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御岳 シングルモルト ジャパニーズウイスキー 2025 43%

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ONTAKE 
SINGLE MALT JAPANESE WHISKY 
First Fill Solera Sherry Butts 
Bottled 2025 
700ml 43% 

評価:★★★★★★(6)

香り:黒糖かりんとうを思わせるやや焦げたような甘さと合わせ、ポップコーンのような香ばしさを感じるトップノート。合わせてドライプルーンやレーズンの色濃い果実香、微かにオレンジピールや針葉樹のようなハーバルさも感じられる。

味:滑らかでコクのある口当たり。シェリー樽由来のダークフルーツや天津甘栗の甘さ、飲み込むとウッディネスは紅茶のタンニンのようであり、ジンジンとした刺激を伴って染み込むように広がる。余韻も長く、完成度の高さが窺える。

さながらマッカランのような1本。熟成年数は5年前後だろうが、シェリー樽由来のリッチなフレーバー含めてバランスよくまとまったシングルモルト。濃厚でウッディなもの、やや淡い印象のもの、あるいはサルファリーなもの、成長個体差のある個性的なソレラシェリーカスクを合わせ加水で整えることで、全体的に厚みと複雑さを感じられる仕上がりとなっている。この蒸留所が目指す完成像の一つが見える1本でもる。

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※水割り、ロック、ハイボール。代表的な飲み方を全て試してみたが、シェリー樽熟成のウイスキーでありながらハイボールに合うのは、酒質の素性の良さ、香味の中に爽やかな柑橘やハーバルな要素があり、それらが全体をまとめてくれるからだろう。

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鹿児島、西酒造が2019年から操業する御岳蒸留所のシェリー樽リリース第二弾。もはや説明は不要と思いますが、この蒸留所の特徴はなんと言ってもシェリー樽。公式のWEBページにも記載されているように、シーズニングのシェリー樽ではなく全てボデガでシェリー酒の熟成に用いられていたソレラカスクを用いているというこだわりがあります。

それ以外にも蒸留所や熟成庫の設計、厳選した二条大麦と独自開発した酵母とこれまでのノウハウを活かしたウイスキーづくりで、世界が求める酒を作るというコンセプトを実現するにたるこだわりの数々。個人的に2019年の創業当時に飲んだニューメイクのクオリティに感動し、樽や製法のこだわりに圧倒されて以来、注目の蒸留所の一つとなっています。※蒸留所の情報は以下、2023年リリースの記事を参照ください。



そんな御岳蒸留所の一般市場向けリリースは、2019年の操業初期の原酒がソレラカスクで約3〜4年熟成を迎えたタイミングで払出し、2023年12月にリリースされた1stリリース。
その後はバーボン樽熟成原酒を使ってリリースされた2024 Editionと続いてきたところ。今回は香味から推察するに2023年のファーストリリースにも使われた原酒のさらに熟成年数を増したものを軸に構成したと思われる、シェリーカスクリリースが再び発売されています。

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※2024年リリースの御岳ピュアモルトジャパニーズウイスキー、バーボン樽熟成の1本。ウッディな中にオーキーなフルーツとビターな味わいが特徴。
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※2023年12月にリリースされたファーストリリースの御岳2023(左)との比較テイスティング。

2023年のリリースと比較して飲むと、香味の傾向は同じであるものの、熟成感、そして樽由来の香味の濃さが大きく異なっており、それは色合いから見ても感じられるところ。同じ43%でありながら御岳2023のほうが酒精感は強く、ややスパイシーな香味が強い印象を受けます。

もちろん上述の通り酒質の素性の良さ、ニューポッティーな香味の少ない柔らかい麦芽風味を感じさせる味わいから、ファーストリリースでもあからさまに若く荒々しい印象こそなかったものの、シェリーカスクの濃厚な味わいが全面に出ていることを期待していた愛好家側からすれば、ちょっとバランス寄りすぎると感じたような。誤解を恐れず言えば「思ってたんと違う」と感じた人も少なくなかったのでは。

