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ADN-97 (オルドニー) 24年 1997-2021 ビハインドザカスク 53.3%

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ADN-97 (ALDUNIE) 
SINGLE CASK BLENDED MALT 
BEHIND THE CASK 
OVER 24 YEARS 
Distilled 1997/06/18 
Bottled 2021/08 
Cask type Barrel #1507 
750ml 53.3% 

評価:★★★★★★(6)

香り:まるで蜂蜜のようなトップノート。独特の酸味と熟した洋梨、白葡萄、花の蜜のような甘みのある香り。微かに乾いた麦芽の香ばしさ、オーク香が混じる。

味:スムーズでややウッディ。香り同様の含み香に、奥から麦芽の甘み、コクが追い付いてくる。徐々にドライで華やか、軽やかな刺激を伴いつつ、アメリカンオーク由来のオーキーな余韻が染み込むように長く続く。

香味のベースはグレンフィディックに似た傾向があるものの、「蜂蜜に近い」ではなく「蜂蜜そのもの」を思わせる香味が特徴的なモルト。また、ボトルやラベルからソーテルヌワインを彷彿とさせるが、その香味にも似た要素があると言えなくもない。少量加水するとすりおろした林檎のような甘みとフルーティーさが、蜂蜜を思わせるアロマの奥から開く。また、香り以上に味のほうでまとまりが良くなり、一層白色系や黄色系のフルーティーさが感じられる。
ロック、ハイボールも悪くはないが、ストレートや少量加水をグラスでじっくり楽しみたい。

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先日、対談記事を掲載した、ボトラーズブランド「BEHIND THE CASK」のファーストリリースのうちの1つADN-97。気になっていたボトルで、ウイスキー仲間経由でボトルごとお借りしました。中身はウィリアムグランツ社がグレンフィディック・バルヴェニー蒸溜所の敷地内に建設した第三蒸留所、キニンヴィのティースプーンモルトで、なんとも通好みなリリースを一発目に持ってきたなと驚いたことを覚えています。

このボトルをレビューするにあたっては2つの切り口があり、一つはキニンヴィという蒸留所のスタイルから見てどうかということ。そしてもう一つが、ビハインドザカスク社のリリースコンセプトとしてどうかということです。
今回の更新ではこの2つの視点で順番に説明していきます。(※同社リリースコンセプト等については、先日更新した記事を確認ください。)



■蒸溜所のハウススタイル
キニンヴィはグランツやモンキーショルダー等のブレンデッドに使われるため、10年ほど前はリリースがない幻の蒸留所の一つと言われてきました。一時ヘーゼルウッド名義で濃厚シェリー系がリリースされたのですが、酒質がよくわからない。。。その後オフィシャルから、リフィル系統の樽構成の23年、17年などがリリースされ、蒸溜所の個性を把握できるようになりました。

そもそも親会社がブレンド用に代替品として仕込んだモノ。当たり前と言えば当たり前なのですが、その個性は非常にフィディック寄りだったんですよね。
フィディック寄りで若干ローランド的というか、軽やかな植物感とエステリーな華やかさがあるというか。バルヴェニーのように麦芽風味が膨らむ感じではありませんが、一般的に兄弟が同じDNAを受け継いでどこか似たところがあるような感じ。
実際、同じ敷地内にあるということもあって、キニンヴィの仕込みはバルヴェニー の設備を一部共用する形で行われているとのことで、造りの面からも納得のいく個性でした。

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(※キニンヴィのポットスチル。グレンフィディックのスチル形状のミニチュア版とも言われているが、手前の初留釜は大きく独特の形状をしており、香味の違いに影響していると考えられる。画像引用:https://www.whiskyandwisdom.com/kininvie-the-distillery-emerges/)

ではこのADN-97はどうかというと、使われた樽の影響か特殊な香味が付与されています。樽はバーボン樽なのですが、ひょっとすると元々熟成に使われていたバーボン樽と、ティースプーン的な処理をした後で原酒を詰めなおしたバーボン樽が違うのかもしれません。

ベースの酒質は上述の個性から外れたものではありませんが、香りのトップに来る蜂蜜そのものを思わせる香りは、通常のWG社のモルトのどれにも当てはまらないもので、このボトルの個性にも繋がっています。(内陸系のモルトには、蜂蜜のような香りがするものはいくつもありますが、似た香りと、そのものを思わせる香りでは、大きな違いがあります。)

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■BEHIND THE CASKのリリースコンセプト
さて、冒頭述べたように、特筆するところはもう一つ。それは、ビハインドザカスクのリリースコンセプトである「ソムリエがサーブするウイスキー」。ワインと同じく、経年変化、温度変化なども見て楽しんでほしいとするものです。
先日同社代表の澤田さんと対談させてもらった際、このADN-97については

「AND-97は開封直後から蜂蜜、洋梨、そして花のような甘みと酸味を感じる香りがあり、香味ともあまりトゲトゲしいところはありません。これらの要素がグラスの中で馴染み、開いていくことから、比較的早飲みのイメージです。温度としては、軽く冷えた状態からサーブすると、常温に戻る過程で変化をさらに楽しんで貰えるのではないかと思います。」

