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イチローズモルト 秩父 オンザウェイ 2019 51.5%

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ICHIRO'S MALT 
CHICHIBU 
ON THE WAY 
Bottled 2019
700ml 51.5% 

グラス:国際規格テイスティング
時期:開封後1週間程度
場所:ジェイズバー
暫定評価:★★★★★(5ー6)

香り:トップノートは乾いたウッディネスと強めのアタック。フレッシュな林檎を思わせる果実香、柑橘の綿、乾燥した穀物っぽい軽い香ばしさから、メンソールやハッカ、スパイシーさが主張する。

味:口当たりはハイトーンでオーキーなウッディさ。バニラやドライアップル、樽由来の甘味にボリュームがあり。徐々にジャスミン茶の出涸らしのようなタンニン、えぐみを思わせるニュアンスも。
余韻はほろ苦くスパイシーで、和生姜やナッツの混じる乾いたウッディネスがクリアに抜けていく。

メインの樽はバーボンないしアメリカンオークと思われる乾いたウッディネス、オーキーさに由来するフルーティーさも感じられるが、下地にあるのは秩父の特徴。樽由来の要素は悪くなく、酒質部分と合わさって複雑でもあるが、馴染みきらないもどかしさ。まさにこれからの秩父へのオンザウェイ。

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秩父蒸留所の定期リリースのひとつ。。。といっても、2013、2015とリリースされた後で2017がなく2019年ですので、結構久しぶりな1本。
ON THE WAY(途中、~への道)というタイトルの通り、将来の秩父モルトの姿を見据えて、蒸留所に貯蔵された原酒をブレンドしてリリースされる発展途上のシングルモルトです。

ベースとなっているのは、同蒸留所の中で最も比率が高い、バーボン樽原酒と推察。
前作までは3~5年程度熟成の、比較的若い原酒のみで構成されていたところ。それ故ニューポッティーな若い酸であるとか、微かなピートであるとかも感じられたのですが、この2019年リリースは樽感が主体になっています。
ハイトーンな中に熟成感も伴うことから、6~8年くらいのものを軸に10年熟成くらいの原酒まで含まれているのではないかと思います。

ただその樽感はバーボンオークバリバリとはならず、ハイトーンななかに林檎系のフルーティーさとバニラ系の甘味が合わさって感じられる。複数年数の原酒がブレンドされた結果、オーキーではないクリーンなタイプと、ウッディーなタイプが相互に主張している感じ。
この構成を考察すると、意図して2つの樽感の中間を作り出そうとしたのではないかとも感じます。


秩父のモルトは「樽負けしやすく、長期熟成に向かない。」とする意見が、愛好家の間で少なからずあります。
そうした評価は蒸留所側にも届いているのでしょう。今年のモダンモルトのセミナーで、肥土さん本人が言及されており、同時に興味深い考察もされていました。
曰く、樽由来のフレーバーでタンニンは、熟成の初期はある程度まで濃くなるが、一定以上の期間を経ると分解されるため、秩父の原酒は10年以上の熟成に耐えられるのだと。
確かに、タンニンがポリフェノールなどに分解されるという現象は、熟成を通じて起こるもののひとつとされています。

つまり今回のボトルは、今ある原酒から将来こうなるのではというイメージのもと作ったのかなと。
ただ、ポリフェノールなどのタンニン由来の成分は渋味や苦味に繋がるだけでなく、樽から溶け出た成分、エキスは無くなる訳ではないので、ざらつくような感じやドライさは強くなる目論見通りに進むのかは神のみぞ知るところ。
日本はそもそも高温多湿なので、空調を使うなど特殊な環境に置かない限り、どの蒸留所も基本的に樽が強くなります。
あとはそれとどうバランスをとるか、いかに酒質部分のフレーバーと馴染ませるかがポイントであるわけですが。。。秩父の原酒はその独特の個性から、酒質に樽感が馴染みにくいんじゃないか、と最近思うのです。

長期熟成によって起こる樽内の変化には、原酒の味わい(分子構成)の均一化が進むというのもあります。
テイスティング中でも触れた、秩父の酒質そのものが持つハッカ、和生姜、あるいはえぐみの残った筍のような特徴。。。現時点の秩父はこの存在感が強いので、最初に樽感があって、後がこのフレーバーに続く、あまり馴染んでるようには感じられない要因となっています。(IPAカスクなどめちゃくちゃ個性の強い樽は後半部分まで圧殺されるため、逆にバランスがとれている。)
20年、30年熟成を目指すという秩父のゴールの姿は、この点がどうなっているのか。願わくば、適度に秩父らしさが残りつつ、馴染んだ味わいになっていると良いのですが。