一方で、こうして比較すると今作であれば、その期待に応えてくれるのではと。シェリー樽熟成のウイスキーとして確実にクオリティが上がっていると感じさせてくれます。
レビューを書くにあたって飲み始めましたが、気がつくとすごい減りましたね。シェリー樽熟成のウイスキーが辛くなる夏場にかかろうかというこの時期に、開封3日で写真の通り1/3くらい飲んでしまいました。

ソレラシェリーカスクはシーズニングのものに比べて個体差が大きく、その成長曲線が1樽1樽大きく異なることから一概に何年くらいとは言えませんが、今作のベースを5年前後熟成の原酒と考えると7−8年熟成で最初のピーク、その後は10年、12年、加水で整えるなら15年あたりまで順調に育ってくれそうな印象もあります。

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※御岳 5年 カスクストレングス 58% No,0062 for ウイスキートーク福岡2025

ちなみに、御岳蒸留所は一般向けリリースとしては今回レビューした43%加水のシリーズを展開している一方で、イベント限定で愛好家向けにカスクストレングスを販売しています。
直近だと6月のウイスキートーク福岡で5年熟成のものがリリースされ、現地参加されていた某氏のはからいでボトルを手に入れることができました。気になっていたボトルだけに、これは有り難かったです。

今回の2025リリースのシングルモルト御岳にも感じられる個性の一つ、濃厚でビターなシェリーカスクのフレーバーを、樽出しだからこその力強さ、説得力をもって感じられるのが特徴の一つ。
2023リリースのシングルモルト御岳の時はもう少し度数を上げたものをリリースしてほしいとレビューに触れましたが、そうそうこれこれ、こういうのですよ。
5年熟成のカスクということでちょっと荒さはありますが、蒸留所としても原酒としても、順調に成長していることを感じさせてくれると思います。
長くなってきたのでこのボトルはまた別途レビューを書きたいと思いますが、イベントで見かけて機会があれば、是非飲んでほしいですね。

シングルモルト 厚岸 立夏 二十四節気シリーズ 55%

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THE AKKESHI 
Single Malt Japanese Whisky 
Bottled 2025 
7th. Season in the 24 Sekki 
700ml 55%  

評価:★★★★★★(6)(!)

香り:焦げたようなビターなニュアンスを伴う、ウッディーでスモーキーなトップノート。香り立ちはシャープでシトラスやスパイシーな要素が主体だが、少量加水すると穏やかになり、柑橘や甘いオーク香も感じられる。

味:香りに反して味わいは柔らかく、ピートが溶け込んだよう。樽由来のキャラメルや焼き栗を思わせる香ばしい甘さ、微かな焦げ感と柑橘の綿を思わせるほろ苦いニュアンス。余韻にかけては塩味と、穏やかなピートフレーバーと共に、アーモンドナッツと杏子や柑橘を思わせる甘酸っぱいフルーティーさを伴い長く続く。

19作目となる二十四節気シリーズ。ここに来て今までの厚岸にはなかった、熟成由来のフルーティーなオークフレーバーが感じられるのが本作最大の特徴。 主にアメリカンオーク樽熟成の原酒に見られるフレーバーだが、熟成を経たミズナラ樽にも共通要素が出るため、構成原酒の平均熟成年数が上がったと予想(直近4-5年だったのが5-6年になった可能性)。
厚岸の柔らかい北海道産麦芽風味に穏やかなピートが柑橘系のニュアンスに通じ、それらと合わさった熟成樽由来の香味が杏やナッツなどの香味要素を形成している、また一段と成長した姿を見たリリース。どこかボウモアに通じる要素が感じられるのも興味深い。

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しばらくブログをさぼっていたら、二十四節気シリーズが折り返しどころか、3/4を終えていた件について。い、いや、ちゃんと飲んでるんですよ(汗)。

本作のキーモルトは北海道産の麦芽と北海道産ミズナラ樽を用いた原酒とのことですが、特徴的なのがテイスティングでも記載したフルーティーな香味、熟成感ですね。個人的にこのフルーティーさは近年のトレンド、バーボン樽由来の香味に通じる要素。そこにウッディな要素が重なってくるので、構成はノンピートのバーボン樽原酒を主体として、次点でミズナラ樽、シェリー樽、後は微かにワイン樽熟成原酒といったところでしょうか。

