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五島つばき蒸溜所 
ゴトジン 
GOTO GIN 
1st Batch 2022.12 
500ml 47% 

原材料 : ジュニパーベリー、椿の実、つばき茶、椿油搾り粕、ナツメグ、リコリス、アンジェリカ、柚子、カカオニブ、アーモンド、紅茶、シナモン、山椒、レーズン、ラズベリー、カルダモン、コリアンダー

テイスティングコメント:
爽やかでクリアなトップノート。雑味が少なくアルコール感も柔らかい。フレーバーは膨らみがありジュニパーを主体として柑橘や林檎、複数のスパイス、微かに青みがかったオイリーな甘さを伴い、これが全体の繋ぎとなっている。
王道的なジンの構成と言えるが、一つ一つのフレーバーが上質で、それらがまとまって全体のバランスも申し分ない。
今作はさながら守破離の守。ストレートで充分楽しめるが、ロックにしても上質な味わいは変わらない。原料、製造工程にこだわり抜いたというPRに偽りのない、美しい仕上がりである。

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昨年4月にクラウドファンディングの紹介記事を掲載させて頂いた、元大手酒類メーカー出身者が長崎県の五島列島に立ち上げるクラフトジン蒸溜所。五島つばき蒸溜所。

クラウドファンディングは設定額を超えてサクセスし、無事蒸溜所の建設がスタート。
コロナ禍に伴う物流混乱や大型台風を乗り越え、五島の美しい自然の中で、確かな技術と経験を持った造り手が多くのこだわりを詰め込み、生み出されるクラフトジン。その記念すべきファーストバッチが、昨年末に手元に届きました。
クラファンで支援させて頂いてから8ヶ月少々、光陰矢の如し、本当にあっという間ですね。ジンとおせち、和食って非常に相性が良く、年末年始でじっくり楽しませて頂いたところです。

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ジンと言っても作り方は幾つかの方法に分類されますが、共通するのはボタニカル、これによってどのようなフレーバーを付与するかです。
五島つばき蒸溜所のゴトジンは、五島でとれる「椿」をキーボタニカルに据えて製造、ブレンドを行っており、ボトルの形状は椿の花をイメージしたもの、原材料にも当然「椿の実、つばき茶、椿油搾り粕」の記載があります。
微かに感じられる柔らかく青みがかったような甘み、オイリーな質感、この辺りは椿由来のフレーバーかもしれません。

また、ジンと言ったら基本的には欠かすことが出来ない「ジュニパーベリー」も、一粒一粒、一文字割りにしたものを用いるという徹底ぶり。
この製法による違いがどの程度影響するのか、比較をしたことはないのですが、フレーバーを抽出する際に乱雑に割られ、砕かれたモノを使うか。それとも整ったモノを使うかは、溶け出すフレーバーに影響することは間違いないでしょうから、雑味や苦味といった要素の違いに繋がるのではないかと予想出来ます。

ベースとなるスピリッツは、特注の蒸留器でサトウキビを使って作る無味無臭、柔らかい味わいのもの。ここに上述のフレーバーが溶け込むことで、クリアでボタニカルの個性をしっかりと出したジンを生み出すことに繋がります。
実際、このゴトジン1st batchの仕上がりは非常に綺麗でで美しく、まさに造り手のこだわりを形にしたと言える構成です。
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こだわりと言えば、五島つばき蒸溜所ではボタニカル17種類毎に、蒸留の温度、カットポイントなどを変えてボタニカル毎に適したスピリッツを造り、複数出来た原酒をブレンダーがブレンドすることで様々なレシピ、リリースを構成しています。
こうしてブレンドされ、リリースされたのが今回のBatch No,1ですが、既に蒸溜所のオンラインショップでは1ヶ月5000円でオリジナルレシピによるリリースの定期購買コースも設定されています。(スタンダードのバッチも、蒸留ノウハウの蓄積とレシピの微修正で、バッチ毎に徐々にフレーバーが洗練され、変化しています。)

こうしてこだわりが形になり、慈しみと風景のアロマをもったジンを作る五島つばき蒸溜所ですが。このボタニカル毎にスピリッツを調整してブレンドする方法は、既に他のクラフトジン蒸溜所でも行われており、製法としてオリジナルではありません。
他方で、リリースを形作るブレンダーの存在が五島つばき蒸溜所の強みであり、オリジナルであるとも言えます。

本蒸溜所を立ち上げた造り手の一人、鬼頭英明氏は元キリン富士御殿場蒸溜所で33年間ウイスキー作りに関わってきたチーフブレンダーです。
正直、これだけのキャリアと経験のある造り手がブレンダーとして関わるジン蒸溜所は、少なくとも国内で他に聞いたことがありません。
鬼頭さんとは、同じくブレンダーとなる飛騨高山蒸溜所の設立に関連して、情報交換を行わせて頂いていましたが。
いやまず間違いないだろうと予想していた通り、最初から美味しいジンを届けて頂けました。

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クラファンの記事にも書きましたが、自分は離島好きで伊豆諸島は何度訪問したかわからないほどです。
離島の雰囲気、空気は、本土とはちょっと違うのです。これで五島にも渡っていたら、このジンの表現している“風景のアロマ”に一層の親しみや、イメージも具体的に出来たのではないかと思いますが…、残念ながら五島列島は未訪問。
写真や映像以上の情報は手元にありませんので、あくまで上質で美味しいジンであることは強調させて頂き、後の経験は皆様にお願いしたいと思います。

なお、五島つばき蒸溜所とそのこだわりのジン造りが、2023年2月9日(木)19:30〜、再放送:2月15日(水)11:15〜、NHKの「いいいじゅー」にて特集放送が予定されています。
鬼頭さん曰く、かなりしっかりと特集されている。我々の情熱と、クレイジーな造りを見て頂けたらとのこと。これは是非ゴトジンを飲みつつ楽しみたいと思います。

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番組URL:https://www.nhk.jp/p/ts/J7775NQ8GW/episode/te/MY7YQR1417/