とあり、だったら白ワインのように冷やして飲もうと。ただ借り物であるボトルごと冷やすのはちょっと憚られたので、小瓶に移して冷蔵庫へ。1時間弱冷やしてからワイングラスに移し、徐々に温度を戻しながら飲んでみました。
するとなるほど確かに、香りが少し硬さを帯びるのですが、それが逆に冷気を伴う香りと合わせて蜂蜜レモンドリンクのような爽やかさを伴う香りとなり、徐々に蜂蜜感が強く、果実系のアロマが開いてくるような変化。香味が開くという過程をわかりやすく楽しめました。

グラスと温度で変化をつけることで、同じボトルでも楽しみが広がる、新しい選択肢だと思います。ユーザーとしてはそれをテイスティングの際の指標ともできますし、BAR等で独自の解釈で提供があっても面白いと思います。

因みに今回のリリース名称ADN-97は、Aldunieを略したもので、97は蒸溜年と考えられます。とすればもう一つのリリースであるグレーンのIGN-89は、Invergordon 1989となりますね。
なお、同社から予定されている次のリリースはGNR-13、シェリー系であるとのこと。つまり…Glen rothesの短熟圧殺系でしょうか。シェリー系は時間をかけて変化を見ていくタイプも考えられるため、公式からの発信を楽しみにしております。

アイルサベイ NA 48.9% オフィシャルボトル

カテゴリ:
 
AILSA BAY
Single malt scotch whisky
(No Aged)
PPPM 21
SPPM 11
700ml 48.9%

グラス:SK2、創吉テイスティング
量:100ml程度(シェア購入)
場所:自宅
時期:開封後2週間程度
評価:★★★★(4)

香り:ピーティーで若い酸味の混じる麦芽香、ハッカ、スワリングしていると淡い消毒臭、時間経過でシロップの甘みと根菜のアクやエグみを思わせる植物感が開いてくる。樽感は淡く、奥行きや複雑さはあまり感じない。

味:水っぽい飲み口からエッジの立った口当たり。じわじわと土っぽいピーティーさ、根菜、ニガリを思わせるえぐみと苦味に加え、ビスケットを思わせる甘みが感じられる。
余韻はピーティーで植物系の苦味が強くなっていく。香り同様、若さをピートで補っている印象で、熟成感は弱く酒質もプレーンであり複雑さもあまり感じれない。まだ若く、分離感のある味わいだ。


ウィリアムグラント社が、2007年に新設した第4蒸留所、アイルサベイ。そのファーストリリースです。
本蒸留所はグレンフィデックの兄弟蒸留所に当たり、その他にもバルヴェニー、そしてキニンヴィが有名です。
中でもキニンヴィは、原酒がほぼ100%ブレンド用であるため、飲めない蒸留所として知られているわけですが、グラント社はここにきてもう一つ、シングルモルトマニア注目の蒸留所を追加してきたわけです。
「どうせまた飲めない蒸留所だろ」とあまり意識もしていませんでしたが、どうやら昨今のブームを受けてシングルモルトも展開されていくようで、ウイスキー仲間との海外直接購入であっさり飲む機会に恵まれてしまいました。

アイルサベイ蒸留所は、ウィリアムグラント社がローランドに所有するグレーン工場、ガーヴァン蒸留所の敷地内に建設されており、位置づけ的にはローランドモルトに分類されます。また、ガーヴァン敷地内の建設場所はレディバーン蒸留所の跡地でもあり、閉鎖、グレーン蒸留所も含めると、アイルサベイはウィリアムグラント社の第6蒸留所であるとも言えます。
ローランドモルトとしては珍しくピーテッドタイプで仕込まれており、ピートレベルはブルイックラディ(ポートシャーロット)とほぼ同じ21PPM。もう一つの指標となるSPPM(Sweet Parts Per Million)は独自の表現方法で、甘味のレベルを意味するようです。
SPPMは比較対象がないため、現時点であまり意味はないですが、今後同社の製品に統一して使用されるなら面白い試みだと思います。


前置きが長くなってしまいましたが、今回のボトルは、そもそも最長で8年熟成というところ。味に奥行きがなく単調気味な構成となっています。
同蒸留所では、ニューメイクスピリッツを、一度ハドソンベイバーボンと呼ばれる25~100リットル程度の小さい樽に詰め、6~9ヶ月間熟成させて味を濃縮させ、その後ボトリングまでの期間をファーストフィルかセカンドフィルのバーボンバレルで熟成するという、一般的に行われている熟成方法とは逆の工夫もされているようです。しかし今回のボトルでは、メーカーコメントほどの樽感は感じられず、全体的に淡い仕上がりとなっているところ。土っぽいピーティーさと植物系のニュアンスの混じる根菜のような風味が主体で、若さはピートで中和されてなんとか飲めるかなというレベルの仕上がりです。他の蒸留所で例えるなら、近年の若いレダイグに似ている部分があるかなという印象も持ちました。

ハイボールにすると消毒液のようなアロマが強く立ってきます。飲み口はすっきり、その中に香ばしさも感じられ、やっぱりピーティーなモルトは炭酸との相性が良いんだなと思う反面、これじゃなくても良いように思うのは・・・。
今回はファーストリリースですし、旨さというより際立った個性を楽しむボトルだなと整理。面白い原酒がラインナップに加わったと思います。ブレンドの観点では原酒の幅が増えるのは良いことですし、今後のアイルサベイ並びにウィリアムグラント社の展開が楽しみです。

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