比率としては、5:3:1:1あたりと予想。あまりウッディな渋みはないので、ワイン樽はもっと控えめ、ごく少量かも。一方で比率とは別に全体の一体感を作り、まとめ上げているのが麦芽の柔らかく膨らみのある味わい、柑橘感を伴う風味とミズナラ樽のウッディネスというイメージで、その意味で本作のキーモルトがオール北海道産モルト原酒というのは味わいからも得心がいくところ。
ただ、裏ラベルを見ると麦芽の構成は、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、北海道産とあるので、左に行くほど量が多いと整理するなら、ミズナラ樽原酒がすべて北海道産ミズナラ樽と北海道産麦芽によるもの…というわけではないのかもしれませんが。

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と、そんな細かい…いや、ロマンのない話はさておき。
厚岸の二十四節気シリーズで、シングルモルトのリリースは
・立春(2024年2月)
・小暑(2024年8月)
・立夏(2025年5月)
と、約10ヵ月ぶりでした。また、前作が意欲作ともいえる厚岸蒸留所のポットスチルで仕込んだグレーン原酒を使ったシングルブレンデッド冬至のリリースで、今までとは異なる方向性だったこともあり今作はなおのことモルト原酒の熟成感の変化が際立っていると感じます。

昨年、展示会等で立崎さんから伺ったところでは、2024年の時点では平均熟成年数が4~5年程度であったところ、おそらくそこから熟成年数が伸びた原酒を今作は用いているのではないかと。それこそ平均で5~6年、こと上述のバーボン樽原酒についてはさらに長い6~7年のものも含まれているのではないかと予想。スコットランドの熟成環境では2年程度は微々たる期間かもしれませんが、日本や台湾などの温暖な気候のアジア圏においては大きな変化に繋がるには十分すぎる期間です。

今回のリリースではテイスティングで述べたように、原酒の一体感が増しただけでなく、これまでの厚岸には見られなかった熟成による風味、フルーティーさが感じられ、新しい魅力を感じさせてくれました。ちょっとボウモアっぽい感じが出ているのも面白いですね。厚岸蒸留所の代表である樋田さんはアイラ島のウイスキーに惚れ込み、特に60年代のボウモアに思い入れがあることで知られていますが、その方向に近づいたのが興味深い点でもあります。
3か月ごとに1作リリースされていく二十四節気シリーズ、つまり完結まであと1年と3か月。ここから1年でどんな姿を見せてくれるのか、立夏を飲んで一層楽しみになりました。

大谷ウイスキー 新潟亀田蒸溜所 No.1 Zodiac Sign Series “Pisces” 50%

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OHTANI WHISKY 
NIIGATA KAMEDA DISTILLERY 
SINGLE MALT JAPANESE WHISKY 
No,1 The Zodiac Sign Series “Pisces” 
700ml 50% 

評価:★★★★★(5)

香り:林檎や枇杷、品の良いフルーティーさを伴うトップノート。微かに青さを残した干し草やナッツ、軽やかにエステリーなアロマ。

味: 口当たりは軽やかな刺激、微かにニューメイク寄りの風味もあるが、乾いた麦芽と白色果実の風味、 余韻はウッディな木材の香りが鼻腔に抜け、おがくずのほろ苦さ、微かにオーキーな甘みを残して全体の香味がストンと消えていく。

バーボン樽熟成のノンピート原酒を主体に、パロコロタドシェリー樽とシェリーブランデー樽熟成の原酒等を加えた3年熟成程度のリリース。とはいえシェリー感はあまりなく、基本的にはバーボン樽由来のフレーバーがメイン、バーボン8、その他2くらいか、ボディの厚さ、香味の複雑さを補うためにシェリー樽系の原酒を加えたのだろう。品の良い甘さとエステリーさが好ましい一方、1ショット飲むと途中で余韻にかけての単調さを感じてしまう。まだ熟成の余地を残した仕上がりと言えるが、余韻の長いウイスキーとしてはもう一声欲しい。

