キルホーマン 11年 2007-2019 キャンベルタウンロッホ20周年記念 55.7%

KILCHOMAN
For BAR CAMPBELLTOWN LOCH 20th ANNIVERSARY
Aged 11 years old
Distilled 2007
Bottled 2019
Cask type Bourbon #380/2017
700ml 55.7%
グラス:テイスティンググラス
時期:開封後1週間程度
場所:BAR Eclipse
暫定評価:★★★★★★(6)
香り:ピーティーで焦げた木材、炒めたカシューナッツのような香ばしさ。シトラスを含むバニラとオーキーな華やかさ。しっかりヨードやクレゾールの薬品香も感じられる。香味のまとまりに若干の粗さはあるが、レベルの高いアイラモルト。
味:スムーズでピーティー、香り同様に柑橘を思わせる要素から若干焦げた木材、タールのようなニュアンス。そこからオークの甘味とフルーティーさ。ピートフレーバーには根菜っぽさも混じる。
余韻はピーティーでほろ苦くスモーキー、ほのかに柑橘やパイナップルを思わせる果実味を伴って長く続く。
ピーティーなアイラ要素に加え、フルーティーさもある好ましい仕上がりのキルホーマン。やや荒削りな感じもあるが、加水調整が樽由来の要素と酒質由来の要素を活かしつつバランス良く仕上がっている。加水するとボディが薄くなりやすく、しても少量まで。また、荒削りな部分については経年変化でこなれていくことも期待できるため、将来性のあるボトルでもある。

有楽町にあるウイスキー愛好家の聖地、もはやそれ以上の前置きは不要とも言える、BAR キャンベルタウンロッホの20周年記念ボトルの1本。
通常の周年ではなく、10年刻みの大きな節目とあって多くの記念ボトルがリリースされていますが、ここでキルホーマンを選んでくるというのは、近年のキルホーマンの成長を見れば逆に納得させられてしまうチョイスです。
キルホーマンの創業は2005年で、先に触れたように近年めきめきと酒質を向上させてきた、今注目の蒸留所のひとつです。
一例として最近のロットのマキヤーベイや、キルホーマン・100%アイラなどのバーボン樽を主体としたリリースが、若いアイラモルトそのものの完成度だけでなく、将来性も十分感じさせてくれる仕上がり。下積みを重ねてきた若手選手が、いよいよブレイクの時を迎えようとしている、といった印象を受けています。
一方、今回のリリースのように、創業から数年間以内の原酒がどうかというと、一時はあまり評価されていなかったように思いますが、これも悪くないのです。
10年程度熟成を経たものを既存のモルトに例えるなら、ラフロイグとラガヴーリンの二つのモルトの特徴を持っているように感じられ、後は固体差ですが、この樽はバーボン樽熟成のラフ要素強めといった感じ。
今は樽感と酒質由来の部分が多少乖離しているというか、少し荒削りで距離があるような感じもしますが、そこが経年でまとまる余地である伸び代。将来性は充分にあると感じます。
他の類似スペックのキルホーマンと比べ、特別クオリティが抜きん出ているという訳ではないのですが、こういう系統を選んでくるのはやはりマスター・中村さんの経験値故でしょうか。
中村さんは、オールドだけでなく、新しい可能性についても現地を巡って自分の目と舌で確認しており、それをラインナップやこうしたリリースで形にしていることが、同店が愛好家を惹き付ける大きな要素のひとつ。信頼性が段違いなんですよね。
日本の洋酒文化を支え、そしてリードする存在のBARキャンベルタウンロッホ、その更なる発展を祈念して記事の結びとします。