イチローズモルト 秩父 オンザウェイ 2015  55.5%

カテゴリ:
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Ichiro's Malt
CHICHIBU
"ON THE WAY"
Bottled 2015
700ml 55.5%

グラス:創吉テイスティング
量:30ml以上
場所:BAR飲み(TWDイベント)
時期:開封後1ヶ月程度

【ブラインドテイスティング】
地域:ジャパニーズ
蒸留所:秩父
熟成年:5年程度
樽:バーボン樽主体の複数樽バッティング
度数:55%程度
暫定評価:★★★★★(5)

香り:乳酸系の酸味を伴う麦芽香、乾いたオーク、砂糖菓子を思わせる甘い樽香も感じられる。
徐々にケミカルなニュアンス、シリアルや焼きたてのパンを思わせる香ばしさ、微かなシナモンなど香味の変化があり、グラスの残り香はバニラの甘みと木のえぐみ。

味:スパイシーな麦芽風味に粘性のある甘い樽香、かみなりおこし、レモンや梅のシロップの酸味もある。
ボディは中程度。全体的にアルコール感強く、余韻は淡いピートフレーバー、麦芽、ドライオレンジピールのほろ苦さと酸味。乾いた木のえぐみを少し残しながら、あっさりとしている。


先日のThe Whisky Diversにて、ゲストでウイスキー仲間のAさんから出題があったボトル。
TWDルールですので、リリースから5年以内のボトルであれば、なんでもOKなブラインドテイスティングです。
飲んだことの無いボトルでしたが、比較的簡単に絞り込むことができました。
ノージングで秩父の特徴がバリバリ感じられ、香味もバッティングの傾向である複雑さが感じられたのと、淡いピートフレーバーとバーボン樽主体の味わいの中に異なる樽感の粘性があったのが決め手。 「あぁ、これオンザウェイの新しいやつじゃないか?」と。

秩父オンザウェイ2015は、2009年から2012年までの蒸留期間に加え、バーボン樽など複数種類の樽で熟成された原酒、計1万本分のバッティングで作られたシングルモルトウイスキーですが、その中には1樽だけ2009年蒸留のミズナラ樽が使われているのだとか。
以前飲んだ前作には結構強めなピートフレーバーがあったように記憶していますが、今回は意外とニュートラルというか、ピートはアクセント程度しか感じません。それ以外は樽由来の甘さ、酸味、ウッディーさに反して、若さが感じられるモルト。
よく言えば複雑ですが、厳しく言えばばらつく感じで、若い原酒で構成されているのもあり全体のバランスは及第点レベルです。

今回、このボトルをブラインドで出題した意図は、メーカーPRでも書かれている「ミズナラ原酒」の個性が、どこに感じられるかを知りたかったからだそうです。
結論から言うとあるはあるんですが、秩父が出せるミズナラ感の大多数は、以下のサントリー山崎にあるようなそれではなく、自分的にはねっとりとした木香程度という印象です。
ミズナラは最近ウイスキー業界のブランドの一つに定着していますが、現状全てのメーカーが山崎ミズナラ樽に類するフレーバーが出たものをリリースしているワケではありません。
ミズナラ樽を何度も使い、仕込んでいく中でこういう形に仕上がったのがサントリーであり、少なくとも数年単位の熟成期間ではここまでのフレーバーは出ないと考えられます。
秩父にある中で最も期待できるとすれば、ジョーカーの羽生ミズナラ原酒の空き樽でしょうか。アレに長期熟成可能な厚みのある原酒を足し合わせればあるいは・・・。

何れにせよ、オンザウェイをはじめ、意欲作が多いイチローズモルトですが、各ボトルの評価が知名度先行で中身が追いついていない状況だと感じます。
オンザウェイは直訳で道中半ば、途中を意味します。若い秩父の原酒の魅力も感じながら、来る熟成のピークまでの道のりを楽しむワークインプログレスなモルト。
この道を行けばどうなるものか。バッティングで飲むなら、あと5年後の姿を待ってみたいと感じる出来栄えでもありました。
苦労も多いと思いますが、さらに高い完成度と洗練された個性を目指して、頑張ってほしいです。

※山崎ミズナラ2014は、ミズナラ感比較用にとAmbrosiaからご提供頂きました。いつもありがとうございます!

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