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創業2021年、新潟亀田蒸溜所のシングルモルト。亀田蒸溜所からはこれまでもイベントなどでニューボーンが販売されていたり、またPBでシングルカスクの3年前後のものが限定販売されるなどしてきたところ。今作はオフィシャルスタンダードラインナップとしては初めてとなる、JWの基準に基づくシングルモルトとなります。

本シリーズについては公式にあまり情報が出ていませんので、知ってる限りの補足と予想を記載していきます。
大谷シングルモルトの“大谷”は、某野球で理解の及ばない活躍をしている選手のことではなく、新潟亀田蒸留所を操業する企業がハンコの”大谷”(※本記事最下部参照)という企業名からきていること。
ゾディアックシリーズについては、12星座にあてがわれた誕生月(期間)を厚岸の二十四節気のようにリリース時期とかけた、星座シリーズなのだと考えられます。

またラベルに描かれた女性は星座をイメージしたキャラクターとのことで、確かに髪を結んでいる飾りに魚座のロゴが描かれています。一説では奥様ではという話もありましたが、そこは未確認なので、ここではただのイメージキャラということにしておきます。
ただ、頬を赤らめて視点がやや定まっていない感じ、そこに魚座の配置が酔っ払ってポワポワしてしまっている漫画の描写に見えてしまうのは気のせいでしょうか、なんとも特徴的なラベルですよね。

一方でこのラベルについては、新潟でなぜ星座なのかとか、この女性は魚座の何をイメージしてデザインされたのかとか、疑問は残るところ。今後この点が亀田蒸溜所から、あるいは代表の堂田さんから解説されてくるであろうことを期待しています。

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※新潟亀田蒸溜所のポットスチル。初留と再留とで形状が異なっているのが特徴の一つ。

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※糖化時の清澄麦汁を確認する設備。配管を一部可視化して光の通り具合を確認している。

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※現在の熟成庫が完成する前、倉庫を改修したスペースで熟成中の原酒をテイスティング。カスクストレングスのものはエステリーでよりフルーティー、甘さと余韻の長さを兼ね備えていた。

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※コンテナを熟成庫として使用することで、高温環境での熟成を実施。ニューボーンリリースやフィニッシュなど短期間で仕上げることを想定した原酒を一時的に保管している。やりすぎるとエキス分が過剰になるが適度に使うには効果的。今回のリリースにはコンテナ熟成の原酒も一部使われていると予想。


新潟亀田蒸溜所には過去2回訪問させていただいており、そこで見聞きし、経験してきた様々な要素から、蒸留所としてのポテンシャルとそのウイスキー作りは間違いないと確信しておりました。
清澄麦汁によるこだわりの糖化、プレス酵母をいち早く用いた発酵、そして冷温、常温、高温と温度環境にこだわった異なる熟成環境も整えたところ。
現地では、ピートにしろノンピートにしろ、これで3年程度!?という素晴らしい原酒をいくつもテイスティングさせてもらっており、この蒸留所の将来性は間違いないと、確信すらしていました。

だからこそ、率直に言えばこのファーストリリースは「あれ?」と思ってしまった訳です。 
 おそらく、設備の使い方、カットポイントや酵母の使い方など色々模索していた初期の原酒を中心にバッティングしているからだと思いますが。 余韻の長いウイスキーを目指したにも関わらずボディや余韻がストンと軽い。自分がテイスティングさせてもらった様々な樽出し原酒の風味に対して、後半の味がスッキリとしているというか、広がりや伸びがない、大谷(野球)にかけるなら伸びのない棒球なのです。 

香味から若さや嫌味な要素が目立たず、伸び代も十分ありますが、いやいや亀田ならもっとできたでしょ…と思ってしまうのです。 
同蒸留所では熟成環境が昨年にかけて整ってきただけでなく、その造りも2年目以降に酵母の使い方などで大きな変革が起こっていて、重ねて言いますが本当に期待している蒸留所の一つ。今作はその意味で最初の一歩というより次以降のリリースに、いい意味でのギャップを与えてくれるものと期待しています。 

特にピート原酒、ノンピートで3年だとバーボンオクタブ系の原酒ですかね。次あたりでとてつもない巻き返しがあるのでは…。大谷なら、大谷(堂田)さんなら…きっとやってくれるはず!

