さながら潤滑油としてのウイスキーである。

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近年まで日本市場におけるオールドパーの定常ラインナップにおいて、上位グレードに位置付けられていた1本。シルバー、12年、18年クラシック※、そしてこのスーペリアですね。※ブレンデッドモルト仕様だった18年クラシックは2015年頃に終売。
モノはアメリカ市場向けとして作られていたため、日本の正規品であっても750ml仕様がスタンダード。というか、1980年代以降のオールドパーはアメリカ、メキシコ、アジアと関連する免税店を含む地域への輸出向けのブランドとなっているため、ヨーロッパ向けスタンダードである700ml仕様は造られておらず、日本向けも全て750mlとなっているのが実態としてあります。

さて、スーペリアが「販売されていた・・・」として過去形なのは、2019年11月にディアジオが日本市場向けオールドパーのブランド・リニューアルを発表するとともに、終売となっていた18年をブレンデッドウイスキーとして復活。そのラインナップにスーペリアはなく、一部酒販では製造終了の文字も見られるようになったためです。
中身がどれだけよくても、熟成年数表記があるほうが高級感が出るし、12年との違いも分かりやすいためでしょうか。現時点で日本向け公式サイトに情報は残っているようですが、今回のブランド戦略の変更と共に、徐々にフェードアウトしていく流れが見えます。
ご参考:オールドパー、リニューアルのお知らせ (oldparr.jp)


スーペリアは熟成した原酒のみならず、若い原酒まで幅広く用いることで、深みとコク、熟成感だけでなく、若い原酒に由来する骨格のしっかりした味わいを両立しようとブレンドされています。
こうしてテイスティングしてみると、確かに、熟成した内陸モルトのフルーティーさ、シェリー樽に由来する甘さ、そして若い原酒の刺激は香りの奥、味では余韻でアクセントとして若干感じられる。また、アイラモルトに由来すると思われる染み込むようなスモーキーさも特徴的で、レビューの通り中々味わい深いブレンドに仕上がっています。

構成原酒としては、オールドパーはグレンダランとクラガンモアがキーモルトであるとされていましたが、現代はこの2つだけでなく、ディアジオ社が持つ様々な原酒が用いられているようです。
というのも、クラガンモアやグレンダランは、古くは麦芽風味に厚みがあり、内陸系のピーティーさも主張してくるような原酒でしたが、両蒸留所とも現代はライト化が進み、特に蒸溜所が建て替えられたグレンダランのキャラクターは1985年以降大きく変わっています。
そのため、フルーティーさはともかくピートは異なる原酒の力を借りなければ出てこない。。。
例えば、カリラやラガヴーリンといった蒸留所の短熟、中熟原酒を隠し味に、内陸原酒の中熟、一部長熟原酒(一部シェリー樽熟成を含む)をブレンドしたとすれば、こういう仕上がりにもなるのかなと予想しています。


余談ですが、オールドパーはリユース市場での流通量が多い銘柄の一つです。
それは先に書いたように、ギフトとして使われることが多い一方で、もらった人が飲まずに放出してしまうため。また、オールドボトルは状態がよくないモノが多いことでも知られているわけですが、となれば取引価格は下がっていきます。一方で、コルクキャップで金属臭とは無関係な近年流通品のスーペリアも割を食っているのか、手頃な価格で取引されていることが多くあります。(2次流通価格を基準とするわけではありませんが、本ブレンドは終売品でもあるので。)

レビューの通り中身は熟成した原酒がたっぷり使われた、安価なブレンデッドやモルトでは実現できない深みのある味わいです。
この手のブレンドは、シングルモルトやボトラーズリリース等の個性を楽しむモノではないので、単品では物足りなさがあるやもしれませんが、その場の主役になるのではなく、例えば知人との談笑の場、読書や観劇のお供といった、場を壊さず空気を温めるような潤滑油としての使われ方なら、充分なクオリティがあると感じます。
そんな需要があるようでしたら、是非リサイクルショップやオークションを探してみてはいかがでしょう。

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