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追記:...なんとなくフェアじゃないというか、自分の気持ちが収まらないので、後日新潟亀田蒸溜所がいかに凄くて期待できるのか、記事にしたいと思います。

龍流 ブレンデッドジャパニーズウイスキー 43% 桜尾蒸留所✖️BAR お酒の美術館

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THE RYURYU 
BLENDED JAPANESE WHISKY 
“SAKURAO DISTILLERY” 
For BAR LIQUOR MUSEUM
700ml 43%

評価:-(飲んで評価いただければ幸いです)

香り:ややドライでエステリー、華やかさとスモーキーなトップノート。ドライアップルや柑橘に土や焦げた藁を思わせるピート香が混じる、微かにスパイシーで複雑なアロマ。時間経過でアップルタルト。

味:スムーズで柔らかい口当たり。ピーティーで砂糖をまぶしたグレープフルーツや燻した麦芽の甘さとほろ苦さ。余韻にかけてはバーボンオークの華やかさとナッツやシリアルを思わせる香ばしさ、後からウッディな苦味がピートスモークとともに感じられる。

桜尾蒸留所のモルト原酒とグレーン原酒だけで構成したブレンデッドウイスキー。その香味はピーティーかつエステリー。ミズナラ樽とバーボン樽に由来する清涼感あるウッディネスに、グレーンの緩やかな甘さ、香味ともドライ寄りの構成であるためオールシーズンで楽しめる構成。ストレートやロックでも充分楽しめるが、やはりおすすめはハイボール。スモーキーでいて飲みやすく、その中に桜尾蒸留所の個性がしっかりと感じられる。

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BAR お酒の美術館を展開するNBG社と、広島県の桜尾蒸留所を操業するサクラオブルワリーアンドディスティラリー社(以下、サクラオ)とのコラボリリースです。
桜尾蒸留所の3年熟成以上のモルト・グレーン原酒でブレンドした、ブレンデッドジャパニーズウイスキー。また単一蒸留所で両原酒を製造し、ブレンデッドウイスキーとして製品化しているのは国内では富士御殿場、桜尾のみであり、世界的にも非常に珍しいシングルブレンデッドウイスキーでもあります。(※嘉之助蒸溜所の日置グレーンは別蒸留所として整理)

お酒の美術館のコラボリリースでは、過去リリースされてきた第一弾の発刻、祥瑞、第二弾の琥月、姫兎、全リリースで、蒸留所との初期調整から原酒の選定やブレンドまでを担当させてもらっており、今回のコラボリリース第3弾も同様に協力させて頂きました。
今作に関するリリースの経緯等、概要はNBG社のプレスリリースにまとめられているため、本記事ではブレンダー視点でウイスキーを紹介していきます。
なお、これまで同様にリリースに当たっての報酬、ロイヤリティ等は頂いておりません。



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桜尾蒸留所の操業者であるサクラオ社(旧・中国醸造)は、歴史こそ100年を超えますが、現在の設備における創業はモルトウイスキーが2017年、グレーンウイスキーが2019年と比較的近年であり、それ以前は自社蒸留の原酒以外に輸入原酒を熟成、ブレンドしたものを主力商品としてリリースしてきました。
大きな転換点を迎えたのが2023年。スタンダードなリリースであるブレンデッドウイスキー戸河内を、100%自社蒸留&熟成のモルト原酒とグレーン原酒で造る、ブレンデッドジャパニーズウイスキーへリニューアルするという、クラフトメーカーとしては異例の挑戦を実現させたのです。

今回のPBは、このブレンデッドジャパニーズウイスキー戸河内”プレミアム”の兄弟銘柄、より厳選した原酒を用いたスペシャル版に当たります
構成原酒はモルトウイスキーがノンピートとピーテッド、グレーンは国産の丸麦を100%使用した桜尾蒸留所独自のもの。整理すると、原酒としては以下が使われており、熟成樽はバーボンとミズナラで、モルト比率のほうが高い構成(モルト6:グレーン4)となっています。

【ブレンデッドジャパニーズウイスキー龍流構成原酒】
・桜尾ピーテッドモルト(桜尾熟成:バーボン樽)
・桜尾ノンピートモルト(桜尾熟成:バーボン樽)
・桜尾ノンピートモルト(桜尾熟成:ミズナラ樽)
・桜尾ノンピートモルト(戸河内熟成:バーボン樽)
・桜尾グレーン(桜尾熟成:バーボン樽)
※全ての原酒が3年熟成以上

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(桜尾蒸留所のポットスチル。コラムスチルも併設されており、様々なタイプの原酒を生み出すことが出来る。)

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(桜尾蒸留所の熟成庫。温暖な環境で、力強い個性を持つ原酒に仕上がる傾向がある。奥にパラタイズ式で貯蔵されているのがグレーン原酒。)

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(廃線となった鉄道用トンネルを再利用している戸河内熟成庫。冷涼かつ多湿な環境が特徴であり、樽感は穏やかだが口当たりが柔らかく、エステリーな原酒に仕上がる傾向がある。)

ボトルは戸河内と共通のため、単に戸河内の詰替えなのではないか、ラベル替えではないかという声も見聞きしましたが、そんなことはありません。
龍流の味わいを構成原酒別に分解すると、ピーテッドモルト原酒のはっきりとしたスモーキーフレーバーに、バーボン樽原酒由来の華やかさが骨格を形成。そこにグレーン原酒が柔らかさと、ふくらみのあるエステリーな甘さを。ミズナラ樽由来の爽やかでスパイシーなフレーバーや桜尾熟成庫と戸河内熟成庫で異なる熟成感を持つ複数の原酒が複雑さを加えています。

戸河内プレミアムと飲み比べると、戸河内プレミアムのほうがグレーン原酒のフレーバーが主体となっており、スモーキーさもほとんどないため兄と弟というか、兄と妹(あるいは姉と弟)くらい違う感じですが。どちらのブレンドも桜尾グレーン原酒に共通点があり、戸河内プレミアムを飲んだ後で龍流を飲むと、スモーキーフレーバーの中にあるグレーン原酒由来の味わいにピントが合いやすいのではないかと思います。

桜尾グレーン原酒は、国産丸麦100%に糖化酵素としての輸入麦芽1の比率で造られる、麦原料のグレーン原酒です。そのため通常のコーンベースのグレーン原酒よりもボディに厚みがあり、味わいにも勢いがある。バーボン樽との組み合わせで、現時点では富士御殿場のヘビータイプグレーンに似た印象を受けるものに仕上がっています。
2021年に発表された「ジャパニーズウイスキーの基準」以降、ボリュームゾーンのリリース向け国産グレーン原酒をどうするかは各社大きな課題となっていたところ。それをいち早く解決して商品化に繋げた桜尾蒸留所の取り組みに、ただただ感嘆させられます。今回のリリースでは、原酒の豊富さや製造・熟成環境だけでなく、同蒸留所のグレーン原酒に是非注目してほしいです。

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(ブレンデッドウイスキー龍流のブレンド風景。候補となるレシピを試作を繰り返し、絞り込んでいく。)

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(様々な構成を試し、最終的に候補となった3種のレシピ。)

PBを作るに当たり、お酒の美術館からはスモーキータイプで手軽飲めるものをと依頼されていたため、ブレンデッドジャパニーズウイスキーという仕様のままに、ピーテッド原酒をどう活かしていくかがポイントでした。
幸か不幸か、ピーテッド原酒とグレーン原酒は馴染む比率に限りがあるように感じられ、グレーンを4割より多く使うとグレーンのフレーバーが目立ちすぎてまとまらず、4割より少なくするとモルトの若さが強く出て粗い仕上がりとなる。モルトとグレーンの比率はあまり迷いませんでした。

というのも上の写真にあるサンプルAは、一番最初の試作で「こんな感じかな?」と思いついたレシピであり、最もピーティーな構成。
その後何度も試作を繰り返しましたが、個人的にはこのレシピが一番好みでしたね。ブレンダーをやらせてもらっていると、結局一番最初に思いついたレシピが一番好みだった(あるいは完成形に近かった)ということは珍しくありません。

その後も用意頂いた原酒を使って試作を繰り返し、当日印象に残ったレシピの中から、バーボン樽原酒の比率を増やしたフルーティー寄りな構成のサンプルB、ミズナラ樽原酒の比率を増やしてスパイシーかつ複雑なサンプルCが候補として残り。後日、蒸留所側で3種を試作→一定期間のマリッジ→お酒の美術館の店長会議での投票でボトリングするレシピが決まったという流れです。
何れも桜尾蒸留所の個性がしっかり感じられるものでしたが、選ばれたレシピはサンプルB。フルーティー寄りなレシピで、スモーキーさとのバランスがとれているタイプです。万人向けのイメージで造っており、ちょっと残念でしたが狙い通りの結果でもありました。

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今回の企画は、桜尾のブレンデッドジャパニーズウイスキーでPBを造れたら良いなと、ダメ元で話を持っていったところ、この条件なら…→ええ、やりましょう(社長即決)→じゃあくりりんさん、後宜しくお願いします…。という形で話がまとまり、光栄なことにブレンダーも務めさせてもらいました。
国産原酒だけのブレンドは、モルトだけなら過去何度かありますが、モルトとグレーンを用いるケースでは初めて。また一つ、貴重な経験をさせてもらいました。

リリースにあたっての条件は一個人や一店舗で出来るようなものではなく、今国内で最も勢いのあるBARチェーンお酒の美術館だからことやれたという感じですが。何より、サクラオだからこそ、この仕様、この規模のPBを造ることが出来たと感じています。
本PB「龍流」は、全国のお酒の美術館で提供されています。リリース本数は約2000本で、すぐに無くなるものではないでしょうが…次があればサンプルAのレシピをリリースしたいですね(笑)。
皆様、お酒の美術館とサクラオブルワリーアンドディスティラリーのリリースを、引き続きよろしくお願いします。

シングルモルト 三郎丸 令和6年能登半島地震 チャリティーボトル

カテゴリ:
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Single Malt Japanese Whisky 
SABUROMARU 
Noto Charity Bottle 
Aged 3 years 
Distilled 2000 
Bottled 2024 
Cask type Bourbon Barrel #200142 
700ml 61% 

評価:★★★★★★(6)(!)

香り:トップノートからしっかりと主張するスモーキーさ。グレープフルーツやレモンピールを思わせる柑橘香、燻した麦芽に土のアロマも伴う。

味:柔らかい麦芽由来の甘みを伴う口当たりから、ピートのほろ苦さ、スモーキーさが香り同様の柑橘感をともなって力強く広がる。余韻はピーティーでパワフル、焦げた藁や柑橘の綿、喉を通じて体の中心に熱い酒精が宿る。

三郎丸蒸留所のハウススタイルである、ピーティーな酒質の個性がはっきり感じられるシングルモルト。3年熟成という期間は一見すると短いが、雑味少なく柔らかい口当たりや香り立ち、存分に個性を発揮した構成。また、本リリースはアイラ島のピートではなく、スコットランド内陸で産出したピートで仕込んだ麦芽を用いているため、余韻にかけて強くスモーキーさが主張するのも特徴と言える。
この優しくも力強い味わいが、1日も早い復興の後押しと、被災地へのエールとなれば幸いである。
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令和6年能登半島地震によってお亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみを申し上げます。また、被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。
本日紹介するのは、1月9日に若鶴酒造・三郎丸蒸溜所から発表(プレスリリースは1月16日に実施)された、令和6年能登半島地震への寄付を募るためのチャリティーボトルです。

本リリースでは、私もリリースメンバーの一員として原酒選定、各種文書の文案作成等で協力させて頂きました。
関東在住のくりりんが、なんでこのチャリティーに?と思われるかもしれませんが、これまでの活動や血縁関係で北陸地方には所縁があり、震災当日は偶然同地方に居たこともあって、現地の混乱も僅かながら経験しました。
能登半島等被害の大きな地域に比べれば私の経験は微々たるものですが、早期復興に少しでも協力できればと本企画に協力させて頂きました。

一般発売は1月22日から、若鶴酒造の直営オンラインサイトであるALCにて。その売り上げは消費税、資材費を除いた全額が、日本赤十字社の令和6年能登半島地震災害義援金に寄付されます。
生産量の限られる三郎丸において貴重な1樽を実質無償提供すること。さらに、本リリースとは別に、今やベストセラーとなった「三郎丸蒸留所のスモーキーハイボール缶」の売り上げを、一部義援金として寄付することまで発表されています。

三郎丸蒸留所があるのは本地震によって被害を受けている北陸地域であり、直接的な被害は少なかったとは言え、観光や消費の点では間違いなく影響があります。
自分達も苦しいが、それでも地域に恩返しがしたい。このプロジェクトには金額以上に、稲垣社長をはじめとした各メンバーの想いが込められていると感じます。



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さて、ここから先はチャリティーボトルの中身の話をしていきます。
今回のチャリティーボトル用に選定されたのは、三郎丸蒸留所で2020年に蒸留された、内陸ピート仕込みの原酒です。フェノール値は50PPMで、蒸留器は勿論ZEMON。その原酒をバーボン樽で3年5ヶ月熟成させた、シングルカスク・シングルモルト・ジャパニーズウイスキーとなります。

後日リリース予定のシングルモルト三郎丸Ⅳ The Emperor と、スペック上は同じタイプの原酒ですね。
蒸留所で貯蔵する同仕様の原酒から、蒸留所スタッフの花里さんがピックアップしたのは写真の3種。No,200223は口当たりが非常に強く、まだ熟成が必要だと感じましたが、残る2つは最初の飲み頃を迎えているかのように、好ましいフレーバーと柔らかい飲み口を備えていました。
No,200182はピーティーでありつつ、全体を通して柔らかい麦芽や樽由来の甘さが主体。
No,200142は口当たりこそ同じ系統だが、余韻にかけて力強く好ましい柑橘感が特徴。
サンプルを飲んだ感想は概ね同じで、推しは後者。その後のミーティングで、単体で完成度が高く飲んで元気づけられるような、良い意味での勢いがあるNo,200142の原酒が全員一致で選ばれます。

なお、この原酒は昨年9月ごろ一度サンプリングされており、その際の下野さんの感想は今回のものとは全く別だったそうです。ギスギスとして溶剤系の刺激も強く、内陸ピートの仕込みであることからスモーキーさは強烈で、アイラピートの出汁感や柔らかさは出ていない、もっと暴れた印象の強いものだったとか。
それがわずか4-5ヶ月でこれだけの変化がある。熟成によるウイスキーの成長は、まさに男子3日会わざれば…と言うことなんですよね。今回選ばれなかった2種も、他の原酒同様に今後ますます成長していくでしょうし、次のサンプリングでは全く別な表情を見せてくれると予想します。


2024年1月1日、ちょうど新潟の南魚沼~長岡あたりの地域に自分は居ました。
同地域の震度は5強~。東日本大震災を想起させる揺れでした。
幸い、私の周囲に地震による直接の被害はなく。
普段やり取りするメッセンジャーのグループで、稲垣さんや下野さんの無事は確認。蒸留所も無事。ハリーズ金沢は少しばかりボトルが破損したようですが、マスターの田島さんも無事。まあT&Tの両名は元日から風邪で寝込んでいて、違う意味では無事じゃなかったのですが。
そしてその後、徐々に明らかになる震災の被害の大きさ。復興への険しい道のり…。

最初はBULKシリーズで復興支援ボトルをどうかと提案したのですが、それでは意味がないと稲垣さん。実は既に三郎丸モルトでチャリティーボトルをリリースしようと考えていたのだとか。そこからが早かったです。リーダーシップとはこういうものだと、見せつけられるような指示の速さ、周囲の仕事の速さで企画が動いていきます。
ラベルを書かれたコーラ氏(@c_o_l_a)に至っては、僅か2~3日でこの作品を完成。デザインもあっという間に決まり、当初予定より大幅に前倒してのリリース発表へと繋がります。

ラベルに描かれたのは、能登半島の見附島。今回の地震で大きな崩落があったことが報じられた、能登のシンボルとして知られている名所です。その在りし日の姿と昇る朝日に復興への想いを込めたNoto Charity Bottle。
この1本が、一日も早い被災地域の復興の一助となれば幸いです。

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